5 各保育場面でのポイント 感染症予防の考え方には 1 指針やガイドラインなどが出ており最低限した方がいいことと 2 過去の事例や参考文献などから感染リスクを小さくするために取り入れたほうがいいこと があります 手順を決める際の参考にしてください (1) おむつ交換 感染の可能性のあるもの のうち 保育施設の職員が最も触れる機会が多いものは排泄物です 交換をする人 物品 捨てるまでの経路 場所の汚染を最小限に抑えましょう 最低限した方がいいこと 使い捨て手袋の使用 ( 標準予防策 ) 使い捨て手袋の使用は 1すべてのおむつ交換の時 2 便のおむつ交換の時 3 下痢のおむつ交換の時 の順に有効です 1ケアごとに交換 つけるタイミング : 衣服を脱がす前はずすタイミング : 汚物をビニール袋に入れたあと 1ケア1 手洗い ( 標準予防策 ) 処置の前と排泄物に触った後 ( 手袋着用の有無に関わらず ) 手を洗いましょう 手袋をしていた場合は 手袋をはずした直後に洗いましょう 目に見える汚れがない場合は擦式手指消毒薬の代用も可能ですが 使い方を練習しておきましょう 擦式手指消毒薬はアルコール製品のため ウイルスにあまり有効ではありません ウイルス性胃腸炎等の流行が心配される時は 手洗いを優先させましょう 取り入れた方がいいこと おむつ交換の場所は定位置にする汚染される区域を最小限にできるので 通常の清掃 ( 消毒 ) の際 念入りにした方がいい場所が限定されます すぐ使えるところに物品を配置しておく短時間で行うことができ また 汚染された状態での行動範囲が小さくなるので 汚染する可能性を小さくできます -30 -
排泄物を直接拭き取る布 紙などは 使い捨てにする排泄物に直接触れたものは感染源になります いかに消毒するかより使い捨てにする方が確実です 物品はおむつ交換専用のモノとし ほかのこととは共用しないおむつ交換をしている間に 物品を汚染する可能性があります 作業が終了するまでは 他の子どもが立ち入らない ( 触れない ) ようにする他の子どもが立ち入る ( 触れる ) ことで 汚染が広がる可能性があります 汚染されたものは ビニール袋などに密閉して移動する ( 捨てるとき 持ち帰るとき ) おむつ交換の場所から処理する場所までの動線を汚染しないよう気をつけましょう 処理中 急に子どもに対応しなければならない場合 子どもが汚物に触れる機会も減ります 処理までの動線と清潔な動線が交わらないようにする処理までの動線が汚染された場合 清潔な動線と交わっていると 二次感染の可能性が高まります 汚物の処理は汚物処理専用の場所で行い 子どもが立ち入らないよう工夫をする 家族に消毒の仕方を指導する家庭内できょうだいに感染すると 施設内で感染予防ができていても他のクラスに感染が広がる可能性があります (2) 吐物処理 感染の可能性のあるもの のなかでも嘔吐は 場所や場面を選ばず起こるため汚染が大きく 吐いた子ども自身のケアも必要なため人手を要します 基本となる動作を決め 周囲の子ども 処理をする人 物品 捨てるまでの経路等の汚染を最小限に抑えましょう 最低限した方がいいこと 使い捨て手袋の使用 ( 標準予防策 ) マスク エプロンの着用 ( ノロウイルス対応標準マニュアル ) 1ケア1 手洗い ( 標準予防策 ) 換気 ( ノロウイルス対応標準マニュアル ) 嘔吐を伴う感染症はいくつかありますが 感染力の大きいノロウイルスを想定して対応しましょう 役割分担 ( ノロウイルス対応標準マニュアル ) 換気をし 吐物を処理する人吐いた子どもをケアする人 : 衣服等に吐物が付いている場合は できるだけ取り除いてから移動しましょう -31 -
0.1% -32 -
