(Microsoft Word - \226I\342|\220D\211\212 Cellulitis \201iClinical Practice\201j\201ANEJM, Feb26, 2004)

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耐性菌届出基準

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2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー「総論」(2017年4月12日開催)

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32


2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

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ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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Microsoft Word - 感染症と予防接種について doc

市中肺炎に血液培養は必要か?

分離・同定検査

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

48小児感染_一般演題リスト160909

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

壊死性n

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ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン<医療従事者用>

2012 年 7 月 18 日放送 嫌気性菌感染症 愛知医科大学大学院感染制御学教授 三鴨廣繁 嫌気性菌とは嫌気性菌とは 酸素分子のない環境で生活をしている細菌です 偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌があります 偏性嫌気性菌とは 酸素分子 20% を含む環境 すなわち大気中では全く発育しない細菌のことで 通

2009年8月17日

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日本化学療法学会雑誌第64巻第4号

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

2 経験から科学する老年医療 上記 12 カ月間に検出された病原細菌総計 56 株中 Escherichia coli は 24 株 うち ESBL 産生菌 14 株 それ以外のレボフロキサシン (LVFX) 耐性菌 2 株であった E. coli 以外の合計は 32 株で 内訳は Enteroco

通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (


2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

プライマリーケアのためのワンポイントレクチャー「抗菌薬①」(2016年4月27日)

名称未設定

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

頭頚部がん1部[ ].indd

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Microsoft Word - 届出基準

とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

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第10回 感染制御部勉強会 「症例から考える感染症診療」


染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

浜松地区における耐性菌調査の報告

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

はじめに 緩和ケア期には四肢や顔面 体幹部に浮腫を発症することがあります また発症していたリンパ浮腫ががんの進行で悪化することもあります がんの進行を抑える抗癌剤の一部には 副作 用で重症の浮腫を来すことがあります 緩和ケア期の浮腫の要因 病態は複雑で 癌性疼痛や神経麻痺 しびれなど 浮腫を治療する

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抗菌薬と細菌について。

1 MRSA が増加する原因としては皮膚 科 小児科 耳鼻科などでの抗生剤の乱用 があげられます 特にセフェム系抗生剤の 使用頻度が高くなると MRSA の発生率が 高くなります 最近ではこれらの科では抗 生剤の乱用が減少してきており MRSA の発生率が低下することが期待できます アトピー性皮膚炎

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日本化学療法学会雑誌第61巻第6号

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改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

15,000 例の分析では 蘇生 bundle ならびに全身管理 bundle の順守は, 各々最初の 3 か月と比較し 2 年後には有意に高率となり それに伴い死亡率は 1 年後より有意の減少を認め 2 年通算で 5.4% 減少したことが報告されています このように bundle の merit

2012 年 2 月 22 日放送 人工関節感染の治療 近畿大学整形外科講師西坂文章はじめに感染人工関節の治療について解説していきます 人工関節置換術は整形外科領域の治療に於いて 近年めざましい発展を遂げ 普及している分野です 症例数も年々増加の傾向にあります しかし 合併症である術後感染が出現すれ

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

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別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

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ルギー性接触皮膚炎症候群と診断されました 欧州医薬品庁は昨年 7 月にケトプロフェン外用薬に関するレヴュー結果を公表し 重篤な光線過敏症の発症は10 0 万人に1 人程度でベネフィットがリスクをうわまること オクトクリレンが含まれる遮光剤が併用されると光線過敏症のリスク高まることより最終的に医師の処

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

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学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

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したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

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「             」  説明および同意書

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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BV+mFOLFOX6 療法について 2 回目以降 ( アバスチン +5-FU+ レボホリナート + エルプラット ) 薬の名前アロキシ注吐き気止めです デキサート注 アバスチン注 エルプラット注 レボホリナート注 作用めやすの時間 5-FU の効果を強める薬です 90 分 2 回目から点滴時間が短

Ⅲ. 検査検査は軽症 (0 項目 ) と中等症 (1 2 項目 ) では肺炎球菌尿中抗原 必要によりレジオネラ尿中抗原とインフルエンザ抗原 中等症 (1,2 項目 ) と重症 (3 項目 ) ではさらに喀痰グラム染色 喀痰培養を追加 超重症 (4,5 項目 ) ではさらに血液培養 血清検査とストック

 85歳(141

減量・コース投与期間短縮の基準

4月号 学会特集号 122247/16)一般演題目次

第2次JMARI報告書

Transcription:

蜂窩織炎 Cellulitis (Clinical Practice) NEJM, Feb26, 2004 西伊豆早朝カンファランス仲田和正 H24.6 著者 : Morton N. Swartz,MD Mssachusetts General Hospital, ハーバード医科大感染症科 IDATEN で大野博司先生にご紹介頂いた NEJM,Feb26,2004 の蜂窩織炎 (cellulitis) の総説 (Clinical Practice) をまとめてみました 素晴らしい内容で 蜂窩織炎はこれだけ知っていれば完璧だなと思いました 治療も極めて具体的でかつ鑑別診断も網羅されてます 著者はハーバード医科大学 Massachusetts General Hospital 感染症科の Morton N. Swartz というドクターです マサチューセッツって一体どういう意味だろうと調べてみたところアメリカインディアンのマサチューセッツ族の言葉で 大きな丘の辺り という意味だそうです 米国の地名はインディアンの言葉が多いのだそうで 下のホームページに一覧表がありました オハイオは 大きな河 イリノイは 優れた男の部族 ケンタッキーは 明日の地 だそうです http://www.infoplease.com/ipa/a0854966.html ( 米国の州の名前の由来 ) 米国ではインディアンのことをインディアンとは言わず Native American と言います 以前 近くの高校の ALT(Assistant language teacher) にブラックの人々のことを何と呼べば良いのかと聞いたところ 大変 sensitive な問題であり African American と呼ばなければならないのだそうです 蜂窩織炎と丹毒の違いって小生 よく解ってなかったのですが 蜂窩織炎は皮膚とその深部の病変ですが 丹毒は真皮上層の皮膚のみの A 群ベータ溶連菌による病変だそうです 蜂窩織炎の辺縁はぼやけているけど丹毒の辺縁ははっきりしており皮膚がオレンジの皮様になるのだそうです 知りませんでした http://en.wikipedia.org/wiki/file:facial_erysipelas.jpg ( 丹毒 erysipelas の写真 ) 小生の小さかったころ 顔のできものは面疔 ( めんちょう ) と言って髄膜炎を起こすと言って恐れられていました 小児では meningococcus により眼窩蜂巣炎が起こることがあり海綿静脈洞血栓や視力低下 眼球運動低下を起こすそうです 面疔ってこの眼窩蜂巣炎を含めて言っていたのかなあと思いました 1 / 19

