メジャーの低油価への対応

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きみかずわしあし
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1 メジャーの低油価への対応 2015 年 12 月 17 日調査部エネルギー資源調査課高木路子 1 内容 1. メジャーの業績 2. 低油価 (Lower for Longer) 対応 2015 年 Q3 末時点 3. 個別 4. 抱える課題 5. まとめ 2

2 経緯 1: 低油価と高油価低油価期( ): メジャー同士合併が連鎖 6 社に再編大型化に財務力 / 技術力高油価( ) : メジャー中心に大水深 /LNG/ オイルサンド開発 :ConocoPhillips 上下流分離 : 米国中小によるシェール増産再び価格低迷 2015/4 Shell BG 買収合意メジャー等の技術資金リビアイラクロシアメキシコ米国 EIA データより作成 3 経緯 2: 生産量と石油ガス比メジャー石油ガス生産量 ( ) は Chevron 以外減少トレンド Shell, Total, ExxonMobil ガス比率がこの 10 年で 10% 増 BP ExxonMobil Shell Total Shell Chevron ExxonMobil Total BP Chevron 各社財務諸表等より作成 4

3 1. 業績 ( ) メジャーの収益は上流比率が高く原油価格に大きく連動 (10 億ドル ) メジャーの純利益 ( ) ExxonMobil Shell BP Chevron Total 各社財務諸表より作成米国会計基準 (10 K, 20 F 参考 ) 100% 80% 60% 40% 20% 0% 20% 2014 年上下流別収益比率 ExxonMobil Shell BP Chevron Total 上流開発下流部門上流部門精製販売石化 BP, ShellはCCS basis Totalは下流部門損失その他収益額は除外各社財務諸表より作成 < ご参考 : 原油価格 > spot 平均 ( トル /bbl) ( Nov.) Brent WTI 米国 EIA データより作成年業績売上高(Q3) は前年同期比 40% 減少純利益(Q1-Q3) 減益及び損失 *Shell 80 億ドル Chevron, Total 各 20 億ドル上流資産の減損 **BP メキシコ湾事故対策会計賠償金確定し107 億ドルの赤字下流利益が寄与 (2015 年 Q1-Q3 上下別 ) ExxonMobil 上流 $6.2B ( 米 $0.54B) 下流 $8.7B Chevron 上流 $0.6B ( 米 $2.1B) 下流 $6.6B 単位 :10 億ドル ExxonMobil Shell BP Chevron Total 売上高 (Q3) 67.3 ( 37%) 純利益 (Q3) 4.24 ( 47%) 純利益 (Q1-Q3) 13.4 ( 49%) 68.7 ( 36%) 7.42* 1.0 ( 93%) 55.9 ( 41%) ( 96%) 3.2** ( 37%) 2.0 ( 64%) 5.2* ( 67%) 40.6 ( 33%) 1.08 ( 69%) 6.7* ( 32%) 各社財務諸表より作成内は前年同期比 6

4 2. 低油価 (Lower for Longer) 対応配当維持バランスシート投資削減 2015 年 10 30% 減 2016 年前年比減操業コストの削減ポートフォリオ見直し / ノンコア資産の売却収益性が高い下流分野の活用 (EM, Total) 原油価格 60 ドルへの適応 (BP, Total) 7 BP キャッシュフロー 2015 年 Q3 まで BP Q3 発表資料 8

Chevron キャッシュフロー 2015 年 Q3 まで負債増配当資産売却投資 Chevron Q3 発表資料に加筆 9 増配配当維持株主優先の経営全社配当維持の姿勢を崩さず一部で自社株買いの停止メジャーの配当資金額 (2014 年 Q1-Q3 及び2015 年 Q1-Q3 分まで ) 単位 :10 億ドル ExxonMobil Shell BP Chevron Total

5 Chevron キャッシュフロー 2015 年 Q3 まで負債増配当資産売却投資 Chevron Q3 発表資料に加筆 9 増配配当維持株主優先の経営全社配当維持の姿勢を崩さず一部で自社株買いの停止メジャーの配当資金額 (2014 年 Q1-Q3 及び2015 年 Q1-Q3 分まで ) 単位 :10 億ドル ExxonMobil Shell BP Chevron Total 配当総額過去 3 年の四半期 1 株当たり配当金 ($/share) Total のみ /share 第 3 四半期財務諸表より作成 2013Q3 2014Q3 2015Q3 ExxonMobil Shell BP Chevron Total 例 )ExxonMobil 過去 30 年間配当金引き上げ (1985 年 Exxon 年間 0.5ドル / 株 ) この10 年間約 10%/ 年の増配 (2005 年 $1.14/ 株 2014 年 $2.7/ 株 ) 株式総数 (80 億株 ) のうち自社購入を毎年実施半数近くを保有 10 財務諸表より作成