(3) 日常の健康観察 ~ 記録 ~ 情報集約 施設内での感染拡大を抑えるためには 感染症の発生を早く見つけることが大切です 最低限した方がいいこと 登園時 保育中の子どもの状態を観察し記録する ( 保育所保育指針 ) 感染症の徴候となる症状熱 いつもより高くないか または低くないか 食物や水分摂取の増減はどうか食欲 吐き気 嘔吐はないか 目 ( 充血はないか 黄色っぽくないか 涙や目やにはないか ) 鼻 ( 鼻水 鼻づまりはないか くしゃみはでるか ) 顔 耳 ( 耳だれはないか 耳下腺がふくれていないか ) 口 ( 唇が黒ずんだり乾いたりしていないか 口内炎はないか ) 赤くなっていないかのど 咳 痰がないか皮膚 痒み 発疹 むくみ 腫れはないか痛み どこが どんなとき どの程度 どのように痛むか 血液や粘液が混じっていないか尿 便 下痢や便秘はないかその他 その他普段と違うところはないか 取り入れた方がいいこと 観察した子どもの情報を集約する体制をつくる各クラスでは症状のある子どもが少なくても 施設全体でみることで感染症の集団感染を早く見つけ 感染拡大を防止することにつながります 休んでいる子どもの体調を確認する体制をつくる集約した情報が 家庭保育のため休み ばかりでは 情報として役に立ちません 保護者から休みの連絡がきたときに どの職員が対応しても必要な情報が得られるよう 最低限聞き取る情報を決めておきましょう -33 -
(4) 歯みがき最低限した方がいいこと 歯ブラシ コップ タオル ハンカチなどは 一人一人の子どものものを準備する ( 保育所保育指針 ) 共用や貸し借りはしないようにしましょう 歯ブラシは複数の人のものをまとめて洗わず 一本一本洗う歯ブラシの消毒は 原則として必要ありませんので まとめて消毒液につけることはやめましょう 取り入れた方がいいこと 歯ブラシの使用後は 流水でよく洗う歯みがきをすると 歯ブラシの植毛部には 食物のかすやプラーク ( 歯垢 ) 歯みがき剤などが付着します 親指の先で植毛部をよくもむようにしながら 流水下で 10 秒以上洗いましょう 目で見て 汚れが残っていないくらいまで洗い流します 植毛部は よく乾燥させる洗った歯ブラシは よく水を切って 風通しのよい場所で乾燥させます 各自のコップに立てる場合は 植毛部を上にして立てましょう 洗ったばかりの歯ブラシをふた ( 扉 ) のある保管ケースやビニール袋等に入れることは 好ましくありません 歯ブラシ保管ケースに入れる場合は 乾燥するまでケースのふた ( 扉 ) を開けておきます 歯ブラシ同士が接触しないように 距離を保って保管する -34 -
(5) 調乳 調乳に携わる職員や調乳室 物品が汚染されると ミルクを介して子どもに感染する可 能性があります 最低限した方がいいこと 調乳は 手を清潔に洗った後 消毒した哺乳瓶 乳首を用い 一人一人の子どもに応じた分量で行う ( 保育所保育指針 ) 冷凍母乳による授乳を行うときには 十分に清潔で衛生的な処置が必要 ( 保育所保育指針 ) 取り入れた方がいいこと 調乳に携わる職員の体調管理下痢 発熱等の症状があった時 手指に化膿創があった時は 調乳作業に従事しないようにしましょう 調乳は 保育室等とは別の衛生的な場所 ( 調乳室など ) で行う調乳作業に不要な物品は置かないようにし 定期的に清掃をしましょう 調乳は 専用の清潔な白衣 帽子または三角巾 専用の履物等を着用し 必要に応じて使い捨て手袋やマスクを使用する 調整後は速やかに授乳させ 飲み残しも速やかに廃棄する (6) 室内外の環境整備室内清掃最低限した方がいいこと ( ノロウイルス対応標準マニュアル ) 基本は普段行っている水拭きなどの定期的な清掃 多くの人が触れるところ 汚染される可能性の高いところは定期的な消毒例 : ドアノブ 手すり 蛇口 おむつ交換台など方法 : 材質によって 消毒薬 ( 次亜塩素酸ナトリウムなど ) と加熱を使い分ける頻度 : 下痢や嘔吐をしている人がいる場合は 消毒回数を増やす取り入れた方がいいこと 汚染されやすい場所 物品 ( おもちゃなども ) は 消毒しやすい材質の物を選ぶ 清掃用具を洗う際は手袋を使用し 子どもの手が届かないところにしまう -35 -
温度 湿度 冬 空気は乾燥します 外気を入れず暖房するだけのもの いわゆるエアコン方式の 施設では 換気がされず風邪などが流行することがあります 1~2 時間に1 回は窓をあけ 換気をする 建築物衛生法に定める室内空気環境基準の抜粋 ( 目標値的です ) 項目 室内空気環境基準 備考 温度 17 度 ~28 度以下 湿度 40~70% 以下 最低でも35% は確保する 卓上型の加湿器を使用する ( 水のタンク容器は毎日の清掃が必要 ) ほこり床材の質により カーペット> 寝具 > 畳 >フローリングの順に室内塵が少なくなります カーぺットは1m 2 を 20 秒ぐらい掃除機で丁寧に清掃すると微細なチリダニ類も除去され良好な生活環境が保たれます 週に1 回でも効果的です 敷地内 外犬 猫の糞 砂あそび 土いじりをした後は 充分に手を洗う 糞を見つけたら速やかに処理する 敷地内に犬や猫が入らないように 柵 シートなどを利用する蚊 水溜まりをなくしボウフラが発生しないようにする放置されたプラスチック容器などが発生源になります 道路際の 雨水マス は 2 週間に1 回程度 市販の薬剤をたらす数 ppm で効果があるので1~2 滴で十分です -36 -
