生活福祉研レポートの雛形

Similar documents
2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

2. 年金改定率の推移 2005 年度以降の年金改定率の推移をみると 2015 年度を除き 改定率はゼロかマイナスである ( 図表 2) 2015 年度の年金改定率がプラスとなったのは 2014 年 4 月の消費税率 8% への引き上げにより年金改定率の基準となる2014 年の物価上昇率が大きかった

150130【物価2.7%版】プレス案(年金+0.9%)

公 的 年金を補完して ゆとりあるセカンドライフを実 現するために は 計 画 的 な 資金準備 が必要です 老後の生活費って どれくらい 必要なんですか 60歳以上の夫婦で月額24万円 くらいかな? 収入は 公的年金を中心に 平均収入は月額22万円くらいだ 月額2万の マイナスか いやいやいや 税

<4D F736F F D208DA1944E348C8E95AA82A982E782CC944E8BE08A7A82C982C282A282C FA967B944E8BE08B408D5C816A2E646F6378>

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

平成25年4月から9月までの年金額は

1 / 5 発表日 :2019 年 6 月 18 日 ( 火 ) テーマ : 貯蓄額から見たシニアの平均生活可能年数 ~ 平均値や中央値で見れば 今のシニアは人生 100 年時代に十分な貯蓄を保有 ~ 第一生命経済研究所調査研究本部経済調査部首席エコノミスト永濱利廣 ( : )

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

(3) 消費支出は実質 5.3% の増加消費支出は1か月平均 3 万 1,276 円で前年に比べ名目 6.7% の増加 実質 5.3% の増加となった ( 統計表第 1 表 ) 最近の動きを実質でみると 平成 2 年は 16.2% の増加となった 25 年は 7.% の減少 26 年は 3.7% の

Microsoft Word - 80_2

2. 特例水準解消後の年金額以下では 特例水準の段階的な解消による年金額の変化を確認する なお 特例水準の解消により実際に引き下げられる額については 法律で定められた計算方法により年金額を計算することに加え 端数処理等の理由により203 年 9 月の年金額に所定の減額率を乗じた額と完全に一致するもの

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

(3) 可処分所得の計算 可処分所得とは 家計で自由に使える手取収入のことである 給与所得者 の可処分所得は 次の計算式から求められる 給与所得者の可処分所得は 年収 ( 勤務先の給料 賞与 ) から 社会保険料と所得税 住民税を差し引いた額である なお 生命保険や火災保険などの民間保険の保険料およ

2016 年家計調査年報 家計収支編 家計消費傾向と品目別支出金額調査報告書 2017 年 9 月 東松島市商工会

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

スライド 1

資料1 短時間労働者への私学共済の適用拡大について

PowerPoint プレゼンテーション

公的年金制度について 制度の持続可能性を高め 将来の世代の給付水準の確保等を図るため 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく社会経済情勢の変化に対応した保障機能の強化 より安全で効率的な年金積立金の管理及び運用のための年金積立金管理運用独立行政法人の組織等の見直し等の


( 参考 ) と直近四半期末の資産構成割合について 乖離許容幅 資産構成割合 ( 平成 27(2015) 年 12 月末 ) 国内債券 35% ±10% 37.76% 国内株式 25% ±9% 23.35% 外国債券 15% ±4% 13.50% 外国株式 25% ±8% 22.82% 短期資産 -

政策課題分析シリーズ16(付注)

260401【厚生局宛て】施行通知

質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

改訂正表 横断縦断

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

問 2 次の文中のの部分を選択肢の中の適切な語句で埋め 完全な文章とせよ なお 本問は平成 28 年厚生労働白書を参照している A とは 地域の事情に応じて高齢者が 可能な限り 住み慣れた地域で B に応じ自立した日常生活を営むことができるよう 医療 介護 介護予防 C 及び自立した日常生活の支援が