6 メジャーの投資実績と計画額 2015 年 10-30% 減 2016 年以降さらに削減計画実績予定投資額 2015 年投資計画 Q2 末時点現時点年初 2016 以降の投資計画 ExxonMobil 年 < 年 $34B 下流石化分野増額 Shell BG $35B(BG 買収後 ) BP < 年 :$17B-$19B Chevron Total 合計 (BG 除 ) 単位 :10 億ドル 2016 年 :$25B-$28B 年 :$20B-$24B ( 市場状況次第 ) 年 :$17B-$19B 各社発表資料より作成 2015 年投資実績 (Q1-Q3) メジャーの投資額上流投資が全体の 8 割 ~9 割 2015 年 Q3 までの投資額は前年比で大幅削減下流部門よりも上流部門減少比率が大きい (BP 除く ) 2015 年第 3 四半期末までの部門別投資額 ( 単位 :10 億ドル ) 上流部門下流部門その他合計 ExxonMobil 19.5 ( 23%) Shell 15.6 ( 24%) BP 11.9 ( 23%) Chevron 23.3 ( 15%) Total 19.0 ( 7%) 第 3 四半期財務諸表より作成 4.0 ( 0%) 3.1 ( 11%) 1.3 ( 32%) 1.7 ( 6%) 2.4 (+20%) ( 19%) ( 21%) ( 27%) ( 15%) ( 4%) 12

7 コスト削減コントラクターとの再交渉サービスフィー削減今後開発プロジェクトの再設計デザイン最適化事業優先度選別延期中止パートナー間の戦略的方向性損益分岐点採算性の改善既発見資産のマネタイズ 13 開発延期投資決定事業遅延 (FID 案件が少ない ) オイルサンドCarmon Creek 開発中中止 ( 埋蔵量ブック取り下げ ) Allow LNG 開発中止大水深案件( メキシコ湾西アフリカ ) 大規模事業のFID 延期等主要な上流資産減損 ExxonMobil Snorre 2040( ノルウェー ) Shell Carmon Creek( オイルサンド ) Pierre River( オイルサンド ) Allow LNG( 豪州 ) Bonga Southwest( ナイジェリア ) Vito( 米国メキシコ湾 ) Browse LNG( 豪州 ) BP Tangguh Train 3( インドネシア ) Mad DogフェーズII( 米国メキシコ湾 ) Chevron IDDフェーズ2( インドネシア ) 第 3 四半期業績発表にて 82 億ドルの減損計上 ( オイルサンドアラスカ極地 Marcellus 及び Utica シェール ) 第 2 四半期業績発表にて総額 20 億ドル Tengiz 拡張 ( カザフスタン ) Total Zinia 2( アンゴラ ) 第 1~ 第 3 四半期で総額 20 億ドル ( リビアイエメン ) 各種資料より作成太字はオペレーター 14

8 資産売却今のところ下流資産の売却が目立つ上流資産は売却先が見つかりにくい状況か全般的に上流 M&A 低調購入資産売却資産 ExxonMobil Permianシェール資産 ( 米国 ) 北海資産 (Anasuria Cluster) カリフォルニア及びルイジアナ精製関連資産 ( 米国 ) Shell LNG 受入基地 ( ミャンマー ) LNG 配給事業 ( 中国 ) ガス & パワー取引ユニット ( 欧州 ) 北海資産 (Anasuria Cluster) ナイジェリア陸上鉱区ブラジル大水深 Campos Basin( ブラジル ) 潤滑油事業 ( 中国下流 ) 日本での精製事業 ( 日本下流 ) ガス輸送インフラ ( ロシア ) Butagaz LPG 事業 ( フランス ) ガソリンスタンド ( 英国 ) 下流 ( デンマークノルウェー ) Elba LNG 事業 ( 米国 ) BP El Matariya 権益 ( エジプト ) メキシコ大水深 (Tiber and Gila discoveries) 製油所権益 ( ドイツ ) パイプラインインフラ ( 北海 ) ビチューメン事業 ( 豪州下流 ) Chevron モーリタニア大水深鉱区メキシコ大水深 (Tiber and Gila) ベトナム沖合鉱区精製設備及びサービスステーション ( ニュージーランド豪州 ) Total アブダビADCO 権益 (10%) オイルサンドFord Hillsファームアウト北海資産 Laggan, Tormore, Edradour, Glenlivet 北海ガスライン & ガスターミナル ( 北海中流 ) 欧州下流 ( トルコフランス ) 各種資料より作成合意案件含む個別 ExxonMobil 循環的な価格変化長期的視野で投資見直し Shell LNG と大水深リーダーの地位強固 BP メキシコ湾流出事故後のポートフォリオ見直しが継続 Chevron 開発中案件の生産移行 Total 上流事業とともに LNGトレーディング下流事業重視千 boe/d 5, 年地域別生産量北米中南米欧州中東アフリカアジア太平洋ロシア中央アジアその他関連企業等 4,000 3,000 2,000 1,000 0 ロシア中央アジアアジア太平洋アフリカ中東 ( エジプト ) 欧州中南米北米 ExxonMobil Shell+BG BP Chevron Total 2014 年アニュアルレポートより作成注意 : 中東にエジプトを含むまたロシア中央アジアにインドパキスタンバングラディシュ含む Shell の生産量のうち中東ロシアアジア内のその他をすべてアジア太平洋に分類 BP の Rosneft 株式分 1 百万 boe/d をロシア中央アジアに分類 16

