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Cytometry Research 21(2):43~48,2011 総説 造血器腫瘍のマルチカラー解析の現状と問題点 小川恵津子 A Practical Approach for Multicolor Flow Cytometric Immunophenotyping of Leukemia and Lymphoma Etusko Ogawa Nippon Becton Dickinson Company, Ltd. はじめに近年, 複数のレーザーを搭載したフローサイトメーターが開発され, 本邦においても 2 レーザータイプのアナライザーが医療機器として臨床検査に使用され始めている また主要な血液細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体試薬においても, マルチカラー解析の幅を広げる多種類な蛍光標識抗体が市販され実用化している フローサイトメトリーを用いた臨床検査の中でも, 特に造血器腫瘍細胞の免疫表現型タイピング (Immunophenotyping) は, 現状の 2 カラー,3 カラー解析から, さらにカラー数を増やすことにより, 検査の効率化のみならず, マルチカラー マルチデメンジョン解析による臨床学的にも意味のあるアウトプットが期待されている 本稿では, フローサイトメトリー法のマルチカラー化に必要不可欠な 1) 蛍光色素の選択, 2) 抗体濃度調整 3) 機器設定について注意すべき技術的なポイントを紹介する 日本ベクトン ディッキンソン株式会社受付日 : 平成 23 年 5 月 31 日受理日 : 平成 23 年 6 月 3 日 1. 蛍光色素の選択現在, 造血器腫瘍細胞タイピング等, フローサイトメトリー法によるモノクローナル抗体を用いた臨床検査では,FITC,PE,3 カラー目の色素として,PerCP あるいは PE のタンデム色素である PE Cy5 が主に用いられている 赤色レーザー, バイオレットレーザー搭載の医療用アナライザーが利用できるようになった現在, 各機種の蛍光検出器に搭載されている光学フィルターに適した蛍光色素を用いることにより, さらにカラー数を増やすことが可能になっている Fig. 1 に医療機器 FACSCantoⅡの蛍光検出器毎に使用されている蛍光色素と, その蛍光スペクトラムを示す < Stain Index 染色指数 > 同じマーカーに対する同一クローンにおいても標識されている蛍光色素の性質により, 蛍光検出強度が異なる 抗体染色強度を数値化する方法として, 陽性細胞集団の平均蛍光チャンネル値と陰性細胞集団の平均蛍光チャンネル値を差し引いた値を陰性細胞集団の標準偏差の 2 倍 (2SD) で除した値,Stain Index を参考にし, マルチカラー染色の蛍光色素を選択すると良い (Fig. 2) Stain Index は, 陰性, 陽性細胞集団の平均蛍光チャンネル比 (S/N 比 ) にさらに, 細胞の自発蛍光や, 非特異染色などに影響される陰性シグナル分布のバラツキがファクターとして加えられており, より実際の蛍光抗体染色による陰性と陽性シグナルの分 43

造血器腫瘍のマルチカラー解析の現状と問題点 Figure 1 BD FACSCanto 3 レーザーで利用されている検出器フィルターと蛍光色素の蛍光スペクトラム 造血器悪性腫瘍細胞タイピングなどの臨床アプリケーションでは, 青色レーザー励起色素として FITC,PE,PerCP(PerCP Cy5,5),PE Cy7 の 4 色, 赤色レーザー励起色素として,APC,APC Cy7(APC H7), バイオレットレーザー励起色素として,BD Horizon V450,BD Horizon V500 が使用されている 離度合いが反映される値となっている Fig. 3 は BD LSR Ⅱフローサイトメーターを用いて, 異なる蛍光色素により標識された Human CD4 抗体を検出した際の Stain Index を示している 通常, 抗原発現量が少ないマーカーに対しては,Stain Index が比較的に高い PE, APC,PE Cy5,PerCP Cy5.5 や PE Cy7 標識抗体を選択することで, 検出感度の向上が期待される Figure 2 Stain Index( 陽性 陰性平均蛍光チャンネル値の差 (D) と陰性集団の表示幅 (W=2SD) の比 ) は陰性シグナルのバックグランド蛍光などが反映された蛍光抗体染色強度の指標となる 同じ平均蛍光チャンネル値の差であっても, 陰性陽性の分離度がよい W 1 の方が W 2 より SI 値が高く, 蛍光染色強度が高くなることを示している < Cyanin による非特異結合 > PE Cy5,PE Cy7 等のタンデム色素は, マルチカラー解析のカラー数を増やすために必要な蛍光色素である このタンデム色素に使用されている Cyanin は Fc レセプターに非特異的に結合する特性があるため,Fc レセプターを細胞表面上に多く発現している単球,B 細胞,NK 細胞などのバックグランド蛍光が高くなりやすいことが知られている タンデム色素標識抗体を用いた細胞解析においては, 単球等への非特異染色によるバックグランド蛍光を考慮し, 非特異染色レベルを確認するためのアイソタイプコントロールを立て, 陽性 陰性マーカーの位置を確認することが推奨され 44

