第 1 部 : 講演第 8 回医療機器市民フォーラムご自身は気付いてないけれども早く心不全を見つけて初期段階で治療しましょうあるいは予防しましょうという内容で企画しましたこの際にサービスで BNP 測定コーナーを設けました最近はBNP( 脳性ナトリウム利尿ペプチド ) という血液の成分

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せぴあさかいざわ
5 years ago
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第 1 部 : 講演 ❷ 心不全について講演者磯部光章氏東京医科歯科大学大学院循環器内科主任教授 1 9 7 8 年東京大学医学部卒業東大第三内科を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院に留学信州大学助教授から 2 0 0 1 年より現職日本循環器学会八木賞日本心臓財団佐藤賞など受賞厚生労働省ミレニアム事業安全な移植技術の確立主任研究者共用試験医学系 OSCE 部会長

1 第 1 部 : 講演 ❷ 心不全について講演者磯部光章氏東京医科歯科大学大学院循環器内科主任教授年東京大学医学部卒業東大第三内科を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院に留学信州大学助教授から年より現職日本循環器学会八木賞日本心臓財団佐藤賞など受賞厚生労働省ミレニアム事業安全な移植技術の確立主任研究者共用試験医学系 OSCE 部会長日本循環器学会理事心臓移植委員会委員長日本心不全学会理事長日本学術会議連携会員心臓はポンプです全身から血液を吸い上げ全身に送り出す働きがあり 1 日約 1 0 万回の収縮拡張を繰り返します心不全という病気はこのポンプ機能が低下したことにより起こる病気ですその働きが低下すると全身に血液が送り出せなくなるので身体活動力の低下により色々な症状が出てきます又心臓のリズムが乱れます不整脈にもたくさん種類がありますが一番怖いのは突然死です心不全は命に関わる病気で亡くなる方が多いのですがその半分以上の方は突然死をされます心不全は一般的には慢性的に長い時間がかかって進行します血液を吸い上げる働きが悪くなると肺の中に水がたまり呼吸困難のような症状が起きますこういう状況が急にきますと急性心不全になります私どもの病院の救急外来にも毎日のように救急車でこのような方が来られますとても増えている病気で大変苦痛を伴う病気です虚血性心臓病 ( 狭心症や心筋梗塞 ) と高血圧が心不全の二大原因になっていますがこういった病気の行き着くところが慢性心不全です心臓の拍出量が低下し肺や全身に鬱血を起こします心不全の症状は全身が疲れやすいむくむ階段を上ったときに息が切れて動悸がして疲れる足が重い食欲がないこのように比較的とらえがたいような症状の総合的な病気です逆に言うと疲れやすい全ての方が心不全ではありませんし動悸を持っている全ての方が心不全というわけでもありません [ 図 1] 心不全という病気は症状が無くどんどん進行していきますこれはアメリカの研究の結果ですが 65 歳以上の比較的高齢の方で特に心臓のポンプ機能のうち拡張の働きが落ちているために起きた心不全の方を調べてみますと大抵の方には自覚症状がありません心不全と気付かない方が多く症状のある方は実は氷山の一角で多くの方が気付かずに経過しています [ 図 2] 私は2010 年に東京の日本心不全学会学術集会のお世話をしたとき市民公開講座をしましたそのときに多くの市民の方に知っていただこうと思って私が付けたキャッチフレーズがみつけて治そう! 隠れ心不全です心不全として [ 図 -1] [ 図 -2] 14

