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Web 版 Vol.59( 通巻 704 号 ) 中高齢寡婦加算 ( 遺族基礎年金の4 分の3) 779,300 円 3/4=584,475 円 584,500 円 (100 円単位 ) (2) 老齢厚生年金の年金額の算定式 平成 30 年度の本来水準と従前額保障 図表

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スライド 1

強制加入被保険者(法7) ケース1

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年金・社会保険セミナー

Microsoft Word - T2-11-1_紙上Live_生計維持_13分_

退職後の医療保険制度共済組合の年金制度退職後の健診/宿泊施設の利用済組合貸付金/私的年金退職手当/財形貯蓄/児童手当個人型確定拠出年金22 共イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けるこ

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財財第  号

被用者年金一元化法

PowerPoint プレゼンテーション

表 2 イ特別支給の老齢厚生年金老齢厚生年金は本来 65 歳から支給されるものです しかし 一定の要件を満たせば 65 歳未満でも 特別支給の老齢厚生年金 を受けることができます 支給要件 a 組合員期間が1 年以上あること b 組合員期間等が25 年以上あること (P.23の表 1 参照 ) c

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スライド 1

Microsoft Word - (差替)170620_【総務部_厚生課_櫻井望恵】論文原稿


月号 Vol.68( 通巻 713 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX

再任用と年金加入の関係をまとめると次のようになる ( 都道府県によって勤務形態は異なる ) 再任用の勤務形態フルタイム勤務 3/4 1/2 週の勤務時間 38 時間 45 分 29 時間 19 時間 15 分 共済年金 厚生年金 (2016 年 9 月 30 日まで ) 加入する年金 (2015 年

Web 版 Vol.69( 通巻 714 号 ) 図表 1 年金生活者支援給付金の概要 高齢者への給付金 ( 老齢年金生活者支援給付金 ) 何回かご覧になっている資料だと思いますので 支給要件 や 保険料納付済期間に基づく給付額 など制度の概要 ( 基本的事項 ) につ

調布市要綱第  号

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第14章 国民年金 

Microsoft Word - 概要

新規裁定当該期間 ( 月又は年度 ) 中に新たに裁定され 年金受給権を得た者が対象であり 年金額については裁定された時点で決定された年金額 ( 年額 ) となっている なお 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が65 歳に到達した以降 老齢基礎年金及び老齢厚生年金 ( 本来支給もしくは繰下げ支給 ) を

四日市市消防関係手数料条例の一部を改正する条例

実技試験 ( 個人資産相談業務 ) 次の設例に基づいて 下記の各問 ( 問 1 ~ 問 3 ) に答えなさい 設例 Aさん (33 歳 ) および妻 Bさん (29 歳 ) は 民間企業に勤める会社員である 平成 29 年 3 月に第 1 子を出産予定の妻 Bさんは 産前産後休業および育児休業を取得

被用者年金一元化法による追加費用削減について 昨年 8 月に社会保障 税一体改革関連法の一つとして被用者年金一元化法が成立 一元化法では 追加費用財源の恩給期間にかかる給付について 以下の配慮措置を設けた上で 負担に見合った水準まで一律に 27% 減額することとし 本年 8 月まで ( 公布から 1

Microsoft Word - 概要

一元化後における退職共済年金および老齢厚生年金の在職支給停止 65 歳未満の場合の年金の支給停止計算方法 ( 低在老 ) 試算表 1 年金と賃金の合算額が 28 万を超えた場合に 年金額の支給停止 ( これを 低在老 といいます ) が行われます 年金と賃金の合算額 (c) が 28 万以下の場合は

平成 28 年 9 月度実施実技試験 損保顧客資産相談業務 139

例 言 厚生年金保険被保険者厚生年金保険被保険者については 平成 27 年 10 月 1 日から被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律が施行されたことに伴い 厚生年金保険法第 2 条の5の規定に基づき 以下のように分類している 1 第 1 号厚生年金被保険者第 2

(2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職 再就職 老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 ( 一部又は全額支給停止 ) 3 年金決定請求 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありますの

3 老齢厚生年金に係る年金額誤りの概要について 平成 16 年 8 月 6 日公表 概要 老齢厚生年金の受給権発生月に厚生年金保険の資格喪失及び同日付の資格取得があった場合でかつ当該日に賞与が支給された場合の年金額計算のプログラム誤り ( 社会保険業務センターの指示誤り ) のため 未払い 過払いが

現在公的年金を受けている方は その年金証書 ( 請求者及び配偶者 請求者名義の預金通帳 戸籍謄本 ( 受給権発生年月日以降のもの ) 請求者の住民票コードが記載されているもの ( お持ちの場合のみ ) 障害基礎年金 受給要件 障害基礎年金は 次の要件を満たしている方の障害 ( 初診日から1 年 6か

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Microsoft Word - 児扶法改正(Q&A)

他の所得による制限と雇用保険受給による年金の停止 公務員として再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額停止となり 特別 ( 本来 ) 支給の老齢厚生年金の一部または全部に制限がかかることがあります なお 民間に再就職し厚生年金に加入された場合は 経過的職域加算額は全額支給されますが

