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1 タマネギ由来減粘成分のコンニャクへの応用 Application of a viscosity reducer from onion on Konjak 物質 環境システム工学科 小橋芳栄 1

2 要旨 私たちはタマネギ由来の成分にコンニャク溶液に対する減粘効果がある事を発見し この減粘成分 ゲルスナー K について様々な研究を行なってきた ゲルスナー K 添加直後の 1% コンニャクの粘度変化を超音波粘度計で測定した 同時にゲルスナー K を添加してからの平均分子量の経時変化を Sephacryl S-200HR( ~ Da) を用いたゲル濾過クロマトグラフィーで測定した ゲルスナー K 添加後 10 分程度経過した時点で粘度はほとんど最低値に近くなるのに対して ゲル濾過クロマトグラフィーが示す分子量は Da( 分画範囲上限 ) に留まっており その後徐々に低下するものの 12 時間以降 7 日後でもその分子量はおよそ Da であった ゲルスナー K はコンニャクゲルを成分単糖まで分解することはなく おもに粘度低下に有効な分解に作用していることが分かった またゲルスナー K を添加して粘度が低下したコンニャクにアルカリを加えて固め成型してその性状を調べた コンニャク精粉を水で練ったものにゲルスナー K を添加した後 常法量の水酸化カルシウムを加え沸騰浴中で成型したところ 生成したコンニャクにはコンニャク特有の食感がなくなり わらび餅のような新食感になった 作成した コンニャクわらび餅 で島津 EZTest を用いた噛み込み試験と研究室の構成員による食感試験を行った コンニャクわらび餅 以外にもゲルスナー K で粘度低下した高濃度のコンニャク溶液を噴霧乾燥機で微細な粉にした コナコン など ゲルスナー K は新たな食品の材料として使うことが出来る 2

3 目次 緒言 1 ゲルスナー K 添加コンニャク溶液の分子量の経時変化 1-1 目的 1-2 材料 ゲルスナー K の調製 1-3 方法 ゲル濾過クロマトグラフィーと粘度測定 全糖量測定 1-3 結果と考察 2 高濃度コンニャクの成型 2-1 目的 2-2 方法 噛み込み試験 食感試験 2-3 結果と考察 結語 謝辞 参考文献 3

4 緒言 私たちの研究室では乾燥タマネギの抽出液にコンニャクに対する減粘成分があることを発見し その減粘成分をゲルスナー K と呼び研究を行っている これまでの研究でゲルスナー K の活性のある見かけの分子量は でその主要構成成分は糖質とタンパク質である事が分かっている コンニャクはコンニャク芋というサトイモ科の植物の球茎から作られる加工食品である コンニャクの効果として低カロリーで食物繊維が豊富で整腸作用があり 過食や肥満を未然に防ぐ効果やカルシウムの吸収がよいなどの効果がある しかし 日本食離れなのでコンニャクの消費量は減り 生産量も年々減少している そこでゲルスナー K のコンニャク溶液に対する効果をゲル濾過クロマトグラフィーによって確認し 新食感のコンニャク作りを目標に 調理しなくてもデザート感覚で食べる事が出来るこんにゃくの開発を試みた 1 ゲルスナー K 添加コンニャクの平均分子量の経時変化 1-1 目的ゲルスナー K を添加したコンニャク溶液の平均分子量の経時変化をゲル濾過クロマトグラフィーを用いて測定した 1-2 ゲルスナー Kの調製生タマネギ 1Kg を乾燥器を用いて 50 で乾燥し 重量が 10 分の 1 になるまで乾燥したものを乾燥タマネギとした 乾燥タマネギ 100g に水 1L を加え冷蔵庫中で一晩放置 抽出液と残渣を濾別し 中空糸フィルターで 0.1 ミクロン 15 万カット 3 万カットの順番で濾別をする 濾過液をロータリーエバポレーター (ROTARY VACUUMEVAPORATOR N-1000,EYELA) で 100ml になるまで濃縮した後 終濃度で 75% のエタノールを加え エタノール沈殿を行い 沈澱物を水で溶解し 100ml にした 1-3 方法 ゲル濾過クロマトグラフィーと粘度測定市販のコンニャク精粉を 0.1% になるようにイオン交換水を加え 50 のウォーターバス中でスターラーにて撹拌し コンニャク溶液を調製した コンニャク溶液 200ml にゲルスナー K5ml を加え 10 分 2 時間 6 時間 12 時間 24 時間 36 時間 2 日 3 日 4 日 5 日 7 日後のコンニャク溶液の粘度を超音波粘度計で測定した 粘度を測定した後それぞれのコンニャク溶液をシリンジで 2ml 取り沸騰浴中であらかじめ沸騰させたイオン交換水 10ml に加え さらに 10 分間加温しゲルスナー K の効果を失活させた コンニャク溶液 200ml にゲルスナー K の代わりに水 5ml を添加したものをコントロールとし粘度を測定した つい 4