2 第 1 部 : 講演第 8 回医療機器市民フォーラムご自身は気付いてないけれども早く心不全を見つけて初期段階で治療しましょうあるいは予防しましょうという内容で企画しましたこの際にサービスで BNP 測定コーナーを設けました最近はBNP( 脳性ナトリウム利尿ペプチド ) という血液の成分を調べると早期の心不全を診断することができるようになりましたその値が一つだけでは心不全が有る無しの診断はできませんが心臓の機能を見るために BNP NT-proBNP(N 末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド ) という血液の成分を測ることが多くなりました [ 図 3] 心不全は決して少ない病気ではありません厚生労働省の平成 20 年の統計では 20 万人以上の患者さんがいますご高齢の方に多い病気で特にご高齢の女性を中心に増えています心筋梗塞の実数は増えていますが病院に来た方はほとんど元気になって帰られ病院にさえ来ればめったに亡くなる病気ではなくなりました従って心筋梗塞そのもので亡くなる方は減ってきていますそれにもかかわらず心不全は増えています心筋梗塞ではその場で命は助かったけれど心臓の機能障害が残って 5 年後 10 年後 20 年後に心不全になり亡くなるというのが実情ですまた今後高齢化率が増すと少なくとも30 年間は心不全は増え続けることが統計上も出ています私どもの病院でも 70 歳 80 歳 90 歳代の心不全の方が毎日のよう来られますこのような事からも今日は是非心不全のことを知り予防していただきたいと思います [ 図 4] 東京医科歯科大学では最近 1 年間で 140 名の心不全の方が入院されましたがその危険因子で一番多いのは高血圧です高血圧そのものが心臓を悪くしますそれから最近腎機能障害がある方が多いです糖尿病タバコを吸っている方コレステロールが多い方太っている方で虚血性心疾患のリスクファクターと全く同じですこのようなリスクファクターを持っている方が結局は心不全になり高齢になって亡くなってしまうのが現状です [ 図 5] 私どもの病院に心不全として来られた方は心臓病の終末像ととらえることができますその原因としてあるのが心臓の肥大心筋梗塞虚血性心疾患です私どもの循環器内科に来られる方の多くはこの段階で来られて心不全になりやがて亡くなられていきます心不全になるのはある程度年齢が進んだ段階ですが恐らくその前に何十年にわたって血圧が高い状態動脈硬化の危険因子の肥満や糖尿病を持っている状態メタボリック症候群などが比較的症状のない状況でずっと経過されたのではないかと思いますのでなるべく早い段階での予防が心不全になることを防止する最も重要なことです [ 図 6] こちらはアメリカの統計ですが 60 代後半で心不全を持っている方と持っていない方の5 年後に比べると心不全を持っている60 代後半の方は5 年後に半分ぐらいの方が亡くなっています心不全を持っていない方は 10% 弱で亡くなっている方が5 倍以上多くいったん心不全になった場合先が非常に厳しいということをご理解ください [ 図 7 ] 最近経験した1 人の患者さんのご紹介をします [ 図 -3] [ 図 -4] [ 図 -5] [ 図 -6] [ 図 -7] 15

3 この方は心臓が悪いと自覚していなかった方です 7 8 歳の女性で血圧が高いということで薬を飲まれていました比較的軽い脳梗塞を一度されていて機能障害は何も残っていないのですが脳梗塞が怖いので血液を薄めてサラサラにしようと水分をよく取っていたようです心臓が悪いという意識は全くなく普通に生活をおくっていたのですが夕食の 1 時間後に突然呼吸困難が起きあおむけに寝るのも苦しくなり急に起座呼吸の状況になり救急車で来られました [ 図 8 ] 来られた時の救急外来での血圧 / 脈拍で肺に水がたまって苦しんでいました正常は 6 0 以上ある糸球体濾過率が 4 2 と慢性腎臓病が進んでいましたそれから心拍が多く脈が速くなり心臓のエコーを取ってみると心臓の収縮そのものは若干悪いけれどほぼ正常に近い状態でしたしかしこの方のエコーの特徴は心臓の壁が厚いことで心臓の広がりが悪くなっていましたこの様なタイプの高齢女性の心不全がとても増えていますこういうタイプの心不全は利尿剤で余分な水を肺から取ってあげてニトログリセリンで血管を広げる治療をすると大抵の場合は朝に私が回診するときにはすっかり良くなっている方が多いのですがときには結果が悪いこともあります [ 図 9 ] これは入院したときのレントゲンです白い部分が肺に水がたまっている部分です 1 週間経つと水が引いてきれいになり元気になって帰られましたしかしこういう方たちは一度このような事を経験しますとその日から病人になってしまいます精神的にも心臓のことが心配になり生活にも非常に大きな影響が出てきますのでこうならないようにする事が大切です [ 図 1 0 ] 心不全にはステージがあります軽い段階から重い段階まであってステージ D の方は非常に重症な方です是非ご理解いただきたいのは症状がない心不全の方がいるということです人数はとても多いですさらに言うとまだ心臓は悪くないし症状もないけれども高血圧動脈硬化糖尿病などのリスクを持っている方も私どもは心不全と位置付けていますしステージ Aの段階から予防的治療が必要だと考えています [ 図 1 1 ] 実際の心不全の診断です簡単に言うととらえどころがない症状で決め手はないのですが総合的に判断して心不全を疑います聴診器を当てたり触診をしたり所見があるかどうかをもとに判断します心不全の診断は私どもにとってはそう難しくはありません古典的な医療機器の心電図レントゲン心エコーなどでおよその推測はできます B N P は N T - p r o B N P と同じような検査ですがどこの開業医さんのところでも測れますし血液検査でも推定することができます比較的安全で簡単な医療機器が普及したおかげでその方に応じた検査をして原因を調べることで診断が可能です [ 図 1 2 ] 私が内科医であることもありますが基本的には心不全の治療は薬です私が医師になった年代当時は利尿薬とジギタリスという古典的な薬しかなく長くこ [ 図 -8] [ 図 -9] [ 図 -10] [ 図 -11] [ 図 -12] 16

