3. 冠血行再建術の目的 ( ステートメント 1) 6 4. 冠血行再建術適応決定における内科と外科の協力体制 の重要性 ( ステートメント2) 6 5.PCI の治療効果 ( ステートメント3) 6 6.CABG の治療効果 ( ステートメント4) 7 7. PCI と CABG を比較したランダ

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1 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン (2011 年改訂版 ) Guidelines for elective percutaneous coronary intervention in patients with stable coronary disease (JCS 2011) 合同研究班参加学会 : 日本循環器学会, 日本冠疾患学会, 日本冠動脈外科学会, 日本胸部外科学会, 日本心血管インターベンション治療学会, 日本心臓血管外科学会, 日本心臓病学会, 日本糖尿病学会 班長藤原久義兵庫県立尼崎病院 兵庫県立塚口病院 班員一色高明帝京大学医学部内科 大野貴之三井記念病院心臓血管外科 小川聡国際医療福祉大学三田病院 落雅美日本医科大学心臓血管外科 木村剛京都大学大学院医学研究科循環器内科学 坂田隆造京都大学大学院医学研究科心臓血管外科学 柴 輝 男 東邦大学医療センター大橋病院糖尿 病 代謝内科 鈴 木 孝 彦 医療法人澄心会豊橋ハートセンター 循環器内科 住吉徹哉榊原記念病院循環器内科 代田浩之順天堂大学医学部循環器内科 髙本眞一三井記念病院 西垣和彦岐阜大学医学部第二内科 西 田 博 東京女子医科大学心臓病センター心 臓血管外科 平 山 篤 志 日本大学医学部内科学講座循環器内 科学部門 外部評価委員 桝田出武田病院グループ予防医学 EBM センター 光藤和明財団法人倉敷中央病院循環器内科 宮崎俊一近畿大学医学部循環器内科 夜 久 均 京都府立医科大学大学院医学研究科 心臓血管外科学 山 崎 力 東京大学医学部附属病院臨床研究支 援センター 相澤忠範財団法人心臓血管研究所付属病院内科 浅井徹滋賀医科大学心臓血管外科 小 川 久 雄 熊本大学大学院医学薬学研究部循環 器内科学 田代忠福岡大学心臓血管外科 鄭 忠 和 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 循環器呼吸器代謝内科学 野 村 雅 則 藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院 循環器内科 藤田正俊京都大学大学院医学研究科医療検査展開学 水野杏一日本医科大学内科学 ( 構成員の所属は 2012 年 2 月現在 ) 目 2 PCI/CABG 冠血行再建術の目的 4 2. 冠血行再建術適応決定プロセスにおける内科 外科の協力 4 3.PCI の治療効果 4 次 4.CABG の治療効果 4 5. 多枝病変に対するPCI とCABG 4 6. 非保護左主幹部病変に対するPCI とCABG はじめに 5 2. エビデンスの採用基準とレベル付け, 解釈および奨励クラス分類 5 1

2 3. 冠血行再建術の目的 ( ステートメント 1) 6 4. 冠血行再建術適応決定における内科と外科の協力体制 の重要性 ( ステートメント2) 6 5.PCI の治療効果 ( ステートメント3) 6 6.CABG の治療効果 ( ステートメント4) 7 7. PCI と CABG を比較したランダム化試験を解釈する際の留意点 8 8. 多枝病変に対する PCI と CABG ( ステートメント 5) 9 9. 左主幹部病変に対する PCI と CABG ( ステートメント 6) 9 PCI/CABG PCI 背景 14 2.PCI の歴史と現状 14 3.PCI に関する統計 15 PCI 背景 16 2.PCI 成功 合併症および再狭窄 生活習慣の管理 薬物療法 欧米と我が国の違い 背景 厚生大臣の定める施設基準に係る届出に関する取扱い ACC/AHA/SCAI2005 ガイドラインでの施設 施行医基準 今後の課題 20 PCI 背景 待機的 PCI の適応を考える上での原則 日本人のデータに基づく PCI 適応基準 21 PCI 背景 22 2.PCI 後の管理 ( 急性期 ) 22 3.PCI 後慢性期の管理 23 PCI 背景 26 2.POBA 26 3.BMS 27 4.DES による再狭窄抑制 その他の再狭窄抑制の試み 血管内超音波 (Intravascular Ultrasound:IVUS) ガイドによる PCI ステント内再狭窄 (in-stent restenosis;isr) 病変に対する治療戦略 29 DES 背景 30 2.DES の再狭窄予防および再血行再建率減少効果 ステント血栓症の定義 33 4.DES のステント血栓症 34 5.DES の長期成績 36 6.DES の適応 36 7.DES 留置後の抗血小板療法 36 8.DES 留置後の抗血小板薬内服中断に対する対策 おわりに 38 PCI 背景 初期内科治療か PCI 先行治療か 38 3.BMS 時代の PCI と CABG の比較 38 4.BMS と DES の比較 39 5.DES と CABG の比較 おわりに ( 無断転載を禁ずる ) 略語一覧 ACE-I angiotensin converting enzyme inhibitor アンジオテンシン変換酵素阻害薬 ARB angiotensin receptor blocker アンジオテンシン受容体拮抗薬 BES biolimus A9-eluting stent バイオリムス溶出ステント BMS bare metal stent ベアメタルステント CAD coronary artery disease 冠動脈疾患 CAG coronary angiography 冠動脈造影 CABG coronary artery bypass grafting 冠動脈バイパス術 DCA directional coronary atherecotomy 方向性冠動脈粥腫切除術 DES drug eluting stent 薬剤溶出ステント ECG electrocardiography 心電図 EES everolimus-eluting stent エベロリムス溶出ステント 2

3 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン ICER incremental cost-effectiveness ratio 増分費用 / 効果比 IVCT intravenous coronary thrombolysis 経静脈的冠動脈血栓溶解術 LAD left anterior descending coronary artery 左冠動脈前下行枝 LMT left main coronary trunk 左冠動脈主幹部 LT late stent thrombosis 遅発性ステント血栓症 MACE major cardiovascular event 主要心血管イベント PCI percutaneous coronary intervention 経皮的冠動脈インターベンション PES paclitaxel-eluting stent パクリタクセル溶出ステント POBA percutaneous old balloon angioplasty 経皮的古典的バルーン血管形成術 PTCRA percutaneous transluminal coronary rotational ablation 経皮的冠動脈回転性アブレーション SAT subacute thrombosis 亜急性血栓症 SES sirolimus-eluting stent シロリムス溶出ステント VLST very late stent thrombosis 超遅発性ステント血栓症 ZES zotarolimus-eluting stent ゾタロリムス溶出ステント 3

4 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術 (PCI/CABG): ステートメント & 適応 ( 冠動脈血行再建術協議会 ) 主査小川聡国際医療福祉大学三田病院 委員一色髙明帝京大学医学部内科 大野貴之三井記念病院心臓血管外科 落雅美日本医科大学心臓血管外科 木村剛京都大学大学院医学研究科循環器内科学 坂田隆造京都大学大学院医学研究科心臓血管外科学 柴 輝 男 東邦大学医療センター大橋病院 糖尿病 代謝内科 住吉徹哉榊原記念病院循環器内科 代田浩之順天堂大学大学院医学部循環器内科 委員髙本眞一三井記念病院 西 田 博 東京女子医科大学心臓病センタ ー心臓血管外科 藤原久義兵庫県立尼崎病院 兵庫県立塚口病院 桝田出武田病院グループ予防医学 EBM センター 山 崎 力 東京大学医学部附属病院臨床研 究支援センター オブザーバー西垣和彦岐阜大学医学部第二内科 夜 久 均 京都府立医科大学大学院医学研 究科心臓血管外科学 Ⅰ ステートメント 1 冠血行再建術の目的 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術の目的は生命予後の改善, 心筋梗塞 不安定狭心症の発症予防, 狭心症改善による生活の質 (QOL) の向上である. 2 冠血行再建術適応決定プロセスにおける内科 外科の協力 重症安定冠動脈疾患 ( 左主幹部病変, 左前下行枝近位部病変を含む多枝病変, 特に, 低心機能, 糖尿病を合併した多枝病変など ) に対する冠動脈血行再建方法の選択は, 内科医と外科医との共同討議を踏まえて患者に提案することが望ましく, 最終的には患者自身の意思決定に委ねるべきである. 3 PCI の治療効果 最近の初期積極的内科治療と比較して PCI 先行治療は 狭心症改善効果を有するが, 生命予後改善効果, 心筋梗 塞発症予防効果は有さない [ エビデンスレベルA]. 最近の初期積極的内科治療と比較してPCI 先行治療は不安定狭心症発症予防効果を有さない [ エビデンスレベルB]. 一方我が国のデータでは予防効果が見られる [ エビデンスレベルB]. DES はPOBA,BMS と比較して再血行再建術の頻度が低い [ エビデンスレベルA]. しかしDES が生命予後, 心筋梗塞発症率を改善するという明らかなエビデンスはない. 4 CABG の治療効果 CABG は狭心症を改善, 心筋梗塞発症を予防し長期生命予後を改善する [ エビデンスレベルA]. 生命予後改善効果は内胸動脈グラフトの使用により増大, さらに長期間持続する [ エビデンスレベルB]. 5 多枝病変に対する PCI と CABG DES 導入以前に施行された, 左主幹部病変を合併し 4

5 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン ない多枝病変を対象としたランダム化試験ではPCI は CABG と比較して再血行再建率は高いが, 生命予後, 心筋梗塞発症率に差を認めない [ エビデンスレベルA]. DES 導入後に施行された最近の比較試験では, 左主幹部病変を合併しない3 枝病変ではPCI はCABG と比較して生命予後は不良で, 心筋梗塞発症率, 再血行再建率も高い [ エビデンスレベルB]. 6 非保護左主幹部病変に対する PCIとCABG 非保護左主幹部病変は原則 CABG の適応とされている. しかしCABG とPCI を比較したレベルの高いエビデンスはない.DES 導入後に施行された最近の比較試験では左主幹部病変に対するPCI はCABG と比較して再血行再建率は高いが, 生命予後, 心筋梗塞発症率に差を認めない. 略語 PCI: 経皮的冠動脈インターベンション POBA: 経皮的古典的バルーン血管形成術 BMS: ベアメタルステント DES: 薬剤溶出ステント CABG: 冠動脈バイパス術 Ⅱ 解説 1 はじめに 冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドラインが2000 年に我が国で初めて作成 公表された. それはCABG を含むもので, 待機的インターベンションの適応に関するものであった. その後,2006 年の 虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン を含めて虚血性心疾患の包括的対策, すなわち虚血性心疾患の一次予防, 診断と病態把握, 治療法, 二次予防の対策 - ガイドライン -が整備されてきた. 冠動脈疾患治療の一翼を担うインターベンション (CABG を含む ) については,2000 年の 冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン ( 冠動脈バイパス術を含む )- 待機的インターベンション 以来既に10 年が経過し, この間の冠血行再建術 (PCI, CABG) の急激な変化と進歩の現実に照らして改訂の必要性が認識され,2009 年に日本循環器学会において作業が開始された. その過程で,2006 年に公表された 虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン も含めて, 冠血行再建術を体系的に再構築したガイドラインを整備することが提案され, 次のような構想が合意された. すなわち, 総論としての基本的認識として冠血行再建術がもたらす効果と不利益,PCI とCABG の多面的比較, そこから導かれるPCI とCABG の選択基準を論じることとし, それぞれの治療法の実際については各論として個別のガイドラインの中で詳述する, というものである.PCI については2000 年のガイドラインの改訂版としての 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン を,CABG については2006 年版 虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン の改訂版 (2010 年度日本循環器学会 ) と整合性を十分持たせて充当することとなる. 本ガイドラインで取り上げるのは安定冠動脈疾患であり, 急性期疾患は除外される 年に ESC(European Society of Cardiology) と EACTS(European Association for Cardiothoracic Surgery) が共同して作成した冠血行再建術のガイドライン 1) では, 冠動脈疾患治療に際しては一般内科医と PCI 施行医, 心臓外科医がハートチームとして共同することの重要性が強調されている. 今後は我が国でも冠動脈疾患はハートチームによる治療へと進むことが予想される. この潮流に従い, 今回の PCI,CABG ガイドラインにおける総論部分となるステートメントとその解説文および冠血行再建術適応は, 日本循環器学会, 日本心臓病学会, 日本冠疾患学会, 日本心血管インターベンション治療学会, 日本心臓血管外科学会, 日本胸部外科学会, 日本冠動脈外科学会, 日本糖尿病学会から選出された内科医 外科医 糖尿病専門医のメンバーで構成される 冠動脈血行再建協議会 で共同討議し作成した. 2 エビデンスの採用基準とレベル付け, 解釈および奨励クラス分類 本ステートメントはガイドラインの基本骨格を示すものであるので, ステートメントとその解説文の作成にあたり採用したエビデンスは, 基本的にレベルの高いもの ( レベルA; 複数のランダム化試験, あるいはメタ解析の結果によるもの, レベル B; 単一のランダム化試験ま 5

6 たは, 多施設 大規模レジストリー研究の結果による ) に限定した. また現時点では CABG と DES を使用した PCI を比較したランダム化試験は SYNTAX 試験 (www. syntaxscore.com) しかなく, この試験に限りレベル C の サブ解析結果も採用した. レベル C は専門家および小規 模臨床試験, サブ解析結果等で意見が一致しているものである. 奨励クラス分類クラスⅠ: 手技 治療が有効, 有用であるというエビデンスがあるか, あるいは見解が広く一致している. クラスⅡ: 手技 治療が有効, 有用であるというエビデンスがあるか, あるいは見解が一致していない. Ⅱa: エビデンス, 見解から有用, 有効である可能性が高い. Ⅱb: エビデンス, 見解から有用性, 有効性がそれほど確立されていない. クラスⅢ: 手技 治療が有効, 有用でなく, 時に有害であるとのエビデンスがあるか, あるいはそのような否定的見解が広く一致している. 真の治療効果はランダム試験により評価が可能であるが, 実際の臨床現場でのPCI とCABG の適応 治療成績の評価はランダム化試験やメタ解析の結果だけでは困難である. したがって多施設 大規模レジストリー研究も重視した. また我が国の実際の安定冠動脈疾患患者の病態, 治療ならびに成績が欧米と異なることは知られているが, レベルの高いエビデンスの多くは欧米のものである. 今後は我が国のPCI とCABG のデータベースの構築とその解析から我々のエビデンスを出す必要がある. 3 冠血行再建術の目的 ( ステートメント 1) 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術の最も重要な目的は生命予後の改善であり, その目的のために心筋梗塞発症や不安定狭心症の発症を予防することである. また安定冠動脈疾患の初発症状の多くは狭心症であり, 狭心症改善による生活の質 (QOL) の向上も重要である. 4 冠血行再建術適応決定における内科と外科の協力体制の重要性 ( ステートメント 2) PCI とCABG は冠血行再建を共通の目的とする異なるアプローチであり, それぞれに固有の長所と短所を有している.PCI かCABG の選択に関しては, 冠血行再建術の治療目的に対する効果を考慮することが基本であり, 加えて合併症 ( 脳卒中, 感染, 造影剤腎症, 放射能被爆など ) の可能性, 手技の安全性 侵襲性, 入院期間, 医療費, 患者の合併疾患も含めて総合的に適応を判断する必要がある. 特に重症安定冠動脈疾患 ( 左主幹部病変, 左前下行枝近位部病変を含む多枝病変, 特に低心機能, 糖尿病を合併した多枝病変など ) の患者に対しては, 治療方針決定の前に内科医と外科医が協議し,PCI,CABG の短期と長期における治療効果, 手技の安全性 侵襲性, 再治療の必要性について十分なインフォームド コンセントの場を持つことが推奨される. また同一施設内で心臓外科医とのハートチームの結成が困難な施設においても医療安全の観点から近隣施設の心臓外科と提携することが望ましい. いずれの治療法も, その成績は術者や医療チームの技量に依存するところが少なくないので治療の選択にあたってはこのことを十分勘案する必要があり, 施設ごとの実績 ( 対象数 重症度 初期 ~ 長期成績など ) を公的に集計して, 解析する必要がある. 5 PCI の治療効果 ( ステートメント 3) 安定冠動脈疾患に対する PCI に関しては,11 編のラ ンダム化試験を統合した 2,950 人のメタ解析の結果から 初期内科治療群と比較して PCI 先行群に生命予後改善効 果 心筋梗塞発症予防効果を認めないことが示されている 2). また, 安定狭心症患者 2,287 人 ( 左主幹部病変除外, 左前下行枝近位部病変 31%,1 枝病変 31%,2 枝病変 39 %,3 枝病変 30 %, 糖尿病合併 33 %) を対象とした COURAGE 試験 ( ランダム化試験 ) では全例に至適薬物治療 (optimal medical therapy; 目標 :(1) 禁煙,(2) LDL 値 60 ~ 85mg/dL,(3)HDL 値 40mg/dL 以上,(4) triglyceride 値 150mg/dL 未満, 中等度の運動 30~40 分週 5 回,BMI25Kg/m 2 未満, 血圧 130/85mmHg 未満, HbA1 C (NGSP 値 ) 7.0% 未満 ) を継続することを前提にした上で,PCI 先行治療群と, まず至適薬物治療のみ 6