年金改革の骨格に関する方向性と論点について

2. 繰上げ受給と繰下げ受給 65 歳から支給される老齢厚生年金と老齢基礎年金は 本人の選択により6~64 歳に受給を開始する 繰上げ受給 と 66 歳以降に受給を開始する 繰下げ受給 が可能である 繰上げ受給 を選択した場合には 繰上げ1カ月につき年金額が.5% 減額される 例えば 支給 開始年齢

Microsoft Word - 6 八十歳までの保証がついた終身年金

税・社会保障等を通じた受益と負担について

結果の概要 (1) 二人以上の世帯の家計消費二人以上の世帯の消費支出は 309,205 円で全国第 9 位 実質 1.5% の減少平成 28 年の二人以上の世帯の消費支出は 1 世帯当たり 1か月平均 309,205 円で全国第 9 位となり 前年 ( 平成 27 年 ) と比較すると 名目 実質共

別紙2

Microsoft PowerPoint - 社会保障・第6回.ppt

年金生活者の実質可処分所得はどう変わってきたか

<4D F736F F F696E74202D208ED089EF95DB8FE182CC8B8B957482C CC8CA992CA82B52E707074>

2015 年家計調査年報 家計収支編 家計消費傾向と品目別支出金額調査報告書 2016 年 11 月 東松島市商工会

企業年金ノート201810

2018年度の公的年金額は、なぜ据え置かれるのか?-年金額の改定ルールと年金財政への影響、見直し内容の確認

TERG

年の家族 2-1 世帯モデル設定本章では 3 つの社会変化をもとに世帯モデルを以下のように設定する 1 専業主婦世帯 ( 標準モデル世帯 ) 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加入した夫と 45 年間専業主婦の夫婦 2 生涯単身男性世帯 平均的な男性賃金で 45 年間厚生年金に加

結果の概要 (1) 二人以上の世帯の家計消費二人以上の世帯の消費支出は 315,868 円で全国第 5 位 実質 1.1% の増加平成 29 年の二人以上の世帯の消費支出は 1 世帯当たり 1か月平均 315,868 円で全国第 5 位となり 前年 ( 平成 28 年 ) と比較すると 名目 2.2

Microsoft PowerPoint - 7.【資料3】国民健康保険料(税)の賦課(課税)限度額について

統計から見た三重県のスポーツ施設と県民のスポーツ行動

平成 29 年 1 月度実施実技試験 ( 保険顧客資産相談業務 ) 73

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

-1-

< 参考資料 目次 > 1. 平成 16 年年金制度改正における給付と負担の見直し 1 2. 財政再計算と実績の比較 ( 収支差引残 ) 3 3. 実質的な運用利回り ( 厚生年金 ) の財政再計算と実績の比較 4 4. 厚生年金被保険者数の推移 5 5. 厚生年金保険の適用状況の推移 6 6. 基

Microsoft Word - T2-06-2_紙上Live_老齢(2)_①年金額・マクロ(12分)_

金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

要 旨 2009 年の年金財政検証によると 標準的な厚生年金世帯 であれば 世代間格差はあるものの 将来世代においても 平均寿命 (60 歳時点の平均余命 ) まで生存すれば 負担した保険料の 2.3 倍の給付が受けられる見通しであることが明らかにされた これはこの倍率の分母である負担に事業主負担が

消費税増税等の家計への影響試算

財政再計算に向けて.indd

野村資本市場研究所|確定拠出年金の拠出限度額引き上げは十分か (PDF)

平成19年度税制改正.xls

hyousi

タイトル

被用者年金一元化法による追加費用削減について 昨年 8 月に社会保障 税一体改革関連法の一つとして被用者年金一元化法が成立 一元化法では 追加費用財源の恩給期間にかかる給付について 以下の配慮措置を設けた上で 負担に見合った水準まで一律に 27% 減額することとし 本年 8 月まで ( 公布から 1

