7 新潟県保健環境科学研究所年報第 23 巻 8 LC/MS を用いた食肉中のアミノグリコシド系抗生物質分析法の検討 雅楽川憲子, 蒲澤泰子, 丹治敏英 Analysis of Aminoglycoside antibiotics in Meat by Liquid Chromatography/Mass Spectrometry Noriko Utagawa, Yasuko Gawasawa and Toshihide Tanji Keywords: アミノグリコシド系抗生物質 (aminoglycoside antibiotics), 食肉 (meat), 液体クロマトグラフ / 質量分析計 (liquid chromatography/mass spectrometry,lc/ms) 1 はじめに アミノグリコシド系抗生物質 ( 以下,AGs 抗生物質 ) は動物用医薬品として幅広く用いられている. その中でもスペクチノマイシン ( 以下,SPCM), ストレプトマイシン ( 以下,SM), ジヒドロストレプトマイシン ( 以下,DSM), ゲンタマイシン ( 以下, GM) およびネオマイシン ( 以下,NM) の 5 物質は, 牛, 豚, 鶏等に細菌性下痢症や呼吸器系疾患等の感染症治療薬として汎用 1) され, 畜産物中への残留が食品衛生上懸念されていることから, 我が国や Codex 委員会でも残留基準値が設定されている. 畜産物中の AGs 抗生物質の分析法は高速液体クロマトグラフ 3,4), 微生物学的試験 5,8), 液体クロマトグラフ / 質量分析計 ( 以下,LC/MS) 2,7), 液体クロマトグラフ / タンデム質量分析計 6,9,1,11) による分析等の報告がある. また, 厚生労働省の通知試験法 12) にも GM 試験法と DSM,SM,SPCM および NM 試験法が定められている. その DSM,SM,SPCM および NM 試験法は, 試料を 1% メタリン酸溶液で抽出し,ODS ミニカラムに負荷し, 保持されず流出した AGs 抗生物質にイオンペア試薬を加えて再コンディショニングした同ミニカラムに再負荷した後, メタノールで溶出したものを試験溶液とする方法である. 当所でもこれに従い分析したが, 十分な回収率を得ることができなかった. その原因が試験溶液の調製方法にあると考えられたため, 分析法の検討を試みた. さらに, その結果から,SPCM,SM,DSM,GM および NM の 5 物質の一斉分析法を検討したので報告する. 2 実験方法 2.1 試料市販の牛の筋肉および肝臓を用いた. 2.2 試薬等標準品 :SPCM はナカライテスク ( 株 ) 製,SM,NM および GM は和光純薬工業 ( 株 ) 製の生化学用,DSM は MP Biomedicales, Inc. 製の標準品を用いた. 標準原液 : 標準品をそれぞれ 1,μg/ml 力価になるように, メタノール : 水 (5:5) 混液に溶解して調製し, 冷凍保存した. 標準混合溶液 : 各標準原液を適当量採り, メタノール : 水 (5:5) 混液で 1μg/ml 力価の標準混合溶液を調製した. この標準混合溶液から, 添加回収試験用は水でさらに希釈したものを, 検量線作成用は.5mol/l ヘプタフルオロ酪酸溶液 : アセトニトリル (8:) 混液 ( 以下, 移動相溶液 ) でさらに希釈したものを用いた. 試薬 : アセトニトリルおよびメタノールは和光純薬工業 ( 株 ) 製高速液体クロマトグラフ用,n- ヘキサン, トリクロロ酢酸, リン酸一カリウムおよび水酸化ナトリウムは同社製試薬特級, 塩酸は同社製有害金属測定用,1- ヘプタンスルホン酸ナトリウム 表 1 LC/MS 測定条件 <LC 部 > カラム Symmetry C 18 3.5μm,2.1mm 15mm(Waters 製 ) 移動相 A 液 :.5mol/lHFBA 溶液,B 液 : アセトニトリル ( グラジェント ) グラジェント条件 A 液 :9%( 分 ) 4%( 分 ) 9%(.1 分 ) 9%(5 分 ) 流量.2ml/ 分カラム温度 4 注入量 5μl <MS 部 > イオン化モード ESI(+) キャピラリー電圧 3.5kV コーン電圧 35kV ソースブロック温度 1 デゾルベーションガス温度 35 デゾルべーションガス流量窒素ガス,36l/ 時間コーンガス流量窒素ガス,6l/ 時間サンプルコーン電圧 SPCM,SM,DSM:6V,NM:4V,GM:3V SIR SPCM:333,351,SM:582,263,DSM:584,263 GM:322,478,NM:161,615
