1-4. 免疫抗体染色 抗体とは何かリンパ球 (B 細胞 ) が作る物質 特定の ( タンパク質 ) 分子に結合する 体の中に侵入してきた病原菌や毒素に結合して 破壊したり 無毒化したりする作用を持っている 例 : 抗血清馬などに蛇毒を注射し 蛇毒に対する抗体を作らせたもの マムシなどの毒蛇にかまれ

Similar documents
大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

生物学に関する実験例 - 生化学 / 医療に関する実験例 ラジオアッセイ法によるホルモン測定 [ 目的 ] 本実習では, 放射免疫測定 (Radioimmunoassay,RIA) 法による血中インスリンとイムノラジオメトリックアッセイ ( 免疫放射定測定 Immunoradiometric ass

<4D F736F F F696E74202D208F ED282CC82BD82DF82CC C93FC96E55F522E707074>

蛍光標識抗体の組み合わせによる測定値への影響

Taro-kv12250.jtd

Microsoft Word - A5_FlowCount.DOC

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

DNA/RNA調製法 実験ガイド

プロトコール集 ( 研究用試薬 ) < 目次 > 免疫組織染色手順 ( 前処理なし ) p2 免疫組織染色手順 ( マイクロウェーブ前処理 ) p3 免疫組織染色手順 ( オートクレーブ前処理 ) p4 免疫組織染色手順 ( トリプシン前処理 ) p5 免疫組織染色手順 ( ギ酸処理 ) p6 免疫

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

ISOSPIN Blood & Plasma DNA

プロトコル 蛍光色素を標識したい 利用製品 < 少量抗体 (10μg) 標識用 > ICG Labeling Kit- NH 2 [LK31] - アミノ基標識用 - R-Phycoerythrin Labeling Kit - NH 2 [LK23] Ab-10 Rapid Fluorescein


PanaceaGel ゲル内細胞の観察 解析方法 1. ゲル内細胞の免疫染色 蛍光観察の方法 以下の 1-1, 1-2 に関して ゲルをスパーテルなどで取り出す際は 4% パラホルムアルデヒドで固定してから行うとゲルを比較的簡単に ( 壊さずに ) 取り出すことが可能です セルカルチャーインサートを

遺伝子検査の基礎知識

11550_RKL_タグ付抗体カタログp

(Microsoft Word - FlowPRA\220\335\222\350ADC.docx)


Western BLoT Rapid Detect

目次 IPS 細胞の継代... 3 細胞継代後の培地交換... 5 IPS 細胞の凍結... 6 凍結ストックの解凍... 8 細胞融解後の培地交換 融解後 1 日目 ON-FEEDER IPS 細胞を FEEDER-FREE 条件にて継代する方法 参考資料 AC

IMMUNOCYTO Cytotoxicity Detection Kit

プロトコル 細胞 増殖 / 毒性酸化ストレス分子生物学細胞内蛍光プローブ細胞染色ミトコンドリア関連試薬細菌研究用試薬膜タンパク質可溶化剤ラベル化剤二価性試薬イオン電極 その他 機能性有機材料 酵素 (POD,ALP) を標識したい 利用製品 < 少量抗体 (10μg) 標識用 > Ab-10 Rap

VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE 第 1 章 その魔力は薬か毒か ワクチンの効果を高める目的で添加されている補助剤がです しかし よいことだけではありません とはいったいどのようなもので ワクチンの

Microsoft PowerPoint - 新技術説明会配付資料rev提出版(後藤)修正.pp

BLF57E002C_ボシュリフ服薬日記_ indd

パナテスト ラットβ2マイクログロブリン

ISOSPIN Plasmid

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

リアルタイムPCRの基礎知識

培養細胞からの Total RNA 抽出の手順 接着細胞のプロトコル 1. プレート ( またはウエル ) より培地を除き PBSでの洗浄を行う 2. トリプシン処理を行い 全量を1.5ml 遠心チューブに移す スクレイパーを使って 細胞を掻き集める方法も有用です 3. 低速遠心 ( 例 300 g

フォルハルト法 NH SCN の標準液または KSCN の標準液を用い,Ag または Hg を直接沈殿滴定する方法 および Cl, Br, I, CN, 試料溶液に Fe SCN, S 2 を指示薬として加える 例 : Cl の逆滴定による定量 などを逆滴定する方法をいう Fe を加えた試料液に硝酸

パラメーターの設定がどうか また 微生物群の組成を明らかにできる分類学的な標識が 可能かどうか検討した 2. 方法 2.1. 実験微生物 A) B) Muse TM Cell Analyzer guava easycyte HT System guava easycyte System PERFLO