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度

<4D F736F F D D A889BF814592C08BE082CC95CF93AE82AA8FAB978882CC944E8BE08DE090AD82C6944E8BE08E918E5995AA957A82C9975E82A682E989658BBF E7C816A2E646F63>

や 給付の重点化 効率化等に関する改革項目が挙げられている 今後 社会保障 税一体改革の関連法案が国会へ提出される予定である 2011 年度の社会保障給付費は107.8 兆円となる見込みである 内訳は 年金 53.6 兆円 ( 社会保障給付費全体の49.7%) 医療 33.6 兆円 ( 同 31.2

PowerPoint プレゼンテーション

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

PowerPoint プレゼンテーション

冷え込む韓国のシニア消費

Microsoft Word - 1_表紙

柔軟で弾力的な給付設計について

季刊家計経済研究 2003 SPRING No 万円 1世帯当たり平均可処分所得金額は 187.4万円 世帯人員1人当たり平均所得金額は 図表-9 高齢者世帯の平均収入の伸びに対する稼働所得 及び公的年金 恩給等の寄与率 212.3万円である 平均世帯人員は3.23人 平 均有業人員

消費税増税等の家計への影響試算(2017年10月版)<訂正版>

共働き・子育て世帯の消費実態(1)-少子化でも世帯数は増加、収入減で消費抑制、貯蓄増と保険離れ

労災年金のスライド

係を決めよう (1) 班の意見をまとめて発表する班長 (2) 金額を計算し マネープランシートに記入する記録 計算係 (3) 思い出ポイントを管理する思い出係 (4) カードをひくカード係 5 人の班はカード係を 2 人にしましょう 1

PowerPoint プレゼンテーション

平成28年年金改革法の参議院における議論

PowerPoint プレゼンテーション

私的な資産形成に関する将来予測・政策シミュレーション分析

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

消費税増税等の家計への影響試算(2018年10月版)

Microsoft PowerPoint - 老後の年金格差(前半)HP用

Microsoft PowerPoint - 老後の年金格差(前半)HP用

PowerPoint プレゼンテーション

01 公的年金の受給状況

年金の成り立ち(歴史)

女性が働きやすい制度等への見直しについて

国民健康保険税率等の諮問 について 国立市健康福祉部健康増進課国民健康保険係 国立市富士見台 : ( 代表 ) 内線

平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

公的年金(1)

(2) 全国との比較消費支出は全国の 1.14 倍東京都の1 世帯当たりの消費支出 331,74 円は 全国の1 世帯当たり消費支出 29,788 円に対し 1.14 倍となっており 前年と同じであった ( 図 Ⅱ-1-3 統計表 第 1 表 参考表 1 ) 1 大費目別の消費支出を全国で調べると

<4D F736F F D AD97DF88C DC58F4994C52E646F63>

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

スライド 1

Microsoft Word - ke1106.doc

平成26年公的年金財政検証と今後の年金制度改正の行方(下)

Transcription:

