血行動態モニタリング その生理学的基礎と臨床応用

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1 血行動態モニタリング その生理学的基礎と臨床応用 詳しいエデュケーション資料については ECCE Edwards Critical Care Education 血行動態モニタリング その生理学的基礎と臨床応用 で ご覧になることができます

2 血行動態モニタリング その生理学的基礎と臨床応用

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4 目次 はじめに 1 心機能から見た解剖学 2 右心系と左心系 2 心周期 4 収縮期 5 拡張期 6 心臓生理学の基本 8 心拍出量 8 心拍出量の決定要素 9 心拍数 9 1 回拍出量 9 フランク スターリングの法則 10 前負荷 11 後負荷 12 収縮力 14 まとめ 14 心筋の酸素消費量 15 肺動脈圧測定の生理学的基礎 17 スワンガンツカテーテルの挿入法 22 スワンガンツカテーテルを安全にご使用いただくにあたって 31 心拍出量の測定 33 フィック法 33 色素希釈法 34 熱希釈法 35 臨床での応用 38 心機能の評価 38 血行動態測定の意義 38 直接的測定値 39 算出パラメータ 40

5 鑑別診断を目的とするスワンガンツカテーテルの適用 43 低心拍出量状態 43 血行動態モニタリングの問題点 47 左心室の拡張終期容量と拡張終期圧 48 肺動脈楔入圧と左室拡張終期圧 48 合併症 51 観血的動脈圧測定 52 動脈圧波形の構成 53 鑑別診断のための動脈波形 55 平均動脈圧 55 まとめ 59 付録 1 60 血行動態パラメータ 60 参考文献 61

6 この25 年間に クリティカル ケア ( 集中治療管理 ) は大きく変わってきました このような変化は 特殊病棟の設立 技術の進歩 そして医療に携わる人々の生理学に対するより深い知識と理解によるものです はじめに この発展の大きな力となった技術進歩の1つは 1960 年代に開発された圧カテーテルにはじまります その後 1970 年代初期にこのカテーテルにサーミスターとバルーンが加えられた スワンガンツカテーテルが誕生しました 同時に さらに高度なモニタリング システムの開発も進められていました その結果 より完全な血行動態モニタリングが患者のベッドサイドで行われるようになったのです 技術の進歩に伴い 医療関係者の向上も要求されます より効果的な医療管理を行うために 集中治療に携わる人々の教育が必要とされるわけです 本書は 基本的な血行動態に関するさらに深い知識を読者に提供することを目的としています 本書は 血行動態モニタリングのあらゆる要素 つまり心機能から見た解剖学 心臓生理学 血行動態モニタリングの生理学的基礎 そしてそれらの臨床適用とに分かれています それぞれ各項目別にも読めるように構成されています *Swan Ganz は Edwards Lifesciences Corporation 社の登録商標です 1

7 心機能から見た解剖学 右心系と左心系 この章では 機能的な心臓の解剖生理学的基礎とその臨床適応について紹介します これらの概念は 血行動態モニタリングの基礎となるものです 血行動態モニタリングに関連する心臓の解剖学について話すとき 心臓を左心 ( 室 ) 右心 ( 室 ) の2つのポンプとして考えます それぞれのポンプには独自の機能と 圧を生み出す働きがあるため 右心系 左心系という用語が用いられます 右心系は 右心房と右心室から成り立っています 右心系の主な役割は 酸素化されていない静脈血を右心房に受け入れることです 右心室は 血液が肺動脈弁を通過して肺動脈に送り出されるために必要なだけの最小限の圧を生み出します この圧は左心系に比べて低いため 右心系は低圧システムと呼ばれています 左心系は 酸素化された血液を肺血管系から受け取ります 左心系では 血液を大動脈弁を通して大動脈 そして末梢へと送り出すためにより高い圧を生み出さなければならないため 高圧システムと呼ばれています 右心系と左心系の間には肺毛細血管床があります 毛細血管床は 血液を保持する能力が極めて高く 順応性に富んだシステムです この保持能力に変化があった場合は 両心室の圧変化によって知ることができます このように循環系統は 低圧で血流に対する抵抗が低い肺循環系 そして高圧で血流に対する抵抗が高い体循環系の2つの回路から成り立っているわけです ( 図 1) 心臓の活動は 収縮期あるいは拡張期のいずれかに分類されます これらは通常 心室の活動を意味していますが 心房にも心室のように収縮期と拡張期があります 厳密にいうと 収縮期の開始および拡張期の終了は左心室の方が右心室より少し先ですが その時間的な差は極わずかなため ここでは左右心系が同時に活動するものとします 2

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9 心周期 心周期は ほぼ同時に起こる心房と心室の活動によって成り立っています また心周期の順序は 左右ともほぼ同じです 一般的に 心周期は収縮期と拡張期の2つに分けられますが 厳密に見ると更に細かく分けることができます 本章の目的は 心周期の重要な各期間を説明することです 古くから 収縮期と拡張期の判定の基礎となっていたのが心電図です 心内心電図の波形をより厳密に識別するために 電気的および物理的な心周期をそれぞれ説明します 心周期は まず電気的心周期から始まります 最初の期間は脱分極といって 洞結節から発生した電流が心房全体へと広がっていく期間です 脱分極の波に続いて心筋線維の収縮が起こり 収縮期となります 次に生じる電気的な活動は再分極と呼ばれ その結果生じる心筋線維の弛緩が拡張です 正常な心臓では 最初の電気的刺激によって収縮と拡張の物理的活動が生じます これら電気的 物理的活動 あるいは興奮 収縮と呼ばれる活動の間には 時間差があります 心電図と圧波形を同時に見ていると 心電図が物理的活動を表わす圧波形に先行しているのが分かります ( 図 2) 4

10 前にも述べたように 主要なポンプの働きをしているのは心室であるため 収縮期と拡張期は一般的に心室活動を意味する用語として使われています ここで忘れてはならないことは 心室が収縮している際 心房は拡張しているということです このことは 心周期の各期間を詳しくみることで理解することができます 心周期は圧変化と血流から成る連続的なサイクルであり 大きく収縮期と拡張期に分けられますが ここでは収縮期から始めることにします 収縮期 収縮期の第 1 期は等容量性収縮期 (lsovolumetric) あるいは等量性収縮期 (lsometric) と呼ばれ 圧波形で確認することができます これは心室の脱分極によって引き起こされるため 心電図上 QRS 波の後にきます このとき 全ての心臓弁は閉じています 心室脱分極の波は心筋線維を短縮させるので 心室内の圧上昇を招きます 心室内の圧が 右心室の場合は肺動脈 そして左心室の場合には大動脈の圧を超えると 肺動脈弁と大動脈弁がそれぞれ開きます 心筋に供給された酸素のほとんどが消費されるのが この等容量性収縮期です 収縮期の第 2 期とは 急速に心室から血液が駆出される急速駆出期 (Rapid Ventricular Ejection) です ( 図 3) 一旦肺動脈弁と大動脈弁が開くと心筋線維はさらに収縮するため 心室からの血液駆出を助けることになります 心室から出ていく血液の80 85% がこの時期に駆出されます この期間に相当する心電図上の変化は ST 部です 圧の平衡が始まると 心室駆出の速度と量が緩慢になり減少してきます この時期が緩徐駆出期 (Reduced Ventricular Ejection) と呼ばれる心室収縮の第 3 期です この期間 心房は拡張期に入っています 左右の心房には血液が流入するため 心房の血液量が増大します その結果上昇した心房内の圧は 心房圧波形に v 波として記録されます 緩徐駆出期の終期には 心室から駆出された血液のほとんどが肺動脈と大動脈に到達します この緩徐駆出期には 大動脈と肺動脈の圧が両心室の圧よりやや高いため 血液は心室へ逆流し始めます 心室収縮期の終わりになると心室内の圧が下がり 肺動脈弁と大動脈弁が閉じます これによって 拡張期の開始を意味する第 Ⅱ 心音 (S 2 音 ) が生じます これらは 心電図上ではT 波の最中に起こることです 5

11 拡張期 収縮期から拡張期への移行は 心臓および大血管内の一連の圧変化によって確認することができます 収縮期と同様に 拡張期も再分極と呼ばれる電気的興奮が先行します 再分極に続いて 心筋線維の弛緩が始まります 拡張期の第 1 期は等容量弛緩期と呼ばれています これは心室の再分極の後に現われ 圧波形は心電図上 T 波の後に見られます 心筋が弛緩するにつれて 心室の圧は心房よりも低くなります このように心房内の圧が相対的に高くなると房室弁が開き 急速に心室に血液が充満する急速充満期 (Rapid Ventricular Filling) と呼ばれる拡張期の第 2 期に入ります この時期には 心房内にある血液の約 2/3が受動的に心室へ流入します 拡張期の第 3 期は 緩徐充満期 (Slow or Passive Filling) と呼ばれます この期間では 心房内の血液がさらに心室へと流入します 洞調律または特定の心房調律においては 心電図上 P 波 ( 心房脱分極 ) に続く心房収縮によって 心室血液容量の残り 1/3が心室へ送り込まれます これは 心房の圧波形では a 波として見られ 正常洞調律あるいは心房調律のときのみ観察されるものです ある時点になると 心房と心室内の容量または圧が等しくなります これが拡張終期です 拡張終期の直後には心室内の血液量がさらに増加し 心室内の圧が心房内圧を上回るので 房室弁が閉じ始めます 一旦房室弁が閉じると第 Ⅰ 心音 (S 1 音 ) が聞かれ 次の収縮期が始まります ( 図 3) 6

12 心周期状態収縮期心房圧では v 波を生じる拡張期物理的心周期 等容量収縮期 急速駆出期 ECGのQRS 波に続くすべての弁は閉鎖酸素の大部分が消費される動脈弁が開く ST 期間中に生じる血液の80 85% が駆出される 緩徐駆出期 心室駆出の減少 T 波期に生じる心房は拡張期 等容量弛緩期 急速充満期 T 波の終わりすべての弁が閉鎖心室圧は低下房室弁が開く血液の2/3は心室に流入する 緩徐充満期 心房の収縮期 ( 心房キック ) 洞調律のP 波に続く心房圧波形上 a 波が出現する残りの血液が心室に流入する 7