モノクローナル抗体

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

ChIP Reagents マニュアル

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

[PDF] GST融合タンパク質バッチ精製プロトコール

遺伝子検査の基礎知識

組織からのゲノム DNA 抽出キット Tissue Genomic DNA Extraction Mini Kit 目次基本データ 3 キットの内容 3 重要事項 4 操作 4 サンプル別プロトコール 7 トラブルシューティング 9 * 本製品は研究用です *


ユニオンバイオ.indd

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

TaKaRa PCR Human Papillomavirus Detection Set

豚繁殖 呼吸障害症候群生ワクチン ( シード ) 平成 24 年 3 月 13 日 ( 告示第 675 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した弱毒豚繁殖 呼吸障害症候群ウイルスを同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を凍結乾燥したワクチンである 2 製法 2.1 製造用株

Microsoft Word - フローサイトメーター新規利用者ガイド.docx

化学物質の分析 > 臨床で用いる分析技術 > 分析技術 > 免疫学的測定法 1 免疫学的測定法 免疫反応を利用して物質を分析する方法として 免疫学的測定法 ( イムノアッセイ ) がある イムノアッセイは 抗体に抗原を認識させる ( 抗原抗体反応を利用する ) ことにより 物質を定量する分析法であり

nsg01-04/ky191063169900010781

Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST

02本文07_総説_小川.indd

Microsoft Word - Zenon Mouse IgG Labeling Kit_J1_28Apr2008.doc

スライド 1

A24656JP_EVOS_Onstage_Incubator_cover.indd

( 別添 ) ヒラメからの Kudoa septempunctata 検査法 ( 暫定 ) 1. 検体採取方法食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢を呈し, 軽症で終わる有症事例で, 既知の病因物質が不検出, あるいは検出した病因物質と症状が合致せず, 原因不明として処理された事例のヒラメを対象とする

Microsoft Word - LIVE_DEAD Viability_Cytotoxicity Kit for mammalian cells_J1_21Dec_2005.doc

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

Microsoft Word - FMB_Text(PCR) _ver3.doc

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

酵素の性質を見るための最も簡単な実験です 1 酵素の基質特異性と反応特異性を調べるための実験 実験目的 様々な基質を用いて 未知の酵素の種類を調べる 酵素の基質特異性と反応特異性について理解を深める 実験準備 未知の酵素溶液 3 種類 酵素を緩衝液で約 10 倍に希釈してから使用すること 酵素溶液は

Ⅰ One-compartmentmodel( 静脈内急速投与 ) [ シミュレーション実験上の全般的注意点 ] 実習書をよく読み 適切な器具 ( フラスコ, メスシリンダー ) を使用する の流速を 実際の実験状態に近い位置で 別々にしっかりと合わせる ( 最低 3 回 ) 精製水の補給用のチュー

MACS機器予算申請カタログ

Taro-kv20025.jtd

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

Gen とるくん™(酵母用)High Recovery

テイカ製薬株式会社 社内資料

Mouse IgG EIA Kit

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

Microsoft Word - PI-LY 615-JP-V3 amends Japanese only

馬ロタウイルス感染症 ( アジュバント加 ) 不活化ワクチン ( シード ) 平成 24 年 7 月 4 日 ( 告示第 1622 号 ) 新規追加 1 定義シードロット規格に適合した馬ロタウイルス (A 群 G3 型 ) を同規格に適合した株化細胞で増殖させて得たウイルス液を不活化し アジュバント

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

MACSQuant - 高機能・利便性を誇るフローサイトメーター

<4D F736F F D B82C982C282A282C482512E646F63>

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

Microsoft Word - Fluo4 NW Calcium Assay KitsJ1_20Jun2006.doc

siRNA / miRNA transfection KIT

PowerPoint プレゼンテーション


FFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFF Vol. 32, pp , 2004 FFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFF

EpiScope® ChIP Kit (anti-mouse IgG)

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

Title

【Webinar】蛍光免疫染色の基礎

鶏大腸菌症 ( 組換え型 F11 線毛抗原 ベロ細胞毒性抗原 )( 油性アジュバント加 ) 不活化ワクチン平成 20 年 6 月 6 日 ( 告示第 913 号 ) 新規追加 平成 25 年 9 月 26 日 ( 告示第 2480 号 ) 一部改正 1 定義組換え型 F11 線毛抗原産生大腸菌及びベ

Microsoft Word a_山_※5 12月SRL検査内容変更①

HVJ Envelope VECTOR KIT GenomONE –Neo (FD)

コメDNA 抽出キット(精米20 粒スケール)


Microsoft PowerPoint - WAK Flow H20 [互換モード]

目次 1. 抗体治療とは? 2. 免疫とは? 3. 免疫の働きとは? 4. 抗体が主役の免疫とは? 5. 抗体とは? 6. 抗体の構造とは? 7. 抗体の種類とは? 8. 抗体の働きとは? 9. 抗体医薬品とは? 10. 抗体医薬品の特徴とは? 10. モノクローナル抗体とは? 11. モノクローナ

