(Microsoft PowerPoint - \220H\222\206\223\ \214\335\212\267\203\202\201[\203h)

Similar documents

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

Microsoft PowerPoint - 食中毒って何?

滋賀県のHACCP推進の取組み

平成 30 年東京都食中毒発生状況 ( 速報値 ) 平成 30 年 8 月 31 日現在 8 月末までの都内の食中毒の発生状況が 東京都から公表されました 昨年と比較すると 件数では 30% 増 患者数では 46% 減となっています 最近 10 年間の平均と比較すると 患者数はほぼ同じですが発生件数

菌名原因食品及び感染したときの症状特徴 黄色ブドウ球菌 原因食品 : 弁当 おにぎりなど潜伏期間 :1~5 時間症状 : 吐き気 おう吐 下痢 腹痛などの症状が現れます ヒトや動物の化膿した傷口やおできなどに存在し 食品に付着し増殖するときに毒素を作ります 毒素は熱や乾燥に強い性質があります ウエル

Microsoft PowerPoint - 資料3【厚労省】【1102差し替え】151117ノロウイルス【リスコミ名古屋,横浜】.pptx

Microsoft Word - 届出基準

!YAK Sample 教材! 問題 2 セレウス菌 27 セレウス菌は 短い潜伏期間で嘔吐を主徴とするタイプと より長い潜伏期間で下痢を主徴とするタイプの2 つの型があり それらの発症にはいずれも毒素が関与している (94 70) 黄色ブドウ球菌 28 Staphylococcus aureus

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F F696E74202D E392E33308D758F4B89EF288AB490F590AB88DD92B0898A29205B8CDD8AB B83685D>

年次別 主な病原体別の食中毒事件数の推移 * 腸管出血性大腸菌を含む

衛生管理マニュアル 記載例

 

Microsoft PowerPoint - ™mfiIfl�™B‘á−QŁfl›ï.ppt

<4D F736F F F696E74202D20345F87408DC58BDF82CC C594AD90B68FF38BB58E9697E182C98A7782D4838A E82CC82C282AB82A082A295FB2E707074>

PowerPoint プレゼンテーション

2 食中毒ってなんですか? 飲食物を摂取することによって起きる 急性の胃腸障害を主症状とする健康障害のこと 大部分の食中毒事例は ある種の微生物により発生 ただし 原因 ( 病因物質 ) によっては 主症状が胃腸障害以外のものもある 昔は 食あたり とも呼ばれていた

スライド タイトルなし

東京都内の保健所 ( 都内自治体数 :23 区 26 市 5 町 8 村 ) 西多摩保健所 秋川地域センター 多摩立川保健所 多摩小平保健所 特別区 (23 区 ) 八王子市保健所 町田市保健所 保健所数 :23 区 2 市 6 都 (2 地区センター ) 南多摩保健所 武蔵野三鷹地域センター 多摩

「葛根湯医者」はヤブ医者?

( 別記報告様式 1 ) 記載例 2 感染症等 ( 疑 ) 発生報告票 1 報告年月日 平成 1 9 年 4 月 1 日 ( 日 ) 1 5 時 0 0 分現在 2 施設等の名称 学校法人 函館学院 函館保健所幼稚園 ( 種 別 ) ( 私立幼稚園 ) 4 報 告 者 職 氏 名 園 長 名 函 館

Taro-入所マニュアル.jtd

2. トイレの後には必ず手洗いをしましょう! 調査から 15.4% の方がトイレの後に手を洗わないことがあるという結果が得られました ( 小便後又は大便後に手を洗うのどちらかを選択しなかった方 どちらも選択しなかった方 トイレで手を洗わないを選択した方 の合計 ) Q10 特にこれからの季節に流行す

2001年(平成13年)10月1日創刊  2007年(平成19年) 1月1日発行

<95CA955C E94AD90B68FF38BB5816A2E786C7378>

<< 目次 >> はじめに 食中毒発生時の対応 P2 P3~P7 1 食中毒の的確な把握 2 学校内体制の確立 3 関係機関への緊急連絡体制 4 食中毒の集団発生又は疑いがある場合の調理場の措置について 5 原因を特定するための調理場の措置 6 事故の処置について 7 保護者への事情説明 ( 参考

はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます

日本トイレ協会メンテナンス研究会報告レポート〔第139回〕

はじめに 食中毒とは 食中毒を起こす微生物が付着して増殖した飲食物や 有毒又は有毒な化学物質 ( 自然毒 ) が含まれている飲食物を摂取することによって起こる健康障害です 東京都では 毎年 100 件程度発生する食中毒ですが 食中毒の大部分を占めるのは微生物による食中毒です このたび 食品衛生に関わ

性食中毒である きのこ類による食中毒や貝毒による食虫毒は 毒素型の自然毒食中毒である ウエルシュ菌や ベロ毒素陽性の大腸菌が原因の場合には 感染毒素中間型細菌性食中毒に分類 されるべきものである 学校医が知っておくべき食中毒に関連する法律は 主に食品衛生法と感染症法 それに学校保健安全法である 食品

生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 食肉販売業用 ) 導入手引書 本ガイダンスでは まず メニュー調査表 と 調理工程表 によりそれぞれの施設の 危害要因分析 を行い 次にこの手引書の 衛生管理点検表 を HACCP の考え方を取り入れた 衛生管理計画 とし それを用いて モニタリング 記録の

設問 4 ノロウイルスに関する次の記述のうち 誤っているものを 1 つ選べ 1 ノロウイルスは 冬季を中心に年間を通して胃腸炎を起こし 特に 保育園 学校 福祉施設などでは 集団発生になりやすい傾向がある 2 ノロウイルスは ヒトの腸管内で増殖し ノロウイルスの感染者のふん便 1g 中には 100

目について以下の結果を得た 各社の加熱製品の自主基準は 衛生規範 と同じ一般生菌数 /g 以下 大腸菌 黄色ブドウ球菌はともに陰性 未加熱製品等の一般生菌数は /g 以下であった また 大腸菌群は大手スーパーの加熱製品については陰性 刺身などの未加熱製品については

pdf0_1ページ目

特別養護老人ホーム愛敬苑 感染症及び食中毒防止のための指針 1. 総則特別養護老人ホーム愛敬苑 ( 以下 施設 という ) は 生活者及び利用者 ( 以下 生活者 という ) の使用する食器及びその他の設備について 衛生管理に努め 衛生上必要な措置を講ずるとともに 医薬品及び医療用具の管理を適正に行

胃腸炎による入院患者の管理胃腸炎患者の症状が重くて 入院することがあります 入院患者の管理をしなければいけないことが 病院小児科の特異的なところだと思いますので その点に重点を置いてこれからお話しします 胃腸炎の患者が入院しなければいけない時には多くの患者が脱水になっているため 適切な補液が最も重要

pdf0_1ページ目

食中毒の原因となる主な細菌やウイルス 食中毒とは 有害な微生物や物質に汚染された食品を食べることで起きる健康被害のことです 多くの場合 嘔吐 腹痛 下痢 発熱などの急性胃腸炎症状を起こします カンピロバクター 原因食品特徴潜伏期間 症状予防法 加熱不十分な食肉など 熱 乾燥に弱い 通常の加熱調理で死

HACCPの概要と一般的衛生管理

(2) 平成 29 年食中毒発生状況 / 速報値 ( 千葉市 船橋市 柏市含む ) 1 月別発生状況 年 月 計 件数 患者数

1 施設設備の衛生管理 1-1 食品取扱室の清掃及び保守点検 < 認証基準 > 床 内壁 天井 窓 照明器具 換気扇 手洗い設備及び排水溝の清掃手順 保守点検方法が定められていること 床及び排水溝の清掃は1 日に1 回以上 その他の清掃はそれぞれ清掃の頻度の記載があること 保守点検頻度の記載があるこ

平成29年度感染症対策研修会(基礎編)

ファクトシート 作成日 : 平成 23 年 11 月 24 日 エルシニア症 (Yersiniosis) 1 エルシニア症とは エルシニア症は Yersinia 属菌の中で一般的に食中毒菌として知られる Yersinia enterocolitica と仮性結核菌として知られる Yersinia p

