公共経済分析II

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1 1 財政学 講義ノート 2 佐藤主光 もとひろ 一橋大学経済学研究科 政策大学院

2 税金の経済学 2 視点 理解 ロジック 評価 提言 経済主体 市場均衡 講義で学ぶこと 課税の誘因効果 代替効果 所得効果 課税の負担の帰着分析 部分均衡 弾力性 一般均衡 代替の弾力性 集約度 税の機会費用 超過負担 課税の限界費用 MCPF 最適課税論 ラムゼールール 生産効率性命題 Atkinson Stiglitz 命題

3 税の帰結 3 税目要因帰結認識 固定資産税 車体課税 酒税 小規模住宅への軽減措置 自動車税と軽自動車税で異なる課税基準 ビールと発泡酒で異なる税率 空き家 の放置 日本人の家は うさぎ小屋? 性能は同じでも軽自動車税が広く普及 ビールの低迷と発泡酒の普及 法人税 高い実効税率 内部留保の積み上げ リスクを取らない経営? 所得税 配偶者控除 13 万円が企業の配偶者手当の基準 に 多死社会問題 日本の狭い国土 軽自動車は地方の足 庶民の味方 消費者のビール離れ 乏しい経営能力 税制上の壁はない 心理的 な壁?

4 課税の誘因効果 4

5 5 何を学ぶのか? 税金の通念と実際 誘因効果 税の負担 税のコスト 通念 減税は労働供給や貯蓄を喚起する 税を払う主体 企業等 が税を負担する 納税額がコストである 実際 所得効果 - と代替効果 + が反対に作用する 市場の構造 弾力性等 に依拠して税負担は転嫁する コストは逸失利益であり 納税額は所得移転に過ぎない

6 6 税の機能と帰結 税の 経済的帰結 建前 意図 理念 政策的意図 は掲げただけで実現するわけではない その実現の有無は 経済主体の誘因との両立性に拠る例 : 格差是正を掲げた所得税の増税の帰結 富裕層の流出 格差是正は実現していない 課税は個人 企業 経済主体 の意思決定に影響 誘因効果 家計の効用最大化企業の利潤最大化 需要 供給パターンの変化 市場均衡の変化 税の帰着分析

7 出所 : 税調 金融 経済危機を背景とした欧米諸国における議論 平成 23 年 11 月 8 日

8 8 仏 税率 75% 避け富裕層脱出 フランスのオランド政権は所得税の最高税率を 75% に大幅に引き上げる増税案を修正する方向で検討に入った 重い税負担を嫌って富裕層が外国籍を取得する 国外脱出 が相次ぐうえ 違憲判決も下ったからだ 昨年 5 月に発足したオランド政権は 富裕層から低所得者への所得再配分を掲げる 213 年からは 2 年間の時限措置で年収 1 万ユーロ 約 1 億 15 万円 を超える個人の所得税率を 現行の約 4% から一気に 75% に引き上げる案を示した 企業経営者や富裕層の多くが脱出先に選ぶのが隣国ベルギー 12 年中にベルギー国籍を申請したフランス人は 126 人と 前年から倍増した 日本経済新聞 213/1/9

9 総務省通知

10 ふるさと納税見直しに反論 返礼品 1 千種類の泉佐野市長 朝日新聞 9/28 金 総務省がふるさと納税で 過度な返礼品 を送っている自治体を制度の対象外にする検討を始めたことに対し 昨年度 全国 1 位の 135 億円を集めた大阪府泉佐野市は 28 日 東京都内で記者会見を開き 総務省が独断で決めるものではなく 幅広く議論すべきだ とする千代松大耕 ちよまつひろやす 市長のコメントを発表した 泉佐野市は 1 千種類の返礼品を用意し 寄付額に対する返礼割合は 4~45% 程度という 他県産の肉やウナギなどのほか 市域にある関西空港を拠点にする格安航空会社ピーチ アビエーションで利用できるポイントが人気を集める 総務省は返礼品を地場産品に限り 返礼割合を 3 割以下に抑えるよう 再三通知 野田聖子総務相は今月 11 日の記者会見で泉佐野市を名指しし 一日も早く見直しを と述べていた

