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目次第 1 部はじめに 1 1. 研究の背景 2. 先行研究第 2 部投稿論文 ソフトボールにおける女子チーム指導者のコンピテンシーに関する研究 Ⅰ. 緒言 5 1. 背景 2. 課題 3. 目的 Ⅱ. 方法 7 1. 質問紙作成の為のインタビュー調査 1). インタビュー対象者 2). 実施期間 3). 調査方法 4). キーワード抽出および質問紙の作成 2. アンケート調査 1). 調査方法 2). 実施期間 Ⅲ. 結果 9 1. 女子ソフトボール指導者のコンピテンシー 1). インタビュー調査による質的コーディング 2). アンケート調査によるコンピテンシーの分類 2. 女子ソフトボール指導者の特徴 1). 成績優秀指導者 2). 日本女子 1 部リーグ輩出指導者 Ⅳ. 考察 13 1. コンピテンシー尺度について 2. 好業績を生む要因 3. 本研究の意義と課題 Ⅴ. 結論 17 Ⅵ. 謝辞 17 Ⅶ. 引用参考文献 18 第 3 部資料 21

第 1 部 はじめに 1. 研究の背景 2011 年, ドイツでおこなわれた女子サッカー W 杯決勝で,FIFA ランキング 1 位のアメリカを破り, なでしこ JAPAN が優勝した. その後, なでしこ JAPAN は 2011 年の流行語大賞となり, 選手やなでしこリーグへの注目度は急上昇した. 全日本女子サッカー選手権が開催されたばかりの約 30 年前には予想だにできなかった事態である. 育成から強化への着実な歩みが実を結んだ結果であったと言えよう. 注目度が増し, メディアへの露出機会が増加している女子サッカー選手ではあるが, 周囲の騒がしさとは対照的に, どの選手からも,W 杯優勝後に沸いた なでしこフィーバー を一過性に終わらせないようにと, 女子サッカーの 今後 を見据えた発言が聞かれた. このことは, たとえ国際大会で好成績を収めても, その人気や関心は長続きせず, 国内の女子スポーツ環境は好転しづらいということを, 選手自身が誰よりも知っている証でもある. なでしこ JAPAN の歓喜より 3 年はやく, 日本女子ソフトボールチームは北京五輪で金メダルを獲得した. 実に 1976 年のモントリオール五輪での女子バレーボール以来,32 年ぶり 3 回目の女子団体種目での金メダルであった. また北京五輪は, 女子ソフトボール競技がオリンピックでの正式種目になってから 4 回目の大会でもあった. 日本の女子ソフトボールチームは, 正式種目となった最初のアトランタ五輪では 4 位とメダルには手が届かなかったものの, 次の 2000 年シドニー五輪では銀メダルを獲得し, 次のアテネ五輪でも銅メダルに輝いた. まさに日本の女子ソフトボールは世界トップレベルと言える. 日本の女子ソフトボールチームがオリンピックでメダルを獲得するようになると, 女子ソフトボールへの関心や注目度は急激に高まるようになり, 代表選手が所属する実業団チームを観戦するため, 多くの観客が球場へと足を運ぶようになった. なでしこフィーバー のような盛り上がりは, 女子ソフトボールにおいてはすでに起こっていたのだ. しかし,2005 年 7 月の IOC 総会で,2012 年ロンドン五輪から女子ソフトボールを正式競技から除外することが決まったことと相まって, 不況のあおりを受けた企業が, 女子ソフトボールチームを廃部するという事態も広がった. 日本女子ソフトボールリーグ ( 以下, 日本リーグ ) に加盟するチームも,1980 年代に存在していたチーム数よ 1

りもおよそ 5 分の 1 にまで落ち込んでいる. このような危機的状況に直面しながらも, 女子ソフトボール界は, 日本における女子のチームスポーツとして今後も発展していくために, どのように普及, 育成し, 強化へつなげていくべきかという将来に向けたビジョンが重要である. その議論には, 協会の役員のみならず, 現場の指導者や選手の声も反映されなければならないだろう. 2011 年には, スポーツ施策の推進を国の義務とした スポーツ基本法 が公布され, 指導者の養成および資質の向上が施策の一つに掲げられた. この法律の成立によって, 選手強化とともに, 競技文化の醸成のためには, その競技を支える次世代の育成に携わる指導者へのアプローチも, これまで以上に重要であることが確認された. 日本では, 学校単位の競技会が多く, その競技結果が非常に高く評価される 勝利至上主義的指導法 を選択する指導者が少なくない ( 俵,2003). 教育的指導が求められる学校スポーツでは, とかく勝利至上主義は非難される傾向にもあるが, 指導者の指導方法や考え方が, 好成績に結びつくという逆方向からの捉え方は, これまであまりなされてきてはいない. 本研究では, 女子ソフトボールでチームを好成績に導き, 高い競技レベルの選手を輩出する指導者の態度や行動, 信念に注目することを目的とし, そのような漠たる 力 を評価するために, コンピテンシー という概念に基づいて数値化することとした. 2