5 でこの 2ml を沸騰したイオン交換水 10ml に加えて ゲル濾過クロマトグラフィーで測定をした コントロールと各時間に得たサンプルはゲル濾過クロマトグラフィーで分子量の経時変化を測定した ゲルには Sephacryl S-200HR( ~ Da) 移動相 0.1M NaCl 流速 1ml/min で分画を行い検出には示差屈折率島津 RID-10A を使用した 全糖量測定 RI で検出したピークと実際の糖量を比較する為に 7 日後のサンプルをゲル濾過カラム (Sephacryl S-200HR) で濾過してフラクションコレクターで 3 分毎に分取し フェノール硫酸法を用いて各フラクションの全糖量測定を行った 1-4 結果と考察 粘度変化 1000 Viscosity (mpa s) TIME (h) 図 1 粘度変化 0 分のコントロールの粘度は 100mPa s 以上だが ゲルスナー K 添加直後から急激に粘度 は低下し 添加後 10 分では 10mPa s 以下になり その後水 (50 で 0.8mPa s) と同じく らいの粘度になった 分子量の経時変化ゲル濾過クロマトグラフィーで分子量の経時変化を確認した結果 コントロールとゲルスナー K 添加 10 分後を比較すると分子量は 以上にあり分子量の変化はほとんど見られなかった ゲルスナー K 添加 10 分後 ~12 時間後では分子量は ~ に変化した しかし 12 時間後 ~7 日後では分子量は にありほとんど変化しなかった 5

6 10min Control 2hours 6hours 12hours~7days 図 2 ゲル濾過クロマトグラフィーを用いた分子量の経時変化 全糖量測定 全糖量 (μg/ml) TIME(h) 図 3 全糖量測定 RI で検出したピークと糖量測定の値がほぼ一致した 考察コンニャク溶液にゲルスナー K を加えると 10 分後には図 1 の結果では粘度が急激に低下していることが分かる しかし 図 2 の結果ではこの時の分子量はほとんど変化しなかった これはゲルスナー K とコンニャクの最初の相互作用 ( 反応 ) は高分子の切り刻みというよりは 粘度に有効な相互作用の排除にあると考えられる また 添加 12 時間後には最終産物になり 分子量は 前後で止まって成分単糖までは分解しないことが分かった 6

7 2 高濃度コンニャクの成型 2-1 目的ゲルスナー K を添加して粘度が低下したコンニャクにアルカリを加えて固め成型した 市販のコンニャクの濃度は 3% 程度だが 少量食べただけでもコンニャクの効果があるように高濃度コンニャクで実験を試みた 2-2 方法 5% のコンニャク溶液でゲルスナー K と水酸化カルシウムの添加量や撹拌時間 沸騰浴中で加温する時間の検討を行った その結果 市販のコンニャク精粉 25g にイオン交換水 500ml を加え 2 時間撹拌して 5% コンニャクゲルを調製し 二等分した後 ゲルスナー K もしくはイオン交換水 5ml を添加後 1 時間撹拌し 水酸化カルシウム 200mg を添加後 5 分間撹拌した後 四角い型に入れ沸騰浴中で 20 分間加温したものが最適だった 噛み込み試験試験機と試験器具 1 試験機本体島津小型卓上試験機 EZTest-20N 2 歯の形状図 4 に示す試験断片図 5 に示す試験条件試験断片を圧盤の上に置き 試験速度 100mm/min 標点距離 20mm で上図の歯を垂直方向に試験断片に押し当てる 図 4 歯の形状と寸法 (mm) 図 5 試験断片 (mm) 7