11 ふるさと納税を巡り 野田総務相が豪華な返礼品で寄付を集める自治体を制度の対象外とする方針を表明し 波紋が広がっている 自治体は返礼品の見直しなどの対応に追われ 返礼品がなくなる前の 駆け込み寄付 とみられる現象も起きている 駆け込み寄付 急増 人気は旅行券クーポン うなぎが 2 千円? 残りは誰が負担?? 和歌山県高野町の寄付額は 11 日 ふるさと納税のポータルサイトで 前日の 3 倍の約 3 万円に跳ね上がった 約 4 品目の中で特に人気なのが 町内にある高野山のほか 京都 東京など空海ゆかりの地に行ける旅行券のクーポン 総務省は不適切としたが対応は未定で 町の担当者は クーポンも終わると考えて 急いで寄付しようとしたのだろう という 読売新聞 218 年 9 月 24 日

12 12 何故 誘因効果 か? 税の 支払い と受益の関係が不明瞭 所得再分配 納税者は課税を 対価 価格 ではなく コスト として認識 税の支払いを回避するように行動 税は経済主体の経済活動 消費 生産 を対象 経済活動の変化で税支払い 負担 も変化 課税の 非中立性 税の公共選択と私的選択の区別 公共選択で増税に合意していても 私的選択において各経済主体は自己利益を追求 課税の誘因効果

13 13 再掲 : 課税への反応 税に対する個人 経済主体 の反応は多層的 公共選択 課税の決定 有権者として反応私的選択 課税下での経済活動の決定 納税者として反応 納税者の反応財政への影響例 公共選択 課税の趣旨 社会連帯 応益性 への理解 政府の予算制約 収支 を勘案 社会保障制度や将来世代のためにも消費税増税はやむを得ない 私的選択 自己利益を追求 自分の納税額と社会保障等公共サービスをリンクさせない 掛け込み需要課税逃れ 消費の抑制等

14 14 経済主体の誘因は多様 経済主体の行動 家計 - 消費選択 - 貯蓄選択 異時点間消費選択 - 資産選択 ポートフォリオ - 労働供給選択 労働参加 労働時間 等 企業 生産者 - 供給選択 生産量の選択 - 要素需要選択 雇用 投資選択 - ファイナンス 資金調達 選択 - 利益移転 等

15 税と市場メカニズム 15 X 財価格 市場価格の変化 税の帰着 S p E 誘因効果 X 財生産量

16 サプライサイド経済学? 従来の税制論議は短期の景気に及ぼす影響に偏重? ケインズ型有効需要 短期マクロ モデルを前提 サプライサイド 新古典派 課税の長期的効果に着目 マクロ ミクロ 誘因効果 着目点潜在的経済成長力家計 労働 貯蓄 消費選択企業 立地 雇用 設備投資選択 ケインズ マクロ需給式 Y C + + G + X-M 新古典派 サプライサイド

17 家計の効用最大化 復習 17

18 効用最大化と需要関数 家計は 予算制約式と市場価格を 制約 として 自身の効用を 最大化 するよう消費の組み合わせを選択 選択された消費の組み合わせは 家計が 与件 とした変数 価格 所得 に依存 価格 所得が変われば需要も変化する 財貨の価格は家計の観点からすれば 外生的 であるが 需給を調整するよう市場においては 内生的 に決定される } { U Ma t s

19 + V V / E U U MRS / / / 19 最大効用 間接効用関数効用最大化条件予算制約式

20 2 1. リンゴ 2. 明日の消費 3. 消費 4. 雨の日の消費 図 3: 家計の選択 1. ミカン 2. 今日の消費 3. 余暇 労働 4. 晴れの日の消費

21 21 所得効果と代替効果 財価格の上昇は 1 財貨 への割高感 当初の限界代替率に比べて市場価格が上昇 を与えるとともに 2 家計の 購買力 実質所得 にも影響 代替効果 割高感 財から 財への代替を促す : 所得効果 購買力の低下 正常財 への需要を減じる : 財 の価格上昇 X 需要 Y 財需要 代替効果 - + 所得効果 - 正常財 - 正常財

22 + V V / E / + 価格上昇後 MRS が価格比と一致する点割高感 代替効果 F MRS / + < 22

23 + V V / E / + 価格上昇の結果 購入できなくなった消費の組み合わせ購買力の低下 23

24 V V / E / + 代替効果 所得効果 F G 代替効果所得効果 24

25 所得効果と代替効果 25 何故 価格の変化が需要に及ぼす効果を所得効果と代替効果に区別するのか? 課税のもたらす資源配分への 非効率 効果 歪み は 代替効果 でもって測定される 所得効果と代替効果が反対方向に作用する場合 価格変化が消費者の選択に及ぼす効果は曖昧になる 価格変化代替効果所得効果備考 労働供給 賃金率上昇 + - 労働は劣等財 下落 - + 貯蓄 利子率上昇下落 現在消費は正常財

