4) 熊本県の酸性雨長期モニタリング調査結果 (2017 年度 ) - 県内 2 地点における降水試料調査結果 - 上野一憲北岡宏道はじめに熊本県では,1988 年 10 月から県内における酸性雨の状況を把握するため, 長期モニタリング調査 1) を行っている 2004 年 4 月から採取装置を

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まいえかいて
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1 4) 熊本県の酸性雨長期モニタリング調査結果 (217 年度 ) 県内 2 地点における降水試料調査結果上野一憲北岡宏道はじめに熊本県では,1988 年 1 月から県内における酸性雨の状況を把握するため, 長期モニタリング調査 1) を行っている 24 年 4 月から採取装置を湿性沈着と乾性沈着を分けて採取する降水時開放型採取装置に変更した 2) なお, 28 年からは, 湿性沈着のみ調査を行っており, 乾性沈 3) 着 ( 非降水時における降下物 ) の結果については, 既報を参照されたい本報では 217 年度の調査結果について報告する調査方法及び分析方法 1 調査地点及び降水採取方法図 1 に調査地点を示した ( 熊本県阿蘇保健所 ) 及び ( 熊本県保健環境科学研究所 ) で小笠原計器製降水採取器 US3 型を用い,1 週間ごとに降水の回収を行ったなお, 八代市 ( 八代市役所 ) は 216 年 4 月 14, 16 日に発生した熊本地震により降水採取器を設置している庁舎が立入禁止となったまた, ( 立志岐小学校 ) は 216 年 3 月 7 日から降水採取器の故障により 216 年度は欠測とし, 以後両地点の調査を終了した調査月の区切りと降水試料の回収日は, 酸性雨全国調査実施要領 4) の別表月割り表に従った 2 分析方法測定は東亜ディーケーケー製 HM42X を用い, 複合電極は GST5841C を使用した電気伝導度 ( 以下 EC という ) 測定には東亜ディーケーケー製 CM42X を用い, 電導度セルは CT5811B を使用したなお, 及び EC は恒温水槽を使用して 25 で測定したイオン成分分析はダイオネクス製 ICS16 を用い, イオンクロマトグラフ法で行った ICS16 の分析条件は, カチオンでは Dionex IonPacTM CS16 のカラムと, 溶離液として 3mM メタンスルフォン酸溶液を用い, 流速 1.mL/min で分析を行ったまた, アニオンでは Dionex IonPacTM AS23 のカラムと, 溶離液として 4.5mM Na 2 CO 3,.5mM NaHCO 3 混合溶液を用い, 流速 1.mL/min で分析を行った (1988~ 216 年 ) 年度 5) との比較 (28 年 ~) 八代市 (1988~216 年 ) 人吉市 (1991 年 ~ 27 年 ) 調査結果及び考察 (1991 年 ~) 表 1 に 217 年度の調査 2 地点におけるイオン成分総括表を示した降水量は貯水量から算出したなお, の降水量について,2 月第 4 週から 3 月第 4 週までの期間は感雨器の故障により同地点に設置してある雨量計の降水量を用いて算出した平均, 平均 EC 及び平均イオン成分濃度は降水量との加重平均により算出したは 216 年度と比べ, で 73.mm, 宇土市で 29.4mm, それぞれ減少したについては, 11,12,1 月の少雨がの減少に寄与したの年平均値は 216 年度と比べ, は.14 の増加, は.6 の減少であったが, 両地点の差はなかった図 1 調査地点 EC の年平均値は,216 年度と比べ, は 6μS/cm, は 1μS/cm 減少した両地点とも 12μS/cm で, と同様に両地点の差はなかったイオン成分のうち, 主に海塩由来成分である Cl,Na 及び Mg 2 の年平均濃度は, がいずれも高く, 海岸からの距離が影響した NO3 を除く他のイオン成分は 216 年度と比べ, 同程度または減少したなかでも, 阿 84

