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地震や防災に関する情報の取得源はテレビが最も多い 地震や防災に関する知識をどこで得ているかをたずねたところ テレビ と回答をする方が 66.6% と多数を占め の イ ンターネット (45.3%) 新聞 (30.7%) といった回答を大きく引き離した結果となりました テレビは昨年 一昨年に続き最も多

◎公表用資料

PowerPoint プレゼンテーション

震災一周年を控えた生活者の意識を電通が調査

表紙(A4)

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一人暮らし高齢者に関する意識調査結果 <概要版>2

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P5 26 行目 なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等の関係から なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等から P5 27 行目 複式学級は 小規模化による学習面 生活面のデメリットがより顕著となる 複式学級は 教育上の課題が大きいことから ことが懸念されるなど 教育上の課題が大きいことから P

市税に係る減免措置調査票 所属名 此花区役所 1 減免対象 市税の税目 ( 該当に 印 ) 減免内容 ( 該当条例等 ) 個人市民税 法人市民税 固定資産税 軽自動車税 事業所税 児童遊園の用に供する固定資産 条例第 4 条の 3 第 4 号規則 (1) 政策目的地域コミュニティの中核的組織として

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調査概要 : 東日本大震災発生後の生活者調査 東日本大震災後の暮らしと生活意識に関する調査概要 調査期間 :2011 年 4 月 15 日 ~19 日 クローズドモニターに対するインターネット調査 回収割付 男性 女性 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 20 代 30 代 40 代

内閣府自殺対策推進室提出資料 平成 23 年 6 月 15 日内閣府自殺対策推進室内閣府経済社会総合研究所自殺分析班警察庁厚生労働省 東日本大震災に関連する自殺の実態把握について 平成 23 年 3 月 11 日に発災した東日本大震災に関連する自殺の実態把握について 以下 のとおり実施する 1. 定

平成30年版高齢社会白書(全体版)

5 防災の日を知っている方は約 8 割 防災の日については知っている 聞いたことがあると答えた方が 8 割以上を占めました 9 月 1 日が防災の日 であることまでご存知の方は全体のうち 57.5% でした (Q10 参照 ) アンケート概要 アンケートタイトル地震防災に関するアンケート リサーチ実

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地震防災に関するアンケート調査結果について

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45

冊子_ひとりで悩みを抱えていませんか?

調査の結果 問 1 あなたの性別は 調査に回答していただいた生徒の性別は 男 が問 % 女 が 49.5% です 男 女 問 2 あなたは, 生まれてからずっと鈴鹿市に住んでいますか 生まれたときから鈴鹿市に ずっと住ん

困窮度別に見た はじめて親となった年齢 ( 問 33) 図 94. 困窮度別に見た はじめて親となった年齢 中央値以上群と比べて 困窮度 Ⅰ 群 困窮度 Ⅱ 群 困窮度 Ⅲ 群では 10 代 20~23 歳で親となった割 合が増える傾向にあった 困窮度 Ⅰ 群で 10 代で親となった割合は 0% 2

家政_08紀要48号_人文&社会 横組

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「女性のコミュニケーション実態とニオイの意識」に関する調査

平成 28 年度 県民 Webアンケート 第 6 回自主防災の取り組みについて 実施期間 2016/9/15~2016/9/21 アンケート会員数 224 人回収数 191 件 ( 回収率 85.3%) 近年 全国各地で自然災害が多発しており 奈良県でもいつ大きな災害に見舞われるかわかりません 災害

事業者名称 ( 事業者番号 ): 地域密着型特別養護老人ホームきいと ( ) 提供サービス名 : 地域密着型介護老人福祉施設 TEL 評価年月日 :H30 年 3 月 7 日 評価結果整理表 共通項目 Ⅰ 福祉サービスの基本方針と組織 1 理念 基本方針

世論調査報告書

2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,


世の中の人は信頼できる と回答した子どもは約 4 割 社会には違う考え方の人がいるほうがよい の比率は どの学年でも 8 割台と高い 一方で 自分の都合 よりみんなの都合を優先させるべきだ は 中 1 生から高 3 生にかけて約 15 ポイント低下して 5 割台にな り 世の中の人は信頼できる も