新潟県保健環境科学研究所年報第 23 巻 8 71 ( 以下,HSA) は同社製イオンペアクロマトグラフ用, ヘプタフルオロ酪酸 ( 以下,HFBA) は同社製アミノ酸配列分析用, 2NA(EDTA 2Na)( 以下,EDTA) は同社製試験研究用を用いた. ミニカラム : ジーエルサイエンス ( 株 ) 製 GL-Pak PLS2 27mg/6ml を用いた. 2.3 装置 LC/MS :LC 部は Waters ( 株 ) 製 2695 Separations Module,MS 部は Waters( 株 ) 製 ZQ を用いた. メーター計 :( 株 ) 堀場製作所製 /IONMETER F-24 を用いた. 2.4 LC/MS 測定条件 LC/MS 測定条件を表 1 に示した. 3 結果と考察 3.1 抽出液の検討 3.1.1 抽出液の調製方法の検討通知試験法 12) では 1% メタリン酸溶液を用いて抽出することになっているが,5 物質ともほとんど回収できなかったため, 石井らの報告 4,1,11) により抽出溶媒および抽出液の調製方法を検討した. 抽出溶媒を 2% トリクロロ酢酸 +1mM リン酸一カリウム +.4mMEDTA 溶液に変えたところ,5 物質はある程度回収されるようになった. そのため, 抽出溶媒は 2% トリクロロ酢酸 +1mM リン酸一カリウム +.4mMEDTA 溶液を用いるこ 試料 5g 抽出溶媒 3ml ホモジナイズ (2 分間 ) ヘキサン 4ml ホモジナイズ (1 分間 ) 遠心分離 (3,rpm,1 分間 ) 水層 合わせる 抽出溶媒 5mlに定容ヘキサン 5ml 振り混ぜる 遠心分離 (3,rpm,5 分間 ) 水層を回収 抽出液 残留物 +ヘキサン層抽出溶媒 ml ホモジナイズ (2.5 分間 ) 遠心分離 (3,rpm,1 分間 ) 水層 残留物 + ヘキサン層 : 2% トリクロロ酢酸 +1mM リン酸一カリウム +.4mMEDTA 溶液 図 1 抽出液の調製方法 とにし, 抽出液の調製方法は図 1 のとおり行うこととした. 3.1.2 精製ミニカラムの検討試験溶液を調製するとき, 通知試験法 12) では ODS ミニカラムを用いることになっているが,Bond Elut-C18(5mg) ではほとんど回収できなかったため, 他のミニカラムを検討した. Sep-Pak Plus tc18(4mg),oasis HLB(6mg), Sep-Pak Plus PS-2(265mg),GL-Pak PLS2(27mg) 等を用いて検討した結果, 回収率, クロマトグラム上の妨害ピークの有無および目詰まりの有無等から総合的に GL-Pak PLS2 (27mg) が適していると判断した. 以後, このミニカラムを用いて抽出液を精製することとした. 3.1.3 抽出液における最適 の検討草野らの報告 5) によると, ミニカラムに負荷する抽出液の が回収率に大きく影響することから, 抽出液の最適 について以下のとおり検討した. 牛筋肉を用いて, 図 1 に従って調製した抽出液に SPCM,SM,DSM および NM が.5ppm, GM が.1ppm になるように標準物質を添加した後,1N 又は.1N 塩酸溶液および水酸化ナトリウム溶液で 2.,3., 4.,5.,6.,7.,8.,9.,1.,11. にそれぞれ を調整した. ミニカラムはメタノール 1ml, 精製水 1ml および飽和 EDTA 溶液 5ml でコンディショニングし, それぞれの に調整した標準物質を含む抽出液を負荷し, 水 1ml で洗浄した後,15% メタノール溶液 1ml で溶出させ, この後, さらにメタノール 1ml で溶出させた.15% メタノール溶液およびメタノール溶出液はそれぞれ,4 以下で減圧濃縮, 乾固した後, 移動相溶液で 2.5ml に定容し, 試験溶液とした. これを LC/MS で測定し, それぞれの における回収率を求めた. その結果を図 2 に示した. SPCM では 8. が最も高回収率で, ほぼ 1% であった. SM および DSM では 6.~9. が高回収率で,7 ~9% であった.1. 以上になると,15% メタノール溶液では回収されず, メタノールでのみ回収された. GM では 2. が最も高回収率で, 約 8% であった. 1. 以上になると,15% メタノール溶液では回収されず, メタノールでのみ回収された. NM では 2. が最も高回収率で, 約 9% であった. 1. 