2 (meq/m 2 ) 表 1 及びにおけるイオン成分総括表調査 EC Cl NH 4 K Mg 2 Ca 2 2) 注地点 μs/cm μg/ml μg/ml μg/ml μg/ml μg/ml μg/ml μg/ml μg/ml μg/ml mm 平均 (4.6) (18) (.81) (.52) (1.5) (.25) (.22) (.26) (.63) (.5) (.15) n=5 最高 (2728.3) 最低平均 (4.81) (13) (.68) (.54) (1.1) (.16) (.39) (.2) (.4) (.53) (.88) n=47 最高 (2412.9) 最低 n: 検体数平均は分析に供した雨水の降水量を基に加重平均により算出表中の最高値及び最低値は, 月平均 ( 荷重平均 ) 値から抽出 ( ) 内 :216 年度の成分荷重平均濃度及び降水量注 2) 測定地点で回収した雨水重量より計算した値 ( 小数第 2 位を四捨五入し小数第 1 位まで表記 ) 蘇市の Cl と SO4 の年平均濃度はと比べて大きく減少した 2 経月変化表 2 に 217 年度の各調査地点における月平均及び 1% 9% 8% 7% 6% 5% 4% 3% 2% 1% % 4 月 6 月 8 月 1 月 12 月 2 月調査月 1% 9% 8% 7% 6% 5% 4% 3% 2% 1% % 4 月 6 月 8 月 1 月 12 月 2 月調査月図 2 月間沈着量に対する各イオン成分沈着量の割合 Ca2 Mg2 Mg 2 K K NH4 NH 4 Na H H SO 4 NO 3 SO4 NO3 Cl Ca 2 系列 11 Mg 2 系列 1 K 系列 9 系列 8 NH 4 系列 Na 7 H 系列 6 SO 4 系列 5 系列 4 NO 3 系列 Cl 3 EC と月別イオン成分沈着量を, 図 2 に 217 年度の月間沈着量に対する各イオン成分沈着量の占める割合を示した月平均及び EC は月別降水量との荷重平均により算出し, イオン成分沈着量は各イオン成分濃度に対し, 分析に供した降水量を乗じて算出した月平均では, (12 月 ) の 4.14 が最も低く, 次いで (3 月 ) の 4.28, (2 月 ) と (2 月 ) の 4.46 の順であった月平均 EC については, 総じてが低い月に EC が高くなっていた (12 月 ) の 57μS/cm が最も高く, 次いで (2 月 ) の 32μS/cm, (2 月 ) の 3 μs/cm の順であったイオン成分沈着量は,2 地点の年間沈着量を比較すると, の 25 meq/m 2 (216 年度 :43meq/m 2 ), の 21meq/m 2 (216 年度 :25meq/m 2 ) の順であったこのうち, 海塩由来の影響が大きい Cl と Na について, はと比べて Na に対する Cl のイオン成分沈着量の割合が大きい本県では火山性ガスが阿蘇地域の月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 1 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月調査月図 3 月間沈着量の推移 85

3 表 2 月平均 ( 加重平均 ) 及び EC と月別イオン成分沈着量注 2) 調査 EC Cl 降水量 NH 4 K Mg 2 Ca 2 月間沈着量月試料数地点 mm μs/cm meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 4 月月月月月月月月月月月月年間合計月月月月月月月月月月月月年間合計イオン成分沈着量は有効数字 2 桁で表記注 2) 測定地点で回収した雨水重量より計算した値 ( 小数第 2 位を四捨五入し, 小数第 1 位まで表記 ) Cl 濃度に影響を与えていることが報告されている 6) この点からも, と同様に, これらのイオン種については今後とも火山活動との関係を注視していく必要があるまた, 降水の酸性化成分となる SO 4 について, 海塩由来の ssso 4 を除いた非海塩性成分月間沈着量の経月推移を図 3 に示したの月間沈着量は, 季節変動は比較的少ない一方, では,7 月に降水量が多かったことで沈着量が高くなったが, との差は少なかった 3 経年変化調査開始年度から 217 年度までの, 八代市, 及びにおける及び平均の推移を図 4 に, また,28 年度から 217 年度までの平均, EC 及びイオン成分年間沈着量の推移を表 3 にそれぞれ示したなお, 調査開始 ( 年度 ) からのデータは既報 7) を参照されたい 2 年度以降,, 八代市及びはが低下傾向にあったが,27 年度を境に再び上昇傾向に転じ, その後は上昇下降を繰り返しながら推移しているこのうち, については 211 年度から下降に転じ,214 年度は急激に低下した次に, 年間沈着量の経年推移を図 5 に示した調査開始からは八代市及びより低い値で推移した八代市はとともに高い値で推移していたが, 27 年度以降減少傾向に転じ, 八代市, 及び宇土市の 3 地点の差は小さくなった一方, は,28 年度以降減少に転じ, 他の地点との差が減少したが,213 年度から 216 年度まで再び差が広がりを見せた 217 年度はとの差が小さくなっているまとめ年間沈着量について, との比較では,212 年度を除く調査年度でが高い傾向にあったこれは阿蘇山から排出される火山性ガス中に含まれる二酸化硫黄の排出量 8) が影響していると考えられた 217 年度は火山噴火レベルがレベル 1 まで引き下げられ, 年間沈着量も減少し, との差が少なくなった文 1) 今村修, 久保清 ; 熊本県衛生公害研究所報,19, 53(). 2) 緒方和博, 矢野弘道, 上野一憲, 今村修 ; 熊本県保献健環境科学研究所報,35,91(25). 3) 松本依子, 上野一憲, 今村修 ; 全国環境研会誌,33(4), 219(28). 4) 全国環境研協議会酸性雨広域大気汚染調査研究部会 ; 酸性雨全国調査実施要領 ( 平成 29 年度 ),(217). 86