2. 先行研究コンピテンシーは,1970 年代から主に経営学や心理学分野で研究が進むテーマとなり,90 年代に入ると, アメリカ企業の人的資源管理の指標として用いられる概念となった ( 谷内,2001;Works, 2003; 高橋,2011). 日本においても,1990 年代後半から人事評価に活用されるようになってきた ( 高橋,2011). コンピテンシーの定義は, 明確な共通定義が存在せず, またヨーロッパとアメリカにおいても定義の内容が異なると指摘されているように (Works,2003), 文化によってもコンピテンシーの捉え方には違いがある. 高橋もコンピテンシーの定義は多義的であるとし, 文献の中でこれまで使われてきた 6 つの定義を紹介している (2011, p.2-3) 1. そして, これらの共通点として 1) 高業績と関連すること,2) 行動として顕在化すること,3) 職務遂行能力にかかわること, を挙げ 職務上の高い成果や業績と直接に結びつき, 個人が内的に保有するが, 行動として顕在化する, 職務遂行能力にかかわる新しい概念 (JMAM コンピテンシー研究会,2002) という定義を採用している (p.3). 本研究では, これまで 力 というように, 漠然とした表現で捉えられがちであった指導者の態度, 行動, 信念等を コンピテンシー という概念に置き換え, 数値化することで, 好成績をおさめるスポーツ指導者の特徴を把握することを目指す. Boyatzis (1982) は, 目標と行動の管理 や リーダーシップ 等を含む 6 領域 21 要素からなる コンピテンシー モデル を,Spencer & Spencer (1993) は, 援助 対人支援 などを含む 6 領域 20 要素からなる コンピテンシー ディクショナリー をそれぞれ提唱している 2. しかしいずれも, アメリカの職場に適用されるモデルであり, 自己を積極的にアピールすることよりも, 他者との協調や組織を重視する姿勢が求められる日本では, アメリカとは異なる評価結果につながることが予想される. スポーツ指導者のコンピテンシーに関する研究には, 冨田幸博の 首都圏の地域ス 1 コンピテンシーの定義として,1 職務において, 特定の基準に照らして効果的もしくは優れた成果を引き起こす個人の潜在的特性 (Spencer & Spencer, 1993),2 動機, 特性, 技能, 自己像の一種, 社会的役割, 知識などを含む潜在的特性 (Boyatzis, 1982),3 職務上の高業績と結びつく知識, 技能, 能力, その他の特性 (Mirabile, 1997),4 高い成果を生み出すために, 行動として安定的に発揮される能力 ( 佐久間 斉藤 綱島, 1998),5 組織内の特定の職務にあって優れた業績をあげる現職者の持つ特性 ( ウィリアム マーサ 社,1999),6 ある状況または職務で高い業績をもたらす類型化された行動特性 ( 太田, 1999) が挙げられている. 2 詳細については, 高橋潔 コンピテンシー概念の効用と限界 山口裕幸編 コンピテンシーとチーム マネジメントの心理学 ( 朝倉書店,2011 年 ) の p.14 を参照のこと. 3

ポーツ指導者に求められる職務遂行能力に関する研究 (2006) がある. 冨田は, コンピテンシーと人的要素という 2 点から, 地域スポーツ指導者に求められる職務遂行能力を明らかにするため, 笠山 中西 (1999) が抽出したスポーツ指導者の 4 つのコンピテンシー ( スポーツ経営力 スポーツに関する知識 実技 指導能力 コミュニケーション能力 ) を採用している. 冨田の調査では, 地域スポーツ指導者自身を対象とし, どのような専門的能力が必要であるのか や 指導者として重視していることは何か などについて, スポーツ指導者が評価, 回答する形をとっている. 冨田の研究は, 本研究に貴重な示唆を与えてくれるが, 地域スポーツ指導者を対象とした先行研究に基づくコンピテンシー項目を使用しているため, 競技スポーツ現場における指導者を対象とする本研究には, そのまま援用することが難しいと考えた. したがって本研究では, 後述するように, ソフトボールのスポーツ指導者に求められるコンピテンシーを抽出するため, すでに作成されている尺度をそのまま用いるのではなく, トップレベルで実績のあるソフトボール指導者からヒアリングをし, 共通するコンピテンシーを抽出することとした. 4

第 2 部 投稿論文 ソフトボールにおける女子チーム指導者のコンピテンシーに関する研究 Ⅰ. 諸言 1. 背景ソフトボールは,1996 年のアトランタ五輪で女子の正式種目となり, 日本代表チームもこの大会から出場している. 結果は 4 位とメダルには手が届かなかったものの, 次の 2000 年シドニー五輪では銀メダル,2004 年のアテネ五輪では銅メダル,2008 年の北京五輪では金メダルを獲得し, 日本の女子ソフトボールが世界でもトップレベルであることを証明した. 日本の女子ソフトボールチームがこのような実績を持つに至った背景には, 日本女子ソフトボールリーグ ( 以下, 日本リーグ ) の存在が大きいと考えられる. 日本リーグは, 規模や開催期間, チーム数, 試合数, さらには報酬面などにおいて世界一のシステムを誇り, これらは企業努力の上に成り立ってきた. またソフトボールは, バレーボールなどと並び, 日本の女子スポーツの草分け的存在の一つでもあった. 北京五輪で一躍脚光を浴びた女子ソフトボールではあったが, 他の実業団スポーツと同様に, 不況のあおりを受けた企業が, スポーツチームの存続を断念する事態に直面している.1986 年には 149 あった日本リーグ加盟チームが,2011 年には 29 チームにまで減少していることからも事態の深刻さは明らかである.( 西日本新聞,2011) さらに,2008 年の北京五輪を最後に, 女子ソフトボールが五輪種目でなくなったことも, 日本の女子ソフトボールの衰退に拍車をかけている. 女子ソフトボールを取り巻く環境が変化した今こそ, この競技の 今後 に関する早急な議論が必要である. また女子ソフトボールに関わる問題は, ソフトボール関係者のみならず, 日本の女性スポーツの発展を考えていく上でも重要である. 本研究ではこのような視座に基づきながら, 女子ソフトボールの 今後 を検討する一つの手がかりとして, ソフトボール育成期にあたる高校, 大学で指導をしている指導者 ( 監督 ) に着目することとした. 2. 課題日本における国際的なソフトボールの発展は, 日本リーグ加盟チームの選手や大学生によって構成された日本代表チームの活躍によるところが大きい. 日本リーグの選 5

手たちのほとんどは, 日本の高校や大学を卒業した, いわば学校部活動出身の選手であり, そこでの経験は, 競技継続への意欲と関連しているものと考えられる. 特に, 競技力が大きく伸びる時期にあたる高校や大学では, 指導者の存在やその指導等が選手の卒業後のキャリアに多大な影響を及ぼすものと推察される. しかし, これまでのソフトボールに関する研究や報告では, 動作解析やゲーム分析に関するものがほとんどで, 指導者の意識やコンピテンシーを検証した研究は皆無に等しい. 2011 年 6 月 24 日に, スポーツ基本法 が公布され, その中で, スポーツがあらゆる人の権利であると明記されるとともに, 指導者の養成と資質の向上が施策として掲げられている. すなわちこの文言は, 勝敗のみならずスポーツ文化を継承しうるスポーツ選手を育成するために, 指導者の存在が重要であり, かつ, その影響力も重大であるという前提に基づいている. しかしながらソフトボールの指導者は, 専門的にソフトボールに携わった経験のない指導者が比較的多く存在する競技でもある. しがたって, 指導者の育成という側面から競技を発展させていくことが, 日本のソフトボール界において重要な課題であるとも言えよう. 3. 目的コンピテンシーは, 経営学や心理学分野で研究が進むテーマとなり,90 年代に入ると, アメリカ企業の人的資源管理の指標として用いられる概念となった ( 谷内,2001; Works, 2003; 高橋,2011). コンピテンシーの定義は, 明確な共通定義が存在せず, またヨーロッパとアメリカにおいても定義の内容が異なると指摘されているように (Works, 2003), 文化によってもコンピテンシーの捉え方には違いがある. したがって, 仕事力 や 指導力 という漠然とした態度や信念, 行動特性をコンピテンシーという概念で数値化し, 客観的評価が可能になるようにすることは有益であると考えられる. スポーツ指導者のコンピテンシーに関する研究には, 冨田幸博の 首都圏の地域スポーツ指導者に求められる職務遂行能力に関する研究 (2006) がある. 冨田の研究は本研究に貴重な示唆を与えてくれるが, 地域スポーツ指導者を対象とした先行研究に基づくコンピテンシー項目を使用しているため, 競技スポーツ現場における指導者を対象とする本研究には, そのまま援用することが難しいと考えた. したがって本研究では, まず, すでに作成されている尺度をそのまま用いるのでは 6