13 心臓生理学の基本 ポンプとして働く心臓の機能は 体の各組織が代謝に必要な酸素供給を常に受けられるよう常に調整されています 正常な心臓は 病気から運動に至る様々な生理学的変化による負荷に対して適切な血液を送り出せるよう その動きを補正し 心拍出量を調整しようとします 心臓の機能は 心拍数 前負荷 ( プリロード ) 後負荷( アフターロード ) 収縮力 ( コントラクティリティー ) の4つの基本的要素から構成されています 心疾患がある場合または循環系統に異常がある場合には 心機能を維持するためにこれら決定要素の1つ あるいは複数が影響を受けていたり変化している可能性があります 本章では 心機能の各決定要素とそれぞれが心拍出量の調整にどのように関わっているかを説明します 心拍出量 心拍出量 (l/ 分 ) とは 1 分間に心室 ( 主に左心室 ) から駆出される血液量のことで ポンプとしての効果や心室の性能 すなわち心機能を意味している言葉です 心拍出量 = 心拍数 1 回拍出量 心拍数 = 1 分間の心拍動数 ( 回 / 分 ) 1 回拍出量 = 1 回の拍動によって心室から送り出される血液量 (ml/ 回 ) 心拍数 あるいは1 回拍出量を変えることによって 心拍出量を調節することができます ( 図 4) 前負荷後負荷収縮力 8

14 心拍数 正常な心臓が耐えられる心拍数の範囲は 通常 回 / 分ですが 心機能が低下してくるとこの範囲は少しずつ狭くなっていきます 心拍出量の決定要素 心拍数が上昇すると 心拍出量に次のような影響を与えます 心筋の酸素消費量が増加する 拡張期が短くなり冠動脈の灌流時間が短縮する 心周期の心室充満期間が短くなることによって 次の収縮時に送り出される血液の量が減少する 心拍数の低下も いくつかの悪影響を与えます はじめは充満時間が延長することにより心室充満量が増加し 次いで心拍出量が増加します ですが心筋の収縮力が低下している場合には このように心室充満量が増加しても それを駆出するために強く収縮することができません その結果として 心拍出量が減少してしまいます 1 回拍出量 1 回拍出量 (SV) とは 心室が1 回収縮することによって左心室から駆出される血液量のことです これは拡張期の最後に残っている血液量 すなわち拡張終期容量 (EDV) と 収縮の最後に残っている血液量 すなわち収縮終期容量 (ESV) との差になります 正常な1 回拍出量は ml/ 回です SV = EDV ESV 拡張終期容量に対する1 回拍出量の割合 (%) を表したものが駆出率 (EF:Ejection Fraction) です 正常な駆出率 ( 左心室 ) は 60 80% です SV EF = 100 EDV 心拍出量の一部分である1 回拍出量は 3つの心機能の決定要素 すなわち前負荷 ( プリロード ) 後負荷( アフターロード ) そして収縮力( コントラクティリティー ) によって影響されます これら3つの要素はどれも互いに関連しています 多くの場合 1つの要素に変化があると 他の要素も影響を受けて変化するという現象が起こります 9

15 フランク スターリングの法則 1890 年代後半および1900 年代初期にフランク博士とスターリング博士らは 1 回拍出量と心機能の関係を説きました フランク スターリングの法則は 心筋の長さと収縮力の関係を説明しています 簡単にいうと 拡張期に心筋を伸ばせば伸ばすほど あるいは心室内の血液容量が多くなればなるほど 次の収縮の力は強い ということです またこの法則によると いま述べた現象は生理学的な限界に達するまで起こり続けるとも説明されています そのような限界に達すると それ以上どんなに心筋線維が伸ばされても 収縮の力は弱まっていきます 収縮の力を強めるこの心臓の能力が 静脈還流量の増加を拍出量の増加に変換するのです 拍出量が静脈還流量と一致しないと 心不全となります ( 図 5) 10

16 前負荷 前負荷とは 拡張終期における心筋線維の伸長度を意味します この心筋線維の伸びは 心室内の血液量に直接比例します つまり 心室内の血液量が多くなればなるほど心筋線維が伸びます 従って 前負荷は線維の伸びと同時に 心室内の血液量をも意味します 線維の長さや容量を実際にベッドサイドで測定するのは極めて困難です そのため 線維の長さ つまり左室拡張終期容量 (LVEDV) の代用として 左心室の拡張終期圧 (LVEDP) が使われています 拡張終期容量と拡張終期圧との実際の関係は 心筋壁の余力度 ( コンプライアンス ) に依存します またこの2つは 曲線関係にあります コンプライアンスが低い心室においては ごくわずかな容量増加でも圧は大幅に上昇します 反対にコンプライアンスが高い場合は 血液量が大きく増えても圧の上昇はわずかです ( 図 6) 11

17 後負荷 後負荷とは 抵抗 障害 あるいは心室が血液を駆出する際に克服しなければならない圧のことです これはいくつかの要素 例えば駆出される血液の量と体積 心室の大きさと心筋壁の厚さ また血管系からくる抵抗などによって決定されます 臨床的に最も敏感な値は 左心室では体血管抵抗 (SVR) 右心室の場合は肺血管抵抗 (PVR) です 血管床からの抵抗は 心拍出量の測定値 (CO) と平均動脈圧値 (MAP) から算出されます 計算式は 循環系の始め (Inflow) と終わり (Outflow) の圧較差を考慮に入れています (MAP RAP) SVR = 80 CO SVR の基準値 = dyne-sec/cm 5 MAP = 平均動脈圧 RAP = 右心房圧 (MPAP PAWP) PVR = 80 CO PVR の基準値 = < 250 dyne-sec/cm 5 MPAP = 平均肺動脈圧 PAWP = 肺動脈楔入圧 後負荷は 左心室機能と反比例します 駆出時の抵抗が上昇すると まず心臓はその抵抗に打ち勝とうとして収縮力を増加させますが その調整が限界に達した時点で1 回拍出量が低下します 心機能の決定要素である後負荷と1 回拍出量との関係は非常に重要です ( 図 7) 後負荷 後負荷 12

18 正常な心臓では 抵抗が増加しても1 回拍出量にはほとんど変化がありません しかし心筋の機能低下が進むと 抵抗の増加に伴う1 回拍出量の低下が著しくなります 多くの場合このような機能障害は 心筋自体の収縮力低下によるものです ( 図 8) 1 回拍出量 後負荷の曲線 後負荷 13

19 収縮力 変力作用とは 線維の長さや前負荷を変化させずに 心筋線維を短縮することができる 心筋が本来もっている能力のことをいいます 心筋の収縮力に影響を与える要素はいくつもありますが その中で最も重要なのは 心臓に対する交感神経の働きです 収縮力は 瞬時に増加することも カテコラミンの放出によってゆっくりと増加することもあります 交感神経による心拍数の増加も 同じく収縮力をわずかに上昇させることがあります その他 アシドーシスなどを含む代謝の変化は 収縮力を弱めます 血行動態や患者の状態に応じて プラスあるいはマイナスの変力作用を得るために薬物療法を行うことができます 心室に対する後負荷の影響を曲線で表わしたように 収縮力の変化も曲線として表わすことができます ここで重要なのは 収縮力の変動は曲線を上下や左右に移動させても 根本的な形状は変化しない ということです ( 図 9) 前負荷 後負荷 A: 正常な収縮力 B: 増加した収縮力 C: 低下した収縮力 まとめ 心室機能は上記のように様々な曲線で表わすことができますが 4つの決定要素のバランスが変化するに伴い 心機能の状態を1つの曲線からもう1つの曲線へと移動させることができます 従って 患者の血行動態を評価する際は 心拍数 前負荷 後負荷 収縮力の相互関係を考慮しながら行うことが不可欠です 14

20 心筋の酸素消費量とは 心臓がその機能を維持するために用いる酸素の量を指しています 安静時でも心臓の仕事負荷は大きく 通常 心筋は受け取る酸素の65 80% を消費します 現在のところ 心筋の酸素消費量を直接測定する方法はありません 心筋の酸素消費量 心筋の酸素消費量に影響を与える要因は 供給と需要の2つに分類することができます 酸素需要または仕事量が増大しても 酸素摂取量を大幅に増やすことはできないので 残された唯一の代償方法は血流を増やすこと 要するに酸素供給を増やすことです 左冠動脈の血流は 主に拡張期に灌流します 収縮期には心室壁のストレス ( 緊張 圧迫 ) が高まり 心内膜への血流がほとんど無くなるほど抵抗が高くなります それに比べて右心室は心筋質量が少ないため 心筋壁のストレスも少なく 抵抗が低いために 右冠動脈には収縮期でも血液が流れ込むことができます 両冠動脈に血液が灌流するためには 大動脈基部に充分な拡張期圧が存在しなければなりません ( 図 10) 15

21 心拍出量を増加させると 心筋の酸素需要も増加させてしまうことになります なぜなら 心機能に影響を与える要素すべてが 心筋の仕事量にも影響を及ぼすからです ですから 心臓に負担を与えずに心拍出量を変えることはできません 心臓に疾患があると 酸素需要が大幅に増加していたとしても 供給を増やすことができない場合があります 心筋には酸素の予備がほとんどないため 酸素需要が増加するごとに心筋の酸素消費量も増大させてしまう危険性があるということを考慮に入れなければなりません 血行動態をモニタリングしながら 様々な治療や処置を行うことにより 前負荷 後負荷 収縮力 そして心拍数などの酸素需要を変化させる各要素を調整することができます これらの処置およびその効果については 少し後の章で説明します ( 図 11) 心拍数前負荷後負荷収縮力 16

22 1960 年代の終わりから1970 年代初期にかけて Dr. H.J.C. SwanおよびDr. William Ganzによって スワンガンツカテーテル が開発されました このカテーテルは ベッドサイドで連続的に特定の心内圧を測定することを目的としていました それ以前は より深く心機能を観察するためには患者をわざわざカテーテル検査室に運び込んで 測定値を得る必要がありました 肺動脈圧測定の生理学的基礎 このカテーテルは柔軟性に富んだ構造であるため 肺動脈の血流に乗せて挿入することができ 更にバルーンで肺動脈を閉塞することによって左心系の圧を反映させることもできます 最初のカテーテルが設計されて以来 様々な改良が加えられています 例えば右心房圧測定用の側孔が設けられたり 心拍出量を測定するためのサーミスター ( 温度計 ) もその後追加されました 図 12 15に スワンガンツカテーテルによる測定原理の説明が示されています それぞれの図は カテーテル挿入後の適正な位置を示しています また そのとき測定される圧は 説明書きがない限り 先端孔で測定される圧を表わしています [ 注意 ]: カテーテル挿入に関するより詳しい説明は 各カテーテルの添付文書を参照してください 17

