6 年生の実践 1 単元名 読み手を説得するための工夫について考えよう ~ 新聞の投書を読み比べよう ~ 2 目標 新聞の投書の特徴を捉え, 進んで書き手の主張や説得の工夫を読み取ろうとしている 関心 意欲 態度 理由付けの仕方や根拠の挙げ方に気を付けて投書を読み比べ, それぞれの書き手の工夫を捉えることができる 読むこと 文や文章にはいろいろな構成があることについて, 理解することができる 伝言 国特 3 学習を進めるにあたって (1) 単元について本教材には, 同じテーマに対する新聞の投書が4 点掲載されている テーマが一貫した投書を時系列に紹介することで, 同じテーマで異なる考えの投書の比べ読みができるようになっている また, 単なる意見文の連続ではなく, 誰かの意見に 共感すること 違う考えをもつこと の姿を本教材は示唆している そこで, 意見を述べた文章を内容面, 構成面, 表現などに着目しながら比べて読むことで, それらの視点での分析や評価ができるようにしたいと考えた また, それらの投書に対してどのような意見をもつか考えることで, 意見の広がりや社会参加への意識の向上も期待できる 新聞の編集の仕方や記事の書き方については,5 年 新聞を読もう で学習している 本単元では, 投書をした者は情報の発信者であると同時に読者でもあること, 相手の意見や考えが自分の考えのきっかけになることについても知らせたい (3) 指導にあたって導入の段階では, 主教材である 新聞 についてのオリエンテーションを行う ここでは, 実際の新聞に掲載された投書を参考にして, 指定された分量で文章を書くことの効果を学習する 次に, 意見文を書く上での, 読み手を説得するための工夫を読み取る活動を行う 子どもが学習の見通しや視点をもつことができるように, 教科書の単元の最後に掲載されている てびき を先に示す 構成や表現の工夫の共通点や相違点に気付くことができるよう, 投書を読み比べるときに, 色分けして線を引いたり, 書き手の主張や考えを表にしたりする活動を取り入れる このことを通して, それぞれの意見や主張, 理由付けの仕方や根拠の挙げ方の特徴に気付くようにしたい 本時では, 中学生の書いた投書を読み, 投書の書き方の工夫を捉える学習を行う 段落構成の特徴 ( 頭括型, 尾括型, 双括型 ) や説得の工夫 ( 経験, 伝聞, 資料, 引用 ) に着目することで, 投書の書き方の工夫を捉えることができるようにしたい 日常生活に身近な新聞を教材化することで, ここで学んだ論の展開の仕方が他教科等でも有効に働いていくと考える
4 全体計画 ( 総時数 6 時間 ) 主な学習活動 時数 教師のかかわり 評価の観点 ( 求める子どもの姿 ) 新聞について興味をもち, 投 1 新聞への興味をもつことができるよう 関心 意欲 態度 書の特徴を知る に, 実際の新聞をもとに, 投書の内容 新聞について興味をもち, を取り上げる 投書の特徴を見付けながら テーマのおもしろさや文章の書き方の 読もうとしている 工夫に気付くように, 新聞に掲載され ( ノート ) ている投書欄を紹介する てびき を参考にして, 構 1 段落構成の特徴に気付かせるために, 読むこと 成を確かめながら 4つの投書 以下のように色分けして線を引くよう 投書の文章構成を図に表 を読む 指示する し, 大体の内容を捉えてい 書き手の意見や主張 緑 る ( ノート ) 第 1,2 の理由や根拠 黄色 予想される反対意見に対する反論 赤 書き手の考え ( まとめ ) 青 文章構成を確認することができるよう に, 文章構成図を書く活動を取り入れ る 教材文の 4つの投書について, 1 4つの投書の内容を確認することがで 読むこと 書き手の主張や考えを読み取 きるように, 前時の学習で書き込んだ 投書の内容を読み比べ, そ る 色分けや内容についての気付きを見る れぞれの書き手の意図を捉 よう助言する えている 4 人の書き手の主張や考えが比べやす ( ノート ) くなるように, 表にまとめるよう指示する 4つの投書を内容で分類すると, 意見が2つに分かれることに気付くようにするために, 勝利 楽しむ といったキーワードに注目するよう助言する 教材文の 4つの投書の説得の 1 てびき を利用することで, それぞ 読むこと 工夫を捉える れの投書の説得の工夫に気付くように 投書の内容を読み, それぞ する れの説得の工夫を捉えてい 自分の経験を述べる 投書 1 る 見たり聞いたりしたことを述べる ( ワークシート ) 投書 2 資料に基づく具体的なデータを使う 投書 3 有名な人の言葉を引用する 投書 4 意見文を書くときの工夫点として,4 