資 料 Δωδεκαήμερο Δωδεκαήμερο and Food culture in Greece Satoko Tsurushiin, Shizuko Tsurushiin, Daisuke Yamaguchi Seigakuin University,, Tozaki, Ageo-shi Saitama, Junior College Seitoku University,, Iwase Matsudo-shi, Chiba, Εθνικό και Καποδιστριακό Πανεπιστήμιο Αθηνών, Πανεπιστημιούπολη, Ζωγράφου,, Αθήνα Greek culture has had an enduring influence on the West/Western countries. There is an abundance of studies on ancient Greek language as well as philosophy and arts. However, there is comparatively very little reported on the topic of food culture, especially those related to the traditionally celebrated annual events. Therefore, we examined the Greek Orthodox Δωδεκαήμερο to study the celebratory food culture among the people living in urban areas and in rural provinces of Greece. The outcome of this study pointed out the following. In the urban areas there is a weakening of observances of traditional customs. This is likely due to diversification of life-style tends to change people s sense of values. On the other hand, in the rural province, a traditional celebratory food, Κοτόσουπα, has always been cooked for annual events. It became evident that food culture is influenced by the natural setting as well as by the religious environment that surround various groups of people. 1. はじめに Πάσχα Καθαρά Δευτέρα Δωδεκαήμερο 2. 方法 2.1. 調査時期及び調査地域 Αθήνα Λάρισα Αρχαία Μεσσήνη
Vol. No. 図 1 調査地の概略図 Καλαμάτα γενέθλια ονομαστική γιορτή ταβέρνα εστιατόριο 表 1 11 月のオノマスティキ ヨルティ ( 名前の日 ) 3. 結果及び考察 3.1. 年末年始の日程と名前の日 Δωδεκαήμερο Χριστούγεννα Πρωτοχρονιά Άγια Θεοφανεία
ギリシアのドデカイーメロ Δωδεκαήμερο と食文化 3 2 都市部の年末年始 12月に入ると 都市部の街では通りや店先に電飾の星 が幾重にも飾られ 夜になると幻想的な光景が見られる 路地の花屋ではモミの木やヒイラギの枝 ザクロやリン ゴを組み合わせた飾り物が売り出される ギリシアでモ ミの木が高貴な木とされるのは 枯渇を知らぬ瑞々しい 緑の葉を付けている常緑樹であるため生命の象徴と考え られているからである ザクロやリンゴの実を木の枝に 付けて飾るのは 実りをもたらすものとして豊作 5 への 願いがこめられている 写真 1 この時期 市内を走 る路線バスの行き先表示にも しばしば祝いの言葉が表 示 さ れ る フ リ ス ト ゥ ゲ ナ 降 誕 祭 前 は ΚΑΛΑ ΧΡΙΣΤΟΥΓΕΝΝΑ 祝降誕祭の意 の文字が その後 は ΚΑΛΗ ΧΡΟΝΙΑ 祝新年の意 あるいは ΧΡΟΝΙΑ 写真 1 路地の花屋で売られている飾り ザクロやリンゴ ΠΟΛΛΑ おめでとうの意 と大文字で表示され お祝 いの雰囲気を盛り上げる 店もまた普段とは違う様子を見せる 12月25日のフリ ストゥゲナ 降誕祭 前の日曜日になると いつもは日 