4 第 1 部 : 講演第 8 回医療機器市民フォーラムの薬を使っていました今でも利尿薬は使いますがジギタリス強心剤や脈を整える薬は副作用もあるということで今はほとんど使われなくなりました一時期心臓はなるべく強くした方が良いということで強心薬がたくさん出ていましたが心臓は鍛えるよりもむしろ休めた方が良いという考え方になり最近は基本的に心臓を休める薬を使います心臓は毎日 1 0 万回日動いて何十年も動くわけで鍛えるような臓器ではないと私は思っています治療の面でもなるべく休んだ方が長く持つと考えていますただ薬だけではうまく治療しきれません最近は心不全の方に医療機器を使った新しい治療が出てきました [ 図 1 3 ] 治療には色々な目標があり疾患によっても個人によっても違うと思います心不全の治療もかつては長生きしたいということが目標だったと思いますが最近は必ずしもそれだけではありません特にご高齢の方は何を目標に治療するのかこの治療が自分に合っているのか色々な選択肢があることを承知いただきたいと思います症状を改善しても長生きできないかもしれない治療もありますし日常的に辛くなるけれど長生きできる可能性がある治療もありますその辺をよく理解して治療方法を主治医の先生とよく相談することが大事だと思います [ 図 1 4 ] 長生きすることを目標とする治療で最近私どもが使うのは心臓をなるべく休めてあげるということです詳細は省略しますがこれらの薬は心不全に対して保険が使える薬で非常によく効きますそれからなかなか効果が分からないのですが突然死を予防する薬として β 遮断薬という薬が一般的に使われていて効果もあります [ 図 1 5 ] 医療機器による心不全の新しい治療方法を幾つかご紹介します一つはペースメーカーです脈が遅くなる人に対して止まらないように遅くならないようにする機器ですが最近は心不全の治療もできるようになりました [ 図 1 6 ] この方はここにペースメーカーのリードを三つ使って左側の心臓と右側の心臓また左心室全体の収縮をうまく同期させますというのは心不全の方は大きくなった心臓で心臓がうまく同期して同じタイミングで収縮できない方が多いのです改善するためにペースメーカー三つリードを入れて収縮を同期させますこれはとても効果のある方もいますある程度進んだ心不全の方に使っているのが現状ですが本当に良くできた機器ですただ大変高額で一番良い機器は万円しますもう少し安くして欲しいという事をこの場でお願いしたいと思います [ 図 1 7 ] 心臓と呼吸は非常に密接な関係があります心臓は肺に囲まれていて血液は右側の心臓に入り肺に行き左側の心臓に戻って全身に行きます従って心不全になると呼吸が悪くなる呼吸が悪くなると心不全になるという事がよく分かってきました特に心不全に使われ保険が使えるようになった機器が適応換気補助装置ですマスクを付けてお休みいただくので大変煩わしいと思われるかもしれませ [ 図 -13] [ 図 -14] [ 図 -15] [ 図 -16] [ 図 -17] 17