7 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン で治療を開始し, 必要に応じてPCI を行う群 ( 初期積極的内科治療群 ) を比較し, 観察期間 4.6 年で死亡, 心筋梗塞, 不安定狭心症の発症率に両群間で差がなかった 3). さらに2009 年に発表された糖尿病患者 1,605 人 ( 左主幹部病変除外, 左前下行枝近位部病変 10.3%,1 枝病変 2 枝病変不明,3 枝病変 20.3%) を対象としたBARI 2D 試験 ( ランダム化試験 ) でも, 初期積極的薬物治療 (intensive medical therapy; 目標 HbA1 C (NGSP 値 )7.0 % 未満,LDL 値 100mg/dL 未満, 血圧 130/80mmHg 未満 ) のもとではPCI 先行治療群と初期積極的内科治療群 (PCI 追加治療群 ) で観察期間 5.3 年間の生命予後, 心筋梗塞発症率は変わらないことが報告されている 4),5). 生命予後ならびに心筋梗塞発症に影響しない説明としては,(1) 急性冠症候群の原因となる不安定プラークの多くは非有意狭窄病変である. 狭心症の症状の原因となる有意狭窄は安定プラークからなることが多いため,PCI による有意狭窄の局所治療は心筋梗塞 死亡率に影響しなかった.(2)COURAGE 試験,BARI 2D 試験はともに薬物治療群の心事故率が予想されたよりも低かった. これは積極的リスク管理による全身治療が有効であるためと考えられる.(3) 初期積極的内科治療群では対象症例の30~40% を占める薬物療法に反応が悪い重症心筋虚血症例の責任冠動脈にPCI を行い, 心筋虚血を改善してしまうこと. 以上の3 点が考えられている. なお,(3) で示すように初期積極的内科治療群では約 1/3の症例に PCI が実施されており, 初期積極的内科治療とPCI 先行治療との比較はPCI を先にするか, 後から症例を選んでするかという治療法の比較であり, 両群間に差がないことはPCI に生命予後改善効果や心筋梗塞発症予防効果がないことを意味しない.PCI の生命予後改善効果や心筋梗塞発症予防効果を観察する研究のためには, 薬物療法に反応しない症例に対してもPCI をせずに長期間観察する必要があるが, このような研究は倫理的に許されていない. またCOURAGE 試験の結果では, 狭心症症状,QOL の改善に関しては初期積極的内科治療と比較し,PCI 先行治療で良好であるが,2 ~3 年後には同様であった 6). この主な理由の1つとして初期積極的内科治療群では内 NGSP 値は2012 年 4 月 1 日より我が国で新たに施行されるHbA1c 検査の標準化法に基づく検査値. これまで我が国で標準化され使用されているHbA1c(JDS 値 ) との関係は,NGSP 値 (%)=1.02xJDS 値 (%)+ 0.25%, JDS 値 5.0~9.9 % の実用域ではHbA1c(NGSP 値 ) = HbA1c(JDS 値 )+ 0.4% となる. 科治療に反応しない症例にPCI を施行することが考えられる. 国内の低リスク安定狭心症患者 384 人 (1 枝病変 67.5%, 2 枝病変 38.5%, 糖尿病合併 39.6%, 左主幹部病変 3 枝病変 左前下行枝近位部病変は除外 ) を対象とした JSAP 試験 ( ランダム化試験 ) でも,PCI 先行治療は初期内科治療 (initial medical therapy: 投薬は各主治医の判断に任せる ) と比較して観察期間 3.2 年で生命予後改善効果, 心筋梗塞発症予防効果は認めなかった 7). しかしCOURAGE 試験の結果とは対照的に不安定狭心症予防効果を認め, 狭心症状の改善も3 年後でもPCI 先行療法の方が良好であった.COURAGE 試験とJSAP 試験の結果の相違に影響した要因として, 両者で病変背景や投与薬物がかなり異なり単純な比較は難しいが, 以下の2 点考えられる.(1)COURAGE 試験ではリスク管理が厳密に計画されているのに対してJSAP 試験では経過観察中のスタチンなど薬物治療が各主治医の判断に任されている.(2)PCI 施行直後の合併症としての急性冠症候群の頻度が欧米と比較して我が国のPCI では少ないためである可能性もある. メタ解析の結果からDES はBMS と比較して再血行再建の頻度が有意に低下し,DES の再狭窄抑制効果が証明された 8),9). しかしPOBA,BMS,DES とデバイスの進歩とともに再狭窄率は改善したが, 生命予後, 心筋梗塞発症率は改善していない 8),9). この理由として以下の 2 点が考えられる.(1) 再狭窄例に対し再 PCI が容易に行われるため, 心筋虚血の程度としてはデバイスの種類で差が生じない.(2) デバイスの進歩とともにPCI の適応拡大が行われ, より重症冠動脈疾患に対しPCI が施行されている. 6 CABG の治療効果 ( ステートメント 4) 1994 年 Yusuf らによる 7 編のランダム化試験を統合し た 2,649 人のメタ解析の結果から, 安定冠動脈疾患患者 ( 左主幹部病変 6.6%, 左前下行枝近位部病変 59.4%,1 枝病変 10.2%,2 枝病変 32.4%,3 枝病変 50.6%, 糖尿 病合併 9.6%) に対する CABG は初期内科治療 (37.4% が経過中に CABG 施行 ) と比較して生命予後が良好で あり,CABG 自体が生命予後改善効果を有することが証 明されている 10). この生命予後改善効果は 5 年目から顕 著になり 10 年目まで持続する. またサブ解析から, こ の効果は左前下行枝近位部病変,3 枝病変, 左主幹部病 変, 低心機能患者にみられ, 左主幹部病変で最もその効 7

8 果が大きいことが示されている. 一方 1 枝 2 枝病変患者では効果は見られない. 近年は長期グラフト開存率が良好な内胸動脈グラフト使用によるCABG が golden standard である. 米国の多施設 大規模レジストリー試験の結果から, 静脈グラフトと比較すると内胸動脈グラフト使用により CABG の生命予後改善効果が増大することが報告されている 11). この効果も顕在化に8 年必要であるが, 長期間 (16.8 年間 ) 持続する. さらにTaggartらによる観察研究のメタ解析から両側内胸動脈グラフトを使用することにより, さらに生命予後が改善することが報告されている 12). Yusufらの報告は1970~1980 年代に行われたランダム化試験を統合したものであるので, 最近の手術手技や現代の各種薬物治療の進歩を反映していない. すなわち Yusufらの報告は (1)CABG の30 日死亡率 3.2% であり最近の成績と比較して不良である.(2) 生命予後を改善することが知られている内胸動脈グラフト使用率は10 % 未満である.(3) 近年使用されているスタチン,Ca 拮抗薬,ACE 阻害薬, アンジオテンシン受容体拮抗薬 (ARB) 等が用いられていない. 最近の糖尿病患者 763 人 ( 左前下行枝近位部病変 19.4 %,1 枝病変不明,2 枝病変不明,3 枝病変 52.4%) を対象に行われたBARI 2D 試験の結果では, 初期積極的薬物治療群 (39.7% が経過中に冠血行再建術施行 ) と比較してCABG は5 年間の生命予後に差を認めていない 4). また多枝病変患者 611 人 ( 左主幹部病変と低心機能は除く ) を対象としたMASS II 試験 ( ランダム化試験 ) では, 薬物治療 (39.4% が経過中に冠血行再建術施行 ) と比較してCABG は5 年間の経過観察では全死亡, 心臓死に有意差を認めなかった 13). しかし10 年の経過観察で全死亡に差はないものの,CABG 群で心臓死が有意に低くなってきたことが報告された 14). 最近の積極的薬物治療下ではCABG の生命予後改善効果の大きさが相対的に小さくなっているか, あるいは治療効果の顕在化に必要な期間が長くなっている可能性があり,CABG の生命予後改善効果の正確な大きさ, 持続期間の検証のためには 10 年以上の長期間のランダム化試験が必要であると考えられる. 心筋梗塞発症予防効果に関してBARI 2D 試験でも初期積極的薬物治療群と比較してCABG では心筋梗塞発症率が低いこと 5), さらに活動性などQOL もCABG 群で良好であることが示されている 15). またMASS II 試験の10 年目結果でも薬物治療と比較してCABG 群の心筋梗塞発症率は低い 14).CABG による心筋梗塞予防メカニズムとしてはプラークが破綻した場合でも破裂部位 の遠位にグラフトがバイパスされていれば心筋が保護される (distal protection) ためと考えられている 16). また狭心症状の改善に関しては MASS II 試験の10 年間の経過観察で初期内科治療と比較しCABG で良好であった 14). 7 PCI と CABG を比較したランダム化試験を解釈する際の留意点 PCI とCABG を比較したランダム化試験は多くあるが, それらの結果を解釈する場合の留意点として以下の 3つが挙げられる.(1) 歴史的に左主幹部病変,3 枝病変はCABG の適応と考えられてきたため, ランダム化試験の大半で左主幹部病変が除外され,3 枝病変の割合も少ない. またエントリー可能な患者はPCI で治療可能な冠動脈狭窄病変に限られ, 明らかにPCI ではなくCABG 適応と判断される複雑病変はエントリーされない.(2) CABG の治療効果が顕在化するのに必要な期間と考えられている5-10 年と比較して観察期間が短い.(3) 積極的薬物治療の重要性が認識されているが,PCI と CABG では経過観察中の薬物治療が異なっている. 唯一のランダム化試験であるSYNTAX 試験は, 左冠動脈主幹部病変または3 枝病変 1,800 人 ( 左主幹部病変 39%,3 枝病変 61%, 糖尿病合併 25%) を対象として DES のCABG に対する非劣性を証明しようと試みた試験である.1 年目の結果から1 次評価項目 ( 死亡 + 脳卒中 + 心筋梗塞 + 再血行再建 ) はCABG よりもDES が高率であったため非劣性を証明することはできなかった 17). 3 年目の結果ではCABG と比較してDES は死亡率 (CABG vs. DES: 6.7% vs. 8.6%), 脳梗塞発症率 (3.4% vs. 2.0%) に有意差を認めなかったが, 心筋梗塞発症率 (3.6%vs. 7.1%) と再血行再建率 (10.7%vs. 19.7%) は高率であった 18). しかしこのSYNTAX 試験においても対象となった3,075 人中,PCI とCABG のどちらでも治療可能と判断されたものは1,800 人 (59%) であり, 残り1,275 人のうち84%(1,077 人 ) はCABG のみが,16 %(198 人 ) はPCI のみが適応があると判断され, ランダム化試験にはエントリーされずレジストリー試験として登録されている.CABG にレジストリーされた主な理由はPCI による治療困難な複雑病変 (70.1%), 慢性完全閉塞病変 (22.0%),PCI では合併疾患 (70.7%) とグラフト使用困難 (9.1%) であった. 観察期間は5 年間までの予定であり, 薬物治療に関してはPCI 群と比較してCABG 群では抗血小板薬, スタチン, β 遮断薬, ARB,Ca 拮抗薬すべてにおいて投与率が低い. 8

9 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 8 多枝病変に対する PCI と CABG ( ステートメント 5) Hlatkyらの12 編のランダム化試験を統合した 7,812 人 ( 左前下行枝近位部病変 51%,2 枝病変 63%,3 枝病変 37%, 糖尿病合併 16%) のメタ解析の結果では,DES を使用しないPCI はCABG と比較して観察期間 6 年間において再血行再建術は高いが, 生命予後, 心筋梗塞発症率は差を認めていない 19). しかしSYNTAX 試験のサブ解析では,3 枝病変患者では生命予後, 心筋梗塞発症の予防, 再血行再建術の回避のすべてにおいてCABG は DES を使用したPCI よりも良好であった. また SYNTAX scoreの低い3 枝病変では,PCI とCABG の間に生命予後, 心筋梗塞, 脳卒中発症に有意差はなかったのに対し,SYNTAX score の高い病変ではCABG の方が良好であった. これらのデータを参考に 2010 年 8 月に発表されたESCとEACTS 共同のガイドライン 1) では CABG は3 枝病変に対し奨励クラスⅠエビデンスレベル A であり,PCI はSYNTAX score22 以下では奨励クラス Ⅱa,23 以上の複雑 3 枝病変は奨励クラスⅢとされている. 実際の臨床現場での左主幹部病変を除いた多枝病変に対するPCI とCABG の成績を比較した観察研究としては国内のCREDO-Kyoto 研究 20), アメリカ ニューヨーク州レジストリー研究 21) がある.5,420 人 ( 左前下行枝近位部病変 80%,2 枝病変 49%,3 枝病変 51%, 糖尿病合併 46 %, 慢性完全閉塞病変 40 %) を対象とした CREDO-Kyoto 研究の報告では,DES を使用しないPCI はCABG と比較してリスク補正後の死亡率はCABG と比較して高い傾向にあり, 糖尿病患者, 低心機能患者においてはPCI の方がリスク補正後の死亡率が有意に高値であった. ただし著者らは75 歳以下の患者で検討すれば, 両群間に差がなかったと結論している. また17,400 人 ( 左前下行枝近位部病変 52%,2 枝病変 56%,3 枝病変 41%, 糖尿病合併 38%) を対象としたアメリカ ニューヨーク州レジストリー研究もDES を使用したPCI と比較してCABG は再血行再建率が低く, リスク補正後の心筋梗塞発症率, 死亡率も低かった. また3 枝病変, 2 枝病変,80 歳以上の高齢者, 低心機能患者のいずれのグループにおいてもCABG の方が心筋梗塞発症率, 死亡率は低かった.CREDO-Kyoto 研究においても左主幹部病変も含めた多枝病変 6,327 人で再解析した結果, 観察期間 3.5 年でPCI はCABG と比較してリスク補正後の死亡率, 心筋梗塞発症率, 再血行再建率が高いことを報 告した 22). 糖尿病患者, 低心機能患者, 左前下行枝近位部病変, 高齢者 (75 歳以上 ) に限って解析してもPCI はCABG と比較して死亡率が高かった. 一方脳梗塞発症率はPCI の方が低いが, オフポンプ手術に限定して比較すると差を認めなかった. 9 左主幹部病変に対する PCI と CABG( ステートメント 6) Yusuf らの報告から左主幹部病変患者は薬物治療と比 較して CABG の生命予後改善効果が最も大きい病変で あることが示されている 10). 近年の左主幹部病変を対象 とした報告から PCI の適応の可能性が提起されてきた が 23), これら論文では安定冠動脈疾患に加えて急性冠症 候群も含めて解析している. 安定冠動脈疾患の非保護左主幹部病変に対する冠血行再建術において,PCI と CABG を比較したレベルの高い観察研究, ランダム化試験は現在までのところ存在しない. このような経緯で左主幹部病変患者に対する冠動脈血行再建方法の選択に関しては歴史的にPCI ではなく,CABG の適応であるとされている. A C C F / S C A I / S T S / A AT S / A H A / A S N C Appropriateness Criteria for Coronary Revascularizationでは非保護左主幹部病変に対するCABG は適切 (appropriate) と判断されているのに対して,PCI はたとえ単一左主幹部病変であっても不適切 (inappropriate) であると判断されている 24). また2009 Focused Updates: ACC/AHA Guidelinesでは非保護左主幹部病変に対する PCI について, 高度肺機能障害, 胸部手術既往, 標的血管が細いなどCABG 施行のリスクと不成功の可能性が高く, かつ狭窄病変の解剖学的形態がPCI のリスクの低い患者 ( 左主幹部単独病変, 左主幹部病変 +1 枝病変 ) では,CABG の代わりとしてPCI 施行を考慮してもよいかもしれないが,CABG 施行のリスクが低い患者や左主幹部分岐病変, 左冠動脈主幹部 + 多枝病変に対しては CABG が優先され PCIは勧められないと記載している 25). また我が国のj-Cypherレジストリー ( 多施設 大規模レジストリー研究 ) の報告では左主幹部から左前下行枝に 1 本のステントで治療した症例と比較して分岐部の側枝にもステントを留置するいわゆる 2ステント手技が行われた症例は再血行再建率, 心臓死の発生率は高かった 26). SYNTAX 試験の3 年目のサブ解析結果から,CABG はDES を使用したPCI と比較して再血行再建率は CABG の方が良好であったが, 生命予後, 心筋梗塞に差を認めていない 18). またSYNTAX score の低い左主幹部 9

