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樹状細胞のフェノタイプと免疫染色法 [Organ Biology 7(1): 21-30, 2000 を一部改変 ] 獨協医科大学解剖学マクロ講座松野健二郎 kenjiro Matsuno Key Words: 樹状細胞 フェノタイプ 酵素抗体法 多重免疫染色法 免疫組織学 Summary 樹状細胞 (DC) は リンパ造血系の細胞であり 免疫応答を引き起こす見張り番の機能を果たすプロフェッショナルな抗原提示細胞として知られており 臓器移植においてきわめて重要な役割を担っている 本稿では この DC のフェノタイプについて 動物種 成熟段階 亜集団による違いを解説する そして スメアや切片上に DC を特異的に染め出すやり方 さらに DC と免疫応答を組織学的に同時に解析できる実用的な方法を述べる 1. はじめに 樹状細胞 (Dendritic cell 以下 DC ) は リンパ造血系の細胞であり 免疫応答を引き起こす見張り番の機能を果たすプロフェッショナルな抗原提示細胞として知られている DC はいくつかの成熟段階を持ち 各段階で存在部位と機能 さらにはそのフェノタイプをも異にするというダイナミックな細胞集団である 1) DC の抗原提示細胞たる由縁は 抗原提示能力があるとされる他のマクロファージや B 細胞と比較して 少数で強い免疫応答を惹起出来ること さらには DC のみが未感作のナイーヴ T 細胞を活性化しうる事にある この差は DC の命名の由来となった四方八方に伸びた細胞突起が 抗原や T 細胞との効率的な接触機会を高めているのと同時に その膜表面に主要組織適合抗原 (major histocompa tibility complex) I 型と II 型分子 (MHCI, MHCII) B7-1/B7-2 などの costimulatory 分子 そして ICAM-1 などの接着分子を豊富に発現している為である 2) まさに 免疫応答の 起爆剤 といってもよいであろう 本稿では まず この DC のフェノタイプについて解説し 動物種 成熟段階 亜集団による違いを述べる そして スメアや切片上に DC を免疫染色により特異的に染め出す方法 さらに多重染色により 他の機能分子や周辺の細胞との相互位置関係を同時に解析する方法を おもに移植免疫の研究でよく使われるラットの細胞 組織について述べたい 2. 樹状細胞のフェノタイプ 1) 主に発現する分子と種差 ( 表 1) 表 1のように DC は MHCI MHCII ICAM1 CD86 等を強く発現するが いずれもに DC に特異的な分子ではない 2) したがって それに対する抗体で陽性に染まっても DC であることの直接の証明にならない 一方 動物によっては 比較的特異的なモノクローナル抗体が作成されており それで染色されれば DC である可能性が高くなる 例えば ヒトでは抗 CD83 抗 fascin 抗 CD1a 等が ラットでは OX62 が マウスでは抗 CD11c NLDC145 MIDC8 M342 などが主に DC または DC の一部を認識するという 3) 1

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2) 成熟段階による違い DC は 未熟なステージでは抗原の取り込みを 成熟期には抗原提示を主な機能として持つ したがって 未熟なほど Fc レセプター 補体レセプター ライソゾーム酵素 CD11a CD11b CD68 等のマクロファージが通常持つ分子を発現するが 成熟するほどにそれらの分子は down regulation され 代わりに MHCI MHCII Costimulatory 分子などが強く発現してくる 2) 3. 