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16 第 2 章 : 心電図の基礎 細胞膜の電池と抵抗 細胞が K の平衡電位になっている時 細胞内は外に対して 96mV の電位差が生じているので 細胞膜にはこの電圧の電池が存在していると考えられ これをカリウム膜電池といい 1 起電力 = 電気を発生する力を持つことになります また イオンチャネルが開いていてイオン電流が流れる時にはそこに抵抗が存在し K チャネルでは K 膜抵抗といいます 細胞膜は脂質二重層で電気的に絶縁されているので イオンチャネル以外ではイオンの移動は起きず 膜の表面に内側にはマイナス 外側にはプラスの電荷が集まって存在している状態になり これを電気 ( 的 ) 二重層といいます Na の場合は平衡電位が細胞内の方が高いので電池の向き ( 起電力の向き ) は K とは逆になり 電気二重層の極性も逆になります また Na チャネルでは Na 膜抵抗が存在します 以上の細胞膜の電気的性質を電気回路で置き換えると ( 等価回路という ) 図のようになります 細胞膜の電位は 外側を基準の としてこれに対する細胞内の電位として表され 細胞膜電位といいます なお 細胞膜にはイオンチャネルはたくさんあり 多くのチャネルが開いていると電池の電圧は変わりませんが膜抵抗は並列になって低下します 静止状態では多くの K チャネルが開き Na チャネルはごくわずかしか開いていません したがって この時細胞全体では K 膜抵抗 <<Na 膜抵抗となっていて K 電流のみが多く流れ Na 電流はほとんど流れていない状態です ここではそれを簡略化してスイッチの開閉で表し K チャネルのみが開いるとしています K イオンと静止膜電位 普段は一種類の K チャネルのみが開いていて 細胞膜のカリウム膜電池による電位差は 96mV です しかし K イオンは一定量外に少しずつ出続けていて ( 背景 K 電流 ) これが K 膜抵抗を外向きに流れることで電位差が生じます これは電流の向かう外側が電圧降下で低く内側が相対的に高くなるので 細胞膜電位は K イオンの平衡電位よりも若干高い 80 ~ 90mV になっています これを静止膜電位 この状態を分極といいます この分極している状態が活動していない時の安 85mV 定な状態です 結局 普段の細胞の正常状態は K イオンの 96mV 濃度差だけで決まっている ということになります Note 細胞内 K 細胞膜の電池と抵抗 ( 等価回路 ) 膜抵抗は並列で抵抗値が下がる 膜電池と膜抵抗はたくさんある イオンによる静止膜電位と分極 1 この電池は 細胞膜内外の電解質イオンの濃度差によって生じるので 濃淡電池ともいう 濃淡差の大きい方が電圧 ( 起電力 ) が大きくなる K の濃度差の方が Na よりも大きいので 電圧も大きい 細胞内 細胞膜電位 脂質膜 Kチャネル K 膜抵抗 Na チャネル K 膜 抵 抗 細胞膜 96mV K 膜 イオン交換ポンプで K は 一定の濃度差になっている細胞内細胞外 Naチャネル Kチャネル K は閉じているが開いている 85mV K 膜電池 K 膜抵抗 細胞膜 ( 脂質二重層 ) (K チャネルが開いている時 ) ( 電気的二重層 ) ( 電気的二重層 ) Na 膜抵抗 (Na チャネルが開いている時 ) 細胞膜の電位差 分極 K 膜電池 96mV Na 膜電池 60mV 電 池 細胞外 脂質膜 背景 K 電流 細胞外 細胞外 静止膜電位 K イオンの濃度差で決まる静止膜電位細胞内 K 平衡電位 =K 膜電池の起電力背景 K 電流による上昇 Premium 乾電池では 金属の電極から陽イオンが電解質溶液に出て行き 余ったマイナスの電子がプラス電極に向かって流れようとするのが起電力で この時 電流がプラスからマイナスに向かって流れる といっている 電池の中の電流はイオンがマイナスからプラスに向かって流れている 細胞の膜電池でも同様で 電池の中では電流はプラスに向かって流れる 電子 乾電池 電流 細胞膜 膜電池