2018 年度の公的年金額と 2017 年の高齢者世帯の収支 1 月 26 日に厚生労働省が発表した 2018 年度の年金額改定 および 2 月 16 日に総務省が発 表した 2017 年家計調査 ( 家計収支編 ) から高齢者世帯の家計収支について その概要をご紹 介します ポイント 2018 年度の国民年金 厚生年金額の水準は 2017 年度からすえ置き 2018 年度の国民年金保険料は 16,340 円 毎年の段階的引き上げが 2017 年度で完了 厚生労働省は5 年に1 度 公的年金の給付と負担のバランスが取れているか 財政検証を実施 前回は 2014 年に実施され 次回は 2019 年の予定 高齢者世帯の家計収支を見ると 勤労者世帯では月間収支が黒字なものの 無職世帯では赤字が継続 1.2018 年度の国民年金 厚生年金額 2018 年度の公的年金額は 2017 年度からすえ置きとなりました ( 図表 1) 図表 1 2018 年度の新規裁定者 (67 歳以下の方 ) の年金額の例 2018 年度 ( 月額 ) 国民年金 ( 老齢基礎年金 ( 満額 ):1 人分 ) 厚生年金 ( 注 ) ( 夫婦 2 人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額 ) 64,941 円 221,277 円 (64,941 円 2 人 +91,395 円 ) ( 注 ) 厚生年金は 夫が平均的収入 ( 平均標準報酬 ( 賞与を含む月額換算 )42.8 万円 ) で 40 年間就業し 妻がその期間すべて専業主婦であった世帯の給付水準 出典 : 厚生労働省報道発表資料 2018 年度の年金額改定について をもとに作成 図表 2 も同じ 2018 年度の年金額改定の考え方 年金額は 原則 新規裁定者 (67 歳以下の受給者 ) はの変動にあわせて 既裁定者 (68 歳以上の受給者 ) は物価の変動にあわせて改定されます ただし 水準の変動がマイナスで物価水準の変動がプラスとなる場合には 高齢者の年金収入が急激に下がらないよう配慮して 年齢にかかわらず スライドなしとするルールとなっています 2018 年度は 変動率がマイナス ( 0.4%) で 物価変動率がプラス (0.5%) となったた 1

め 上記のルールにより新規裁定年金 既裁定年金ともにスライドなし ( 年金額の改定なし ) とさ れました 2.2018 年度の国民年金保険料 2018 年度 (4 月以降 ) の国民年金保険料は月額 16,340 円で 前年度より月額で 150 円 ( 注 1) の引き下げとなり 毎年 280 円の引き上げが始まる直前の 2004 年度の保険料 13,300 円より 3,040 円高い水準となりました ( 図表 2) 図表 2 国民年金保険料 2017 年度 月額 16,490 円 2018 年度 月額 16,340 円 2017 年度から 150 円の引き下げ ( 注 1) 2019 年度 月額 16,410 円 2018 年度から 70 円の引き上げ ( 注 2) ( 注 1) 法律上は毎年 280 円ずつ引き上げられ 2017 年度に上限に達し 法律上の保険料は 16,900 円 さらに物価やの変動を反映した一定の率 ( 保険料改定率 ) を乗じるため 実際の保険料は 2017 年度と比べて 150 円の引き下げ 2018 年度の国民年金保険料 16,900 円 0.967 16,340 円 ( 法律上の保険料 ) ( 保険料改定率 ) ( 実際の保険料 ) ( 注 2) 国民年金第 1 号被保険者に対する産前産後期間の保険料免除制度施行により 2019 年度分より法律上の保険料が 17,000 円に 100 円引き上げ ( 実際の保険料は 70 円引き上げ ) 3. マクロ経済スライド (1) マクロ経済スライドとスライド調整率公的年金の額は 変動率や物価変動率にあわせた改定に加えて さらに マクロ経済スライド という仕組みによって給付水準が下方に調整されます 具体的には 公的年金の被保険者数の減少および平均余命の伸びに基づいて スライド調整率 が設定され 変動率や物価変動率からスライド調整率を控除した率によって年金額が毎年改定されます ( 図表 3) マクロ経済スライドは 少子高齢化の進行に対応するために 年金の給付水準を自動的に調整する仕組みとして 2004 年に導入されました マクロ経済スライドによる調整は 年金財政が長期にわたって均衡すると見込まれる ( 概ね 100 年後に十分な積立金を保有できると判断される ) まで行なわれます 調整期間中の所得代替率 ( 後述 ) は低下していき 調整期間終了後は 原則 所得代替率は一定 ( 政府は所得代替率の下限を 50% として設定 ) となります 2

