1 Education 脳神経外科専門医試験のための脳腫瘍模擬問題 Neuro-Oncology Brush-up Tests for Neurosurgical Board Examination 脳神経外科専門医試験のための 脳腫瘍の知識整理問題作成委員会 Editorial Committee for Neuro-Oncology Brush-up Tests for Neurosurgical Board Examination - 37 -
2 Neuro-Oncology の進歩 (Progress in Neuro-Oncology) Vol.22-1 2015 問題 1 Gliomatosis cerebri に関しての記載で正しいものをすべて選択せよ 1) びまん性の浸潤に加え明らかな腫瘤性病変の有無により type 1 type 2 に分類される 2)Type 2 の場合 IDH-1 mutation が予後に相関する可能性が報告されている 3) 過去 放射線治療の有効性は疑問視されていたが 最近の報告では OS, PFS ともに有効であることが示唆されている 4) 化学療法では TMZ の有効性が証明されている 5) 画像上 均等に両側性に広がるものは 非均等なものに比べて予後が良いことが示されている 問題 2 脳腫瘍の組織別にみて最もてんかん発作の頻度が高いのはどれか a 膠芽腫 (glioblastoma) b 髄膜腫 (meningioma) c 転移性脳腫瘍 (metastasis) d 乏突起膠腫 (oligodendroglioma) e 胚芽異形成性神経上皮腫瘍 (dysembryoplastic neuroepithelial tumor:dnt) 問題 3 次の症例について 下記設問に答えなさい 71 歳男性 易疲労 体重減少を精査目的に近医を受診し画像異常を指摘され紹介 明らかな神経学的異常所見を認めない 脳 MRI-T1, T2 強調画像, 造影と摘出標本の病理組織像を示す 設問 1. 本例の正しい診断はどれか 下記より一つ選べ A. 胚芽腫 B. 毛様細胞性星細胞腫 C. 紡錘形細胞オンコサイトーマ D. 下垂体細胞腫 E. 顆粒細胞腫 - 38 -
3 設問 2. 本例の免疫組織学的特徴はどれか 下記より一つ選べ A. PLAP B. S-100 C. GFAP D. EMA E. Synaptophysin 設問 3. 本例の電子顕微鏡学的特徴はどれか 下記より一つ選べ A. lysosome B. intermediate filament C. mitochondria D. desmosome E. dense core vesicle - 39 -
4 Neuro-Oncology の進歩 (Progress in Neuro-Oncology) Vol.22-1 2015 問題 4 血管芽腫について誤っているものを選択せよ a). von Hippel-Lindau 病に伴う腫瘍は発症年齢が早い b). sporadic な血管芽腫でも VHL gene の機能に異常をきたしている事が多い c). 定位放射線照射での局所制御率は 5 年で 90% 前後である d). von Hippel-Lindau 病での自然経過観察では多くがゆっくりした指数関数的な増大を呈する e). 腫瘍細胞の本体は stromal cell で brachyury 免疫染色は腫瘍診断に有用である 問題 5 以下 髄膜腫について正しい記載を全て選択せよ 組織学的に脳軟膜が腫瘍により破綻していることが示されれば WHO grade III と診断される WHO grade II 髄膜腫に対する定位放射線治療の5 年腫瘍制御率は30% を下回っており 極めて限定的な治療効果しか期待できない NF2 遺伝子の点突然変異を約 60% の髄膜腫で確認することができる WHO grade II, III 髄膜腫の半数以上に17q の増幅を認める WHO grade III 髄膜腫に対する推奨される初期治療は手術による摘出であり 腫瘍の悪性化の懸念から初期治療に放射線治療を加えるべきではない - 40 -
5 問題 1 解答 1) 2) 3) 5) 最近の報告では画像上の特徴からタイプ別に分類されているものが多い 原著は Jennings MT J Child Neurol 10:37-45, 1995 の報告が引用されている Kwon M (Brain Parhology 22:307-317, 2012) らの 74 例の GC の解析結果から type1, type 2 における IDH-1 mutation と予後についての報告がある Glas M(Ann Neurol 70:445-453, 2011) からの NOA-05 でも同様に 35 例の GC において IDH-1 mutation と OS の相関が報告されており GC の中でも IDH-1 が prognostic factor として有用な群があることが想定される Taillibert S (J Neurooncol 76:201-205, 2006) らからの 296 症例の GC に関する大規模なレトロの解析から放射線照射の有効性に関しては疑問視されていた しかし Chen S (J Neurooncol 112:267-275, 2013) らの 80 例の GC に対する解析結果によると PFS 16.5 か月 OS 27.5 か月 ( 非照射群 4.5 か月 6.5 か月 ) と放射線照射照射群で予後が良好であったことが示されている NOA-05 にて選択された PC 療法 少数のシリーズでの TMZ など現時点では TMZ が効果的であると断言できるようなエビデンスレベルの高い試験結果は得られていない 特に IDH-1 MGMT KPS Pathology