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1 章 1 尿検査総論 尿の成分 外観 A 正常状態で尿に含まれる成分. 尿素 (urea) 尿素は蛋白質の終末代謝産物であり, 肝臓で合成され, 腎臓から排泄される. ヒトが蛋白質から取り入れた窒素のうち, 過剰分のほとんどが尿中に尿素の形で排泄される. 通常,20 30 mg/ 日の排泄がある. 発熱や糖尿病, 副腎機能亢進など, 蛋白異化が亢進している状態では尿素排泄は増加する. 逆に, 末期肝不全で蛋白異化が極度に低下している状態や, アシドーシスでは尿素排泄は低下する.. アンモニア (ammonia) 腎臓の尿細管細胞でグルタミンやアミノ酸が代謝を受け,0.5 0.8 mg/ 日のアンモニアが尿中へ排泄される. 尿路感染や糖尿病性ケトアシドーシスで増加し, アルカローシスで低下する.. クレアチニン (creatinine) クレアチニンは, 筋収縮の際にエネルギー源となるクレアチンの代謝産物である. 尿中クレアチニン測定値が単独で臨床的な意義をもつことはないが, 健常人では約 1,000 mg/ 日の排泄で一定しており, このため 24 時間蓄尿に代わる随時尿における化学検査値 ( ナトリウム, カリウム, リン, 蛋白など ) の補正に広く用いられている. 増加要因としては末端肥大症, 甲状腺機能亢進症, 減少要因としては筋ジストロフィー, 甲状腺機能低下症, 重度の腎機能低下などがある. 498-22438 1. 尿の成分 外観 1

. 尿酸 (uric acid) 尿酸はプリン体の最終代謝産物である. 食餌からだけではなく, 細胞分解によって体内でも産生される. 尿酸は水に溶けにくく, 特に酸性尿で顕著である. したがって, 尿中尿酸は尿酸結晶や尿酸塩として沈殿しやすく, 蓄尿の一部で測定するときは十分に混和した試料を用いないと著しく低値を示す. 白血病や癌, 重篤な肝不全, 高蛋白食摂取後, 尿酸吸収不全, 薬剤 ( 尿酸排泄薬, エストロゲン, 造影剤など ) で増加する. 一方, キサンチン尿症, 成人型糖原病 Ⅰ 型などの代謝性障害や, 薬剤 ( アロプリノール, ピラジナミド, サイアザイド系降圧利尿薬, 抗てんかん薬など ) で低下する.. アミノ酸 (amino acid) 健常人では 1 日約 150 200 mg のアミノ酸が尿中へ排泄される.Fanconi 症候群では汎アミノ酸尿が認められる. 先天性アミノ酸代謝異常症の主な疾患のうち, フェニルケトン尿症ではその名の通り尿中フェニルケトンが, メープルシロップ尿症では尿中分枝鎖アミノ酸 ( バリン, ロイシン, イソロイシン ) が, 高チロシン血症では尿中チロシンが増加する. 重篤な肝障害では尿中芳香族アミノ酸は増加し, 分岐鎖アミノ酸は低下する. 低栄養状態では多くのアミノ酸の尿中排泄が低下する.. 硫酸 (sulfuric acid) メチオニン, システインといった含硫アミノ酸が代謝を受けると, 最終的には硫酸塩となって尿中へ排泄される. 含硫アミノ酸を多量に含む動物性蛋白質の過剰摂取は尿中硫酸塩の増加へとつながる. 尿中硫酸塩は尿中カルシウム量を増加させるため, ひいては尿路結石成因物質となり得る.. リン (phosphorus) 尿中リンはリン酸ナトリウム, リン酸カリウム, リン酸カルシウム, リン酸マグネシウムとして存在する. 尿中リンの大部分は食餌に含まれるリン脂質やリン蛋白, 核蛋白などの有機リンに由来する. また体内の細胞が破壊された際に生じるリンも尿中リンとして排出される. 骨軟化症や腎性くる病, 副甲状腺機能亢進症で増加し, 副甲状腺機能低下症で低下する. 2 1 章尿検査総論 498-22438

. シュウ酸 (oxalic acid) 1 日約 20mgのシュウ酸が尿中へ排泄される. 通常はシュウ酸カルシウム結晶の形で存在しており, 尿路結石成因物質の 1 つとなる. 遺伝性代謝疾患やシュウ酸を多く含む食餌 ( フルーツ, ホウレンソウ ) などの摂取過剰で尿中シュウ酸は増加する.. ナトリウム, カリウム, カルシウム (sodium, potassium, calcium) 尿中ナトリウム量は塩分摂取量にほぼ比例する. 臨床的には脱水や腎前性腎不全の鑑別などに用いられる. 尿中カリウムは原発性アルドステロン症やアルカローシスなどで増加し, 下痢や摂取不足,Addison 病などで低下する. 尿中カルシウムは副甲状腺機能亢進症やサルコイドーシスで増加し, 副腎機能低下症やサイアザイド投与などで低下する. B 病的状態で尿に含まれる成分. 蛋白質 (protein) 健常人においても激しい運動後や高蛋白食摂取後, 長時間の立位姿勢維持, 妊娠後期などで検出されることはあるが, 通常は 10 150 mg/ 日とごくわずかで, 尿試験紙法による尿定性検査で検出されることはほとんどない. 尿定性検査で蛋白尿が検出された場合, まずは腎機能障害を疑うことが肝要である. ムチンが認められた場合は膀胱炎の可能性もある.Bence Jones 蛋白は 50 60 で凝固し,100 で再溶解するという温度依存性をもつ蛋白で, 免疫グロブリンの L 鎖の k 型または l 型が 2 量体を形成したものである. 尿蛋白定性と定量との間に乖離を認める場合は尿中 Bence Jones 蛋白を調べる.. グルコース ( 尿糖 )(glucose) 尿糖は健常人でも運動後に認められることがあるが一過性であり,300 mg/ 日を超えることはない. 尿糖をきたす原因は様々であり, 約 15% は糖尿病以外の原因に由来する. このため, 糖尿病の確定診断には血糖値検査を行わなければならない. 血糖値が正常でも尿糖がでる場合は腎性糖尿といわれ, 尿細管障害が疑われる. また近年発売が開始された sodium-glucose cotransporter 2 (SGLT2) 阻害薬を内服している場合においても尿糖陽性となる. 498-22438 1. 尿の成分 外観 3