23 心室収縮期のカテーテルの状態 図 12では バルーンは収縮しており 両心室は収縮期の状態です 心周期のこの時期には三尖弁と僧帽弁は閉鎖していますが 肺動脈弁と大動脈弁は開いています 心室の収縮に伴う圧の上昇は 肺動脈内に位置されたカテーテルの先端に伝達されます このとき カテーテルは肺動脈収縮期圧 (PASP) を測定しますが 反映しているのは右室収縮期圧 (RVSP) です それは 肺動弁が開いているために右心室と肺動脈が1つの部屋 ( 図 12でグレーで示した部分 ) となり そこで測定される圧も容量も共通になるためです 18

24 心室拡張期のカテーテルの状態 図 13は拡張期で 三尖弁と僧帽弁は開いています 両心室がそれぞれの心房からの血液によって充満しているときです この時点では 肺動脈弁と大動脈弁は閉鎖しています これにより図 13のグレーの部分が共有される 部屋 となります このときバルーンが収縮していれば 肺動脈拡張期圧 (PADP) が測定されます 肺動脈弁が閉鎖した後 右心室はさらに弛緩し続けるので 右心室内の拡張期圧の方が肺動脈の圧よりも低くなります すなわち RVDPはPADPより低くなるわけです 通常 肺動脈と左心房との間には障害物がないので 測定される圧は事実上 左心房圧 (LAP) とほぼ同じです またこの圧は 基準値が8 15mmHgの範囲で左室圧 (LVDP) とほぼ等しく PADP LAP LVDPとなります 19

25 図 14はバルーンを膨らませたところです バルーンが膨張するとカテーテルは血液の流れに乗って より細い肺動脈へと進んで行きます バルーンがそれ以上奥に進めせつにゅうないところまで流れ着いたとき カテーテルは 楔入した とみなされます この楔入状態では 右心系と肺動脈拡張期の圧がバルーンによって遮断されます ( 図 14) この図では心臓が拡張期にあり カテーテルが位置している肺動脈から左心室まで血液の流れを妨げるものがありません 肺動脈弁から僧帽弁までの間には他の弁がないこと また肺の毛細血管床が柔軟で順応性のあるシステムであること さらに僧帽弁が開いているためです 従って このようにバルーンを膨らませた状態の方が収縮させた状態 ( 図 13) より 左心室の拡張終期圧を正確にモニタリングすることができるわけです 心室拡張期のカテーテルの状態 ( カテーテルは楔入状態 ) バルーンを膨張させたときに得られる圧は色々な名称で呼ばれています 以前は肺毛細血管楔入圧 (PCWP) が最も一般的に使われていました しかし実際にカテーテルが流れて行くのは毛細血管ではないので これは誤った名称です 肺動脈楔入圧 (PAWP:Pulmonary Artery Wedge Pressure) または肺動脈閉塞圧 (PAOP: Pulmonary Artery Occlusion Pressure) の方が正確といえるでしょう 多くの施設では 一般的にこの値のことを ウェッジ (Wedge) と呼んでいます 通常 肺動脈楔入圧は実際の左室拡張終期圧と非常に近い値として反映されるので 左心室の前負荷として使われています 20

26 同様に右心系の場合は 中心静脈圧 (CVP) が前負荷として使われています それは心周期の同じ時期 ( 拡張期終期 ) においては三尖弁が開いているため 右室拡張終期圧が反映されるからです この圧は スワンガンツカテーテルの右心房に位置している注入用側孔から測定することができます 以上のように スワンガンツカテーテルを用いて左右両心室の情報を得ることができます 図 15でも バルーンは楔入位置にありますが ここでの心室は収縮状態になっています また バルーンが肺動脈を塞いでいるために 右室圧は完全に遮断されています このときにカテーテルの先端孔が測定しているのは 左心房の充満によって反映される圧です 従って収縮期における肺動脈楔入圧は 左房充満圧 (LAFP) と呼ばれることもあります ( 図 15) 心室収縮期のカテーテルの状態 ( カテーテルは楔入状態 ) 21

27 スワンガンツカテーテルの挿入法 ここまでの章では 血行動態モニタリングの解剖生理学的基礎について説明しましたが 本章ではスワンガンツカテーテルの挿入法 挿入時に見られる圧波形の特徴 また連続的な肺動脈圧測定の重要性などについて述べます スワンガンツカテーテルを挿入する前に 各施設のプロトコールもしくは方針に従って血圧モニタリングシステムの準備をしてください 適切な挿入法のガイドラインに従って挿入してください 経皮的挿入法で一般的に用いられるのは内頸静脈 鎖骨下静脈 そして大腿静脈です カットダウン法の場合は 右あるいは左上腕静脈を用いることができます 鎖骨下静脈アプローチは 解剖学的な理由やシース イントロデューサーの折れ曲がりなどによるカテーテルのキンク ( カテーテルの折れ曲がり ) を引き起こす場合があります このようなキンクは圧波形のダンピング ( 鈍り ) の原因となることがあり カテーテルの位置調整が必要とされることがあります 肺動脈までのカテーテル挿入は 操作が長引くと次第にカテーテルの硬さが失われていきますので 素早く行ってください 一般にスワンガンツカテーテルを挿入する際にはX 線装置を必要としません それは主に次の2つの理由からです 第 1に カテーテルはバルーンを膨らませると Flowdirected すなわち血流に乗るように設計されています 挿入の際は このバルーンが右心系から肺動脈へと静脈血流に乗って カテーテルを導いて行きます 第 2に 右心系の各部屋と肺動脈ではそれぞれ特有の圧波形が観察されます これらの圧波形と値をモニターで表示させることによって カテーテル先端の位置を確認することができます 22

28 次に スワンガンツカテーテル挿入時に観察される正常な圧波形の特徴について説明します カテーテルの先端が上大あるいは下大静脈と右心房との接合部まで達した時点で 空気または二酸化炭素 (CO 2 ) でカテーテルのバックフォームに表示されている最大膨張容量 (7 7.5F:1.5cc) までバルーンを膨らませます カテーテルの先端が下大静脈と右心房の接合部に達したかどうかはモニターに表示されたカテーテル先端圧に呼吸性変動が表れることによって確認することもできます 最初にカテーテルが到達するのは右心房です 通常この圧は低く 2つの小さな上向きの波 (a と v) をつくります ( 図 16) 次に到達するのは右心室です この圧波形には 心室収縮による高く急角度の立上がりと 拡張期における低い窪みが見られます 右心室の収縮期圧は 右心房より高くなりますが 拡張期の値はほぼ右心房と同じです カテーテルが三尖弁を通過した後は 心室性期外収縮を誘発させる恐れがあるため 患者の心電図を注意深く観察する必要があります ( 図 17) 23

29 カテーテルが肺動脈内に到達すると また特有な圧波形が見られるようになります 右心室が収縮することによって 肺動脈の圧も上昇します この圧は肺動脈収縮期圧と呼ばれ 右心室の収縮期圧とほぼ等しいものとして記録されます この圧波形も右心室と同様に高く上昇しますが その傾斜は右心室の波形よりもやや丸みをおびています 拡張期は 肺動脈弁が閉鎖して肺動脈の圧波形にディクロティック ノッチが発生するときから始まります その後も心室の拡張は続きますが 肺動脈弁が閉鎖すると肺動脈はそれ以上弛緩しないので 肺動脈での拡張期圧の方が右心室の圧よりも高くなります 肺動脈の収縮期圧は右心室とほぼ同じですが 拡張期圧は上記の理由から肺動脈の方が高くなります 従って カテーテル挿入時に収縮期圧のみを観察していると波形が見分けにくく カテーテル先端位置を確認するのが難しくなるため ここでは拡張期圧を観察する必要があります 拡張期圧をモニタリングしていれば カテーテルが肺動脈に入った時点での圧の上昇が認められます ( 図 18) 24

30 バルーンを膨張させたままカテーテルをさらに進めると 最終的には主要肺動脈の1 つに入り込み バルーンは 楔入 した状態になります この時点で右心系および肺による影響が遮断されるので カテーテルの先端は左心系だけの圧を 見ている ことになります ここで反映されているのは左心房の圧波形です 測定される圧波形は右心房圧よりわずかに高く (6 12mmHg) 左心房の収縮期と拡張期からくる2つの小さな上行波 (a と v) があります ここで記録される肺動脈楔入圧は 肺動脈拡張期圧よりも 1 4mmHg ほど低いのが 通常です ( 図 19 20) 25

31 スワンガンツカテーテルで測定できる圧とそれぞれの基準値を表 1 に示します 表 1. 典型的な血行動態の圧 位 置 基準値 (mmhg) 右心房 右心房圧 (RAP) 平均圧 (MRAP) 右心室 収縮期圧 (RVSP) 拡張期圧 (RVDP) 肺動脈 収縮期圧 (PASP) 拡張期圧 (PADP) 平均圧 (MPAP) 肺動脈楔入圧 (PAWP) 左心房圧 (LAP) 6 12 一旦楔入状態が確認されたらシリンジを外して 肺動脈内の圧によってバルーンを自然に収縮させます バルーンが収縮したら 再びシリンジをカテーテルに取り付けます 右心房あるいは右心室内でカテーテルが弛んだり ループ ( 輪状 ) になったりしないように カテーテルを1 2cmゆっくり引き戻します 次にバルーンを再び膨らませ 楔入圧を得るために必要な最小限の膨張容量を判定します このときカテーテルの先端位置は 最大膨張容量またはそれに近い容量 ( cc) で初めて楔入圧が得られるところが理想です このように連続的に肺動脈圧の測定および記録をすることができます 肺動脈楔入圧 (PAWP) 測定時には肺動脈損傷のリスクが伴うため 肺動脈拡張期圧 (PADP) を PAWP の代用として使う場合もあります 連続的圧測定 信頼性のある測定値および明確に判定できる波形を得るためには 適切な圧測定システムが必要です これには高品質の血圧トランスデューサー 適正にキャリブレーション ( 較正 ) されたモニターおよび圧モニターラインが含まれます なおモニターのキャリブレーションは 各モニターのメーカーが推薦する方法で行ってください 肺動脈圧を連続的に測定するには ヘパリン加溶液を満たした圧モニターラインにフラッシュ装置を接続して カテーテル内腔の開存性を保つ必要があります システムの正しい組み立てと維持については 血圧トランスデューサー製品の取扱説明書を参照してください 26

