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1 厚生労働科学研究費補助金 研究課題名 課題番号 (H25- 健危 - 一般 -010) エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究 主任研究者 : 関東裕美 ( 公益財団法人日本エステティック研究財団理事長 ) 分担研究者 : 鷲崎久美子 ( 東邦大学医学部皮膚科学講座 ), 古川福実 ( 和歌山県立医科大学皮膚科学教室 ) 舘田一博 ( 東邦大学医学部微生物 感染症学講座 ) 1. 研究の背景エステティックにおける施術は, 消費者ニーズの高まりとともに普及している 一方で, エステティックには法的な規制がなく, 実態が十分に把握されていないため, 衛生管理や施術に関係する健康被害が懸念される 2. 研究の目的 1 エステティック施設の衛生管理の状況やエステティシャンの手洗いのあり方を把握し, 衛生管理の充実のための方法を提案する 2 健康危害の実態やエステティックで行われる施術の内容を把握する 3 エステティックでの施術の安全性に関する検証を行う 健康被害を予防する対策を提案する

2 3. 研究方法 1 衛生管理の実態把握 Ⅰ. エステティック施設の衛生環境実態調査都内近郊の 20 エステティック施設を訪問し, 施術室及び水回り設備等,1 施設 5~12 か所をふき取り法による細菌培養検査を行った また, 訪問した施設に勤務する技術者 ( エステティシャン ) の手洗い前後をハンドスタンプにて採取した Ⅱ. 施術前後の技術者 ( エステティシャン ) の手の状況フェイシャルスキンケア施術 ( 顔面のマッサージ ) 前後の技術者のハンドスタンプを採取した Ⅲ. 全国のエステティック施設 (1,780 店 ) にアンケートを配布して, 衛生管理の状態について調査した 2 健康被害の実態把握 Ⅰ. 医療機関へのアンケート調査日本美容皮膚科学会会員医師 (1,779 名 ) にアンケートを配布して, エステティックサロンで健康被害を受けた患者の症例を収集した Ⅱ. 独立行政法人国民生活センター相談事例国民生活センターに全国から寄せられる消費者相談のうち, エステティック カテゴリーに分類されている健康被害の詳細情報を収集した 3 エステティックで行われている施術の安全性の検証 Ⅰ. 植物由来の香料成分の皮膚刺激性の検証アロマオイルを化粧品と混合して施術に使用するケースがある事から, その皮膚刺激性を 48 時間閉塞パッチテストにより検証した

3 1Ⅰ エステティック施設の衛生環境実態調査 実施時期 平成 25 年 8 月 ~11 月 訪問施設 エステティックの衛生基準 を活用しているエステティック施設 ( 都内近郊 20 施設 ) 調査内容 ふき取り箇所 ふき取り法による細菌培養検査 施設に勤務する技術者の手洗い前後の 手指細菌検査 手洗い場 施術台 消毒スペーススチーマー トイレノブ 施術用機器 シャワー室 ロッカー 対象院内感染などで弱毒菌であるのに問題となるような 市中型メシチリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA), 多剤耐性緑膿菌, アシネトバクターなどを中心に サロン環境から検出されるかどうかの検査を行った

4 1Ⅰ エステティック施設の衛生環境実態調査 酸性水製造装置内およびホース内部の清掃必要 - 手指衛生 - 施術前手洗い後の手指消毒不十分 顧客への耐性菌伝播の危険性

5 1Ⅰ エステティック施設の衛生環境実態調査 問題点 1. 手指消毒剤が劣化しているおそれがある 1 手洗い前 2 手洗い後 問題点 2. 水回りの清掃を徹底する必要がある >500 コロニー Bacillus sp. Coaglase negative Staphylococci Klebsiella pneumoniae Stenotrophomonas maltophilia Pseudomonas aeruginosa >500 コロニー Bacillus sp. Coaglase negative Staphylococci Klebsiella pneumoniae Klebsiella oxytoca Acinetobacter sp. -2 施術室 ( 手洗い場下 ) - 血液寒天培地