Microsoft Word - A-36_遺族_必要書類リスト【2018版】

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老齢基礎年金 老齢基礎年金を受けられる方 老齢基礎年金は 原則として受給資格期間が 25 年 (300 ヵ月 ) 以上ある方が 65 歳になったときから受けられます 受給資格を満たしているときは 本人の希望により 60 歳から 70 歳までの間で年金を受け始める年齢を変更することができます (17

強制加入被保険者(法7) ケース1

平成 27 年 10 月から全国市町村職員共済組合連合会 ( 以下 市町村連合会 1 ) が年金の決定 支払いを行います ~ 各種届出等の手続き及び各種相談は 今までどおり共済組合で行います ~ 平成 24 年 8 月 22 日に公布された 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部

年金・社会保険セミナー

年金請求に必要な添付書類 年金請求書 を提出される前に 添付書類をご確認ください スタート 配偶者はいますか いいえ 2ページ番号 1 をご覧ください は 住民票 所得関係書類が必要となる場合があります あらかじめご了承ください はい * ご本人の状況によっていいえご本人の共済組合等の加入期間は 2

Ⅰ 改正について 児童扶養手当法の改正 Q&A ( 公的年金等と合わせて受給する場合 ) Q1 今回の改正の内容を教えてください A: 今回の改正により 公的年金等 * を受給していても その額が児童扶養手当の額 より低い場合には 差額分の手当が受給できるようになります 児童扶養手当 は 離婚などに

発行所 一般財団法人 年金住宅福祉協会 東京都港区西新橋 TEL FAX 月号 Vol.77 通巻722号

年金制度について 31

52 (2) 再就職後 年金受給権が発生した場合正規職員無職一般企業 無職 共済組合員 A 厚生年金 B ( 一般厚生年金 ) 退職再就職老齢厚生年金支給開始年齢 1 年金待機者登録 2 公的年金加入 3 年金決定請求 ( 一部又は全額支給停止 ) 1 退職した際は 年金の受給権発生まで期間がありま

( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~

Microsoft Word - T2-06-2_紙上Live_老齢(2)_①年金額・マクロ(12分)_

必要書類 全員 該当者のみ 加給年金額対象者有の場合 年金請求書戸籍抄本または住民票 年金証書 ( 写 ) 請求者で年金受給している方 ( 障害 遺族給付含む ) 遺族厚生 ( 共済 ) 年金 障害厚生 ( 共済 ) 年金年金受給選択申出書 *1 等受給権を有する方雇用保険被保険者証 ( 写 )*2

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年金支給開始年齢図 特別支給の ( 給料比例部分 ) 昭和 29 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 特別支給の退職共済年金 昭和 25 年 10 月 1 日生まれ以前 ~ 退職共済年金 経過的職域加算額 ( 旧職域部分 ) 退職等年金給付 ( 年金払い退職給付 ) 平成 27 年 9 月までの組合

点及び 認定された日以降の年間の見込みの収入額のことをいいます ( 給与所得等の収入がある場合 月額 108,333 円以下 雇用保険等の受給者の場合 日額 3,611 円以下であること ) また 被扶養者の年間収入には 雇用保険の失業等給付 公的年金 健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます

Taro-1-国民年金編2015  作成 

社会保障に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律案《概要》

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国民年金

年金・社会保険セミナー

Microsoft Word -

強制加入被保険者(法7) ケース1

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Microsoft Word ①概要(整備令)

平成25年4月から9月までの年金額は

平成 30 年 2 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 7 千億円 (1.4%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

平成 30 年 1 月末の国民年金 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 及び福祉年金の受給者の 年金総額は 49 兆円であり 前年同月に比べて 6 千億円 (1.3%) 増加している 注. 厚生年金保険 ( 第 1 号 ) 受給 ( 権 ) 者の年金総額は 老齢給付及び遺族年金 ( 長期要件 ) につ

2909_0 概要


受けているときは これらの年金総額が 230 万円となるように計算されます 計算例 1. 単一の共済年金が支給されている場合 事例 1 退職共済年金 + 老齢基礎年金を受給している方の場合 現在の年金額退職共済年金 210 万円老齢基礎年金 60 万円 (= 組合員期間に係る基礎年金相当額 ) 退職

年金請求に必要な添付書類 年金請求書 を提出される前に 添付書類をご確認ください 戸籍 住民票 所得関係書類 戸籍 住民票 所得関係書類 の確認方法 スタート 配偶者や子ますか * 子については ( 注 1: パンフレット3ページ下段 ) をご覧ください ご本人の厚生年金保険の加入期間の合計は 20

「公的年金からの特別徴収《Q&A

の対象外となります ( 年金には, 厚生年金部分と年金払い退職給付部分があり, この 場合, 厚生年金部分のみに養育特例が適用されます ) 2

ただし 対象期間の翌年度から起算して3 年度目以降に追納する場合は 保険料に加算額が上乗せされます 保険料の免除や猶予を受けず保険料の未納の期間があると 1 年金額が減額される 2 年期を受給できない3 障害基礎年金や遺族基礎年金を請求できない 場合がありますのでご注意ください 全額または一部免除