なく, トップレベルで実績のあるソフトボール指導者からヒアリングをし, 共通するコンピテンシーを抽出することとした. 次に, 抽出されたコンピテンシーに基づき, アンケートを作成し, トップレベルを目指す選手の育成期にあたる高校や大学における指導者のコンピテンシーを明らかにすることとした. これにより, ソフトボール指導者が, どのようなことを心がけて指導を行い, その指導が競技成績と日本女子ソフトボール 1 部リーグ ( 以下,1 部リーグ ) への選手輩出にどのように結びついているのか, その特徴が明確になると考えた. Ⅱ. 方法 1. 質問紙作成の為のインタビュー調査 1). インタビュー対象者日本のソフトボールが世界レベルであることは先に触れた. そこで, インタビュー対象者は, 女子ソフトボール日本代表チームの監督を経験したことのある監督 3 名とした.3 名の対象者は日本のみならず世界を代表する指導者である. 対象者はすべて女性で,2 名は日本リーグを離れ, 現在はソフトボールの普及活動を中心に活動している.1 名は現在も日本リーグで指揮を執っている. 対象者の平均年齢は 49 歳であった. インタビュー対象者には, 研究の趣旨, 匿名性の確保を説明したうえで研究協力の承諾を得た. 2). 実施期間 2011 年 8 月中に行った. 3). 調査方法調査は 1 対 1 で実施し,2 名は対象者が所属するソフトボール部寮の応接室,1 名は電話でのインタビューで行われ, 平均時間は約 60 分であった. 質問内容は 選手を指導する際に大切にしていること について非構造化でのインタビューを採用した. インタビュー実施者は筆者が行い, 答えを誘導するようなインタビューにならないように, 事前に模擬インタビューを行った. インタビューの内容は, 対象者に許可を得た上で全て IC レコーダーに録音し, 得られたデータはインタビュー終了後速やかに筆者自身が,IC レコーダーの音声から word ファイルに文字起こしを行った. 7

4). キーワード抽出および質問紙の作成このインタビュー調査から質的コーディングを行い項目を抽出した. 抽出した項目を同じような意味を持つ 9 つのカテゴリーに分類し, さらに 29 項目の質問の内容を検討した. 項目の抽出, 分類, 質問紙の作成に際し, 妥当性を高めるため, スポーツ科学に従事する他の研究者 4 名が検証し確定した. これらを測る尺度として スポーツチームマネジメント自己評価尺度 と命名した. 2. アンケート調査 1). 調査方法過去 10 年間に全国大会に出場したことのある高校 大学の女子ソフトボールチームの指導者 ( 監督 ) および日本リーグに選手を輩出している高校 大学の指導者 ( 監督 ) 111 人を対象とし, 郵送による質問紙調査を実施. 有効回答は 94 人 (84.9%) であった. 基本属性では, 年齢 性別 学歴 教科担当 野球ソフトボールの部活動歴または運動部歴 指導者としての指導歴などを中心とした. また, 指導者のコンピテンシーを測る尺度としてインタビュー調査をもとに抽出した スポーツチームマネジメント自己評価尺度 を 7 件法で評定する構成にした. 対象者の平均年齢は 46.6 歳, 指導歴の平均は 19 年であった. 統計処理にあたっては IBM SPSS Statistics19 プログラムを用いた. 2). 実施期間 アンケートの発送は 2011 年 10 月 4 日であり, 同 11 月末日までに回収した. 8

Ⅲ. 結果 1. 女子ソフトボール指導者のコンピテンシー 1). インタビュー調査による質的コーディング女子ソフトボール指導者のコンピテンシーは, インタビュー調査の対象者 3 名より抽出された 91 のキーワードをもとに モラル, 柔軟性, コミュニケーション, モチベーション, 組織, 理論, スキル, 戦略, 人心掌握術 の 9 つのカテゴリーに分類された ( 図 1). 9

2). アンケート調査によるコンピテンシーの分類スポーツチームマネジメント自己評価尺度の 29 項目について主因子法に基づく因子分析を行った. 分析の結果, 固有値の値から判断し,8 因子を採用した. これらの因子に対し, 重みなし最小二乗法, プロマックス回転で因子分析を行った結果,29 項目すべての因子負荷量は,0.4 以上を示した. 第 1 因子にはチームの全体像を把握するという内容から 観察. 第 2 因子には基本的な生活習慣から モラル. 第 3 因子には選手との関係や繋がりを持つ内容から コミュニケーション. 第 4 因子には主体性を引き出す指導から 啓発. 第 5 因子には専門的な戦術 戦略の指導から 戦略. 第 6 因子には長期的に目標 モチベーションを維持させる内容から 動機づけ. 第 7 因子には専門的な基礎を指導する内容から 基本練習. 第 8 因子にはスタッフに関係する内容から 組織形成 とそれぞれ命名した. 測定尺度の信頼性を検証するため, Cronbach s α 係数による信頼性を検討した. その結果 観察因子 が.771, モラル因子 が.770, コミュニケーション因子 が.719, 啓発因子 が.880, 戦略因子 が.810, 動機づけ因子 が.755 であり信頼性は十分といえる結果となった. また, 基本練習因子 の.625 と 組織形成因子 の.681 が信頼性の基準となる 0.7 レベルを下回った. これらの結果から尺度信頼性は決して良いとは言えない値であったが, 小塩 (2004) が指摘する再検討を必要とする 0.5 レベルは容易にクリアしているため, 本研究では用いた尺度の信頼性は問題ないと判断した (Table1). 10

