工学院大学研究報告 2. ヒトの舌 2.1 構造 (Fig.2.1) 2) 舌 tongueはよく発達した横紋筋でできていて, 舌 body of tongueと舌根 root of tongueに分かれる. その境界は V 字形をした分界溝 sulcuslimitans である. また舌体の先端を

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さゆりこけい
5 years ago
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工学院大学研究報告第 121 号平成 28 年 10 月低圧の基礎研究下牧祐大 *1, 北川皓 *1, 五味誠次郎 *2 *3, 髙信英明鈴木健司 *3, 三浦宏文 *4 *5, 清水顕 Basic Research of low-pressure tongue depressor Yuta SHIMOMAKI *1, Hikaru KITAGAWA *1, Seijiro GOMI

In Japan, insurance was applied to the endoscopic surgery for the first time in 1992, since then the movement to spread endoscopic surgeries became active.

1 工学院大学研究報告第 121 号平成 28 年 10 月低圧の基礎研究下牧祐大 *1, 北川皓 *1, 五味誠次郎 *2 *3, 髙信英明鈴木健司 *3, 三浦宏文 *4 *5, 清水顕 Basic Research of low-pressure tongue depressor Yuta SHIMOMAKI *1, Hikaru KITAGAWA *1, Seijiro GOMI *2, Hideaki TAKANOBU *3 Kenji SUZUKI *3, Hirofumi MIURA *4 and Mamoru SIMIZU *5 Abstract Minimally invasive Endoscopic surgery has revolutionized the world of surgery. In Japan, insurance was applied to the endoscopic surgery for the first time in 1992, since then the movement to spread endoscopic surgeries became active. Endoscopic surgery support robot "Da Vinci", which has been developed by combining the functions of the robot and endoscopic surgeries, enable the doctor to perform a reliable operation. Oral endoscopic surgery on laryngeal cancer by Da Vinci is conducted with stability and often safe with an appropriate resection than in conventional endoscopic surgery. However, it causes numbness and swelling by pressing the tongue for a long time during surgery. Therefore this study is on the development of oral surgery retractor that does not cause the numbness and selling to the tongue even offer holding it for a long time. This paper conducted an experiment with the simulation of the low-pressure tongue depressor, and compared them. Keywords: Tongue depressor, Da Vinci, Endoscopic surgery 1. 緒言近年, 医療現場におけるロボットの導入及び活躍が期待されている. 内視鏡手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた手術支援ロボットダヴィンチが開発され, 手術の安定性が向上し, 安全かつ適切な処置を行えるようになった. しかし, 経口的内視鏡手術などで長時間舌をで押さえることにより (Fig.1.1), 術後に循環障害や機械的損傷による痺れや浮腫といった症状が現れることが問題とされている. 現在, 工学院大学と東京医科大学耳鼻咽喉科との共同研究事業 1) とともに経口的手術用リトラクターにおける低圧の開発研究を行っている. 術中に用いられているの形状をFig.1.2に示す. 本研究では舌のシミュレーションを作成し, 低圧舌圧 *1 工学院大学大学院機械工学専攻修士課程 *2 工学院大学工学部機械システム工学科 2016 年卒業 *3 工学院大学工学部機械システム工学科教授 *4 工学院大学顧問 *5 東京医科大学耳鼻咽喉科准教授子の設計と実験を行い, シミュレーションと荷重実験の比較を行うことにより, 舌に負担が少ないを開発した. top view side view Fig.1.1 Tongue depressor Fig.1.2 The shape of the tongue depressor 9

工学院大学研究報告 2. ヒトの舌 2.1 構造 (Fig.2.1) 2) 舌 tongueはよく発達した横紋筋でできていて, 舌 body of tongueと舌根 root of tongueに分かれる. その境界は V 字形をした分界溝 sulcuslimitans である. また舌体の先端を舌尖といい, 舌の背面を舌背という.

茸状乳頭は舌尖の付近に多く分布し, 赤い点状にみえる. 有郭乳頭は分界溝の直前に十数個あり, また葉状乳頭は舌縁の後部に数条, サメのエラ状に分布している. 味覚司る味蕾 taste budは, 主として有郭乳頭と葉状乳頭に見出される. 舌の下面をみると, 正中線に粘膜のヒダ ( 舌小帯 ) がある.

