スライド 1

Similar documents
<4D F736F F D F90D290918D64968C93E08EEEE1872E646F63>


がん登録実務について

頭頚部がん1部[ ].indd

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

54 埼玉医科大学雑誌第 35 巻第 1 号平成 20 年 12 月 学内グラント終了時報告書 平成 18 年度学内グラント報告書 脳腫瘍摘出における術中蛍光診断の応用 研究代表者三島一彦 ( 埼玉医科大学脳神経外科 ) * 分担研究者西川亮 緒言 神経膠芽腫を代表とする悪性脳腫瘍の治療成績は, 近

1)表紙14年v0


5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

000-はじめに.indd

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

< A815B B83578D E9197BF5F906697C38B40945C F92F18B9F91CC90A72E786C73>

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

岸和田徳洲会病院 当院では以下の研究に協力し情報を提供しております この研究は 国が定めた指針に基づき 対象となる患者さまのお一人ずつから直接同意を得るかわりに 研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しています 研究結果は学会等で発表されることがありますが その際も個人を特定する情報は公表し

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

外来在宅化学療法の実際

<4D F736F F D EA94CA8ED C93FA967B945D905F8C6F8A4F89C88A7789EF B835E B83588CA48B868E968BC D905

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

スライド 1

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

PowerPoint プレゼンテーション

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

Ø Ø Ø

70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

< E082AA82F1936F985E8F578C768C8B89CA816989FC92F994C5816A2E786C73>


第58回日本臨床細胞学会 Self Assessment Slide

<955C8E862E657073>

Microsoft PowerPoint - komatsu 2

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

ER・ICU 100のdon'ts−明日からやめる医療ケア

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

乳癌かな?!と思ったら

130724放射線治療説明書.pptx

肺癌の放射線治療

untitled

PDF

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

70 頭頸部放射線療法 放射線化学療法

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

恵寿総合病院医学雑誌 2017 年 症例報告 Simpson Grade I 相当の全摘出が可能であった血管周皮腫に対し 術後放射線治療を行わなかった 1 例 木村亮堅 1) 東壮太郎 2) 宇野豪洋 3) 岡田由恵 2) 岩戸雅之 2) 1) 恵寿総合病院臨床研修医 2) 恵寿総合病院脳神経外科

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

大規模ゲノム解析から明らかとなった低悪性度神経膠腫における遺伝学的予後予測因子 ポイント 低悪性度神経膠腫では 遺伝子異常の数が多い方が 腫瘍の悪性度 (WHO grade) が高く 患者の生命予後が悪いことを示しました 多数検体に対して行った大規模ゲノム解析の結果から 低悪性度神経膠腫の各 sub

GE ヘルスケア ジャパン 3D ASL( 非造影頭部灌流画像 ) の実践活用 IMS( イムス ) グループ医療法人社団明芳会横浜新都市脳神経外科病院画像診療部竹田幸太郎 当院のご紹介横浜新都市脳神経外科病院 ( 横浜市 青葉区 ) は 1985 年に開院し 患者さんの 満足 と 安心 を第一に考

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

PowerPoint プレゼンテーション

TOHOKU UNIVERSITY HOSPITAL 今回はすこし長文です このミニコラムを読んでいただいているみなさんにとって 救命救急センターは 文字どおり 命 を救うところ という印象が強いことと思います もちろん われわれ救急医と看護師は 患者さんの救命を第一に考え どんな絶望の状況でも 他

PowerPoint プレゼンテーション

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

「             」  説明および同意書

膵臓癌について

Transcription:

待ったなしの がん治療シリーズ 脳神経外科の emergency 広島市立広島市民病院脳神経外科村岡賢一郎

はじめに 脳という臓器 1. 精神が宿る臓器であり, 人をその人たらしめている臓器 2. 重要だけど解明されていないことが多いため, 得体が知れない. 3. 修復力に乏しく, 機能を失うと回復が難しい臓器 誰しも病気が見つかれば, 漠然と不安を抱く. しかし, 脳腫瘍は WHO 分類で 100 種類以上. すべてが手術適応というわけではない. 治療の必要性と緊急性を見極めるために必要なことは何か?