図表 3 マクロ経済スライドとスライド調整率の関係 ( スライド調整率をマイナス 2% とした場合の例 ( 注 )) < マクロ経済スライドの仕組み > < 名目下限措置 > 物価の伸びが小さい場合 物価の伸びがマイナスの場合 ( 物価 ) -2% 3% ( 物 1% 1% -1% 改定率 ( 物価 ) 調整率改定率調整率改定率 (-1%) -1% -1% 改定なし ( 物価 ) ( 物価 ) 調整率 ( 物価 ) (-2%) 部分的な調整にとどまる 調整なし ( 注 )2018 年度マクロ経済スライドによるスライド調整率はマイナス 0.3% 出典 : 厚生労働省年金法改正 ( 平成 28 年法律第 114 号 ) 成立に係る資料をもとに作成 図表 4も同じ (2) マクロ経済スライドによるスライド調整のルール見直し (2018 年 4 月導入 ) 従来は マクロ経済スライドによって 年金の名目額が前年度と比較してマイナスになってしまう場合には 年金受給者の生活水準への影響を考慮し 前年度と同額とし マイナスにはしないこととされていました このように マクロ経済スライドを一部しか適用しない場合 その分年金額を引き下げる期間が長くなり 長期的な年金財政の収支のバランスにも影響が出てきます 将来 年金を受給する世代の年金の給付水準を確保するため 調整しきれなかった分を翌年度以降に繰り延べて ( これを キャリーオーバー と呼びます ) 物価が上昇した年に過去の未調整分を追加で調整する仕組みが 2018 年 4 月から導入されました ( 図表 4) 2018 年度の年金額においてマクロ経済スライドの未調整分はマイナス 0.3% であり 未調整分は繰り越されました 図表 4 マクロ経済スライドによる調整ルールの見直し ( スライド調整率をマイナス2% とした場合の例 ) < 景気後退期 > < 景気回復期 > ( 物価 ) -2% ( 物価 ) 4% -1% 1% -1% 改定率 1% (-1%) 調整率改定率改定なし ( 物価 ) 調整率 ( 物価 ) 未調整分をキャリーオーバー 4. 所得代替率の見通し (1) 所得代替率公的年金の給付水準は 所得代替率 という考えに基づき算出されます 所得代替率とは 給付開始時点の年金額を 現役世代の平均手取り収入額 ( 賞与込み ) に対する割合で示したものです 年金額を固定すると インフレや給与水準の上昇があったときに年金の価値が下がってしまうため 一定の価値を保障する方法として モデル世帯 (40 年間平均収入で厚生年金に加入していた夫と専業主婦の妻の世帯 ) と所得代替率を設定し 給付開始時の現役世代の手取り収入と比べてどの程度の年金額を受け取れるか という指標を設けています 3

この所得代替率は世帯の所得水準によって異なり 世帯の一人あたりの所得が低いほど高くなります 一般に高所得世帯は個人年金や貯蓄などで老後に備えることができますが 所得の低い世帯は十分な老後の備えをすることが困難です そのため公的年金では 世帯構成や現役時代の所得の違いを軽減するように設計され 所得の再分配が行なわれています ただし 実際に支給される年金は現役時代の収入に基づいて算出されますので 現役時代の所得が高い世帯の年金額が 所得の低い世帯の年金額を下回る訳ではありません ( 図表 5) 図表 5 現役時の収入と所得の再分配による受給時の年金額 ( 金額 ) 所得代替率 : 高所得代替率 : 中所得代替率 : 低 現役の時の収入 年厚金生 基礎年金 現役の時の収入 年厚金生 基礎年金 現役の時の収入 年厚金生 基礎年金 給付される年金 収入が低い人収入が中程度の人収入が高い人 ( 収入 ) 出典 : 厚生労働省ホームページをもとに作成 (2) 財政検証と所得代替率の予測公的年金制度は 現役世代の保険料負担で高齢者世代を支える 賦課方式 で運営されていますが 年金財政の長期的な持続可能性を確認するため 厚生労働省は少なくとも5 年に1 度 公的年金の財政検証 ( 給付と負担のバランスが取れているかの確認 ) を行なっています 直近では 2014 年に実施し 経済状況に応じて8 通りのケースを設定し おおむね 30 年後の厚生年金の水準を試算しています ( 図表 6) 経済が成長するケース ( ケースA~E) では モデル世帯の所得代替率は将来も 50% を上回る見通しですが 低成長ケース ( ケースF~H) では将来的に下回る見通しとなっています なお 次の財政検証 (5 年後 ) までに所得代替率が 50% を下回ると見込まれる場合には マクロ経済スライドによる調整期間の終了について検討を行ない その結果に基づいて給付および負担の在り方等について検討することになっています 2014 年におけるモデル世帯の年金支給額は 21.8 万円 所得代替率は 62.7% でした 4