26 26 スルツキー方程式 復習 価格の財需要への効果は スルツキー方程式 によって表される : + { 代替効果 }+{ 所得効果 } { 効用水準を一定とした 財から 財への代替 } +{ 所得の購買力の低下による需要の変化 } { 補償需要の変化 } + / { 購買力の低下額 } 代替効果 補償需要の変化

27 参考 : 補償需要 補償需要関数 一定の効用水準を維持するよう所得補償がなされているときの 仮想的 財需要 代替効果 のみを抽出 支出最小化問題 の解 補償需要関数 U U MRS / / u U ~ ~ u u 27 支出最小化の一階条件制約 効用水準一定

28 u E ~ u ~ u u u / E U U MRS / / / 支出最小化 28 支出最小化の一階条件制約 効用水準一定最小支出 支出関数

29 29 ~ ~ ~ u ~ 価格変化前効用 + G F E 2 所得効果 1 代替効果

30 3 代替効果 所得効果 : 再論 所得効果 F 代替効果 G E V V / /

31 スルツキー方程式 完成版 一定 の効用水準を維持するために必要な所得 補償 価格上昇前の消費 E 点を実現するような所得補償 失った 購買力 p 補償需要の変化 + - p / + ~ u p / ~ u 31

32 スルツキー方程式 完成版 財 需要の変化についても同様 : ただし 購買力の低下 一定の効用を維持するために必要な所得保障 は p 財 の価格 p が上昇したとき 一般的に 財と 代替的 な財 例 : ミカンとりんご の間では代替効果は + 補完的 例 : コーヒーとミルク の間では代替効果は - ~ u 32

33 代替効果と弾力性 代替効果が大きい 密接な代替財が存在 例 : ビール対発泡酒自動車対軽自動車 相対 価格 代替財なし 相対価格の変化に対して 当該財需要の弾力性が大きくなる 需要関数は水平 密接な代替財あり 需要関数の傾き 弾力性 税負担の転嫁を決定 需要関数 需要 注 : 所得効果は捨象

34 課税と消費者の選択 34

35 35 課税と家計の選択 2 財 XY を消費している 代表的 家計を想定 所得 は与件 物品税 財 X に対して税率 t 従量税 でもって課税 消費者の観点からすれば 財 X の価格が引き上げられたことに相当 ただし 生産コストが高まったわけではない 物品税の効果 所得効果 + 代替効果 代替効果 課税による 相対価格 の変化に起因

36

37 37 X 財への課税 所得効果 F 留意 : 消費者は納税額を最小化するのではなく 物品税を価格の一部 税込価格 として消費選択 代替効果 G E V V p p 2 1 p + t / p p / p

38 38 一括 定額 税の効果 家計の消費選択に関わらず定額で T だけ税を課す 相対価格 を変化させることなく消費者の予算制約式が 平行 にシフト 定額税 家計から政府への所得移転 所得効果のみを発揮 税等価 : 所得 を 与件 とするとき 財 XY に対して均一に課税を行う 一般 消費税は一括税と税等価 : 1 + t p t p p + p t 1 1+ t

39 39 u 一括 定額 税の場合 定額税 T E H p p T p / p

40 4 代替効果と所得効果 代替効果 所得効果 含意 消費者の認識する相対価格の変化 納税者 消費者 から政府への所得移転 集めた税収を家計に一括移転として戻す 相対価格は変化したまま 代替効果は消えない 解消 支払い X 財市場 納税 消費者 納税者 政府 税金の還付 一括移転

41 41 X 財への課税と代替効果 t / 1 p 所得補償 税収の還付 後も税の効果 相対価格の変化 が残る 代替効果 / p 1 F 代替効果 E p + t / p u 1 p / p

42 42 代替効果 VS 所得効果 物品税の場合 課税財 例 : 財 X が 正常財 でる限り 代替効果 所得効果ともに課税財の需要を低下させる ただし 非課税財 例 : 財 Y の場合 代替効果 + と所得効果 - は逆方向 賃金や利子率に対する課税も代替効果 + と所得効果 - が逆方向に作用 通念 : 所得税は勤労意欲 労働供給 や貯蓄を阻害 賃金税や利子所得税の労働供給 貯蓄への誘因効果は確定的ではない!

