原料受入試験における FT-IR の活用 平成 21 年 6 月 25 日 大峰堂薬品工業株式会社高市製薬株式会社田村薬品工業株式会社 炬口等 織田知那乾謙一 中島康志 丸岡俊英
目的 原料受入試験は 一部試験省略が可能 外観及び確認試験は省略が不可 確認試験を FT-IR に代替可能か検討
検討会開催日 第 1 回 : 平成 20 年 4 月 16 日第 2 回 : 平成 20 年 5 月 27 日第 3 回 : 平成 20 年 6 月 24 日第 4 回 : 平成 20 年 7 月 29 日第 5 回 : 平成 20 年 9 月 25 日第 6 回 : 平成 20 年 10 月 29 日第 7 回 : 平成 21 年 4 月 21 日第 8 回 : 平成 21 年 5 月 26 日
赤外吸収スペクトル測定法の原理 赤外線が試料を通過するときに吸収される度合いを 各波数について測定する方法 赤外吸収スペクトルの吸収波数と強度は 対象とする物質の化学構造によって定まる 赤外吸収スペクトルが一致すれば 同じ物質であると確認 ( 同定 ) できる 定量分析を行うこともできる 日局 では, 標準となる医薬品のスペクトルと試験される試料のスペクトルの一致を確認
ATR 法の原理 ATRプリズム面に試料を密着させ 反射スペクトルを測定 ATRスペクトルは反射光を分光して得られるスペクトル 反射スペクトル 透過スペクトル <ATRの基本構造 > クリスタルはセレン化亜鉛 (ZnSe) または臭化ヨウ化タリウム (KRS-5) とダイアモンドの合成物
FT-IR 及びデータ処理機 ATR 装置
固体試料
液体試料
ATR 法の利点 1コスト面 測定サンプルは少量 他の試薬 試液を必要としない 公定書法ー ATR 法比較 ( 当社試算 : 平成 18 年当時 ) 1) 公定書の方法で確認試験を実施した場合 平均操作時間:1 原料当たり平均 42 分 実施検体数:258 検体 実施時間: 約 180 時間 (42 分 258 検体 /60 分 ) 2)ATR 法での実施時間 : 約 21.5 時間 (5 分 258 検体 /60 分 ) 3) 年間 158.5 時間の短縮となる 1 日 8 時間労働として 約 20 日に該当
ATR では ほとんど洗浄行為がない 結果がでるのに 2~3 日間という長時間を要するものも ATR での運用にすると短時間で結果を出すことができ 非常に効率的である 2 測定方法の容易性 操作が容易で誰にでも測定が可能 3 測定サンプル 髪の毛のようなサンプルにも対応でき 製造上の異物同定又は推定が可能
特異性及び再現性 1. 臭化カリウム錠剤法及び ATR 法の再現性 (1) 方法同一試料を用いて臭化カリウム錠剤法及び ATR 法で 3 回繰り返し測定し 再現性を検証する (2) 検証に用いた成分 1 アセトアミノフェン 2 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 )
(3) 結果 1) アセトアミノフェン 図 1 アセトアミノフェン KBr 法 図 2 アセトアミノフェン ATR 法 97.5 %T 90 アセトアミノフェン07208KBr1 アセトアミノフェン07208KBr2 アセトアミノフェン07208KBr3 97.5 %T 90 アセトアミノフェン07208ATR1 アセトアミノフェン07208ATR2 アセトアミノフェン07208ATR3 82.5 82.5 75 75 67.5 67.5 60 52.5 60 45 52.5 37.5 45 30 37.5 22.5 30 15 22.5 3900 3600 3300 アセトアミノフェン07208 KBr 1 3000 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm 3900 3600 3300 アセトアミノフェン07208 ATR 1 3000 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm
2) タウリン 図 3 タウリン KBr 法 図 4 タウリン ATR 法 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 KBr 法 1 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 KBr 法 2 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 KBr 法 3 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 ATR1 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 ATR2 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 ATR3 105 97.5 %T %T 90 90 75 82.5 60 75 45 67.5 30 60 15 4000 3500 3000 2500 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 2000 1750 1500 1250 1000 750 500 1/cm 4000 3500 3000 タウリン ( アミノエチルスルホン酸 ) Lot.4713 2500 2000 1750 1500 1250 1000 750 1/cm