第 1 因子 : 観察 α=0.771 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ 項目 16. 選手を納得させる理論を持っている.840.249.298.222.327.457.358.062 項目 17. 選手に理論的に説明している.792.111.293.290.210.320.390 -.013 項目 27. 選手個人の性格を見抜いている.731 -.145.707.418.189.368.501 -.339 項目 29. 選手の状態を把握している.690 -.154.534.594.313.509.676 -.245 項目 28. 選手をよく観察している.674 -.158.477.580.244.456.534 -.510 項目 13. マネージャーの役割を重要視している.405 -.185.311.265 -.025.391.150.103 第 2 因子 : モラル α=0.770 項目 2. 学校やチームのルールを守らせている.184.721.123.163.253.286.236.128 項目 1. 挨拶をしっかりさせている.040.684.028.005.386.158.250.099 項目 3. 整理整頓をさせている.241.590.240.049.269.134.247.117 項目 20. 基本プレーを大事にさせている.411.583.007.151.054.335.390.068 項目 6. 状況によって厳しく叱っている.174.552.283.077.253.513.106.232 項目 7. 選手とよく会話している.252 -.059.644.463.172.307.366.128 項目 9. 選手とのコミュニケーションに気を使っている.528.030.635.460.235.536.522.225 項目 4. 選手によって指導の仕方を変えている.225.199.599.153.224.233.162.044 項目 5. 時と場合によって指導の仕方を変えている.353.032.585.240.230.551.271.048 項目 26. 感情に流されず 冷静に判断 決断している.416 -.053.461.277.361.327.324 -.072 項目 19. 選手自身に考えさせている.253 -.052.303.846.347.367.221.005 項目 18. 選手自身での気付きを重要視している.338 -.056.401.844.316.461.381 -.003 項目 24. 選手に戦略を理解させている.329.115.367.466.868.481.474.020 項目 25. 試合での駆け引きを教えている.368.331.245.337.757.381.308 -.045 項目 12. モチベーションを維持させる工夫をしている.389.086.354.404.359.809.450.129 項目 8. 言葉がけのタイミングに気をつけている.319.125.499.450.367.603.353.216 項目 11. 具体的な個人の目標を設定させている.426 -.023.407.480.546.597.542 -.018 項目 10. チームとしての目標を持たせている.266.244.086.443.388.595.379.135 第 7 因子 : 基本練習 α=0.625 項目 22. 反復練習を重要視している.241.452.104.046.271.296.604.224 項目 23. 変化のある練習内容にしている.330.129.442.414.422.360.575 -.112 項目 21. 体づくりを重要視している.245.228.175.142.217.298.560.121 第 8 因子 : 組織形成 α=0.681 項目 第 3 因子 : コミュニケーション α=0.719 第 4 因子 : 啓発 α=0.880 第 5 因子 : 戦略 α=0.810 第 6 因子 : 動機づけ α=0.755 Table1 スポーツチームマネジメント自己評価尺度 (n=94) 項目 15. マネージャー キャプテンなどのスタッフに権限を与えている.161.048.240.178.099.299.246.637 項目 14. 適性に合わせてスタッフ ( キャプテン等 ) を配置している.208.253.188.272.242.446.210.535 因子抽出法 : 重みなし最小二乗法回転法 :Kaiser の正規化を伴うプロマックス法 2. 女子ソフトボール指導者の特徴 1). 成績優秀指導者全国大会でベスト 4 以上の成績 ( 以下, 入賞群 ) を収めている指導者と入賞群以外 ( 以下, 非入賞群 ) の指導者のコンピテンシーを比較するために,t 検定を行った. 結果は Table2 に示す. 分析の結果, 観察因子 (t=2.41, df=92, p<.05) において, 入賞群の指導者が有意に高値を示した. その他の因子に関しては, 有意な差は認められなかった. 11

Table2 全国大会での入賞群と非入賞群のt 検定の結果 入賞群非入賞群スポーツチームマネジメント自己評価 t 値 n=41 n=53 t 検定 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 F 値 有意差 因子 1 観察 16) 選手を納得させる理論を持っている 17) 選手に理論的に説明している 27) 選手個人の性格を見抜いている 29) 選手の状態を把握している 28) 選手をよく観察している 13) マネージャーの役割を重要視している 因子 2 モラル 2) 学校やチームのルールを守らせている 1) 挨拶をしっかりさせている 3) 整理整頓をさせている 20) 基本プレーを大事にさせている 6) 状況によって厳しく叱っている 因子 3 コミュニケーション 7) 選手とよく会話している 9) 選手とのコミュニケーションに気を使っている 4) 選手によって指導の仕方を変えている 5) 時と場合によって指導の仕方を変えている 26) 感情に流されず 冷静に判断 決断している 因子 4 啓発 19) 選手自身に考えさせている 18) 選手自身での気付きを重要視している 因子 5 戦略 24) 選手に戦略を理解させている 25) 試合での駆け引きを教えている 因子 6 動機づけ 12) モチベーションを維持させる工夫をしている 8) 言葉がけのタイミングに気をつけている 11) 具体的な個人の目標を設定させている 10) チームとしての目標を持たせている 因子 7 基本練習 22) 反復練習を重要視している 23) 変化のある練習内容にしている 21) 体づくりを重要視している 因子 8 組織形成 15) マネージャー キャプテンなどのスタッフに権限を与えている 14) 適性に合わせてスタッフ ( キャプテン等 ) を配置している 2.41 30.66 2.75 29.04 3.56 1.975.018 * 1.48-1.56 0.96 1.34 0.62 1.57 0.40 26.80 1.68 26.28 1.71.254.143 n.s 18.46 1.67 19.04 1.84 1.655.122 n.s 24.05 2.30 23.55 2.68 1.965.341 n.s 18.00 1.58 17.45 2.37 8.292.183 n.s 12.00 1.57 11.75 2.15 1.100.540 n.s 18.27 2.37 17.58 1.87 2.027.121 n.s 24.63 2.50 24.43 2.28.000.687 n.s n.s: not significant *p<.05 2). 日本女子ソフトボール 1 部リーグ輩出指導者 2011 シーズンの 1 部リーグに, 指導した選手がいる指導者 ( 輩出選手あり群 ) といない指導者 ( 輩出選手なし群 ) のコンピテンシーを比較するために,t 検定を行った. 結果は Table3 に示す. 分析の結果, 観察因子 (t=2.74, df=92, p<.01), モラル因子 (t=3.50, df=92, p<.001), 戦略因子 (t=3.03, df=92, p<.01) において, 輩出選手あり群の指導者が高いという有意な差が認められた. 12