10 病変患者においては DES と CABG の間で生命予後, 心 筋梗塞発症, 脳卒中の発症率に差はないが,SYNTAX score の高い左主幹部病変患者では CABG のほうが死亡 率 心筋梗塞発症率が低い傾向であった. しかしここでもランダム化試験の限界は認識しなければならず, SYNTAX 試験ではこの点に配慮して, 対象となった左主幹部病変患者 1,085 人中,312 人 (29%) はCABG のみに適応があると判断され, ランダム化試験にはエントリーされずレジストリー試験として登録されたことを明示している.2010 年 8 月にESC(European Society of Cardiology) と EACTS(European Association for Cardiothoracic Surgery) 共同のガイドラインが発表された. このガイドラインではSYNTAX 試験に基づき左主幹部病変に対するCABG は奨励クラスⅠ, エビデンスレベルA と判断されている 1). 一方, 入口部, 体部の左主幹部単独病変あるいは左主幹部病変 +1 枝病変に対するPCI は奨励クラスはⅡaまたはⅡb, エビデンスレベルBとされたが, 左主幹部単独病変あるいは左主幹部病変 +1 枝病変でも分岐部病変あるいは左主幹部病変 + 多枝病変は奨励クラスⅡbまたはⅢと判断されている. Ⅲ 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術 (PCI/CABG) の適応 (1) 安定冠動脈疾患に対しては, まず生活習慣の管理と 薬物療法が必須であり, 症状や予後改善効果があると考えられる病変に対しては冠血行再建術を施行する. (2) LAD 近位部病変を含まない1 枝あるいは2 枝病変は PCI の適応である.LAD 近位部病変を含む1 枝あるいは2 枝病変についてはPCI/CABG ともに考慮する. ただしLAD 入口部病変ではCABG を考慮する. (3)3 枝疾患は原則としてCABG の適応である. ただしCABG のリスクが高い場合や,LAD 近位部病変を含まないなどPCI が安全に施行されると判断される場合はPCI も選択可能である. (4) 非保護左主幹部病変は原則としてCABG の適応である. ただしCABG のリスクが高いと判断される場合や, LMT 入口部, 体部などPCI が安全に施行できると判断される場合はPCI も選択可能である. その場合でも緊急 CABG が迅速に行える体制が必須である. 以上の適応はあくまで基本原則であり, 個々の患者の治療方針は, その臨床的背景や解剖学的条件, 各施設の成績や体制, 長期的課題などすべてを勘案し, 特に重症冠動脈疾患では内科医と外科医が共同で討議して, 患者に提案する. 可及的早期にPCI/CABG のレジストリーを構築し我が国の臨床エビデンスに基づいたガイドラインの改訂に備える. 表 PCI,CABG 適応解剖学的条件 PCI 適応 CABG 適応 LAD 近位部病変なし Ⅰ A Ⅱ b C 1 枝 /2 枝病変 LAD 近位部 ( 入口部を除く ) 病変あり Ⅰ C LAD 入口部病変あり Ⅱ b C 3 枝病変 LAD 近位部病変なし Ⅱ b B LAD 近位部病変あり Ⅲ B Ⅰ A 入口部, 体部の単独病変あるいは+1 枝病変 Ⅱ b C 非保護左主幹部病変 分岐部病変の単独病変あるいは+1 枝病変 Ⅲ C/ Ⅱ b C 多枝病変 Ⅲ C Ⅱbは回旋枝入口部に病変なくかつ心臓外科医を含むハートチームが承認した症例 10

11 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 文 1. Wijns W, Kolh P, Danchin N, et al., European Association for Percutaneous Cardiovascular Interventions. Guidelines on myocardial revascularization: The Task Force on Myocardial Revascularization of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS). Eur Heart J 2010; 31: Katritsis DG, Ioannidis JPA. Percutaneous coronary intervention versus conservative therapy in nonacute coronay artery disease: A meta-analysis. Circulation 2005; 111: Boden WE, O Rourke RA, Teo KK, et al. COURAGE Trial Research Group. Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease. N Engl J Med 2007; 356: Frye RL, August P, Brooks MM, et al., BARI 2D Study Group. A randomized trial of therapies for type 2 diabetes and coronary artery disease. N Engl J Med 2009; 360: Chaitman BR, Hardison RM, Adler D, et al., Bypass Angioplasty Revascularization Investigation 2 Diabetes (BARI 2D) Study Group. 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12 Cardiothorac Surg 2012;41: Park SJ, Kim YH, Park DW, et al. Randomized Trial of Stents versus Bypass Surgery for Left Main Coronary Artery Disease. N Engl J Med 2011; 364: Patel MR, Dehmer GJ, Hirshfeld JW, et al. ACCF/SCAI/ STS/AATS/AHA/ASNC 2009 Appropriateness Criteria for Coronary Revascularization: A Report of the American College of Cardiology Foundation Appropriateness Criteria Task Force, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, Society of Thoracic Surgeons, American Association for Thoracic Surgery, American Heart Association, and the American Society of Nuclear Cardiology: Endorsed by the American Society of Echocardiography, the Heart Failure Society of America, and the Society of Cardiovascular Computed Tomography. Circulation 2009; 119: Kushner FG, Hand M, Smith SC Jr, et al., American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines Focused Updates: ACC/AHA Guidelines for the Management of Patients With ST-Elevation Myocardial Infarction (updating the 2004 Guideline and 2007 Focused Update) and ACC/ AHA/SCAI Guidelines on Percutaneous Coronary Intervention (updating the 2005 Guideline and 2007 Focused Update): a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2009; 120: Toyofuku M, Kimura T, Morimoto T, Hayashi Y, et al Three-year outcomes after sirolimus-eluting stent implantation for unprotected left main coronary artery disease-insights from the j-cypher registry. Circulation 2009; 120:

13 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 改訂にあたって 冠動脈疾患 (CAD) の血行再建術 ( 経皮的冠動脈インターベンション :PCI と冠動脈バイパス術 :CABG) は, 安定 CAD に対する待機的なものと急性冠症候群 (ACS) に対する緊急的なものに分かれる.2000 年に安定 CAD を対象とした 冠動脈疾患におけるインターべンション治療の適応ガイドライン ( 冠動脈バイパス術の適応を含む )- 待機的インターべンション - ( 委員長 : 藤原久義 ) 1) が日本循環器学会等 8 学会合同で出版されてから, 既に 11 年が過ぎた. その間のPCI ならびにCABG の変化 進歩を著しく認めることから, このたび旧ガイドラインを新たに全面的に改訂することになった. その基本構想は,(1) 安定 CAD に対する冠血行再建術の総論を 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術 (PCI/ CABG): ステートメント & 適応 として,8 学会 ( 日本循環器学会, 日本心臓病学会, 日本冠疾患学会, 日本心臓血管外科学会, 日本心血管インターべンション治療学会, 日本胸部外科学会, 日本冠動脈外科学会, 日本糖尿病学会 ) の内科医 外科医 糖尿病専門医で構成された 冠血行再建術協議会 で共同討議し, 作成することと,(2) これを旧ガイドラインの全面改訂版である 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン (2011 年 ) と 2006 年に公表された 虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン の改訂版 (2011 年 ) の最初の部分に総論部分として載せ,2つのガイドライン改訂版の各論部分はこの総論部分を踏まえて上記と同様の8 学会で別個に共同作成するということである. さて, 今回のガイドラインの全面改定の理由は以下の 4 点である. (1) 冠血行再建術の進歩 特にPCIの進歩と適応拡大 この11 年間, スタチンに代表される動脈硬化の進展予防 退縮を誘導する薬物の積極的使用が冠動脈硬化の退縮や主要心血管イベント (MACE) を減少させることも明らかになり, また,CABG も内胸動脈グラフト等が一般化し, 予後が一層改善された. しかしながら最も大きな変化はPCI の進歩と適応拡大である. 例えば,2000 年のガイドラインではLMT 病変に対する適応はCABG と記載されていたが, ステントならびに薬剤溶出ステント (DES) に代表されるPCI 器具 手技の進歩に加えて抗血小板薬等の併用薬物療法の進歩により, 待機的 PCI の最大の問題点であった再狭窄 が劇的に減少し, また手技の安全性も向上した結果, これまで困難とされてきた高リスクCAD や完全閉塞病変までPCI が国内外で, 特に我が国で積極的に行われるようになってきた (Ⅰ,Ⅱ,Ⅶ 参照 ). (2) ハートチームで適応決定を行う時代へ (3) 奨励クラス分類 エビデンスレベルの明示旧ガイドライン当時には十分なエビデンスがないため, 手技 治療の有効性, 有用性について奨励クラスレベルや各データのエビデンスレベルの記載ができなかった. 全面改訂した本ガイドラインでは, 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術 (PCI/CABG): ステートメント & 適応 ( 冠動脈血行再建術協議会 ), エビデンスの採用基準とレベル付け, 解釈および奨励クラス分類 に示すように, 奨励クラスをⅠ~Ⅲに, エビデンスレベルをA ~Cに分類して記載した. (4) ガイドラインの目的と社会的役割の変化最近の我が国の医療情勢を反映し,2010 年の診療報酬点数表改正点の解説には各種保険診療を学会等のガイドラインに沿って行うように記載されている. 待機的 PCI については 当該手術が, 日本循環器学会等の承認を得た 冠動脈疾患におけるインターべンション治療の適応ガイドライン ( 冠動脈バイパス術の適応を含む ) (2000 年の旧ガイドライン ) に沿って行われた場合に限り算定する とされている 2). さらに 2011 年 7 月 20 日厚生労働省の通達ではPCI 機器使用の際には日本循環器学会作成の 冠動脈血行再建術に関するガイドライン ( 仮称 ) 等の最新の情報を参考にすることとなっている 3). 今後は, 全面改訂された本ガイドラインが上記ガイドラインに取って代わることになる. 既に保険適応になっている手技 治療について, どのように行われるべきかの基準にガイドラインが参考にされることは, ガイドラインの性格上やむを得ないことである. 上記のような11 年間の変化を踏まえて, 今回のガイドライン全面改訂版では, 内外の待機的 PCI の進歩と最新のエビデンスに基づくとともに, 我が国の現状 特殊性も考慮し, かつ社会的役割を果たせるガイドラインの作成を試みた. 本ガイドラインが多くの循環器臨床医に 13

14 利用され, 臨床の実際に役立つことを念願している. また,PCI のデバイスや手技ならびに考え方は日々急速な進歩を遂げているので, 今後も修正 改訂して行く必要があることは言うまでもない. Ⅰ 我が国における PCI の現況 1 背景我が国の脳血管死亡率が1965 年をピークに着実に減 少している一方, 心疾患死亡率は過去 40 年間横ばいになっている. また我が国におけるCAD 発症率は1960 年代から2000 年にかけて有意な時代的変化はない.2000 年 4 月に開始された我が国の前向きコホート研究 JCAD 4) における冠危険因子保有率は, 高脂血症 55%, 耐糖能異常または糖尿病 40%, 高血圧 58%, 肥満 33%, 喫煙 39%, 家族歴 17% であり, こういった高リスク集団におけるMACE 発生率は62.8/1,000 人 年に達した. 日本を含む44か国 5,473 施設共同で2003 年から行われている前向きコホート研究 REACH 5) に登録されたCAD 患者 40,258 名における冠危険因子保有率は, 高脂血症 77%, 糖尿病 38%, 高血圧症 80%, 肥満 (BMI 30)45%, 喫煙 13% で, うち1 年間フォローアップできた38,602 名のMACE 発生率 ( 心血管死, 心筋梗塞, 脳卒中, MACE による入院 ) は152/1,000 人 年であった 6). このことから, 日本人の虚血性心疾患既往者の心事故リスクは欧米人と比較すると低いものの, 後述の Framingham 研究, 久山町研究における非既往者のデータと比較すると絶対値そのものは決して低いものではなく, 厳格なリスク管理による二次予防が必要であることが分かる. 一方, このJCAD 研究においては危険因子が重積することによるイベントリスクの上昇率は予想ほど高くなく,3 個以上のリスクが集積する群のそれ未満に対するハザード比は1.26 程度であった. 世界的に心血管疾患の発生頻度を考えた場合,WHO の死亡統計をもとに最近の世界各国のCAD の死亡率を年齢調整を行って比較すると, 旧ソビエト連邦および東欧, 北欧が上位を占め, それについで西欧, 北米の先進諸国が続く. 我が国の CAD 死亡率は先進国のなかでもっとも低く, 東欧北欧の1/8~1/10, 西欧北米の1/5 程度に過ぎない 7). ただ死亡統計においては死に至らない軽症例についての評価が できないため, 地域の一般人口を対象とした大規模な前向き疫学調査が有用である. 調査精度の高い研究として Framingham 研究が有名であるが, それと我が国の代表的な疫学研究である福岡県久山町住民を対象とした久山町研究を26 年間追跡した調査において比較したデータによれば, 久山町の心筋梗塞発症率は1,000 人 / 年に対して男 1.6, 女 0.7 フラミンガム研究では7.1,4.2であり, 脳梗塞発症率は久山町で男 10.8, 女 6.4, フラミンガムで男 2.5, 女 1.9に比較して3~4 倍高率であった 8). 我が国では脳卒中の発症リスクが高いかわりにCAD の発症リスクが低く, 米国白人とは異なった動脈硬化症のパターンを呈することが判明している. そのような疫学データから分かることは, 日本人のCAD の頻度はいまだに欧米諸国より少なく, いまだに脳血管障害が多いが, たとえば,CAD 既往例の再発について考えると, 欧米諸国に比肩するリスクに達することがJCAD 研究など日本人を対象とした疫学研究により明らかにされている. 2 PCI の歴史と現状 PCI は, 以前は経皮的冠動脈形成術 (PTCA) と呼ばれ, その端緒は1977 年にスイスで第 1 例目が実施された POBA に始まり,1980 年代まではPOBA を中心として行われてきた.90 年代には, 偏心性病変や分岐部病変を適応とする方向性冠動脈アテレクトミー (DCA), 高度石灰化病変を適応とするロータブレータ (PTCRA) などのアテレクトミーデバイスとともにステントが登場し, その簡便性, 有効性によりPCI の主役を担うこととなった. そのような進歩と平行して我が国における複数の施設でのPCI の初期成功率は1980 年代には70~80% 程度であったが,1990 年代には90~95% 以上に上昇した. また当初からアキレス腱といわれていた再狭窄の問題に関しては,POBA の場合には治療後 6か月間の再狭窄率は40~50% といわれたが, ステント留置術 ( ベアメタルステント :BMS) により再狭窄率は20% 前後までに低下した. さらに, さらなる再狭窄軽減を目標に 2000 年以降には海外においてDES としてSES が臨床使用された. 日本では,2004 年にSES,2006 年にはPES が承認された. その後さらにZES,EES,BESが上市され 臨床現場で多用されている. 高い再狭窄が問題となる, びまん性病変, 多枝病変, 小血管, 慢性閉塞性病変, ステント内再狭窄 (ISR) 病変などに対するDES の再狭窄低減効果 ( 全体的にみても再狭窄率は10% 以下 ) が報告され,PCI の適応も従来, 治療困難あるいは禁忌とされていたLMT 病変などを含め適応はさらに広がりつ 14

15 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン つある 9). 3 PCI に関する統計 対的に短くなることが予想され, そのことが海外に比して ACS の治療成績が我が国で非常に優れていることの一因と考えられる. 日本における循環器疾患の診療実態として1997 年, 2000 年に日本におけるPCI の実態調査が行われている (JCIS:Japanese Coronary Intervention Study) 10). この調査は, 全数調査ではないため胸部外科学会のCABG 調査と比較すれば信頼度は劣るものの, このデータが現在に至る冠動脈形成術に関する日本の実態を大きく反映したものと考えられる. 今後,PCI の全体が把握できる調査が必要である.8,268 施設からの集計によれば2000 年の段階で冠動脈造影が543,046 件実施されており,CAD 症例に対する冠動脈造影実施比率は欧米の1.4 倍であった.PCI およびCABG が146,992 件 /23,584 件であり, PCI がCABG の6.23 倍の比率で実施されていた. 一年間のPCI 件数が100を超える施設が全体の40.2% であり, 比較的小規模にPCI を実施する施設が半数を占めることがうかがえる. さらに最近の集計としてJCRAC/ データセンターで収集された調査が参考になる 11) ( 表 1,2009 年発表 ). 日本全国の循環器科 心臓血管外科を標榜する 3,846 施設中 1,522 施設 (39.6%) からの回答によるデータであり, そのうち125 施設が国公立 私立大学病院が占めていた. 全体として見た場合, 病床数総数は481,156 床に及び, 年間の心筋梗塞症例数は59,318 例, 循環器疾患死亡数は29,183 例であった.1,135 施設における冠動脈造影検査が464,817 件, 緊急 PCI:59,072 件 /1,039 施設, 待機的 PCI:160,824 件 /1,067 施設と報告されておりこれが日本の一般的な実態を反映するデータと考えられる. 使用するカテーテル, デバイスの経費について経済的側面から算出した場合には, 日本全体で20 万件を超えるPCI ( これに含まれるステント治療の7 割がDES を使用 ) が施行されている. 外科手術においては約 2 万件のCABG が施行されている. 胸部外科学会での集計からみても CABG の少なくとも半数がオフポンプ手術となっている. また特に表 1で分かるように施行件数を施設数で除した場合, 一施設あたりの施行症例が相対的に非常に低くなることが我が国の特徴である. 海外での心臓専門施設のセンター化により症例を集中させるシステムの利点が議論されることもあるが, 逆に我が国のように全国の多数の施設で高品質のPCI が受けられるという点で国民にとって大きなベネフィットとなっている可能性がある. 特にACS の場合には発症から治療までの経過時間が相 緊急 PCI 11) 表 1 循環器疾患の診療実態 2007 年調査 2008 年調査 2009 年調査 合計 57,727 61,717 59,072 施設数 1,035 1,030 1,039 待期的 PCI 合計 144, , ,824 施設数 1,073 1,062 1,067 AMI( 急性心筋梗塞 ) 患者に対する PCI 合計 43,427 45,378 45,194 施設数 1,010 1,026 1,023 POBA( 病変単位 ) 合計 32,013 35,773 37,883 施設数 POBA( 患者単位 ) 合計 27,184 30,244 33,195 施設数 ステント (BMS) 留置 ( 病変単位 ) 合計 68,298 70,661 67,590 施設数 ステント (BMS) 留置 ( 患者単位 ) 合計 67,484 68,005 64,688 施設数 1,030 1,015 1,014 DES 留置 ( 病変単位 ) 合計 118, , ,169 施設数 DES 留置 ( 患者単位 ) 合計 105, , ,020 施設数 1,013 1,005 1,011 DCA( 病変単位 ) 合計 2, 施設数 DCA( 患者単位 ) * 合計 1, 施設数 ロータブレーター ( 病変単位 ) 合計 3,757 4,590 4,484 施設数 ロータブレーター ( 患者単位 ) 合計 3,650 4,295 4,450 施設数 IVCT( 経静脈的冠動脈血栓溶解療法 ) 合計 1, 施設数 また,DES については Ⅶ 我が国のDES の項を参照. 15