以上では 15% メタノール溶液でもメタノールでも回収されなかった. の調整により, イオンペア試薬を加えなくてもミニカラムに保持できること, また,15% メタノール溶液でもある程度の溶出が可能であることがわかった. 以上のことから,AGs 抗生物質 5 物質を効率よく回収するために, 酸性側およびアルカリ性側の抽出液を同時に調製することとした. 抽出液の酸性側における最適 は GM および NM の回収結果から 2. とし, 抽出液のアルカリ性側における最適 は SPCM,SM および DSM の回収結果から平均的に判断して 8. とした. 牛筋肉の抽出液の を メーター計で測定したところ 2.6 であったことから, 酸性側の抽出液は 調整を行わないこと ( 以下, 無調整抽出
72 新潟県保健環境科学研究所年報第 23 巻 8 1 8 6 4 1 8 6 4 1 8 6 4 1 8 6 4 1 8 6 4 SPCM 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 1. 11. SM 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 1. 11. DSM 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 1. 11. GM 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 1. 11. NM 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 1. 11. 図 2 AGs 抗生物質の各 における回収率 :15% メタノール溶液 : メタノール 液 ) にし, アルカリ性側の抽出液のみ 8. に調整を行うこと ( 以下,8 調整抽出液 ) とした. なお, 溶出液として 15% メタノール溶液を用いた理由は, メタノールで溶出すると, クロマトグラム上に妨害ピークが認められ, 測定困難であったためである.SPCM の分析法を検討した大口らの報告 3) によると, ミニカラムから妨害成分が溶出するのを抑えるために, 溶出液としてメタノールよりも 15% メタ ノール溶液 ( 肝臓については 6%) を用いた方が良好な結果が得られたことから,15% メタノール溶液を用いたところ, クロマトグラム上の妨害ピークが軽減され, 測定できるようになった. 3.1.4 抽出液の精製方法の検討 無調整抽出液および 8 調整抽出液の精製方法は, 通知試験法 12) に基づいて図 3 のように検討した. SPCM,SM,DSM および NM が.5ppm,GM が.1ppm になるよう標準物質を添加した牛筋肉を用いて, 図 1 のとおりに調製した. 抽出液を図 3 に従って精製し, ミニカラム負荷後, メタノールで溶出した画分 ( 図 3 の溶出液 Ⅰ) および流出液にイオンペア試薬を加えて再負荷し, メタノールで溶出した画分 ( 同) について,AGs 抗生物質 5 物質の回収率を求めた. その結果を表 2 に示した. 無調整抽出液では,AGs 抗生物質 5 物質とも溶出液 Ⅰ から約 5% 以上回収され, から SM および DSM が 1~3% 回収された. 8 調整抽出液では,NM を除く AGs 抗生物質 4 物質は溶出液 Ⅰ から 5% 以上回収され, から DSM のみ回収され, その回収率は 1% 未満であった. 無調整抽出液又は 8 調整抽出液 ml(2g 相当 ) ミニカラム 注 ) に負荷 ( 予め, メタノール1ml, 精製水 1mlおよび飽和 EDTA 溶液 5mlでコンディショニング ) 精製水 3mlを2 回洗浄ここまでの流出液 + 洗浄液を回収メタノール 1ml.1mol/lHSA 溶液 3ml ミニカラム 注溶出液 Ⅰ ) に再負荷 ( 予め, メタノール1ml, 精製水 1mlおよび飽和 EDTA 溶液 5mlでコンディショニング ) 精製水 3mlを2 回洗浄メタノール 1ml 注 ): で使用したミニカラムは でも再使用 図 3 抽出液の精製方法の検討 表 2 抽出液の精製方法の検討結果 (n=3) 添加濃度 (ppm).5.5.5.1.5 無調整 49.8 47.9 76.1 16.4 63.9 溶出液 Ⅰ 抽出液 3.5 6.6 2.7 19. 8.2. 3.6 13.7....7 15.3.. 8 調整 14.1 78.6 9.4 56.9. 溶出液 Ⅰ 抽出液 2.6 4.1 7.4 15.9... 8..... 3.6.. 上段は平均回収率, 下段は変動係数