因子 1 観察 16) 選手を納得させる理論を持っている 17) 選手に理論的に説明している 27) 選手個人の性格を見抜いている 29) 選手の状態を把握している 28) 選手をよく観察している 13) マネージャーの役割を重要視している 因子 2 モラル 2) 学校やチームのルールを守らせている 1) 挨拶をしっかりさせている 3) 整理整頓をさせている 20) 基本プレーを大事にさせている 6) 状況によって厳しく叱っている 因子 3 コミュニケーション 7) 選手とよく会話している 9) 選手とのコミュニケーションに気を使っている 4) 選手によって指導の仕方を変えている 5) 時と場合によって指導の仕方を変えている 26) 感情に流されず 冷静に判断 決断している 因子 4 啓発 19) 選手自身に考えさせている 18) 選手自身での気付きを重要視している 因子 5 戦略 24) 選手に戦略を理解させている 25) 試合での駆け引きを教えている 因子 6 動機づけ 12) モチベーションを維持させる工夫をしている 8) 言葉がけのタイミングに気をつけている 11) 具体的な個人の目標を設定させている 10) チームとしての目標を持たせている 因子 7 基本練習 22) 反復練習を重要視している Table3 2011 年日本女子ソフトボール 1 部リーグに監督として指導した選手輩出の t 検定の結果 23) 変化のある練習内容にしている 21) 体づくりを重要視している スポーツチームマネジメント自己評価 因子 8 組織形成 15) マネージャー キャプテンなどのスタッフに権限を与えている 14) 適性に合わせてスタッフ ( キャプテン等 ) を配置している t 値 2.74 3.50 0.96 0.01 3.03 1.29 0.19 1.02 輩出選手あり群 平均値標準偏差平均値標準偏差 F 値有意差 n.s: not significant 輩出選手なし群 n=59 n=35 36.12 4.08 33.71 4.16 2.483 t 検定 33.44 1.77 31.91 2.19 4.237.001 *** 29.83 2.90 29.23 3.05 6.031.342 n.s 12.12 1.58 12.11 1.43 1.313.989 n.s 12.36 1.37 11.46 1.42 1.686.003 ** 24.92 2.39 24.23 2.68.293.201 n.s 17.92 2.18 17.83 2.04.001.849 n.s 12.02 1.69 11.60 2.24 7.032.309 n.s ***p<.001.007 ** **p<.01 Ⅳ. 考察 1. コンピテンシー尺度について本研究では, 過去 10 年間に全国大会に出場したことのある高校 大学の女子ソフトボールチームの指導者 ( 監督 ) および日本リーグに選手を輩出している高校 大学の指導者 ( 監督 ) を対象とし, コンピテンシー という概念から, 好成績をおさめるスポーツ指導者の特徴を把握することが目的であった. すなわち, 漠然とした 指導力 という考えを, 数値化し客観的評価ができるようにすることで, どのような指導者の態度や信念, 行動が, 結果としてチームの実績や高い競技レベルの選手輩出につながるのかを明らかにすることを目指した. コンピテンシーは, アメリカの人事システムに活用するために開発されてきたモデル ( 高橋,2011) である. 日本でも主に企業の人事評価などに使われてきたが, 企業で使用される尺度を直接, 競技スポーツ領域に適用するのは難しい. またコンピテンシーは, 多義的な定義を持ち, 使用する目的によっても解釈が異なる. したがって本研究では, 競技特性に応じたコンピテンシー尺度を作成することが必要であると考えた. 第一段階として, 本研究は, 国際大会レベルで実績のある 3 名の指導者にインタビ 13

ュー調査を実施し, その内容から 3 名に共通するコンピテンシー尺度を抽出することとした.3 名には, 主に どのようなことを重視しながら指導を行っているのか ( あるいは, 行ってきたのか ) について尋ねた. その結果, モラル, 柔軟性, コミュニケーション, モチベーション, 組織, 理論, スキル, 戦略, 人心掌握術 の 9 つのコンピテンシー尺度が抽出された. 次に, インタビューで抽出された 9 つのコンピテンシー尺度に基づいて, アンケートを作成し, 全国大会レベルで活躍する高校と大学の指導者にアンケートへの回答を依頼した. アンケート調査からは, 因子分析の結果, 観察, モラル, コミュニケーション, 啓発, 戦略, 動機づけ, 基本練習, 組織形成 の 8 つのコンピテンシー尺度が, それぞれ抽出された. 抽出されたコンピテンシーについて, インタビューとアンケートという調査方法の違いはあったものの, 共通点を見出すことができる. インタビューによって抽出されたコンピテンシー (A 群 ) とアンケートによって抽出されたコンピテンシー (B 群 ) を比較してみると, 柔軟性 理論 人身掌握術 がアンケートでは削除され, その一方, 新たに 観察 と 啓発 が追加された. それぞれの内容を精査すると, 共通していないA 群の 柔軟性 は B 群の コミュニケーション と モラル に, 理論 については 観察 と 啓発 に分類された. 人身掌握術 については 観察 に吸収される内容であった. これは, アンケート対象者が, 質問項目に対して筆者の意図とは異なる解釈をした可能性が推察される. したがって, インタビュー調査から抽出された項目とは, 多少異なるかたちで因子が抽出されたことになる. ただし, 二段階の調査方法で項目が作成されたことから, 比較的妥当性, 信頼性のある尺度を抽出できたと示唆される. また, 相違点よりも共通点に着目することで, 特殊性や個性が強いとされるトップレベルの指導者 ( 伊平,2009) の特徴が把握できると理解した. 2. 好業績を生む要因入賞群と非入賞群との比較では 観察因子 が有意に高値を示したことから, 全国大会ベスト 4 以上の実績を有するチームの指導者は, 高校においても, 大学においても選手一人ひとりの性格や変化などをよく観察し, それに基づいて適切な言葉がけや技術指導が行われていると推察された. またそのような指導によって, 選手と指導者の間には信頼感も強まることが予測される. 14