つの例を書けばよいことを確認する 自分が納得できる投書を 1つ 1 共通点と相違点に気付くことができる 読むこと 選び, その理由を明確に書く ように,4つの投書の見出しを比べる 投書を読み比べ, 書き手の よう助言する 工夫を捉えて, 納得できる なぜ納得したのかの理由を明確にもつ 理由を書いている ことができるように, てびき を利用 ( ノート ) して, 納得する理由を考える観点を示 す 理由や根拠として挙げていることは どうか 理由付けの仕方や根拠の挙げ方はど うか 自分の知識や経験などと結び付けて みてはどうか 理由を書かせるときには, モデル文を 提示する 中高生の書いた投書について, 1 投書の書き方の工夫を捉えることがで 読むこと 工夫している点や共感する点本 きるように, 段落構成の特徴や説得の 教材文の投書を分析した観 を読み取る 時 工夫に着目するよう助言する 点を生かして, 書き手の工 6 投書の書き手の主張に共感できるよう 夫している点を捉えてい / に, 紹介する投書は, 中高生が作者の る 6 ものとする ( ノート )
5 本時の実際 ( 本時 6/6) (1) ねらい 中高生の書いた投書について, 投書の書き手の工夫している点や自分が共感する点を読み 取ることができる (2) 展開 学習活動 教師のかかわり 評価の観点 ( 求める子供の姿 ) 1 本時のめあてを確認する これまでの学習を振り返ることができるように, 掲示物, ノートを活用する 実際の投書を読み, 工夫してい る点や共感する点を読み取ろう 2 中高生の書いた投書を読み, 投 投書の書き手の工夫を捉えることがで 読むこと 書の書き手の工夫している点や自 きるように, 段落構成の工夫や説得の 教材文の投書を分 分が共感する点をを読み取る 工夫に着目するよう助言する 析した観点を生か 段落構成の工夫 して, 書き手の工 頭括型, 尾括型, 双括型 夫している点を捉 反対意見に対する反論 えている 説得の工夫 ( 理由付けの仕方や根拠 ( ノート ) の挙げ方の工夫 ) 見たり聞いたりしたことを述べる 有名な人の言葉を引用する 自分の経験を述べる 資料に基づく具体的なデータを使う 自分が気付かなかった投書の書き手の工夫に気付くようにするために, 個人の考えをグループで交流する場を設定する グループのメンバー全員が話合いの内容を理解することができるように, 話し合った内容を短冊カードにまとめるよう指示する 投書の書き手の工夫が捉えられないでいる子どもには, グループで話し合ったことを生かして考えるよう助言する 投書の書き手の工夫を捉えることができた子どもには, その工夫が表れている文章を引用するよう確認する 3 見付けた投書の書き手の工夫し 発表内容がより分かりやすく伝わるよている点を発表し合う うに, 話し合った内容をまとめた短冊カードを使って発表するよう指示する 4 本時の学習を振り返る 話し合ったことを生かして, 共感でき る文章構成の工夫や説得の工夫につい てまとめるよう助言する 研究協議の視点 新聞の投書を活用して, 読み手を説得する工夫を読み取るための手立ては, どうあればよいか
6 単元の実際 (1) 投書の特徴を知る活動本単元の導入において, 新聞への興味をもつことができるように, 実際の新聞に掲載された投書を読む活動を取り入れた 扱った投書は, 1 インターネット功罪考え利用を 2 胸熱くさせた責任感, 根性 3 温暖化対策への思いを強めた夏 4 食の大切さを子に教えよう の4つである この時間は, 共感したところ や 書き方が上手なところ を読み取り, 投書の特徴をまとめ, 投書を読み比べるときに考えることを学習した 子どもたちは, 書き手の考えに共感しながら, これまで学習してきた説明の工夫 ( 文章構成, 資料提示, 叙述 ) に着目して, 書き方が上手なところ を読み取っていた 共感したところ としては, 幸せをもたらすツールとして投書の特徴をまとめたノートインターネットを活用すること 負傷してもマウンドに立った責任感 温暖化とうまく付き合うことの重要性 食を無駄にすることは命を粗末にすることと同じこと といったことが挙げられた 書き方が上手なところ としては, 書き出しが上手 伝えたいことがはっきりしている データを活用している 結果を踏まえてその対策を述べている といったことが挙げられた 最後に, 投書を読み比べるときに考えることとして,1それぞれの書き手は, どんな意見や主張を述べているか 2 読み手を説得するために, 理由付けの仕方や根拠の挙げ方にどのような工夫をして書いているか 3 自分は書き手の意見や主張に対してどう思うか の3 点を確認した (2) 