GIXS でみる 液晶ディスプレイ用配向膜 日産化学工業株式会社 電子材料研究所 酒井隆宏 石津谷正英 石井秀則 遠藤秀幸 ( 財 ) 高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 Ⅰ 小金澤智之 広沢一郎
背景 Ⅰ ~ LCD の表示品質 ~ 液晶ディスプレイ (LCD) 一方向に揃った ( 配向した ) 液晶分子を電圧により動かすことで表示 FF 液晶分子 液晶配向と表示品質 C 電極 液晶分子の配向が乱れると表示品質が悪化 電極 液晶分子 電場 配向 品質 配向 品質 液晶配向と表示品質とが強く相関 P2 液晶配向の制御は非常に重要
背景 Ⅱ ~ 液晶配向膜と液晶配向 ~ 液晶の配向制御 液晶配向膜 ( 高分子 ) を布で一方向に擦る ( ラビング処理する ) ことで実現 1 配向膜を塗布 2 回転する布で擦る 3 表面の分子が配向 高分子 ( ポリイミド ) 布 ラビング方向 液晶を挟む n 基板 4 液晶が配向する 配向膜 P3 液晶配向と配向膜表面とが相関
背景 Ⅲ ~ 液晶配向と結晶性 ~ 従来の研究 反射型エリプソメトリー 非線形光学効果 (SHG,SFG) 偏光 FT-IR 軟 X 線吸収測定 (EXAFS) 高分子 ( ポリイミド ) 従来の研究は配向膜の分子配向に注目 分子が配向する ラビング方向 材料開発の中で 配向膜構造構造から予測される結晶性液晶配向性 SP-PI1 SP-PI4 n n P4 配向膜の結晶性と液晶配向とに相関関係?
原理 Ⅰ ~ 結晶性と X 線 ~ X 線の散乱 回折現象 Δl Δl = 2d sin = nλ この条件の時に光が強め合う d を変化させて光強度を測定 d に対応するピークが出る 結晶性と散乱強度 Δl d Δl Δl Δl 散乱強度 (A.U.) 1 散乱角 (deg.) Δl Δl 散乱強度 (A.U.) 1 ハロー 散乱角 (deg.) P5 結晶性高い = 鋭いピーク 結晶性低い = 鈍いピーク
原理 Ⅱ ~ 高分子と X 線回折 ~ 高分子の X 線回折 配向膜への適用 配向膜付基板 ラビング方向 X 線 高分子 P6 ラビング方向に平行方向の結晶性 ラビング方向に垂直方向の結晶性 ラビング方向 ラビング方向に対して平行 垂直方向の結晶性を調べることができる
原理 Ⅲ ~ 表面選択性 ~ 全反射における染み込み X 線は物質側に染み込んでいる 反射 X 線はこの染み込んだ分の情報を持っている X-ray 空気 染込んだ X 線 物質 X 線全反射により物質表面物質表面近傍のみを測定可能 表面と全体との区別法 入射角 < 全反射臨界角 配向膜基板 入射角 入射角 配向膜表面の情報 P7 入射角 > 全反射臨界角 配向膜基板 入射角で膜表面と膜全体の情報を区別できる 配向膜全体の情報
測定 ~ 試料と測定 ~ 試料 液晶配向性予測される結晶性 SP-PI1 SP-PI2 SP-PI3 SP-PI4 膜厚 :1nm 基板 :Siウエハー SP-PI1 SP-PI4 配向性の良いものは結晶性が高いと予測 測定 P8 ビームライン :SPring8 BL19B2 X 線エネルギー :1keV 入射角 :.12 ( 表面のみ ).16 ( 膜全体 )
配向膜全体 ~ バルクの結晶性 ~ 散乱強度 (A.U.) 6 5 4 3 2 1 配向性良い SP-PI1( ) SP-PI3( ) 鋭いピーク ハロー ( 鈍いピーク ) 配向性悪い 散乱強度 (A.U.) 6 5 4 3 2 1 鋭いピーク SP-PI2( ) SP-PI4( ) ハロー ( 鈍いピーク ) 5 1 15 2 25 3 5 1 15 2 25 3 散乱角 (deg.) 散乱角 (deg.) 全ての配向膜が同じ様な結晶性を持つ P9 配向膜全体で見た結晶性と液晶配向性には相関無し
配向膜表面 Ⅰ ~ 配向性悪い ~ SP-PI2( 配向性 ) SP-PI4( 配向性 ) 1.2 1 ラビング方向に平行ラビング方向に垂直 1.2 1 ラビング方向に垂直ラビング方向に平行 散乱強度 (A.U.).8.6.4 鋭いピーク ハロー 散乱強度 (A.U.).8.6.4.2.2 ハロー 5 1 15 2 25 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) 散乱角 (deg.) P1 配向性の最も悪い SP-PI4 は表面に結晶性を持たない 配向性の少し悪い SP-PI2 は平行方向にのみ結晶性がある
配向膜表面 Ⅱ ~ 配向性良い ~ SP-PI1( 配向性 ) SP-PI3( 配向性 ) 散乱強度 (A.U.) 4 3 2 ラヒ ンク 方向に平行ラヒ ンク 方向に垂直 ハロー 散乱強度 (A.U.) 3 2.5 2 1.5 1 ラヒ ンク 方向に平行ラヒ ンク 方向に垂直 鋭いピーク 1 鋭いピーク.5 ハロー 5 1 15 2 25 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) 散乱角 (deg.) P11 配向性の良い配向膜はラビングと垂直方向にも結晶性を持つ
まとめ Ⅰ ~ 結晶性と液晶配向性 ~ 膜全体の結晶性表面の結晶性液晶配向性 平行方向 垂直方向 SP-PI1 SP-PI2 SP-PI3 SP-PI4 配向膜の表面結晶性と液晶配向性との相関が明らかとなった 液晶の配向 (LCDの品質)? 結晶性 分子配向 P12
