Japanese Orthoptic Journal 44: 65-71, 2015.

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こうごちとく
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1 第 55 回日本視能矯正学会一般講演片眼特発性黄斑円孔における立体視の検討佐藤千尋森隆史新竹広晃齋藤章子丹治弘子石龍鉄樹福島県立医科大学眼科学講座 Stereopsis in Unilateral Idiopathic Macular Hole Chihiro Sato,Takafumi Mori,Hiroaki Shintake, Akiko Saito,Hiroko Tanji,Tetsuju Sekiryu Department of Ophthalmology, Fukushima Medical University 要約目的特発性黄斑円孔( 以下 MH) では視力低下変視や不等像をきたすとともに両眼視機能が障害され日常生活に影響を与えている可能性がある今回片眼 MHの立体視と視力変視不等像視網膜形態との関連を検討した対象及び方法対象は未治療の片眼 MH16 例 (57 ~ 85 歳 ) Titmus Stereo Test( 以下 TST) で測定した立体視差と視力 New Aniseikonia Test( 以下 NAT) を用いた不等像視 M-CHARTS を用いた水平および垂直変視量光干渉断層計を用いMHの縦径横径を測定した TST Circleが判別可能であった症例を立体視良好群不可能であった症例を立体視不良群にわけて 2 群間を比較検討した結果 MH の病期状態はStage2が5 例 Stage3 が 8 例 Stage4 が 3 例であった TST の Fly は全症例で可能だったが Circleが判別可能だったのは半数の8 例で立体視は病期が進行しているほど Circle 判別可能症例の割合が低下した不等像視は9 例でみとめられすべて小視症であった TST Circleの立体視とNATの小視症には関係がみられなかった立体視は視力が不良の症例水平変視量が大きい症例では不良であった立体視は円孔径が大きいほど不良であり TSTのCircle が可能であった症例では縦径横径ともに400μm 未満であった立体視良好群と立体視不良群の2 群間の検定では縦径 (p=0.027) と横径 (p=0.001) で有意差をみとめ視力不等像視水平および垂直変視量には有意差をみとめなかった結論 MHの立体視機能は円孔の大きさに影響を受ける臨床での視機能評価の一つとして立体視を考慮する必要がある別冊請求先 ( ) 福島市光が丘 1 番地福島県立医科大学眼科学講座 Tel. 024(547)1303 Fax. 024(548)2640 c-3218@fmu.ac.jp Key words: 特発性黄斑円孔立体視変視量不等像視光干渉断層計 idiopathic macular hole, stereopsis, degree of metamorphopsia, aniseikonia, optical coherence tomography 65