32 肺動脈圧を連続的にモニタリングすることが重要なのは 次の理由からです まず最初に 刻々と変化する重症患者の状態を適切に把握し 治療のタイミングを逃さないようにするためです 次に カテーテル先端の位置が移動すると 患者にとって危険な状態になる可能性があるからです ( 図 21) バルーンが収縮しているときでも カテーテルが肺動脈の末梢に入り込む可能性があります この現象 ( パーマネント ウェッジ ) はいつでも起こり得ることですが 特にカテーテル挿入後の数時間で発生しやすくなります ( 図 22) 常に楔入圧が表示されている 27

33 この移動は 主に右心室内で弛みがあったカテーテルが体温で暖められて柔らかくなることにより生じます このように余分なカテーテルが一旦柔らかくなると カテーテル先端が自然に末梢に入り込んでしまいます このようなカテーテルの入り込みを防ぐための1つの手段として 適切な楔入圧が得られた後でカテーテルを1 2cm 引き戻して 心室内の弛みを少なくする方法があります カテーテルを引き戻した場合 もう一度バルーンを最大 あるいはそれに近い膨張容量で膨らませて楔入させ 先端が適切に位置されたことを再確認します カテーテルが完全に楔入されていない場合には 肺動脈収縮期圧が以前の値よりも低くなり はっきりとした圧波形が得られなくなることがあります カテーテルが完全に楔入された状態になると 再度特有の圧波形が観察されるようになります バルーンが収縮しているのに カテーテルが部分的あるいは完全に楔入してしまった場合には 明確な肺動脈圧が得られるようになるまでカテーテルを1 2cmずつ引き戻してください 位置調整後のPAWP 測定には 最大膨張容量に近い注入量を必要とするはずです 時折 カテーテル先端が右心室内に抜け落ちることがあります これは モニター上で右心室特有の圧波形が観察されることによって確認できます この場合 収縮期圧はほぼ同じですが 拡張期圧は以前に測定されていたPADPよりも低くなります ( 図 23) もしこのようなことが起こった際には カテーテルの先端が右心室の内壁に当たり不整脈を誘発する危険があるため バルーンを膨張させて右心室内壁に刺激を与えないようにします カテーテルは血液の流れに乗せて (flow-directed) 挿入する構造になっているので バルーンを膨らませるだけで再度肺動脈に進んで行きます また 患者の体位を変えることで 適切なカテーテルの位置が得られることもあります 28

34 これらの操作を行っても先端が肺動脈に到達しないときは 体外に出ているカテーテル部分が清潔であった場合のみ 再度カテーテルを挿入しなおすことができます もし不潔にしてしまった場合にはカテーテルを抜き取り 必要に応じて新しいカテーテルを挿入し直します カテーテルを肺動脈から右心室へ また右心室から右心房へと引き戻すときには 弁の損傷を最小限にするために 必ずバルーンを収縮させてください カテーテルの適切な位置を確認することと同様に 適切な方法でバルーンを膨らませることも重要です バルーンを膨らませ過ぎると肺動脈が過度に押し伸ばされ 血管の損傷を引き起こすことがあります ( 図 24 25) 肺動脈を損傷する可能性があります バルーンの膨張は 必ずモニター画面で圧波形を観察しながら ゆっくりと行ってください 最大膨張容量に達していなくても 楔入圧の波形が得られたら直ちにそこで膨張を止めてください 最大膨張容量を絶対に超えないようにしてください 29

35 最大膨張容量以下で楔入圧が得られた場合 ( 通常 1.5cc 以下 ) には カテーテルが所定の位置よりも先端に移動してしまった可能性がありますので カテーテル先端を肺動脈の中心部まで引き戻す必要があります また 最大膨張容量以下で楔入圧が得られたのにもかかわらず そのままバルーンの膨張を続けると 測定している圧は次第に高くなり識別しにくい波形になることがあります これは over-wedge ( 過度の楔入 ) と呼ばれ 過度に膨張したバルーンによる圧がカテーテルの先端孔から伝わってくるために生じるものです 高品質で最適化された血圧モニタリングラインを使用し カテーテル先端が正しく肺動脈の中心部に位置している際には 正確に肺動脈圧を測定することができます 正しい値を得ることによって 適切な治療を施すことができるのです スワンガンツカテーテルをより正確かつ安全に使用するために バルーンの取り扱いに関する下記の説明を参照してください ( 図 26 27) カテーテル先端の位置を移動する必要があります 30

36 1. カテーテル先端を 肺動脈主要分枝の中心部に維持する 挿入時は最大膨張容量 (7 7.5F:1.5cc) まで膨張させ カテーテルを肺動脈 せつにゅう 楔入位置まで前進させる その後空気を抜いてバルーンを収縮させる 余分な長さのカテーテルを右心房あるいは右心室内に残さないため またループ形成を防ぐために カテーテルを1 2cmゆっくりと引き戻す スワンガンツカテーテルを安全にご使用いただくにあたって カテーテルを末梢に押し進め過ぎないようにする ( 理想的なカテーテルの位置は肺動脈門の近く ) バルーンを膨張させることによって先端が末梢に流れて行くので 膨張前に肺動脈の中央部に位置させておくことが重要である カテーテル先端は常に 最大膨張容量あるいはそれに近い容量 ( cc) によって肺動脈楔入圧が得られる位置においておく 2. カテーテル先端が末梢または血管床の方向に自然移動 ( 入り込み ) することを予測する 挿入時に右心房あるいは右心室内の余分な長さ またはループを減らして 末梢への移動を防ぐ ( 上記 1を参照 ) バルーンが収縮したままの状態で カテーテルが楔入していないことを確認するために ( 肺梗塞を引き起こすことがある ) 先端孔の圧を常時モニタリングする 胸部 X 線写真を毎日撮影してカテーテルの位置を確認し 末梢に入っていないことを点検する もし移動していた場合には 挿入部を不潔にしないように注意しながら カテーテル先端を肺動脈の中心部に引き戻す 人工心肺使用中に カテーテル先端が末梢へ移動することが報告されている ( 参考文献 18) 人工心肺開始直前に カテーテルを3 5cm 引き戻し 末梢への移動および術後におけるパーマネント ウェッジ ( バルーンが膨張していないにもかかわらず楔入圧が続く状態 ) の可能性を少しでも減少させることを考慮するべきである ( 参考文献 18) 人工心肺離脱後には 再度カテーテルの位置調整が必要とされる場合がある バルーンを膨張させる前に 先端孔からの圧波形を確認する 3. バルーンを膨脹させる際には充分に注意する もし1.0cc 以下で楔入が得られる場合には 最大あるいはそれに近い膨張容量 ( cc) で初めて楔入圧が得られる位置までカテーテルを引き戻す バルーンを膨張させる前に 先端孔の圧波形を調べる もしダンピング ( 圧の鈍り ) や歪みがあると思われる場合には 決してバルーンを膨張させないで カテーテルの位置を確認する必要がある 31

37 バルーンを再度膨らませて楔入圧を測定するときには 絶えず肺動脈の圧波形を観察しながら ゆっくりと膨張用の気体 (CO 2 または空気 ) を注入すること 肺動脈の圧波形が楔入圧に変化したら 直ちに注入を止め 測定値を記録する 測定後は膨張用シリンジを外し バルーンを収縮させる シリンジは再びバルーン ルーメン ハブに接続しておく 動脈系内に空気が入り込む可能性が少しでも存在する場合は 絶対に空気を使用してはいけない ( 挿入方法 P22を参照 ) バルーンは カテーテルのバックフォーム ( 各ルーメンの付根部分 ) に記載されている最大膨張容量 (7 7.5F:1.5cc) 以上には 決して膨張させない カテーテルのパッケージ内に付属されている容量制限付きシリンジを使用する バルーン膨張には 液体は使用しないこと 液体がバルーンに入ったまま戻らなくなり バルーンが収縮しなくなる可能性がある 誤って液体を注入してしまわないように シリンジはバルーン ルーメン ハブに接続したままにしておく 4. 肺動脈楔入圧は 必要なときのみ測定する 肺動脈拡張期圧 (PADP) が楔入圧 (PAWP) とほぼ等しいときには バルーンを楔入させる必要は少なくなる可能性がある 患者の心拍数 血圧 心拍出量 および臨床状態が安定している限り PADPをPAWPの代わりに測定することができる しかし 肺動脈と肺静脈血管の状態が変化しつつある場合 ( 例えば敗血症 急性呼吸不全 ショック ) には 患者の症状に応じてPADPと楔入圧との関係が変化する可能性がある このような場合には 肺動脈楔入圧を測定することが必要となる 特に肺高血圧患者においては バルーンを楔入している時間を最小限にする ( 患者が2 回呼吸している間 もしくは10 15 秒間以内 ) 楔入圧を測定するために 長時間バルーンの拡張を繰り返すことは行わない もし楔入圧が得られにくい場合には あきらめる カテーテルが肺動脈に楔入されている状態では 決してフラッシュしてはいけない 5. 肺動脈破裂あるいは穿孔などのリスクが一番高い症例は 肺高血圧を有する高齢者である 多くの場合 このような症例が 心臓手術とそれに伴う抗凝固剤使用 および低体温を経験する症例でもある カテーテル先端を肺門の近くに位置させることによって 肺動脈穿孔の可能性を低くすることができる ( 参考文献 21) 32

38 せつにゅう ここまでは スワンガンツカテーテルによる肺動脈圧 右心房圧 そして肺動脈楔入 圧測定についての説明でした このカテーテルのもう1つの機能は 熱希釈法を用いた心拍出量の測定です 心拍出量は重要な血行動態に関する情報であり これによってより詳細な心機能の評価を行うことができます 心拍出量の測定 心拍出量の主な測定方法は3つあります それらはフィック法 色素希釈法 そして熱希釈法です 本章では心拍出量測定に用いられる種々な方法 特に熱希釈法を中心に説明します フィック法 心拍出量測定の ゴールド スタンダード は 1870 年代にAdolf Fickが発案した原理に基づいています この原理は 1つの臓器によるある物質の取り込み量あるいは放出量は その臓器の血流量にその物質の動静脈血中の物質濃度の差を掛けたものに等しいと定義しています 心拍出量測定の場合この臓器は肺であり 放出される物質は酸素ですので フィック法では動脈血と静脈血の同時採血と 呼気の採取が必要です そこから酸素含量の差を動脈血酸素含量一静脈血酸素含量 (A v O) で求め 酸素消費量を呼気の酸素量と1 分あたりの換気量から計算します 心拍出量 = 酸素消費量 (ml/ 分 ) 動脈血酸素含量 静脈血酸素含量 (A v O 2 ) 動脈血酸素含量の基準値 = 20 volume % 静脈血酸素含量の基準値 = 15 volume % (volume % =1ml の酸素 /100cc) 酸素消費量の基準値 = 250 ml/ 分 これらの数値を上式にあてはめると : 心拍出量 = 250 ml/ 分 volume % = 5000 ml/ 分 あるいは 5l/ 分 フィック法は ゴールド スタンダード とされてきましたが この方法にも多数の欠点があります 心拍出量の測定を必要とするほとんどの患者は重篤で その多くが 不安定 な状態であるにもかかわらず この方法は測定時の患者の生理学的状態が安定しているという前提に基づいています しかも呼気および血液の採取 またコントロールされた吸気酸素含量と動脈血の採血が必要となります フィック法は心拍出量が低下している患者において特に正確ですが 測定手技が複雑で臨床的に最も実用的でない方法とされています 33