インタビュー対象者の一人であるAは, なにしろ人分析は一番やった と語っており, 選手の観察はトップレベルの指導者も重視している要素であることがわかった. すなわち, 選手の状態を観察し把握していることが, 試合中に起こるさまざまな事態へ素早く対応する能力を持っていることにもつながり, その結果, 好成績を生む要因になっていると考えられる. 早稲田大学大学院の講義 指導実践マネジメント で清水隆一も, コーチングのロジックの基本について 観察と傾聴 を強調した (2011/7/9). 観察とは, まず相手を客観的に見ることからスタートし, そこから相手の良いところを見つけることに集中することだという. さらに興味を持って観察するといろいろな質問が生み出され, 相手を傾聴 ( 承認 ) するポイントもそこからわかると指摘した. 以上のことから, 指導者の選手を観察する力は, 選手やチームが高い競技力とパフォーマンスを発揮できる原動力になっていることが示唆された. 次に, 指導者のコンピテンシーの比較をチームの業績や結果だけでなく, 1 部リーグに選手を輩出しているか否か という視点からも検討した. その結果, 輩出選手あり群が輩出選手なし群に比べ 観察因子, モラル因子, 戦術因子 で有意に高かったことが確認された. ソフトボールはチームスポーツであるため, 高い競技レベルの選手を輩出すること自体が, チームの好成績につながるわけではない. また高い競技レベルの選手を輩出することが, 必ずしも 優れた 指導者の条件であるとも限らない. さらに 1 部リーグへの選手輩出は, 指導者同士のネットワークによるスカウトや特待生制度の有無など, 指導者のコンピテンシー以外の要件も関連していると考えられる. しかし日本リーグのチーム数が減少している今日であっても, ソフトボールを継続していこうとする意欲を持つ選手を育て, また 1 部リーグでやっていけるだけの競技力を身につけた選手を輩出することは, 指導者のコンピテンシーも大きく関与していると考えられる. 観察因子 の他に 戦術因子 が有意に高値を示したのは, そのことを部分的に示唆していると言えるだろう. 同様に, モラル因子 も有意に高いことが確認された. 宮田ら (2004) は, 挨拶などの規範行動に触れ, 今後の子どものスポーツ指導を展開していくうえでは, 技術および規範の両側面から指導する重要性を示唆ししている. すなわち, 技術的な課題を明確にすることにより, うまくなりたいと思う意欲がわき, 練習課題への取り組みや, 規範行動にも良い影響が出るというのだ. たびたびスポーツ指導の現場では, モラル 15

に対して様々な議論がなされている. 果たして モラル を指導することが, 高いパフォーマンスを発揮する選手育成の要因となるのか, または モラル を指導し, 実践できるようになるからこそ, それが競技力に繋がるのか, 本研究では明らかにすることはできなかった. 今後はさらなる検討が必要である. なお, 入賞群と非入賞群を比較した際に, 観察因子 以外の 7 つの因子では有意な差が認められなかった. これは, 本研究が 全国大会に出場している または 日本リーグに選手を輩出している チームで指導する指導者を対象としたため, 競技レベルの差が拮抗し, それぞれの指導者間に共通性が高かったことが要因であったと考えられる. また今回のアンケート調査では, スポーツチームマネジメント自己評価尺度 の 29 の項目に対して, 指導者が主観的に評価する形式をとった. 好成績につながる指導を包括的に理解するには, 指導者自身が重視している信念や態度だけでなく, それらを客観的に評価し, ソフトボール界を取り巻く環境的要因に注目することも重要であろう. したがって今後は, 選手や学校関係者, さらには卒業生や保護者なども視野に入れた調査や, 県大会レベルや地区大会レベルにおけるチームとの比較など, 今回の結果を踏まえたさらなる検証を行っていくこととする. 本研究では, 好成績をおさめている指導者の 行動 態度 信念 ( コンピテンシー ) に注目することにより, 選手の性格や状態を十分に把握し, 観察, 分析できる指導者が, 好成績をおさめていることがわかった. すなわち, 単に好成績を残す指導者が 優れた 指導者というのではなく, 選手それぞれへの観察を重要視し実践している指導者が, 結果として好成績を残すチームに属していることが示唆された. 3. 本研究の意義と課題本研究は, 指導者のどのような指導や行動が好成績に繋がるのかを探った点において有益であったといえる. また, スポーツチームマネジメント自己評価尺度 を, 世界で好成績をおさめた 3 名から抽出し作成した. トップレベルの 3 名にインタビューし, 尺度を抽出し得たことは, 本研究のオリジナリティーを際立たせるものとなった. 今後は, インタビュー対象者 3 名のインタビュー内容を質的研究に掘り下げていくとともに, 指導者をとりまく環境的要因などについても検証していく. 16

Ⅴ. 結論高校 大学の全国大会レベルにおける, 女子ソフトボール指導者のコンピテンシーは, 入賞群 非入賞群において大きな差はなかった. しかし, 観察因子 を重要視している指導者が比較的好成績をおさめているということが明らかになった. 本研究では, 対象が全国大会レベルということもあり, 指導者の意識自体が高いと推察され,8 因子 29 項目すべてにおいて重要視することが大切であることを考えさせられた. また, 本研究のみで, 指導者の 行動 態度 信念 ( コンピテンシー ) を断定するのは早急であり, 他の女子スポーツ指導者との比較研究などが強く求められる. Ⅵ. 謝辞本論文は筆者が早稲田大学大学院スポーツ科学研究科スポーツクラブマネジメントコースに在籍中の研究成果をまとめたものであります. 同研究科教授間野義之先生には指導教官として本研究の実施の機会を与えて戴き, その遂行にあたって終始, ご指導を戴きました. 心より深謝の意を表します. また, 同研究科准教授堀野博幸先生, 並びに, 江戸川大学社会学部准教授澤井和彦先生には副査としてご助言を戴くとともに本論文の細部にわたりご指導を戴きました. ここに深謝の意を表します. これまでの研究過程において数々のアドバイスを頂きました, 早稲田大学スポーツ科学研究科庄司博人助手をはじめ間野研究室の博士課程, 修士課程, さらには学部生, OBOG の皆様. また, 社会人修士の同期生とは,1 年間と限られた時間の中で切磋琢磨し大きな励みとなったことを記すとともに心より感謝申し上げます. 本研究の調査にあたり, 趣旨を理解し快くアンケートにご協力頂いた高等学校 大学の指導者の皆様には貴重な示唆を与えて頂きました. 本当にありがとうございました. 最後になりますが, 研究と仕事の両立を支援して頂き, 大学院進学に際し背中を押してくださった先輩方や同僚には大変感謝しております. 本研究の成果が皆々様のご期待に沿うものかどうか甚だ疑問ではありますが, ここに重ねて厚く謝意を表し, 謝辞といたします. 17