HACCP-tohu

品質管理初級者1

pdf0_1ページ目

写 29 生畜第 50 号平成 29 年 4 月 10 日 一般社団法人日本養蜂協会会長大島理森殿一般社団法人全国はちみつ公正取引協議会会長早川幸男殿 農林水産省生産局畜産部畜産振興課長食肉鶏卵課長 蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症予防に係る注意喚起について 今般 東京都足立区において 乳児に対し離

家族の健康を脅かす 食中毒予防ガイド 一般

pdf0_1ページ目

感染対策マニュアル

<4D F736F F D C58A C18F A C A>

(*) ノロウイルス : 冬期に流行する人の感染性胃腸炎の原因ウィルスで 調理従事者がノロウイルスに感染していた場合に その人を介してノロウイルスに汚染された食品を食べたり または汚染されていた二枚貝を 生あるいは十分に加熱調理しないで食べることにより食中毒を起こす ( イ ) サルモネラ * 食中

<4D F736F F F696E74202D20834A D836F834E835E815B C E52967B81698E9696B18BC78F4390B3816A2E70707

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

ハノイで気をつけたい 経口感染症

(Microsoft PowerPoint \220H\222\206\223\305\201i\220H\210\300\210\317\201j)


褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

(病院・有床診療所用) 院内感染対策指針(案)

Q&A(最終)ホームページ公開用.xlsx

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

PowerPoint プレゼンテーション

手洗いについて できてる? 手を洗う機会 ( 利用者 入所者 ) 来所時 食事前後 トイレ後 外出後 粘土など共有のリハビリ用品等を触った後 動物を触った後 手が汚れてしまった後 手を洗う機会 ( 看護 介護職員 ) 来所時 ( 通勤後 ) 調理時 配膳時 食事介助時 薬を扱う時 トイレの手伝い後

HCR NEWS 飛まつ感染の予防対策 : 咳エチケット 飛まつ感染の感染予防として 最も期待できるのは 咳エチケット です 1 咳やくしゃみをする場合はハンカチ タオル ティッシュなどで口を覆い 周囲の人に飛まつを浴びせないようにする 2 ハンカチ タオル ティッシュがない場合は手のひらではなく


生活衛生営業 HACCP ガイダンス ( 旅館業用 ) 導入手引書 旅館業用衛生管理点検表 1 個人衛生管理点検記録個人衛生管理は 従事者の感染症対策を中心に基準条例 8 の従事者に係る衛生管理の項目を始業時点検として次の項目を確認する (1) 従事者は 下痢 嘔吐等の体調不良がないことを確認し 症

表 2 衛生研究所 保健所別菌株検出数 ( 医療機関を含む ) 内訳 衛生研究所保健所試験検査課県中支所会津支所郡山市いわき市 総計 喫食者 接触者 従事者食品 3 3 拭きとり総計 遺伝子型別解析遺伝子型別解析は, デンカ生研の病

(Microsoft Word - \220H\202\306\214\222\215N10\224N4\214\216\215\206\214\264\215e.doc)

HACCPの概要と一般的衛生管理

名称未設定

<8AC7979D895E CC81698DC A2E786477>

<4D F736F F D20926E C5E B8FC797E192E88B CC8DC489FC92E88E9696B D2E646F63>

 

pdf0_1ページ目

pdf0_1ページ目

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

もあるため 調理室内へは持ち込まないようにすることを理解させることが重要である その他 調理室内の網戸の破れによる不適が 26.8% の施設で見られた これは前年度とほぼ同値であり 改善が進んでいない 網戸の破れはハエなどの衛生害虫等の侵入経路になる可能性があるため 早急な補修が望まれる 一方 調理

平成19年度

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

総合生支援センター カムさぁ

34w.xdw

Microsoft PowerPoint - 【別途配布1】食品衛生マニュアル

食中毒予防と 食品の安全確保

Microsoft PowerPoint - 富山生食による食中毒0811.pptx

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

インフルエンザ等感染症に対する健康危機管理について 呉特別支援学校には, 慢性心疾患や慢性呼吸器疾患等, 感染症に罹患すると重症化するリスクのある児童生徒 が在籍しています また, 体調不良を自分で訴える事や, 咳エチケット等の衛生管理をする事が難しい児童生徒 も多数おり, 感染が拡大しやすい状況と