(7) プールプールは子どもにとって楽しい時間ですが 水の汚染 設備の不備 子どもの体調によっては感染症を広げる場になります プールの水は毎日交換する プールの水は塩素剤などで消毒する プールの水は細菌やウイルスなどで汚染されやすくなっています 細菌やウイルスなどを殺すには塩素剤による消毒が必要です 残留塩素計を用意し残留塩素濃度を測定しましょう 残留塩素濃度は 0.4 mg/ 渥以上保持しましょう ウイルス対策については 0.7 mg/ 渥以上を保持しましょう プール使用中は 日光や遊泳者がもちこむよごれなどで残留塩素が消費されます 消毒薬を適宜いれて残留塩素を確保するよう工夫しましょう 子どもの体調を確認する ( 児童福祉施設における保健衛生マニュアル ) 感染性のある病気の症状 ( 咳 熱 鼻汁 下痢 化膿 眼や耳の炎症など ) がないことを確認しましょう プールに入る前は 全身シャワー ( とくにおしり ) を浴びる遊泳後は目洗い うがいをし シャワーをあびる ( 児童福祉施設における保健衛生マニュアル ) タオルなどの貸し借りはしない -37 -
(8) 感染症発生時の対応 感染症発生時の対応 (p18) を参考に 次のことを準備しておきましょう 報告先 : 関係機関名 電話番号 ファックス番号 報告する内容 準備しておく資料とその保管場所 保護者に周知する内容 下痢の子が増えた 嘔吐の子が増えた 咳をしている子が増えた ことに気が付いた 時 感染拡大予防のためにどの様な対策をとるかも 具体的に決めておきましょう 環境整備 消毒の回数を増やす例 ) トイレ掃除 換気 おもちゃの消毒 環境整備 消毒の対象を広げる例 ) 布製おもちゃの洗濯を加えるドアノブ 手すりも消毒をする 保育手順の見直し例 ) 標準的な手順について 職員全員で再確認する手袋使用の対象を 排便時 から 排泄時 に広げる その他 気づいたときには上乗せの対策を 保育手順の徹底 感染経路を遮断する普段の対策 -38 -
6 職員全体で検討 共有 そして完成 (1) 職員全体で検討 共有作成した下案をもとに 職員会議などで提案 検討しましょう 検討のポイントは (2). 検討 (p28) と同じです この検討は 職員個々の価値観の違いや話し合いに適さない人数など 困難な要素もありますが これをすることによって職員が感染症予防の視点を身につけるまたとない機会になります (2) 試行 修正 職員全員で共有できたら 一手間かかりますが 本実施の前に試行して修正すると より使いやすいものへと近づきます (3) 完成下案を 職員全体で検討し修正された結果がマニュアルです 定期的な見直しの基となる資料なので 書き方のポイントは 細かく書いておく 基になった基礎知識 考え方等を書いておく 振り返りの時期 ( 有効期限 ) を書いておく * 保護者 嘱託医等との共有計画した感染症予防対策は 職員だけで行えるものではありません 施設がどの様な対策をとっていくのか 保護者や嘱託医等にどの様な役割を期待しているのかを共有し 協力できる体制をつくりましょう -39 -
7 年に 1 回は見直しましょう 完成した感染症予防マニュアルは 作成した時点での保育手順です 時間がたつと法律 基準が変わったり 便利な物品ができたり 決めた手順が不便だったり 感染症予防に関する関心が薄れたり ということがあります 年に一回はマニュアルを見直し 知識を確認するとともに意識を高めましょう その際 併せて研修 実習を行うのもよいでしょう 見直しの手順 下案をつくりましょう (p28) の手順とほぼ同様です 作成したマニュアルに 日々やりにくかったことや困ったことなどを書き込んでおくと 一年分まとめて思い出す という作業から解放され 漏れも少なくなります -40 -