16 Ⅱ 我が国の待機的 PCI の結果の評価 1 背景我が国のPCI の実態に関して網羅的に情報収集した観察研究の報告は, 平成 9 年にPCI を受けた4,834 例について分析した平成 10 年度厚生科学研究事業報告や最近 のCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry 研究 12) があるが, ナショナルレジストリとしてのデータはない. 現在, 日本心血管インターベンション治療学会において症例のレジストリシステムが導入されているが, まとまった数値データを含むPCI 結果の評価が制度としてできるような真のナショナルレジストリにする必要がある. 2 PCI 成功 PCI 成功は (1) 造影所見上の成功,(2) 手技成功,(3) 臨床的成功の3つの立場から定義される 13). (1) 冠動脈造影上の成功 とは冠動脈造影所見において術前狭窄度が20% 以上改善し, かつ術後狭窄度が 50% 未満に減少させることができ, かつTIMI 3 度以上の良好な血流を得た場合をいう. すなわち心筋虚血が生じる有意狭窄病変を生理学的運動の範囲内では心筋虚血が生じなくなるような狭窄度に減少させることが 造影上の成功 の意義である 14). ただし, ステントを使用することが標準となってからは50% 未満という狭窄度は不十分であり20% 未満の残存狭窄度となることが 冠動脈造影上の成功 として適切であるという見解がでている. このような機械的開大を規定する要因は主として解剖学的な形態であり, いくつかの形態学的特徴によって成功率が予想されることが認識されている ( 表 2) 14). 本来, この分類はPOBA のみによってPCI を行っていた時代に規定されたものであるにもかかわらず, ステントを多用する現代においても有用な分類であり, 病変の難易度による成功率の推定に用いられる. ただし, 現代における成功率はPOBA 時代よりも向上しており, 例えばType A 病変では通常 95% 以上と推定される. (2) 手技成功 とは上記の 造影上の成功 に加えて PCI 手技に関連した合併症 ( 後述 ) を生じなかった場 合と定義する. (3) 臨床的成功 とは上記の手技成功の結果心筋虚血が消失し, その状態が 6か月以上継続した場合と定義する. したがって, 臨床的成功 に最も大きく影響する要因は再狭窄であるが, 近年 DES の登場により再狭窄率は大きく減少した 15). ただし,DES では遅発性のステント血栓症 (LST) が報告されており 16), 標準的治療とすべきかどうかは未確立である. 3 合併症および再狭窄 手技合併症としては死亡, 急性心筋梗塞, 脳血管障害, 緊急手術, 穿刺部出血 ( 血腫形成 ), 仮性動脈瘤形成, 腎機能障害, 末梢動脈の阻血などがあり, それらの定義を表 3に示した. これらの合併症頻度はPCI 技術の進歩に伴って減少しており ( エビデンスレベルA), かつ対象となる患者, 病変, 病態, 手技内容などによって大きく変わる. したがって, 個々の症例や病態における合併症出現を提示することは困難であるが, ステントを用いたPCI 手技に関して過去の無作為試験における合併症頻度が報告されている 17). この米国における合併症頻度は死亡 0~1.1%, Q 波急性心筋梗塞 0.2~1.3%, 緊急 CABG 0~1.9%, SAT0.2~3.9% の頻度となっている. 一方, 我が国におけるPCI 合併症頻度は1997 年におけるPCI の実態に関する大規模調査で院内死亡は0.4%, 急性心筋梗塞は1.8 %, 緊急 CABG は0.5% と報告されている 18). また2006 年日本心血管インターベンション学会の調査では待機的 PCI 施行例における院内死亡は0.05%~0.2%,Q 波急性心筋梗塞は0.27~0.38% であり, その他緊急 CABG を含む重大合併症頻度は0.38~0.71% と報告されている (2006 年学術総会における掲示データ ). なおステント血栓症についてはDES が使用されるようになりSAT のみならず遅発性ステント血栓症が問題となっている 19). 我が国においてもステント血栓症の実態が報告されており,DES の1つであるSES を適用した症例において確実なステント血栓症頻度は植込み1 年後で0.54%,2 年後で0.77% であった. この研究において1 年以後のステント血栓症はチエノピリジン抗血小板薬とアスピリンの両者を中止した症例において2.1% と頻度が多くなっており, 少なくとも1 剤の抗血小板薬を継続することの重要性が指摘されている 20) ( Ⅴ. 我が国の待機的 PCI 施行患者の管理 の項参照 ). 再狭窄は 1978 年 Gruentzig による PCI の臨床応用以来 21),PCI のアキレス腱と言われ, 大きな欠点と認識さ 16

17 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 表 2 低リスク, 高い初期成功率 (Type A) 狭窄長 <10mm 病変形態による PCI 手技の難易度予測 求心性病変病変まで到達することが容易病変セグメントの屈曲が軽度 (45 度未満 ) 病変の辺縁が整石灰化なし ( または軽度 ) 完全閉塞ではない入口部病変でない閉塞予防すべき側枝が分岐していない血栓性陰影を認めない中等度リスク, 中等度の初期成功率 (Type B) * 狭窄長が10 ~ 20mm 偏心性病変病変近位部の蛇行が中等度病変セグメントの屈曲が中等度 (45 度以上で90 度未満 ) 病変の辺縁が不整中等度または高度の石灰化完全閉塞病変であるが閉塞期間は3か月以内入口部病変閉塞予防すべき側枝が分岐している血栓陰影が認められる高リスク, 低い初期成功率 (Type C) 狭窄長 >20mm 病変近位部の蛇行が高度病変セグメントの屈曲が高度 (90 度以上 ) 3 か月以上の閉塞期間または病変前後間を結ぶ側副血行を有する完全閉塞病変閉塞予防できない大きな側枝が分岐している変性した静脈グラフトで脆い病変 *B 型病変の因子が単一または複数によりB1またはB2と記載する れてきた. この問題に対していくつかの薬物において再狭窄抑制効果があると報告されてきたが, 現在に至るまですべての薬物の有効性は広く認識されるには至らず, 未確立である 22),23). 一方, ステントによる再狭窄抑制効果は多くの前向き試験によって確認されており, POBA 単独治療では約 40% 前後であった再狭窄率はステントにより 20~30% 程度の再狭窄率へと減少した 24)-26). さらにDES が開発されるに及び再狭窄率は10% 以下へと減少している 15),27) ( エビデンスレベルA, Ⅶ. 我が国のDES の項参照). 一般に再狭窄率は病変形態や糖尿病, 慢性維持透析などの様々な要因の影響を受けることが知られているとともに, 手技の結果として残存狭窄を少なくすることができれば再狭窄率は低くなると考えられている (the bigger, the better 仮説 28) ). 4 生活習慣の管理 薬物療法 欧米と我が国の違い 安定 CAD に対し, 抗狭心症薬と長期予後改善薬の投与ならびに喫煙 高血圧症 糖尿病 脂質異常症 運動不足等のリスクファクターの管理が, 冠血行再建術の有無にかかわらず必須である. しかし欧米と我が国では薬 29) 物療法にかなりの違いがある. 例として COURAGE 試験とJSAP 試験 30) および CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry 研究 12) における薬物療法内容を表 4で示す. スタチンの使用がCOURAGE 試験で多いが, これはJSAP 試験や CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry 研究では高脂血症患者のみに投与されたのに対し,COURAGE 試験では LDLコレステロールを60~85 mg/dlにコントロールするプロトコールのためである. アスピリン等の抗血小板薬は欧米ならびに我が国でともにほぼ全例に用いられて 17

18 合併症内容 死亡 心筋梗塞 定義 当該入院期間中の死亡 以下の 2 項目のいずれか 1 つを満たした場合 表 3 PCI 合併症の定義 (1) 心電図にて ST 上昇を示し, 少なくとも連続する 2 つ以上の誘導で新しい Q 波を認める. または新たな左脚ブロックを認める (2) 心筋逸脱酵素または指標の異常高値 ;CK または CKMB が正常上限の 3 倍以上の高値を示す CABG 当該入院期間中に行った CABG で, 以下のカテゴリーがある. 脳血管障害 末梢血管障害 出血 閉塞 解離 仮性動脈瘤 動静脈瘻 腎不全 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 待機的 CABG 準緊急的 CABG 緊急的 CABG 救命的 CABG 24 時間以内に発生した脳血管障害に起因すると判断される神経学的異常 CABG 日程を後日に設定しても差し支えない場合 待機的と緊急的 CABG の中間的状況 現に心筋虚血が進行している場合, またはショックとなった場合 CPR を実施しながら手術室へ搬入する場合 輸血を必要とするか, または長期入院を余儀なくされる動脈または静脈からの出血. 通常 3g/dL 以上のヘモグロビン値の低下を認める. 穿刺部位からの出血では後腹膜への出血または局所出血で 10cm 以上の血腫を生じた場合 外科的修復を必要とする血管閉塞 穿刺部位における血管の断裂 血管造影または超音波法によって確認された仮性動脈瘤 血管造影または超音波法によって確認された動静脈瘻. 通常は血管雑音を伴う 術後の血清クレアチニン値が 2.0mg/dL 以上, または前値の 50% 以上の増加, または人工透析を必要とした場合 いる. 欧米と比較し, 我が国では長時間作用型 Ca 拮抗薬, K ATP チャネル開口薬,ARB の使用が多いのに対し, 欧米ではβ 遮断薬, およびACE 阻害薬の使用が多い. 長時間作用型硝酸薬の使用は欧米と我が国で同程度である. ACC/AHA/SCAI2005 ガイドラインに記載されているように, 欧米ではβ 遮断薬は安定 CAD 患者に対する第一選択薬であり, 我が国と比較して圧倒的に使用頻度が高い. 一方, 長時間作用型 Ca 拮抗薬の使用頻度が我が国で多い理由は我が国での冠攣縮患者の多さを反映し, 冠血管拡張作用を期待したものである. このことは, 我が国のβ 遮断薬と長時間作用型 Ca 拮抗薬の無作為比較試験であるJBCMI 研究 ( 表 5) によって裏づけられている 31). Ⅲ 我が国の施設 施行医基準 1 背景欧米と比較した我が国のPCI の特徴は小規模施設での PCI が多いことであるが 10), そのためにPCI に伴う合併症が我が国で多いわけではない ( Ⅱ-3. 合併症および再狭窄 の項を参照 ). 一方, 我が国には以下に示す施設基準があるが, 最近, 欧米で発表された後述する新しい施設 施行医基準とはかなり異なっている. 18

19 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 表 4 欧米 (COURAGE 研究 ) と我が国 (JSAP 試験および CREDO-Kyoto 研究 ) での安定 CAD に対する薬物療法の比較 COURAGE (%) JSAP (%) Credo-Kyoto (%) アスピリンまたは他の抗血小板薬 長時間作用型 Ca 拮抗薬 β 遮断薬 長時間作用型硝酸薬 ACE 阻害薬 ARB スタチン K ATP チャンネル開口薬 N/A * (* はpersonal communicationによる ) 31) 表 5 日本人を対象とした心筋梗塞後長期予後 :Ca 拮抗薬とβ 遮断薬の効果の比較心筋梗塞後のMACE の2 次予防に対する効果はCa 拮抗薬とβ 遮断薬で有意の差がない. 一方, 心不全や冠動脈攣縮はCa 拮抗薬群でより少ない. β 遮断薬群 Ca 拮抗薬群 p 値 初期エンドポイント 心血管死 非致死性再梗塞 不安定狭心症 冠攣縮による不安定狭心症 非致死性脳卒中 他の心血管イベント 心不全 厚生大臣の定める施設基準に係る届出に関する取扱い 1 PTCA(PCI: 経皮的冠動脈形成術, 経皮的冠動脈血栓除去術及び経皮的冠動脈ステント留置術 ) の施設基準 (2000 年 5 月 22 日保険医発 86) 32) (1) 循環器科の経験を 5 年以上有する医師が 1 名以上 勤務している. (2) 当該医療機関が心臓血管外科を標榜しており, 心臓血管外科の経験を5 年以上有する医師が常勤している. ただし, 心臓血管外科を標榜しており, かつ, 心臓血管外科の経験を 5 年以上有する医師が1 名以上常勤している他の保険医療機関と必要かつ密接な連携体制をとっており, 緊急時の対応が可能である場合は, この限りではない. 2 経皮的冠動脈形成術 ( 高速回転式経皮経管アテレクトミーカテーテルによるもの )(PTCRA) の施設基準 (2010 年 3 月 5 日保険医発 0305 第 3 号 ) 33) (1) 循環器科及び心臓血管外科を標榜している病院で あること. (2) 開心術又は冠動脈, 大動脈バイパス移植術を年間 30 例以上実施しており, かつ, 経皮的冠動脈形成術を年間 200 例以上実施していること. (3)5 年以上の循環器科の経験を有する医師が1 名以上配置されており,5 年以上の心臓血管外科の経験を有する常勤の医師が1 名以上配置されていること. 3 ACC/AHA/SCAI2005ガイドラインでの施設 施行医 34) 基準 1 クラス Ⅰ (1) 待機的 PCI は, 心臓外科を併設する年間 PCI 数 400 件以上の大規模 PCI 施設で, 少なくとも年間 75 症例 19

20 以上施行している施行医で行われるべきである ( エビデンスレベルB). (2)PCI の実施施設はピアレビューを行う持続的手段を確立すべきである. これは米国での基準値となる統計値と比較して評価するべきであり, 有害事象発現率の検討と手技上の合併症に関する症例検討を含むべきである ( エビデンスレベル C). (3)PCI 実施施設は公認のPCI データ登録研究に参加し, 基準値との比較を行うべきである ( エビデンスレベルC). 2 クラス Ⅱ a 心臓外科を併設する年間 PCI 数 200 件 ~400 件までの小規模 PCI 施設では, 少なくとも年間 75 症例以上施行している施行医で行われるのが合理的である. また, 心臓外科を併設する年間 PCI 数 400 件以上の大規模 PCI 施設では, 年間 75 症例以下しか施行していない施行医であっても合理的である. 理想的には, そのような施行医は, 年間 600 件以上のPCI を行っている施設で働くべきであり, 年間 150 症例以上施行している経験を積んだ指導医の元で, 院内教育プログラムに基づき修練すべきである ( エビデンスレベルB). 3 クラス Ⅲ 心臓外科の併設に関係なく, 年間 PCI 数 200 件 ~400 件までの小規模 PCI 施設で, 年間 75 症例以下しか施行していない施行医で行われるPCI は推奨されない. 年間 200 症例以下しかPCI を施行していない施設は, 地理的な理由で十分行えないような地域でない限り, PCI を継続するべきか否か考慮する必要がある. 4 今後の課題我が国ではACC/AHA/SCAI 2005 のPCI のガイドラインで推奨できない施設基準とされている年間 PCI 数が 200 症例以下の小規模 PCI 施設が約 80% を占め, 必須とされている心臓外科を併設していない施設が 53%( 多くは年間 PCI 施行数 200 件未満の施設 ) もある 10). さらに, 年間 PCI 数が75 症例を超えるPCI を施行している施行医は,PCI 施行医全体からするとわずかである. 本ガイドライン班でも欧米のガイドラインに記載されているように,PCI 施設は心臓外科の併設や年間 PCI 200 例以上のような施設で行われるべきという意見もあった. 一方, 図 1で示すように待機的 PCI 年間件数別の重大心事故 ( 入院死亡, 緊急再血行再建 &Q 波梗塞 ) も小規模施設の方 % が悪いというエビデンスがない 35). しかしそのような推測だけで放置すべき問題ではなく, 信頼できる大規模調査によりその事実を確認すべきで,PCI を低リスクにのみ行っているために心事故が少ないとすれば, 小規模施設では高リスク患者のPCI を制限する必要がある. 事実確認の調査等今後の課題である. また, 緊急に心臓血管外科へ依頼する症例とその予後等心臓血管外科併設の必要性についての調査も必須である. 上記を含むPCI の有害事象の持続的かつ全国的調査を日本循環器学会等の主導で早急に行う必要がある. また,PCI 治療件数のみでなく,PCI 技術の質を保証することは重要であり, さらには心臓カテーテル検査の件数や内容 ( 冠攣縮誘発試験など ) なども考慮したピアレビューを定期的に行って技術を一定の水準に保つ手段を確立する必要がある. しかしながら, 具体的な実行方法については未だ問題が残っており,PCI 実技試験の評価項目と自施設における臨床成績を一定の基準に基づいて情報収集して分析する制度が必要である. このような公的な制度は学会または行政レベルで討論が必要であり, 近い将来に基準値を作成することから着手すべきと思われる. Ⅳ 背景 0.48 PCI 我が国の待機的 PCI の適応基準 我が国の PCI の発展の過程では, 技術向上に力点が置 20

