徳島市受託研究報告書 青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 2011 年 3 月 31 日 四国大学 生活科学部 吉村幸雄 髙橋啓子
青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 目 次 1. 目的 1 2. 携帯食事手帳システムの概要 1 (1) システムの基礎データ 1 (2) 利用方法 1 (3) 確認できる情報 1 3. 携帯食事手帳利用の手引き 2 (1) 携帯食事手帳 (QRコード) 3 (2) 料理選択の仕方 4 (3) 料理リスト 5 (4) 使ってみよう 10 4. 携帯食事手帳の利用に関するアンケート結果 11 (1) アンケート結果 11 (2) システムの今後の展望 13 5. 携帯食事手帳システムの登録データの集計結果及び考察 14 (1) 調査期間及び対象者 14 (2) 結果及び考察 14 6. 今後の展望 17
青年期を対象とした携帯食事手帳システムの提供 1. 目的 若者の食生活は欠食 夜食等 食に関する問題点が多く見られる その結果 男性の肥満の増加 一方で女性のやせ過ぎなど健康に関する問題が多い 健康の維持や将来の生活習慣病のリスクを低減するためには早期からの食生活改善を行う必要がある そこで 携帯電話のインターネット機能を利用した食事管理システムを開発し 大学生を中心とした若い人たちに利用してもらい 食生活改善を行う 2. 携帯食事手帳システムの概要 インターネット上にシステムを公開し 携帯電話から日々の食事 ( メニュー ) を送信することで システム上の基礎データを基にエネルギー 三大栄養素の比率などを自動計算する 入力したデータは1 週間分が保存され 1 日あたりの栄養素摂取量の平均値等を確認できる (1) システムの基礎データ 1 料理栄養価 食事バランスガイドデータ 2 食事摂取基準 2010 年版 (18~29 歳 ) (2) 利用方法 1 2 3 携帯電話によるアクセス URL を入力または QR コードを読み込むことによってシステムにアクセス する 利用者情報の登録 郵便番号上 3 桁 男女の区分 年齢 身長 体重等 初回登録時に ID を発行し 次回からは ID 入力のみでアクセス可 食事情報の入力 月日 朝 昼 夕を選択 34 の料理グループを選択し グループ内の料理を選択 登録する (3) 確認できる情報 1 2 3 4 1 日当たりのエネルギー タンパク質 脂質 炭水化物 PFC 比率 食事バランスガイドによる主食 主菜 副菜 乳製品 果実の摂取量 1 週間に食べた料理 その他 食に関する情報 1
参考 < 食に関する情報の例 > 朝ご飯, 食べていますか? 平成 19 年国民健康 栄養調査では朝食を食べない人は 20~29 歳の男性で3 人に1 人 女性では4 人に1 人です 早寝 早起き 朝ご飯の習慣を作りましょう 朝食を食べるとこんな良いことがあるよ 1 日の生活のリズムをつくる 胃が活動を開始し 体温が上がる 身体と脳にエネルギーを送り 活発に活動し始める お腹の中も動き始めて便通がよくなる 栄養バランスがよくなる 3. 携帯食事手帳利用の手引き 携帯食事手帳を利用しやすくするために次の手引きを作成し配布した 徳島市ホームページ上で別途 携帯食育手帳 ( 操作手引書 ) 掲載のため省略 2
4. 携帯食事手帳システムの利用に関するアンケート結果 システムを利用した 159 名の学生に対して 使い勝手等についてアンケートを実施した その内 94 名から回答があった 調査期間 : 平成 22 年 10 月 22 日 ~ 平成 22 年 11 月 5 日 アンケート回答者 :94 名 (1) アンケート結果 1 携帯食事手帳の使い勝手について 2 1 食分の回答にはおおよそ何分くらいかかりましたか? 3 携帯食事手帳を使用して良かった点 悪かった点 良かった点 1. 簡単に食事状況が把握できる (53.2%) 2. 結果がわかりやすかった (37.2%) 3. 栄養や食事について考えるきっかけになった (28.7%) 4. 入力作業が簡単であった (27.7%) 5. 楽しく利用できた (9.6%) 6. 料理数が豊富であった (4.3%) 11