24 第 2 章 : 心電図の基礎 1.4 の活動電位と心電図波形の対応 での活動電位と実際に観察される心電図波形は図のような関係になっています 1 外部からの刺激 ( 刺激伝導系からの電流の流入 ) によって 急速に電位が高くなる脱分極の時間を 0 相といい これが次々と細胞を伝播して 心電図波形の QRS 波を形成します 続く第 1 相は Na チャネルが閉じて脱分極が終了し 一過性に K イオンで出ることで膜電位がわずかに下がる時間です 第 2 相は Na に続いて細胞内に流入する Ca 2 イオンと流出する K イオンとのバランスで維持されている時間でプラトー相ともいい 電位変動がほとんどないため心電図波形のレベルが変化しない ST 区間にあたります 第 3 相は 急激な再分極時間にあたり Ca 2 イオンの流入が終わるとともに K イオンが一過性に多量に流出することで起こり T 波を形成します T 波の前半部は K が出始めてもまだ Ca 2 の流入が完全には終わっていない区間にあたるので傾斜がなだらかで 正常な T 波は左右が非対称形になります 第 4 相は細胞が分極状態になっている時で 拡張期にあたります 0 相から 3 相まで 心電図波形では QRS 波から T 波終了まで (QT 間隔 ) が が収縮している時間にあたり の活動電位持続時間 ( a ction potential duration;apd) といいます 電解質イオンの出入り (細胞外に出る細胞内の電位 細胞内に入る30mV 0 内向き電流)(外向き電流)K 脱分極 0 相 Ca 2 と K が重複している区間 Na Ca 2 K Na 1 相 Ca 2 2 相 K 再分極 3 相 K 時間 とりあえず K が出始めてもまだ Ca 2 が入っている区間 90mV 静止膜電位 刺激 0 100 200 300 400 (msec) R 活動電位持続時間 (APD) T 4 相 時間 心電図波形は全体を見たものであるが およそこのような対応と考えてよい T 波の終わりははっきりしていなければいけない 心室の心電図波形 Note 心室拡張期 S ST 心室収縮期 Na Ca 2 K 心室拡張期 電解質イオンと心電図波形の関係 T 波は左右非対称 T 波の前はなだらか 後ろは急傾斜前はかなりなだらかで T 波の始まりが分からなくても異常ではない 1 心電図波形は心臓全体の活動を見ている 1 つの細胞での電位変化と心電図波形を対応させた上図は正確なものではないが 電解質イオンと心電図波形の対応の概略を理解するためにはこのように考えてよい P ECG itfal l 心臓が収縮運動をするので電気が起きるわけではない 電気が起きるので その結果筋肉が収縮する 電気が起きても ( 心電図が発生していても ) 心筋が収縮しない 電気機械乖離という状態もある

52 第 2 章 : 心電図の基礎 とりあえず その 1 おかわり! 心電図の どうして? みんなの疑問 1 基礎編 K イオンはいつも出ている Na イオンは入る一方 そのうちに 中と外が逆転しないのか? チャネルを通って出ているK イオンや脱分極時に一気に入ったNaイオンは 一方でN a K 交換ポンプによっていつでも戻されています くわしくは 21ページ その 2 外向きに流れているのに どうして 内向き整流 なのか? 静止膜電位を決めている K チャネルは 内向き整流型 K チャネル であると本に書いてあります そして これは外向きよりも内向きの方に流しやすいからだ とも書いてあります しかし K イオンはいつでも外に向かって流れていて 内向きに流れる時はありません なのになぜ? と 多くの人がここでイオンチャネルの勉強をあきらめてしまうようです 実は 普段外向きに流れているとはいっても それはあまり多くなく もしも膜電位が低くなりすぎると 平衡を保つために外向きよりも内向きにもっともっとたくさんの K を流すことができる性質があるということです しかし 正常な場合は このような事態にはならないのです その 3 K チャネルの名前は IK1 とか IKto とか IKs とか わけが分からないんだけど? くわしくは 20 ページ イオンチャネルの名前には統一性がなく 見つかった順でつけられたり 性質の違いでつけられたりと統一性がありません 一度記号の意味を知るとその性質と役割が分かりやすくなります くわしくは 19ページその4 刺激伝導系からの刺激で Na チャネルが開くのは分かった しかし 刺激伝導系から離れている細胞も脱分極するのはどうして? 