図表 6 財政検証による将来見通し ( モデル世帯 ) ケース 将来の経済状況の仮定 ( 労働力率 ) 物価上昇率 上昇率 経済の前提 実質運用利回り 実質経済成長率 支給額 ( 万円 月額 ) 年金受給額 所得代替率 ( 注 1) ( 注 2) A 2.0 2.3 3.4 1.4 30.1 50.9(2044 年度以降 ) B 1.8 2.1 3.3 1.1 28.4 50.9(2043 年度以降 ) C 労働市場への参加が進むケース 1.6 1.8 3.2 0.9 26.9 51.0( ) D 1.4 1.6 3.1 0.6 25.9 50.8( ) E 1.2 1.3 3.0 0.4 24.4 50.6( ) F 1.2 1.3 2.8 0.1 23.4 45.7(2050 年度以降 ) G 労働市場への参加が進まないケース 0.9 1.0 2.2 0.2 21.6 42.0(2058 年度以降 ) H 0.6 0.7 1.7 0.4 17.8 39.0(2055 年度以降 ) ( 注 1) ケースF~Gでは 仮に 財政のバランスが取れるまで機械的に給付水準調整を進めた場合の数値 ( 注 2)( ) 内はマクロ経済スライドの調整終了年度 出典 : 厚生労働省 国民年金及び厚生年金に係る財政の現状及び見通し -2014 年財政検証結果 - をもとに作成 5. 高齢者世帯の家計収支高齢化 現役世代の減少等を背景に マクロ経済スライドによって今後さらなる公的年金の受給額の調整が行なわれる見込みです 安定した老後生活を送るために 現役時代から預貯金 個人年金保険等で備える等 自助努力の必要性が高まっています (1) 高齢勤労者世帯高齢者世帯のうち高齢勤労者世帯 ( 世帯主が 65 歳以上の勤労者 ) は 実収入が 1ヵ月平均 411,812 円で そのうち公的年金等が 132,486 円と実収入の 3 割ほどを占めており 可処分所得は 348,716 円となっています 実支出は 354,257 円 ( 消費支出 291,161 円 + 税金 社会保険料等 63,096 円 ) となっており 月間収支は 57,555 円の黒字となっています ( 図表 7) 図表 7 高齢勤労者世帯の月間家計収支 実収入 411,812 税金 社会保険料等 63,096 食料 76,606 勤め先収入 264,245 可処分所得 348,716 消費支出 291,161 1 2 3 4 5 6 8 実支出 354,257 7 公的年金給付 132,486 の消費支出 67,493 15,081 黒字 57,555 1 住居 (17,696 円 ) 2 光熱 水道 (22,815 円 ) 3 家具 家事用品 (13,416 円 ) 4 被服および履物 (9,905 円 ) 5 保健医療 (14,838 円 ) 6 交通 通信 (40,336 円 ) 7 教育 (670 円 ) 8 教養娯楽 (27,384 円 ) 出典 : 総務省統計局 家計調査報告 ( 家計収支編 )-2017 年平均速報結果の概要 - をもとに作成 図表 8~11 も同じ 5