Ⅶ. 参考引用文献 A. アンダーセン (2002) 図解コンピテンシーマネジメント. 東洋経済 新報社. Boyatzis,R.E.(1982) The competent manager: A model for effective performance. New York: Wiley. Myers,N.D., Feltz,D.L., Maier,K.S., Wolfe,E.W.,& Reckase, M.D.(2006) Athletes Evealuation of Their Head Coach s Coaching Competency. Research Quarterly for Exercise and Sport, 77(1), 111-121. R. マートン (1991) コーチングマニュアルメンタルトレーニング. 大 修館書店. Spencer,L.M. & Spencer,S.M. (1993) Competence at work: Models for superior performance. New York: Wiley. 赤塚直之 熊谷敏 (2008) コンピテンシー評価とエニアグラムを用いた プロジェクトチームマネジメントシステムの構築. プロジェクト マネジメント学会 2008 年度春季研究発表大会予稿集, 398 403. 石井源信 (2007) コーチングの最新心理学. 体育の科学, 57(2),84 90. 稲垣安二 藤本祐次郎 礒雄 鳥羽泰光 進藤満志夫 (1988) 望ましい 体育教師像とコーチ像. 日本体育大学紀要,17(2), 23 31. 伊平遼一 (2009) バスケットボール指導者の考える理想の指導に関する 質的研究. 早稲田大学スポーツ科学研究科修士論文 18

大竹文雄 安井健悟 (2005) 特集 スポーツと労働プロ野球監督の能 力. 日本労働研究雑誌, 537, 23 25. 川北準人 市村操一 國分康孝 (2009) チームづくりのためのメンタル トレーニング グループエンカウンターのチームづくりへの応用. 東京成徳大学研究紀要, 16, 1 21. 北森義明 塩原正一 (1986) スポーツチーム監督のリーダーシップに関 する研究 その 1. 順天堂大学保健体育紀要,29,1 12. 小塩真司 (2004) 研究事例で学ぶ SPSS と AMOS による心理 調査データ 解析. 東京図書. 須永一道 柳澤利之 (2010) 新任介護福祉士のコンピテンシーモデル 短大生および短大卒業生のコンピテンシーモデルからの考察. 新 潟青陵大学短期大学部研究報告, 40, 101 108. 高橋潔 (2011) コンピテンシー概念の効用と限界 山口裕幸編 コンピ テンシーとチーム マネジメントの心理学, 朝倉書店. 武田亜希 野渡正博 (2008) 組織改革中のドイツ企業におけるチーム コンピテンシーに関する研究. 日本経営工学会論文誌, 59(2), 184 194. 谷内篤博 (2001) 新しい能力主義としてのコンピテンシーモデルの妥当 性と信頼性. 経営論集, 11(1), 49 62. 俵尚申 (2003) スポーツにおけるコーチング 一考察. 嘉悦大学研究 論集,46(1),189-209. 19

冨田幸博 (2006) 首都圏の地域スポーツ指導者に求められる職務遂行能 力に関する研究. 日本体育大学紀要,35(2), 159-172. 西日本新聞朝刊 2011/12/09 WEB 版 http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/277099 野村克也 (2005) 野村ノート. 小学館. 野老稔 坂井和明 (2005) コーチングスキル構築のための基礎的研究 : 体育系女子大学生が描く理想的なコーチ像を手がかりに. スポーツ 方法学研究,18(1), 11 22. 宮田睦美 北田豊治 八坂昭仁 (2004) 少年バレーボールチームにおける 達成感と規範行動の関連 Y ジュニアバレーボールチームの場合 九州女子大学紀要, 41(4), 23-34 村木柾人 (1995) スポーツ ティームの組織形態とコーチの役割 日本 の大学運動部における諸問題に関連して. 筑波大学運動学研究, 11,29-43. 山寺仁 伊東昌子 松尾睦 河崎宜史 初田賢司 (2008) 高業績プロジェクトマネジャーはプロジェクトの初期と中期にどのような行動をとるのか. プロジェクトマネジメント学会 2008 年度春季研究発表大会予稿集, 80 84. 山本雄介 越後豊 (2009) 高等学校における運動部活動のコーチングに 関する一考察 生徒の目的達成とコーチの関わり方に着目して. 北海道教育大学紀要, 60(1), 215 226. 20

第 3 部 資料 Ⅰ. 調査結果 1. 年齢 アンケート調査を行った指導者の年齢は 40 歳代が最も高く全体の 36.2%, 次いで 50 歳代 23.4%,30 歳代 18.1%,60 歳代 10.6% となった. 表 1 対象者の年齢特性 年齢 (n=94) 度数 パーセント 20 歳代 7 7.4% 30 歳代 17 18.1% 40 歳代 34 36.2% 50 歳代 22 23.4% 60 歳代 10 10.6% 70 歳代 2 2.1% 80 歳代 1 1.1% 不明 1 1.1% 平均値 46.6 標準偏差 12.6 中央値 47.0 最小値 23.0 最大値 84.0 2. 性別 対象者の性別は 81.9% が男性,18.1% が女性であった. 年齢との比較でも Ⅰ の結果 の通り, 男女とも 40 歳代の指導者が最も高い割合であることがわかった. 表 2 性別特性 性別 (n=94) 度数 パーセント 男性 77 81.9% 女性 17 18.1% 年齢と性別のクロス表 (n=93) 男性 女性 合計 20 歳代 度数 4 3 7 パーセント 4.3% 3.2% 7.4% 30 歳代 度数 13 4 17 パーセント 13.8% 4.3% 18.1% 40 歳代 度数 27 7 34 パーセント 28.7% 7.4% 36.2% 50 歳代 度数 22 0 22 パーセント 23.4% 0% 23.4% 60 歳代 度数 9 1 10 パーセント 9.6% 1.1% 10.6% 70 歳代 度数 1 1 2 パーセント 1.1% 1.1% 2.1% 80 歳代 度数 1 0 1 パーセント 1.1% 0% 1.1% 21