2 日本視能訓練士協会誌 Abstract Purpose Idiopathic macular hole (MH) can cause visual loss, metamorphopsia, and aniseikonia. The impaired binocular visual function could further affect patient s daily life. In this study, we investigated stereopsis and its association with visual acuity, metamorphopsia, aniseikonia, and retinal morphology in unilateral idiopathic MH. Subjects and Methods Subjects were 16 untreated patients (age, years) exhibiting unilateral idiopathic MH. Stereo acuity was measured with the Titmus Stereo Test (TST) and aniseikonia was evaluated with the New Aniseikonia Test (NAT). The horizontal and vertical degrees of metamorphopsia were assessed by the M-CHARTS and the horizontal and vertical diameters of the MH were measured by optical coherence tomography. Based on their stereo acuity, the subjects were divided into favorable (those who could be tested by the Titmus Circle Stereotest) and unfavorable (those who could not be tested by the same test) groups. Differences between both groups were analyzed by Mann-Whitney U test with respect to the parameters. Results Regarding the stage of MH, 5 patients were with stage 2, 8 patients were with stage 3, and 3 patients were with stage 4. All the patients could recognize the fly stimulus but only 8 patients could recognize the circle stimulus in the TST and the number decreased as the stage of MH advanced. Nine patients showed aniseikonia and all were with micropsia. No correlation was seen between stereo acuity by the Titmus Circle Stereotest and micropsia by the NAT. Patients with poor visual acuity, a higher degree of horizontal metamorphopsia, and a MH of larger diameter tended to have poor stereo acuity. The vertical and horizontal diameters of the MH in the favorable group were both 400 μm. Significant differences in the vertical (P = 0.027) and horizontal (P = 0.001) diameters of the MH were seen between both groups. However, visual acuity, aniseikonia, and degrees of vertical and horizontal metamorphopsia did not significantly differ between both groups. Conclusion In patients with MH, stereo acuity was affected by the size of the MH. Stereo acuity should be considered as one of the clinical assessments of the visual functions in patients with unilateral idiopathic MH. Ⅰ. 緒言特発性黄斑円孔 (unilateral idiopathic macular hole: 以下 MH) は後部硝子体の癒着によって中心窩が前方に牽引され裂隙が生じ視細胞層が接線方向に遠心性に移動し拡大する 1) このような網膜の形態変化によって MHでは視力低下とともに黄斑部へ投影される像が歪んで小さく知覚される特徴的な変視をきたす 2),3) また視細胞配列の乱れは単眼視機能の障害のみでなく視差情報の誤りとなり MHの患者では中心立体視の障害が日常生活に影響を与えている可能性がある MHの両眼視機能について硝子体手術の有効性の報告はあるが単眼視機能や網膜形態との関連は十分には明らかにされていない 4)~13) 今回 MHの立体視と視力変視不等像視および網膜形態の関連について調べたので報告する Ⅱ. 対象及び方法対象は2013 年 10 月から2014 年 9 月に福島県立医科大学附属病院眼科を初診し片眼 MHと診断した16 例である年齢は57~85 歳 ( 平均 66.2±7.9 歳 ) で男性 11 例女性 5 例であった屈折による不等像を除外するため等価球面屈折値の左右差が1.5Dより大きい症例を除外した斜視の合併例および軽度白内障以外の器質的眼疾患を有する症例も除外した屈折検査ののちに矯正視力を測定し近見矯正レンズの装用下にTitmus Stereo Test( 以下 TST) New Aniseikonia Test( 以下 NAT) およびM-CHARTSを用いてそれぞれ立体視 66

差 ( 秒 ) 不等像視(%) および変視量 ( 度 ) を測定した NATは検査距離 40cmとし健常眼に緑レンズを装着し大きさが一定である赤視標 ( 視角 6 度 ) を罹患眼に赤レンズを装着し大きさの変化する緑視標を提示し罹患眼の健常眼に対する不等像視の程度として評価した M-CHARTSは検査距離 30cm 2 本線のタイプを用いて水平および垂直変視量 ( 度 ) を測定した

TSTの結果より Circleの判別可能だった症例 ( 視差 800 秒以下 ) を立体視良好群 Flyのみ判別可能だった症例 ( 視差 3000 秒以上 ) を立体視不良群と定義し Mann-Whitney U 検定を用いて 2 群間の有意差検定をおこなった Ⅲ. 結果 Stage4が3 例であった罹患眼視力は平均 0.28 (0.09 0.6) 健常眼の視力は1.19(0.8 1.