6 1Ⅱ 衛生管理実態把握 (n=231 施設 ) 経営タイプ (n=231 施設 ) 15 件 (6%) 個人経営の単店舗 177 件 (77%) 未記入 2% 直営の多店舗 34 件 (15%) 営業形態 (n=231 施設 ) エステ専門店 136(59%) 化粧品店と併設 35(15%) 美容室と併設 10(4%) 理容室と併設 7(3%) 医療施設と併設 2(1%) スポーツ施設と併設 1(1%) 33(14%) 未記入 7(3%) 提供しているサービス (n=231 施設 ) 複数回答 フェイシャルエステティック ボディエステティック 痩身エステティック 脱毛エステティック ~16 項目実施 [ パーセンテージ ] 衛生管理に関する 21 項目の実施率 (n=231 施設 ) 9~12 項目実施 [ パーセンテージ ] 2% 1% 21 項目実施 [ パーセンテージ ] 17~20 項目実施 [ パーセンテージ ] 100% 81%~99% 61%~80% 41%~60% 21%~40% 0%~20% エステティックの衛生基準 に準拠して作成

7 1Ⅱ 衛生管理実態把握 衛生管理実行している項目 (n=231 施設 ) 従業員には1 年に1 回 健康診断を受診させている施術者は顔面の施術の際にマスクを着用している施術者の健康状態や手指の傷の有無を毎日確認小分けしたり混合したりした化粧品は使用期間を決めて使用している化粧品の小分けには清潔なスパチュラを使用している化粧品の開封日を管理しているトイレは常に清潔に保持し 定期的に殺虫及び消毒している器具類 布片類などの保管場所は1 週間に1 回以上清掃している施術に伴って生ずる廃棄物は蓋付の専用容器にいれて適正に処理している 180(77.9%) 187(81.0%) 178(77.1%) 150(64.9%) 213(92.2%) 174(75.3%) 222(96.1%) 157(68.0%) 132(57.1%) 血液 体液の付着した使い捨て用品等の専用の廃棄容器がある 97(42.0%) 消毒済みの器具類は使用済みのものと区別して収納している施術者の手指は石鹸でよく洗い 消毒剤などで消毒している洗顔ブラシ ハケは適正に消毒しているスポンジパフは適正に消毒している皮膚に接する機器は 材質に合わせて全て消毒しているベッドとヘッドレストの消毒を行っているタオルの消毒を行っている 207(89.6%) 217(93.9%) 197(85.3%) 208(90.0%) 214(92.6%) 228(98.7%) 223(96.5%) 衛生管理のチェックシートがある 衛生管理のマニュアルがある 89(38.5%) 104(45.0%) 定期的に衛生管理の講習や勉強会を行っている 48(20.8%) 衛生管理責任者を決めている 118(51.1%)

8 1Ⅱ 衛生管理実態把握 (n=231 施設 ) 6 件 (3%) 消毒のみ 12 件 (5%) 何もしない 2 件 (1%) 手洗いのみ 26 件 (11%) 手洗い ( 施術前 ) 未記入 4 件 (2%) 手洗い消毒 181 件 (78%) 何もしない 4 件 (2%) 4 件 (2%) 消毒のみ 10 件 (4%) 手洗い ( 施術直後 ) 手洗いのみ 85 件 (37%) 未記入 4 件 (2%) 手洗い消毒 124 件 (53%) 2Ⅰ 医療機関へのアンケート調査 (n=331 施設 ) 健康被害の治療経験無 183 件 (55%) 有 148 件 (45%) 脱毛スキンケアシミ取り痩身美白にきびしわ取り不明 25(8%) 16(5%) 11(3%) 10(3%) 4(1%) 9(3%) 施術の目的 (n=324 件 ) 43(13%) 72(22%) 134(41%) 収集した症例数 324 件 ( 女性 299 件 92%) (20 歳代 36%) (30 歳代 26%) (40 歳代 19%)

9 2Ⅰ 医療機関へのアンケート調査 (n=331 施設 ) 部位 (n=324 件複数回答 ) 治療期間 (n=324 件 ) 転帰 (n=324 件 ) 不明 46 件体 (13%) 33 件 (10%) 上肢 33 件 (10%) 下肢 77 件 (23%) 顔 147 件 (44%) 治療 1 週間未満 治療 1~2 週間 治療 3 週間 ~1 ヵ月 治療 1 ヵ月以上 不明 40 件 (12%) 32 件 (10%) 57 件 (18%) 83(26%) 112 件 (35%) 軽快 41% 治癒 40% 不変 4% 治療中止 2% 悪化 1% 不明 12% 皮膚感染症 22 件 (7%) 不明 3% 所見 (n=324 件 ) 67 件 (21%) 接触皮膚炎 109 件 (34%) 熱傷 115 件 (35%) 熱傷の原因 (n=115 件複数回答 ) 7 件 (6%) 手技 15 件 (12%) 機器 96 件 (79%) 不明 3 件 (3%) 機器 19 件 (14%) 21 件 (16%) 接触皮膚炎の原因 (n=109 件複数回答 ) 手技 29 件 (22%) 不明 5 件 (4%) 化粧品 57 件 (44%)