この総説によると眼窩蜂巣炎と眼窩周囲蜂巣炎とは違うのだそうで 眼窩周囲蜂巣炎とは眼 窩隔膜より前方の炎症 眼窩蜂巣炎はこの膜より奥の眼窩内の炎症だそうです http://www.ideganka.or.jp/scholar_r_ophthalmic.php ( この中の図の 3 の青色の組織が眼窩隔膜です ) 現在 日本でも Hib ワクチンが接種されるようになりましたが 小児の頬部蜂窩織炎の 25% は Haemophilus influenza type b によるのだそうです 人体の場所によって特異的な蜂窩織炎があり 先に述べた meningococcus による眼窩蜂巣炎 hamophilus influenza type b による頬部蜂窩織炎 A 型連鎖球菌による肛門蜂窩織炎などがあり いずれも小生 全く知りませんでした また へー と思ったのは大腸憩室膿瘍から膿が下行し大腿に捻髪音を伴う蜂窩織炎を起こすことがあるそうです 捻髪音がする蜂窩織炎は clostridium によるガス壊疽が一番有名ですが その他に嫌気性菌の bacteroides peptostreptococci peptococci があります また E.coli や klebsiella aeromonas は 通性バクテリア (facultative bacteria) と言って 酸素があれば好気性代謝でエネルギーの ATP を得ますが 酸素がなければ発酵に切り替えてエネルギーを得 その際 ガスとして二酸化炭素を放出するのです ですから E.coli klebsiella aeromonas は嫌気的条件ではガスを発生します 小生 今まで酒造りの発酵の意味がよく解らなかったのですが 発酵は酵母菌 ( イースト菌 乳酸菌 ) が嫌気的条件下で有機化合物を酸化してアルコール 二酸化炭素 有機酸を生成する過程なのだそうです しかし E.coli や Klebsiella も発酵するのか E.coli の酒はさぞまずかろうなと思いました この 5 月の連休に家内と新潟の糸魚川ジオパークを見学してきました フォッサマグナを現地で見たのですが 面白かったのはフォッサマグナの真上に渡辺酒造という酒造会社があり 酒造りの為に井戸を 2 本掘ったのですが 酒の味が井戸により違うというのです 大断層で分かれていたためです 余りに面白かったのでここの男山という純米吟醸酒を買ってきてしまいました 甘口の酒でした http://www.nechiotokoyama.jp/ ( 糸魚川 渡辺酒造店 ) 糸魚川ジオパークで感動したのは 何と言っても明星山でした ロッククライミングで有名な絶壁があるのですが この山全部がなんと中生代ジュラ紀の石灰岩 ( サンゴ化石 ) なのです つまり恐竜が生きていた中世代 (2 億 5 千万年前から 6 千 5 百万年前 ) にはなんと海底だったのです また明星山の谷底ではヒスイの巨岩がゴロゴロしていました 糸魚川の海岸ではヒスイらしき石も拾ってきました 2 / 19

http://www.yamakei-online.com/yamanavi/img/main_photo/457_raw.jpg ( 明星山 真ん中の山全てが中生代ジュラ紀のサンゴの石灰岩 ) 一般的な蜂窩織炎はほとんど Streptococcus か Staphylococcus aureus が起因菌なので第 1 選択の抗菌剤はセファメジンかロセフィンです Streptococcus は A 群 G 群 B 群が多いそうで AKB ならぬ AGB です セフェム系の多くは半減期 1 時間ですから 1 日 3,4 回の投与が必要です セファメジンなら 1g を 6 8 時間毎 ロセフィンは半減期 6 時間なので 1g/1 回 / 日です ある程度落ち着いたらケフレックス (250)2C を経口で 4 回 / 日でも良いそうです 驚いたのは 初期にセファメジン 2g を 1 日 1 回とプロベネシド 1g1 日 1 回内服でも良いというのです プロベネシドはペニシリンやセフェムの排出を遅らせ血中濃度を高めるからです これなら外来治療でできます 実際この使い方はどうなのでしょうか 皆さまのコメントが頂ければ幸いです MRSA の場合はバンコマイシン 1-2g/ 日かザイボックス (linezolid)600 mg 2 回 / 日静注の後 経口でザイボックス 600 mg 2 回 / 日だそうです 重要なのは糖尿病がらみの蜂窩織炎は グラム陽性菌 グラム陰性菌 嫌気性菌の 3 種類がい ることが多いのでエンピリカルに抗菌剤を使う場合 第 1 選択はユナシン S 第 2 選択はメロ ペンかチエナムを使えとのことです ヒト 犬 猫咬傷での第 1 選択はオーグメンチン 500 時間毎だそうです ヒト咬傷では口腔内嫌気性菌 犬 猫では P.multocida などが起因菌になります 浮腫があると蜂窩織炎は悪化することが多いので極力浮腫を減らせとのことです また蜂窩織炎では菌血症は稀で 4% でしか血培が陽性にならず費用対効果が低いそうです ですからルーチンに血培をやる必要はありません ただし 蜂窩織炎が浮腫を伴っている時は 血培をやれとのことです その他 血培を行うべきは頬部 眼窩周囲蜂窩織炎 海水 真水関連 悪寒高熱ある時です 蜂窩織炎は足白癬から始まることが多いので足趾間に亀裂がある時はただちに抗真菌剤クリームを塗布して徹底的に治せとのことです 蜂窩織炎の再発予防には足白癬の即治療 皮膚衛生 浮腫あればストッキングを着けます 浮腫は蜂窩織炎の大きなリスクとなります 同じ場所に何度も蜂窩織炎を繰り返す時は何と PCG やエリスロマイシンの定期的予防内服をすることもあるのだそうです 壊死性筋膜炎は type1 と type2 に分けます Type1 は嫌気性菌と通性嫌気性菌によるものでガス産生により捻髪音 (+) のことがあります Tpye2 は A 群連鎖球菌で起こり捻髪音はありません 壊死性筋膜炎診断には MRI が優れ感度 100% 特異度 86% です 3 / 19