39 色素希釈法 心拍出量を測定するもう1つの方法は指示薬希釈法といわれているもので これには 2 種類あります 1つは色素希釈法 そしてもう1つは熱希釈法です 色素希釈法は 1890 年代にStewartが基礎原理を発表し その後 Hamiltonによって完成されたものです 色素希釈法の原理は 濃度が一定の指示薬 ( 色素 ) をある液体の中に注入し 充分に混合した後その濃度を測定すると 液体の量を算定できるというものです 色素を血液中に注入すると血液の中へ拡散して 色素希釈曲線という経時的に変化する濃度曲線を描きます ( 図 28) この曲線は 分光光度計を通して血液を連続的に採取することによって得られます この曲線が描き出されたら 下記のStewart-Hamiltonの式を使って心拍出量を算出することができます Ⅰ 60 1 心拍出量 = Cm t k Co = 心拍出量 (l/ 分 ) Ⅰ = 注入された色素量 (mg) 60 = 60 秒 / 分 Cm = 色素の平均濃度 (mg/l) t = カーブの初めから終りまでの時間 k = 較正係数 ( 偏差 mg/ml/mm) この測定方法は 心拍出量が高いほど精度が高くなります しかし 正確に測定するためには複雑な装置の取扱いが必要なため あまり実用的ではありません 34

40 熱希釈法 1950 年代の初期にFeglerが もう1つの指示薬希釈法である熱希釈法を用いた心拍出量の測定方法を初めて発表しました しかしDr. SwanとDr. Ganzが温度を検出することができる特殊な肺動脈カテーテルを用いて この方法の信頼性と再現性を実証したのは 1970 年代初期でした それ以来 熱希釈法による心拍出量の測定が 臨床におけるスタンダードとなりました 熱希釈法は指示薬希釈法の原理を応用したもので ここでは色素の代わりに温度の変化を指示薬としています 量と温度がわかっている液体を カテーテルの注入用側孔 ( 右心房 ) に素早く注入します この冷たい液体は周囲の血液と混合して血液の温度を変化させます カテーテルに埋め込まれたサーミスター ( 温度計 ) が肺動脈内でその温度変化を測定します このとき得られた温度変化が熱希釈曲線といわれるもので 色素希釈法による曲線と似ています 正常な曲線の特徴は 素早い注入に伴う鋭い立上がりを見せます そしてその後になめらかなカーブ さらにベースラインに戻るまでのやや延長した下降部分があります この曲線は温かい温度から冷たい温度へ そして再度温かい温度への変化を表わすものですから 実際の曲線は下向きです ただし一般的なグラフと統一するために 上向きの曲線として描いています 曲線下の面積は 心拍出量と反比例します すなわち心拍出量が低い場合には温度がベースラインに戻るまで より長い時間がかかるため 曲線下の面積が広くなります また心拍出量が高い場合には 冷却注入液が心臓の中を早く通過するため 温度がベースラインに戻るのも早くなり 曲線下の面積は小さくなります ( 図 ) / 分 / 分 / 分 35

41 熱希釈法は Stewart-Hamiltonの式を少し変えて心拍出量を計算します この式で異なるところは 注入液の温度変化 測定された注入液の温度と患者の血液温度 そして注入液の比重などを考慮していることです V (T B T Ⅰ ) (S Ⅰ C Ⅰ ) 60 C T K CO = A (S B C B ) 1 CO の基準値 = 4 8l/ 分 CO = 心拍出量 V = 注入液量 (ml) A = 熱希釈曲線下の面積 (mm/ ) を紙送り速度で割ったもの (mm/ 秒 ) K = 較正係数 (mm/ ) T B T Ⅰ = 血液 (B) および注入液 (Ⅰ) 温度 S B S Ⅰ = 血液および注入液の比重 C B C Ⅰ = 血液および注入液の比熱 (S I C I ) = 5% ブドウ糖を用いたときは 1.08 (S B C B ) 60 = 60 秒 / 分 C T = 補正係数 心拍出量は 心拍出量測定装置 ( あるいは生体情報モニター ) にカテーテルのサーミスター コネクターを接続することによって自動的にコンピューターの内部で計算され 画面に表示されます 実際の熱希釈曲線を表示することができるコンピューターやモニターを使って曲線を観察することによって 注入テクニックやその他アーチファクトなどの影響を発見することができます 注入液の温度は冷却されたものでも室温でもよいのですが これまでのデータによると冷却した方が 測定値のバラツキを少なくすることができるといわれています コンピューターは 測定直前の体温をベースラインとして また注入液による温度変化を信号として検出しますが 場合によっては呼吸の回数と深さに関係して 肺動脈血の温度が周期的に変化することがあります この温度の振幅は 生理的雑音 と呼ばれ 0.05 にも達することがあります 0 近くまで冷却された注入液を用いることにより 雑音に対する信号の比 (S/N 比 ) が大幅に改善されます 患者の体温が高い場合 ( 発熱 ) 低心拍出量 そして呼吸による変動が大きい場合には特に要注意で より高いS/N 比が必要となります 36

42 主な注入液供給システムには2 種類あります 1つはあらかじめ冷却あるいは室温の注入液をシリンジに満しておくオープン式システムです もう1つは 冷却または室温液専用の供給システムで 閉鎖式システムと呼ばれるものです オープンあるいは閉鎖式システムの比較に関しては 参考文献を参照してください ( 図 32) 熱希釈法では 右心系側に血液の逆流があると測定値の精度が低下する場合があります そのような逆流の原因としては 三尖弁あるいは肺動脈弁の逆流 そして心室または心房中隔欠損症が考えられます すでに述べた他の方法と比較して熱希釈法の優れた点は 信頼性が高いことと ベッドサイドで容易に測定できるということです さらに 採血が不要な上 素早くしかも繰り返して測定することが可能です 37

43 臨床での応用 スワンガンツ サーモダイリューション カテーテルは 重篤患者のアセスメントや管理を行う上で強力な手段となります しかし カテーテルの使用そのものだけでは治療にはなりません むしろこれは診断を補足するものであり 得られるデータを適切に解析することによって 適切な治療へと導くものです 心機能の評価 スワンガンツカテーテルを用いることによって 心臓のポンプとしての機能を評価することができます 通常 拡張終期においての前負荷 ( プリロード ) は 左右それぞれの心房に間接的に反映されます 左心室の前負荷は肺動脈拡張期圧 (PADP) よ せつにゅう り正確には肺動脈楔入圧 (PAWP) を用いて評価することができます それは カ テーテルが楔入されている間は左心室の圧を反映するからです 左心室の機能が低下するにつれて拡張終期圧 すなわち前負荷 が上昇します この上昇した圧は心房に反映されるので 左心室の場合はPAWPも高く記録されます 結果として心拍出量が低下し 臨床的に患者は 臓器灌流低下の症状を示します 中心静脈圧 (CVP) が左右の心機能の指標となると思われていた時期もありました そのころ手軽にモニタリングできる唯一の方法は CVPカテーテルを使って右心系の圧を測定するものでした 肺動脈カテーテルが用いられるようになってからは CVPは左心系の情報も提供するという概念はなくなりました 重症な肺疾患や右心機能低下によって生じる右心室の前負荷の増加は 右心房圧 (RAPまたはCVP) の上昇として反映されます このような症例の中には 右心系のみの圧を上昇させるものもあります つまりこのような疾患では CVPカテーテルで左心室の機能を充分に評価することはできません スワンガンツカテーテルを使うと 1 本で左右の心室の機能を同時に評価することができます PAWPから得られる情報は左心室を 注入用側孔は右心室の前負荷 ( 右心機能 ) を反映するからです 重症な左心不全とそれによって引き起こされる右心不全の場合には 両値が上昇します 血行動態測定の意義 心機能の決定要素は 心拍数 (HR) 前負荷( プリロード ) 後負荷( アフターロード ) 収縮力( コントラクティリティー ) です 血行動態モニタリングによって心拍出量の測定が可能になるだけではなく 間接的な計算によってその他の心機能に関する要素 ( パラメータ ) を評価することができます 38

44 直接的測定値 患者の血行動態評価には 侵襲的および非侵襲的パラメータが含まれます 直接的な測定値から算出パラメータを計算し 心機能をさらに評価することができます 心拍数血行動態を評価する上で比較的容易に得られる値は心拍数です 心拍出量に直接関与する心拍数は 拡張充満時間 すなわち拡張期容量と密接な関係にあります 心拍数は触診または心電図モニターから得ることができます 収縮期 拡張期の血圧血圧とは 心室の収縮期と拡張期に生じる血管の張力をいいます 血圧の測定には 血圧計を用いる非観血的な方法と 動脈内留置カテーテルを用いてより正確に測定することができる観血的な方法とがあります 肺動脈圧スワンガンツカテーテルを用いることによって 肺動脈の収縮期圧 (PASP) と拡張期圧 (PADP) そして肺動脈楔入圧(PAWP) を得ることができます PASP は 右心室が収縮期に生じさせる圧を反映します 左心房圧および左室拡張終期圧とほぼ等しいPADPは 肺血管床における影響により PAWPより少し高めになります 一旦カテーテルを楔入させると右心系と肺による影響が遮断されるため PADPより正確に左心房圧が反映されます 右心房圧右心房圧測定にはスワンガンツカテーテルの注入用側孔を使いますが 中心静脈圧のようにcmH 2 OではなくmmHgで求められます この値は 右心室の充満圧 ( 拡張終期圧 ) を反映するため 右心機能に関する情報を提供します 波形の解析 RAP と PAWP の波形から a 波および v 波を解析することによって 充満圧 ( 拡張終期圧 ) や様々な疾患に関する有用な情報を得ることができます 心拍出量スワンガンツ サーモダイリューション カテーテルを用いることによって 患者のベッドサイドで比較的容易に しかも正確に心拍出量を測定することができます 1 分間に心臓が送り出している血液の量 (l/ 分 ) は 全体的な心臓の機能を評価する上で役立ちます 39