など条件の違いが成績にも影響を及ぼすことが知られているため 化学療法の治療成績における上乗せ効果は予測されているものの TMZ 自体の有効性は確率されていないといえよう GC に対して唯一の前向き臨床試験 (NOA-05) の結果 両側対称性のものは非均等に比べて予後が良好であった (36.3 ヶ月 vs 8 ヶ月 ) ことが報告されている ちなみに その他の予後因子としては MGMT メチレーション IDH-1 mutation があげられている 問題 2 解答 e Shamji MF. et al. Neurosurg Rev 32:275-284, 2009 によれば 膠芽腫は 29-49% 髄膜腫は 29-60% 転移性脳腫瘍は 20-35% 乏突起膠腫は 53% 胚芽異形成性神経上皮腫瘍は 100% とされている また 神経節腫瘍 (ganglioglioma) は 80-90% と高率である てんかん原性には皮質形成異常が関与していると考えられている なお 低悪性度神経膠腫 (low-grade astrocytoma) は 75% とされている - 41 -
6 Neuro-Oncology の進歩 (Progress in Neuro-Oncology) Vol.22-1 2015 問題 3 解答 設問 1:E 設問 2:B 設問 3:A Granular cell tumor of the neurohypophysis / infundibulum 神経下垂体 / 下垂体漏斗顆粒細胞腫は 2007 年 WHO 分類では同部に発生する顆粒状細胞質を有する腫瘍で 他部位に発生するものと同様に descriptive な診断名である 細胞起源として 他の部位と異なる特徴として pituicyte が origin の一つと考えられる点である 臨床的には症候性は稀で 40 60 歳の女性に優位である 症候として 他の下垂体近傍腫瘍と変わらないが 尿崩症は比較的稀である 脳 MRI 上の特徴として 境界明瞭で均一な造影効果を示す 血管撮影像の報告は少ないが hypervascular を示す症例がある 病理学的特徴は 顆粒状の細胞質を有し PAS 陽性で diastase 抵抗性である 免疫組織学的には vimentin, S-100, α 1 antitrypsisn, chymotrypsin, KP-1 に陽性で 上皮性および神経性マーカーに陰性である 電子顕微鏡学的には 細胞質に多くの lysosome を認め 細胞間接着装置の発達は不良である 同部位発生腫瘍として 毛様細胞性星細胞腫 紡錘形細胞オンコサイトーマ 下垂体細胞腫と本腫瘍型との鑑別が重要である 問題 4 解答 d 血管芽腫はその 75% は sporadic なもので発症年齢は 30-50 歳代中心であるが von-hippel- Lindau(VHL 病 ) に伴う腫瘍では 10-20 歳代からの発症がおこる また sporadic な腫瘍でも VHL gene の異常が高頻度に見つかる事が最近報告されている 腫瘍細胞は豊富な血管にかこまれた stromal cell から成るが stromal cell では brachyury 陽性である Brachyury は胎生期 mesoderm および notochord に発現する transcription factor で chordoma での発現も知られている 自然経過に関してはいくつかの報告があり 一般的には増大がかなりゆっくりで 一定の増大パターンをとらない事が多く 半数ぐらいは数年の経過観察期間にほとんど増大が無かったとする報告もある 手術で全摘出後でも長期には再発の報告があるが 定位放射線照射での腫瘍のコントロール率は 5 年で 90% 10 年で 80% 前後の報告が多い Barressi V et al. Expression of Brachyury in Hemangioblastoma Potential Use in Differential Diagnosis. Am J Surg Pathol 2012;36:1052-1057 Hanakita S et al. The long-term outcomes of radiosurgery for intracranial hemangioblastomas. Neuro-Oncology 16(3), 429-433, 2014 Lonser RR et al. Prospective natural history study of central nervous system hemangioblastomas in von Hippel-Lindau disease. J Neurosurg 120:1055-1062, 2014 Shankar et al. Sporadic hemangioblastomas are characterized by cryptic VHL inactivation Acta Neuropathologica Communications (2014)2:2-42 -
7 問題 5 解答 (1) 組織学的に脳軟膜の破綻が確認されれば WHO grade II と診断される ( 脳神経外科学改訂 11 版 1487 頁 ) (2) WHO grade II 髄膜腫に対する定位放射線治療の 5 年腫瘍制御率は 48 83% であり ある程度の腫瘍制御効果が期待される ( 脳神経外科学改訂 11 版 1487 頁 ) (3) ( 脳神経外科学改訂 11 版 1431 頁 ) (4) ( 脳神経外科学改訂 11 版 1432 頁 ) (5) WHO grade III 髄膜腫に対する初期治療は可能な限りの腫瘍摘出と放射線治療 (54Gy 相当 ) が推奨される ( 脳神経外科学改訂 11 版 1488 頁 ) - 43 -