MRI 所見は深部筋膜波及 液体貯留 筋膜肥厚 筋膜造影です しかし確定診断はあくまでも生検か手術です 以前 内科の先生から壊死性筋膜炎ではないかと患者さんの相談をされました 壊死性筋膜炎と言ってもいろいろ程度があるようで 大腿部で筋膜の生検をしてみましたが 筋膜が何だか水っぽいなあという程度で悪臭もなく半信半疑でしたが鏡検で streptococcus が見つかり即座にヘリ搬送 広範囲皮膚筋膜切除となりました ガス壊疽は clostridium perfringence による筋壊疽で筋内 筋膜面にガスがあります 肝硬変患者が生牡蠣 ( カキ ) を食べて下肢の血性水疱を伴う蜂窩織炎を起こした時は Vibrio vulnificus 感染を考えよとのことです これは山中克郎先生 佐藤泰吾先生編著の ダ ヴィンチのカルテ Snap diagnosis を鍛える (CBR 社 ) にも載っていました Vibrio vulnificus の治療はこの総説ではテトラサイクリンのビブラマイシン静注を勧めていますが 国内にはないのでミノマイシン静注で代用することになります 海水に関連した蜂窩織炎では常に Vibrio vulnificus 感染を考える必要があります http://www.aafp.org/afp/2007/0815/p539.html (Vibrio vulnificus による蜂窩織炎の写真があります ) 一方 真水に関連した蜂窩織炎では Aeromonas hydrophila を考えるのだそうです 傷を川の水に浸したような場合です Aeromonas hydrophila も Vibrio vulnificus と同じような血性水疱を伴う蜂窩織炎や筋肉壊死を起こします Aeromonas に対する第 1 選択は Ciproxacin です 養殖魚との接触による蜂窩織炎は Streptococcus iniae を考えるそうです Inia とはアマゾンにいる川イルカのことです 日本でもヒラメなどの養殖魚が罹って経済的打 撃を受ける病気です http://ameblo.jp/regino/entry-10959733204.html ( アマゾンの川イルカ ) 肉屋や獣医の場合 豚丹毒 (Erysipelothrix rhusiopathiae) というのを起こすことがあるそうです 豚やイノシシにいるのですがヒトに感染すると類丹毒と言い丹毒と似ているそうです これに対しては軽症の皮膚感染ならサワシリン 重症なら PenicillinG 静注です 伊豆ではイノシシ猟がよく行われ 当院の近くでも猟師さんたちが解体をしていますので類丹毒の可能性は頭の片隅におかなければならないと思いました 以前 当院から 200m 位の所で小学校 1 年生がイノシシに襲われ当院に入院しました 長いこと PTSD が続き 鬼ごっこで追いかけられるとこの時のことがフラッシュバックすると言ってました また 近くのスーパーマーケットにイノシシが入りこんで大騒ぎになったこともありました 4 / 19

当地では猟師さんも高齢化し 最近は役場職員に銃砲の免許を取らせて鹿 イノシシの駆除を 行ってます 以上 特殊な状況で覚えるべき起因菌は 海水関連は Vibrio vulnificus: ミノマイシン 真水関連は Aeromonas hydrophila: シプロキサン 養殖魚関連は Streptococcus iniae: ペニシリン 豚 イノシシで Erysipelothrix rhusiopathiae: サワシリンです 蜂窩織炎と似た病態の鑑別診断として 皮膚炭疽病は黒い痂皮の周囲に浮腫があり一見ツツガムシ病のようです 炭疽菌 (anthrax) はバイオテロに使われる危険があります 2001 年に米国で郵便により炭疽菌入りの粉がばらまかれ 22 例の発症がありました 皮膚 呼吸器 消化管症状を起こします http://www.daviddarling.info/encyclopedia/a/anthrax.html ( 炭疽病の皮膚病変の写真 ) 小生が研修医の頃の上司に満州医大を卒業された方がいらしたのですが 終戦時 ソビエト軍 に 731 部隊と関係していないか徹底的に尋問されたとおっしゃっていました http://ja.wikipedia.org/wiki/731%e9%83%a8%e9%9a%8a ( 関東軍 731 細菌戦部隊 ) 血液癌で蜂窩織炎に似た Sweet 症候群があります 白血病や骨髄異形成症候群で起こり 発熱 末梢血好中球増加 好中球浸潤性紅斑を三徴とす るのだそうです http://www.mayoclinic.com/health/medical/im00003 (Sweet s syndrome) 乳癌患者で皮膚転移により丹毒とよく似た Carcinoma erysipeloides を起こします 逆に乳癌患者で丹毒様の病変を見たら乳癌皮膚転移を考える必要があります http://anagen.ucdavis.edu/142/letters/erysipeloides/zawar.html (Carcinoma erysipeloides の写真 ) 中心がクリアな蕁麻疹様皮疹は Wells 症候群で好酸球浸潤です http://archderm.jamanetwork.com/article.aspx?volume=142&issue=9&page=1157 (Well s syndrome) 5 / 19

NEJM 蜂窩織炎の総説要点は以下の 47 点です 医療法人健育会西伊豆病院仲田和正 NEJM 蜂窩織炎総説要点 1. 蜂窩織炎の辺縁はぼやけている 2. 丹毒はオレンジ皮様で盛り上がり境界ははっきりしている 3. 眼窩周囲蜂巣炎は眼窩隔膜より前方の炎症 4. 眼窩蜂巣炎は眼窩内で眼球運動低下 視力低下 海綿静脈洞血栓起こす 5. 小児で meningococcus による眼窩蜂巣炎起こす 6. 小児の頬部蜂窩織炎の 25% は haemophilus influenza type b による 7. 小児の肛門蜂窩織炎は A 型連鎖球菌による 8. 蜂窩織炎は脂肪吸引 非合法薬皮下注 乳癌術後 伏在静脈採取で起こり易い 9. 捻髪音のする蜂窩織炎は以下の菌で起こる 10. Clostridia,bacteroides,peptostreptococci,peptococci,E.coli,Klebsiella,aeromonas 11. 海水曝露後の蜂窩織炎は Vibrio vulnificus を考える 12. 肝硬変でカキ生食により Vibrio vulnificus による出血性水疱伴う蜂窩織炎起こす 13. 真水曝露後なら Aeromonas hydrophila を考える 14. 養殖魚は Streptococcus iniae を考える 15. 浮腫があると蜂窩織炎を起こしやすい! 16. 大腸憩室膿瘍が大腿の捻髪音を伴う蜂窩織炎を起こすことあり 17. 壊死性筋膜炎の確定診断は生検か手術である 18. 壊死性筋膜炎 type1 は嫌気性菌と通性嫌気性菌により捻髪音 (+) のことも 19. 壊死性筋膜炎 type2 は A 群連鎖球菌で起こり捻髪音はない 20. ガス壊疽は clostridium perfringence による筋壊疽で筋内 筋膜面にガスがある 21. 皮膚炭疽病は黒い痂皮の周囲に浮腫 22. 血液癌で蜂窩織炎に似た Sweet 症候群起こす 23. 中心がクリアな蕁麻疹様皮疹は Wells 症候群で好酸球浸潤 24. 乳癌皮膚転移で carcinoma erysipeloides 起こす 25. 蜂窩織炎を起こす 2 大菌はブドウ球菌と連鎖球菌 (A,G,B) である 26. 糖尿病患者での起因菌はグラム陽性菌 グラム陰性菌と嫌気性菌である 27. 蜂窩織炎で菌血症は稀 (4%) であり費用対効果が低い 28. 血培で陽性になるのはブドウ球菌 A 群連鎖球菌 H.influenza P.multocida 29. リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎は血培やれ 6 / 19