2 工学院大学研究報告 2. ヒトの舌 2.1 構造 (Fig.2.1) 2) 舌 tongueはよく発達した横紋筋でできていて, 舌 body of tongueと舌根 root of tongueに分かれる. その境界は V 字形をした分界溝 sulcuslimitans である. また舌体の先端を舌尖といい, 舌の背面を舌背という. 舌背の表面には無数の舌乳頭 lingual papillaがあり, 糸状乳頭 filiform papilla, 茸状乳頭 fungiform Papilla, 葉状乳頭 foliate papilla および有郭乳頭 vallate papilla の 4 種が区別される. そのうち, 糸状乳頭は舌背の全面にあって, その先端が角化しており, そのために舌背が白状ビロード状を呈する. 茸状乳頭は舌尖の付近に多く分布し, 赤い点状にみえる. 有郭乳頭は分界溝の直前に十数個あり, また葉状乳頭は舌縁の後部に数条, サメのエラ状に分布している. 味覚司る味蕾 taste budは, 主として有郭乳頭と葉状乳頭に見出される. 舌の下面をみると, 正中線に粘膜のヒダ ( 舌小帯 ) がある. また, 口腔底との境目に沿って, 左右に舌下腺による隆起 ( 舌下ヒダ sublingual fold) がある. 舌下ヒダは正中線近くで舌下小丘 sublingual caruncle をつくっていて, ここに舌下腺と顎下腺の共通の開口がみられる. 舌根には多数のリンパ小節 ( 舌扁桃 lingual tonsil) が分布しており, そのために粘膜表面は凸凹している. 舌の内部の正中には舌中郭があるので内舌筋, 外舌筋は左右分かれている場合が多い外舌筋 (Fig.2.2) (1) 舌骨舌筋舌骨に起始し, 体内に進み舌背の下面に停止する幅広い筋で, 舌縁を下方に引く. (2) オトガイ舌筋下顎筋のオトガイ棘とその周辺から起きて, 舌背の下方に広がって停止する. 舌の中央部を下方に引く. また, 舌を前方に突出させることができる. (3) 茎突舌筋側頭骨の茎状突起から舌縁の近くを進み舌尖にいたる. 舌の舌縁を下方に引くので舌背を高める. 舌筋はいずれも小さく束ねられ, 舌内においても互いに交錯していることが多いので, 舌はきわめて微妙な形状を示すことができる. Fig.2.2 Outside tongue muscle Fig.2.1 Tongue of the human 3) 2.2 舌の筋肉舌を構成する筋は横紋筋で, 下の内部に起始停止する内舌筋と側頭骨, 舌骨, 下顎骨などの起始部から舌内に進入し, 舌内に停止する外舌筋を区別する内舌筋 (Fig.2.3) (1) 上縦舌筋上縦舌筋は舌背の近くを, 下縦舌筋は舌下面近くを, ともに後方から前方に向かう. 舌の全体を短縮する. (2) 横舌筋舌正中から左右の舌縁に向かう. 舌の幅を狭め, 舌を細長くする. (3) 垂直舌筋舌背の下層から舌下面に向かう筋で, 舌背の平らにする. 10

低圧の基礎研究 3.2 舌シミュレーション本研究ではMathWorks 社が開発している数値解析ソフト MATLAB 3) を用いた. 第 3.1 章の舌のモデル化 ( バネマスダンパ系 ) を元に平衡状態からの変位 ( 出力 )x のシミュレーションを行った. バネマスダンパの運動方程式を式 (1) に示す. (1) 式 (1) を最高次の微係数について整理した式を式 (2) に示す.

質量 m[kg] ばね定数 k[n/m] ダンパの減衰係数 c[ns/m] 外力( 入力 )F[N] 平衡状態からの変位( 出力 )x[m] 3.3 低圧の実験実験を行うにあたり以下の (a) から (i) の手順で行う. 実験で使用するスポンジの形状との形状を Table1とFig.3.2に示す. a) スポンジとに針金を取り付ける. b) 針金をスポンジに貫通させる.

