本日の英単語 Thermodynamics 熱力学 Enthalpy エンタルピー Free energy 自由エネルギー Exothermic reaction 発熱反応 Endothermic 吸熱 Exergy エクセルギー
11. 地球システムの活動持続条件 火力発電所の場合 電力を生み出し続けるには 1 高温源 ( 低エントロピー ) Q 1 3 水 Q 2 2 廃熱 ( 高エントロピー ) 電力 1 低エントロピー源 ( 資源 ) の導入 2 エントロピー ( 汚れ ) の除去 3 物質の循環
資源 低 ー 食べ物 水 酸素 資源 ( 低エントロピー源 ) の導入 生命の活動維持メカニズム 物質の循環 固形排泄物 熱 尿 汗 二酸化炭素 汚れ 高 ー 汚れ ( 高エントロピー ) の除去 有限の媒体で無限の資源と汚れを運搬
地球生命系が活動を持続するための 3 条件 (1) 低エントロピー源 ( 資源 ) の導入 低エントロピー & 高エネルギー源 : 太陽光 (2) エントロピー ( 汚れ ) の除去モノの汚れ 宇宙への放熱 熱の汚れへ (3) 物質循環 水と栄養の循環システム 人間活動の影響大 私たちがなすべき事は 自然界の循環を豊かに保ち 人類が排出する循環に乗りにくい物質を責任を持って安全な形で地球循環システムに乗せること
廃棄物対策の階層性 R がキーワードであーる 1. 減量 (Reduce) 廃棄物の発生を回避し その量を減らすとともに有害性や毒性のある成分をより有害性の低いものに 消費者の ムダなものは作らせない態度 も重要 ( 製品の拒否 :Refuse) 2. 再利用 (Reuse) 形態を変えずに再使用 修理 (Repair) も重要な要素 3. 再生利用 : リサイクル (Recycle) 必ずしも元の形である必要はないが 廃棄された素材を用いて物理化学プロセスにより新たな製品生産を行う 4. エネルギー回収 (Recover) 熱変換プロセス 生物学的プロセスを用いて廃棄物からエネルギー回収 コンポストのような栄養物の回収 5. 処分 (Dispose)
植物 ( 生産者 ) 生態学 食物連鎖 微生物 ( 分解者 ) 動物 ( 消費者 ) 地球生命系の活動持続条件 光合成者 ( 植物 ) 物質循環 運搬者 ( 動物 ) 土壌形成者 ( 微生物 日陰の動植物 ) 多種多様な生き物が地球上でそれぞれの役割を果たすことにより地球環境制御システムを形成し 生命活動を持続している
エントロピー エンタルピー 自由エネルギーそしてエクセルギー ちょっとだけ熱力学 鉄の酸化反応 2Fe + 1.5O 2 Fe 2 O 3 標準状態における絶対エントロピー :S 0 [J/(K mol)] Fe( 固 ) 27 O 2 ( 気 ) 205 Fe 2 O 3 ( 固 ) 87 エントロピー変化は? 87 - (2 x 27 + 1.5 x 205) = -274.5 [J/(K mol)] エントロピーは 減少 では なぜ鉄は錆びるのか?
エントロピー物のエントロピー :ΔS M 熱のエントロピー :ΔS H ΔS M = - 274.5 [J/(K mol)] 鉄の酸化反応のエンタルピー変化は :ΔH = -824 [kj/mol] ΔS H = 824 1000 298 = 2765 [ J ( K mol) ] 発熱分も合わせたエントロピー変化は : ΔS Total = ΔS H + ΔS M = 2765 275 = 2490 [J ( K mol)] ΔS Total = ΔS H + ΔS M = ΔH T + ΔS M 0 エントロピー増大の法則
化学反応の熱力学を考える際 ΔS M の部分だけをエントロピーとしてとらえ ΔS H の部分はエンタルピー (ΔH) として通常 区別する ΔS Total = ΔH T + ΔS M の両辺に -T をかけると TΔS Total = ΔH TΔS M ΔG これを Gibbs の自由エネルギー変化という
したがって 定温下では : 自由エネルギーの減少する方向 = エントロピーの増大する方向 自然現象は 自由エネルギーの減少する方向に進行する エントロピー増大則と同義
自由エネルギーの物理的意味は何だろう? G = H T S H = G +T S 系に含まれるエネルギー モノにくっついているので仕事として取り出すことはできない ( 束縛エネルギー ) 仕事として取り出せるエネルギーの最大値 自由に使える可能性のあるエネルギー 自由エネルギーの減少は 利用可能なエネルギーの減少を表す
仕事 ΔG 原料 エンタルピー H 1 反応系 ΔH = H 1 H 2 生成物 エンタルピー H 2 ΔH = ΔG TΔS 発熱 反応で出力する全エネルギー 外部への仕事利用できる仕事 きれいになるのなら正 -ΔG は 等温 等圧下での最大仕事を意味する
エクセルギー (Exergy) 解析入門 近年 熱機関や化学プロセスの効率を評価する際に エクセルギー と呼ばれる状態量がよく用いられる エクセルギー : 大気環境基準の最大仕事 ( 環境と熱平衡にない系が熱平衡状態に到達する間に外部へ仕事をする仕事能力 ) 例えば 化学反応の場合 大気環境下での自由エネルギー変化に等しい エクセルギーが大きいほど 有効な仕事を産み出す能力が高い すなわち エネルギーの 質 が高いと言える エネルギーの質を表す エントロピー は 状況に応じて自由エネルギーやエクセルギーを用いて評価することもできる