小学生の英語学習に関する調査

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Ⅲ 調査対象および回答数 調査対象 学校数 有効回答数児童生徒保護者 (4~6 年 ) 12 校 1, 校 1, 校 1,621 1,238 合計 41 校 3,917 ( 有効回答率 96.3%) 3,098 ( 有効回答率 77.7%) Ⅳ 調査の実施時期

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平成24年度 団塊の世代の意識に関する調査 日常生活に関する事項

(4) ものごとを最後までやり遂げて, うれしかったことがありますか (5) 難しいことでも, 失敗を恐れないで挑戦していますか

3 地域コミュニティ活動について 地域コミュニティ活動 への参加について よく参加している 時々参加している とい う回答は 55.4% となりました また 参加したことはない と回答された方以外を対象に 地域コミュニティ団体の課題と 思うもの を尋ねたところ 回答が多かったものは 以下のとおりです

H20年5月13日

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平成29年3月高等学校卒業者の就職状況(平成29年3月末現在)に関する調査について

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5_【資料2】平成30年度津波防災教育実施業務の実施内容について

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十和田市 事業別に利用数をみると 一時預かりは 年間 0 (.%) 以 上 (.) - (.%) の順となっています 問. 一時預かり ( 年間 ) n= 人 以上. 幼稚園の預かり保育は 年間 0 (.%) 以上 (.%) (.%) の順となっています ファミリー サポー

初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 問 33 問 8- 母 ) 図 95. 初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 母親 ) 初めて親となった年齢 を基準に 10 代で初めて親となった 10 代群 平均出産年齢以下の年齢で初めて親となった平均以下群 (20~30 歳 ) 平均

2 お子さんに携帯電話 スマートフォン等 ( 以下, 携帯 スマホ ) を持たせていますか 1 子ども専用の携帯 スマホを持たせている 2 子ども専用の携帯 スマホは持たせていないが 家族の携帯電話は自由に使える 3 携帯 スマホは持たせていない 小学校 選択肢持たせている家族で共用持たせていない

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DV問題と向き合う被害女性の心理:彼女たちはなぜ暴力的環境に留まってしまうのか

資料 3 全国精神保健福祉センター長会による自殺予防総合対策センターの業務のあり方に関するアンケート調査の結果全国精神保健福祉センター長会会長田邊等 全国精神保健福祉センター長会は 自殺予防総合対策センターの業務の在り方に関する検討チームにて 参考資料として使用されることを目的として 研修 講演 講

M28_回答結果集計(生徒質問紙<グラフ>)(全国(地域規模別)-生徒(公立)).xlsx

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(3) 将来の夢や目標を持っていますか 平成 29 年度 平成 28 年度 平成

第 5 章管理職における男女部下育成の違い - 管理職へのアンケート調査及び若手男女社員へのアンケート調査より - 管理職へのインタビュー調査 ( 第 4 章 ) では 管理職は 仕事 目標の与え方について基本は男女同じだとしながらも 仕事に関わる外的環境 ( 深夜残業 業界特性 結婚 出産 ) 若

調査結果概要 ( 旭川市の傾向 ) 健康状態等 子どもを病院に受診させなかった ( できなかった ) 経験のある人が 18.8% いる 参考 : 北海道 ( 注 ) 17.8% 経済状況 家計について, 生活のため貯金を取り崩している世帯は 13.3%, 借金をしている世帯は 7.8% となっており

附帯調査

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

平成 26 年 3 月 28 日 気象庁 特別警報の認知度等に関する調査結果 ( 概要 ) I 調査の概要 1 目的 国民の特別警報に対する認知度 理解度を把握し 今後の特別警報の運用や利活用の促進 当庁 の周知 広報活動に資するための資料の収集 2 調査内容 (1) 特別警報の認知状況 (2) 特

鎌倉市関谷小学校いじめ防止基本方針 平成 26 年 4 月 鎌倉市立関谷小学校

1 家庭生活について 朝食及び就寝時刻 早寝早起き朝ごはん の生活リズムが向上している ( 対象 : 青少年 ) 朝食を食べている 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1.2 今回 (H27) 経年 1.7 前回 (H22)


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平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