21 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン かれ適応がないがしろにされていたとの批判が根強い. また一般的な適応を逸脱した治療法を選択する場合には, その治療法を客観的に評価することのできる研究環境において施行することが原則であるが, 日本においてはPCI のアウトカムを評価するためのデータ収集も十分には行われてこなかった. このような状況で日本人のデータに基づく, 日本人独自のガイドラインをエビデンスに基づいて作成することは不可能であった. PCI が臨床導入されて30 年が経過したが, この間 PCI のデバイス開発や手技は進歩の連続であった.PCI のデバイスや技術の進歩は適応の拡大をもたらし, この間の PCI の適応についての議論は常に過渡期における議論であった. 過渡期における議論の問題点は, 議論の根拠になるPCI の長期成績のデータが数年前の治療法の評価であり, 議論の時点で行われている治療法を用いた場合には結果が異なるかもしれないという可能性が常に存在していた点である. しかしながら, このガイドラインが作成されている2011 年においては, 著明な再狭窄抑制効果を有するDES も臨床現場に定着し, また従来, 成功率が60% 程度とされていた慢性完全閉塞病変の成功率も85~90% と著明な改善が報告されるようになった 36). 残された問題点であるステント血栓症の克服や再狭窄率のさらなる低下, そして慢性完全閉塞病変の成功率のさらなる向上などももちろん期待されるが, これらの進歩が実現したとしても, 適応という意味でのPCI の位置づけを大きく変えるとは考えにくい. 2 待機的 PCIの適応を考える上での原則待機的 PCI の対象となる安定 CAD とは, 不安定狭心 症や急性心筋梗塞を除外した冠動脈に器質的有意狭窄病変のあるCAD であり, 狭心症状のあるものと無症候性のものがある. 治療は生活習慣の管理, 薬物療法ならびに冠動脈血行再建からなる. 1 生活習慣の管理 薬物療法 安定 CAD に対する生活習慣の管理 薬物療法の目的は以下の2 つである. 第一はβ 遮断薬, 長時間作用型 Ca 拮抗薬,K ATP チャネル開口薬, 硝酸薬等の抗狭心症薬を用いた狭心症 心筋虚血の治療である.Ⅱ-4で述べたように欧米と比較し, 我が国ではβ 遮断薬の使用が少なく,Ca 拮抗薬が多く用いられている. これは我が国では欧米に比較し, 冠攣縮の合併が多いことによると思われる. 第二は喫煙, 高血圧症, 高脂血症, 糖尿病, 肥満, 運動不足等のリスクファクターの管理とスタチンARB に代表される抗リスクファクター薬やアスピリンに代表される抗血小板薬等を用いた長期予後の改善である ( Ⅴ -3.PCI 後慢性期の管理 の項を参照 ). また,β 遮断薬, Ca 拮抗薬,K ATP チャネル開口薬は長期予後も改善する. いずれにせよ生活習慣の管理と薬物療法は冠動脈血行再建の有無にかかわらず安定 CAD 患者に必須である. 2 生活習慣の管理 薬物療法と冠動脈血行再建療法 冠動脈血行再建療法は生活習慣の管理 薬物療法と比較し, 狭心症, 運動耐容能ならびに虚血を著明に改善する. 最近, 安定 CAD 患者の症状や虚血ならびに長期予後の改善のための生活習慣病に対する対策や薬物治療は著しく進歩したが, それにもかかわらずコントロールできないCAD 患者が約 1/3は存在する. このような患者には, なんらかの理由で禁忌でなければ, 冠動脈血行再建療法が必要となる. すなわち生活習慣の管理 薬物療法のみの限界は明らかで,PCI やCABG との併用療法が必要である. 上記の併用療法は以下の2つに分かれる. 生活習慣の管理と薬物治療のみではコントロールできないことが判明した症例に後から冠動脈血行再建療法の追加を行う初期内科治療と初めから冠動脈血行再建療法も併用する PCI 先行治療またはCABG 先行治療である. 低リスクCAD に対する初期内科治療とPCI 先行治療の長期予後を比較すると死亡率については差がないことですべての報告で一致している 29),30),37)-41). しかしACS 等のMACE については両者に差がないとする多くの欧米のデータと我が国のJSAP 試験や欧米のSWISSI ⅡのようにPCI 先行治療の方が良好とする異なる結果の報告がある 29),30),37). 前者の立場からは初期内科治療が推奨されるが, 後者の立場からはPCI 先行治療が推奨される. 3 日本人のデータに基づく PCI 適応基準 既に述べているように, 生活習慣の管理 薬物療法はすべての安定 CAD 患者にとって第一選択である. 特に冠攣縮が疑われる患者には長時間作用型 Ca 拮抗薬, K ATP チャネル開口薬, 長時間作用型硝酸薬の単独または併用療法が必要である. また, 狭心症発作時には短時間作用型硝酸薬を舌下投与する. 21

22 1 低リスク CAD 患者 29) 欧米のCOURAGE 研究等とは異なり, 我が国初の PCI 先行治療と初期内科治療の無作為比較試験である JSAP 試験 30) の結果は我が国で一般的に行われている低 リスク CAD 患者に対する PCI+ 薬物療法を支持するもの であった. しかし我が国では複数の臨床研究はまだない. そこで我が国のガイドラインでは PCI 先行治療と初期内 科治療の両者を並列とする. 狭心症状や虚血の比較的軽度の患者を初期内科治療でフォローすることは妥当であり, 他方, 狭心症状や虚血の存在が明確な患者にPCI 先行治療を施行し症状改善のための薬剤の減量を計るという方針も適切である. 一方で, 生活習慣の管理 薬物療法でコントロールできない狭心症や虚血を持つCAD 患者を薬物療法だけでフォローする治療法は冠血行再建術が不適応な患者以外支持されない ( エビデンスレベルC: 専門家および小規模臨床試験, サブ解析結果等で意見が一致しているもの ). 2 虚血が証明されていない患者 虚血がないことが証明されている患者には PCI の適応 はないと言える. これは AHA/ACC/SCAI ガイドライン の基本理念であり, 日本の診療環境においても同様に適用すべき原則である. 現時点では近い将来に心筋梗塞の責任病変となる可能性の高いプラークを高い精度で同定することは不可能であり, 虚血の原因とならない不安定プラークに対するPCI の施行は研究段階であり, 一般臨床としては正当化されない. 3 PCI/CABG の適応 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術 (PCI/ CABG): ステートメント & 適応 ( 冠動脈血行再建術協 議会 ) の項を参照. Ⅴ 1 背景 我が国の PCI 施行患者の管理 PCI 後の患者管理においてまず必要なことは,PCI 直 前から, 退院 外来における二次予防のためのトータルケアである. この項では, 再狭窄 ( Ⅵ. 我が国のPCI 再 狭窄 の項参照 ) とDES( Ⅶ. 我が国のDES の項参照) に関する項目以外の一般的に認識されるべき項目について記述する. PCI 後, 急性期の虚血性イベントを早期に察知するため, 心筋虚血をモニターすることが必要である. また, 治療時に造影剤を使用しているため, 造影剤により惹起される腎機能障害を早期に発見し, 予防対策を行うことおよびシースを抜去し止血が確実に行われたことを観察する必要がある. 長期的には, アテローム性動脈硬化を基盤とする MACE の二次予防に努めなければならない. そのためには, 患者本人はもとより家族に対し虚血性心臓病の病態や, その予後を改善するための生活習慣の改善と薬物治療について繰り返し説明し, 理解をさせていく必要がある. 2 PCI 後の管理 ( 急性期 ) 1 出血性合併症と血管合併症 大部分の患者は待機的 PCI 後数日以内に退院が可能である. 近年, クリニカルパスの導入により, 入院期間の標準化 短縮が進んでいる. 橈骨動脈または上腕動脈アプローチ 42) によるPCI は, 待機的 PCI 患者の入院期間をより短縮させる 43),44). 出血性合併症については, 十分注意しながら抗凝固療法, 抗血小板療法を継続する. 抗凝固療法により血管合併症はPCI 後に14% の患者に起こるが, 外科的処置を必要とする患者は3.5% である 45). さらに, シースサイズの小さいものを使用しヘパリン投与量を減らすことで, 血管合併症の発生を減少できる 46)-51). 血管合併症に関与する要因は, 線維素溶解または抗血小板療法の併用, 閉塞性動脈硬化症の合併, 女性, シース抜去の遅れ, ヘパリンの長期使用と高齢者である 42),47),49)-53). また, 大腿動脈アプローチでは, 発生時に圧迫止血をするなどの早期の対処だけでなく, 後腹膜血腫に対する注意も必要であり, 血圧低下, 下腹部痛, 背部痛が出血症状として重要である 53). 上腕動脈アプローチでは, 上腕動脈に血腫が生ずることがあり, 橈骨動脈の拍動触知不良と正中神経麻痺症状がある場合には早期に外科的処置が必要となる. PCI 後にHtやHb の明らかな低下が認められた際には, 大きな出血源についての検索が必要であり, 後腹膜血腫の可能性も考えられる. 後腹膜血腫の診断にはCT が有用であり,80% 以上の患者は保存的に治療可能で 22

23 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン ある 53). 仮性動脈瘤が発症した患者では, 抗凝固療法が中止可能であれば超音波ガイド下の圧迫が有用である 52),54),55). 動静脈瘻の大部分は局所のスリルや連続性雑音によって発見される. 一般に, 穿刺を繰り返した時に動脈と静脈を同時に穿刺してしまう危険性が高くなり発症するため, 穿刺時に十分な注意が必要である. また, 仮性動脈瘤や動静脈瘻は, 大腿動脈以外の浅い部分のシース挿入により発生することが多い 56). 最近使用されている穿刺部の動脈圧迫システムや止血デバイスにより血管合併症発生率を減らすことができる (VasoSeal TM, AngioSeal TM,PerClose TM ) 42),57). 2 造影剤使用後の腎機能障害 既存の腎不全, 糖尿病や脱水傾向の患者は, 腎機能障害悪化の危険性があり, 造影剤による腎機能障害を十分にモニタしなければならない. 造影剤腎症は通常,PCI 後 72 時間以内に血清クレアチニン値が25% 以上または 0.5mg/dL 以上の上昇をもって定義される. さらに,PCI 後に72 時間以内に高浸透圧または再度造影剤が使用された患者とIABP を留置している患者でも, 特に腎機能に注意する必要がある. 造影剤による腎機能障害の予測因子としては, 血圧低下,IABP の使用, 心不全, 慢性腎不全, 糖尿病,75 歳以上の高齢者, 貧血, 造影剤量の8つの因子があり, これらの要素によるリスクスコアが欧米ではなされており, 我が国においても今後検討が必要と考えられる 58). 腎毒性の高い薬剤 ( 特に抗生物質, 非ステロイド性の抗炎症剤とシクロスポリン ) やメトホルミンはPCI 前 48 時間以内には中止が望ましい. 造影剤による腎機能障害の防止に関するデータはまだ確定的なものはないが,PCI 前からの補液負荷などの処置や重炭酸ナトリウムの補液による前処置がハイリスク患者に有効と考える 59)-61). 3 PCI 後の胸痛および心電図変化 PCI 前後においては, 症状の有無にかかわらず12 誘導心電図 (ECG) を記録し比較する必要がある.PCI 後に胸痛を認めた場合には,ECGモニターおよび12 誘導 ECGで即座に所見を確認する. 虚血性 ECG 変化を認めた場合には, 急性冠閉塞, 血栓閉塞を考え 62)-64), 再度冠動脈造影を施行し, 追加治療を行うことも考慮する. 急性冠動脈閉塞関連因子としては,70 歳以上, 広範囲残存虚血, 急性冠動脈症候群と低心機能 (EF 30% 未満 ) が知られている 62)-64). 4 CK の上昇 PCI 後,CK またはCK-MB の有意な上昇またはECG 異常は5%~30% の患者に起こる 62).PCI 後のCK 上昇は, 側枝閉塞, 末梢塞栓, 解離やスパスムによる 64). また, Kong らは,CK 上昇は心臓死 心筋梗塞発生の独立予測因子で, 高度 CK 上昇群で心臓死亡率が有意に高かったとしている 65),66). 3 PCI 後慢性期の管理 1 冠危険因子の管理 冠危険因子の管理のためには, 心筋梗塞二次予防ガイドライン 67) を参考にし, 血清脂質の積極的低下療法, 抗血小板療法, 高血圧のコントロール, 糖尿病の管理, 禁煙, 体重管理, 定期的な運動,β 受容体遮断薬使用とレニン- アンジオテンシン- アルドステロン系の抑制薬 (ACEI,ARB) が推奨される. 日本人は近年までCAD に代表される動脈硬化性疾患の発症が比較的少ない民族であった. しかし, 最近の調査では, 食事 運動などの生活習慣の変化に伴い日本人のLDL-C 値は増加傾向にある.LDL-C 値が上昇するとともにCAD の相対リスクが連続的に上昇することは我が国においても確認され,CAD の発症率の増加が考えられる. 日本動脈硬化学会の2007 年ガイドラインでは, CAD を発症しカテゴリー Ⅲ( 高リスク群 ) に分類される患者では,LDL-Cを100mg/dL 以下にコントロールすることが推奨されている 68).PCI 後の脂質低下療法と MACE についての我が国の報告では, 急性心筋梗塞症例を対象としたMUSASHI AMI によりスタチン投与による予後改善効果が示されている 69). 低 HDL-C がPCI 後の予後を悪化させること, スタチンがPCI 後の予後を改善することが報告され,LDL-CのみならずHDL-C を含めた脂質管理が重要である 70). また, 血管内超音波を用いたプラーク容積の検討でプラーク量およびその変化と心血管イベントが相関することや 71), 我が国の慢性期のPCI 後の患者でスタチンがプラーク退縮 安定化作用をもつことが示唆されている 72),73). 当然, 糖尿病の適切な管理も重要である 72),73). 2 運動負荷試験 PCI 後の運動負荷試験は, 運動耐容能と再狭窄による心筋虚血を把握するのに有用である. 運動時負荷試験中に, 虚血性変化が見られた患者のうち25% は無症候性 23