ExxonMobil 価格循環の過程生産量 2011 年 445 万 boe/d 2014 年 400 万 boe/ d ガス比増米国 1/4 2010 年シェール買収 +40 万 boe/d 2015 年 Q3 上流赤字 2017 年目標 430 万 boe/d 低油価対応低価格はサイクルの一部コストマネージメント強化事業遂行による信頼性長期的に投資先を厳選資源量 920 億 bbl

BG( 英 ) 買収発表 (2015/4) Upstream オイルサンドアラスカ等減損(15/Q3) 強靭なバランスシート操業コスト資本支出削減 (2015 年操業費 10% 資本支出 20% 110 億ドル削減 2016 年それ以上 ) ポートフォリオ見直し / 資産売却 2014 2015 年 200 億ドル規模 BG 統合後のビジョン New, Simpler Upstream

9 ExxonMobil 価格循環の過程生産量 2011 年 445 万 boe/d 2014 年 400 万 boe/ d ガス比増米国 1/ 年シェール買収 +40 万 boe/d 2015 年 Q3 上流赤字 2017 年目標 430 万 boe/d 低油価対応低価格はサイクルの一部コストマネージメント強化事業遂行による信頼性長期的に投資先を厳選資源量 920 億 bbl 重質油非在来 LNG 一貫操業システムに強み下流投資 ( 米 / 中等 ) 2015 年 5 月 27 日 ExxonMobil 資料より 2015 年 5 月 27 日 ExxonMobil 資料より 17 Shell LNG と大水深を軸生産量 2005 年 350 万 boe/d 2014 年 300 万 boe/d 上流部門ガス時代をリード 2000 年代初ガス比率 50% 超 BG( 英 ) 買収発表 (2015/4) Upstream オイルサンドアラスカ等減損(15/Q3) 強靭なバランスシート操業コスト資本支出削減 (2015 年操業費 10% 資本支出 20% 110 億ドル削減 2016 年それ以上 ) ポートフォリオ見直し / 資産売却年 200 億ドル規模 BG 統合後のビジョン New, Simpler Upstream 組織 2016 年 1 月に組織改変 BG 買収によるシナジー効果資産売却 300 億ドル規模 3 本柱上下流大水深 LNG 権益 LNG 販売 24 百万トン / 年 (2014)+BG 9 百万トン 2009 年 7 月 2016 年 1 月 Upstream Americas BG 資産統合 Upstream Gas and Power 自然エネルギー投資縮小 Peter Voser 前 CEO 就任時 Upstream International Integrated Gas Oil Sand BG Group LNG+trading, ブラジル大水深 Unconventio nal Resources シェールオイルサンドアラスカ探鉱 Shell 発表資料を参考に筆者作成 18

10 BP 事故後の影響続く生産量シェア 2010 年 380 万 boe/d 2014 年 310 万 boe/d 石油比率高い生産地集中化 2010 年 4 月メキシコ湾大水深油流出事故後の費用計上 ( 計 545 億ドル ) 2010 年 Q4 409 億ドル 2015 年 Q2 107 億ドル資産売却続くロシア TNK BP 50% 株主売却益 (2013) Rosneft 20% 株主事業合理化実施契約再交渉スタンダード化最先端ソリューション採用開発最適化 100 億ドル売却計画 ( 現在 78 億ドル ) の年内完了 2016 年億ドル規模配当維持最適な規模追求フロンティア探鉱の見合わせ 2017 年までに Brent 価格 60 ドルでキャッシュフロー均衡 19 Chevron 大型開発ピーク生産量シェア 2005 年 240 万 boe/d 2010 年 280 万 boe/d 2014 年 260 万 boe/d 生産横ばいガス比率今後上昇目標:2017 年万 boe/d 開発中のオペレーター案件目白押し (15 16 生産開始 ) LNG: 豪州 Gorgon, Wheatstone, 西アフリカAngola(Re start) 大水深西アフリカ :Mafumeira Sul( アンゴラ ) Agbami 拡張 ( ナイジェリア ) メキシコ湾 :Big Foot その他に中国北海等投資額削減 2016 年以降から大幅減コストの引き下げ効率性の改善最大 7000 人規模の人員削減継続的な資産売却実施生産量の増加による収入増加 2017 年までに配当を含むフリーキャッシュフロー 20