30. 血培行うべきは頬部 眼窩周囲蜂窩織炎 海水 真水関連 悪寒高熱ある時 31. 壊死性筋膜炎で MRI の感度 100% 特異度 86% ただし確定は生検で 32. 壊死性筋膜炎の造影 MRI 所見は以下の通り 33. MRI 所見は深部筋膜波及 液体貯留 筋膜肥厚 筋膜造影 34. 一般的蜂窩織炎の第 1 選択はセファメジン 1g6-8h 毎かロセフィン 1g/ 日 35. または CEZ2g1 日 1 回 +Probenecid1g/ 回 / 日 36. 以後ケフレックス 0.5g6 時間毎経口 37. MRSA ではバンコ 1-2g/ 日かザイボックス 0.6g12 時間毎静注 38. MRSA 以後の継続はザイボックス 0.6g12 時間毎経口 39. DM 足潰瘍の第 1 選択はユナシン S 3g6 時間毎 第 2 選択はメロペンかチエナム 40. ヒト 犬 猫咬傷の第 1 選択はオーグメンチン 500 mg 8 時間毎 41. 海水曝露あり Vibrio vulnificus 疑う時 日本ではミノマイシン (TC) 使用 42. 真水曝露あり Aeromonas 疑う時 シプロキサン 400 mg 12 時間毎静注 43. 獣肉で Erysipelothrix rhusiopathiae( 豚丹毒 ) 疑いでサワシリン PCG 44. 蜂窩織炎患者で趾間真菌ある時は抗真菌剤塗布して直せ 45. 蜂窩織炎再発防ぐためわずかでも趾間真菌疑ったら抗真菌剤塗布 46. 蜂窩織炎再発予防に足白癬の即治療 皮膚衛生 浮腫あればストッキング 47. 蜂窩織炎を同じ場所に繰り返す時は PCG かエリスロマイシン予防内服 蜂窩織炎 Cellulitis (Clinical Practice) NEJM, Feb26, 2004 西伊豆早朝カンファランス仲田和正 H24.6 著者 : Morton N. Swartz,MD Mssachusetts General Hospital, ハーバード医科大感染症科 症例 健康 40 歳男性 足背の熱感 疼痛 発赤にて受診 圧痛を伴う浮腫と発赤が脛骨前まで及ぶ 趾間皮膚に亀裂あり 診断と治療は? 1.The Clinical Problem 蜂窩織炎は真皮 皮下組織を進展する急性 化膿性の炎症であり外傷 潰瘍 皮膚疾患に合併 する 下肢に起こることが多いが圧痛 温感 発赤があり腫脹している 周囲皮膚とははっきりした境界 (sharp demarcation) がない 7 / 19

Erysipela( 丹毒 ) は表在性 ( 真皮のみ ) の蜂窩織炎でありリンパ管がおかされ皮膚は硬化し てオレンジの皮 (peau d orange) 様になり境界は盛り上がり周囲とはっきり境される 蜂窩 織炎の解剖学的位置 既往歴 曝露歴などから適切な抗菌薬治療を選択する a. 解剖学的特徴眼窩周囲蜂巣炎 (Periorbital cellulitis) は orbital septum( 眼窩隔膜 ) より前方の眼腱と眼球周辺組織の蜂窩織炎である 眼窩蜂巣炎 (orbital cellulitis) とは区別が必要である 眼窩蜂巣炎では眼球運動低下 視力低下 海綿静脈洞血栓などを起こす 小児が Haemophilus influenza type b ワクチン投与される前は 3 カ月から 24 カ月の小児の 顔面蜂窩織炎の 25% は Haemophilus influenza type b による頬部蜂窩織炎 (buccal cellulits) であった この感染は上気道炎から続発するが現在は稀である 肛門周囲蜂窩織炎 (perianal cellulitis) は小児に起こり主に group A streptococci による 肛 門周囲の痒み 発赤 亀裂 膿 直腸出血を起こす b. 蜂窩織炎を起こしやすい曝露脂肪吸引後の合併症としてひどい細菌性蜂窩織炎を起こすことが知られている 非合法薬 (illicit drugs) の皮下注 (skin popping 乳癌術後 数週から数カ月で時に反復性の特有の蜂窩織炎を起こすことがある 根治的乳房切除 (radical mastectomy) 後 リンパ浮腫に伴う同側の蜂窩織炎はよく知られている 乳房温存手術後の同側の胸の蜂窩織炎も今日では多い CABG で大伏在静脈を下肢から採取した後に下肢で蜂窩織炎が起こる 静脈採取によりリンパ系が損傷され浮腫が起こるからである c. 蜂窩織炎の普通でない症状 捻髪音のする蜂窩織炎 (crepitant cellulitis) は clostridia あるいは無胞子嫌気性菌 (non-spore-forming anaerobes) すなわち bacteroides 類 peptostreptococci peptococci など単独で起こることもあるし通性嫌気性菌 (facultative bacteria : 酸素があってもなくても生きられる菌 ) 特に Escherichia coli Klebsiella aeromonas などと複数で起こることもある 壊死性蜂窩織炎 (gangrenous cellulitis) は皮下組織 皮膚の壊死を起こす 皮膚壊死は通常の蜂窩織炎に合併することもあるし特有症状を伴うこともある 例えば免疫不全での壊死性皮膚 mucormycosis( 真菌 ) などである 8 / 19