Cytometry Research 21(2):43~48,2011 Stain Index が確保されている ) 抗体濃度を求める検討試験が必要であると考えられる 実際に濃度調整試験中に筆者が経験した偽陽性例を Fig. 4 に示す 原液 ( 単染色の場合の 1 テスト当たりの抗体量 ) で染色した場合,HLA DR FITC と CD10 PE Cy7 との非特異的会合により,HLA DR 陽性の末梢血単球等が CD10 陽性として検出されている 造血器腫瘍のマルチカラー解析においては, 市販のカクテル抗体製品も数多く販売されている これらマルチカラーカクテル抗体においては, 開発時に至適濃度に調整されており, さらに抗体の抗原への親和性が高いクローン (BD 社 Oncomark シリーズカクテル抗体製品の場合,CD7;M T701, CD10;HI10a,CD56;NCAM56,CD19;SJ25C1 等 ) や適切な蛍光色素が選択されており, そのまま使用することができる Figure 3 Stain Index ている また, タンデム色素標識抗体については, 単一分子の蛍光標識抗体に比べて, タンデム色素間の結合率が製造メーカー間およびロット間で異なることや, 固定などサンプル処理条件によっても, 蛍光の漏れ込み量が変動することが知られている よって, タンデム色素を使用する際には, 精度管理の基本でもある測定およびロット毎による蛍光補正値の確認が必要である 2. 抗体濃度調整フローサイトメーターによる抗原抗体反応に適切な抗体濃度は, 一般的に 0.125 1.25μg/10 6 cells とされているが, 1),2) マルチカラー解析のために同時に数種類の抗体を反応させると, 抗体同士の非特異的会合が生じる場合があり, 偽陽性 ( 本来ならば陰性であるのに, 陽性と判定される ) など誤った結果を臨床へフィードバックしてしまうケースも確認されている そのため, シングルカラー抗体製品を数種類組み合わせて, 同時マルチカラー染色を行う場合, 予め同時染色する抗体を用いて, 偽陽性染色がなく, かつ陰性陽性細胞集団の分離度が保持されている ( 平均蛍光チャンネル値比, 3. 機器設定 < 蛍光漏れ込み補正と蛍光検出の直線性 > 近年, パルスシグナルのデジタル波形処理が可能なフローサイトメーターが開発され, データ取り込み後に蛍光補正を調整することや, 蛍光補正値を自動計算することが可能になった 3) これら蛍光補正の自動化やキット試薬の普及により, マルチカラー解析は容易となっているが, その基本的原理を理解することで, より効果的にこれらシステムを活用することが出来る 例えば, 蛍光補正の自動計算は, その蛍光検出において直線性が保たれている範囲内でのみ有効となり, ドットプロットまたはヒストグラムのスケール上限のような直線性が保持されていない検出領域において適切な蛍光補正値を得ることが出来ないことは, 意外に知られていない (Fig. 5 参照 ) 例えば造血器悪性腫瘍細胞の表面マーカー検索においても,HLA DR, CD38 等, 高発現が予想される細胞表面抗原の測定においては注意を要する その場合, 使用する抗体の標識蛍光色素を Stain Index の低い FITC,PerCP 等を用いることや, 使用抗体量を調整するなど, 蛍光検出の直線性の保てるレベルで検出されるように調整すると良い また, 蛍光シグナル検出における直線性は, 機器の光学系の設計により異なる 最近の BD FACS フローサイトメーターにおいては,CST プログラム ( 後述参照 ) が搭載されており, 専用標準ビーズ,BD Cytometry Setup Beads( 蛍光レベルが異なる low, medium,high の 3 種類のミックスビーズ ) の検出蛍光レベル比により, 自動的に機器毎の蛍光シグナル検 45