Total LNG トレーディングアフリカ生産量シェア 2005 年 240 万 boe/d 2014 年 200 万 boe/d ガス比率高い北米シェールなしオイルサンド事業の見直し (2014 年減損 ) Total2015/9 資料を参考に作成 2015 年 9 月発表 4 つの Focus 1)Capex, Opex の削減実質 E&P 縮小サプライチェーン見直し操業の効率化

11 Total LNG トレーディングアフリカ生産量シェア 2005 年 240 万 boe/d 2014 年 200 万 boe/d ガス比率高い北米シェールなしオイルサンド事業の見直し (2014 年減損 ) Total2015/9 資料を参考に作成 2015 年 9 月発表 4 つの Focus 1)Capex, Opex の削減実質 E&P 縮小サプライチェーン見直し操業の効率化 2) 新探鉱戦略年間予算億ドル 3)LNG 開発 & トレーディング * 権益分 LNG 12 百万トン / 年 ) アフリカ投資生産量年 6 7% 増下流分野への投資比率現行 20% 25% 新エネルギー投資年 5 億ドル 2017 年までに 60 ドルでもフリーキャッシュフロー課題規模拡大よりも株主還元拡大志向するも達成できずジレンマ探鉱成績探鉱専業者中堅企業による大型発見大産油国イージーオイルの不確実性イラク (2009) ロシア (2011~13) 契約条件治安問題欧米制裁など今後のメキシコイランの外資開放中堅との競争 NOC とのパートナーシップ 22

12 ロシア企業とメジャー提携 ExxonMobil Rosneft 提携 (2011 年 8 月 ~) ロシア国内既存提携 Kara 海での試掘黒海での試掘タイトオイル生産試験北極海での共同探鉱制裁により一時撤退第 3 国で新規探鉱 2015 年 11 月モザンビーク探鉱 (Zambezi basin) 鉱区取得ロシア側欧米企業提携内容 Rosneft ExxonMobil BP (20% 株主 ) * は経済制裁による凍結事業 * ロシア北極海黒海大陸棚等での共同事業 * 西シベリアの開発の難しい鉱床での共同開発 :Bazhenov 層 (25 億 t) 及び Priob 鉱床サンクトペテルブルクでの研究センターメキシコ湾テキサスカナダタイトオイルへのRosneft 参加 : アラスカ北部 Point Thomsonガス田 25% (2011 年 8 月 /2012 年 4 月 /2013 年 2 月 ) Statoil * 北極圏に関する戦略的協力協定 (2012 年 5 月 -) Eni * バレンツ海と黒海の3 つの鉱区に係る戦略的協力協定 (2012 年 4 月 -) Novatek Total(20% 株主 ) Total YamalLNG 開発への参画 (20%) Novatek の約 20% 株式保有 Gazprom Shell * 西シベリアシェールオイル開発 (2013 年 4 月 ) Lukoil Total * 西シベリアシェールオイル開発 (2014 年 3 月 -) 各種資料より JOGMEC 作成まとめメジャーは価格低迷を受けて収入減少及びオイルサンドシェール中東資産で減損収益悪化今後数年は大型開発が相次ぎ生産移行 2015 年投資は上流中心に全体で前年比 200 億ドル減来年以降さらに削減の計画 BG 買収でShell 戦略の明確化資産見直しとともに資産売却で収入確保 2017 年までに価格 60ドルに適応株主重視の姿勢投資減でジレンマ強まる 24

最近の油価下落による欧州石油業界への影響と見通し

最近の油価下落による欧州石油業界への影響と見通し最近の油価下落による欧州石油業界への影響と見通し 2015 年 1 月 22 日調査部永井一聡 1 原油価格推移 (2009~2015) トル / ハレル 130 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 1 23 4 5 6 7 8 9101 121 23 4 5 6 7 8 9101 121 23 4 5 6 7 8 9101 121 2 3 4 5 6 7 8