(4) 考察 臭化カリウム錠剤法 (KBr 法 ) 吸収強度に顕著な差 ATR 法 吸収強度に差は認められなかった 臭化カリウム錠剤法と ATR 法を比較した場合 ATR 法の方が再現性は優れている 1 回の測定に要する時間 臭化カリウム錠剤法 : 約 7~8 分 ATR 法 : 約 2~3 分 ATR 法は 分析時間においても臭化カリウム錠剤法の約 1/3 で優れている ATR 法が 短時間で測定ができ 繰り返し精度の良い 再現性に優れた方法
2. 室間再現性 (1) 方法 測定場所 測定者 測定時間等の各条件が異なる 3 施設で ATR 法を用いて同一試料の赤外吸収スペクトルを測定し 室間再現性を検証する (2) 検証に用いた成分 1 ステアリン酸マグネシウム
(3) 結果 図 5 ステアリン酸マグネシウム 図 6 ステアリン酸マグネシウム ( 大峰堂薬品工業株式会社 ) ( 高市製薬株式会社 ) 100.9 ステアリン酸マグネシウム 98 96 94 92 100 %T 95 90 88 90 86 84 85 82 80 80 78 76 75 74 %T 72 70 70 68 65 66 64 60 62 60 55 58 56 50 54 52 45 50 48 40 46 44.4 35 4000.0 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 650.0 cm-1 図 7 ステアリン酸マグネシウム ( 田村薬品工業株式会社 ) 100 3900 3600 3300 3000 ステアリン酸マク ネシウム08031101 ATR 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm %T 90 80 70 60 50 40 4000 3500 3000 ステアリン酸 Mg Lot.08031101 2500 2000 1750 1500 1250 1000 750 1/cm
(4) 考察 室間再現性に関しては 非常に有効な測定法
3.FT-IR(ATR 法 ) の特異性 (1) 方法化学構造の似た類似物質を ATR 法で測定し 個々の確認が可能であるか検証 (2) 検証に用いた成分 1) 化学物質 1 クエン酸水和物及びクエン酸ナトリウム水和物 2 カフェイン水和物及び無水カフェイン 3 クロルフェニラミンマレイン酸塩及び d- クロルフェニラミンマレイン酸塩 4 リボフラビン リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビンリン酸エステルナトリウム 5 パラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ブチル 6 ステアリン酸カルシウム ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸ポリオキシル 40 7 カルメロース カルメロースナトリウム及びカルメロースカルシウム 8 ヒドロキシプロピルセルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 9 マクロゴール 4000 及びマクロゴール 6000 10 結晶セルロース 101 及び結晶セルロース 301 11 流動パラフィン及び軽質流動パラフィン 2) 生薬 1 センナ末 ダイオウ末 2 ニンジン末 オウバク末及びカンゾウ末
(3) 結果 1) 化学物質 1 クエン酸水和物及びクエン酸ナトリウム水和物 105 %T 100 クエン酸水和物 711015ATR クエン酸ナトリウム水和物 790701ATR 95 90 85 80 75 クエン酸水和物クエン酸ナトリウム水和物 70 65 60 55 50 45 40 35 3900 3600 3300 クエン酸水和物 711015 ATR 3000 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm 図 8 クエン酸水和物及びクエン酸ナトリウム水和物