刺激伝導系から直接電流が流れてきて脱分極するのは確かに刺激伝導系のそばの細胞だけです しかし この細胞が脱分極してその隣の細胞との間に電位差が生じると そこに新たな電流が発生しこれが次の細胞の刺激となり 次々と伝わっていきます くわしくは 26ページ その 5 電流は から に向かって流れる では 側の電極に向かって流れてくるのはどうして? 確かに電流は電圧のからに向かって流れます しかし電極の, の記号は 機械が表示する波形の向きを決めるための名前で 電圧の, を示しているのではありません 側と決めた電極に向かって流れてくる電流で波形を上向きに動かしているのです くわしくは 29ページ その 6 R 波は電位が上がる時なので上向き では電位が下がる時の T 波はどうして下向きにならないのか? 心電図波形は 心筋細胞で起きる電位やその変化そのものではありません 心室全体で脱分極や再分極が進行する時に発生する電流を捉えて波形にしています 電位が上がる脱分極も 下がる再分極も の厚み全体でその時に発生する電流は同じで外側から見ると向かって流れてくるので 波形はどちらも上向きになります くわしくは 32 ページ

84 第 4 章 : 心電図波形の異常 2.3 高カリウム (K) 血症の心電図波形 T 波の変化脱分極の後半に 静止膜電位を決めている K チャネルを流れる外向きの K 電流が増えるため再分極がより早く起きるようになります さらに 電位依存性のある遅延 K チャネルも早く開くようになるので 再分極が急速に進む結果 T 波の形が左右対称形で幅は狭くなり 増高 尖鋭化していわゆるテント状 T 波を呈します ただし T 波の振幅は個人差が大きく 電極の位置によってもかなり異なります テント状 T 波とは左右対称形のものをさすことに注意し 大きさよりも左右対称形と幅の変化を重視すべきです K 濃度が上がると膜電位が上昇する 膜電位が上がると Na チャネルが開きにくくなる 遅延 K チャネルが早く開く 外向き電流 正常 外向き K 電流がより速く 大きくなる 高 K 血症 外向き 脱分極が鈍化する高 K K 濃度正常静止膜電位 再分極が急速化する 高 K 心電図波形 90 0 電 細胞膜電位流静止膜電位の (mv) が上がる向 静 き 止膜 内向き 電 90 位 0 30 細胞膜電位 (mv) R 波が鈍化する T 波はさらに左右対称で幅が狭くなる ( テント状 T 波 ) さらに テント状 T 波 再分極が速く急になる 外向き K 電流と細胞膜電位の変化 高 K 血症による心電図の変化 高 K 血症による外向き K 電流の増加と T 波の変化 とりあえず QRS 波の変化高 K 血症で静止膜電位が上がるに従い Naチャネルが開き難くなるうえ 細胞内のマイナス電位に引きつけられる力も弱くなるために Na イオンの流入が緩慢になって 脱分極が鈍化し QRS の幅がより広くなり 振幅も低下していき より悪化すると 次第に T 波と区別がつかないような形になって 心電図全体が S IN 波状になってしまいます さらに高 K 血症が進行し 静止膜電位が上がると もはや Na チャネルが開かなくなるので 心停止に至ります T 波の振幅は個人差が大きく 高 K 血症でも 振幅の変化では分からない人もいる 左右対称形になることは個人差がないの で とりあえずこれで見つけること 正常時 高さはそれほど変わらない 高 K 血症 T 波が大きい人 ( 若年者に多い ) 高さはそれほど変わらない 左右対称形のテント状 T 波 左右対称形のテント状 T 波 T 波が小さい人 ( 高齢者に多い )

126 第 5 章 : 不整脈 2.2 上室期外収縮 心房期外収縮 期外収縮が心室以外で発生した場合 上室期外収縮 (Premature supraventricular contraction: PSVC) とします これは 心房および房室接合部で起きたものの総称で 心室変行伝導を起こさない限り QRS 以降は正常な形になります 心房期外収縮 QRS 波の前に P 波があれば 心房期外収縮 (Premature atrial contraction : PAC,APC) で P 波は洞結節以外の場所で発生するため異所性 P 波となって形が異なることが多くなります