4 (meq/m 2 ) , 4,5 4, , 4,5 4, ,5 3,5 3, 4.8 3, 4.8 2,5 2,5 2, 4.6 2, 4.6 1,5 1,5 1, 4.4 1, , 4,5 4, 八代市 , 4,5 4, ,5 3,5 3, 4.8 3, 4.8 2,5 2,5 2, 4.6 2, 4.6 1,5 1,5 1, 4.4 1, 図 4 及び年平均の推移 ) (212 年度 ) 及び八代市 (215 年度 ) は, 長期間欠測のため, グラフから除外した ) 破線 : 調査開始年度から 215 年度までの平均降水量 ( 及び八代市は長期間欠測の年度を除く ) 2 15 八代市 1 5 調査年度図 5 年間沈着量の推移 87

5 調査 EC Cl NH 4 K Mg 2 Ca 2 年間沈着量年度地点 mm μs/cm meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 2 meq/m 注 11) 11) 八代市注注 2) 表 3 イオン成分年間沈着量の推移注 3), 注 4) 注 5) 注 6) 注 7) 注 8) 注 9) 試料未回収週を含む注 2)214 年 7 月 22 日から214 年 1 月 6 日まで降水量のみ測定注 3) 台風が影響したと考えられる降水試料を含めて計算した結果注 4)216 年 3 月 7 日以降 216 年度は採取器の故障により欠測注 5)215 年 6 月 1 日から216 年 3 月 14 日まで欠測欠測期間が長期に及ぶため年間値は参考値扱い注 6) 欠測月 (9 月,1 月 ) を含む注 7)212 年 7 月 2 日から213 年 2 月 24 日まで欠測注 8) 欠測月 (2 月,3 月 ) を含む注 9)213 年 9 月 2 日から213 年 12 月 2 日まで降水量のみ測定分,214 年 1 月 24 日から2 月 1 日までの欠測を含む熊本地震により八代市役所庁舎へ立入禁止となったため欠測注 11)216 年度で調査を終了 5) 上野一憲, 宮本俊 ; 熊本県保健環境科学研究所報, 46,66(216). 6) 今村修, 矢澤吉邦 ; 熊本県衛生公害研究所報,21, 63(1991). 7) 宮本俊, 古澤尚英 ; 熊本県保健環境科学研究所報, 44,96(214). 8) 阿蘇山火山防災連絡事務所ホームページ最近のガス観測 88

近畿中国四国農業研究センター研究報告　第７号

近畿中国四国農業研究センター研究報告　第７号 230 C B A D E 50m 558 0 1km (mg L 1 ) T N NO 2 3 N NH 4 N 2.0 0 (a) 2001 1.5 6 20 21 5 1.0 0.5 0.0 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 14:00 17:00 (b) 2001 7 3 4 20:00 23:00 2:00 (h) 5:00 8:00 11:00 10 0 5 10 15