本日のお話 総論 脳腫瘍とは 脳腫瘍の頻度 症候 治療法, 手術適応 各論 グリオーマ 髄膜腫 下垂体腺腫 神経鞘腫 悪性リンパ腫 転移性脳腫瘍

脳腫瘍とは 定義 : 頭蓋内に発生するあらゆる腫瘍 neoplasm 頭蓋内には発生学的に中胚葉, 外胚葉由来の組織が混在している. そのため, 厳密にいうと頭蓋内腫瘍には癌腫, 肉腫が混在している. 脳は, その機能の特殊性, および頭蓋骨内に収まっているという解剖学的特徴から, いわゆる 脳腫瘍 はガン統計に反映されるが, それには良性腫瘍, 悪性腫瘍, いずれも含まれる. 結果, 脳腫瘍は非常に多様な疾患群となっており, 理解し難く, かつ治療方針も一様ではない.

脳腫瘍の分類 1. 原発性脳腫瘍 2. 転移性脳腫瘍 脳実質内腫瘍 Intraaxial tumor 神経膠腫 ( いわゆるグリオーマ ) リンパ腫胚細胞腫瘍脳実質外腫瘍 extraaxial tumor 髄膜腫下垂体腺腫神経鞘腫 ( 聴神経腫瘍など ) 脊索腫 肺がん, 乳がん, 大腸がん, その他

1. 原発性脳腫瘍 年間発生頻度 : 10 万人に対し 12.76 人 ( 日本脳腫瘍統計 2003)

神経膠腫 glioma WHO grade 好発年齢生存期間中央値 星細胞腫 diffuse astrocytoma 乏突起膠腫 oligodendroglioma 退形成性星細胞腫 anaplastic astrocytoma 膠芽腫 glioblastoma 2 30-59 5~10 2 25-54 5~10 3 35-69 1~4 4 50-74 1

2. 転移性脳腫瘍 定義他臓器の腫瘍細胞が転移して増殖, 腫瘍形成 特徴 発見時点で stage4 にて治療方針は慎重に. 頭蓋内転移の 20% は原発巣の診断時, あるいはそれ以前に発見される 頭蓋内転移の 50% 程度は, 原発巣の診断から 1 年以内に見つかる 好発年齢 50-74 歳が 71.4% を占め, 最多 60-64 歳にピークがある (17.1%).

原発性と転移性を併せた脳腫瘍発生頻度

症候

病歴聴取と診断 脳腫瘍の症候は 1 頭蓋内圧亢進症状と片麻痺などの 2 巣症状に分けて考える. 頭蓋内圧亢進症状と巣症状の有無と経過は 手術の適応や時期を決めるための重要な因子である. つまり緊急度の指標である. 二つの症候の有無, 種類, 程度と経過をわかりやすく整理して行う. 病歴聴取において, もし転移性脳腫瘍を疑うのであれば, がん治療の既往を確認するとともに, 原発巣と他臓器転移の状況について原発がん主治医に確認する.

1 頭蓋内圧亢進 原因 頭蓋内は頭蓋骨により閉鎖腔となっており 腫瘍による体積増加で頭蓋内圧が上昇する 体積増加要因 腫瘍自体の体積脳浮腫による体積増加閉塞性水頭症による脳室拡大 症状頭痛 ( 硬膜や血管の牽引痛 ) 嘔気 嘔吐上眼静脈灌流障害によるうっ血乳頭 さらに上昇するとヘルニア徴候意識障害 左右瞳孔不同 対光反射消失 自律神経失調 呼吸変調などに至る