45 算出パラメータ 直接測定して得られた値から 算出パラメータを計算し 体の大きさを考慮して測定値を補正し 心機能をさらに詳しく評価することができます 平均動脈圧これは収縮期と拡張期における 血管システム全体の平均血圧です 冠動脈および組織への灌流を充分に保つためには 少なくとも必要最小限の血圧を維持しなければなりません この値は 下記の計算式を用いて計算することができます MAP = SBP+(DBP 2) 3 MAP の基準値 = mmhg SBP = 収縮期血圧 DBP = 拡張期血圧 MAP = 平均動脈圧 心係数心拍出量の正常範囲は広く 4 8l/ 分です このパラメータは心室の機能を評価するものであるため 体の大きさの違いを除外して 同じ単位で比較することが非常に重要となります そのためには 心拍出量を患者の身長と体重から得る体表面積 (BSA) で除しこの値を心係数といいます CI = CO BSA CI の基準値 = l/ 分 /m 2 CO = 心拍出量 BSA = 体表面積 CI = 心係数 1 回拍出量これは心室が1 回収縮することによって送り出される血液量のことです 1 回拍出量 (SV) は心拍出量の計算式の一部であるため 計算でこの値を求めることができます SV = CO HR 1000 ml/l SV の基準値 = ml/ 回 HR = 心拍数 SV = 1 回拍出量 40

46 1 回拍出量係数心拍出量と同様 1 回拍出量 (SV) も患者の体の大きさを考慮に入れて係数にすることができます これを1 回拍出量係数 (SVI) といいます この値を算出する方法は二通りあります SV SVI = または BSA CI 1000 HR SVI の基準値 = ml/ 回 /m 2 SVあるいはSVIを算出することによって 収縮力の状態をある程度評価することができます 血管抵抗心室機能に影響を与える要素の1つに 血管抵抗があります ここでの抵抗とは 血液の流れと圧の関係を指しています 血液が血管内を流れる際には抵抗がありますが この値が臨床的な後負荷の指標とされています 心室が血液を駆出するためにはこの抵抗に打ち勝つだけの力を生み出さなければなりません 体血管抵抗体血管抵抗 (SVR) は 左心室に対する抵抗あるいは後負荷のことです この抵抗を求めるには 血液循環経路の最初 (MAP) と最後 (RA) の圧較差を測定し 次にその値を 血流量すなわち心拍出量で割ります 四捨五入された換算係数の 80を使って 値を力の単位であるdyne-sec/cm 5 に調整します (MAP RAP) SVR = 80 CO SVR の基準値 = dyne-sec/cm 5 RAP = 右心房圧 肺血管抵抗右心室に対する抵抗あるいは後負荷は 肺血管抵抗 (PVR) を計算することによって求めます ここでも循環経路の圧較差を測定し MPAPから最後のPAWP を引いてから血流量 すなわち心拍出量で割ります ここでもSVRの場合と同様に換算係数の80を使って 力の単位に変換します (MPAP PAWP) PVR = 80 CO PVR の基準値 = <250 dyne-sec/cm 5 MPAP = 平均肺動脈圧 PAWP = 肺動脈楔入圧 41

47 1 回仕事量 1 回の心室収縮に伴う外部的仕事量を計算することによって 心室機能をもう1つの側面から評価することができます 1 回仕事量は 1 心拍で生じる圧の平均に そのとき駆出される血液量をかけることによって求めます SW = (MAP LVEDP) SV SW = 仕事量 MAP = 平均動脈圧 LVEDP = 左室拡張終期圧 SV = 1 回拍出量 LVSWI = SVI(MAP PAWP) LVSWI の基準値 = gm-m/m 2 / 回 LVSWI = 左室 1 回仕事量係数 SVI = 1 回拍出量係数 MAP = 平均動脈圧 PAWP = 肺動脈楔入圧 RVSWI = SVI(MPA MRA) RVSWI の基準値 = 5 10 gm-m/m 2 / 回 RVSWI = 右室 1 回仕事量係数 MPAP = 平均肺動脈圧 MRAP = 平均右心房圧 最近のモニターでは 計算に必要な数値を入力することによって様々な算出パラメータが得られるようになっています これらパラメータの経時的変化 ( トレンド ) をモニタリングすると同時に 患者の状態を評価することによって 治療に対する生理学的な反応の微調整 また鑑別診断の助けとなります 42

48 患者の血行動態の各パラメータを測定することは 心室機能の状態を把握するために役立つばかりでなく 臨床的にほとんど同じ症状を示している疾患を鑑別する際にも有用です さらに 測定されたデータを用いて患者の状態を分類化することによって 治療方針および患者の予後などを認識することもできます 鑑別診断を目的とするスワンガンツカテーテルの適用 低心拍出量状態 低心拍出量状態では多くの場合 患者の血圧 (BP) および心拍出量 (CO) の測定値は低く 組織への灌流が乏しいことを表わす徴候が見られます このような症例の血行動態をモニターすることによって 患者がどの状態にあるかを正確に判別することができます 例えば 脱水症の患者ではBPとCO さらに肺動脈楔入圧(PAWP) も低くなります 一方 心原性ショックの場合では BPとCOは同じく低くなりますが PAWPは高くなります 右室梗塞の症例もBPとCOが低くなりますが ここでは右心系の機能が低下して右室充満圧が上昇しているため 右心房圧 (RAP) が上昇します 左心室に障害がない場合には PAWPは正常あるいは低くなることさえあります 表 2 急性心筋梗塞の血行動態分類 ( フォレスターの分類 ) * 心係数2.2l/ 分 /m 2 治療 : 鎮静剤 死亡率 :3% 第 1 群 : 不全なし 第 3 群 : 末梢灌流不全 治療 : 輸液療法 ( 頻脈の場合 ) ペースメーカー ( 徐脈の場合 ) 死亡率 :23% 第 2 群 : 肺うっ血 治療 : 利尿剤 ( 正常血圧の場合 ) 血管拡張剤 ( 高血圧の場合 ) 死亡率 :9% 第 4 群 : うっ血 灌流不全 治療 : 強心剤 ( 低血圧の場合 ) 血管拡張剤 ( 正常血圧の場合 ) 死亡率 :51% 18mmHg PAWP * Cedars-Sinai Medical Center, Los Angeles, California, Assistant Director of Cardiology, Dr. James S. Forrester, M.D. の許可による 急性心筋梗塞 (AMI) は 患者の状態によって4つの群に分類することができます Dr. James Forrester( 参考文献 13) は AMI 患者の末梢灌流不良の指標として心係数を ( 縦軸 ) また肺うっ血の評価を目的にPAWP( 横軸 ) を測定し 相互関係を比較しました それらの測定値から患者群を4つに分類することによって それぞれの患者群に対するより適切な治療指針を見出すことができました ( 表 2) この分類法は 患者の予後を検討する上でも役立ちます 43

49 急性心筋梗塞の2つの主な合併症である急性僧帽弁閉鎖不全症と急性心室中隔欠損症は 臨床的に低心拍出量症と同様な症状を示します これらの合併症も スワンガンツカテーテルを使用することによって鑑別することができ 更にそれらに対する治療の結果も評価することができます ( 図 33) 僧帽弁不全症は 肺動脈楔入圧 (PAWP) の波形を観察することによって診断することができます 弁が完全に閉鎖しないため 逆流によって生じる大きな v 波が心房の充満期に認められます 通常 僧帽弁不全症の薬物療法には 後負荷 ( アフターロード ) を軽減させる血管拡張剤が使われます 後負荷が低下すると心室から前方方向への流れが促進されるため 逆流が減少するわけです この改善は 大きな v 波の高さが低くなることによって確認することができます( 図 34) 44

50 急性心室中隔欠損症 (VSD) でも 血液が左心室から右心室にシャント ( 短絡 ) されている場合は低心拍出量を引き起こすことがあります このような動脈血のシャントは 右心室および肺動脈での酸素飽和度を上昇させます 肺動脈で混合静脈血酸素飽和度 (SvO 2 ) を測定することによって VSDを診断することができます 重度の VSDでは 肺動脈楔入圧 (PAWP) に大きな v 波を見ることができます これは シャントの影響で左心室の血液量が増大し それが左心房の充満期に圧の上昇を引き起こすからです このような v 波上昇のタイミングを観察することにより その原因を鑑別することができます 僧帽弁逆流症では v 波が a 波近くに現れますが VSDでは正常な時期に現れます VSDの治療も僧帽弁不全症と同様 体血管抵抗が上昇している場合のみ 後負荷を低下させる薬剤が効果的といえます ( 図 35) 45

51 血行動態パラメータを測定することにより 肺機能低下と心機能低下とを区別することができます 肺高血圧は その原因が何であれ PASPおよびPADPの上昇を引き起こします もしこのときPAWPが正常範囲内なら問題は肺にあり 左心室機能には疾患がないことになります それは カテーテルを楔入させることによって肺による影響を除外し 左心室機能をより正確に反映することができるからです 心タンポナーデや収縮性心膜炎などのような症例では 臨床的な徴候が現れる前に血行動態に変化が認められることがあります どちらの症例においても同じような拡張期圧の上昇が認められますが 圧波形を比較することによって2つを鑑別することができます 心タンポナーデでは 拡張期圧が高くなるため 典型的にPAWPあるいはRAP 波形の y 下降部が消失します その反面 収縮性心膜炎では拡張期の充満が急速に行われるため y 下降部が強調されます( 図 36 37) 46