3 低圧の基礎研究 3.2 舌シミュレーション本研究ではMathWorks 社が開発している数値解析ソフト MATLAB 3) を用いた. 第 3.1 章の舌のモデル化 ( バネマスダンパ系 ) を元に平衡状態からの変位 ( 出力 )x のシミュレーションを行った. バネマスダンパの運動方程式を式 (1) に示す. (1) 式 (1) を最高次の微係数について整理した式を式 (2) に示す. (2) Fig.2.3 Inner tongue muscle 3. 既存の形状のシミュレーションと実験 3.1 舌のモデル化舌をバネマスダンパでモデル化した (Fig.3.1). 本研究では質量 mと, 減衰係数 cを0とし, バネ定数 k=0.9でシミュレーション, 実験を行った. 質量 m[kg] ばね定数 k[n/m] ダンパの減衰係数 c[ns/m] 外力( 入力 )F[N] 平衡状態からの変位( 出力 )x[m] 3.3 低圧の実験実験を行うにあたり以下の (a) から (i) の手順で行う. 実験で使用するスポンジの形状との形状を Table1とFig.3.2に示す. a) スポンジとに針金を取り付ける. b) 針金をスポンジに貫通させる. c) 針金の先に重りを載せるための台を取り付ける. d) スポンジの下部に穴を空けた板を取り付ける. e) 平らな面の上でスポンジに荷重をかけられるようにする. f) は開口器から取り外しての部分がばねモデルに乗るように取り付ける. g)3 次元解析を用いて,Fig.3.3のように500gずつ荷重 (m) をかけていき, 変位 x( スポンジのしずみ量 ), バネ定数 kを求める. h) 動画解析のためのマーカーをの上とその周囲に取り付ける. 取り付けには両面テープを使用する. i) 台に500gの重りをひとつずつ載せていき3500gまで重りを追加していく. Table1 Tongue depressor shape 実物実験 ( 標準形 ) Fig.3.1 Outline of Spring Model (L 形 ) 11

工学院大学研究報告称となっているため, これをブレード板と称する. 次に, ほかのに4 分の1ほどが切り取られた形状のものを見つけたので長方形の角を切り取った多角形の板を作成する.

2 The shape of the sponge また標準形を表面積, 外形, 表面形状の3つの要素から構成されていると考え, それらの特徴を持たせた板を作成した.

実験結果を比較し各要素が変位に与える影響を評価する. 3.3.1 表面積表面積 (Fig.3.3) を変更するにあたりシンプルな正方形と角のない円形の穴を2つ開けた板を作成する.

4 Outline 3.3.3 表面形状のような波型のカーブのある板 (Fig.3.5) を作成する. のように半分までが波状になっている板と, 全面にわたって波状となっている板を作成する.

4 工学院大学研究報告称となっているため, これをブレード板と称する. 次に, ほかのに4 分の1ほどが切り取られた形状のものを見つけたので長方形の角を切り取った多角形の板を作成する. また, 角の有無の影響を調べるため楕円の板を作成する. Fig3.2 The shape of the sponge また標準形を表面積, 外形, 表面形状の3つの要素から構成されていると考え, それらの特徴を持たせた板を作成した. まず, 複雑な形状を持たない平らな長方形の板, これをもとに表面積を変えた板, 波のようにカーブした板, また, 長方形と異なる外形の板を作成した.(a) から (e) の同様の実験を行う. 実験結果を比較し各要素が変位に与える影響を評価する表面積表面積 (Fig.3.3) を変更するにあたりシンプルな正方形と角のない円形の穴を2つ開けた板を作成する. 次に, 穴の表面積が変位に影響するか調べるために四角と丸のそれぞれで穴の表面積が異なる板を作成する. また, 穴の数による影響を調べるため長方形の穴と楕円形の穴を空けた板を作成する. Fig3.4 Outline 表面形状のような波型のカーブのある板 (Fig.3.5) を作成する. のように半分までが波状になっている板と, 全面にわたって波状となっている板を作成する. Fig3.5 Surface shape 4. 結果と考察 Fig3.3 Surface area 外形まず, と同じ外形の板 (Fig.3.4) を作成する. 実験で使ったは開口器の一部でブレードという名 4.1 シミュレーションと実験の比較シミュレーションと実験の変位力グラフを重ね合わせたものFig.4.1に, 実験から得たバネ定数力グラフ Fig.4.2に示す. 12