d. 蜂窩織炎の初発部位 蜂窩織炎の初発部位を特定することは それが皮膚だろうと 隣接組織だろうと 血行性だろ うと 起因菌同定 必要追加処置の決定の鍵となる よくあるのが 皮膚外傷かその下部組織 例えば潰瘍 足趾間亀裂などである 動物あるいはヒト咬傷は その動物の皮膚あるいは口腔内常在菌が播種される 特殊な菌として 海水 (sea water) に曝露された後であれば Vibrio vulnificus 真水 (fresh water) 曝露後なら Aeromonas hydrophila 水産養殖した魚なら Streptococcus iniae を考え る http://www.lookfordiagnosis.com/mesh_info.php?term=aeromonas+hydrophila&lang=1 (aeromonas hydrophila 画像 ) 浮腫があると蜂窩織炎を起こしやすい 蜂窩織炎や丹毒から回復後 有る程度のリンパ浮腫が 残ると再発を起こしやすく最初の炎症よりも長引きやすい 時に蜂窩織炎が近隣の骨髄炎から波及することがある 初発部より離れた場所で起こることもある 左大腿の捻髪音 (crepitant) を伴う蜂窩織炎の場 合 慢性の大腸憩室膿瘍のことがある 稀に敗血症から蜂窩織炎が生ずることもある 免疫低下患者 (DM アルコール多飲 SLE ネフローゼ 血液ガン) では稀に肺炎球菌による蜂窩織炎を起こすことがある 髄膜炎球菌 (miningococcus) による蜂窩織炎が小児で眼窩周囲に 成人で四肢に生ずることがある 肝硬変 ヘモクロマトーシス タラセミナ患者が牡蠣 ( カキ ) を生食して Vibrio vunificus に よる敗血症を起こし出血性水疱を伴う四肢の蜂窩織炎を起こすことがある 免疫低下患者でその他のグラム陰性菌 (E.coli など ) による皮膚病変 あるいは敗血症に引き続き蜂窩織炎を起こすことがある 好中球減少症患者では Pseudomonas aeruginosa 敗血症に引き続き蜂窩織炎が起こる場合ある 免疫低下患者ではより稀な日和見感染 (opportunistic infection) による蜂窩織炎が敗血症に 引き続き起こることがある HIV 患者では Helicobacter cinaedi Cryptococcus neoformans fusarium proteus pseudomonas などである 9 / 19

e. 蜂窩織炎の鑑別診断 蜂窩織炎に似た軟部組織感染は鑑別しなければならない というのも壊死性筋膜炎やガス壊疽 では広範なデブリドマンが必要だからだ 壊死性筋膜炎の確定診断は生検か手術でしかできな い A. 感染症 1 壊死性筋膜炎 Type 1; 嫌気性菌と通性嫌気性菌 (streptococci や Enterobacteriaceae など ) による通性嫌気性菌 (facultative anerobe) とは細菌のエネルギーを酸素があれば好気性呼吸で なければ発酵 (fermentation) により得るものを言う Type 1 は急速に広がる深部筋膜感染で激痛 圧痛 腫脹 しばしば crepitus( 捻髪音 ) がある 皮膚に水疱 壊死がある Type 2:Group A stereptococci によるもの しばしば toxic shock syndrome を伴う急性感染 著明な浮腫が急速に進行し紫色の水疱 壊 死を生ずるが crepitus ( 捻髪音 ) はない 2 嫌気性筋肉壊死 (anerobic myonecrosis) Clostridium perfringens によるガス壊疽 (gas gangrene) である 筋肉の外傷から急速に進行する感染で著明な浮腫 捻髪音 褐色の水疱 ( 大きなグラム陽性菌がおり 多核球は乏しい ) X 線では筋肉内 筋膜面にガスが見られる 大腸がんの C.septicum により穿通性外傷がないのに筋肉壊死が起こる 3 皮膚炭疽病 (cutaneous anthrax) http://www.bt.cdc.gov/agent/anthrax/anthrax-images/cutaneous.asp ( 皮膚炭疽病 ) 炭疽病による痂皮の周囲にゲル状の浮腫が見られ蜂窩織炎と間違える 疼痛はないか痒みがある 疫学的因子が重要 4 種痘 種痘後 10 日から 12 日で発赤と硬結はピークに達し蜂窩織炎よりも遅く種痘に対する細胞反応 である 重篤感がない B. 炎症 腫瘍 1 昆虫咬傷 ( 過敏反応 ) 昆虫に咬まれた現病歴 局所の痒み 発熱や重篤感 白血球増多がない 2 痛風発作 足病変 (podagra) 関節痛 繰り返す発作 血清尿酸高値 10 / 19

3 深部静脈血栓 下肢病変 索状の静脈 線状の進展 4 家族性地中海熱に伴う蜂窩織炎様の紅斑 中近東のスペイン ポルトガル系ユダヤ人 (sephardic jew) に起こり反復する熱と急性腹痛が ある 5 固定薬疹 (fixed drug reaction) 皮膚紅斑は蜂窩織炎程には急速に広がらない 熱はなく薬歴がある 6 壊疽性膿皮症 (pyoderma gangrenosum) 特に皮下脂肪から始まる急性脂肪炎 (panniculitis) 病変は結節 水疱 潰瘍で炎症性腸疾患 膠原病血管病変で起こることが多い 7Sweet 症候群 (acute febrile neutrophilic dermatosis) 急性 圧痛を伴った紅斑性の偽水疱斑 (pseudovesiculated plaque) で熱 好中球増加があり特に血液癌に合併する 顔の場合は丹毒や眼窩周囲蜂窩織炎に似る ステロイドに反応する 8 川崎病 発熱 結膜炎 急性の頸部リンパ節腫脹 口腔咽頭発赤 手掌 足底皮膚炎 容貌は眼窩周囲 蜂窩織炎に似る 幼児 小児期に起こる 9Wells 症候群中心がクリアな蕁麻疹 病変の進展はゆっくりで数週から数カ月かかる 病理は eosinophilia 浸潤 末梢血で eosinophilia 10Carcinoma erysipeloides 転移癌でありリンパ管も浸潤 乳癌で前胸部に多いが遠隔転移でも起こる 熱はなく蜂窩織炎よりも進行が遅い 2.Strategies and Evidence a. 診断 1 病巣部の培養 蜂窩織炎の診断は病巣の見た目 (morphologic features) と臨床的状態 (clinical setting) から行う 針穿刺培養はルーチンには適応はないが 5 つのスタディで針穿刺培養で起因菌が判明するとしている 284 例の内 29% で起因菌が判明した この 86 例の内 複数菌 (mixed cultures) だったのは 3 例のみであった グラム陽性菌 ( 主に Staphylococcus aureus group A viridans streptococci enterococcus faecalis) が 79% 残りはグラム陰性菌(Enterobacteriaceae H.influen zae,pateurella multocida P.aeruginosa acinetobacter) であった 11 / 19