感染症の基礎知識

Microsoft Word - Q&A(セット).docx

Microsoft PowerPoint 食中毒(山梨).ppt

ÿþ

<4D F736F F D208C8B8A6A90DA90478ED28C CC82C482D182AB2E646F63>

(案)

Microsoft PowerPoint - リーダー養成研修(通所)NO1 

Microsoft Word _ソリリス点滴静注300mg 同意説明文書 aHUS-ICF-1712.docx

黄色ブドウ球菌 人や動物に常在し 手指等に傷があると感染して化膿巣を作るため 食品取扱者を介した食品汚染が極めて高い菌です 食品中で食中毒を発症させる毒素 ( エンテロトキシン ) を産生します 塩濃度が高い環境でも増殖し毒素が産生されるので 原因食品は多岐にわたります 潜伏期間は平均 3 時間と短

熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

平成 29 年度食品安全モニター課題報告 食品の安全性に関する意識等について I. 食品の安全性に係る危害要因等について 問 1 A~G に掲げる事項についてリスクの観点からあなたはどう思いますか それぞれ の事項について 選択肢 1~6 の中から 1 つずつ選んでください 事項 A 環境問題 B

最近の食中毒の話題

規格基準食品衛生法に基づき 食品や添加物等について一定の安全レベルを確保するために定められた規格や基準で 規格基準に合わない食品等は製造 使用 販売等が禁止されています 寄生虫他の動物に寄生し栄養分をとり生活する生物であり 食中毒の原因となるものではアニサキスやクドア セプテンプンクタータなどがあり

Transcription:

< 感染症及び食中毒の発生の予防及びまん延の防止 > 感染対策の基礎知識と具体策 ~ 食中毒 ~

この研修の目的 食中毒の発生要因を理解し その予防に務めることができるようになる 食中毒発生時の対応を学び 症状悪化や二次感染を予防できるようになる

食中毒とは 下痢や嘔吐 発熱等の胃腸炎症状を主とする疾病 ( 中毒 ) の総称 飲食店での食事が原因だと思われがちだが 毎日の家庭での食事でも発生する 症状が軽い 発症人数が少ない などの理由から 単なる体調不良と思われることもある 食中毒とは気づかず重症化 または感染が拡大するケースも!

食中毒の種類と特徴 1 細菌性食中毒 細菌を原因とする食中毒で 夏季 (6 月 ~8 月 ) に多く発生する 食中毒全体の 30%~40% を占める 感染型 毒素型 生体内毒素型の 3 種類に分けられる

< 感染型 > 細菌性食中毒 食品内で増殖した細菌 ( カンピロバクター サルモネラ 腸炎ビブリオなど ) により発症 < 毒素型 > 細菌 ( 黄色ブドウ球菌 ボツリヌス菌など ) が食品内で生産した毒により発症 < 生体内毒素型 > 摂取した細菌 ( 腸管出血性大腸菌 ウェルシュ菌など ) が腸管内で毒を生産し発症

食中毒の種類と特徴 2 ウィルス性食中毒 ウィルスが付着した食品や 感染者の手指 嘔吐物 便などが原因で発症する 10 月 ~4 月にかけ集中的に発生する 食中毒全体の60% を占める ほとんどはノロウィルスが原因 感染力が強く 少量のウィルスを摂取しただけで発症するため注意が必要

食中毒の種類と特徴 3 その他 < 寄生虫食中毒 > 寄生虫 ( アニサキスなど ) が原因 < 自然毒食中毒 > 植物性自然毒 ( ジャガイモ キノコなど ) や動物性自然毒 ( フグなど ) が原因 < 化学性食中毒 > 化学物質 ( 食品添加物 農薬など ) が原因

ここまでのまとめ 食中毒の主な原因はウィルスや菌 免疫力が低下していると ウィルスや菌に抵抗する力も弱い 高齢者は食中毒になりやすく 重篤化しやすい 次に 高齢者施設内で特に注意が必要な食中毒をいくつか紹介します