段落構成を確かめる活動その後, 教材文 新聞の投書を読み比べよう ( 東京書籍 6 上 ) の 4 つの投書を読む活動に入った 扱った投書は, 1 限界をこえた投球には疑問 2 勝利を求めてこそスポーツに意味が 3 楽しんでするものそれがスポーツ 4 限界まで努力することに価値がある の 4 つである まず, 段落構成の特徴に気付くことができるように, 投書に色分けして線を引く活動を行った すると, 子どもたちは, 書き手の意見や主張が最初と最後に出てくること 理由や根拠を示していること 自分と反対の意見に対する反論があること など,4 つの投書に共通する点がいくつかあることに気付くことができた まとめとして, 色分けして線を引いた投書をもとに, 文章構成図を書いて, どの投書も双括型の段落構成になっていることを確認した (3) 書き手の主張や考えを読み取る活動次に,4 つの投書の主張や考えを比べやすくするために, 表にまとめる活動を行った まとめた表から子どもたちは, 勝つためのスポーツ 楽しむためのスポーツ の 2 つの立場に分かれることに気付くことができた 最後に, 始めと最後の段落に書き手の主張や考えを書くことが読み手を説得させる工夫の 1 つになることを確認した 4 人の書き手の主張をまとめたノート
(4) 読み手を説得するための工夫を捉える活動教材文 新聞の投書を読み比べよう ( 東京書籍 6 上 ) の てびき を活用して, 理由付けの仕方や根拠の挙げ方の工夫について確認した 1 見たり聞いたりしたことを述べる 2 有名な人の言葉を引用する 3 自分の経験を述べる 4 資料に基づく具体的なデータを使う の 4 点である そして,4 つのそれぞれの投書では, どの工夫を使ってどのように書いたのかを表にまとめて, それぞれの書き手の説得の工夫を確認した 子どもたちは, 1 限界をこえた投球には疑問 の投書は自分の経験を述べていて, 2 勝利を求めてこそスポーツに意味が の投書は見たり聞いたりしたことを述べていて, 3 楽しんでするものそれがスポーツ の投書は資料に基づく具体的なデータを使っていて, 4 限界まで努力することに価値がある の投書は有名な人の言葉を引用していることに気付くことができた 読み手を説得する工夫をまとめたノート (5) 自分が納得する投書を選ぶ活動 4 つの投書の段落構成や説得の工夫を読み取った後で, 自分が納得する投書を 1 つ選び, その理由をまとめる活動を行った 最初に, 納得する理由を考えるときの観点として,1 書き手が理由や根拠として挙げていることはどうか 2 理由付けの仕方や根拠の挙げ方はどうか 3 書き手の意見や主張は, 自分の知識や経験などと結び付けてどうか の 3 点を確認した 子どもの意見を集約すると,1 と 3 の観点で納得できる投書を選択している子どもが多かった 2 の観点で考えた子どもたちは, アンケートの結果や有名な人の言葉に着目して, 納得できる投書を選択していた 納得する理由をまとめたノート 実際の投書の工夫をまとめたノート (6) 中高生の書いた投書の工夫している点を読み取る活動本単元の終末において, 中高生の書いた投書について, 書き手の工夫している点や共感する点を読み取る活動を行った 扱った投書は,1 買い物の際は必要性考えて 2 ごみの減量を真剣に考えて 3 情報機器の利用ルールを守って 4 宿題手伝う母親に衝撃 の 4 つである 子どもたちは, 段落構成が頭括型か尾括型か双括型か どのような説得の工夫がなされているか に着目しながら投書を読み進めていた 個人の読み取りの後にグループで見つけた工夫を紹介し合い, 話し合った内容を短冊カードにまとめ, 全体での話合いに入った その結果, 1 は尾括型で経験したことが書かれている 2 はニュースで見たことが書かれている 3 は双括型で良い点と悪い点が比較されている 4 はアンケートの結果が書かれている という書き手の工夫が挙げられた 最後に, 自分はどの投書に共感するかを確認して授業を終えた 子どもたちは, これまで学習してきた説得の工夫を思い浮かべながら, 教材文以外の投書でも, どのような工夫がなされているかを自力で読み取ることができていた