■リアルタイムPCR実践編

PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

Microsoft Word - c-shiyou doc

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時


2017 年 11 月 No.18 検査内容変更のお知らせ 拝啓時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます 平素は格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます このたび下記検査項目におきまして 検査内容を変更させていただきたくご案内いたします 何卒ご了承のほど宜しくお願い申し上げます 敬具 記 日時 :

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

dr

Transcription:

1. 血液細胞の免疫蛍光染色とフローサイトメトリー解析 1-1. フローサイトメトリー ( Flow Cytometory ) とは細胞浮遊液をフローセル内を高速で流し 個々の細胞の形質等についてレーザー光を用いて解析する研究手法 フローサイトメーター( Flow Cytometer ) フローサイトメトリーにおいて使用する細胞解析用の装置今回は BD Accuri C6 を使用する 1-2. フローサイトメーターで何ができるか? 1. 細胞の相対的大きさや内部構造の違いを解析する 2. 細胞が持つ分子を免疫蛍光染色法で染色後 蛍光強度や蛍光の種類を測定することで細胞が持つ分子の種類や量を解析する これにより細胞種や分化段階 活性化レベルなどの様々な性質を解析できる 3.DNA を定量的に染色する蛍光色素 (PI など ) を用いることによって 細胞周期を解析することができる さらにアポトーシスに関連する物質の解析と組み合わせることにより アポトーシス誘導の各ステージを解析することも可能である 1-3. フローサイトメーターの原理 BD Accuri C6 フローサイトメーターではフローセル内を流れる細胞にレーザー光をあて 細胞からの前方散乱光 (FSC/180 SC) 側方散乱光(SSC/90 SC) 4 つの蛍光の 6 つのパラメータを測定することができる FSC ( Forward scatter / 180 scatter = 前方散乱光 ) = 細胞の大きさを示す 細胞の表面積に散乱強度が比例する レーザー光軸に対し 180 度の角度で検出する SSC ( Side scatter / 90 scatter = 側方散乱光 ) = 顆粒または細胞内構造を示す 細胞の顆粒や構造状態に散乱光強度が比例する レーザー光軸に対し 90 度の角度で検出する FL1 FL2 FL3 FL4 ( Fluorecence= 蛍光 ) 特定の波長に対応したフィルターを用いることで波長の異なる 4 種類の蛍光を測定することができる 今回使用するフローサイトメーター BD Accuri C6 BD Accuri C6 は小型のフローサイトメーターでありながら 2 レーザーを搭載しさまざまな解析を可能にしている

1-4. 免疫抗体染色 抗体とは何かリンパ球 (B 細胞 ) が作る物質 特定の ( タンパク質 ) 分子に結合する 体の中に侵入してきた病原菌や毒素に結合して 破壊したり 無毒化したりする作用を持っている 例 : 抗血清馬などに蛇毒を注射し 蛇毒に対する抗体を作らせたもの マムシなどの毒蛇にかまれたときに使用する これを注射すると抗体が結合し毒 蛇の毒を中和し 毒の作用を失わせることができる ワクチンあらかじめウイルスや菌の死がいなどを注射し 体に抵抗力をつける ワクチンを注射すると体の中でウイルスや菌に対する抗体が作られ 発症を防 いだり 発症しても症状を緩和したりすることができる 免疫抗体染色とは抗体が特定の物質に結合する性質を利用し 細胞が持っている分子の解析を行うことができる あらかじめ解析したい分子 A( 抗原 ) を細胞から抽出 分離し ネズミなどの動物に注射し その体内で抗体を作らせる このようにして動物の体内で作られた抗体分子は抗原 A に結合する性質を持つ この抗体を動物の血液中などより取り出し 精製したものに蛍光物質を結合させる この蛍光標識抗体を細胞や組織に反応させると 抗体は抗原として使われた物質 A に結合する すると 抗原 A を持つ細胞は抗体に結合した蛍光色素により光を放つようになる この光を蛍光顕微鏡や今回使用するフローサイトメーターにより解析することで 抗原 A の分布や 細胞の特徴などを解析することができる

1-5. タンパク質に結合させて使える蛍光色素 FITC: フルオレセインイソシアネート 励起光 488nm 蛍光は緑色 (530nm) - FL1 で検出 PE: フィコエリスリン 励起光 488nm 蛍光はオレンジ色 (585nm) - FL2 で検出 PC5: フィコエリスリン インドジカルボシアニン 励起光 488nm 蛍光は赤色 (670nm) - FL3 で検出 1-6. 蛍光強度 一つの細胞に結合する蛍光標識抗体は その細胞の表面抗原 ( ) の量と比例することから 蛍 光強度と表面抗原の量が比例する ( ) 私たちの体は 200 種類以上の細胞でできている 細胞はその種類や分化段階により持って いる分子が異なっている この分子のうち細胞表面に表れるものが 今回の実験でも細胞 表面抗原として使われている