3. 指導校 対象者の指導対象校は共学が 81.9%, 女子校が 18.1%. 国公私立別においては, 国 公立が 26.6%, 私立が 73.4% であった. 表 4 指導校の学校特性 指導校の男女別 (n=94) 度数 パーセント 女子校 17 18.1% 共学 77 81.9% 指導校の国公私立別 (n=94) 度数 パーセント 国公立 25 26.6% 私立 69 73.4% 4. 最終学歴 対象者の最終学歴はスポーツ系の 4 年制大学が半数を占め 51.1%, 次いでスポーツ 系以外の 4 年制大学 35.1% という結果であった. 表 5 対象者の最終学歴特性 指導者の最終学歴 (n=94) 度数 パーセント スポーツ系 4 年制 48 51.1% スポーツ系以外 4 年制 33 35.1% スポーツ系大学院 4 4.3% スポーツ系以外大学院 2 2.1% その他 6 6.4% 不明 1 1.1% 最終学歴と高校大学別のクロス表 (n=94) 大学 高校 スポーツ系 4 年制 度数 8 40 パーセント 8.5% 42.6% スポーツ系以外 4 年制 度数 3 30 パーセント 3.2% 31.9% スポーツ系大学院 度数 4 0 パーセント 4.3% 0% スポーツ系以外大学院 度数 2 0 パーセント 2.1% 0% その他 度数 5 1 パーセント 5.3% 1.1% 22

5. 教科担当対象者の教科担当について, 専任のスポーツ系の教員が 52.1%, 専任のスポーツ系以外が 29.8% と全体の 8 割以上が専任の教員であった. また, 教科担当の詳細では, 体育が 52.1% で半数を超えた. 表 6 対象者の教科担当特性 指導者の教科担当 (n=94) 度数 パーセント 専任のスポーツ系 49 52.1% 専任のスポーツ系以外 28 29.8% その他 7 7.4% 事務系職員 6 6.4% 外部指導者 4 4.3% 教科担当と高校大学別クロス表 (n=94) 大学 高校 専任のスポーツ系 10 39 10.6% 41.5% 専任のスポーツ系以外 1 27 1.1% 28.7% その他 3 4 3.2% 4.3% 事務系職員 5 1 5.3% 1.1% 外部指導者 3 1 3.2% 1.1% 教科担当詳細 (n=94) 度数 パーセント 体育 49 52.1% 国語 6 6.4% 社会 13 13.8% 理科 4 4.3% 数学 2 2.1% 英語 2 2.1% 不明 1 1.1% その他 7 7.4% 事務系 6 6.4% 外部指導者 4 4.3% 6. 運動部歴対象者の高校時代の運動部歴は 97.9% で, 野球ソフトボール系は 80.9% であった. また, 大学時代の運動部歴は 86.2% で, 野球ソフトボール系は 72.3% に及んだ. 今回の対象者においては, 野球やソフトボールに携わった指導者が多く, その他では陸上 23

テニス サッカーなどであった. 表 7 対象者の運動部歴特性 指導者の運動部歴 (n=94) あり なし 不明 高校運動部歴 度数 92 2 パーセント 97.9% 2.1% 大学運動部歴 度数 81 12 1 パーセント 86.2% 12.8% 1.1% 高校時代の所属クラブ (n=94) 度数 パーセント 野球ソフト系 76 80.9% 陸上 3 3.2% テニス 3 3.2% サッカー 2 2.1% 剣道 1 1.1% スキー 1 1.1% スピードスケート 1 1.1% バレーボール 1 1.1% 山岳 1 1.1% 不明 3 3.2% なし 2 2.1% 大学時代の所属クラブ (n=94) 度数 パーセント 野球ソフト系 68 72.3% 陸上 3 3.2% テニス 2 2.1% サッカー 1 1.1% ラグビー 1 1.1% スキー 1 1.1% スケート 1 1.1% バレーボール 1 1.1% ワンダーフォーゲル 1 1.1% 空手 1 1.1% 不明 2 2.1% なし 12 12.8% 7. ソフトボール指導歴対象者のソフトボール指導歴は,20 年 ~29 年が最も多く 30.9%, 次いで 10 年未満が 27.7%,10 年 ~19 年が 20.2% であった. ソフトボール以外の指導歴については, 39 人 41.5% が経験ありと答え, ソフトボールの指導のみ携わった指導者は 55 人 58.5% となった. 24

表 8 対象者のソフトボール指導歴特性 女子ソフトボール指導歴 (n=94) 度数 パーセント 0.5~9 26 27.7% 10~19 19 20.2% 20~29 29 30.9% 30~39 13 13.8% 40 以上 6 6.4% 不明 1 1.1% 平均値 19.0 標準偏差 12.0 中央値 20.0 最小値 0.5 最大値 50.0 ソフトボール以外の指導歴 (n=94) 度数 パーセント あり 39 41.5% なし 55 58.5% 8. 練習環境ソフトボール部が専用でグラウンドを使用できる環境にあるクラブは半数の 50%, 共用が 44.7%, 公共の施設など外部のグラウンドを借用しているクラブは 5.3% であった. 今回は対象が全国大会に出場しているということもあり, 練習環境はある程度整っていると思われる. 週間の練習日数は, 休養日なしの 7 日間が最も多く 48.9%, 次いで 6 日間が 46.8% とそのほとんどを占めた. 平日の練習時間は 3 時間の 54.3% が最も多い. 休日は 8 時間の 31.9%,6 時間の 20.2%,7 時間の 17% と 6 時間 ~8 時間の間に集中していた. 25

表 9 対象チームの練習環境特性 練習施設 (n=94) 度数 パーセント 専用 47 50.0% 共用 42 44.7% その他 5 5.3% 週間練習日数 (n=94) 日数 ( 日 ) 度数 パーセント 4 1 1.1% 4.5 1 1.1% 5 1 1.1% 6 44 46.8% 6.5 1 1.1% 7 46 48.9% 平日練習時間 (n=94) 時間 ( 時間 ) 度数 パーセント 1.5 1 1.1% 2 8 8.5% 2.5 6 6.4% 3 51 54.3% 3.5 6 6.4% 4 19 20.2% 4.5 2 2.1% 5 1 1.1% 休日練習時間 (n=94) 時間 ( 時間 ) 度数 パーセント 3 1 1.1% 4 11 11.7% 5 10 10.6% 6 19 20.2% 6.5 1 1.1% 7 16 17.0% 8 30 31.9% 9 4 4.3% 12 2 2.1% 26