新潟県保健環境科学研究所年報第 23 巻 8 73 以上のことから, 無調整抽出液は, イオンペア試薬を加えた後のミニカラムで再溶出する操作を行うことにし,8 調整抽出液は, この操作を省略した. 無調整抽出液中の SM および DSM 以外の 3 物質につ ml(2g 相当 ) ミニカラム 注 ) に負荷 ( 予め, メタノール1mlおよび精製水 1mlでコンディショニング ) 精製水 3mlを2 回洗浄ここまでの流出液 + 洗浄液を回収 15% メタノール 1ml.1mol/lHSA 溶液 3ml ミニカラム 注溶出 ) に再負荷 ( 予め, メタノール1mlおよび精製水 1mlで再コンディショニング ) 精製水 3mlを2 回洗浄メタノール 1ml 溶出 合わせる 4 以下で減圧濃縮, 乾固移動相溶液筋肉の場合,2.5mlに定容肝臓の場合,5mlに定容 試験溶液 LC/MS 測定測定可能な物質 :SM,DSM,GM,,NM 注 ): で使用したミニカラムは でも再使用 図 4 無調整抽出液の試験溶液の調製方法 ml(2g 相当 ) 1N 又は.1N 水酸化ナトリウム溶液 8に調整 ミニカラムに負荷 ( 予め, メタノール1ml, 精製水 1mlおよび飽和 EDTA 溶液 5mlでコンディショニング ) 精製水 3mlを2 回洗浄メタノール 1ml 溶出 4 以下で減圧濃縮, 乾固移動相溶液筋肉の場合,2.5mlに定容肝臓の場合,5mlに定容 試験溶液 LC/MS 測定測定可能な物質 :SPCM,SM,DSM,GM 図 5 8 調整抽出液の試験溶液の調製方法 いてクロマトグラム上の妨害ピークが認められた. 特に NM で妨害が顕著であり測定困難であったため,15% メタノール溶液で溶出させる操作が必要であった. 当初, ミニカラムのコンディショニングにはメタノールおよび精製水および飽和 EDTA 溶液を用いていたが, 無調整抽出液をミニカラムに負荷させると,EDTA の析出により, ミニカラムが目詰まりを起こし, 溶出にかなりの時間を要した. そこで, メタノールおよび精製水でコンディショニングしたミニカラムで回収率を確認したところ, 大きな違いは認められなかったため, 無調整抽出液から試験溶液を調製する場合, メタノールおよび精製水でミニカラムをコンディショニングすることにした. 以上の検討結果から, 無調整抽出液および 8 調整抽出液の試験溶液の調製方法は, それぞれ図 4 および図 5 のとおり行うこととした. 3.2 添加回収試験添加濃度は, 試料に SPCM,SM,DSM,GM および NM を残留基準値の濃度になるよう設定した. 牛筋肉には SPCM, SM,DSM および NM が.5ppm,GM が.1ppm になるよう, 牛肝臓には SPCM および GM が 2ppm,SM,DSM および NM が.5ppm になるようそれぞれ試料に添加した. 図 1, 図 4 および図 5 に従って,n=3 で添加回収試験を行った. その結果を表 3 および表 4 に示した. SPCM は 8 調整抽出液から 13~118% 回収され,NM は 無調整抽出液から 55~67% 回収された. SM,DSM および GM の 3 物質は双方の抽出液から 57 ~115% 回収され, 抽出液の違いによる大きな差はあまり認められなかった. 表 3 牛筋肉の添加回収試験結果 (n=3) 添加濃度 (ppm).5.5.5.1.5 無調整平均回収率 45.2 114.5 94.9 73. 66.8 抽出液 変動係数 5.2 5. 3.1 17.3 8.2 8 調整 平均回収率 117.6 17.8 114.9 77.8. 抽出液 変動係数 1.4 9.4 2.8 17.8. 表 4 牛肝臓の添加回収試験結果 (n=3) 添加濃度 (ppm) 2..5.5 2..5 無調整平均回収率 28.7 17.7 11.9 56.6 55.2 抽出液 変動係数 3.5 13.6 13.1 11. 13.1 8 調整 平均回収率 13. 94.9 87.8 62.. 抽出液 変動係数 7.2 3.5 8.4 7.3. 3.3 一斉分析法の検討牛肝臓の抽出液の を メーター計で測定したところ, 牛筋肉と同様,2.6 であった. 無調整抽出液は酸性下でミニカラムに負荷することになる. SPCM は 無調整抽出液よりも 8 調整抽出液の方が