曜日に閉まる商店や市場 アゴラ が開き 人々はこぞっ て食材や贈り物を買い求め お祝いのための用意をする フリストゥゲナ 降誕祭 を迎えるため 人々はギリシ アの伝統的な菓子メロマカルナ μελομακάρουνα や クラビエス κουραμπιές を家で焼いたり 6 あるいは 市販品を大量に買い求めたりする これらの菓子は 1 あたり 9 ユーロ位で市販されており 写真 2 来客に も振る舞われる さらに 1 月 1 日プロトフロニア 新 年 前の日曜日にも店が開くため 人々の買い物をする 様子に日本の年末を重ねて見ることが出来る 写真 2 市販されているメロマカルナとクラビエス 食事についてみると ギリシア人の家庭の多くは 普 段台所にあるテーブルで食事をする しかし フリストゥ ゲナ 降誕祭 の日は居間にある大きなテーブルに特別 なテーブルクロスをかけ ろうそくや食器も特別なもの を準備する フリストゥゲナ 降誕祭 の日 家族と共にお祝いを するため親戚や友人が集まってくる 居間では暖炉に薪 を燃やしながら遅い昼の食事の用意が整うまで ギリシ ア コーヒー ελληνικός καφές や メタクサ μεταξά と呼ばれるコニャックが供される 普段は暖炉で薪を燃 やすことはあまりなく 親戚等の人が集まる時に焚かれ る ギリシア料理の中心は基本的には肉料理であり こ の日は特別な献立ではなく いつも家庭で食べている料 理が振る舞われる ここでは肉料理の中で豚肉のにんに 写真 3 フリストゥゲナ 降誕祭 の食事 く風味オーブン焼き等の料理を中心に 付け合わせに ジャガイモ スフレ σουφρέ と呼ばれるマカロニの 焼き付け料理等が供された 写真 3 その他 甘い南瓜のパイ γλυκοκολοκυθόπιτα ギ リシア特産のチーズであるフェタ φέτα とグラヴィ これらオーブンを使う料理は前日から準備されている エーラ γραβιέρα の盛り合わせ等が用意され 幾つ サラダはその日に作られ 以下の 3 種類 キャベツと人 もの大皿にたっぷりと盛り付けられる パン ψωμί 参のサラダ λαχανοκαροτοσαλάτα キュウリとトマ と赤ワイン κόκκινο κρασί も欠かすことができない トのサラダ αγγουροντοματασαλάτα レタスのサラ 集まった人達は赤ワインをコップに注いで乾杯し 共に ダ μαρουλισαλάτα が供された 酌み交わし 食事をしながら夜遅くまで賑やかにお祝い 89 161
日本食生活学会誌 Vol.22 No.2 2011 写真 4 手作りのヴァシロピタ 写真 5 ヴァシロピタの切り分け をする 翌26日も祝日であるが 街はひっそりとしてい る 再び 1 月 1 日プロトフロニア 新年 の午後になる と 家族や親戚等が集まり 食事を共にしながらお祝い をする 12月25日のフリストゥゲナ 降誕祭 と比べ 肉料理の種類が減ったり テーブルのろうそくや テー ブルクロスなどが簡略化されていたりする しかし 食後に この日のために用意されたヴァシロ ピタ βασιλόπιτα と呼ばれる スポンジケーキとパン の中間のようなケーキを食べる 7 ヴァシロピタは作物 の実りとこの一年が豊かでありますようにとの願いをこ めて各家庭で作るのが一般的であるが 都市部では市販 もされている ヴァシロピタは丸い形をしており 上に粉砂糖やチョ 写真 6 アギア テオファニア 顕現祭 で十字架を投げる聖職者 コレートで年号が書かれている 写真 4 ヴァシロピ タを切るのはその家の主人の役目である 切る順序は先 ず十字に切って 4 等分にし その一つをキリスト 聖 母 家のために切り分ける 残りの三つはその場にいる 人全員に行き渡るようにさらに切り分ける ヴァシロピ タの中にはコインが入っており コインが当たった人に その年の幸運がもたらされると言い伝えられている そ のため その場にいる人達は切り分ける間 固唾をのん でヴァシロピタを見つめている 写真 5 1 月 6 日にアギア テオファニア 顕現祭 の祝日が あり ギリシア各地で水を清める儀式が行われる 8 そ の日の昼 ギリシア正教の聖職者が十字架を川や海に投 げ込む 写真 6 それを手にした人がその年の幸運を 得ると言われているので 選ばれた若者達は水の中に入 り 我先に拾おうとする 着飾った人々がそれを見に集 まる様子に 日本の正月に行われる福男選びと似たもの が感じられる 写真 7 アギア テオファニア 顕現祭 を境として 街を彩っていた飾りが外され ドデカイー メロは終わる アテネはギリシア各地から多くの人々が移り住み 生 活している所である 都市では人々の生活様式の変化に 伴い価値観が多様化したためか 伝統的な行事や習慣は 162 90 写真 7 川に投げ込まれた十字架を拾おうとする若者達