3 差 ( 秒 ) 不等像視(%) および変視量 ( 度 ) を測定した NATは検査距離 40cmとし健常眼に緑レンズを装着し大きさが一定である赤視標 ( 視角 6 度 ) を罹患眼に赤レンズを装着し大きさの変化する緑視標を提示し罹患眼の健常眼に対する不等像視の程度として評価した M-CHARTSは検査距離 30cm 2 本線のタイプを用いて水平および垂直変視量 ( 度 ) を測定した MHの径はスペクトラルドメイン光干渉断層計 ( スペクトラリス TM ハイデルベルグ社) を用いて MHの直径が最大となる垂直断と水平断の画像をもとに網膜外層構造が最も近接した部位を円孔径とし縦径と横径 (μm) を測定した ( 図 1) また矯正視力は logmar に換算した立体視差と矯正視力不等像視水平と垂直変視量およびMHの縦径と横径の関係を調査した立体視差に関しては TSTの結果より Circleの判別可能だった症例 ( 視差 800 秒以下 ) を立体視良好群 Flyのみ判別可能だった症例 ( 視差 3000 秒以上 ) を立体視不良群と定義し Mann-Whitney U 検定を用いて 2 群間の有意差検定をおこなった Ⅲ. 結果 Stage4が3 例であった罹患眼視力は平均 0.28 ( ) 健常眼の視力は1.19( ) であった TSTのFly は全 16 症例で判別可能だったが Circleが判別可能だったのは半数の8 例で最も良好なものは 80 秒 (6/9) であった ( 図 2) 立体視は病期が進行しているほど Circle が判別可能だった症例の割合が低下した ( 図 3) 視力が不良であるほど立体視は不良となる傾向がみられた ( 図 4 a) Circleが判別可能だった症例の小数視力は 0.2(logMAR0.7) 以上であった不等像視は9 例でみとめられすべて小視症で最大値は5% であった TSTの Circleで測定した立体視とNATで計測した小図 2 TST 立体視機能 Fly は全例で可能であり Circle は 8 例でのみ可能であった MH の病期は Stage2 が 5 例 Stage3 が 8 例図 1 OCT 横断面網膜外層が最も近接する部位を円孔径として測定した A. Stage 3MH B. Stage 2MH では円孔弁を除いた部位で測定した図 3 立体視差と病期分類 Circle が判別できた症例は Stage 2 では 5 例中 3 例 (60%) Stage 3 では 8 例中 4 例 (50%) Stage 4 では 3 例中 1 例 (33%) であった 67

4 日本視能訓練士協会誌視症の間には関連性はみられなかった ( 図 4 b) 変視量( 平均 ± 標準偏差 ) は水平 1.01± 0.46 度 (0.4 ~ 1.8 度 ) 垂直 0.73±0.14 度 (0.5 ~ 1.0 度 ) であり水平変視量が1.4 度以上の症例はすべて立体視不良群に含まれたが変視量と立体視には一定の傾向をみとめなかった ( 図 4 c, d) 円孔径は縦径 343±128μm(167 ~ 642 μm) 横径 369±132μm(186 ~ 674μm) であった立体視は円孔径が大きいほど不良であり Circleが可能であった症例では縦径横図 4 立体視差と他の検査結果との関係 TST 立体視差を縦軸にそれぞれ視力 (a) 不等像視 (b) 水平変視量 (c) 垂直変視量 (d) MH 縦径 (e) MH 横径 (f) を横軸に示す 68

5 径ともに400μm 未満であった ( 図 4 e, f) 立体視良好群と立体視不良群の2 群間の検定では縦径 (p=0.027) と横径 (p=0.001) で有意差をみとめ視力不等像視水平および垂直変視量には2 群間に有意差をみとめなかった ( 図 5) Ⅳ. 考案今回の検討では 16 例中 Circle が判別できた図 5 立体視良好群と立体視不良群での箱ひげ図視力 (a) 不等像視 (b) 水平変視量 (c) 垂直変視量 (d) MH 縦径 (e) MH 横径 (f) について Mann-Whitney U 検定での p 値を示す MH 縦径と MH 横径に 2 群間の有意差 (p<0.05) をみとめた 69