原理 本稿では 主に酵素抗体間接法とその応用 4)-8) について述べる ターゲットの細胞分化抗原 (CD 抗原 ) や機能分子は 加熱やアルデヒド系の固定で抗原性が失活するものが多く パラフィン切片ではうまくい かない事が多い したがって ターゲットには新鮮凍結切片や新鮮塗抹標本を用いる 凍結切片は形態学 的にパラフィン切片に劣るし 染色操作で切片が傷みやすい そこで我々は 染色過程で切片をアルデ ヒド系固定液でマイルドに処理する事により 抗原性を保ちながら良好な形態を得る方法を開発した 4), 5) また 2 で述べたように DC に特異的な抗体は少ないので 予めマクロファージと B 細胞を染色し 次に MHCII を染める 2 重免疫染色法を行うとよい 1), 5) これにより マクロファージと B 細胞は 2 重陽 性となり 一方 DC は MHCII 単陽性となるので特異的に染め出すことが可能となる 移植免疫学で重要 なパラメータである増殖細胞を検出するためには サイミジンアナログであるブロモデオキシウリジン (BrdU, Sigma) を予めラットに投与して取り込んだ細胞を免疫染色すればよい 6), 7) また IV 型コラーゲ ンを免疫染色すれば 基底膜や肝類洞裏打ちなどが染色され 組織構築の骨組みが見えてくる 1), 5) ので 結果を解析する助けになる 4. 実際 1) 抗体 薬品 DC に対する一次抗体としては マウスのモノクローナル抗体が数多く作成されており ほとんどが複 数の試薬会社から入手可能である マウスの DC に対するものはラットやハムスターのモノクローナル抗 体がある また 酵素標識二次抗体も簡単に入手できる いづれも異種の動物の抗体が望ましいが 同種 のものしか入手できない場合はビオチン化した抗体を使い 酵素標識ストレプトアビジンで染色すればよ い 我々が使用している抗体のリストを表 2 に示す 溶液類は PBS ( リン酸緩衝食塩水 ph 7.4 ) TBS ( トリス緩衝食塩水 ph 7.4) PBT (PBS+0.05% Tween 20 ガラス表面を親水化するので反応液がきれい に広がることができる ) Blocking solution ( ブロックエース 大日本製薬 ) などである 固定液は 特級アセトン ホルモールカルシウム液 (4% paraformaldehyde+1% 塩化カルシウム水溶液 ) 1% グルター ルアルデヒド液 ( 電顕用グルタール PBS 水溶液 ) を使用する 発色基質としては ペルオキシダーゼは 1 ), 4) ジアミノベンチジン (DAB 5mg/40 ml PBS + 30% H2O2 10μl 和光 ) テトラメチルベンチジン (True Blue, フナコシ ) と増感剤として 0.02% 塩化コバルト水溶液 アルカリホスファターゼは発色基質キッ トの New Fuchsin ( 赤, DAKO) キット III ( Vector Blue, 青, Vector Laboratories- フナコシ ) キッ ト II (Vector Black, 黒 ) などを使用する 発色剤は脱水封入出来ないものが多いので 水溶性の硬 化性封入剤 ( アクアテックス Merck) を用いる 3

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2) 器具クリオモルド (TissueTek, 図 1) OCT コンパウンド (TissueTek) シランコートスライドガラス (DAKO) 撥水性ペン ( ダコペン, DAKO, 図 2または PAP pen) ガラスドーゼ (Coplin jar, 図 2) 湿潤箱 ( 図 2) ピペットマン 試験管 エッペンドルフ遠心管 フラスコ ビーカーなどである 3) 凍結切片作成法 (1) ラットを麻酔下に瀉血屠殺後 組織を切り出し可及的に脂肪組織を取り除く BrdU については 生食に溶解し ラットに屠殺 1 時間前に静脈内または腹腔内投与 (6 mg/ml/300 g 体重 ) しておく (2) 複数の組織片を OCT コンパウンドを満たしたクリオモルドの中に一緒に包埋し 液体窒素 またはドライアイス上で速やかに凍結する ( 図 1) 凍結組織 切片は多くの抗原について 密閉状態で -20 で1 年間 -80 で数年間保存可能である (3) クリオスタットで 4 ~ 6 μ m の凍結切片を作成し 上記のスライドガラスに貼り付け 