. ケトン体 (ketone body) ケトン体は脂肪分解時の中間代謝産物である. つまり脂肪が分解されエネルギー源として使用された際に産生される. 正常でもごくわずかに尿中に存在するが, 尿試験紙で検出されることはない. 糖尿病, 飢餓, アルカローシス, 運動直後, 脱水, 妊娠などの状態で検出される.. ビリルビン / ウロビリノーゲン (bilirubin/urobilinogen) 脾臓の細網内皮系でヘムは間接ビリルビンへと分解され, さらに肝臓において直接ビリルビンとなる. 肝機能障害もしくは胆汁分泌機能障害の場合, 直接ビリルビンは肝細胞から排泄されずに血液中に漏れ出し, 最終的には尿中へ排泄される. 一方, 溶血性貧血による赤血球破壊により, 血中の間接ビリルビンが増加しても, 尿中のビリルビン量は増加しない. なぜなら間接ビリルビンは不溶性であり, 尿中へはほとんど排泄されないからである. 一方, 尿中ウロビリノーゲンは, 溶血亢進や便秘などにより多量に腸管から吸収された場合や, 重症肝障害により肝で再処理されない場合に陽性化する. 逆に, 直接ビリルビンが腸管内へ排泄されない場合や, 重症の下痢により腸管での吸収が不十分な場合, 抗生剤投与によって直接ビリルビンを還元する腸管細菌が著減した場合などに陰性化する. 尿中ビルビリンと尿中ウロビリノーゲンは, これら様々な病気の判別に役立つ.. 血球 ( 赤血球, 白血球, 血小板 ) 健常人においても 1 日約 2 万個の赤血球が尿中に排泄されているが尿試験紙で陽性になることはない. 尿試験紙法で陽性反応が確認されれば, 沈渣で赤血球の存在を確認することが大切である. なぜなら, 溶血や筋肉破壊を経て尿中へ放出されたヘモグロビンやミオグロビンにも尿試験紙は反応を示すからである. 尿沈渣で赤血球が5 個以上 /HPF(400 倍強拡大 1 視野 ) であれば陽性と判断し, 泌尿器系悪性腫瘍や糸球体腎炎の検索が必須である. 鑑別のため尿中細胞診, 腹部 CT, 変形赤血球の有無, 血清学的検査, 腎生検などが有用である. 白血球において尿試験紙法における検査は, 尿中白血球が有するエステラーゼ活性を測定する方法であり, 特に好中球に反応を示す. 一方, 尿沈渣で白血球が5 個以上 /HPF であれば異常所見とされる. 尿試験紙法, 尿沈渣ともに陽性を認めれば, 尿路感染症, 尿路結石, 腫瘍などを疑う. 尿試験紙法が陰性で, 4 1 章尿検査総論 498-22438

尿沈渣が陽性の場合, 間質性腎炎やアレルギー性膀胱炎などによる好酸球の増加の可能性を検討する. 通常の検査において尿中血小板を測定する頻度は少ないが, 尿中血小板の形態が尿路感染症と, また尿中活性化血小板の比率が IgA 腎症の進行度と関連する報告が散見されており, 今後の大規模集団サイズでの研究が期待される. 研究成果次第では尿中血小板が尿路感染症の診断や IgA 腎症のバイオマーカーとして広く用いられる可能性がある. C 尿の外観的検査 主な尿の色調とその原因について以下に記述する. また尿の色を変える主な薬剤の例 ( 表 1) を示す.. 黄色通常, 尿は淡黄 黄褐色を呈する. 血液中の赤血球が寿命を迎えると, 肝臓で分解されビリルビンが産生される. このビリルビンが尿細管で一部酸化されウロクロム色素とよばれる黄色の物質へ変化する. このため正常な尿は黄色が基本となる. 色素の産生量と排泄量はほぼ一定であるため, 尿量が多ければ尿の色は薄く, 尿量が少なければ尿の色は濃くなる.. 透明利尿薬や水分摂取過多によることがほとんどであるが, 尿崩症や重篤な腎障害といった尿の濃縮力が低下する疾患の可能性もあるため注意が必要である. また糖尿病による口渇 多飲が原因となることがある. また意図的に水が混入されていることもある. 特に若い女性で, 糸球体腎炎に対してステロイドを長期内服している患者では, 満月様顔貌や肥満などの容姿変化への抵抗から, ステロイド減量を望むあまりそういった行為に及ぶ場合があり, 注意を要する.. ピンク色, 赤紅色, 赤褐色血液 ( もしくは赤血球 ) の混入であることが多い. 尿路感染, 糸球体腎炎, 泌尿器系悪性腫瘍, 囊胞出血, 腎結石などが原因としてあげられる. 横紋筋融解によるミオグロビン尿, 長距離走や剣道, 空手の練習などにより足底部の血 498-22438 1. 尿の成分 外観 5