43 軽減税率 43 出所 : 諸外国の付加価値税 28 英国標準税率 17.5% ドイツ標準税率 19% フランス標準税率 19.6% カナダ標準税率 5% ゼロ税率 食料品 ケータリング レストランでの飲食 温かい食べ物のテイクアウトは除く 菓子 酒 飲料 水を含む ジャガイモ製品 自家用酒製造用パックは標準税率 飲料でも茶 ココア コーヒー 牛乳はゼロ税率 7% 税率 飲食料品 レストランでの飲食は除く 税率 5.5% 水 ソフトドリンクを含む 人用の食料 菓子 植物性脂肪 チョコレート キャビア レストランでの食事を除く ゼロ税率 基礎的飲食料品 酒 ソフトドリンク 菓子 温められた飲食料品 自動販売機で販売される飲食料品 レストランでの食事を除く

44 カナダのドーナツクラブ 44 税制メールマガジン第 36 号 27/2/6 カナダでは 食品に適用される税率はゼロ つまり 消費者から見れば付加価値税はかかりません 他方で レストランなどでの外食は 食品の購入ではなくサービスの購入ですから 標準税率 6% が課されることになります とは言っても 食品と外食との区分が簡単でない例が多々あります そこで カナダでは すぐの消費に適しているか という基準を設けています 具体的には ドーナツの場合 6 個以上ならばその場で食べきれないと見なされてゼロ税率 5 個以下ならば標準税率 という具合です そのため ドーナツ屋の前で購入者が集まって 即席の ドーナツ クラブ が作られ ドーナツを共同購入しているという 本当のようなうそのような話が出回ったほど

45 45 基礎的食料品 p 1+ 5% V V p p 所得効果 軽減税率の効果 軽減税率は 代替効果 を誘発 F 代替効果 G E 2 1 p 1 1% / p 1 + 5% + p 1 + 5% / p / p 基礎的食料品以外 p 1 + 5%

46 46 p 1+ p 5% 1+ 1% u E 一律税率の場合 所得を一定とすれば 一律課税の効果は所得効果のみ 消費税 賃金所得税 p / p p 1 + 5% / p p 1 + 1% / p 1 + 5% 1 + 1% H 所得効果のみ p p T

47 47 C 216 p % p % u E 消費税と景気 消費税は消費を落ち込ませるか 税率が一定であれば 現在消費と将来消費に代替は生じない p 215 p p / p % / p 1 + 1% / p % 1 + 1% H 所得効果のみ 消費税収が社会保障 所得移転 に充当されるとすれば 経済全体で所得効果は相殺 C 215

48 C 2 課税後消費 u E 代替効果 オイラー方程式 : 異時点間の消費配分ルール U ' C U ' C β r 移行期 1 + τ1 1 + τ 2 48 τ 8 < τ 1 % 1% 2 C 2 F U ' C U ' C r < 1+ 1 β 2 C 1 消費税増税の前後で代替効果 掛け込み需要 反動減 1+ r S 貯蓄 1 + τ 2 C 1+ τ1 C r 2 W C 1 wl 課税前消費 1+ r1 +τ /1 + 1 τ 2

49 軽減税率だけではない 酒税率の違い ビールから発泡酒等への代替効果を誘発? 出所 : ビール業界分析

50 軽減税率だけではない その 2 車種マツダデミオ C-V ダイハツタント 新車価格 129. 万円 131. 万円 燃費 1/15 モード 23.km/l 1/15 モード 22.5km/l 自動車税 軽自動車税 年あたり 345 円 72 円 重量税 年あたり 126 円 44 円

51 51 社会保険料と雇用形態 N 非正規雇用 代替効果は企業の誘因にも作用 社会保険料 実質的に正規雇用課税 正規雇用から非正規雇用への 代替 を誘発 F 企業の誘因 費用最小化 N 1 代替効果 社会保険料 N E W 1+ t / L W N L 1 L W L / W N 等量曲線 Y F L N L 正規雇用

52 52 誘因効果 まとめ 課税上の含意 代替効果 市場価格の情報伝達機能への ゆがみ 個人の選択 O O 効率性への含意 非効率 超過負担 所得効果 納税者 民間 から公共部門への所得移転 再分配

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