6 日本視能訓練士協会誌 4),5) 症例 ( 立体視良好群 ) は8 例であり既報 (82~92%) より低値であった立体視良好群では円孔径は立体視不良群に比較して有意に小さかった ( 図 5 e, f) 視角 1 度は網膜投影像では約 300μmに相当する 6) TST Circle は視角 0.7 度に設計されており網膜投影像は約 210 μmとなる立体視良好群 8 例中 MH 縦径と横径ともに210μmを下回っていたものは1 例のみでありほかの7 例ではTST Circleの視覚刺激より大きなMHを有していたと考えられる ( 図 4 e, f) この結果から考察すると円孔径が 210μmを超えていても比較的円孔径が小さい症例では MH 近傍に良好に機能する感覚網膜が存在しこの場所に固視点が移動することで中心立体視は残存すると推測される今回の症例では病期分類が進むにしたがって TST Circleが判別可能である症例の割合が低下していた MHは病期の進行とともに遠心性に拡大し罹病期間が長くなるにしたがって円孔周囲のカフや嚢胞様変化のある部位での網膜機能が低下する 7) これに伴いMHでは中心窩網膜の欠損により円孔縁に固視点が移動し円孔底径が大きいほど移動量が大きいと報告されている 14) これらの結果から MHの病期が進行し円孔が大きい症例での立体視の低下には罹患眼の視力低下だけでなく固視点の移動が影響していると考えられる片眼の形態覚の損失は両眼視機能に影響する 15) 片眼 MHにおいて TSTでの立体視と視力とには相関があると報告がある 7) 今回の検討では立体視不良群では視力は低下する傾向にあったが統計学的な有意差には至らなかった (p=0.06) 今後症例数を増やして検討する必要がある今回の検討では NATにて16 例中 9 例に小視症をみとめたが不等像視は立体視良好群と不良群とでは有意差はなく TST Circleの結果とは関連しなかった黄斑疾患ではない通常の不等像による融像限界は5% 前後とされている 16),17) 今回みとめられた不等像視は最も大きいもので5% であったため立体視への影響が少なかったと考えられる Krøyerらは MH の不等像について円孔の近傍ほど大きく周辺ほど軽微であり刺激視標の大きさにより結果が異なることを指摘している 18) 一方鵜飼らは NATの検査距離をかえて視角 6 度と12 度の刺激として施行し MHの小視症は広範囲でみとめられ不等像視が立体視機能に影響することを報告している 6) 今後視角の異なる条件においても立体視との関連を検討する必要がある本研究では水平変視量が大きい症例が立体視不良であったが変視量と立体視には一定の傾向をみとめなかった過去の報告でも同様に変視量と立体視は相関しないとされているこれは M-CHARTSの2 本線の間隔は視角 2 度であり TST Circleの0.7 度より大きく刺激の範囲が異なることにくわえて視力低下暗点など他の要因の影響によるものと推測される 4),7) MHでは視力低下変視不等像視立体視機能の低下など多彩な視機能障害が生じている MHの立体視機能に与える影響を検討したところ立体視は円孔の大きさに最も影響を受けていた MHの形成には数週から数か月の緩徐な経過をとり片眼性のMHの患者では視力低下は健常眼で代償されるため疾患の発生に気づかないことがある 19) このような両眼開放時に視力低下などの自覚症状がない例は非優位眼が罹患眼である場合に多いとされている 14) しかし時に針孔に糸を通せないなど両眼視機能の障害を疑う症状で受診することもあり片眼 MHでは視力低下以前に両眼視機能障害が日常生活に影響を与えている可能性があるしたがって治療の適応を検討する際には立体視機能を考慮する必要がある参考文献 1 )Gass JD: Reappraisal of biomicroscopic classification of stages of development of a macular hole. Am J Ophthalmol. 119: , )Saito Y, Hirata Y, Hayashi A, Fujikado T, Ohji M, Tano Y.The visual performance and metamorphopsia of patients with macular 70

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Japanese Orthoptic Journal 41: , 2012.

Japanese Orthoptic Journal 41: , 2012. 第 41 巻 (2012) 第 52 回日本視能矯正学会一般講演特発性黄斑前膜に対する検者の介入による視力の向上花田有里子前田史篤,2) 春石和子渡邊一郎桐生純一川崎医科大学眼科学教室 2) 川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科 Improvement in Visual Acuity Test Results With Examinerʼs Intervention in the