24 で, 胸痛などの症状から再狭窄を把握することは不十分である.ACC/AHA ガイドランでも, 特にハイリスク患者 (LVEF 低下, 多枝 CAD,LAD 近位部狭窄, 突然の心停止, 糖尿病,LMT 病変,PCI 不成功患者 ) では, 心筋虚血検出のための検査が必要とされている 74). ただし, 運動負荷 ECGでは再狭窄のうち40% から55% しか検出できないため 75)-77) 核医学的検査のSPECTを施行することが望ましいが,PCI が行われるすべての施設で可能な検査ではない. そのため, 我が国ではPCI 後 6ヵ月から8ヵ月後にCAG が施行されることも多い. 3 慢性期 CAG について PCI 後のルーチンフォローアップCAG は, 再狭窄の検出と新規病変の発見に役立つが, 適切な頻度と回数は未だ不明である. さらにその有用性を証明した報告もないが, 我が国では一般に施行されている ( クラスI, エビデンスレベルC). LMT 病変をBMS で治療したものでは,PCI 後の高い初期死亡率 (1ヵ月につき2%) が示唆されるため,PCI 後の2,4 ヵ月にフォローアップ CAG が提案されている 78) ( クラスⅡa, エビデンスレベルC). 他の患者に対しても, 3,6ヵ月の施行が望ましいとする見解もある 79),80). DES 患者に対しては4~8ヵ月での施行が有用との報告もある 81),82). 最近, 患者への侵襲のより低いMDCT などによる評価も可能となってきており, 患者の不利益にならぬように配慮しつつ, 冠動脈造影を行うことが必要である. 4 PCI に伴う抗血小板療法 クラスⅠ 1. アスピリン未服用患者では,PCI 前にアスピリン (81 ~325mg) を投与する ( 少なくとも2 時間前までの投与が望ましい ). その後,81~162mg/ 日を出血のリスクに注意して生涯にわたり継続投与する ( エビデンレベルA). 2. クロピドグレル未服用患者では,PCI の少なくとも6 時間前までにloading dose(300~600mg) を投与し, その後は, 出血リスクに注意して75mg/ 日の投与に移行することが望ましい ( エビデンスレベルA). 3. BMS 留置後やDES 留置後はアスピリン (81~ 162mg/ 日 ) とクロピドグレル (75mg/ 日 ) の併用投与が望ましい. 投与期間は, 前者では少なくとも 1 ヵ月間, 後者では少なくとも12ヵ月間程度の併用投与が推奨される ( エビデンスレベルA). 4. アスピリン服用の禁忌患者 ( アスピリン抵抗性, ア レルギー等 ) では, クロピドグレルを投与する ( エビデンスレベルB). 5. クロピドグレル服用の禁忌患者では, チクロピジン (200mg/ 日 ) を投与する ( エビデンスレベルA). アスピリンは,PCI の後で虚血性合併症の頻度を減らすことがわかっているが, アスピリン投与用量は確立されているわけではない. アスピリン療法 (75~162mg/ 日 ) を受けていないPCI 患者にはPCI 前の少なくとも2 時間以上前, 可能であれば 24 時間以上前の投与が望ましい 83)-86). また, チエノピリジン系の抗血小板薬としてクロピドグレルとチクロピジンがあるが 87)-91),CLEAN 試験 92) で明らかのように第一選択薬は副作用が少ないクロピドグレルである. 現在, ステント留置後一定の期間は, アスピリンとチエノピリジン系の抗血小板薬の併用 (Dual Antiplatelet Therapy:DAPT) が推奨されている 93)-96).DAPT の期間は,BMS で少なくとも1ヵ月以上とされるが,DES では少なくとも12ヵ月の投与が必要とされる. BASKET-LATE 試験 97) はDES 群とBMS 群を2:1に無作為に割り付け, 術後 6ヶ月でクロピドグレルを中止し, その後の心事故 ( 死亡 心筋梗塞発症 ) を比較したものである.18ヵ月における心事故は両群で差はなかったが,7ヵ月から18ヵ月の期間に限ると死亡/ 心筋梗塞発症はBMS と比較してDES 群において高率であった. またDES とBMS を比較した無作為試験における複数のメタ解析でも12ヵ月以降のVLSTはDES 群においてわずかではあるが高い傾向を示していたことから,2007 年に発表されたACC/AHA/SCAI のPCI ガイドライン改訂版 98) では,DES 使用後の無期限のアスピリン使用と少なくとも1 年間のクロピドグレル併用を推奨している. 我が国におけるDES 留置後のステント血栓症 (ARC 定義のdefinite) の発生率は,j-Cypher Registry 20) では, 30 日後 0.34%(95%CI:0.23%~0.45%),1 年後 0.54 %(95%CI:0.4%~0.68%),2 年後 0.77%(95%CI: 0.58%~0.96%) と報告され, さらにj-Cypher Registry 5 年 99) の結果から,3 年後 1.03%,4 年後 1.33%,5 年後 1.6% と, ステント血栓症の発生は収束することなく 5 年後まで増加することが明らかとなった. なお, ステント血栓症発生症例のうち,late thrombosisの13%,very late thrombsis の27% で抗血小板療法が2 剤とも中止されており, その発症要因の1つとして考えられた. 一方, Bern/Rotterdam Registryでのステント血栓症発生率は4 年で0.53%/ 年であり 100),j-Cypherでの0.26%/ 年と比較し我が国での発生率は低いと考えられるが,40% の 24

25 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 症例でDAPT が継続されていたこともその要因として挙げられている. j-cyper Registryでの血栓症の正確な成因は解明されていないが, 遅発性ではside branch,dm, 遅発性腎機能障害, 喫煙,28mm 以上のステント留置が独立した危険因子として挙げられている. ステントの特性, 抗血小板薬の関与も含めて, 今後の検討が必要とされる. アスピリンとクロピドグレルの前投薬に加え施行後 1 年間投与による効果については,CREDO 試験において二重盲検で検討された 101).PCI 患者 2,116 人の患者を対象に, アスピリン325mgに加えクロピドグレル300mg (n=1,053) またはプラセボをPCI 3~24 時間前に前投与した後に, すべての患者に対し28 日間クロピドグレル 75mg/ 日が投与された. その後, クロピドグレルあるいはプラセボを1 年間投与した. クロピドグレル前投与により28 日間ではMACEの減少を認めなかったが, クロピドグレルを12ヵ月継続することより, 死亡,MI または脳卒中を3% 減少させ (p=0.02), 相対危険度を27% 減少させた. 本試験では,PCI のステント種類などによる検討はなされていないが,12ヵ月のDAPT によりPCI 後のMACE を減少させたという結果は重要である. チエノピリジン系薬剤の薬物代謝においては, チトクロームP450(CYP)2C19の遺伝子多型が, チエノピリジン系の特にクロピドグレルの血小板凝集抑制作用を減弱させる可能性があること, さらに, 消化管出血の治療として用いられるPPI との併用によっても, 抗血小板活性を低下させることが指摘されている. しかし, クロピドグレルの代謝活性と臨床アウトカムとのメタ解析では,CYP2C19 多型とMACE の間に臨床的に有意な関連は認められていない 102),103). 近年, 我が国では高齢化も進み, 慢性心房細動を合併している患者も少なくない. 心房細動を合併している患者に対する, ステント留置後の抗血栓療法としてワルファリンとDAPT の3 者併用療法が行われている. その際のPT-INR 値は2.0 前後で管理されることが多いが, 明らかな基準はない. 今後, ワルファリン以外の新しい抗凝固薬を含めた抗凝固療法を必要とする患者に対する PCI 後の管理についてさらなる検討が必要と考えられる. 5 PCI に伴う抗凝固療法 ヘパリンとアルガトロバンクラスⅠ PCI 施行時にヘパリン ( 未分画 ) を投与する (ACT 250~400s)( エビデンスレベルC) クラスⅡa Heparin-induced thrombocytopenia(hit) に対してアルガトロバンを投与する ( エビデンスレベルB) ヘパリンは,PCI のガイドワイヤーとカテーテル操作で形成される血栓を防ぐ 104). ヘパリンによる血液凝固の阻止の強さは通常 APTTでモニターされているが, PCI 中はACTが有用である 105). ヘパリンの効果の測定は,1970 年代にCABG 時にAPTTとともに抗凝固薬の効果のモニタリング法としてACTが考案された. 以後, PCI 時のモニタリングにも使用されるようになり, 当時の CABG と同様にACTは300~400s にコントロールするのが良いことが提唱された 106). POBA の時代では,ACTが高いほど急性冠閉塞の危険が少ないという報告もあった 107). しかし, ステント時代となり,ACTは低めにコントロールされる傾向にある.2003 年のESPRIT 試験 108) は,PCI 患者 2,064 人 ( 約 20% のACS 症例を含む ) を対象とし, ステント留置の際にACTを測定してPCI が施行された. その結果, 出血性合併症と血栓性のイベントのバランスからPCI 時としてACT 200 ~250s を推奨している. その後多くの抗凝固薬の臨床試験が行われ,PCI 中のACTは200~400s でのコントロールが推奨されている (EPIC:330~ 350s,IMPAC-II:300 ~ 350s,RESRORE: 300 ~ 400s,EPILOG:300s,EPISTENT:300s,ESPRIT: 200~300s). 一方, 我が国の 循環器疾患における抗凝固 抗血栓療法に関するガイドライン (2009 年改訂版 ) 109) では,PCI 施行時のACT 250s 以上が推奨されている. しかし,ACT 400s 以上となると, 出血性合併症が増加する事が報告されていることから 45),PCI 中は ACT 250~400s にコントロールすることが望ましい. 初期投与量として, ヘパリン ( 体重 1kgにつき70~ 100IU) が推奨される. 初回のボーラス投与で, 目標 ACTに到達しない場合, 追加的にヘパリン投与 (2,000 ~5,000IU) を行う. また, シース抜去はACTが150~ 180s 未満に低下したときに施行する. アルガトロバンは我が国で開発された抗トロンビン薬であり,HITに対する有用性が報告されている 110). しかし, アルガトロバンのHITに対する有効性に関する大規模試験はなく, 海外で行われた非ランダム化 前向き試験により有効であったと報告されているのみである. Lewisらは,304 例のHITの患者に対して, アルガトロバン2μg/kg/minをボーラス投与し, その後持続静注によりAPTTをコントロールする方法と, 経口抗凝固薬による治療との比較を行った. その結果,30 日予後にお 25

26 いて, アルガトロバンは死亡, 血栓症ともに有意に減少させた 111). また, 同グループから, さらに418 例のHIT を対象にした, 他施設, 非ランダム化, 前向き試験の結果も報告されている. その結果, アルガトロバンは37 日間の予後において, 死亡, 血栓症の発生を有意に減少させた 112). アルガトロバンは, 我が国ではHITに対する治療薬として保険承認されている. 循環器疾患における抗凝固 抗血栓療法に関するガイドライン (2009 年改訂版 ) 109) では,HITに対してアルガトロバン100μg/kgを3 ~5 分かけてボーラス投与後 6mg/kg/ 分で持続投与を開始し, 投与開始から10 分程度でACTを測定することとしている. その後も抗凝固療法の継続が必要な場合は, 0.7mg/kg/ 分に減量し静脈内持続投与する. しかし, 我が国ではHIT 治療薬として保険承認されているものの, PCI そのものに対する保険適応はないので注意が必要である. Ⅵ 我が国の PCI 再狭窄 1 背景 これまで我が国では多施設共同大規模臨床試験が行われにくく, 日本では無作為試験が困難な心理的 文化的背景があり, 日本のPCI 再狭窄のデータに関してもエビデンスレベルの高いデータは現在のところ皆無に等しい. したがって本ガイドラインにおける再狭窄抑制の様々な試みに対する推奨クラスとエビデンスレベルはレジストリー研究を中心とした日本のデータを参照しつつ, 主として海外データに基づいて設定した. 2 POBA の適応は現在限定されたものとなっている. POBA 後の再狭窄の原因として新生内膜の増殖と血管外径の縮小すなわち陰性リモデリングあるいはリコイルが挙げられる 117) ( 図 2).POBA は冠動脈壁に損傷を与え, それに対し炎症反応や血栓形成が起こり, 血管平滑筋を中心とした細胞増殖と細胞外基質の分泌を生じ, それが新生内膜となる. また血管中膜と外膜へのダメージは収縮を引き起こし, 血管外径の縮小につながり,POBA の場合はそのリモデリングと呼ばれる収縮の比率が新生内膜の増殖に比べて大きいとされている 117). 2 POBA 後再狭窄の因子 POBA 後に再狭窄を引き起こしやすい予測因子は数々報告されている. そのうち最も再狭窄の頻度が高いとされるのが,LAD 病変 116), 糖尿病 115),116), 高血圧 113), 不安定狭心症 113), 高圧拡張を必要とする病変 114), 多数回に分けて拡張しなければならない病変 115),116) などであり,3か月程度の早期に再狭窄となることが多いと言われている 118). また再狭窄を繰り返す症例には, 病変長が長く高度狭窄を有することが認められると報告されており 119), 再狭窄を繰り返す患者の問題点が明らかとなっている. 1POBA 後再狭窄の管理戦略再狭窄病変の再拡張でも再狭窄となるのは32% と言われ 120),3 回までの手技で93% の病変は開存が得られるという. したがって再治療を繰り返せば対応できることが多いわけであるが, 再狭窄に対して冠動脈ステントを使用することは,POBA と比較して有効とのデータがある.REST 試験 (REstenosis STent Study) は351 人の再狭窄患者をPOBA とPalmaz-Schatzステントにランダマイズした臨床試験であるが, ステントは18% とPOBA の32% に対して有意な再狭窄減少効果を示した 121). 以上のことをふまえるとPOBA 後の再狭窄に対する治療戦略は以下のようになる. 1 POBA 後の再狭窄の原因と背景 1977 年に始まったPOBA は, 再狭窄率が32~40% と高くみられ 24),25), 再治療の頻度が高いことが問題とされてきた.POBA 後の再狭窄に対する治療は, 新規病変に対する再狭窄リスクと同等であるとされており 113),114), 再狭窄のエピソードの度に症状の悪化がみられるとの報告があり,3 回目の再狭窄の時には50% 以上の再 PCI を必要とするとのデータもある 115),116). したがってPOBA クラスⅡa POBA 後の再狭窄に対しては病変形態が適しているならステント使用を考慮すべきである.( エビデンスレベルB) 26

27 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 図 2 再狭窄の発生メカニズム 3 BMS 1 BMS 留置後再狭窄の背景と因子 初めて再狭窄抑制の有効性が証明され,PCI における標準治療となったのが冠動脈ステントであり, ステントの開発とその進歩によって解離や急性冠閉塞による緊急 CABG などの重大な合併症も減少した.STRESS/ BENESTENT の2つの無作為試験において初めてPOBA に比較して再狭窄の減少が示され 24),25), その後も再狭窄抑制のデータが示されていった 122)-125). ステント植込み後ステント内再狭窄となりやすい要素としては小血管 126), 小さな術後最小血管内径 127), 高い残存狭窄率 128),LAD 病変 24), 長いステント長や糖尿病などが挙げられている 121),126)-129). ステント内再狭窄はステント内の新生内膜あるいはステントエッジの新生内膜増殖およびリモデリングによって起こるとされ, 古典的にはPalmaz-Schatzステントでは2つのパートのつなぎ目であるアーティキュレーションに内腔の減少が多いことが示され, 一方で複数ステントを使用した際のオーバーラップ部は内腔が保たれると報告されている 130). 2 我が国における BMS 再狭窄 我が国での冠動脈ステントは, 冠動脈 PCI の歴史の中で画期的なことに米国に先駆けて承認され,1994 年に 保険償還された. したがって早期より再狭窄抑制の効果が示されてきた 131),132). 冠動脈ステントの長期成績や血管内径の経時的変化などについては, 日本から明らかにされることも少なくない 133).6ヶ月を過ぎるとBMS の場合血管径は安定し, むしろ新生内膜は退縮することが示されており,BMS 植込み後の再狭窄を評価するための再検査は6ヶ月で良いとされている. BMS は再狭窄抑制の観点ではそれまでの他のデバイスよりも優位性を示したが,DES の登場によりその立場は変化した. 実際の臨床現場では,BMS 植込み後も再狭窄率は20% 以上存在し, 病変によってはさらに高い再狭窄率となり, なかでもステント内にびまん性の再狭窄を繰り返す極めて難治性の病態が存在する. したがって再狭窄抑制の観点からはDES をBMS の代替治療として中心に据えていく必要があろう. 4 DES による再狭窄抑制 Ⅶ. 我が国のDES の項を参照. 5 その他の再狭窄抑制の試み 1 薬物療法による再狭窄抑制 クラスⅡa BMS を中心としてPCI 後の再狭窄抑制のためにシロ 27

28 スタゾールを使用する ( エビデンスレベルA). クラスⅡb- Ⅲ PCI 後の再狭窄抑制のためにシロスタゾール以外の薬剤を使用する ( エビデンスレベル B). POBA における再狭窄抑制の試みは, 主として薬剤によって行われた. 全身投与の他, バルーンによる局所投与も試みられた. 全身投与で有名となったのはプロブコールである 22). プロブコールは抗酸化作用によって POBA 後のリモデリングを予防すると言われ, 期待された. 日本からもすぐに追試が行われ, 同様の有効性を示した 134). しかしPOBA のみで終了することが安全性の点から少なくなったこと, またその後の追試によってその効果が否定されたことなどから, プロブコールによる再狭窄抑制の試みは普及をみなかった. さらに日本からはトラニラストの投与による再狭窄抑制が示されたが 23),135), これもPRESTO study 136) によって否定された. これは薬剤の副作用率が高く, 十分量の薬剤を投与できない患者が多かったことも影響しているものと思われる. スタチンや ACE 阻害薬など基礎実験では期待された薬剤も, 全身投与の量では全く効果を得られなかった 137). 局所投与をはかるためローカルドラッグデリバリーのバルーン (Dispatchなど) が開発されたが, むしろ血管壁の損傷を強め, 薬液を局所に留めることが難しく, 再狭窄抑制に成功したものはなかった. そういった状況の中で, 今まで再狭窄予防のエビデンスがあると言えるのが, シロスタゾールである. 日本, 韓国を中心として, いくつかの再狭窄抑制を目的とした臨床試験で有意にBMS 再狭窄率を低下させることが示されてきたが 138)-144), 米国で行われたCREST 試験 145) は 705 例の大規模な多施設無作為比較試験であり, 数少ないBMS 再狭窄抑制における有効性を示すことに成功した臨床試験である. 最近発表されたメタアナリシスでは再狭窄および再血行再建の抑制において有用である可能性があると結論されている 146).DES に対する再狭窄抑制においてもシロスタゾールの有用性を示すデータも発表されており 147)-149), これらのデータを鑑みると薬剤による再狭窄抑制についてのエビデンスはシロスタゾールのみに存在するといえる. 2 アテレクトミーによる再狭窄抑制 クラスⅡb-Ⅲ 再狭窄抑制のためにPTCRA を使用する ( エビデンスレベルB). 再狭窄を克服するために数多くのデバイスが開発さ れ, アテレクトミー, レーザーなど 1990 年代前半にニ ューデバイスと呼ばれる道具が次々と市販された. しかしPOBA に比較しても再狭窄率において有意に改善できるデバイスはなく, 導入された初期こそ注目されたが, 広く一般的に使用されるに至らなかった. 一般にこれらニューデバイスと言われるメカニカルな修飾を加えるインターベンションは拡張を十分にすることが可能で, 再狭窄反応の抑制にはつながらないが, 内腔を十分に得て, その分フォローアップでも大きな内腔を得るという the bigger, the better の考え方が定着する元となった 150). 日本には欧米で使用された数年後にニューデバイスが承認されることが多く, 例えばPTCRA は石灰化病変に対する成功率の向上のためには有効であり, 一定の割合で必要なデバイスであるが,PTCRA の使用が世界で報告されたのは1991 年で, 日本で承認されたのは1997 年であった. 日本で使用可能となったときには, いくつかの無作為試験でも再狭窄抑制を示すことができず, 再狭窄抑制に有効なデバイスという位置づけは得られなかった 151)-157). しかし, 透析患者をはじめとした高度石灰化病変に対して必要であるという点では一定の地位を確立している 158). なお,DCA は2008 年に販売中止となったため, また, エキシマレーザーによるPCI は, 日本では正式承認されておらず, 高度先進医療の枠組みの中で一部の施設で使用されている状況にあるため対象から除外した. 6 血管内超音波 (Intravascular Ultrasound:IVUS) ガイドによる PCI クラス Ⅱa 1. 適切なステント拡張の評価, ステント圧着の確認, ステント最小血管径の確認を行う ( エビデンスレベ ル B). 2. ステント再狭窄の原因となっているメカニズムを確 認し, 適切な治療法を選択するために用いる ( エビ デンスレベル B). 3. 血流障害があると疑われるが血管造影で狭窄の確認 が困難な場合に評価のために用いる ( エビデンスレ ベル C). 4. PCI の結果が十分であるかを評価するために用いる ( エビデンスレベル C). 5. PTCRA を使用した際に石灰化の程度と分布を評価す るために用いる ( エビデンスレベル C). 28