半田市地域福祉計画 市民対面アンケート調査報告書 平成 21 年 10 月

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- 目次 - Ⅰ 計画策定の趣旨等 1 Ⅱ 船橋市における自殺の現状 2 Ⅲ 船橋市の自殺対策における取組 3 Ⅳ 船橋市の自殺対策推進体制 6

(4) ものごとを最後までやりとげて, うれしかったことがありますか (5) 自分には, よいところがあると思いますか

子供・若者の意識に関する調査(平成28年度)

家庭における教育

[ 中学校男子 ] 1 運動やスポーツをすることが好き 中学校を卒業した後 自主的に運動やスポーツをする時間を持ちたい 自分の体力 運動能力に自信がある 部活動やスポーツクラブに所属している 3 運動やスポーツは大切 [ 中学校女子

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地域包括支援センターにおける運営形態による労働職場ストレス度等の調査 2015年6月

裁判員制度 についてのアンケート < 調査概要 > 調査方法 : インサーチモニターを対象としたインターネット調査 分析対象者 : 札幌市内在住の20 歳以上男女 調査実施期間 : 2009 年 11 月 10 日 ( 火 )~11 月 11 日 ( 水 ) 有効回答者数 : N=450 全体 45

ニュースリリース AVON

< 要約 > < 質問 1> あなたにとって最も備えが必要だと思う災害は何ですか? トップは圧倒的に 地震 約 8 割の方が 最も備えが必要な災害 と回答 北海道 東北では 大雪 雪崩 中国 四国 九州は 台風 大雨 洪水 を警戒 < 質問 2> ご家庭の防災対策は 100 点満点で採点すると何点で

図 1 津波 AR アプリ起動画面 図 2 パノラマ画像を用いた AR アプリ ( 志津川 ) 図 3 津波 AR アプリ QR コード 図 4 パノラマ画像を用いたアプリ QR コードと位置情報コード

調査結果概要

「オリンピック・レガシーに関する意識調査」(第2回)結果概要

総合的な探究の時間 は 何を 何のために学ぶ学習なのか? 総合的な探究の時間 は与えられたテーマから みなさんが自分で 課題 を見つけて調べる学習です 総合的な探究の時間 ( 総合的な学習の時間 ) には教科書がありません だから 自分で調べるべき課題を設定し 自分の力で探究学習 ( 調べ学習 )

1 施設で生活する高校生の本音アンケート 3 2 調査項目 4 3 施設で生活する高校生の自己肯定感について...5 (1) 一般高校生との比較 5 4 施設で生活する高校生の進路について.7 (1) 希望職種の有無と希望進路 7 (2) 性別 学年による進路の違い 8 5 施設で生活する高校生のア

初めて親となった年齢別に見た 就労状況 ( 問 33 問 8) 図 97. 初めて親となった年齢別に見た 就労状況 10 代で出産する人では 正規群 の割合が低く 非正規群 無業 の割合が高く それぞれ 22.7% 5.7% であった 初めて親となった年齢別に見た 体や気持ちで気になること ( 問

結婚しない理由は 結婚したいが相手がいない 経済的に十分な生活ができるか不安なため 未婚のに結婚しない理由について聞いたところ 結婚したいが相手がいない (39.7%) で最も高く 経済的に十分な生活ができるか不安なため (2.4%) 自分ひとりの時間が取れなくなるため (22.%) うまく付き合え

(4) ものごとを最後までやり遂げて, うれしかったことがありますか (5) 難しいことでも, 失敗を恐れないで挑戦していますか

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報道関係者各位 2019 年 8 月 9 日 SBI リスタ少額短期保険株式会社 [ 関東財務局長 ( 少額短期保険 ) 第 1 号 ] SBI リスタ少短 地震 防災 に関するアンケート調査を実施 ~ 地震だけでなくあらゆる自然災害への警戒意識 高まる~ SBI リスタ少額短期保険株式会社 ( 本

5 児童生徒質問紙調査 (~P23) (1) 運動に対する意識等 [ 小学校男子 ] 1 運動やスポーツを [ 小学校女子 ] することが好き 1 運動やスポーツをすることが好き H30 全国 H30 北海道 6 放課後や学校が休みの日に 運動部や地域のスポーツクラブ以外で運動やスポーツをすることが