1 黄色ブドウ球菌 潜伏場所など 菌の特徴 主な原因食品 症状 人や動物等 広く自然界に分布 手指の化膿創やニキビ 健康な人の鼻や髪の毛 皮膚などにも生息 毒素を作る性質がある 食品の中で 毒素であるエンテロトキシンを生産 この毒素が食中毒を引き起こす 胃酸でも消化されず 熱にも強い 100 で 30 分間加熱しても死滅しない 人の手指に触れる食品全て 感染から平均 3 時間程度で 突然の吐き気や嘔吐 腹痛 下痢を起こす

2 腸管出血性大腸菌 (O-157 など ) 潜伏場所など 菌の特徴 主な原因食品 症状 牛などの家畜の糞便中 ( 腸内 ) に時々見つかる 感染者が触ったトイレのドアノブなどにも注意 O-157 の他に O-111 O-26 などもある 感染力が非常に強く 数個 ~100 個程度の菌数でも感染する 腸内でベロ毒素を生産 溶血性尿毒症症候群 (HUS) を発症し 死に至る場合もある 生肉や加熱不十分な食肉 生食する野菜や果物にも注意が必要 感染からおよそ 3 日 ~8 日程度の比較的長い潜伏期間を経て 腹痛 下痢 ( 水様便 その後血便になることもある ) などを起こす

3 ノロウィルス 潜伏場所など 菌の特徴 主な原因食品 症状 二枚貝に存在する 感染者の吐物や便などにもウィルスが潜んでいる 空気が乾燥する冬場を中心に起きやすい 細菌より更に小さく 人の体内でしか増えない 自然界での抵抗性が強く 長期間生存する 少量のウィルス量で人に食中毒を起こす 二次感染には十分な感染対策が必要 加熱不十分な二枚貝 感染から平均 1 日 ~2 日程で吐気 嘔吐 腹痛 下痢などを起こす ( 発熱しても高熱にはならない ) 症状は 2 日程続き自然に軽快するが それに伴う脱水で入院するケースもある 症状が治まっても 1 ヶ月程度は保菌しており 他への感染リスクがある

介護施設での食中毒発生例 2 施設の職員から 管轄保健所に 入居者数名が下痢 血便などの症状を呈している という報告が入る 入居者合計 201 名中 51 名 入居者家族 1 名の計 52 名に 同様の消化器症状を確認 発症者の検便と給食の検査を実施 O-157 を検出 両施設の給食を受託している業者は同一で 食材の洗浄 が不十分であったことが集団食中毒の発生原因となった 可能性が高い 最終的に患者数は合計 84 名にまで上り そのうち 5 名が 重症化し死亡 給食会社は業務停止処分となった

食中毒が発生するとどうなる? 1 入居者 利用者への影響 腹痛や下痢 嘔吐などの胃腸症状は一過性のため その多くは軽快に向かう しかし 高齢者は重症化しやすく 命にかかわる事態になることがある

食中毒が発生するとどうなる? 2 職員への影響 職員の手指を介した二次感染がないよう 正しい手洗いや消毒 処理を行う必要が出てくる 個室管理などの対応が必要となる場合は 単純に職員の労働負担が大きくなる 職員自身も感染の可能性があるため 精神的負担感も発生し 組織の悪循環を生み出す要因にもなり得る

食中毒が発生するとどうなる? 3 施設運営への影響 施設内で調理した食事が原因であった場合 食品衛生法に基づき 給食施設の営業停止 (3 日間 ) などの行政処分を受ける 代替食の手配が必要となる ガウンやマスクなどの予防具が必要となり 多額 の出費を伴う 保健所からの公表 新聞やテレビで報道などがあ ると 施設に対する信用を失う 以降の運営に大きな影響を及ぼす

食中毒予防の基本 1 食中毒予防 3 原則は 1( 菌を ) つけない 2( 菌を ) 増やさない 3( 菌を ) やっつける

食中毒予防の基本 2 1つけない 1ケア1 手洗い の徹底 調理器具や食器を衛生的に管理する 2 増やさない 食べ物に付着した菌を増やさないため 10 以下の低温で保存する できるだけ早めに食べる 3やっつける 加熱調理で 細菌やウィルスを死滅させる