ギリシアのドデカイーメロ Δωδεκαήμερο と食文化 薄れて来ている ドデカイーメロのための特別な料理は見られないが お祝いの印として 普段供される料理が大皿にたっぷり 盛り付けられる 各家庭で出される料理に違いがあると すれば その多くは出身地の違いに起因するものと考え られる アテネでもメッセニア地方の出身者がドデカ イーメロのお祝い料理としてコトスパを受け継いでいる 様子が見られ 後述の村の年末年始の料理との共通点が ある それでも 家々では日常生活と行事の場面とで食事す る場所 食器等の使い分けがはっきりしており 行事の 意味に対応していることがうかがわれた 1 年の祭歴をみると 1 月は年の初めの月であると同 時に12月に連接しており ドデカイーメロは一連の行事 写真 8 鶏肉と一緒に米をスープで炊いたコトスパ として捉えられるべきものであろう この時期からギリ シア正教最大の行事である春のパスハを心待ちにして断 食や幾つもの祝日を含めた長い準備期間が始まるのであ る 3 3 村の年末年始 都市部に対し村の年末年始はどのようなものかを見て いく 調査をしたアルヒェア メッシニ村は メッセニ ア地方のカラマタ近郊に位置する メッセニア地方南部 は海岸部のカラマタから北へ向かって緩やかに広がる平 野である その一帯で生産されるカラマタ産のオリーブ はカラモン Καλαμών と呼ばれ ギリシア随一の品 種として知られており この地域の豊かさが想起される アルヒェア メッシニ村周辺では古くから米が生産され 写真 9 コトスパを煮込む前の材料 ていたが 現在ではほとんど生産されていない 村では 古くからお祝い料理として 鶏肉と一緒に米をスープで 炊いた料理 コトスパ κοτόσουπα が供されている 写 真 8 かつて この地域では米が生産され 鶏肉 9 10 も入手できたので お祝い事にコトスパがご馳走として 作られてきた 村の古老からは 今ほど食べ物がなかっ た時代 自分たちにとって米を入れたスープは最高のご 馳走だった と よく聞かされる 現在でも12月末から 1 月にかけ 村の家々のお祝い料理として コトスパは ご馳走として振る舞われ 継承されてきたことがうかが われる コトスパはギリシア語で鶏を意味するコッタ κότα とスープ料理を意味するスパ σούπα が合わさったも のである スープというよりは とり雑炊 のようで 日本人にもおいしく食べられるギリシア料理の一つであ 写真10 アヴゴレモノとスープを混ぜる る コトスパの作り方は 鶏肉と香草を煮てだしを取り 黄を加える さらにコーンスターチ少量とレモン汁を加 その中に米を入れて煮る 写真 9 途中 アヴゴレモ えてよく混ぜ合わせる イタリアでもソースとして用い ノ αβγολέμονο を加え とろみと酸味をつける 写 られている11 コトスパの出来は 日本料理と同じよう 真10 アヴゴレモノはギリシア語の卵を意味するアヴ にだしの取り方と素材のうま味に左右される ゴ αβγό とレモンを意味するレモニ λεμόνι が合 今日のように 村でも食材が豊富に入手できるように わされた言葉で 卵レモンペーストのことである いろ なると フリストゥゲナ 降誕祭 に村で食べられる料 いろなギリシア料理にソースとしても用いられている 理はコトスパだけではなく 家々の好みに応じた様々な 作り方は卵白をミキサーにかけ固く泡立て その中に卵 料理が用意されるようになっている 年によって料理が 91 163
Vol. No. 4. まとめ 写真 11 プロトフロニア ( 新年 ), アギオス ヴァシリオスに扮した村長と子ども達 Χρήστος Χρύσα Άγιος Βασίλειος oßελíας μαγειρίτσα 文献 pp. Kαθαρά Δευτέρα p. Ημερολόγιο Ερατώ εκδόσεις, Αθήνα p. Βαλαβάνης, Α.: Αυθεντική ελληνική μαγειρική, Φοτόραμα, Αθήνα, p. Μαστρομιχαλλάκη, A., Ζούρας, Π.: Έρχονται Χριστούγεννα... Θα ρθουν και τα Φώτα, Εκδόσεις Ακρίτας, Αθήνα, p. p.
Δωδεκαήμερο Λόη Μ., Λινάρδου Γ., Μακρογαμβράκης, Θ., Αγαθονικιάδου, Α. Αρχαίων Δείπνον-Συνταγές της Μαρίας Λόη, Μιλήτος, Αθήνα Dalby, A., Grainger, S. : The Classical Cookbook / p. p. Flandrin, J., Montanari, M. Histoire de I alimentation / pp.