H25 港南区区民意識調査

1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

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18 定期的にモニタリンク を行い 放課後等ディサービス計画の見直しの必要性を判断しているか 19 カ イト ラインの総則の基本活動を複数組み合わせて支援を行っているか 20 障害児相談支援事業所のサービス担当者会議にその子どもの状況に精通した最もふさわしい者が参画しているか 関係機関や保護者との連

岐阜市における「医薬品の正しい使い方」に関する調査アンケート結果

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インターネットについてのアンケート 1 学期の PTA 講演会でも 不審者やネット犯罪から子どもを守るために と題して講演会を行いましたが 下條小学校の子どもたち 保護者のみなさんが インターネットとどのように関わっているのか 高学年の児童 保護者を対象にアンケートを行いました 全県的な調査と比較し

Transcription:

8. 被災地における思春期の子どもの 危険行動を防止するための支援システム 長田真紀子 ( 旧所属フリーランスライター現所属 MDS-CMG( 株 )) 早乙女智子 ( 神奈川県立汐見台病院 ) 江夏亜希子 ( 四季レディースクリニック ) 堀口雅子 ( 主婦会館クリニック ) 研究目的 被災地における思春期の子どもの行動は ストレスや環境により危険行動へと移行すると予測できる現状がある 予測できる危険を防止することを目的に 親 教員 医療職などとの連携をとる 援助者を対象にした支援マニュアルを作成 そして思春期の子どもを対象にアプリ LINE や facebook などスマートフォン媒体を含めた支援教材を作成し 支援システムの構築を行う 本研究では 支援システム構築の基礎資料とするため 災害を受けたのち どのような危険行動があったのか 対応できたこと できなかったこと 必要な支援を インタビューを通して明らかにすることを目的とした 研究の必要性 現在東北地域では 未曾有の大地震により被災しており 回復途上にあるとはいえ 住民は通常とは異なる環境で生活することを余儀なくされている また関東地域では竜巻による被害もあり 自然災害が増加している 避難所だけではなく 仮設住宅や本来の自宅とは異なる場所では プライバシーの確保が難しい生活であり 災害という大きなストレスに さらに負荷を与えている このような状況の中 報道されていないが 避難所での強姦が実際に起き 子どもたちが大きな危険にさらされた 大きな災害にあった後 思春期の子どもはストレス対処行動として 危険行動を取りやすいことが 過去の災害の研究より明らかになっている 薬物 タバコ依存 性的行動の活発化 不登校など 子どもの危険行動は様々である これらの問題への対処方法として アメリカのサイコロジカル ファーストエイドでは その危険行動について親子で話し合う 大人へ助けを求めるなどと書かれているが 日頃から特に性に関する話を親子で行うことが少ない日本の思春期の子どもに即した対処方法とはいえない 日本の思春期の子どものストレス対処としての危険行動を阻止する対応が早急に求められている そこで重要なのは 教員 ( 特に養護教諭 ) や医師 看護師 助産師といった医療職者など 日頃の性教育等でかかわりを持っていた人の存在である その人たちがまず 子ども - 37-

たちにアクセスしコミュニケーションを取り 子どもが本音で話ができる環境を作る 具体的に何が危険であるのかという話をする 予防策が取れる体制 つまり 被災地における思春期の子どもの危険行動を防止するための支援システム を作る必要がある その支援システムは 予測できる危険を防止することを目的に 親 教員 医療職などとの連携をとることが必要である その連携をスムーズにとるための体制つくりと援助者を対象にした支援マニュアルの作成 そして思春期の子どもを対象にアプリ LINE や facebook などスマートフォン媒体を含めた支援教材の作成が この研究活動の最終目的である 研究計画 近年の自然災害 ( 東日本大震災および竜巻 ) の中で どのような危険行動があったのか 対応できたこと できなかったこと 必要な支援を 文献検討とインタビューを通して明らかにし 日本の現状で必要な支援のマニュアル化を図るとともに 協力体制の構築を目指す インタビューは 被災地 ( 岩手県 宮城県 埼玉県 ) の中学校 高等学校の養護教諭とした また実際に多くの思春期の子どもと関わっている NPO 法人ハーティー仙台へのインタビューも計画した 実施内容 結果 1 文献検討 1) 一般的に災害の後には 約 50% の子どもが心的外傷後ストレス障害 ( 以下 PTSD とする ) の症状を呈すると言われている 厚生労働症や地方自治体は PTSD を評価するチェックリストや PTSD に対処するためのマニュアルを 親 教員そして子どもたち向けに作成し配布している これらのチェックリストやマニュアルの中では 思春期の子どもの災害後のストレス反応が述べられているが 思春期特有の危険行動 ( 例えば薬物使用や性行動の活発化など ) は述べられていない 2) 心的援助として 家族の支え 特に母親からのサポートが重要である 家族関係が良好であることは 子どもの気持ちの安定につながる 3) 避難所は快適な場所ではなく 特に女性や子どもには厳しい環境である 東日本大震災では いくつかの避難所では女性が必要とする物品を集めた 女性キット が配布され 小さな子どもたちのための遊び場をいくつかの NPO 法人が企画した しかし 思春期の子どもたちへの配慮は見られなかった 4) ある調査は 1 年後に行われており 質問内容として 地震当時の家族及び人的サポートの状況 について聞いていた その結果 不安な気持ちを誰かに話したかの回答として 89.5% が 話していない と回答していた 話した相手としては母親が 5.8% 友人が 3.5% であった - 38-