数時間から一晩室温風乾する (4) 特級アセトンで室温で 10 分間固定し 1 分間風乾する 撥水性ペンで OCT の糊代の外周を囲むように書きつけ 10 分間風乾する ( 図 2) (5) 染色の前処置として ドーゼに入れ 10 分間 TBS で水和した後 ホルモールカルシウム液に浸漬し1 分間だけ固定する (6) PBS で2 分間ずつ3 回洗う (7) PBT にリンスした後湿潤箱内 ( 図 2) でブロックエースを載せ 10 分間ブロッキングを行う 以上のことを塗抹標本についても同様におこなう 4) 抗 DC モノクローナル抗体による単染色法 (1) ブロックエースをデカントした後 湿潤箱内で1 番目のモノクローナル抗体 (50~200 μ l) を載せ室温で1 時間 または4 で1 晩反応させる (2) ドーゼにスライドを入れ PBS で2 分間ずつ3 回洗う (3) PBT に1 分間リンスした後 湿潤箱内でペルオキシダーゼ標識二次抗体を載せ室温で1 時間 または4 で1 晩反応させる (4) PBS で洗う (5) 1% グルタールアルデヒド液で 3 分固定し 蒸留水で3 回以上洗う (6) DAB 基質液に切片を浸漬し 顕微鏡でモニターしながら十分茶色になるまで 5 ~ 15 分間発色させる 基質液は廃液処理し 切片を蒸留水で洗う (8) ホルモールカルシウム液で 10 分間固定し 水洗後さらに 1% グルタールアルデヒド液で 7 分間固定する 水洗する (9) ヘマトキシリンで薄めにカウンター染色を行い 5 分間水洗し蒸留水で洗ったのちアクアテックスで封入する 1), 5)2 種のマウスモノクローナル抗体と抗 IV 型コラーゲン抗体で行う3 重染色法 5) ( 図 3) (1)~(4) 4) に同じ (5) 1% グルタールアルデヒド液で 30 秒固定し蒸留水で 3 回以上洗う 5

図 1. 複数の組織片を OCT コンパウンドを満たしたクリオモルドの中に一緒に包埋する ( 一度に多数の試料を検索できる ) 液体窒素の水面にクリオモルドの底面を接触させ急速凍結する 80% ほど凍った所で引き上げ 両手でクリオモルドを広げるように引っ張る ( ブロックが割れるのを防ぐため ) 図 2. スライドガラスに貼り付けた凍結切片を DAKO ペンで OCT の糊代の外周を囲むように書きつけたもの ( 試薬がスライド全体に広がるのを防ぐ ) 湿潤箱( 手製 栄研滅菌 1 号角シャーレにプラスチック角棒を貼り付け濾紙を敷いたもの ) とガラスドーゼ (Coplin jar スライドが 9 枚入る ) を示す 6

(6) PBT に1 分間リンスした後 湿潤箱内で TMB 基質キットを載せ 顕微鏡でモニターしながら十分 青くなるまで 3 ~ 5 分間発色させる 基質液は廃液処理し 切片を蒸留水で洗う (7) 塩化コバルト水溶液を加えた DAB 基質液に切片を浸漬し 顕微鏡でモニターしながら十分黒くな るまで 3 ~ 5 分間発色させる 基質液は廃液処理し 切片を蒸留水で洗う (8) ブロッキングを行う (9) 2 番目のモノクローナル抗体を反応させる (10) PBS で洗う (11) アルカリホスファターゼ標識二次抗体を反応させる (12) PBS で洗う (13) 湿潤箱内でアルカリホスファターゼ基質 New Fuchsin キットを載せ 顕微鏡でモニターしながら 20 ~ 30 分間発色させる 基質液は廃液処理し 切片を 20 分以上水洗する New Fuchsin の発色 ( 赤 ) が弱い場合は 軽く洗った後基質反応を繰り返すと増感できる (14) 10 分間ブロッキングを行う (16) 抗 IV 型コラーゲン抗体を載せ室温で 2 ~ 3 時間 または4 で一晩反応させる (17) ペルオキシダーゼ標識二次抗体 ( 抗ウサギ免疫グロブリン ) を反応させる (18) DAB 基質液に浸漬し 10 ~ 15 分間発色させる 基質液は廃液処理し 切片を蒸留水で洗う (19) ホルモールカルシウム液で 10 分間固定し 水洗後さらに 1% グルタールアルデヒド液で 10 分間 固定する 水洗する (20) ヘマトキシリンで薄めにカウンター染色を行い 5 分間水洗し蒸留水で洗ったのちアクアテック スで封入する 図 3. 正常ラット肝臓の間質性 DC の分布 3a: 肝凍結切片をクッパー細胞と B 細胞を黒 DC (OX62) を赤 そして IV 型コラーゲン ( 組織骨組み ) を茶色で3 重免疫染色したもの 5) 3b:3a の OX62 の代わりに MHCII を赤で3 重免疫染色したもので赤い細胞が DC である 1) P: 門脈 B: 胆管 (Bar = 25 μ m) 7