グループ活動の様子 各グループの考えをまとめた板書 7 考察 (1) 成果 1 読み手を説得するための工夫を読み取る手立て今回の学習では, 説得の工夫をとらえる際に, 教材文 新聞の投書を読み比べよう ( 東京書籍 6 上 ) にある てびき を活用した てびき には, 文章構成が 話題提示 書き手の意見 その理由 反対意見に対する反論 書き手の考え になっていることや理由付けの工夫として,1 自分の経験を述べる 2 見たり聞いたりしたことを述べる 3 資料にもとづく具体的なデータを使う 4 有名な人の言葉を引用することが挙げられている 教科書教材の投書に線を引きながら文章構成を確認したり, 理由付けの工夫を意識して投書を読んだりしたことで, 読み手を説得する工夫をはっきりさせることができた また, 実際の投書を読む際にも てびき を活用することで, 教科書教材以外の投書にも説得の工夫がなされていることが確認できた 今後, 新聞の投書を授業で取り扱う際には, この てびき を活用しながら学習を進めていきたい てびき 1 てびき 2
2 いくつかの投書を読み比べる授業のあり方今回は, 読み手を説得するための工夫を読み取るために,4 つの投書を読み比べる活動を行った まず, 単元の導入で, 一般の方が実際に書いた 4 つの投書を読み比べ, その後, 教科書教材にある 4 つの投書を読み比べ, 単元の終末では, 中高生が実際に書いた 4 つの投書を読み比べた 同じような学習活動を繰り返したことで, 子どもたちは, 見通しをもって学習に臨むことができた また, 前に学習したことを想起しながら読み比べを進めたことで, 読み手を説得するための工夫を明確にすることができた (2) 課題 1 授業で扱う新聞の投書の選択今回, 実際の投書を選択する際に気を付けた点は, 1 話題が子どもの興味関心を引くもの 2 教科書のてびきに出てくる説得の工夫がなされているもの の 2 点である 1 については, インターネット, 温暖化, スポーツ, 食生活, 買い物, ごみ, 情報機器, 宿題, といった子どもが興味関心をもちそうなものを探すことができた 2 については, 教科書教材の投書のように明確な工夫が見られる投書がなかなか見つからず苦労した そこで, 説得の工夫が 1 つでもはっきりしているものを探し, その中からいくつか選んで教材として取り扱うことにした 実際の投書を授業で扱うことの難しさを感じた 長期間にわたって少しずつ投書を収集し, できるだけ多くの投書の中から授業で扱う投書を選択していくことが大切であることを改めて感じた 読み比べる投書の数については, 教科書教材の数に合わせて, 単元の導入で 4 種類, 単元の終末でも 4 種類にした 単元の導入は, 共感したところ と 書き方が上手なところ という視点で読み取る活動だったために, 比較的容易に行うことができた 教科書教材を読み取る活動も, てびき があったおかげで, 大事な点を押さえながら行うことができた しかし, 単元の終末では, 学習したことを生かして説得の工夫を実際の投書から読み取る活動のため, 個人差に対応する必要があった そのため, 投書の数を 1~2 つに絞って説得の工夫を読み取る活動を行うことで, 個人差に対応するべきだった 投書 1 投書 2
投書 3 投書 4 2 グループの話合いのあり方全員が自分の考えを紹介することができるように, また, 友達の考えを取り入れて自分の考えを深めるために, グループでの話合いを取り入れた グループ内ということで, 気軽な雰囲気のもと, 一人一人が自分の考えをグループのメンバーに紹介することができた 発表する際に, 自分の考えをまとめたノートを見せ合うことで, 音声のみならず視覚的にそれぞれの考えを確認する姿が見られた 話合いの進め方は, 個々の意見を出し合った後,1 つの考えを 1 枚の短冊カードに書いて, グループとしての考えをまとめ, 黒板に貼っていくという形にした 各グループで重複する考えが多く, 板書が煩雑になったため, アンダーラインを引いて子どもの発表をもとに教師が補足説明をしながら全体に紹介した 拡散型の話合いにおいて, グループの考えを全体に紹介するときの効果的な発表形式や板書の仕方を今後考えていきたい 3 日常生活への活用新聞の投書を読むときは, 書き手の意見や主張を読み取るだけでなく, 根拠として, どのような事実や資料が使われ, どのように理由が述べられているかを考えることが大切である そこで, 本単元では, 理由付けの仕方や根拠の挙げ方に説得力があるかどうか, 書き手の意見や主張に対してどう思うか, を考える活動を設定し, 取り組んできた 新聞の投書を読むことは, 社会参加への第一歩につながるものと考える 世の中には, 自分の考え以外にもいろいろな考え方があり, 多様な情報が発信されている そういった様々な考えに対して, 根拠をもって共感したり反論したりしながら, 自分の考えを深めていくことは, 将来社会に出たときの大きな力になるであろう 今後も, 新聞のみならず日常生活の様々なテキストを目的をもって読む学習を設定し, 自分の立場を明確にし, 意見を効果的に伝える力を育んでいきたい