まとめ子どもへの支援は発達段階に応じた支援が必要であると言われている 思春期の子どもに対して 心のケア が重要であり 彼らが感情表現を表すことができるような援助が求められていた 災害時には家族の存在の重要性もさることながら 思春期の特徴を踏まえると 彼らにとっての重要他者には友人の存在が不可欠である つまり 彼らの 他者に話をする の他者は母親だけでなく友人を指していると考える 実際の報告では 不安の表出を行った子どもは少ないため いち早く 学校を再開し友人とのコミュニケーションの場を確保することが必要だと考えられる 2 インタビュー 1 ハーティー仙台八幡悦子氏 NPO 法人ハーティー仙台は DV 被害者の支援 デート DV 予防教育を行っている団体であり 八幡氏は性教育を行う助産師でもある 東日本大震災の後 避難所での女性支援等も行ってきた八幡悦子氏に 災害と女性の性被害や子どもたちに必要な支援等についてインタビューを行った 避難所の問題としては 1 女性や子どもの脆弱性を全く理解していない人が避難所のリーダーになることが多々あった 2 被災地は遠く交通が不便にて わざわざ性暴力を働きに行く者はない しかし 身近な関係 ( 支援活動 地元の人間関係 ) の中で性暴力は起きていた 3 被災で貧困を抱えた家庭の若者は 仙台や東京の繁華街に生きるすべを求めて 出ていったと思う 以上 3 つが挙げられた 八幡氏は 震災は大いに DV や性暴力に影響はしているが もともとあったものが震災によって深刻化したと考えており また一方で地域の特性にあった思春期の子たちを救う活動が必要になる と語られた 3 インタビュー 2 竜巻被害 ( 養護教諭へのインタビュー ) 竜巻に関して 今まで経験したことのない地域での発生が見られたため どのように対応してよいのかわからず また誰に援助を求めてよいのかわからなかった 竜巻被害では 学校で一組あるいは二組の兄弟 ( 家族 ) しか被害にあうことはなく 同じ町内に住んでいても まったく被害にあわないこともある そのため クラスの中でその生徒一人だけが被災者という状況であった 同地区の養護教諭にもこのような状況を経験した者がいないため 厚生労働省や自治体の発行している PTSD に関するマニュアルやパンフレットを読み 養護教諭同士で情報交換をしながら 子どもへの対応を進めていった この被災以降は 竜巻発生時の避難訓練をし 子どもの PTSD への対処について学ぶ機会を - 39-