29 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 6. DCA を施行する際にプラークの方向や局在を確認するために用いる ( エビデンスレベルB). クラスⅡb 1. 明らかな狭心症状や負荷 ECG 検査陽性だが血管造影上有意な限局性の狭窄を認めないときに動脈硬化病変の程度を評価する ( エビデンスレベルC). 2. 適切なデバイスを選択するために術前の病変性状や血管径を評価する ( エビデンスレベルC). 日本では早くから保険償還されたこともあり, 世界の中でもIVUS 使用頻度は著しく高い. 最近ではACC/ AHA/SCAI のガイドラインにも明記され 35), 米国でも IVUS 使用の際のDRG( 包括医療システム ) に記載されるようになっており, 前記の推奨にあるように, 病変や PCI の評価を行う画像診断装置として一定の地位を確立したと言える. IVUS の有用性がクローズアップされたのがチクロピジンによる抗血小板療法と組み合わせることによって大幅にステント血栓症を減少させることができるという報告で 159), その頃からステント内再狭窄抑制の試みにも用いられるようになっていった 160),161). ステントはそのリコイルとリモデリングを防ぎ, 術直後の血管径を大きくとることが可能である. 新生内膜の増殖はPOBA と比較してむしろ多いとされているが, 急性期の血管径の獲得の程度がPOBA に比べてさらに上回るため, 慢性期の最小血管径は依然としてステントが大きく保たれ, 再狭窄率は減少する 162). したがってステントで再狭窄を減少させるには十分な拡張を得ることが前提となった.IVUS をガイドにして十分な拡張を行うことによって低い再狭窄率あるいは再血行再建率となることも一部の臨床試験で示されたが 163),164), ガイドラインとして再狭窄予防のためのデバイスとして記載できるほどのデータ, エビデンスは揃っていない. さらにDES の時代になって, エンドポイントである再狭窄や再血行再建の発生頻度が少ないため,IVUS を用いて再狭窄抑制の臨床試験を行うことは困難となった. 一方で DES を使用しても, 不十分拡張は再狭窄のリスクとなるばかりか 165), ステント血栓症のリスクにもなる 166). この拡張不十分を評価するためやもう一つのステント血栓症の原因であるステント圧着不良 167),168) :incomplete apposition) を防ぐための用途 169),170) として使用が推奨されることが多い. 7 ステント内再狭窄 (in-stent restenosis;isr) 病変に対する治療戦略 クラスI BMS のステント内再狭窄病変に対し再治療する際に DES を留置する ( エビデンスレベルB). クラスⅡa DES のステント内再狭窄病変に対し再治療を要する場合に, 再度 DES を使用する ( エビデンスレベルC). クラスⅡb BMS のステント内再狭窄病変に対し再治療をする際にカッティングバルーン等を使用する ( エビデンスレベルA). ステント治療は,POBA の結果次第でステントを留置するかどうかを判断するのではなく, はじめから計画的にステントを留置する戦略をとる方が良いことが示されており 171)-173), これによってステント留置例数が増加したことから, ステント内再狭窄の克服の重要性が増してきた. ステント内再狭窄病変には再々狭窄率が高い病変形態があることが知られている 174),175). 特に, 再々狭窄率が10% と低い限局性形態 (focal), 再々狭窄率が25 % のびまん性形態 (diffuse intrastent= 病変長 10mm 以上であるがステント内のみ ), 再々狭窄率が50% の増殖性形態 (diffuse proliferative= 再狭窄がステント外におよぶもの ), そして再々狭窄率が80% と高い完全閉塞形態 (total occlusion) に分類するMehranの分類が代表的である 174). 1 ステント内再狭窄に対する POBA 治療 POBA はステント内再狭窄に対する治療として標準的 に行われてきた 176)-178). ステント内再狭窄に対する POBA の治療効果はステントの再拡張, ステントストラ ット内に張り出してきている組織のステント外への押し出しが考えられるが,56% 程度がステントの再拡張によると報告されている 176). 再々狭窄率については, 前述のように再狭窄の形態やステントサイズ ( 径および長さ ) によって成績が異なると言われており 174),179), 径の小さくないステントで限局性の病変であれば,POBA 治療も十分選択肢に入ると考えられる. 29

30 2 POBA,DES を除く PCI デバイスを用いたステント内再狭窄に対する治療 アテレクトミーをはじめとした他のデバイスを使用したステント内再狭窄に対する成績では, 一部カッティングバルーン等で造影上のメリットが得られる可能性も示されたが 155), 臨床的有用性に関しては,DCA 180), PTCRA 156),181)-183),TEC アテレクトミー 184)-186), エキシマレーザー 187) などいずれのデバイスでも認められなかった. さらにステント内再狭窄に対するBMS の再植込みについても全体として有用性を示すことができず 188), POBA では十分拡張が得られないときのオプションとされている 189),190). 海外では血管内放射線治療 (Brachytherapy) がステント内再狭窄治療に対し再狭窄抑制の点でPOBA を上回る治療法として証明され標準治療となった時期もあるが, 日本には導入されないまま後述のDES が使用可能となり, その役目を終えたので, ここでは紹介しない. 3 DES によるステント内再狭窄治療 再狭窄病変に対しては DES の有効性が多数報告され ている 191)-199). 無作為試験に関しては限定的なデータ しかないが 200), 既に海外で POBA に対して優位性を示 した放射線治療と比較して有意に再狭窄を抑制したことも示され 201), 少なくともBMS のステント内再狭窄治療に対する標準治療と言える. 第 2 世代のDES を使用する BMS のステント内再狭窄に対する臨床試験はほとんど行われておらず, 数少ない無作為試験では第 1 世代の PESに対して第 2 世代の EESの有効性を示しているが 202), 症例数が少ないため, エビデンスと呼べるほどのものは存在しない. 一方 DES 使用後の再狭窄に関しては, 再狭窄を来たす症例数が少ないこともありエビデンスレベルの高いデータは全く存在しないが, 一旦再狭窄になると DES でも再々狭窄の率は高いと言われている 198),203),204).DES の再狭窄に対し, 再度 DES を植込むことについては, 小規模の報告がいくつかなされており 205)-207),POBA よりは良好な成績と言われているが, 最初に植込まれたものと異なったDES を植込むことについては優位性が否定的である 206),207). これに対して, 現在, 日本において臨床治験を施行し, 承認申請中である薬剤溶出バルーン (Drug-eluting balloon:deb) は, いくつかの無作為試験で通常のPOBA やPES に対して有効性を示しており 208),209), 将来 DES 再狭窄に対する治療法として標準 となる可能性がある. Ⅶ 我が国のDES 1 背景 PCI の問題点の1つである慢性期の再狭窄は薬剤の全身投与やBMS を含めた各種デバイスによっても, 克服されることはなかった. しかし, 内膜増殖を抑制する薬剤の局所投与が可能なDES によって, 再狭窄は強力に抑えられ, 再血行再建率が劇的に低下することが無作為比較試験で確認された 15),210),211). それらの結果を踏まえ, 日本では2004 年 8 月よりSES の臨床使用が可能となり, その後は数種類の新しいDES が使用可能となっている. DES では内膜増殖抑制とともに, 内皮による被覆化の遅延も来たすことが報告されている 212),213). そのために DES ではBMS に比較してステント血栓症の頻度が高くなる可能性があり,BMS よりも長期のアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬の投与が必要とされている. チエノピリジン系抗血小板薬として, チクロピジンしか使用できなかったSES 導入時には, チクロピジンをSES 留置後の比較的早い段階で, 副作用発現のため中止せざるを得なくなった場合の対応が我が国でのDES の使用に際しての問題点の1つとされていた. しかし, その後, 副作用の頻度が低いクロピドグレルが使用可能となり, 抗血小板薬の副作用のための抗血小板薬休薬による問題は少なくなっている. DES の再血行再建率の著明な低下という効果は多くの検討で確認されてきていたが,2004 年にDES 留置 1 年前後で, 手術などに際して抗血小板薬を中止した際にステント血栓症を来たした症例が報告され 16), ステント留置 1 年以後の超遅発性のステント血栓症に対する懸念が出てきた.2006 年にはBASKET-LATE 研究においてステント留置後 6ヶ月でクロピドグレルを中止した群ではその後の1 年間を見るとBMS 留置例に比しDES 留置例では, 有意差は認めないもののステント血栓症の頻度が高く, 心筋梗塞又は死亡の頻度が有意に高いとする報告がなされた 97). また, 同年, 論文発表あるいは学会発表されたDES の無作為比較試験のデータのメタ解析で, SES 留置後はBMS に比べ,Q 波心筋梗塞あるいは死亡の頻度が高くなるとする報告がなされた 214). また SCAAR 登録試験で,DES の6ヶ月以後の死亡あるいは 30

31 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン Q 波心筋梗塞の頻度が BMS に比べ高いと報告され 215), DES の長期予後に対する懸念の問題が注目されるよう になった. しかしその後, 前述の無作為比較試験を患者単位で検討すると, 心筋梗塞や死亡の頻度に違いがないことが明らかとなり 216),217),SCAAR 登録試験でも, オフラベル使用例を含む無作為比較試験でも,DES 例と BMS 例との長期予後に違いがないとする報告も行われた 218). 我が国でのCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2 研究からの報告でも,BMS と比較してDES を用いることにより少なくとも死亡や心筋梗塞が増加することはないと報告されており 219),DES を用いることで長期予後の悪化に繋がることはないと考えられる. このように,DES に対する概念は導入から数年間で大きく変化したが, 現在は新しいDES が多く使用されるようになってきており, これまでの DES のエビデンス, 特に長期追跡のエビデンスがそのまま現在使用されているDES に当てはまるかどうかは不明であり, また, 今後も新たなエビデンスが出て, 適応などが変化する可能性がある. このガイドラインは, 現時点で承認された DES のこれまでのエビデンスをもとに, 一部海外のガイドライン 220) を参考に作成されたものである. DES はその構成要素として, ステント本体 ( プラットフォーム ), 薬剤を溶出させるためのポリマーなどのキャリアー, さらに溶出される薬剤の3つの構成要素からなり, 異なった特性を持つ構成要素の組み合わせでいくつものDES が日本でも使用可能となってきた.2011 年末時点では5 種類のDES が使用可能であったが,SES が2011 年で製造中止となり, 現時点 (2012 年 1 月 ) で保険使用可能なDES はPES,ZES,EES,BESの4 種類である. 新しく, 使用可能となったDES では, ステントの構造として, ストラットをより薄くしたり, 側枝に対する対応を容易にしたり, 屈曲病変に適した構造にするなどの工夫をしたりしている. またポリマーとしては, より生体適合性が良好とされるものや生体吸収性のポリマーを使用したものが使用可能となり, また, コーティングを血管壁側にのみに行うものもある. さらに, 現在, いくつかのDES の臨床試験が行われ, 承認申請中である. 本ガイドラインは, 上述の4 種類のDES が使用可能な状況でのガイドラインであり, 今後新たなDES が臨床使用可能となれば変更される可能性もある. 2 DES の再狭窄予防および再血行再建率減少効果 BMS が PCI の標準治療となったのは, ステントの留 置によって, リコイル, リモデリングを防ぎ, 再狭窄を減少させたことによるところが大きいが, ステント内で増殖する新生内膜はPOBA よりも多いと言われており, その結果再狭窄予防効果は十分ではなく, また, びまん性や小血管病変での再狭窄予防効果は認めなかった. その新生内膜増殖を抑制し再狭窄を解決するためのデバイスとして登場したのがDES であり, 再狭窄抑制あるいは再血行再建抑制に有効との数々のエビデンスが確立してきた.BMS とDES とを比較した,RAVEL,SIRIUS, E-SIRIUS,C-SIRIUS,TAXUS シリーズなどの無作為比較試験やe-Cypher Registry,DEScover Registry, Research/T-Search Registryなどのレジストリー研究がある 210),221)-231). 従来,DES のオンラベルの適応とされた病変は,BMS との無作為比較試験で, その有用性が確認された病変である. ただ, それ以外の病変 ( オフラベル適応 ) でも, その有用性は欧米のレジストリー研究や我が国での検討でも確認されてきている. SES やPES 以後のDES では,BMS との比較試験ではなく, 有用性が確認されたこれらのDES との非劣性の確認の検討が承認のために行われている.EESでは, PESとの無作為比較試験が 232),233),ZESでも,PES との無作為比較試験が海外で行われて 234),BESでは,SES との無作為比較試験が我が国で行われ, それぞれ非劣性が確認されている 235). DES の再狭窄率のデータとしては従来のオンラベルの適応病変では,SES ではRAVEL 試験の0 % 15) から E-SIRIUS 試験の3.9% 210) まで ( 図 3),PES ではTAXUS IVの7.9% 228) から複雑病変を含めたTAXUS Vの18.9% まで 236) ( 図 4), オフラベル適応病変については,SES ではResearch Registryの複雑病変の7.9% 222) が代表的なデータである ( 図 5).RAVEL 試験においては5 年という長期にわたる再血行再建抑制効果も確認されている 221). また糖尿病患者は以前から再狭窄が多いとされてきたが 237),DES の普及によって, 糖尿病の成績は大きく改善した 238)-242). 小血管 243)-246) などPCI による再狭窄が多かった病変では,DES による再狭窄抑制効果はより大きく得られる. 反対にBMS においても再狭窄が大きな問題とならないのは, 大きな血管径, 短い病変であるが, 同等であるというデータ 247)-250) がある一方, 血管径の大きい病変に対する無作為比較試験において,DES で良好な成績が得られとする報告も行われている. 我が国においてはSES の承認以来, 海外でのDES の良好な成績を受け,BMS との無作為比較試験でDES の効果が確認された病変以外も含め, 多くの病変を対象に DES が使用されるようになった.SES のレジストリー研 31

32 % SES control RAVEL SIRIUS E-SIRIUS C-SIRIUS % TAXUS TAXUS SR TAXUS MR TAXUS SR TAXUS SR PES control Brachytherapy TAXUS ISR SR TAXUS MR SR Slow Release MR Moderate release 究であるJ-Cypher Registryから, 様々な病態, 病変における低い再血行再建率が報告されている. この J-Cypher Registrでは15,155 例のエントリーが行われ,SES のみで治療が行われた症例が10,778 例 17,545 病変あった 年 2 月までのデータでは1 年後の再血行再建率は患者単位で6.9%, 病変単位で5.6% であった. 承認条件として行われた市販後調査であるJ-PMS では血管造影が必須とされ, 日常臨床での再狭窄率が判明した. この検討では2,051 例 2,459 病変のエントリーが行われ,ACC/ AHA の病変分類でtype B2/Cの複雑病変を80.9% 含む日常臨床上のデータでありながら8ヶ月後の病変再狭窄率 9.0 %,12ヵ月後の再血行再建率 4.2 % であった 165). J-Cypher Registry でもJ-PMS も日常臨床の症例を対象に 95% の症例が1 回の治療で完了できることが示され, BMS や他のデバイスでは得られない画期的な成績であ った. また,PES でも, 市販後調査 (TAXUS PMS) が報告され,2,132 例,2,504 病変の1 年時点での再血行再建率は5.9% であった 251). この報告では糖尿病についての検討も行われ, 糖尿病例と非糖尿病例とでこのようなイベント発生率に違いを認めず, さらにインシュリン使用例でも違いを認めなかった. 新しい DES の成績として,EESの成績が最近報告されている. 約 3,200 例の症例が登録された SES との無作為比較試験 (RESET 試験 ) 252) で,1 年時点でのEESとSES とで再血行再建率はそれぞれ,4.3% と5.0% で違いを認めず, ともに良好な中期成績であった. このようにDES の再狭窄予防効果は強力であるが, すべての病変で同等の効果を認めるわけではなく, 再狭窄予防効果が不十分な病変として, 小血管や長い病変, 分岐部病変, 入口部病変, 糖尿病患者などが報告されて 32