6)1 種のマウスモノクローナル抗体と増殖細胞 (BrdU) の 2 重染色 (1) 5の (1) ~ (5) と同様にして二次抗体をアルカリホスファターゼでおこない 基質キット III (Vector Blue) で青に発色する (2) 1% グルタールアルデヒド液で10 分間固定し蒸留水で洗う (3) 切片をペプシン水溶液 (0.006%, Sigma P7012) に浸漬し 37 で 10 分間消化する ( クロマチン 周囲の蛋白を取り除くため ) (4) 水洗後 切片を4N HCl に浸漬し室温で 30 分間処理する (DNA が単鎖化され BrdU 抗原が露出 し抗体と結合できるようになる ) (5) 5 分間水洗後蒸留水で洗い ホウ酸バッファー (0.1M, ph 8.5) で3 分間中和する (6) PBT で2 回洗った後 10 分間ブロッキングを行う (7) 抗 BrdU 抗体を載せ室温で1 時間 または4 で1 晩反応させる (8) PBS で洗う (9) アルカリホスファターゼ標識二次抗体を載せ室温で1 時間 または4 で1 晩反応させる (10) PBS で洗う (11) アルカリホスファターゼ基質 New Fuchsin キットを載せ 顕微鏡でモニターしながら 20 ~ 30 分 間発色させる (12) ホルモールカルシウム液で 10 分間固定し 水洗する (13) ヘマトキシリンで薄めにカウンター染色を行い アクアテックスで封入する 6), 7) 図 4. ラット胸管リンパの塗抹標本 T+B 細胞 ( 青 ) と MHCII ( 茶 ) の二重免疫染色 樹状細胞は Non T, Non B の MHCII 単陽性で茶色の大型の細胞としてはっきりわかる 8) (Bar = 25 μ m) 図 5. ラットリンパ節における樹状細胞 (MHCI アロタイプ陽性 青 ) と T 細胞 ( 茶 ) のクラスター形成 このクラスターの中で抗原呈示が行われる 7) (Bar = 10 μ m) 8

7), 8) 7)2 種のマウスモノクローナル抗体で行う2 重染色 5 と同様にして 1 番目をアルカリホスファターゼで青色に 2 番目をペルオキシダーゼで茶色に発 色させればよい ( 図 4 5) 8) コントロール染色とキーポイント (1) 抗体の至適濃度 : 一次抗体は通常 5 ~ 50 μ g/ml 位の濃度で十分発色するが 薄すぎても濃すぎてもうまく発色しなくなる 予め 5, 15, 50 μ g/ml の3 点で Titration し 個別に至適濃度を決めておく事が大事である 一次 二次抗体ともに 0. 2% BSA ( ウシ血清アルブミン ) 入り PBS で希釈する 二次抗体はターゲット動物の免疫グロブリンに交差する場合があるので ターゲット動物の血清蛋白で吸収したものを使用し さらに 56 で 30 分処理したターゲット動物の正常血清を 1 % の割合で加える テトラメチルベンチジン基質を使用する場合は 感度が通常の DAB 基質より数十倍高いので 一次 二次抗体ともに 通常のさらに5 倍に希釈して反応させないと切片全体が黒くなってしまう また テトラメチルベンチジンの黒い染色は1 日で褪色するので 顕微鏡写真撮影をできるだけ早く行わなければならない (2) ネガコン : 一次抗体か 二次抗体の代わりに PBS を載せ反応させた場合 特異染色が消失すること 多重染色の場合は2 番目のモノクローナル抗体をオミットした時 1 番目の発色に2 番目の発色がカブってこないこと 抗原を含まない組織切片で特異染色が消失すること を満たしていることが必要である (3) 酵素活性と 基質活性の検定 : 酵素標識二次抗体の反応が終わった後 抗体液をデカントして濾紙に吸い取らせる その濾紙に基質液を数滴たらしてみて 発色してくるなら酵素 基質ともオーケーである (4) 本法は2 種の抗原が 核と細胞膜や別々の細胞に発現している場合に適しており 同じ部位が2 重陽性であることを証明することは難しい なぜなら マウス一次抗体を複数使用するので どうしても交差反応で1 番目の発色に2 番目の発色がカブってくることがあるからである 2 重陽性は蛍光抗体法直接法を2 度おこない 共焦点レーザー顕微鏡で証明した方がより確実である また 本法でもカブリを避けるため 1 番目の発色に濃い色の基質を使用している (5) 酵素抗体間接法の代わりに ABC 法を用いてもかまわない しかし 肝臓など内因性ビオチンのためうまく行かない場合も考えられるし 個別に条件を調整する事が必要となろう 終わりに DC は臓器移植において きわめて重要な役割を担っている 本稿で述べた多重免疫染色法により in vivo における DC の動態や細胞間相互作用を研究することが可能になる 免疫組織学が読者諸氏にとって身近な方法となり 移植免疫における拒絶反応のメカニズムと意義の解明に少しでも役に立つようになれば 筆者の喜びとするところである 文献 1) Matsuno K, Ezaki T : Dendritic cell dynamics in the liver and hepatic lymph. Int Rev Cytol 197: 83-135, 2000. 9

2) Bell D, Young JW, Banchereau J : Dendritic cells. Adv Immunol 72: 255-324, 1999. 3) Leenen PJM, Kraal G, Dijkstra CD : Markers of rodent myeloid cells. In: Handbook of Experimental Immunology, 5th edition. (Herzenberg LA, Weir D, Herzenberg LA, Blackwell C, eds.). Blackwell Science, Inc., Malden, MA, pp. 174.1-174.25, 1997. 4) Matsuno K, Ezaki T : In-vivo migration of dendritic cells. In Robinson S, Stagg A (eds) : Methods in Molecular Medicine. Humana Press, Totowa. 5) Matsuno K, Ezaki T, Kudo S, Uehara Y : A life stage of particle-laden rat dendritic cells in vivo: Their terminal division, active phagocytosis and translocation from the liver to the draining lymph. J. Exp. Med. 183: 1865-1878, 1996. 6) Matsuno K, Ezaki T, Kotani M : Splenic outer periarterial lymphoid sheath (PALS). Cell Tissue Res 257: 459-470, 1989. 7) Kudo S, Matsuno K, Ezaki T, Ogawa M : A novel migration pathway for rat dendritic cells from the blood: Hepatic sinusoids-lymph translocation. J. Exp. Med. 185: 777-784, 1997. 8) Matsuno K, Kudo S, Ezaki T, Miyakawa K: Isolation of dendritic cells in the rat liver 10