各種エネルギーのエクセルギー 電気 電気は 原理的には 100% 仕事に変換できる 電気エネルギー 10 [kj] は エクセルギーも 10 [kj] 熱 温度 T の熱は 環境温度 T 0 を低温熱源とするカルノーサイクルで変換した時に得られる仕事として評価 例えば 100 で10 [kj] の熱エネルギーは : 373 298 10 [kj] = 2.01 [kj] 373 化学反応 反応系を環境温度 T 0 とした等温変化を 環境圧力 P 0 で行った場合の自由エネルギー変化 環境条件 : 25 1atm なら 標準生成自由エネルギー変化に等しい
[12] バイオプロセスは 省エネになるか? 生物反応は 常温 常圧で進むから省エネになる ということを しばしば耳にするが これは本当か? 一例として エチレンを酸化してアセトアルデヒドを合成する反応を考える エチレンと酸素が共存する系では 触媒を適切に選択することにより エチレンオキシド ( 銀触媒 ) 二酸化炭素 + 水 ( 白金など 自動車のマフラーに利用 ) アセトアルデヒド (2 価パラジウムイオン ) などが合成できる 触媒 : 特定の経路の反応速度を選択的に加速
エチレンからアセトアルデヒドを合成する反応 Pd 2+ 触媒 C 2 H 4 + 0.5 O 2 CH 3 CHO ΔG = -200.9 [kj/mol] 120 ΔH = -218.0 [kj/mol] 110 スチーム 25 水 Pd 2+ 水溶液 120 発熱反応 C 2 H 4 O 2 酵素法で行うと 25 +ΔT 水 C 2 H 4 O 2 25 水 酵素水溶液 25 +ΔT
両プロセスにおけるエクセルギーの低下を考える エントロピーは増大 自由エネルギーやエクセルギーは減少 エクセルギーのロス (E loss ) =( プロセスに入る物質とエネルギーのエクセルギー ) ー ( プロセスから出る物質とエネルギーのエクセルギー ) C 2 H 4 + 0.5 O 2 CH 3 CHO ΔG = -200.9 [kj/mol] ΔH = -218.0 [kj/mol] 物質の入出力によるエクセルギー ロス : -ΔG = 200.9 [kj/mol] 発熱反応だから 熱エネルギーが出力される 出力されるエクセルギー = ΔH ( ) T T 0 T
E loss = ( ΔG) ( ΔH) T T 0 T 非生物プロセス E loss = 200.9 218 バイオプロセス E loss = 200.9 218 393 298 393 298 298 298 =148.2 [kj / mol] = 200.9 [kj /mol] 非生物プロセスでは 反応による自由エネルギーの低下のうち一部を有効なエネルギー ( エクセルギー ) として回収できる! この熱を 活用 すれば 非生物プロセスの方が省エネになる このような熱利用を前提とすれば 発熱反応高温化吸熱反応低温化エネルギー効率向上
酵素反応の用途 1. 酵素でないとできない反応 ( 高効率 高純度など ) 2. 常温で ΔG の小さい反応 例 ) ブドウ糖から果糖への異性化プロセス 3. リサイクル性に優れた材料 ( バイオポリマー ) エクセルギーを計算すれば確かに 高温プロセスの方が有利なのだが 本当に高温プロセスの方が省エネになるのか? 高温で反応するためには (1) 原料を昇温したり (2) 冷えないように保つのにエネルギーを消費しないのか?
(1) 原料の昇温は 生成物を冷やす熱で行えばよい 発熱反応装置 原料 製品 20 約 20 熱 約 120 120 120 熱スチームも得られる (2) 熱を加えないと冷める と考えるのは ビーカーのような小さい容器を頭に描くための誤解 発熱量は 体積 に比例するが 放熱量は 表面積 に比例する
一辺 1[m] の立方体の体積は V = 1 m 3 表面積は S = 6 m 2 各辺を 10 分割すると 一辺 0.1 [m] の立方体が 1000 個できる V = 1 m 3 S = (0.1) 2 x 6 x 1000 = 60 m 2 一辺を 1/10 にすると 単位体積あたり ( 発熱量あたり ) の 表面積 ( 放熱面積 ) は 10 倍に増える 放熱したければ 小さく / 細く 放熱したくなければ 大きく / 太くすればよい
恒温動物のエネルギー消費 E s = 4.1w 0.751 E s w 標準代謝量 [W] 体重 [kg] 体重当たりのエネルギー消費 ( 代謝率 )η [W/kg] は η = 4.1w 0.249 体重あたりでは ネズミの発熱量の方がウシよりも大きい もしも ネズミがウシと同じくらい低い代謝率ならば 体温を保つためには 毛皮の厚さは 20 cm 必要 もしも ウシがネズミと同じくらい高い代謝率なら 放熱できず 熱がたまって体温が 100 を越える
本日のチェックポイント (1) 自然現象は系全体の自由エネルギーが ( 減少 増大 ) する方向エントロピーが ( 減少 増大 ) する方向 に進行する (2) エクセルギーとは 大気環境基準での ( ) 仕事を 表す 化学反応では 通常 標準生成 ( ) 変化 に等しいと考えて良い (3) 廃熱の利用を考慮すれば 常温 常圧で行うバイオプロセスは必ずしも省エネにならない という主張は ( 正しい 誤っている ) (4) 本日の授業で学んだこと 気づいたこと 身につけたこと不思議に思ったことなどを記述してください