小児でのスタディでは針穿刺は炎症の最大部位から行った方が 進展の先端部 (leading edge) で行うよりも起因菌同定の確率は高かった 小規模なスタディではあるが パンチ生検の方が針生検より若干検出率は高かった 生検ではグラム陽性菌が 1 例を除き全ての症例で見られた S. aureus 単独が 50% 残りは group A stereptococcus か S.aureus のいずれかと他のグラム陽性菌との複数であった 蜂窩織炎近くの潰瘍や皮膚剥離からの培養でも同様に S. aureus か group A streptococci あるいは両者であることがほとんどであった これらのデータから蜂窩織炎に対する抗菌薬は主にグラム陽性菌をターゲットとすべきことがわかる 糖尿病患者の場合はより広域抗菌薬によるカバーが必要である 糖尿病の下肢の危機的感染 96 肢の創深部 あるいはデブリ組織の培養では グラム陽性好気菌 (S. aureus enterococci streptococci) が 56% グラム陰性菌(proteus E.coli Klebsiella,Enterobacter Acinetobacter P.aeruginosa) が 22% 嫌気性菌(bacteroides peptococcus) が 22% であった 糖尿病患者の褥創でも同様と思われる 2 血液培養蜂窩織炎では菌血症 (bacteremia) は稀である 272 例中 血培陽性となったのは 4% であった 分離菌の 2/3 は group A streptococci か S. aureus であり 残りは H. influenzae P. multocida であった 市中感染の蜂窩織炎 553 例の血培の後ろ向き研究では 菌を分離できたのはわずか 2% で主に group A または group G streptococci S. aureus V. vulnificus であった 従って蜂窩織炎で血培は費用効果 (cost effectiveness) が悪い 一方 リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎では血培を推奨する このような患者 10 例で 3 例で菌が分離され すべて non-group A streptococci であった こ れはリンパ浮腫と細菌が前もって存在していたことによると思われる その他 血培を行うべきは以下のような場合である 頬部または眼窩周囲蜂窩織炎 海水または真水による感染 悪寒 高熱があって菌血症が疑われる時 12 / 19

3 放射線診断 X 線検査は大抵の蜂窩織炎では不要である 隣接した骨髄炎などがある場合 単純 X 線 CT は有用である 蜂窩織炎と壊死性筋膜炎との鑑別が難しいときは MRI が有用であるが 確定診断は生検であり疑った時は躊躇してはならない 壊死性筋膜炎疑いの 17 例でのスタディでは最終的に 11 例は剖検で 他は手術で ) され 6 例は臨床経過から蜂窩織炎と診断された MRI により 11 例すべて正確に診断することができ感度 100% であった しかし蜂窩織炎 6 例のうち 1 例は誤診で結局特異度 86% であった CT やエコーは壊死性筋膜炎と蜂窩織炎の鑑別にはあまり役に立たない しかしエコーで皮下の膿の貯留はわかるから穿刺の補助として役立つ Ga67 シンチは下肢の慢性リンパ浮腫に合併した蜂窩織炎の確認に役立つ 4 抗菌薬治療 蜂窩織炎のほとんどは Streptococci と S.aureus によるので抗菌薬はベータラクタム系で penicillinase-producing S.aureus に対する活性を持つものが第 1 選択である 入院患者で病変が急速に広がっている場合や 悪寒 発熱 (37.8 度以上 ) 著明 免疫能低下 好中球減少 脾摘 浮腫 肝硬変 心不全 腎不全などがある場合は 抗菌薬の静脈投与を行うべきである もし蜂窩織炎が特異的な状況で発生した場合 例えばヒト咬傷 動物咬傷 海水 真水などで 発生した場合 好中球減少 脾摘 免疫低下や 水疱が存在する場合などでは他の細菌に起因 することを考えて抗菌薬を投与する 糖尿病性足感染は複数菌が起因菌であることが多く広域抗菌剤が必要である この場合 Ampicillin-sulbactam( ユナシン S) または imipenam-cilastatin( チエナム ) がラン ダム二重盲検試験で同様の効果があったが前者の方がコストが安い 461 名の多施設二重盲検トライアル (1989 年 ) では様々な皮膚および周囲感染に対し 経口 ciprofloxacin(750 mgを 12 時間毎 ) は 静注 cefota xime( セフォタックス クラフォラン ) と同等の効果があり失敗率は シプロが 2% cefotaxime が 8% であった (P=0.008) しかしこのスタディでは症例の多くは蜂窩織炎よりも感染潰瘍や膿瘍と思われるので差し引いて考えなければならない また 1989 年以降 S.aureus に対する fluoroquinolone の耐性菌が増加している 最近 (2002 年 ) のスタディでは 合併症のない皮膚 軟部組織感染に対し 経口 moxifloxacin( アベロックス )400 mg 1 日 1 回が経口 cephalexin(500mg を 1 日 3 回 ) と同等の効果があった 13 / 19

合併症のある皮膚 軟部組織感染で levofloxacin 高用量 (750 mg 1 日 1 回静注 ) と ticarcillin-clavulanate(3.1g4 時間から 6 時間毎静注 ) とのランダム オープンラベル試験 ( 参加者が何の薬か知っている ) では 同等の効果であった ( 成功率は前者が 84% 後者が 80%) しかしこの試験では症例 399 例の内 蜂窩織炎は 7% しかなかった Linezolid(600mg12 時間毎静注 ) と oxacillin(2g6 時間毎静注 ) との比較試験が 819 名 ( うち蜂窩織炎 44%) で行われた 治癒率は linezolid 群が 89% oxacillin が 86% であった 病巣から分離された起因菌は 35% で S.aureus 11% で group A streptococci 27% で group B streptococci であり MRSA は除外された MRSA 感染で linezolid と vancomycin との比較試験が 175 例の皮膚 軟部組織感染で行われ た (2002 年 ) が ほぼ同等の効果であった Linezolid の治癒率 79% vancomycin での治癒 率 73% しかし 175 例の内 蜂窩織炎は 13% に過ぎない MRI での壊死性筋膜炎診断のクライテリアは以下の通りである 深部筋膜まで波及している 液体貯留がある 筋膜肥厚がある 筋膜が造影される a. 通常の蜂窩織炎に対する抗菌薬 初期治療 Cefazolin( セファメジン ) 1g 6-8 時間毎静注 Nafcillin( 国内未発売 ) Ceftriaxone 1g 24 時間毎静注 Cefazolin( セファメジン ) 2.0g 1 日 1 回 +Probenecid( ベネシッド 250mg/ 錠 )1g 1 日 1 回 以後の治療 Cephalexin( ケフレックス 250mg/C)0.5g6 時間毎経口 Cephadroxil ( ドルセファン 250mg/C) 0.5-1.0g 12-24 時間毎経口 Cephradine ( 日本未発売 ) Dicloxacillin( 日本未発売 ) MRSA の場合の初期治療 Vancomycin( 塩酸バンコマイシン 0.5g/ 瓶 )1.0-2.0g 毎日 Linezolid( ザイボックス 600 mg /300ml 600 mg / 錠 )0.6g 12 時間毎静注 14 / 19