頭蓋内圧亢進症状の三徴 頭痛 嘔気 嘔吐 うっ血乳頭

非特異的なもの 頭蓋内圧亢進症状の三徴 頭痛 : 脳自体は痛みを感じない臓器. 病変局所の痛みではなく血管および硬膜の牽引による放散痛を自覚する. 左右は一致しえるが, 領域に関しては腹側病変では側頭部 こめかみ 前頭部の痛みとして自覚され, 頭頂葉背側, 後頭葉 後頭蓋窩病変の場合は後頭部痛として自覚される. 痛みの型は非特異的で, 頭蓋外病変による頭痛と判別は困難. 嘔気 嘔吐 : 原因として頭蓋内圧亢進症状 脳幹圧迫症状 硬膜刺激症状などがあるが, 自覚的には非特異的. 消化管疾患との判別は随伴症状が少ないということ以外にはなく, 鑑別は難しい. 比較的特異的 うっ血乳頭 : 意外と確認が難しい 結局 CT 撮影が簡便で良い

2 局所症状 腫瘍の発生した部位により異なる 運動に関連した部位 : 手足が動かしにくい 言語に関連した部位 : 思うように言葉が出てこない 会話が混乱する 視力に関連した部位 : 眼がかすむ 暗い 見えにくい 精神活動に関連した部位 : 意欲がわかない 寝てばかりいる 物忘れがひどい, うつ病と間違えられる 高次脳機能障害の種類 : 記銘力障害, 性格変化, 遂行障害, 想起障害, 健忘, 失行 各種脳神経症状 : 視野欠損, 外眼筋麻痺による複視, 顔面感覚 運動障害, 構音障害, 嚥下障害, 味覚異常, めまいなど

2 局所症状

てんかん ( 巣症状の一つ ) 病態 : 神経細胞から信号の無秩序な暴発 乱発 病理 : 神経細胞は細胞膜電位の変化に伴う電気活動を行っている 細胞膜は通常分極状態にあるが 脱分極すると信号を発する これは厳格に制御されている てんかん発作とは この厳格な制御が乱れて無秩序に信号が暴発される状態をいう 症状 : 代表的な症状は四肢の強直性または間代性けいれん発作であるが これは 運動神経が信号を暴発した場合の症状 病変が運動神経から離れている場合 発作が起きてもけいれんを伴わない場合がある 具体的には意識障害 精神症状 一過性記憶障害 共同偏視 視覚障害 失語症状 疎通性障害など 一見とらえどころのない症状で発症していることもある 重積すると いわゆる non-convulsive status epilepticus と呼ばれる 付加情報 : けいれん発作に関して 代謝性のこむら返り 一過性のぴくつき 脊髄由来ミオクローヌスなどはてんかんではない

治療

治療法 手術 生検 ( 正確な脳腫瘍の診断には病理が必須 ) 化学療法 放射線療法 リハビリテーション 手術適応の考え方 一般的に 腫瘍が運動野や言語野といったいわゆる eloquent area に あるいは脳深部に存在する場合は 手術を行うとしても診断を確定することが目的の生検になる また eloquent area 近傍に腫瘍が存在する場合 どこが切除できない領域であるかを同定しなければならないが 腫瘍とその周辺浮腫によって脳の構造は偏位しているから通常の画像情報だけでは正確な判断は得られにくい そこで 種々の機能的マッピングやモニターを駆使して 時には覚醒下手術によって 術前術中に切除可能範囲を正確に決定する試みが拡がっている

疾患各論

膠芽腫 Glioblastoma case1 case2

神経膠腫の手術と治療 各種画像検査 生化学検査 造影 CT, 造影 MRI, 脳血管撮影検査 各種遺伝子検査 手術 生検化学療法放射線療法リハビリテーション ナビゲーション, 神経モニタリング覚醒下手術, 5-ALA, BCNU ウエファー テモゾロマイド, ベバシズマブ 拡大局所照射, GKS, IMRT 理学療法, 言語療法など

髄膜腫 meningioma 90% が良性 (WHO grade1) 50~69 歳に好発 (55%) 女性に多い ( 男性の 3 倍 ) 症状 : 頭蓋内圧亢進症状, てんかん, 脳神経症状局所症状 ( 片麻痺 失語など )