(2) 高齢夫婦無職世帯高齢夫婦無職世帯 ( 夫 65 歳以上 妻 60 歳以上の夫婦のみの無職世帯 ) は 実収入が 1ヵ月平均 209,198 円で うち公的年金等が 191,019 円と約 9 割を占め 大半を公的年金等に依存しています 税金 社会保険料等を引いた可処分所得は 180,958 円となっています ( 図表 8) 一方 実支出は 263,718 円 ( 消費支出 235,477 円 + 税金 社会保険料等 28,240 円 ) と 月間収支は 54,520 円の不足が発生しています このため 毎月 預貯金取り崩し 24,729 円 保険金等受取 ( 注 ) 12,802 円などで補っています 年間では 預貯金を約 30 万円取り崩し 保険金等を約 15 万円受け取っていることになります 1ヵ月あたりの不足額は前年比では減少しているものの 過去 10 年間では増加傾向にあります ( 図表 9) ( 注 ) 受取保険金額から支払保険料を差し引いたもの 家計調査では貯蓄的要素のある保険を指しており 個人年金保険や終身保険のほか 企業年金保険等も含まれる 図表 8 高齢夫婦無職世帯の月間家計収支 実収入 209,198 不足分補てんの内訳 税金 社会保険料等 28,240 食料 64,444 公的年金給付 191,019 可処分所得 180,958 1 2 3 4 5 6 実支出 263,718 消費支出 235,477 18,179 不足分 54,520 教養娯楽の消費支出 25,077 54,028 1 住居 (13,656 円 ) 2 光熱 水道 (19,267 円 ) 3 家具 家事用品 (9,405 円 ) 4 被服および履物 (6,497 円 ) 5 保健医療 (15,512 円 ) 6 交通 通信 (27,576 円 ) 7 教育 (15 円 ) 有価証券純減 171 16,818 保険金等受取 12,802 預貯金取り崩し 24,729 図表 9 高齢夫婦無職世帯の月間収支不足額および預貯金取り崩し 保険金等受取の推移 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 61,560 62,326 57,592 54,711 54,519 49,388 51,674 46,221 42,125 41,191 42,950 36,037 36,534 35,003 30,950 36,438 28,732 28,857 30,353 32,298 31,415 24,729 4,842 7,672 9,980 9,619 10,239 11,477 12,990 15,420 14,340 14,231 12,802 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 年 ) 預貯金取り崩し 保険金等受取 不足額 (3) 高齢単身無職世帯高齢単身無職世帯 ( 公的年金等を受給して生活している 65 歳以上の単身世帯 ) は実収入が 116,599 円で そのうち公的年金等の社会保障給付が 109,939 円と9 割以上を占めています ( 図表 10) 月間収支は 37,653 円の不足が発生しており 毎月 預貯金取り崩し 26,203 円 保険金等受取 914 円などで補っています 年間では 預貯金を約 31 万円取り崩し 保険金等を約 1 万円受け取っていることになります ( 図表 11) 6

図表 10 高齢単身無職世帯の月間家計収支 実収入 116,599 不足分補てんの内訳 社会保障給付 109,939 可処分所得 103,876 6,660 不足分 37,653 10,536 消費支出 141,529 税金 社会保険料等 12,723 食料 35,336 1 2 3 4 5 6 実支出 154,252 教養娯楽 16,760 の消費支出 31,446 保険金等受取 914 預貯金取り崩し 26,203 1 住居 (14,550 円 ) 2 光熱 水道 (12,896 円 ) 3 家具 家事用品 (5,877 円 ) 4 被服および履物 (3,792 円 ) 5 保健医療 (7,918 円 ) 6 交通 通信 (12,954 円 ) 図表 11 高齢単身無職世帯の月間収支不足額および預貯金取り崩し 保険金等受取の推移 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 38,280 37,653 35,876 32,938 29,429 25,900 25,994 26,899 27,214 28,265 24,580 23,125 22,692 23,764 17,356 13,132 19,792 19,661 15,695 14,886 20,070 26,203 1,915 1,662 408 5,250 1,539 4,720 3,079 3,617 2,456 2,667 914 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 ( 年 ) 預貯金取り崩し保険金等受取不足額 7