低圧の基礎研究 Fig.4.4 Displacement comparison of blade shape Fig4.1 The difference of displacement Fig4.5 Displacement comparison of the outer shape Fig.4.2 The difference of the spring constant Fig.4.1 をみると, シミュレーションはバネマスダンパの運動方程式のため線形, 実験ではスポンジを用いているため非線形となっている.

5. 結論本研究では人の舌に負担をかけない低圧の開発を目標とした. 低圧を開発し, 経口的内視鏡手術に用いることで術後の患者への侵襲が小さい手術ができる. 本研究では以下の点を実現した. 舌シミュレーションの作成低圧の設計と実験シミュレーションと実験の比較参考文献 1) 東京医科大学 - 工学院大学 : 低侵襲治療診断装置等の開発に向けた共同研究事業開始 http://www.

5 低圧の基礎研究 Fig.4.4 Displacement comparison of blade shape Fig4.1 The difference of displacement Fig4.5 Displacement comparison of the outer shape Fig.4.2 The difference of the spring constant Fig.4.1 をみると, シミュレーションはバネマスダンパの運動方程式のため線形, 実験ではスポンジを用いているため非線形となっている. また標準形とL 形を比較するとL 形の方が, 変位が少なくバネ定数が高いことがわかる. 4.3 形状を変化させたの比較表面積を比較した力変位グラフをFig.4.3に, 外形を比較した力変位グラフをFig.4.4に, 表面形状を比較した力変位グラフをFig.4.5に示す. Fig.4.3,Fig.4.4,Fig.4.5 からによる荷重実験から穴では小正方形穴が, 外形では多角形が, 表面形状では半波が最も低圧であるとわかる. 5. 結論本研究では人の舌に負担をかけない低圧の開発を目標とした. 低圧を開発し, 経口的内視鏡手術に用いることで術後の患者への侵襲が小さい手術ができる. 本研究では以下の点を実現した. 舌シミュレーションの作成低圧の設計と実験シミュレーションと実験の比較参考文献 1) 東京医科大学 - 工学院大学 : 低侵襲治療診断装置等の開発に向けた共同研究事業開始 ( 参照日 2016 年 5 月 6 日 ) 2) 中野昭一 : ヒトのからだ, , 医歯薬出版株式会社 (2001 年 9 月 1 日 ) 3) 高橋和人 : 口腔の解剖, , 株式会社南山堂 (1990 年 7 月 10 日 ) Fig.4.3 Displacement comparison of the hole shape 13

第75巻第６号もはるかに芸の細かい動作が可能になる筋は収縮機構を持つ筋細胞すなわち筋線維からできているのに逆に伸ばすという一見矛盾した運動すらできる私たちは日常の仕草で失敗した時などに舌を出すがまさに口腔内から舌が外前下方に伸びるこのような動作も各舌筋

第75巻第６号もはるかに芸の細かい動作が可能になる筋は収縮機構を持つ筋細胞すなわち筋線維からできているのに逆に伸ばすという一見矛盾した運動すらできる私たちは日常の仕草で失敗した時などに舌を出すがまさに口腔内から舌が外前下方に伸びるこのような動作も各舌筋 706 706 710 第63回日本小児保健協会学術集会教育講演第三の手舌天野修明海大学歯学部形態機能成育学講座解剖学分野舌は一般生活でも非常に馴染みのある器官であるが全く異なる分界溝に沿ってすぐ前側に多数の味蕾二枚舌舌の根も乾かぬうちに舌鼓舌先を持つ有郭乳頭が並んでいる舌体の表面すなわち舌三寸舌足らずなど日常会話にもよく使われる背はザラザラしているがその正体は糸状乳頭で