2 カフェイン水和物及び無水カフェイン 100 無水カフェイン 0705891ATR1 カフェイン D112419ATR1 %T 95 90 85 80 75 無水カフェインカフェイン水和物 70 65 60 55 50 45 3900 3600 3300 無水カフェイン 0705891 ATR 3000 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm 図 9 無水カフェイン及びカフェイン水和物
3 クロルフェニラミンマレイン酸塩及び d- クロルフェニラミンマレイン酸塩 97.5 マレイン酸クロルフェニラミン 55010SATR1 d- マレイン酸クロルフェニラミン 71020ATR1 %T 90 82.5 75 67.5 60 クロルフェニラミンマレイン酸塩 d- クロルフェニラミンマレイン酸塩 52.5 45 37.5 30 3900 3600 3300 3000 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 マレイン酸クロルフェニラミン55010S ATR 1/cm 図 10 クロルフェニラミンマレイン酸塩及び d- クロルフェニラミンマレイン酸塩
4 リボフラビン, リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビンリン酸エステルナトリウム 100 %T リボフラビン酪酸エステル Lot.5X080S リボフラビン Lot.LDJEA02507 リボフラビンリン酸エステル Na Lot.UEB0703035 90 80 70 リボフラビンリボフラビン酪酸エステルリボフラビンリン酸エステルナトリウム 60 50 40 4000 3500 3000 2500 2000 1750 1500 1250 1000 750 1/cm 図 11 リボフラビン, リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビンリン酸エステルナトリウム
5 パラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ブチル 97.5 パラオキシ安息香酸プロピル Lot.BB7307 パラオキシ安息香酸ブチル Lot.K738Y %T 90 82.5 75 パラオキシ安息香酸プロピルパラオキシ安息香酸ブチル 67.5 60 52.5 45 4000 3500 3000 2500 2000 1750 1500 1250 1000 750 1/cm 図 12 パラオキシ安息香酸プロピル及びパラオキシ安息香酸ブチル
6 ステアリン酸カルシウム ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸ポリオキシル 40 105 %T ステアリン酸 Ca Lot.70839C ステアリン酸 Mg Lot.07082901 ステアリン酸ポリオキシル 40 Lot.2892 90 75 ステアリン酸カルシウムステアリン酸マグネシウムステアリン酸ポリオキシル 40 60 45 30 15 4000 3500 3000 2500 2000 1750 1500 1250 1000 750 1/cm 図 13 ステアリン酸カルシウム ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸ポリオキシル 40
7 カルメロース カルメロースナトリウム及びカルメロースカルシウム 99.0 98 カルメロース ( 黒 ) カルメロースナトリウム ( 赤 ) カルメロースカルシウム ( 青 ) 97 96 95 94 93 92 91 %T カルメロースカルメロースナトリウムカルメロースカルシウム 90 89 88 87 86 85 84 83 82.5 4000.0 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 650.0 cm-1 図 14 カルメロース カルメロースナトリウム及びカルメロースカルシウム
8 ヒドロキシプロピルセルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 98.8 98 ヒドロキシプロピルセルロース ( 黒 ) 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース ( 赤 ) 96 94 92 90 88 86 84 82 %T 80 ヒドロキシプロピルセルロース低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 78 76 74 72 70 68 66 64 63.0 4000.0 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 650.0 cm-1 図 15 ヒドロキシプロピルセルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース
9 マクロゴール 4000 及びマクロゴール 6000 105 %T 97.5 マクロコ ール 4000S801140ATR1 マクロコ ール 6000Z04071ATR1 90 82.5 75 67.5 60 マクロゴール 4000 マクロゴール 6000 52.5 45 37.5 30 22.5 15 7.5 3900 3600 3300 マクロコ ール4000S801140 ATR 3000 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm 図 16 マクロゴール 4000 及びマクロゴール 6000
10 結晶セルロース 101 及び結晶セルロース 301 100 %T 結晶セルロース 101 Lot.16C1 結晶セルロース 301 Lot.3765 97.5 95 92.5 90 結晶セルロース 301 結晶セルロース 101 87.5 85 82.5 80 77.5 4000 3500 3000 2500 2000 1750 1500 1250 1000 750 1/cm 図 17 結晶セルロース 101 及び結晶セルロース 301
11 流動パラフィン及び軽質流動パラフィン 105 %T 100 軽質流動ハ ラフィン 080326ATR1 流動ハ ラフィン ME-29ATR1 95 90 85 80 75 軽質流動パラフィン流動パラフィン 70 65 60 55 50 3900 3600 3300 3000 軽質流動ハ ラフィン 080326 ATR 2700 2400 2100 1950 1800 1650 1500 1350 1200 1050 900 750 1/cm 図 18 流動パラフィン及び軽質流動パラフィン
2) 生薬の場合 12センナ末 ダイオウ末 97.1 96 センナ末 ( 黒 ) ダイオウ末 ( 赤 ) 95 94 93 92 91 %T 90 89 センナ末ダイオウ末 88 87 86 85 84 83 82 81 80.6 4000.0 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 650.0 cm-1 図 19 センナ末及びダイオウ末
13 ニンジン末 オウバク末及びカンゾウ末 102.4 101 100 ニンジン末 ( 黒 ) オウバク末 ( 赤 ) カンゾウ末 ( 青 ) 99 98 97 96 95 94 93 92 91 90 89 %T 88 87 86 ニンジン末オウバク末カンゾウ末 85 84 83 82 81 80 79 78 77 76 74.6 4000.0 3600 3200 2800 2400 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 650.0 cm-1 図 20 ニンジン末 オウバク末及びカンゾウ末
(4) 考察 1) 化学物質について 成分の構造の違い 個々の確認可能 水分子の有無の違い 個々の確認可能 鏡像異性体の含有する異性体の違い 個々の確認可能 置換度の差などの違い 個々の確認可能
多くの成分が単独で確認でき かつ有効な手段 しかし 個々で確認ができない成分もある これらの成分については個々に検証する必要あり マクロゴール4000とマクロゴール6000のような類似物質は 判別することは困難 類似物質を個々に判別できなくとも 他の化学物質との判別は可能であり 確認試験の代替法としては有用な場合もある
マクロゴール 4000 とマクロゴール 6000 の場合 (HOCH 2 (CH 2 OCH 2 )nch 2 OH: マクロコ ール 4000 は n=59~84, マクロコ ール 6000 は n=165~210) 赤外吸収スペクトル 区別できない 日局の確認試験 区別できない ATR 法で区別ができなくとも 他の物質との判別が可能 確認試験の代替法としては有用 < マクロゴール 4000 及びマクロゴール 6000 の日局での確認試験方法 > 本品 0.05g を希塩酸 5mL に溶かし 塩化バリウム試液 1mL を加えて振り混ぜ 必要ならばろ過し ろ液にリンモリブデン酸 n 水和物溶液 (1 10)1mL を加えるとき 黄緑色の沈殿を生じる
2) 生薬について 植物由来の生薬の場合は 基本的に個々に確認することは困難 植物由来の生薬は 多数がセルロース系の吸収スペクトル 各生薬に含有する微量成分は 大半を占めるセルロースの吸収ピークに打ち消される 天産物であり 産地 収穫年度等により吸収スペクトルが異なる場合がある