悪かった点 1. 料理数が少なく 目的の料理がなかった (63.8%) 2. 分量の入力が出来ない (51.1%) 3. 同じ区分から料理を 2 種類選ぶ時 (34.0%) 4. 画面のスクロールが面倒だった (27.7%) 5. 毎回パスワードを入れるのが面倒だった (26.6%) 6. 料理区分がわかりにくい (25.5%) 7. 料理数が多すぎて選ぶのに大変だった (1.1%) 4 少なかった料理グループ ( 上位 ) 料理グループ 選択率 (%) 12. 肉料理 30.9% 16. 肉 野菜ミックス料理 24.5% 17. 魚 野菜ミックス料理 16.0% 13. 魚介料理 14.9% 14. 卵料理 12.8% 15. 豆腐 豆料理 11.7% 18. 野菜 いも 海藻料理 11.7% 19. サラダ 11.7% 33. お茶 コーヒー 10.6% 2. ご飯もの ( 和 ) 9.6% 10. スパゲティ ピザ 9.6% 21. みそ汁 すまし汁和菓子 9.6% 5 わかりにくかった料理グループ ( 上位 ) 料理グループ 選択率 (%) 16. 肉 野菜ミックス料理 21.3% 17. 魚 野菜ミックス料理 14.9% 13. 魚介料理 9.6% 12. 肉料理 8.5% 18. 野菜 いも 海藻料理 5.3% 2. ご飯もの ( 和 ) 4.3% 14. 卵料理 4.3% 28. デザート類 4.3% 12
6 追加して欲しい料理鍋 納豆 果物など 7 今後も携帯食事手帳を利用したいと思いますか? 質問項目 回答数 回答率 1 利用したい 10 10.6% 2 どちらかといえば利用したい 18 19.1% 3 改善されれば利用したい 36 38.3% 4 どちらとも言えない 19 20.2% 5 どちらかといえば利用したくない 4 4.3% 6 利用したくない 6 6.4% 無回答 1 1.1% 8 改善して欲しい点や追加して欲しい機能について ( 自由記述 ) パスワード入力の省略 料理数の増加 食事に対するアドバイス 分量の入力 料理選択の方法 料理グループの改善 ( 料理を探すのがめんどう ) 複数入力の改良 ダイエットに役立つ機能 全ての携帯で利用できるようにして欲しい (au 携帯が使用できなかった ) (2) システムの今後の展望 今回の携帯食事手帳を試用した結果 使い勝手については 難しかった, やや難しかった を合わせて 54% の約半数が難しいと感じていた 入力等にかかった時間は 5 分以内が 80% であり 短時間での入力が可能であることがわかった 3 携帯食事手帳を使用して良かった点では 食事状況の把握が簡単 が 53% と最も多く 栄養や食事を考えるきっかけとなった などの評価も高かった 悪かった点では 選択できる料理項目が少なく 実際に摂取した料理が携帯食事手帳になかった (64%) 分量の入力が出来ない (51%) が多く これらは 改善して欲しい点にも記載されていた また 今回の試用システムでは 同じ料理グループの料理を 2 種類以上摂取した場合の入力方法が複雑であったため 利用者が理解できておらず 実際に食べた料理の量と異なる量が登録されてしまった可能性が考えられた 今後 利用者がより簡便に利用できるように料理の種類や数の改善 料理選択の方法 摂取分量の入力などの改善が必要であると考えられた 13