季節性への注意 1 食中毒は年間を通して発生するが 季節により発 生しやすい食中毒は異なる 例 ) 年間で発生する感染性胃腸炎の集団発生例の約半数はノロウィルスによるもの その内の7 割程は10 月 ~4 月に集中的に発生している

季節性への注意 2 < 夏場は 細菌性食中毒 に注意 > 細菌は高温多湿を好んで増殖する為 細菌性食中毒は梅雨や夏場に多く発生する 食品を保存する場合には十分に注意し できるだけ早く食べること

季節性への注意 3 < 冬場は ウィルス性食中毒 に注意 > 低温でも乾燥した場所でも長く生きることので きるウィルスは寒い冬を好む 中でもノロウィルスは感染力が強く 二次感染 により感染が拡大することが多い 二枚貝 ( 牡蠣など ) が生食でおいしい時期ですが 私たち介護職が食べる場合には 加熱調理した物を摂取するように心がけましょう

季節性への注意 3 秋は食中毒に対する意識が薄れてしまいがちだが この時期にも食中毒は多く発生する < なぜ? その理由は > 夏の暑さにより体力を消耗 ( 夏バテ ) 夏から秋に向かい 急に気温が低下する 気温差に対応できず 体調を崩しやすい 免疫力が低下ぎみ 食中毒になりやすい 夏場の体調管理が重要!

食事支援場面での注意 食事を用意する前に 手洗いや手指消毒を行う 入居者にも石鹸を用い流水での手洗いを促す 手洗いができない場合にはウェットティッシュ ( 消毒効果のある物が望ましい ) などで汚れを拭き取る 清潔な器具 食器で食事を提供する 配膳された食事は 出来るだけ時間を置かずに食べる事ができるように配慮する 時間を置いて食べる場合は冷蔵庫に保管する

食中毒にいち早く気づくために 1 観察のポイント 高齢者介護施設では 感染症そのものをなくす ことは難しい 異常の早期発見に向けて 入居者の普段の様子 を把握しておく 以下のような症状があった場合には 看護師に報告し 症状を記録する 発熱 吐き気 嘔吐 下痢 血便 食欲不振 普段の様子と違う と感じたら すぐに報告!

食中毒発生時の対応 1 < 発生状況の把握 > 食中毒が発生した場合や それを疑う状況が生じた場合には 入居者と職員の健康状態を 発生した日時や 階 ( ユニット ) 居室ごとにまとめて記録する 診断名 ( 感染症名 ) や受診歴 検査 治療の 内容を記録する

食中毒発生時の対応 2 介護職員は看護職員と連携し 施設の感染対策マニュアルに従い行動する 把握した状況を速やかに感染対策担当者へ伝えるなど 感染対策担当者は施設長( または管理者 ) と相談し 施設内での対応を検討する 必要に応じ 市町村や管轄保健所へ報告する

食中毒 ( 感染症 ) 発生時の届出 報告の義務 施設の責任者は 以下の場合 市町村等の社会福祉施設担当部局に報告すると共に 保健所にも対応を相談します 1 同一の感染症や食中毒による またはそれらが疑 われる死亡者 重篤患者が 1 週間以内に 2 名以上 発生した場合 2 同一の感染症や食中毒の患者 またはそれらが疑 われる者が 10 名以上または全利用者の半数以上 発生した場合 3 上記以外の場合であっても通常の発生動向を上回 る感染症等の発生が疑われ 特に施設長が報告を 必要と認めた場合

食中毒予防における介護職の役割 介護職が業務の中で行うべき食中毒等の感染対策 ( 職業感染対策 ) の基本はスタンダードプリコーションの徹底です 感染のリスクを自覚できずに 不適切な行為によって感染を拡げてしまうことがないように 正しい知識と技術を身につけましょう 入居者の健康管理や異常の早期発見はもちろん重要ですが 自身の日頃からの健康管理と 介護職である という自覚も大切です

お疲れ様でした

参考文献 1 政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/list/ct1_kenko_iryo.html (2018 年 6 月閲覧 ) 2 厚生労働省ホームページ 高齢者介護施設における感染対策マニュアル https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp0628-1/ (2018 年 6 月閲覧 ) 教材作成 社会福祉法人創誠会特別養護老人ホーム施設長渡邊尚太 あかり