74 新潟県保健環境科学研究所年報第 23 巻 8 高回収率であり, 変動係数も小さいことから, アルカリ性の抽出液から測定できる. SM,DSM は 無調整抽出液でも 8 調整抽出液でもどちらとも 8% 以上の回収率であり, 酸性およびアルカリ性の抽出液から測定できる. GM は 無調整抽出液でも 8 調整抽出液でも 56~ 78% の回収率で, 酸性およびアルカリ性の抽出液から測定できる. 牛筋肉の GM のばらつきが大きい原因は,LC/MS の検出感度が低い上に, 添加濃度も.1ppm と低いためと考えられた.GM の回収率が低い原因は, ミニカラムが最適でない可能性や抽出液の が最適でない可能性が考えられた. NM は 8 調整抽出液では回収できず, 無調整抽出液では 55~67% と回収率はやや低いが, 酸性の抽出液から測定できる.NM の回収率が低い原因は,GM と同様, ミニカラムが最適でない可能性や抽出液の が最適でない可能性が考えられた. 抽出液の は 2.6 であることとアルカリ性の抽出液では回収できなかったことから, 抽出液の を 2 以下に調整すると NM の回収率が高くなる可能性があると考えられた. 以上のことから, 抽出液を 2 つに分けて, 酸性の抽出液から NM を測定し, アルカリ性の抽出液から SPCM を測定し, 双方の抽出液から SM,DSM および GM を測定し, データの信頼性を評価する方法が有用な方法と考えられた. 4 まとめ 残留基準値が設定されている AGs 抗生物質 5 物質の一斉分析法を検討するために, 牛の筋肉および肝臓による添加回収試験を行った. その結果,SPCM は牛の筋肉および肝臓でも 8 に調整したアルカリ性の抽出液から 13~118%, NM は 無調整の酸性の抽出液から 55~67%,SM, DSM および GM の 3 物質は双方の抽出液から 57~115% の回収率が得られた.GM および NM の低回収率の原因は, ミニカラムが最適でない可能性や抽出液の が最適でない可能性があり, 今後,GL-Pak PLS2 以外に他のミニカラムの検討や抽出液の 調整の検討が必要と考えられた. 厚生労働省通知の 試験法の妥当性評価ガイドライン 13) では真度 精度の評価基準が設定されており, それによると添加濃度が.1ppm のとき真度が 7~1% および室内精度が % 未満, 添加濃度が.5ppm 以上のとき真度が 7~ 1% および室内精度が 15% 未満とされている. この評価基準を参考にして評価すると,GM および NM の回収率は基準にやや満たなかったが, 変動係数はすべて基準に満たし, 比較的良好な結果が得られた. 今回検討した一斉分析法は, 通知試験法 12) 等の分析方法として有用であると考えられた. 2) 堀江正一, 吉田栄充, 菊池好則, 中澤裕之 : 食衛誌,42, 374(1). 3) 大口克志, 高原ひろみ, 松本真里子, 中島千絵, 城戸靖雅 : 食衛誌,37,319(1996). 4) 浜本好子他 : 食衛誌,44,114(3). 5) 草野友子, 神田真軌, 八卷ゆみこ, 平井昭彦, 鎌田国広 : 東京健安研年報,54,142(3). 6) Anton Kaufmann,KatHryn Maden:AOAC,88, 1118(5). 7) 斉藤ひろみ他 : 第 86 回日本食品衛生学会学術講演会講演要旨集,p.87(3). 8) 藤田和弘他 : 第 87 回日本食品衛生学会学術講演会講演要旨集,p.59(4). 9) 小園正樹他 : 第 9 回日本食品衛生学会学術講演会講演要旨集,p.59(5). 1) 梶田弘子, 阿久津千寿子, 畠山えり子, 小向隆志 : 第 93 回日本食品衛生学会学術講演会講演要旨集,p.63 (7). 11) 石井里枝, 堀江正一,James D. MacNeil: 第 94 回日本食品衛生学会学術講演会講演要旨集,p.66 (7). 12) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 : 食品に残留する農薬, 飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について, 平成 17 年 1 月 24 日, 食安発第 1241 号. 13) 厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 : 食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン, 平成 19 年 11 月 15 日, 食安発第 1151 号. 5 引用文献 1) 中澤裕之, 堀江正一 : 動物用医薬品データブック 6.