MRSA の以後の治療 Linezolid ( ザイボックス 600 mg /300ml 600 mg / 錠 ) 0.6g 12 時間毎経口 b. 特殊な病巣 特異的曝露の場合の抗菌薬選択 頬部蜂窩織炎: 起因菌 :H.influenzae 第 1 選択 :Ceftriaxone( ロセフィン )1-2g/ 日 第 2 選択 :Meropenem( メロペン ) か Imipenem-cilastatin( チエナム ) 糖尿病性足潰瘍( 切断の恐れがある時 ) 起因菌 : 好気的グラム陰性菌 (Enterobacteriaceae, P.aeruginosa acinetobacter) 嫌気性菌 (bacteroides, peptococcus) 第 1 選択 :Ampicillin-sulbactam ( ユナシン S)3g 6 時間毎第 2 選択 :Meropenem( メロペン ) Imipenem-cilastatin( チエナム ) Clindamycin+ 広域 fluoroquinolone(ciprofloxacin か levofloxacin) Metronidazole+fluoroquinolone/ceftriaxone ヒト咬傷起因菌 : 口腔内嫌気性菌 (bacteroides 類 peptostreptococci) Eikenella corrodens, viridians streptococci S.aureus 第 1 選択 :Amoxicillin-clavulanate( オーグメンチン )500mg 8 時間毎第 2 選択 :penicillin+cephalosporin 犬猫咬傷起因菌 :P.multocida pasteurella 類 S.aureus, S.intermedius, Neisseria canis, Haemophilus felix, Capnocytophaga canimorsus, 嫌気性菌第 1 選択 :Amoxicillin-clavulanate( オーグメンチン 125,250 mg / 錠 )500 mg 8 時間毎第 2 選択 :Moxifloxacin( アベロックス )+clindamycin 表皮剥離 裂創が海水に曝露された時起因菌 :Vibrio vulnificus 第 1 選択 :Doxycycline( ビブラマイシン 50,100mg/ 錠 ) 初回 200 mg静注後 100-200 mg / 日を 2 回に分割第 2 選択 :Cefotaxime( クラフォラン セフォタックス ) Ciprofloxacin( シプロキサン 200 mg 300 mg ) 表皮剥離 裂創が真水に曝露された時や医療用ヒル(leeches) 使用後起因菌 :Aeromonas species 第 1 選択 :Ciprofloxacin( シプロキサン 200,300mg/V)400mg12 時間毎静注 Ceftazidime( モダシン )+Gentamycin 15 / 19

肉屋 魚貝類取扱 獣医の場合起因菌 :Erysipelothrix rhusiopathiae( 豚丹毒 ヒトでは類丹毒 ) 第 1 選択 : 軽症皮膚感染 :Amoxicillin( サワシリン )500mg 経口 8 時間毎重症 ( 菌血症 心内膜炎 ):PenicillinG 12 万 -20 万単位 / 日第 2 選択 :Ciprofloxacin( シプロキサン ) Cefotaxime( クラフォラン ) Imipenam-cilastatin( チエナム ) b. 補助的治療 蜂窩織炎の局所治療は患肢挙上して浮腫を軽減すること 開放創に冷たい生食ガーゼを当てて膿を取る 趾間の真菌感染には局所抗真菌剤を塗布して治癒させる このような病変から細菌が侵入するからである 局所真菌剤には以下のようなものがあり 1 日 1,2 回塗布する imidazole(clotrimazole: エンぺシド, miconazole: allylamines(terbinafine: ラミシール ) ciclopirox olamine( バトラフェン ) 観察的研究からは 一旦足白癬を治癒させたら 以後 わずかでも再発の兆候があったら予防 的に塗布することが勧められる または週 1,2 回の予防的塗布で蜂窩織炎の再発リスクが減 らせる 末梢の浮腫がある場合 蜂窩織炎が再発しやすい ストッキング使用 皮膚衛生に注意すること 足白癬は即座に治療するで蜂窩織炎再発を予防 できる これら予防策にも関わらず蜂窩織炎や丹毒を繰り返す場合 PenicillinG を 250 mgから 500 mg 1 日 2 回投与することにより再発を防げる ペニシリンにアレルギーがある場合は erythromycin250 mgを 1 日 1,2 回経口投与する 3. まだよくわからないこと 皮膚 軟部組織感染に対し様々の抗菌薬が FDA により承認され使用されてきた しかしスタディは様々な皮膚感染 ( 感染性潰瘍 膿瘍 創感染 ) を集めたものであり スタデ ィによっては蜂窩織炎症例はわずかである 多くのスタディは 重症の蜂窩織炎を対象にしている 経口抗菌薬投与に反応する軽症例の定 義を明確にしたスタディが行われるべきである 16 / 19