5. 携帯食事手帳システムの登録データの集計結果及び考察 携帯食事手帳システムを利用した 228 名の栄養素摂取状況を把握し 問題点を明ら かにした (1) 調査期間及び対象者 調査期間 : 平成 22 年 10 月 22 日 ~ 平成 23 年 3 月 31 日 対象者 :228 名 ( 女性 183 名 男性 45 名 ) (20 代女性 157 名 20 代男性 33 名 ) (2) 結果及び考察 携帯食事手帳を利用した人の栄養素摂取状況を表 1 図 1 に示した 結果は 20 歳代の男女 (190 名 ) のみについてまとめた 栄養素摂取量の目安とする食事摂取基準と比較すると ( 表 1) 女性の摂取量ではエネルギー たんぱく質はほぼ適正量摂取できていたと推測できる しかし カルシウム 鉄 ビタミン 食物繊維等は不足の可能性が高い また 脂質エネルギー比が高く 脂質の摂取量が多いと推測される 男性では調査人数が少ないため 充分な評価が出来かねるが エネルギーをはじめとして多くの栄養素の摂取量が少ないと推測される また 同年代の他の調査である平成 21 年国民健康栄養調査と比較すると ( 表 1) 摂取量の平均値は国民健康栄養調査を下回っていた 特に男性にその傾向が強い 栄養素摂取量の違いは 調査方法が異なることも要因のひとつと考えられるが 女子ではビタミンDとビタミン B1 男子ではビタミンDが国民健康栄養調査では充分な量が摂取できていたが その他の栄養素については不足している可能性が高いと考えられた 傾向としては本調査と栄養素摂取量はよく似ており 20 歳代の栄養素摂取の特徴と考えられる 14
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図 1 携帯食事手帳エネルギー摂取量の分布図 さらに 本調査のエネルギー摂取量の分布を見ると ( 図 1) 適正量は女子では 1600 ~1800kcal 男子では 2000~2400kcal と考えられる この範囲で摂取できていは女子で 35% 男子で 15% であり エネルギー摂取量については不足している者が女子で 40% 男子では 67% であった また 過剰と考えられる者は女子で 26% 男子で 18% 未満と考えられた 平均値ではほぼ適正な範囲のエネルギー摂取量と思われたが 男女ともエネルギー摂取量が不足の者が多く その他の必要な栄養素が充分摂取できていないことが考えられた エネルギー摂取量のバランスを PFC 比率から見てみると 脂肪エネルギー比は上限であり 炭水化物摂取量は下限の範囲であった よって 脂質量を減らし 炭水化物を多く摂取することによりエネルギー摂取バランスはよくなると考えられた また ビタミンやミネラル 食物繊維は必要量の 50~80% 程度しか摂取できていない これらの結果から 油脂類や脂身つき肉類など脂肪の多い食品を控えて, 穀類など主食となる食品をしっかり摂取することが望まれる さらに 野菜や果物 乳製品の摂取を心がけるように指導が必要と考えられた 16
6. 今後の展望 平均値で見るとほぼ適正な食事をしていると見られる青年期の食生活であるが 個々においてはエネルギーの過剰もしくは不足による摂取栄養素のアンバランスがみられ 特にビタミンやミネラル 食物繊維など身体の調子を調える栄養素の不足が明らかとなり 食事に問題を抱えている者は多いことがわかった 本調査と同年代である 20 歳代の栄養素摂取量を他の調査と比較した結果 よく似た傾向を示しており 青年期の食生活改善の必要性は本調査に限るものではない この結果を踏まえて 如何に個人を対象として 青年早期から食生活への興味を持たせ 食事を改善する行動変容を起こさせるかが課題である 青年期においては自らの食事に関心を持ち 栄養や健康について考える者は少ないと考えられる そこで 食生活改善への興味を引き出す事が重要であり そのひとつの方法として青年期ではほぼ全員が持っている携帯電話を活用したシステムは有効な手段ではないかと考えられた ただし 携帯電話会社のシステムの違いにより対応できない携帯電話があり 携帯食事手帳システムのプログラム修正や対応機種に苦慮し 当初予定していた他大学の学生へのシステム提供が行えず 利用は学内の学生に限られた 今後このシステム対応も課題の一つとなる また アンケート結果よりシステムについては料理の種類や数 料理選択の方法など改良点が浮き彫りにされたが いつでもどこでも利用できるという利便性を生かして 普及に努めたいと考えている 17