10 2Ⅱ 独立行政法人国民生活センター相談事例 国民生活センターのPIO-NETにおける全国危害危険情報 ( 期間 2011 年 4 月 ~2012 年 3 月 ) の資料より エステティックサービス に関連する内容等を抜粋 概要については以下のとおり 1 相談総件数 ( 期間 2011 年 4 月 ~2012 年 3 月 ) 610 件危害の内容 (n=610 件 ) の傷病 件 (5%) 他のエステサービス 66 件 (11%) 商品キーワード (n=610 件 ) 痩身エステ 118 件 (19%) 美顔エステ 246 件 (40%) 危害内容 ( 美顔 ) 皮膚障害 57% 熱傷 7% 36% 消化器障害呼吸器障害感電障害皮膚障害凍傷熱傷感覚機能の低下筋 腱の損傷 脱毛エステ 152 件 (25%) 神経 脊髄の損傷刺傷 切傷擦過傷 挫傷 打撲傷 危害内容 ( 脱毛 ) 脱臼 捻挫 2 皮膚障害 48% 骨折 6 熱傷 41% %

11 3Ⅰ. 植物由来の香料成分の皮膚刺激性の検証 本邦のパッチテスト香料アレルゲン陽性率 の比較 国香料アレルゲン陽性率 (%) 日本 6.4 ドイツ 7.5~11.2 アメリカ 11.4 オーストラリア 6.2 イギリス 7.9 試験期間 平成 25 年 10 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 30 日 試験実施施設東邦大学医療センター大森病院皮膚科 試料 ギリシャ 8.1 ヨーロッパ ( 詳細不明 ) 7.5~8.3 韓国 9.7 エステティックの施術に使用されている主なもの 10 種類 ( コントロールワセリン ) N0. 試料名試験濃度番号試料名試験濃度 1 ラベンダー 5% 1% 6 カモミール 5% 1% 2 ゼラニウム 5% 1% 7 サイプレス 5% 1% 3 マジョリウム 5% 1% 8 ジュニパー 5% 1% 4 ローズマリー 5% 1% 9 フランキンセンス 5% 1% 5 ローズ 5% 1% 10 クラリセージ 5% 1% 被験者 40 名 ( 男性 1 名 女性 39 名 21 歳 ~80 歳平均 55.8 歳 )

12 4. 結果と考察 衛生管理エステティック施設の環境面のふき取り検査では 薬剤感性の黄色ブドウ球菌 緑膿菌 アシネトバクターは検出されるものの 当該の薬剤耐性菌による施設の汚染は見られなかった しかし 直接顧客顔面に蒸気を当てる装置であるスチーマーの水入れ口が汚染されている施設が見うけられた 技術者の手指細菌検査では 1 施設の技術者の手指から市中型 MRSA が検出された 多剤耐性緑膿菌及びアシネトバクターは検出されなかった また 当該菌による汚染ではないが 市販手指消毒剤による消毒後手指であるにもかかわらず大量の菌で汚染されている例も見受けられた この原因として手指消毒剤の劣化 ( 消毒成分の希釈などによって環境菌による汚染等が発生 ) である可能性が考えられた 身体被害の実態把握及び原因の究明昨年度までの研究で 国民生活センターに寄せられる消費者相談は 皮膚障害 と 熱傷 が多いことが明らかになっていた 今年度の研究で 医療機関へのアンケート調査により 皮膚障害は 化粧品 (44%) と 手技 (22%) 熱傷は 機器 (79%) を原因とすることが多かった ただし エステティック施設で使用される化粧品や機器は市販されておらず エステティック施設の協力を得られない場合 正確な原因検索が出来ないとの意見が寄せられた 化粧品については 施術の際 化粧品と混合して使用される植物由来の香料成分 ( いわゆるアロマオイル ) についてパッチテストを行ったが 希釈濃度 5% では問題となる刺激反応はなかった

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