分子配向 Ⅰ ~ 散乱強度と配向 ~ 高分子の X 線回折 回転角と散乱強度ラビング方向に水平 ( 回転角 ) ラビング方向に垂直 ( 回転角 9 ) 高分子 ラビング方向 高分子 ラビング方向 P13 散乱強度大 散乱強度小
分子配向 Ⅱ ~ 分子配向測定 ~ 配向度 ( 分子配向 ) 測定 結晶性を示す鋭いピークに着目 ( 散乱角 p を固定 ) 試料を基板面内で回転させ ピーク強度の試料回転角依存を測定 3 2.5 ラヒ ンク 方向に平行ラヒ ンク 方向に垂直 試料回転 P14 散乱強度 (A.U.) 2 1.5 1.5 p p 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) p ラビング方向 高分子の面内異方性 ( 分子配向 ) が測定可能
分子配向 Ⅲ ~ 分子配向度 ~ ピーク強度 (A.U.) ラビング方向に平行 14 12 1 8 6 4 2 SP-PI1 SP-PI3 ラビング方向に垂直 配向度 ( 二色比 ) SP-PI1( 配向性 ).21 SP-PI3( 配向性 ).26-18 -9 9 18 試料回転角 (deg.) SP-PI1( 配向性 ) と SP-PI3( 配向性 ) とで配向度に大きな差無し P15 分子配向 ( 配向度 ) と液晶配向性とに単純な相関なし
まとめ Ⅱ StageⅠ 液晶の配向 (LCDの品質) StageⅡ? 微小角入射 X 線散乱法 表面の結晶性 試料面内回転 液晶の配向表面の分子配向 ( 配向度 ) (LCD の品質 ) 分子配向は本当に相関しないのか? P16
実際との差 Ⅰ ~ 製造工程 ~ 液晶ディスプレイの製造プロセス 1 ラビング 2 接着剤で貼り合わせる 3 熱処理により硬化 配向膜 基板 接着剤 12~15 4 液晶を注入 配向膜はラビング後に熱処理される P17
実際との差 Ⅱ 測定のタイミング ~ 従来の測定 ~ 1 ラビング 2 接着剤で貼り合わせる 3 熱処理により硬化 配向膜 基板 従来はこの時点での配向膜を測定 熱処理後の状態が重要 熱処理後を測定する必要あり P18
測定手順 ~ 熱処理による変化 ~ 今回の測定手順 1 ラビング 配向膜 2 ラビング処理後 測定 315 で 2h 熱処理後 測定 基板 ガラス転移温度 (Tg) P19 一般的なポリイミドのガラス転移温度は 17 以上 ガラス転移温度 ( ) SP-PI1( 配向性 ) >17 SP-PI3( 配向性 ) >17 ガラス転移温度以下 (15 ) の熱で変化するのか?
熱変化 Ⅰ ~ SP-PI1( ) 膜全体 ~ 3 25 熱処理前 熱処理後 散乱強度 (A.U.) 2 15 1 5 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) 15 の熱処理で 膜全体の結晶性は変化せず P2
熱変化 Ⅱ 散乱強度 (A.U.) ~ SP-PI1 ( ) 表面 ~ 5 4 3 2 熱処理前 熱処理後 1 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) 膜全体と同様 表面も熱処理の影響はほとんど無い P21 SP-PI1( ) の結晶性は 15 熱処理の影響無し
熱変化 Ⅲ ~ SP-PI3 ( ) 膜全体 ~ 25 2 熱処理前 熱処理後 散乱強度 (A.U.) 15 1 5 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) 膜全体で測定すると SP-PI3( ) も熱処理の影響無い P22
熱変化 Ⅳ 散乱強度 (A.U.) ~ SP-PI3 ( ) 表面 ~ 5 45 4 35 3 25 2 15 1 5 熱処理前 熱処理後 5 1 15 2 25 散乱角 (deg.) ガラス転移温度以下の熱処理によって膜表面が大きく変化している P23 SP-PI3( ) は膜表面のみが熱処理により変化する
熱変化 Ⅴ ~ SP-PI3 ( ) 分子配向 ~ ピーク強度 (A.U.) 4 3 2 1 熱処理前 熱処理後 配向度 ( 二色比 ) 熱処理前.26 熱処理後.67-18 -9 9 18 試料回転角 (deg.) ガラス転移温度以下でも表面の分子配向 ( 配向度 ) が大きく変化 P24 熱処理により緩和ではなく 秩序向上が起きている
熱変化 Ⅵ ~ まとめ ~ 15 熱処理による変化 分子配向 ( 配向度 ) と液晶配向 P25 SP-PI1 SP-PI3 膜全体 表面 膜全体 表面 熱処理による変化 ガラス転移温度以下でも表面の分子は動くことができる 熱処理前 液晶配向性と熱処理後の配向度に相関あり 無 無 無 有 配向度 ( 二色比 ) 熱処理後 液晶配向性 SP-PI1.21.2 SP-PI3.26.67
まとめ Ⅲ StageⅠ P26 液晶の配向 (LCDの品質) StageⅡ 表面の結晶性 液晶の配向表面の分子配向 ( 配向度 ) (LCDの品質) StageⅢ? 微小角入射 X 線散乱法 試料面内回転 熱処理による変化 液晶の配向表面の分子配向 ( 配向度 ) (LCD の品質 ) 配向膜表面の結晶性及び分子配向と液晶配向との相関が明らかとなった