造血器腫瘍のマルチカラー解析の現状と問題点 Figure 4 原液同時染色サンプルで検出された偽陽性集団 右上プロット P1 P2 CD10 PE Cy7 原液単染色では染色されていない 抗体を 2 倍 4 倍希釈すると偽陽性集団は消失した Figure 5 F ITC 強陽性の D プロットは蛍光補正の換算が適切にできず 陰性の A プロットの PE パラメーター MFI が同等になっ ていない 出における直線性範囲を知ることができる PMT 電圧の最適化 蛍光検出の直線性については 細胞表面マーカー フローサイトメーターにおいて 最適な蛍光検出感 解析と同様にフローサイトメーターの代表的なアプリ 度を得るための検出器電圧の設定は 機器の光学検出 ケーションである DNA 量の検出 セルサイクル解析 器の仕様によって異なっている Fig. 6 は CD4 APC 標 や 蛍光定量解析においても 正しい解析結果を得る 識抗体を反応させたヒト末梢血単核細胞の APC 検出 ための重要な機器精度管理項目となっている パラメーターヒストグラムである APC 検出器の光 電子倍増管 PMT の増幅効率 電圧 voltage の設 46

Cytometry Research 21(2):43~48,2011 定により,CD4 陰性, 弱陽性 ( 単球 ), 陽性 (CD4 + T ヘルパー ) の検出分離度合いが異なることが分かる 本来, 最良の蛍光検出感度でサンプルを測定するためには, 各検出器毎に蛍光検出に最適な光電子倍増管 (PMT) 電圧を求める必要がある 近年,BD FACSAria,FACSCantoII に搭載されている FACS Diva ソフトウェアの機器精度管理プログラム CST(BD Cytometer Setup and Tracking) では, 先に述べた検出器の直線性領域の設定に加えて, この PMT 電圧の最適化も自動で実行する機能を有している 具体的には, 上述の CD4 染色サンプルのような low,medium, high の 3 種類の蛍光ビーズがミックスされた標準ビーズ CST ビーズを用い,PMT 電圧を 300 から 900 まで 50volt ずつ変動させ, 各 point による蛍光検出 CV% を求め,CV% が最小となった電圧を最適値としている (Fig. 7 参照 ) 理想的には陰性陽性細胞の検出分離度が良い PMT 電圧設定で測定するべきではあるが, 実際 のサンプルでは, サンプルの自発蛍光バックグランドや抗体結合による蛍光強度などに応じて微調整が必要になる場合もある 造血器悪性腫瘍細胞のマーカー測定においては, 使用抗体パネル内で,PMT 電圧や蛍光補正値を変動させる方法は, 煩雑であり, 効率が極めて悪い 従って, 最適化された PMT 電圧値を参考にして, 各検出器の PMT 電圧値についてはパネル内で固定し, その PMT 電圧下で, 蛍光検出の直線性が保持されている範囲内に, 陽性細胞の集団が表示されるように蛍光色素を選択し, 抗体濃度を調整すると良い 結語著者は二十数年前, まだ市販の蛍光標識モノクローナル抗体の蛍光色素が FITC と PE のみしかなかった時代, 市販のシングル抗体製品を用いて CD3 FITC と主にB 細胞に発現している C3d レセプター (CR2) に Figure 6 PMT の Voltage を 300 から 900 まで 50 ずつ変えて標準ビーズを測定し 分布のバラツキ (CV%) を算出した CV 値が収束した最小の Voltage が最適な PMT voltage になる Figure 7 各蛍光色素により PMT 電圧の最適値が異なる 47

造血器腫瘍のマルチカラー解析の現状と問題点 対する抗体 OKB7 PE による2カラー染色サンプルを測定したことがある その頃は, まだ抗体多重染色による偽陽性染色が起り得ることを知らず, シングル抗体の使用抗体量をそのまま反応させてしまい, CD3 + OKB7 + の偽陽性パターンに遭遇しパニックになった経験がある 今では, このような偽陽性染色が起こらないように予め濃度調整された市販のカクテル抗体を利用できるようになり, 誰でも手軽に何色でもカラー数を増やすことができるようになった 本稿で紹介したマルチカラー解析において注意するべきポイントを理解された上で, 最新の機器, 解析ソフトウェア, 試薬製品を有効に利用し, 迅速かつより詳細なマーカー情報が得られるフローサイトメーターによるマルチカラー解析をルーチン検査, 研究等へ応用していただきたい 参考文献 1) Antibodies A Laboratory Manual Ed Harlow-Cold Spring Harbor Laboratory David Lane Imperial Cancer Research Fundo Laboratoroes Cold Spring Harbor 1988 2) Current Protocol in Molecular Biology Fredrick M. Ausubel, Roger Brent, Robert E, Kingston David D, Moore, J.G. Seidman, John A. Smith, Kevin Struhl Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School Greene Publishing Associates and Wiley- Interscience 1992 3) Cytometry Research 21(1):1-7, 2011. デジタル時代のコンペンセーション理論に基づいたマルチアカラー ソーティング清田純 4) Nature Protocol 1, 1522-1530(2006)Quality assurance for polychromatic flow cytometry, Stephen P Perfetto, David Ambrozak et.al 48