2. 抗体による細胞表面抗原の染色 直接免疫蛍光染色蛍光色素 FITC や PE と結合している抗体を用いて細胞集団を処理し 細胞表面の特異的な抗原を持つ細胞を検出する方法 今回使用する抗体と蛍光物質の組み合わせ FITC + 抗 CD4 抗体 ヘルパー T 細胞に発現する分子 PE + 抗 CD8 分子 キラー T 細胞に発現する分子 PC5 + 抗 CD3 分子 ヘルパーおよびキラー 2 つの T 細胞に共通して発現する分子

3.MACS システムによる細胞分離の仕組み MACS システム磁気ビーズをとスチール ( 鉄 ) ウールカラムを用いた細胞分離の技術である 集めたい もしくは取り除きたい細胞に磁気ビーズを標識 ( くっつける ) し これをスチールウールに吸着させることにより 選択的に分離することができる ビーズを結合した抗体を用いることで細胞表面抗原に選択的にビーズをくっつけることができる 今回は CD4 または CD8 細胞に磁気ビーズを結合し 分離を試みる

実習血液細胞の免疫蛍光染色とフローサイトメトリー解析 < 器材 > マイクロピペット チップ チップ捨て 15ml チューブ 1.5ml チューブ 遠心分離機 アイスボックス タイマー シリンジ MACS 細胞分離装置 ( カラム セパレーター ) フローサイトメーター BD Accuri C6 < 試薬 > ヘパリン血 フィコール PBS 蛍光標識抗体 ( 抗 CD3 抗体 -PC5 抗 CD4 抗体 -FITC 抗 CD8 抗体 -PE) 血液細胞の分離 ( 白血球分画の分離 ) < 手順 > 1 ヘパリン血を PBS で 2 倍希釈する 2 フィコールの上に血液を静かに重層する 3 回転速度 400G 30 分 ( 室温 ) で遠心分離する 4 白血球層をパスツールピペットで採取する 5 回収した細胞液を新しいチューブに移す 6 PBS を 5ml 加える 7 回転速度 400G 10 分 ( 室温 ) で遠心分離する 8 上清捨てて 細胞ほぐす 9 PBS を 100μl 加える 蛍光抗体法による白血球細胞の染色 < 手順 > 1 調整した細胞液 50μl を抗体液の入ったチューブ 1~3 に加える 抗体入りチューブ 1 抗体なし 2 抗 CD3 抗体 -PC5 抗 CD4 抗体 -FITC 抗 CD8 抗体 -PE 3 抗 CD8 抗体 -PE 2 タッピングして混ぜる 3 氷上に置き 15 分待つ ( ふたを閉め 光が当たらないようにする ) 4 PBS 500μl 加え 4,000rpm 1 分間遠心する 5 上清を捨てる 細胞を吸わないように気をつける 6 タッピングして細胞をほぐす 7 チューブ1~3に PBS 500μl 加える

MACS システムによる細胞の分離とサンプルのフローサイトメトリー解析 < 手順 > 8 チューブ2と3を 4,000rpm 1 分間遠心する ( チューブ1はそのままにしておく ) 9 上清を捨てる 細胞を吸わないように気をつける 10 タッピングして細胞をほぐす 11 チューブ2に PBS 500μl 加える 12 チューブ3に Macs ビーズ 20μl 加える 13 チューブ3を氷上に置き 15 分待つ ( ふたを閉め 光が当たらないようにする ) 14 チューブ3を PBS 500μl 加え 4,000rpm 1 分間遠心する ( チューブ2はそのままにしておく ) 15 上清を捨てる 細胞を吸わないように気をつける 16 タッピングして細胞をほぐす 17 チューブに PBS 500μl 加える 18 Macs カラムにチューブ3の液を入れる 19 Macs カラムから落ちてくる液をチューブ4に集める 20 Macs カラムを磁石から外し チューブ5の上に立てる 21 PBS 1ml をカラムに加え 残りの液をシリンジで押し出しチューブ5に集める 22 チューブ1245 内の細胞をフローサイトメトリー解析する 参考文献 資料等 1フローサイトメトリー実践プロトコール M. G. Ormerod 監修 大熊勝治監訳平成 6 年廣川書店 2ベックマンコルター社 FCM の原理入門講座 https://www.bc-cytometry.com/fcm/fcmprinciple.html 3ベクトンデッキンソン社フローサイトメーターの原理 http://www.bdbiosciences.com/jp/services/training/elearning/flow_principle/intro.jsp 4 滋賀医科大学医学部附属実験実習機器センター平成 9 年度 特別講習会 原稿 http://www6.tok2.com/home/yukiso/kyo3/facs/facsgaid/fagaid.html 5Miltenyi Biotec 社マニュアル