5 ん実際に煩わしくて使えない方もいますが使ってみるととても気分が良いということで元気になっても手放せない患者さんもいます旅行へ行く時はいつも持っていく方もいます [ 図 1 8 ] この原理を簡単にご紹介します心不全になると多くの方が夜中寝ているときに呼吸が弱くなったり止まりかけたりしますそうなると心臓は酸素が低下し心臓が頑張らなければいけないと交感神経が緊張し余分に心臓が働きますこの機器は呼吸が弱くなったところを補助し均質で良好な呼吸ができるようにする機器で酸素の濃度が上がり交感神経の緊張が取れ良い睡眠が取れ血流も良くなるので心不全が良くなりますこのような医療機器がもっと普及すると良いと思っています [ 図 1 9 ] もう一つは人工心臓です皆さん人工心臓というと S F の世界のように思われるかもしれませんが今は保険も使えるようになりました非常に素晴らしい機器が実際に臨床で使われています日本で開発された E V A H E A R T D u r a H e a r t という二つの機種があります [ 図 2 0 ] こちらはアメリカで開発された機器でさらに小型です中に軸があり高速で回転して血液を送り出します体の外に出る部分があって肩にかけて電源を持って歩くのですがこれは実用化されています [ 図 2 1 ] 私は心臓移植委員会の責任者をしていまして心臓移植の普及に努めています年に法律が変わり年間 3 0 人位の方が心臓移植をされています人工心臓は心臓移植をすることが前提です移植が増えないとせっかくの医療機器も活かされないことになりますのでドナーの普及にも努めなければなりません皆さんはこのような状況に至らないようにまず心不全を予防することを強調しておきたいと思います心不全の一番の問題は一度心不全で入院された方で繰り返し入院される方が多い事です特に喫煙を続ける方お酒をやめられない方独り暮らしという方に入院を繰り返す方が多くなっています [ 図 2 2 ] 再入院をいかに減らすかということが社会的にも本人にとっても大事になります再入院になる要因を調べると不整脈が途中で出た寒くなった暑かった無理をしたストレスがあったという事もありますが実は一番多い原因は医師の指導を守れないという事ですこれは日本でもアメリカでも共通です食事内服薬をきちんと飲めないタバコをやめられない方に再入院が多い患者さんの問題なのです場合によっては守れるような指導をしなかった医師が悪いという事なのかもしれませんが私たちがいくら良い薬を出してもそれをきちんと飲んでいただかなければ駄目という事です日常生活における注意点です平山先生とほとんど同じですが大事なことですので繰り返し申し上げますやはり食事は薄味ですそれから水分は取り過ぎない夏になると熱中症といってテレビで飲め飲めと言いますが程度の問題です心不全になった方はどの程度の水分をとるかを医師と相談していただきたいと思います又タバコは百害あって一利なしですビール中瓶 1 本やワイングラス 1 杯などのお酒はむしろ体には良く私も毎晩この程度は飲みますこれを超すとやはり血圧は上がりますがこの程度のお酒はコレステロールの代謝を良くし気分も良くなり食欲もでますので勧めています量を超さないこと大切ですそれから休養でストレスをうまく回避してもらう事が大切です心不全になると心臓を休めたいという事で動かない方がいますがそれは間違いです動けないほど悪い心不全の方は別ですが程度にもよりますが基本的に運動は心臓に良いです運動の種類としては自転車歩行水中ウォーキングストレッチなどの運動は勧めますし繰り返しされた方が良いと思いますただし全身に力が入る重い物を持つ [ 図 -18] [ 図 -19] [ 図 -20] [ 図 -21] 18

6 第 1 部 : 講演第 8 回医療機器市民フォーラム筋力トレーニングなどの運動は心臓にはよくありませんこの辺も主治医の先生とよくご相談されると良いと思います多くの皆さんは食事運動など色々な事に頑張られますが病気には生活習慣の部分に加えて持って生まれた体質や外部の要因もありますのでこれだけで病気が予防できるわけではありません適切な薬の治療や医療機器による治療が必要になる場合もありますので心不全になられた方は医師とよく相談していただきたいと思います心不全になられた方の二次予防についてお話ししますと体重を定期的に測ってください心不全になるとむくんで体重が増える方がいますおしっこが減るむくんでくる疲労感や息苦しさが増す特に夜中に胸が苦しくなり目が覚めるような症状があったときには要注意です [ 図 2 3 ] 基本的に心不全は死にいたる病ですただし予防ができる病気ですのでぜひ日常の生活を守ってまた心不全になられた方は主治医の先生と相談して健康的な生活をしていただければと思います [ 図 -22] [ 図 -23] 19

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc ２糖尿病の症状がはっきりしている人尿糖が出ると多尿となり身体から水分が失われ口渇多飲などが現れますブドウ糖が利用されないため自分自身の身体(筋肉や脂肪)を少しずつ使い始めるので疲れやすくなり食べているのにやせてきます３昏睡状態で緊急入院する人著しい高血糖を伴う脱水症や血液が酸性になること(ケトアシドーシス)により頭痛吐き気腹痛などが出現しすみやかに治療しなければ数日のうちに昏睡状態に陥ります