33 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン % SES control Brachytherapy Research complex DIABETES DECODE SES-SMART SVEL TE SIRIUS 2.25 TROPICAL ISAR-DESIRE RIBS SISR PRISON Strategy Typhoon いる 222),253). 特に分岐部病変では, 本幹の再狭窄予防効果は大きいが側枝のそれは小さい. また側枝にもステントを留置した際の再狭窄予防効果に関しては本幹のみにステントを留置する方法と比べての優位性は確立していない 254)-258). 血液透析患者の CAD に対する PCI では,DES での再狭窄予防効果は必ずしも十分でなく, 少なくとも SES のBMS に対する有用性は確立されていない 259),260). 最近,SES とEESとの無作為比較試験で,EESの再狭窄率が低いとの報告がある 261). 現在,SES は製造中止となっており, 追試はできないので, 今後他のDES との比較が重要と思われる. 再血行再建率をめぐっては, 我が国で広く行われている ルーチンでの追跡造影 が, 不必要な再血行再建術を増加させる 262),263) との批判があるが, ルーチンの追跡造影にはデメリットだけではないことも示唆されており, 再検査のあり方についても日本における今後の検討を必要とする. クラスI 1. DES をBMS の代替として, 臨床試験において有効性と安全性が確認されている患者に使用する ( エビデンスレベルA). クラスⅡb 1. 臨床試験で現時点ではDES の有効性と安全性が十分に確認されてはいないが, 臨床的あるいは解剖学的見地から有用と考えられる場合には,DES の留置を 考慮してもよい ( エビデンスレベルC). 2. 血管径が十分あり (3.5mm 以上 ), 短い病変長の病変に対しDES を使用すること ( エビデンスレベル B). 3 ステント血栓症の定義 ステント血栓症は, 臨床研究のプロトコールでそれぞれ, 独自に定義され, その頻度が低いこともあり, 臨床研究間の正確な比較が困難であった. このために, 医師, 行政およびメーカー合同のARC(Academia Research Consortium) で, ステント血栓症を発症時期およびその確からしさによって, 以下のように定義された. 発症時期によって (1) 早期ステント血栓症 (EST): ステント留置後 1ヵ月以内 (2) 遅発性ステント血栓症 (LST): ステント留置後 1 ヵ月以後,1 年以内 (3) 超遅発性ステント血栓症 (VLST): ステント留置後 1 年以後 ステント血栓症の確からしさによって (1)Definite stent thrombosis 1 血管造影所見による確認ステント留置部およびステントの近位部あるいは遠位部 5mm 以内の血栓像, かつ発症 48 時間以内の急性の心筋虚血を示す症状あるいは所見 ( 症状, 33

34 ECG 異常, 心筋逸脱酵素の変化のいずれかで確認 ) 2 病理学的確認剖検あるいは血栓除去術でのステント血栓症の確認 (2)Probable stent thrombosis 1 30 日以内の説明できない死亡 2 血管造影で, ステント血栓症が確認できていないステント留置血管領域の心筋梗塞 (3)Possible stent thrombosis 30 日以降の説明できない死亡 4 DESのステント血栓症ステント血栓症そのものは,BMS でも,DES でも認 められる現象である. しかし, 超遅発性のステント血栓症は, その頻度は低いがDES に特有な有害事象として 捉える必要がある. 登録研究ではその発生は3 年で2~ 3% 前後,1 年ごとの頻度は0.4~0.6% と報告されている 100),264). 日本ではJ-Cypher 登録試験の5 年次までの検討で, 年率 0.26% と報告されており 265), 日本人のDES 留置後の超遅発性血栓症の発生頻度は, 欧米に比べ低い可能性が高い ( 図 6) 265). ただ, 欧米の報告と同様に5 年次まで, その頻度は低いものの発生を認めるという点はSES 留置例のfollow upを行う上で注意が必要である. ステントの種類と超遅発性のステント血栓症の頻度については,PES とSES との比較ではPES での頻度が高いとする報告があるが 266),267), 違いを認めないとする報告もある 268). これらに対して新しいDES では, 超遅発性ステント血栓症が低い値であるとする海外での報告がある 269). ステント血栓症の予測因子として, 分岐部病変, 石灰化病変, 血栓量, 長いステント留置例, ステント拡張不良病変, 添付文書に記載されていない適応病変での使用, 図 6 J-Cypher Registry でのステント血栓症の頻度 34

35 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン 糖尿病,ACS, 低左心機能, 慢性腎不全, 早期の抗血小板薬の中止などが報告されている 166),270)-272). 我が国の報告として,SES 留置例で, ステント血栓症を来たした症例を検討した RESTART 研究 273) がある. その報告では, ステント血栓症の発症時期によってその危険因子が異なると報告されており, 発生機序が異なることが示唆される. ステント血栓症を来たすと, 高頻度で急性心筋梗塞を発症するし, 死亡率も高い. この点からも, ステント血栓症の予防はその頻度は低いが非常に重要な課題である. 1 DES に特有あるいは多いとされる現象 超遅発性ステント血栓症はDES でBMS と比べ多い現象であるが, その他に,DES 特有あるいはBMS よりも多いとされる現象として, 遅発性再狭窄, 内皮機能障害, ステントフラクチャー, 冠動脈瘤などが挙げられる. 1 遅発性再狭窄 BMS ではステント留置後 6 ヵ月前後以後に, 狭窄が退縮することが報告されている. これに対してSES では, 再狭窄を来たしていなかった病変が1 年以後に再狭窄を来たし, 再血行再建を必要とする症例がBMS よりも多いことが報告されている 274)-276). 実際に,J-Cypher Registryの検討でのそれは1 年以内の再血行再建率は7.3 % で,1 年以後 5 年まで, 年率 2.2% で認められている. 1 年以後の再血行再建と関連する因子は, 糖尿病, 末梢動脈疾患, 再狭窄病変, 慢性完全閉塞病変, 全ステント長 >28mm, 対照血管径 <2.5mmなどとされ, これらの因子は,1 年以内の再血行再建と関連する因子と類似していると報告されている 265). 他のDES についてみると, PES では,SES との比較試験であるSIRTAX 試験で,5 年時点で同様の現象が報告されている 277). 遅発性の再狭窄の原因の一因として, ポリマーによる炎症などが考えられている. 生体吸収性のポリマーを用いたステントも使用可能となっており, 今後このようなステントでの長期の成績についての検討が重要となってくるであろう. 2 内皮機能障害 SES やPES などの第一世代のDES 留置後, 内皮機能が障害されることが報告され 278),279), このような障害がステント血栓症や再狭窄と関連する可能性がある. これに対して,Endeavor ステント 280) やNOBORI ステント 281) では内皮機能が障害を来たさないとする報告がされている. 内皮機能障害による冠動脈の収縮と冠攣縮は直接関 連するとの報告はないが, 冠攣縮性狭心症例に対する DES の影響についての検討も今後の課題である. 3ステントフラクチャーステントフラクチャーは,BMS 時代にも, 報告されていたが, 非常に稀な現象として捉えられていた.DES 時代になり, 比較的多く経験する現象となった. 多くなった理由として,DES そのものの特性が影響している可能性もあるが, より複雑な病変にステントが留置されたり, より多く, ステントが留置されるようになったことも影響していると思われる. ステントフラクチャーと関連するイベントとして, 再狭窄とステント血栓症が挙げられる. 再狭窄と関連して,SES のステントフラクチャーに関するいくつかの報告が我が国からなされている 282)-284). ステントフラクチャーを来たしても, 再狭窄を来たさない例もあり, 今後, 再狭窄を伴うステントフラクチャーの要因を含めた多数例での検討が必要である.1 年以後は, ステントフラクチャーと再狭窄やステント血栓症とは関連しないとする報告もあるが 285), ステントフラクチャーそのものの頻度が低く, またそれに伴うMACE の頻度も低いため, 結論を出すためには症例数が少ない可能性がある.SES のステント血栓症の登録試験であるRESTART 研究では, ステントフラクチャーの頻度は超遅発性ステント血栓症発症例において, 早期あるいは遅発性ステント血栓症例においてよりも高く 286), 超遅発性ステント血栓症との関連があるものと考えられる. ステントフラクチャーはSES で頻度が高かったが, その他のDES でもステントフラクチャーを来たした症例が報告されている. 新しい DES でも個々のステントフラクチャーの頻度や心血管事故との関連性についての検討がなされなければならない. 4 冠動脈瘤,Peri-stent contrast staining(pss) 冠動脈瘤は通常, 血管径の1.5 倍以上の径の拡大と定義され,BMS でも認める場合があるが, 最近,DES で注目され, 再血行再建やステント血栓症の関連について報告されている 287). 冠動脈瘤の定義には当てはまらないが, ステントの周囲に造影剤がしみ出る像 (Peri-Stent contrast staining) とステント血栓症との関連についても報告されている 288),289). また,PSS については, 再血行再建術 (TLR) との関連も認められている 288). ただ, これらは第一世代のDES であるSES とPES での報告であり, 現在主に使用されている第二世代のDES での意義については, 今後の検討を要する. 35

36 5 DES の長期成績 DES での超遅発性ステント血栓症の問題と関連して, DES の長期予後に対する懸念が報告され, その長期予後について, 無作為比較試験や登録試験の成績が詳細に検討されてきた. その検討に際して, 認可の基となった無作為比較試験でその有用性が確認された病変に対する適応 ( オンラベルの適応 ) と, そうでないオフラベルの病変に対する適応とに分けた報告がなされている. その中で, 少なくとも, オンラベルの適応病変では,DES の留置で, 長期的に死亡やQ 波心筋梗塞の頻度が増加しないことが, 無作為比較試験のメタアナリシスで, 確認されている 216). オフラベルの病変に関しても, そのような病変を含む症例を対象とする無作為比較試験のメタアナリシスで, 死亡や心筋梗塞の頻度に違いがないと報告されている 218). さらに, 観察研究ではあるが, オフラベルの適応病変についての検討で,DES で非致死性心筋梗塞や死亡の頻度が低かったとする報告もされている 290). ただ, 静脈グラフト病変では長期予後が悪いとする報告がある 291). 上述のように,DES を留置することで, 多くの病変で, 急性心筋梗塞や死亡を増加させることはないと思われるが, 現時点では予後改善にも繋がっていない.PCI 患者の長期予後改善のために, 冠危険因子の適切な管理を含めた二次予防に配慮することが非常に重要である. 6 DES の適応 PCI でのDES の適応を考える場合, その効果とリスクを配慮して決める必要がある. 効果についてはBMS と比べて再血行再建率をどれだけ低下させる効果があるかであり, リスクについてはステント血栓症の頻度が, BMS と比べどれだけ高くなるかである. オンラベルかオフラベルかという観点からすると日常臨床では, 分岐部病変や入口部病変など, オンラベル適応とされないあるいは禁忌とされる病変でもDES が使用されることが多かった. いわゆるオフラベルの適応病変, 患者については, その適応を考慮する場合には, その時点でのエビデンスを踏まえ, 個々の症例ごとにリスクとベネフィットを考慮した上でDES の適応を決定する必要がある. 非保護 LMT 病変および3 枝病変に対するDES の適応は, 安定冠動脈疾患に対する冠血行再建術 (PCI/ CABG): ステートメント & 適応 ( 冠動脈血行再建術協議会 ) の項を参照. クラスI 1. Ⅶ. 我が国のDES 2.DES の再狭窄予防および再血行再建率減少効果 のクラスⅠ 参照. 2. DES の留置を行う前には, 患者にアスピリンとチエノピリジン系薬剤との2 種類の抗血小板薬の投与の必要性とその期間について, 十分に説明して, 理解を得ることが必要である ( エビデンスレベルC). クラスⅡb Ⅶ. 我が国のDES 2.DES の再狭窄予防および再血行再建率減少効果 のクラスⅡb 参照. クラスⅢ 1. 6ヵ月以内に,2 剤による抗血小板療法の中断をせざるを得ない侵襲的あるいは外科的処置を必要とする PCI 患者 ( エビデンスレベルC). 7 DES 留置後の抗血小板療法 DES 留置後の抗血小板療法に関するクラス分類ならびにエビデンスレベルについては Ⅴ. 我が国の待機的 PCI 施行患者の管理,3.PCI 後慢性期の管理,4.PCI に伴う抗血小板療法 の項を参照. 認可のための臨床研究 ( 治験 ) の際に行われたアスピリンとチエノピリジンとの2 剤による抗血小板療法の期間はSES では最低 3ヵ月間 210),PES では最低 6ヵ月間であり 211), それらを基に市販後の抗血小板療法の期間が決められた. しかしその後, 遅発性のステント血栓症の懸念から, 出血性のリスクがない場合にはより長期の抗血小板療法が望ましいものと考えられるようになった. 2 剤による長期の抗血小板療法を考慮する際にはステント血栓症が起こるリスクが高いかどうかという点とステント血栓症を来たした際の予後への影響を考慮する必要がある. 前者に対しては, ステント血栓症の予測因子を考慮すべきであり, 後者に対しては, 心機能や解剖学的要因などを配慮する必要がある. 本ガイドラインでは, 現時点で必ずしも十分なエビデンスはないが, 欧米のガイドラインを参考として,2 剤による抗血小板療法の投与期間を1 年とした.1 年以後の抗血小板薬の投与については, その有用性を示唆する報告がある一方 292), ステント血栓症とアスピリン / チエノピリジンの2 剤の抗血小板療法との関連性を認めないとする報告がある 293). また, 症例数はやや少ないものの, 1 年時点で,2 剤の抗血小板薬を投与する群とアスピリン単剤とに割り付ける無作為比較試験で, その後のイベントに違いがなかったとする報告もされている 294). J-Cypherレジストリーでは一年半後まではアスピリン 36

37 安定冠動脈疾患における待機的 PCI のガイドライン とチエノピリジンとの2 剤ともに中止するとステント血栓症の頻度は有意に高くなるが,31 日後以降はアスピリンの内服は継続した上でチエノピリジンだけを中止してもそのリスクは高くならなかった 20) ( 図 7). 半年時点からのランドマーク解析でも, 半年後以降においてはチエノピリジンの臨床的有用性は明らかではなかった. 日本人のSES 留置後においてはアスピリン / チエノピリジン2 剤による抗血小板療法は半年間続けた後にアスピリンのみの継続投与に移行しても良い事を示唆している. 我が国における無作為比較試験などによる確認が期待される.PES に関しては抗血小板療法の投与期間についての日本人に於けるデータは未だ蓄積されておらず, 現時点では結論は出ていない. さらに, 第二世代のDES では, ポリマーが改良されたとするものや, 生体吸収性ポリマーを用いたものもあり, 抗血小板療法は現時点よりも短縮できる可能性もあるものと考えられる. 心房細動例で,DES を留置した場合, あるいは,DES 留置例で, 心房細動発症例では, 抗血栓療法として, 抗凝固療法と抗血小板療法を考慮する必要がある. アスピリン, チエノピリジン系抗血小板薬に加え, ワルファリンの投与を行うと, 出血性の合併症を来たす頻度が高くなる. 欧米のガイドラインでは 295),296),1 年以後では, 抗血小板薬の投与は行わず, 抗凝固薬のみの投与を推奨 しているが, 現時点では十分なエビデンスはない. 8 DES 留置後の抗血小板薬内服中断に対する対策 DES 留置後の抗血小板療法の中断は, ステント血栓症のリスクであり, 特にDES 留置後早期の中断は避ける必要がある 236). 手術が予定されている患者では, 手術の延期を考慮したりDES の代わりにBMS を選択したりすることも必要である. また, 安易に抗血小板薬の中断をしないように,DES 留置患者に十分な指導を行うことも重要である. 実際に外科的手術や内視鏡的的手技が必要な際などに, 抗血小板薬の休薬が問題となる.j-Cypher Registry の報告から, アスピリンおよびチエノピリジン系薬剤 2 剤の休薬がステント血栓症のリスクとなるため, 可能であれば抗血小板薬を2 剤とも休薬することは避けるべきである. 出血のリスクが高い手術などの場合は抗血小板薬 2 剤ともに休薬せざるを得ない. そのような際にはできるだけ休薬期間は短い方が望ましい.j-Cypher Registryでの検討では抗血小板薬の休薬 1 週間以内にステント血栓症を来たした症例は少なかったことが示されている. 抗血小板薬休薬時の対応としてヘパリンの点滴 図 7 SES における抗血小板薬の中断と, 留置後の期間別ステント血栓症の頻度との関連 37

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