市中で蜂窩織炎を起こす起因菌は stereptococci と S.aureus でありメチシリンが有効であるか ら penicillinase-resistant penicillin や cephalosporin がよく使われる しかしリスク因子のない患者でも CA(community-acquired)MRSA が増加しつつある アメリカインディアン (rural Native American) のコミュニティで分離された 112 例の S.aureus の内 74 % が CA-MRSA であった CA-MRSA 患者のリスク因子は Methicilline-susceptible の時と変わりはない 蜂窩織炎を繰り返す患者に対するペニシリンの予防投与の効果に対しては相反する結果がでた 下肢の連鎖球菌による蜂窩織炎を繰り返す患者に毎月 penicilling benzathine120 万単位筋注を行った リスク因子のない患者では再発率は 17% から 0% に減少した (11 例中 0) 一方 リンパ浮腫などのようなリスク因子のある患者では再発予防はできなかった (20 例中 4 例で再発 ) 投与回数を週 2 回か 3 回に増量したり 用量を増やす可否についてはわからない Erythromycin の長期投与 (250 mg 2 回 / 日を 18 カ月 ) が 2 回以上再発する蜂窩織炎 丹毒 に対して試みられた 16 例では再発はなかったが コントロール 16 例中 8 例で再発した 4. まとめと推奨 蜂窩織炎は臨床診断であり 皮膚 皮下組織で進展する紅斑 浮腫 局所圧痛 発熱 悪寒をともなう病変である 治療は 局所あるいは菌血症からの波及であるからの確認が必要である 皮膚剥離や潰瘍からの起こったのか それとも動物咬傷 海水曝露などがあれば P.multocida や V.vulnificus を考えなければならない 患者の基礎疾患 例えば糖尿病 免疫低下の考慮も治療に必要である 連鎖球菌 (groupa,g,b) と S.aureus が最も多い起因菌である さて冒頭症例 症例 健康 40 歳男性 足背の熱感 疼痛 発赤にて受診 圧痛を伴う浮腫と発赤が脛骨前まで及ぶ 趾間皮膚に亀裂あり 診断と治療は? この患者であれば 初期のエンピリカル治療は cefazolin( セファメジン ) か ceftriaxone( ロセフ ィン ) nafcillin( ペニシリンアレルギーではバンコマイシン投与であり 続いて dicloxacillin か経口セファロスポリン投与で 7 日から 14 日間の治療を行う 17 / 19

再発する蜂窩織炎患者で趾間に真菌による亀裂がある場合は 局所抗真菌剤を塗布し再発を防 ぐ 同じ場所で 2 回以上蜂窩織炎を繰り返す場合は 毎日経口 penicilling 投与を考慮する NEJM 蜂窩織炎総説要点 1. 蜂窩織炎の辺縁はぼやけている 2. 丹毒はオレンジ皮様で盛り上がり境界ははっきりしている 3. 眼窩周囲蜂巣炎は眼窩隔膜より前方の炎症 4. 眼窩蜂巣炎は眼窩内で眼球運動低下 視力低下 海綿静脈洞血栓起こす 5. 小児で meningococcus による眼窩蜂巣炎起こす 6. 小児の頬部蜂窩織炎の 25% は haemophilus influenza type b による 7. 小児の肛門蜂窩織炎は A 型連鎖球菌による 8. 蜂窩織炎は脂肪吸引 非合法薬皮下注 乳癌術後 伏在静脈採取で起こり易い 9. 捻髪音のする蜂窩織炎は以下の菌で起こる 10. Clostridia,bacteroides,peptostreptococci,peptococci,E.coli,Klebsiella,aeromonas 11. 海水曝露後の蜂窩織炎は Vibrio vulnificus を考える 12. 肝硬変でカキ生食により Vibrio vulnificus による出血性水疱伴う蜂窩織炎起こす 13. 真水曝露後なら Aeromonas hydrophila を考える 14. 養殖魚は Streptococcus iniae を考える 15. 腫があると蜂窩織炎を起こしやすい! 16. 大腸憩室膿瘍が大腿の捻髪音を伴う蜂窩織炎を起こすことあり 17. 壊死性筋膜炎の確定診断は生検か手術である 18. 壊死性筋膜炎 type1 は嫌気性菌と通性嫌気性菌により捻髪音 (+) のことも 19. 壊死性筋膜炎 type2 は A 群連鎖球菌で起こり捻髪音はない 20. ガス壊疽は clostridium perfringence による筋壊疽で筋内 筋膜面にガスがある 21. 皮膚炭疽病は黒い痂皮の周囲に浮腫 22. 血液癌で蜂窩織炎に似た Sweet 症候群起こす 23. 中心がクリアな蕁麻疹様皮疹は Wells 症候群で好酸球浸潤 24. 乳癌皮膚転移で carcinoma erysipeloides 起こす 25. 蜂窩織炎を起こす 2 大菌はブドウ球菌と連鎖球菌 (A,G,B) である 26. 糖尿病患者での起因菌はグラム陽性菌 グラム陰性菌と嫌気性菌である 27. 蜂窩織炎で菌血症は稀 (4%) であり費用対効果が低い 28. 血培で陽性になるのはブドウ球菌 A 群連鎖球菌 H.influenza P.multocida 29. リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎は血培やれ 30. 血培行うべきは頬部 眼窩周囲蜂窩織炎 海水 真水関連 悪寒高熱ある時 18 / 19

31. 壊死性筋膜炎で MRI の感度 100% 特異度 86% ただし確定は生検で 32. 壊死性筋膜炎の造影 MRI 所見は以下の通り 33. MRI 所見は深部筋膜波及 液体貯留 筋膜肥厚 筋膜造影 34. 一般的蜂窩織炎の第 1 選択はセファメジン 1g6-8h 毎かロセフィン 1g/ 日 35. または CEZ2g1 日 1 回 +Probenecid1g/ 回 / 日 36. 以後ケフレックス 0.5g6 時間毎経口 37. MRSA ではバンコ 1-2g/ 日かザイボックス 0.6g12 時間毎静注 38. MRSA 以後の継続はザイボックス 0.6g12 時間毎経口 39. DM 足潰瘍の第 1 選択はユナシン S 3g6 時間毎 第 2 選択はメロペンかチエナム 40. ヒト 犬 猫咬傷の第 1 選択はオーグメンチン 500 mg 8 時間毎 41. 海水曝露あり Vibrio vulnificus 疑う時 日本ではミノマイシン (TC) 使用 42. 真水曝露あり Aeromonas 疑う時 シプロキサン 400 mg 12 時間毎静注 43. 獣肉で Erysipelothrix rhusiopathiae( 豚丹毒 ) 疑いでサワシリン PCG 44. 蜂窩織炎患者で趾間真菌ある時は抗真菌剤塗布して直せ 45. 蜂窩織炎再発防ぐためわずかでも趾間真菌疑ったら抗真菌剤塗布 46. 蜂窩織炎再発予防に足白癬の即治療 皮膚衛生 浮腫あればストッキング 47. 蜂窩織炎を同じ場所に繰り返す時は PCG かエリスロマイシン予防内服 19 / 19