傍矢状洞部髄膜腫 円蓋部髄膜腫 蝶形骨縁髄膜腫 大脳鎌髄膜腫

良性腫瘍の治療 1. 開頭摘出術外科治療特有のリスクを孕んでいる 2. 放射線治療効果は未知数だが 確実に進歩している 3. 経過観察まずは落ち着いて考える

下垂体腺腫 年間発生頻度 :10 万人に 2.2 人特徴 : 腫瘍は柔らかくて易出血性緩徐に発育する良性腫瘍好発年齢 : 成人に好発性差 :PRL と ACTH は女性に多い (M:F=1:3) ホルモン非産生腫瘍プロラクチン産生腫瘍成長ホルモン産生腫瘍 ACTH 産生腫瘍 45% 55 ~ 59 歳 25% 25 ~ 49 歳 20% 45 ~ 49 歳 5.5% 35 ~ 39 歳

下垂体腺腫造影 MRI 画像 矢状断 冠状断 下垂体腺腫の共通の症状 視野障害 下垂体卒中

成長ホルモン産生性下垂体腺腫末端巨大症 高血圧 糖尿病 心疾患など全身疾患の合併により生命予後不良

ACTH 産生性下垂体腺腫クッシング病

ホルモン非産生腫瘍 プロラクチン産生腫瘍 成長ホルモン産生腫瘍 ACTH 産生腫瘍 下垂体腺腫の治療 視野障害があれば腫瘍摘出術による視神経除圧を行う 各種ホルモン分泌腺腫に対しては 腫瘍全摘出が望ましいが 困難な場合は薬物療法を追加する

神経鞘腫 定義 概念 : 末梢神経線維を覆っている Schwann 細胞より発生 Schwann 細胞を有しない嗅神経 視神経からは発生しない 年間発生頻度 10 万人に 1.3 人好発年齢 45~69 歳 64.4% 55~59 歳にピークあり種類 : 聴神経鞘腫 ( 前庭神経鞘腫 ) 70~80% 三叉神経鞘腫顔面神経鞘腫

脳原発性悪性リンパ腫 (primary central nervous system lymphoma) 特徴 : 脳実質に原発する節外性の悪性リンパ腫リンパ組織のない脳実質内に なぜ悪性リンパ腫が発生するのかは不明 年間発生頻度 :10 万人に対し 0.33 人 病理 :Non-Hodgkin Diffuse large B-cell type が最多 好発年齢 :60-64 歳がピーク 性差 : 男性 : 女性 =1.3:1 多発性 :25-30%

症状 治療 予後 初発症状 症状 1. 局所症状 50-80% と最多 2. 精神症状 20-30% 3.ICP 亢進症状 10-30% 1. けいれん 2. 片麻痺 3. 性格変化 4.ICP 亢進症状 治療生検 化学療法 ( メソトレキセート大量療法 ) 放射線療法 予後 1 年生存率 63.2% 2 年生存率 43.5% 5 年生存率 23.8%

造影 T1 MRI 画像 FLAIR 治療化学療法と放射線療法への感受性が優れていること ならびに全摘でも部分摘出でも生検でも生存期間が変わらないことから 生検で十分と考えられてきた ただし 最近は画像所見にて全摘出できれば生存期間の延長が得られるという報告がされている

転移性脳腫瘍

転移性脳腫瘍の治療方針 単発性直径 3cm 以上手術適応あり, 術後にRT 追加考慮直径 3cm 未満または手術不能例はSRS(+WBRT) 多発性 1 個が3cm 以上なら, その病変に対しては手術適応ありそれ以外の病変および手術不能例はSRS/WBRT SRS: 定位放射線療法 WBRT: 全脳照射 手術適応の考え方 原発巣が制御されていること, つまり進行性に悪化させる病巣が, 患者の状態および検査値から脳以外には存在せず, かつ予想される生存期間がおよそ 5~6 ヶ月以上である場合. 術前 ADL が基本的に自立, または術後に自立が見込まれること.

脳腫瘍は多様である. 症状も多様であり, 迷った時には画像検査が有用. 悪性脳腫瘍治療は待ったなし まとめ 良性脳腫瘍基本的に症候性なら治療は待ったなし無症候性なら治療方針は様々.