52 侵襲的な血行動態モニタリングは ハイリスク患者の術前評価としても効果的に利用されてきました 各種パラメータを測定することによって 手術の前に患者の心室機能を最適化することができます Dr. Del Guercio( 参考文献 11) は 侵襲的な血行動態モニタリングをもとにして 患者の術前状態を分類するシステムを考案しました その結果 全員が内科的に全く問題なし ( 手術適用 ) とされていたにもかかわらず 63.5% の患者が軽度から中度の障害をもつこと また23% に手術の適応性がないことが明らかになりました ( 表 3) このことからDr. Guercioは 術前に高齢者の血行動態を評価することによって 術後の経過および生存率を大きく変えることができると結論づけています 血行動態モニタリングの問題点 表 3 術前評価と術後生存率 分 類 患者数 % 処 置 生存率 1 群. 正常 予定通り手術 100% 2 群. 軽度の障害 広範囲な術中モニタリング 3 群. 中度の障害 術前での血行動態の微調整 91.5% および術中モニタリング 限定した手術 (n=7) 100% 4 群. 重度の障害 手術中止 (n=19) * 予定通り手術 (n=8) 0% * 手術が中止になった症例は 生存率に含まれない ほとんどの場合 左心房圧は左室拡張終期圧 (LVEDP) を密接に反映し それは肺 せつにゅう 動脈楔入圧にも密接に反映されます しかし 楔入圧の測定結果から 前負荷の真の 指標である左室拡張終期容量を判定することには限界があります 実際のLVEDV( 容量 ) とLVEDP( 圧 ) との間に差が生じるような状況が存在することはすでに知られていますが PAWPがLVEDPを正確に反映しない場合もあります 次の章では 楔入圧が左室前負荷の真の指標にはならない場合を説明します それらの違いについて述べるのは 測定値をより現実的で各患者の状態に即したものとして解釈できるようにするためです 47

53 左心室の拡張終期容量と拡張終期圧 心臓生理学の適応の章で説明したように 圧と容量の関係は曲線的なものですが これは心室のコンプライアンスによる影響が一部あるからです 心室のコンプライアンスが低下して心筋が硬くなってくると 同じ容量に対してより高い圧が生じます 反対に心室のコンプライアンスが増加して柔らかくなってくると より多くの容量でも低い圧しか生じません コンプライアンスを変化させる要因を考慮することによって 測定値が正当なものであることを確認することができます 心筋虚血重度の心室肥大拘束型心筋症ショック状態 PVR 上昇 後負荷の低下拡張型心筋症心筋虚血の解消 肺動脈楔入圧と左室拡張終期圧 楔入圧は実際に左心房の充満圧を反映するものですから 正確な値を得るためには スワンガンツカテーテルの先端と左心室の間に閉塞するようなものが何もないことが条件です 僧帽弁狭窄症 左心房粘液腫 肺疾患などは カテーテルの先端と左心室の間に一種の 妨げ を形成するものです これらの場合 楔入圧はLVEDPを反映していません そしてこのときの楔入圧は 真のLVEDPより高く測定されます 僧帽弁逆流症でも同様で v 波が上昇するためPAWPが実際より高く測定されます 従ってこの場合も LVEDPを正確に反映しません 楔入圧が真のLVEDPより低く測定される場合もあります 左心室のコンプライアンスが非常に低下していて LVEDPが25mmHg 以上の圧になっている症例では PAWPがより低く測定されてしまいます これは 肺血管床のコンプライアンスが上昇して 左心室系の高い圧を充分に反映していないことにも原因があります 大動脈弁逆流症の場合にも 逆流によるLVEDPの上昇がみられます このような疾患の初期では 逆流による圧 ( バックプレッシャー ) が左心房 そして楔入部まで伝わりきっていないことが考えられます 48

54 PAWP が LVEDP より高くなる場合 僧帽弁狭窄 左心房粘液腫 肺塞栓 僧帽弁逆流 PADP が LVEDP より低くなる場合 左心室コンプライアンスの低下 高い (>25mmHg)LVEDP 大動脈弁逆流 PADP が PAWP と等しくない場合 (1 4mmHg 以内ではない ) PVRの上昇 肺高血圧 肺性心 肺塞栓 アイゼンメンジャー症候群 測定値の精度に影響を与えるものとして 呼吸変動やPEEPの適用 そして肺内の各ゾーンにおけるカテーテル先端位置などが考えられます 呼吸変動が伴う場合の圧測定に関しては 3つの対策が考えられます 1つは 呼気終期に測定を行うことです 正常な呼吸周期における胸腔内圧の変動が スワンガンツカテーテルに伝達されます その結果 吸気には低い圧が そして呼気にはより高い圧が測定されます 呼気終期では 胸腔内の圧がほぼ平衡化されますので ここでの圧測定値はより正確です 2つ目に デジタル方式のモニターでは一定期間の値を平均して表示することがありますが そのモードは使用せずマニュアル ( 手動 ) で測定することが勧められています 3つ目の方法は いくつかの呼吸周期を通して得られた値を平均することです 原則として 血行動態値は1 回の絶対値ではなく トレンドとして評価します ( 参考文献 5 35) Dr. J.Lozman( 参考文献 25) は 様々なPEEP 設定におけるPAWPとLAPの相関について発表しています それによると 患者によってPEEPに対する反応は異なるが PEEPが約 12cmから15cmに上げられるまでは PAWPとLAPとの間に良い相関が認められたとしています それ以上の範囲ではより高い胸腔内圧がカテーテルに伝達され PAWPが異常に高く記録されました 通常およびPEEPがかかった状態において カテーテル先端が肺のどのゾーンに位置しているかということも 正確な楔入圧測定を得るために重要な役割を果たします 肺のゾーンは 流入圧 ( 肺動脈圧 ) 流出圧( 肺静脈圧 ) そして周囲の肺胞内圧との関係によって定められます 49

55 ゾーン1では 肺胞内圧が肺動脈圧および肺静脈圧より高いために肺毛細血管床がつぶれた状態になり 血流は3つのゾーンで最も少なくなっています スワンガンツカテーテルは血液の流れによって進みますから カテーテル先端がこのゾーンに位置することはまずありません ( 図 38) ゾーン2でも 肺胞内圧は肺静脈圧より高くなっていますが 肺動脈には血液が流れるのに充分な圧が存在します ほとんどの場合 この位置で測定された楔入圧は正確です しかしPEEPを使用している場合には PEEPのレベルを上げることによって肺胞内圧が上昇し ゾーン2の状態だった部分をゾーン1にしてしまう可能性があります このように高い周囲圧は カテーテルを通じて伝達されます ゾーン3は 肺動脈楔入圧を測定する上で最適な位置です このゾーンでは 肺静脈圧が周囲の肺胞内圧より高く すべての肺毛細血管が開いています 通常この位置にあるカテーテル先端は左心房の位置より低く それは側面からの胸部 X 線写真で確認することができます 測定値は 物理的あるいは技術的な要因に影響されることもあります 例えば不適正なトランスデューサーの位置や圧測定システム また電気的障害などがある場合には 測定値が変わってしまうことがあります 前にも述べたように バルーンが過度に楔入された際 ( オーバー ウェッジ ) も 不正確な測定の原因となります 多くの場合 圧測定システムを最適化し 電子装置の取扱いに慣れることによって このような問題を無くすことができます 肺動脈圧測定に関する問題や制限は数多くありますが 現在のところスワンガンツカテーテルによる正確な血行動態の評価は 最も信頼性があり しかも容易に行うことができるモニタリング手段とされています 測定した結果を医師が活用することによって 患者の状態をより正確に評価することができる上 治療法を決定するためにも有用な情報をもたらします 50

56 合併症 スワンガンツカテーテルの使用に対する絶対的な禁忌はありませんが カテーテルを留置する際の一般的リスクおよび合併症はあります これらのほとんどは カテーテルの管理 挿入方法 そして患者の既往歴などを充分に把握することによって 問題の発生を少なくしたり予防することができます 肺高血圧の既往がある患者および高齢者においては カテーテル挿入時とバルーン膨張時に特別な注意を払い 肺動脈破裂を防ぐことが大切です バルーンの膨張時間は 2 呼吸周期または10 15 秒を越えないようにするべきです またこのような症例では 楔入圧の代わりに肺動脈拡張期圧 (PADP) をモニターすることをお勧めします 完全左脚ブロック WPW 症候群 あるいはエブスタイン奇形などの既往を伴う症例においては カテーテル挿入中に特に注意深く心電図をモニターする必要があります 多少の不整脈が生じることがありますが このカテーテルは通常のカテーテル検査用のものより柔らかく リスクを少なくするようにデザインされています 51

57 観血的動脈圧測定 血行動態を評価するもう1つの方法として 直接動脈内の圧を測定する方法があります これは動脈内留置カテーテル 圧測定システム そしてトランスデューサーを用いて 連続的に患者の動脈圧を測定するものです 多くの生体情報モニターには 血行動態の算出パラメータに用いられる平均動脈圧をその圧波形から計算する機能がついています 動脈圧を観察する非観血的 ( 間接的 ) な方法としては マンシェットとドップラー装置を使った血圧計が含まれます これらは正しく使われれば 健康な人の動脈圧を正確に反映します しかしこの方法は 心拍出量が低い状態では不正確な値になってしまいます 一般的に聴診法で血圧を測定する際に用いられているコロトコフ音の伝達は 血管のコンプライアンスが変化することによって変動してしまうことがあります 聴診器で聞こえる独特の音は マンシェットで締め付けている部分の動脈を 断続的な血流が血管壁を振動させることによって生じるといわれています このような間接的方法では 最適な状況下でも収縮期圧で約 5mmHg 過小評価し 拡張期圧で約 5mmHg 過大評価してしまう傾向があります 体血管抵抗が高い状態では 血管壁の緊張度が増加しています このような場合には血管壁が振動する能力と それによる音の発生が減少する可能性があります 体血管抵抗が低い状態でも マンシェットによって閉塞された動脈部位を通る断続的血流の不足によって 同じように振動が減少する可能性があります どちらの場合でも 実際には動脈圧が高いにもかかわらず異常に低いカフ圧が観察されることがあります 血液が大動脈基部から末梢へと流れるにつれて 動脈の圧波形が変化します これらの変化は 動脈の弾力特性が部位によって異なることと 血流のエネルギーが多少失われることが原因の一部です 末梢になるにつれて 収縮期圧はより高く 拡張期圧はより低くなり 波形の立上がり部分が徐々に鋭くなります このような変化が起こった場合でも 平均動脈圧には変化はありません 52

58 動脈圧波形の構成 心内圧と同様に 動脈圧波形も物理的な動きによるものです ( 図 39) 動脈圧波形は 心臓の電気的刺激の後に生じます 電気的な波形 ( 心電図 ) と同時に動脈圧波形を観察すると 電気的な刺激が先ず起こり その後に物理的な活動が起こっていることが分かります 1. ピーク収縮期圧 (PSP) ピーク収縮期圧とは 左室収縮期の最大圧のことをいいます 収縮期は大動脈弁が開くときから開始します 左心室から大動脈へと流出する血液を反映して 波形には鋭い立上がりが観察されます この立上がりは 上行脚と呼ばれています 2. ディクロティック ノッチ左心室より大動脈内の圧が高くなると 血液が逆行することによって平衡を図ろうとします これによって大動脈弁が閉じます 大動脈弁の閉鎖は ディクロティック ノッチとして圧波形に現れます ここで収縮期が終わり 拡張期が始まります 53