8 ゲルスナー K を添加したコンニャク イオン交換水を添加したコンニャクで EZTest-20N を用いた噛み込み試験を行った また ゲルスナー K を添加したコンニャクと比較する為に 3% 程度の市販のコンニャクの噛み込み試験を行った 食感試験 20 代から 60 代の男女 約 30 人にゲルスナー K を添加したコンニャクと添加してないコントロールのコンニャクの 2 種類に対して 食感はありますか? という質問をし ない どちらかと言えばない どちらかとも言えない どちらかと言えばある を基準として回答をしてもらった 2-3 結果と考察ゲルスナー K 添加コンニャクの成型ゲルスナー K を 5ml 添加後 1 時間撹拌した後 水酸化カルシウムを 200mg 添加後 5 分間撹拌してから 型に入れ沸騰浴中で 20 分間加温すると コンニャク特有食感がなくなり もちもちとした食感になった 噛み込み試験市販のコンニャクは圧入距離 10 ミリ前後に破断がありコンニャク特有のプリっとした食感を示した 市販のコンニャクよりも硬いコントロールでも圧入距離 10 ミリ前後に破断があり 20 ミリ前後では噛み切る時の食感を示した しかし ゲルスナー K を添加したコンニャクはすぐに噛みこみが始まり 噛み砕く食感はほとんどなかった 応力 (N) 圧入距離 (mm) 図 6 市販コンニャク 8

9 12 応力 (N) コントロール ゲルスナー K 圧入距離 (mm) 図 7 コンニャク (5%) 食感試験 図 8 食感試験 コントロールではコンニャクに歯応えがあると感じた方が 95% いたのに対してゲルスナ ー K を添加したコンニャクは 32% まで低下した 高濃度のコンニャゲルでもゲルスナー K を 添加する事で粘度低下し わらび餅のような食感になる 9

10 結語 超音波粘度計での測定結果によればゲルスナー K を添加したコンニャク溶液は 10 分後には粘度が激減する ゲル濾過クロマトグラフィーで分子量の経時変化の結果によれば その時点ではコンニャク分子は細分されていない また 12 時間後には最終産物になり 分子量は で成分単糖までは分解しないことが分かった 高濃度のコンニャクゲルでもゲルスナー K を添加する事で粘度低下し わらび餅のような食感になる 粘度低下したコンニャクは容易に粉末化出来 この粉末化した粉をコナコンと呼んでいる この粉は水にサッと溶けるので 飲料水に溶かしたりパン生地に練りこむ事も可能である 粉にしなくても粘度低下したコンニャクにココアを加えてコンニャクムースにする事も可能である このように ゲルスナー K で粘度低下させたコンニャクは幅広い食品への応用が期待される 謝辞 本研究をまとめるにあたり 絶えず懇切な御指導と御助力を賜った高知工科大学大学院特任教授向畑恭男教授に深く感謝の意を表します また 研究遂行上種々の有益なる御尽力をいただいた高知工科大学松元信也教授 榎本惠一教授 大浜武教授 有賀修助教授 堀沢栄講師に厚く御礼申し上げます 本研究遂行にあたって絶えず御協力いただいた関裕美氏 手嶋勝之氏 佐藤洋行氏 永松伸一氏 小林明日香氏 辻井綾香氏 環境生物工学研究室の卒業生及び在籍する諸君に感謝しここに厚くお礼申し上げます 参考文献 神戸隆介 (2005): タマネギ由来の多糖溶液減粘成分 高知工科大学修士論文 10

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