確認試験代替の根拠 1. 法的根拠 (1) 原料の確認試験が多項目あり すべての項目の確認試験を実施しなくても目的とする原料であることの確認を行うことができるという合理的な根拠がある場合 例えばある官能基の確認試験について確認試験項目たる呈色試験によらずとも赤外吸収スペクトルを得ていることにより十分確認することができる場合においては 確認試験の当該項目の実施を省略しても良いとされている (GMP 事例集 11-15 奈良県 GMP 整合化検討会報告書, p14(h12.6))
(2) 確認試験については 原則として規格に記載されたすべての試験方法を実施することにより判定されるべきであるが 以下に示すような内容が合理的に説明できる場合には その一部を省略できるとされている 1) 規定された確認試験法以外の確認試験から 特異性のある試験方法を実施する場合 例. 官能基の確認試験としての赤外吸収スペクトル (GMP 事例集 11-24 奈良県 GMP 整合化検討会報告書, p14(h12.6))
(3) 日本薬局方に規定する試験法に代わる方法で それが規定の方法以上の真度及び精度がある場合は その方法を用いることができる また 分析法バリデーションにおいて 確認試験のような数値で表されない試験方法の場合 その真度については 特異性の高い分析法であることを示すことにより 分析法の偏りが小さいことが推論できるとなっている よって 確認試験として 特異性に優れ 精度の高い試験方法であれば 確認試験の有用な代替法の根拠となり得ると考えられる ( 日局 15 通則 13)( 日局 15 参考情報 25 分析法バリデーション )
2. 分析データからの根拠 (1) 精度 1) 併行精度 ( 繰り返し精度 ) ATR 法は 併行精度 ( 繰り返し精度 ) が最も優れた測定方法 2) 室間再現性精度 ATR 法による赤外吸収スペクトル測定法は 室間の再現性の精度において優れた分析方法 (2) 特異性赤外吸収スペクトルは 特異性の高い優れた分析方法
3. 結論 ATR 法による赤外吸収スペクトル測定法は 確認試験法として 特異性 ( 真度 ) 並びに精度 ( 併行精度及び室間再現性精度 ) に優れた試験方法であることから 日本薬局方でも示されているように 確認試験法として代替できる試験方法 ATR 法による赤外吸収スペクトル測定法は どこで測定しても 誰が測定しても どのメーカの分析機器を使用しても 同一のスペクトルデータ 並びに原料特有なスペクトルデータが得られることから 確認試験の代替法として 適切な分析方法
確認試験代替の手順 1. 原料の確認試験代替可否 (1) 化学薬品原料の場合 : 基本的に代替可能である (2) 生薬 生薬エキスの場合 : 基本的に不可能であるが 個別に検討し 代替できる場合がある (3) 漢方エキスの場合 : 基本的に不可能である
2. 原料の確認試験代替手順 (1) 自社原料のうち 類似の化学構造を有する原料の有無を確認 (2) 類似の化学構造を有する原料があれば 赤外吸収スペクトルを比較し 特異的な吸収があり判別可能かを検証 (3)(2) で判別が可能であれば代替可能と判断 (4)(2) で判別が不可能であれば化学的特性や規格等を検証し 代替の可否を判断 (5)(4) で代替が可能であると判断できる場合には その判断根拠を製品標準書等に明記 (6)(4) で代替が不可であると判断された場合には 確認試験の代替は行わない また この判断理由が 既に確認試験の代替を行っている原料によるものである場合は 当該原料の確認試験の代替を取り消す
3. 代替に至るロット数 3 ロット以上の確認で代替は可能であると考える 1FT-IR(ATR 法 ) では 特異性が非常に高い 2FT-IR(ATR 法 ) では 再現性は良好である 3 日局に参照スペクトルを収載する場合には 3 ロットのデータが必要である * * 第十六改正日本薬局方医薬品各条原案作成要領の実務ガイド 2008 年 1 月 ( 社 ) 東京医薬品工業協会局方委員会 大阪医薬品協会技術研究委員会
4. 定期的な正規法での試験間隔 1 おおむね 1~2 年に 1 回程度が妥当 * 2 年間のロット数が多い場合は そのロット数を勘案し 適切なロット数ごとに実施することも考えられる * 奈良県 GMP 整合化検討会報告書平成 12 年 6 月 5. その他 (1)FT-IR(ATR 法 ) による代替を行っている場合 受入試験時に判断ができない 正規法にて可否判定 (2)(1) の場合 FT-IR(ATR 法 ) による確認試験の代替が適切かを再検討 (3) 外部試験検査機関を利用の場合 外部試験検査機関との取決めに規定する 外部試験検査機関と試験結果に差がないことを確認
まとめ FT-IR(ATR 法 ) は 操作は容易で 精度及び特異性に優れている コスト面においても優れている 非常に効率的に運用できる
謝 辞 ご多忙の中 ご指導いただきました 奈良県薬務課の先生方にお礼申し上げます
ご静聴 ありがとうございました