59 3. 拡張期圧この圧は 動脈血管のリコイル ( 縮んで元に戻ろうとする作用 ) つまり血管収縮の度合に関連しています また拡張期圧は 心周期における拡張時間とも関係があります 拡張期には 血液が細動脈に流れ込むための十分な時間が必要ですが 心拍数が上がって拡張時間が短くなると 末梢への血流量が減少してしまいます その結果として 拡張期圧が上昇します 動脈圧波形の拡張期部分を 下降脚と呼びます 4. アナクロティック ノッチ心室収縮期の最初の期間 ( 等容量収縮期 ) で 収縮前の上昇 ( カーブの立上がり部分 ) が見られることがあります この上昇はアナクロティック ノッチと呼ばれ 大動脈弁が開く前に生じるものですが 典型的に中心大動脈圧測定時 大動脈基部での測定 あるいは特定の疾患でのみ観察されるものです 脈圧収縮期と拡張期圧との差を 脈圧といいます 脈圧に影響を与える要因は 1 回拍出量および血管コンプライアンス ( 収縮性 ) の変動で これらはそれぞれ収縮期圧と拡張期圧で見ることができます ( 図 40) 脈圧 54

60 平均動脈圧 この値は 収縮期と拡張期を含む完全な1 心周期においての 動脈系の平均圧を指します 収縮期は心周期の1/3 拡張期は残り2/3を占めています 平均動脈圧 (MAP) の計算式には この時間的な関係が反映されています 鑑別診断のための動脈波形 SBP+(DBP 2) PP MAP = または DBP MAP = 平均動脈圧 SBP = 収縮期圧 DBP = 拡張期圧 PP = 脈圧 連続的な動脈圧の測定は 血圧についての情報を提供するだけでなく 波形の特性を観察することによって 心臓血管系の状態を評価することもできます 疾患によっては 肺動脈の圧波形からだけでは明らかにならない場合もあります 動脈波形を観察することによって 患者のアセスメントにもう1つの側面を与えることができます 大動脈弁狭窄がある場合には圧波形が小さく 収縮期のピークが遅れて現れます このように収縮期圧が低くなるのは 血液が狭くなった大動脈弁を通過する際 心室駆出の速度が低下するからです また拡張期の開始時に弁尖がきちんと閉鎖しないため 多くの場合ディクロティック ノッチが明瞭ではなくなります 収縮期圧も低下しているため 患者の脈圧も小さくなります ( 図 41) 55

61 大動脈弁閉鎖不全症 ( 大動脈弁逆流症 ) は脈圧が大きくなることによって見分けられます 弁が完全に閉じないため 拡張期には逆流血液を含むより多くの血液量を心室が受け取ります このように増大した血液量が より高い次のピーク収縮期圧として反映されるのです ( 図 42) 心室調律の変化も動脈圧波形に影響を与えます 不規則性を伴う典型的な心房細動では 動脈圧波形の振幅がまちまちになります 心室性期外収縮が発生している場合 拡張充満時間が短縮されるので 収縮期の振幅が減少します ( 図 43) 56

62 交互脈とは 正常洞調律時に最大収縮期圧の振幅が規則的に変化する異常な状態をいいます これはカルシウムあるいは心筋線維が変化することによって生じます 交互脈は 重度の左室不全症例を視覚的に診断できる貴重な手段です 臨床では このように変動している振幅を末梢動脈で触診するのは困難でしょう ( 図 44) 57

63 吸気時は胸腔内圧が低くなります この圧の低下によって 肺血管床内での血液の滞留が増加します その結果 吸気には収縮期圧が3 10mmHg 低くなることがあります 呼気時では 吸気時に肺血管床内に滞留していた血液が左心系へ流れ込みます 従って この増加した血液量は 呼気時に収縮期圧の上昇をもたらします 呼気から呼気までの間で 収縮期圧が10mmHg 以上違うような異常が見られる場合を 奇脈といいます 様々な要因がこの現象を引き起こします 奇脈の原因として 過度の吸気が上げられますが これは患者に起因するものまたは病理生理学的な原因 そして心疾患によるものが考えられます 奇脈が生じるメカニズムは その裏にある原因それぞれによって異なります よく見られるメカニズムは 右心系への還流静脈血の変動 そして胸腔内圧あるいは心膜内圧の変化などです ( 図 45) 重症患者における動脈内圧モニタリングは 頻繁な動脈血の採血を容易にするだけではなく 特定の疾患を鑑別診断する上でも役立ちます これは患者管理を最適化する上で また素早く診断評価を行うために利用することができる もう1つの手段なのです 58

64 過去数十年間に 医学と技術は目覚ましく進歩しました 技術がさらに洗練されてくると同時に クリティカルケアに携わる人に対しても同様なことが求められています まとめ スワンガンツカテーテルの開発はバルーンを膨らませる単純なデザインから始まり 光ファイバーを使った酸素飽和度の測定 心拍数の管理を目的とするペーシング電極 そして右心機能を区別して評価する方法など 心肺機能をより深く理解することの必要性を高める役目を果たしてきました これらのことをより深く理解することによって 患者の状態や治療に対する反応をより速く そして比較的容易に評価することができます 今後の数十年においても 技術は急速に進歩し続けることでしょう そして重症患者のケアに携わる人々が さらに基礎知識を拡大していく環境と 血行動態モニタリングとその科学について もう1 度考え直す機会を提供してくれることでしょう 59

65 付録 l/ 分 l/ 分 /m ml/ 回 ml/ 回 /m 2 (MAP RAP) SVR = 80 CO dyne-sec/cm 5 (MAP RAP) SVRI = 80 CI dyne-sec/cm 5 /m 2 (MPAP PAWP) PVR = 80 CO <250 dyne-sec/cm 5 (MPAP PAWP) PVRI = 80 CI < dyne-sec/cm 5 /m gm-m/ 回 gm-m/ 回 /m gm-m/ 回 5 10 gm-m/ 回 /m 2 60

66 1. Armstrong, P. and Baigrie, R. Hemodynamic Monitoring in the Critically Ill. Harper and Rowe, Publishers, San Francisco, Aubin, Erian. Arterial Lines: A Review. Critical Care Quarterly -- Hemodynamic Monitoring, Aspen Systems Corp., 1979, pages Bolognini, V. The Swan-Ganz Pulmonary Catheter: Implications for Nursing. Heart and Lung, 3(4): Buchbinder, N. and Ganz, W. Hemodynamic Monitoring: Invasive Techniques. Anesthesiology, 45: , Cengiz, M., et al. The Effect of Ventilation on the Accuracy of Pulmonary Artery and Wedge Pressure Measurements. Critical Care Medicine, July 1983, pages Chulay, M. and Miller, T. The Effect of Backrest Elevation on Pulmonary Artery and Pulmonary Capillary Wedge Pressures in Patients After Cardiac Surgery. Heart and Lung, 13(2): , March Conners, A.F., et al. Evaluation of Right Heart Catheterization in the Critically Ill Patient Without Acute Myocardial Infarction. N. Engl. J. Med., 308: , Daily, E.K. and Schroeder, J.S. Hemodynamic Waveforms. C.V. Mosby Co., St. Louis, Daily, E.K. and Schroeder, J.S. Techniques in Bedside Hemodynamic Monitoring, C.V. Mosby Co., St. Louis, Daily, E.K. and Merch, J. Thermodilution Cardiac Outputs Using Room and Iced Temperature Injectate: Comparison with the Fick Method. Heart and Lung, 16(3): , May Del Guercio, L.R. and Cohn, J.D. Monitoring Operative Risks in the Elderly. JAMA, 243(13): , Eisenberg, P.R., et al. Clinical Evaluation Compared to Pulmonary Artery Catheterization in the Hemodynamic Assessment of Critically Ill Patients. Crit. Care Med., 12: , Forrester, J.S., et al. Medical Therapy of Acute Myocardial Infarction by Application of Hemodynamic Subsets. N. Engl. J. Med., 295: , , Gardner, R.M. Direct Blood Pressure Measurement -- Dynamic Response Requirements. Anesthesiology, 54:227, Guyton, A.C. Textbook of Medical Physiology. W.B. Saunders, Co., Philadelphia, Hancock, E. On the Elastic and Rigid Forms of Constrictive Pericarditis. Am. Heart J., 100(6 - Part 1), December Hathaway, R. The Swan-Ganz Catheter: A Review. Nurses Clinics of North America. 13(3): , September Hurst, J.W. The Heart. McGraw-Hill Book Co., New York, Johnston, W.E., et al. Pulmonary Artery Catheter Migration During Cardiac Surgery. Anesthesiology, 64: , Kaplan, J. and Wells, P. Early Diagnosis of Myocardial Ischemia Using the Pulmonary Artery Catheter. Anesth. Analg., 69(11): , November Kaye, W. Invasive Monitoring Technique: Arterial Cannulation, Bedside Pulmonary Artery Catheterization, An Arterial Puncture. Heart and Lung, 12(4): , July 参考文献 61

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68 42. Snyder, J.V. and Pinsky, M.R. Oxygen Transport in the Critically Ill. Yearbook Medical Publishers, Chicago, Sprung, C.,(ed)The Pulmonary Artery Catheter, Methodology and Clinical Applications, University Park Press, Baltimore, Swan, H.J.C. Balloon Flotation Catheters: Their Use in Hemodynamic Monitoring in Clinical Practice. JAMA, 233: , Thys, D. Pulmonary Artery Catheterization: Past, Present and Future. The Mount of Sinai Journal of Medicine, 51(5): , September Tuchschmidt, J. and Sharma, O.M. Impact of Hemodynamic Monitoring in a Medical Intensive Care Unit. Crit. Care Med., 15(9): , Woods, S.L. Monitoring Pulmonary Artery Pressures. Am. J. Nurs., 76(11): , Yonkman, C.A. and B.H. Hamory. Comparison of Three Methods of Maintaining a Sterile Injectate System During Cardiac Output Determinations. Am. J. Injection Control, 12(5): , 本書を無断で複製することを禁止します なお 本書の内容は予告なしに変更されることがあります 63

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