ただし 発生タイミングが早いと直前の T 波に重なるので見つけにくくなります この時は T 波が 2 峰性になったり 頂点に重なると T 波の振幅がやや大きくなるので 前後の正常な T 波と比較して確認するようにします また 心房期外収縮の後は 心房で発生した刺激が洞結節に進入し一旦リセットしてあらためて洞結節の自動能周期で始まることになります そのため 心房期外収縮の後の RR 間隔は正常な洞周期よりも少しだけ長くなります この場合は 心室期外収縮とは異なり代償性休止期とはいいません 房室接合部収縮 Premature supraventricular contraction:psvc Premature atrial contraction : PAC,APC 房室結節およびその近傍で期外収縮が起きた場合は房室接合部収縮で 心房と心室は同時に収縮するため QRS に重なり P 波は見えなくなります 房室結節より下部で発生すると 心室の方が心房より早く収縮するため QRS のすぐ後ろに 心房を下から上に向かう逆行性 P 波として見えることがあります P 波はない 心室期外収縮 代償性休止期 心室期外収縮 ( 間入性 ) 刺激は心室内で起こり 心室壁に沿って伝わる 心房へは伝わらない (a) 心室期外収縮 前後の正常な T 波と比較して同じ形なので P 波は重なっていない ( 左室側で起きたものを右室側から見た場合 ) 必ずP 波がある異所性 P 波の場合 形が異なることが多い 心房期外収縮 発生タイミングが早いと P 波が T 波に重なり変形する 心房期外収縮 洞周期刺激は心房内で起こり 刺激伝導系で心室に伝わる 期外収縮波が洞結節に到達した時から新たに始まる洞周期 (b) 心房期外収縮 P 波がない 房室接合部収縮 房室接合部収縮 洞周期刺激は房室結節またはその近くで起こり 心房と心室は同時に収縮する 期外収縮波が洞結節に到達した時から新たに始まる洞周期 (c) 房室接合部収縮 QRS の後ろに逆行性 P 波として陰性 P 波が出ることもある ( 心房より下側から見た場合 ) P 波がある 心室変行伝導 P 波が T 波に重なると振幅が大きくなる 心室変行伝導 刺激は心房内で起こり 左脚で左室には伝わるが 右脚はブロックしてしまう R 波の立上がり部分は正常 ノッチがあり分裂する ( 右脚ブロック型 ) (d) 心房期外収縮の心室変行伝導上室期外収縮と心室期外収縮の違い 前後の正常な T 波の高さと比較すると P 波が分かる ( 右室側から見た場合 )

97 の影響 障害がの内膜側に起きている時は そこから流れ出すは外膜側に向かい 外側にある 側電極から流れ込む形になるため 心電計の電位はその電流の大きさだけ上昇します 逆に 障害が外膜側に起きている時は は反対向きになるので 心電計の電位は低下します 障害の状態が一定であれば電流の大きさも変化せずこの電位変化も一定で定常的な直流電位になります ただし 心電計では直流電位の変化は観察されず が流れている時も常に一定の基線として記 録されています 障害が内膜側の場合 障害が外膜側の場合 障害部位 正常部位 正常部位より高い静止膜電位 90mV 冠動脈 電極 冠動脈 記録される波形 によって高くなる 電流が流れ込んでくるので 電流が流れ出ていくので 記録される正常部位電極障害部位波形によって低くなる 4 心電図波形の異常 正常部位より高い静止膜電位 90mV による変化 心電図波形の見え方障害部位もイオン交換ポンプが正常ではないだけで脱分極することはできるので 興奮時には正常部位と同じ電位まで上昇し その時には電位差はなくなり 本来の 0 電位になります その結果 興奮時の脱分極電位が 本来は変化していないにもかかわらず相対的に変化して記録されるので 脱分極期間に当たる ST 部分が低下あるいは上昇して観測されるわけです < 記録される心電図波形 > < 電極に現れる電位変化 > 障害範囲 内膜側 外膜側 電極 実際の見え方 障害範囲 内膜側 新たな基線 本来の基線 によって静止時の直流電位が上がる 外膜側 すべて脱分極 電極 動画 < 分極時 > < 細胞膜電位の変化 > この差でが流れる < 脱分極時 > 脱分極中は電位差がない 障害部位の電位変化正常部位の電位変化 心筋障害がある時の電位変化と心電図波形