増やしている 竜巻被害に関する情報は少ないため 今後どのような対応が必要なのかわからないため 悩んでいる 4 インタビュー 3 東日本大震災 < 岩手県 > 岩手県では 3 月 11 日は試験の採点日であったため 学校内には教諭と部活動で登校してきていた生徒のみであった 震災当日 幸いにも学校にいた生徒 教員は大きなけがもなかった 生徒は教員と一緒に 学校から救援ボートを出したり 避難してきた人たちに毛布を配ったりと 一生懸命に援助活動を行っていた A 校では 津波被害により校舎が使えなくなってしまったため 約半年間 B 校の校舎を使用させてもらうことになった A 校は男子が多く B 校は女子が多いため 男子が平常時よりやや興奮気味であったが 教員に対して協力的になった 学校が始まってからは 2,3 年生は 3 月までの間にどのような生徒なのかを教員が把握していたため 何かしらの行動に対しても 今までと同様なのか 震災の影響なのかを判断することができた しかし 1 年生に関しては新入生であるため 以前も何かしらの問題を抱えていたのか 震災の影響であるのかが分からないことが多かった 危険行動が活発化したといえるほどではなかった 繁華街がなくなったため 遊ぶ場所がなく 補導される生徒はほとんどいなくなった そのため 問題が表面化していないという可能性もある 避難所で性被害にあったのではないかと思われる生徒もいた しかし 表面化せず その生徒に対して対応ができなかった 他にも被害にあった生徒はいたかもしれない 加害者は大人である 大人が問題を起こしているのではないか 震災から 3 年を経ており 県外に就職した卒業生もいる 彼らはその地で 同級生のつながりを持っているようだ また岩手県のために仕事をしたいと県外から戻ってきたり 県内の就職を求めたりする卒業生や生徒も増えてきている ( インタビューを受けた教員たち自身は ) 自分たちも震災を受けて まだ立ち直れていない部分もたくさんある 振り返ってみれば あの時ああすればよかった こうすればよかったということはたくさんあるが あの時はそれで精いっぱいだった < 宮城県 > 仙台街中は 2 週間もすればそれほど被害もなく 避難所も 1 か月すれば人がいなくなるような状態だった 従って 学校が始まるのも通常通り どうしても送り出したいと卒業式も行った 子どもたちは自分たちのために先生方が頑張ってくれたと これまで当然だったことを当然として受け止めずに 感謝の心をもって生活できるようになった と感じている また 避難所のボランティアも中 3 にもなれば進んでやり 中 1 や中 2 の子たちも 親の代わりにどこで何が売っているかを生徒同士で情報交換して買い物部隊となっていた 我慢をする 嫌々やっているという子はなく 不謹慎だけど 楽しかったという子までい - 40-

た 街中の中学校は 帰宅困難者や地元の人たちの避難所となった 3 月 11 日は学校が休みに入る直前だったため 教員は子どものことではなく 主に避難所生活を送る方のケアに追われていた 教員の状況を見て 子どもたちは自ら教員に協力し 話したい人たちの相手になってくれた 子どもたちは震災を機に向上して見えたし その後も問題行動が起きなかった 子どものことだけ見ていてもダメで 母親が震災でショックを受けていると子どもも影響を受ける 子どもの保護者 教員などの大人に焦点を当てたケアを行っていく仕組みはなく 今後に期待したい まとめと今後の課題 被害の状況は様々であり 結果を一般的にすることは難しい その中でも言えることは 1 災害に関わらず日頃からの信頼関係と教育が大切であること その教育は 子どもたちだけではなく 大人にも必要である 2 災害時には 同じように被災した同年代の子どもと連絡を取りたい ( つながりたい ) こと ピアの関係を保つことが大切 3 情報提供やつながるための手段は 多様であるほうがよいこと 4 子どもたちをケアする大人へのケアも必要である 支援システムは 親 教員 医療職などの援助者がスムーズに連携することが必要であり 平常時から蜜に連携を取っていくことが大切である 思春期の子どもを対象にした情報提供 災害時のつながりを保つための手段としてのスマートフォン媒体は早急に製作を進めていく必要がある また被災した そして子どもを援助する大人への対応を考えた支援マニュアルの作成を進めていきたい 経費使途明細 使途内容交通費 ( インタビュー実施時 ) インタビュー謝礼 (5,000 円 8 名 ) 会場費 ( インタビュー実施時 ) コーディネーター謝礼文献データテープ起こしデータ分析指導者への謝礼通信費 ( 電話 FAX 郵送料 切手 メール便) 会議費 ( 研究打ち合わせ データ分析など 計 6 回 ) 合計 金額 141,450 円 40,000 円 10,000 円 5,000 円 11,547 円 50,000 円 30,000 円 10,000 円 35,000 円 332,997 円 - 41-