年金・社会保険セミナー

児童扶養手当制度について 児童扶養手当制度は 父母の離婚などにより 父又は母と生計を同じくしていない児童 を育成されている家庭 ( ひとり親家庭 ) 等の生活の安定と自立を助け 児童の福祉の増進 を図るための国の制度です 受給できる方 手当を受けることができる人は 次の条件に当てはまる 18 歳に達

2906_0 概要

伊丹市市民福祉金条例の一部を改正する条例(平成12年  伊丹市条例第  号)

事例検証 事例 1 37 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (2 歳 ) が遺される場合ガイドブック P10 計算例 1 P3 事例 2 42 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (7 歳 4 歳 ) が遺される場合 P4 事例 3 事例 3A 事例 3B 53 歳の会社員の夫

●国民年金法等の一部を改正する法律案

【作成中】2903_0 概要

高齢者福祉

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年金請求に必要な添付書類 年金請求書 を提出される前に 添付書類をご確認ください 戸籍 住民票 所得関係書類 戸籍 住民票 所得関係書類 の確認方法 スタート 配偶者や子ますか * 子については ( 注 1: パンフレット3ページ下段 ) をご覧ください ご本人の厚生年金保険と共済組合等の加入期間の

からだの不自由な人たちのために

強制加入被保険者(法7) ケース1


Microsoft Word - T2-06-1_紙上Live_老齢(1)_①支給要件(9分)_

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介護保険・高齢者福祉ガイドブック

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Transcription:

2018. 8.15 8 月号 Vol.65( 通巻 710 号 ) 発行所一般財団法人年金住宅福祉協会 105-0003 東京都港区西新橋 1-10-2 TEL. 03-3501-4791 FAX. 03-3502-0086 http://kurassist.jp E-mail: info@kurassist.jp 夫婦がお互い公務員で すでに年金生活を送っています そんなとき 夫が死亡したら 妻の遺族年金はどうなるのでしょうか? 定年退職は第 2のライフステージ と昔はよく言われていましたが 年金生活をしている夫婦で 配偶者が死亡したら それは第 3のライフステージのスタートになるのではないでしょうか? 遺族年金は受給できるのか? 一人となり どのくらいの年金収入で生活していかなければならなくなるのか? 不安がいっぱい募ります 被用者年金制度一元化前であれば 加入していた共済組合に相談して 手続きをされていたのでしょうが いまは ワンストップサービスの時代です 金融機関でも年金事務所でも 共済組合の加入期間のある人の遺族年金の相談が増えてきているということです 今月は そんな事例の相談です 公務員同士の年金の調整はどうなるのか? 遺族年金を受給できる人 できない人 (1) 夫が国家公務員 妻が地方公務員で 夫婦とも年金を受給中に 夫が死亡! 公務員夫婦の年金加入歴 受給状況金融機関に相談のあった A 夫婦の年金加入歴 年金受給額は 図表 1 のとおりです 国家公務員共済組合連合会から年金 (2 階部分の老齢厚生年金 : 月額 12 万円 旧 3 階部分の経過的職域加算額 : 月額 2 万 4 千円 ) を受給していた夫が死亡 (66 歳で死亡 ) したことにより 遺族年金はどうなるのか ということがご相談の趣旨です また 現在 奥様自身 ( 夫死亡時 63 歳 ) が 地方公務員共済組合から支給されている ご自身の年金である2 階部分の老齢厚生年金 ( 月額 10 万円 ) と旧 3 階部分の経過的職域加算額 ( 退職共済年金 : 月額 2 万円 ) があるが これはどうなるのか というご質問もいただきました 順番に考えていましょう

Web 版 Vol.65( 通巻 710 号 ) 2018. 8.15 02 図表 1 事例 A 夫婦の年金加入歴 年金受給額 夫 ( 昭和 27 年 4 月 15 日生まれ ) 平成 30 年 8 月 15 日に 66 歳で死亡 年金生活者 大学卒業後 国家公務員として 38 年間勤務 老齢厚生年金 (2 号老厚 : 月額 12 万円 年額 144 万円 ) 経過的職域加算額( 旧 3 階部分 退職共済年金 : 月額 2 万 4 千円 年額 28 万 8 千円 ) を受給中に死亡 * 平成 24 年 4 月に 60 歳で 特別支給の退職共済年金の受給権が発生 ( 被用者年金一元化前 ) 平成 29 年 4 月に 65 歳となり 裁定替えされ ( 被用者年金一元化後 ) 2 階部分は老齢厚生年金 旧 3 階部分は経過的職域加算額 ( 退職共済年金 ) となる ** 老齢基礎年金は 740,335 円を受給していた (20 歳以後 60 歳までの共済組合の加入期間を 38 年間として算定 ) < 筆者は経過的加算のことを経過的差額加算と表記しています 以下 本稿において同じ > < 経過的差額加算は考慮していません > 妻 ( 昭和 29 年 12 月 20 日生まれ ) 年金生活者 夫死亡時 ( 平成 30 年 8 月 15 日 ) 63 歳 大学卒業後 地方公務員と して 38 年間勤務 老齢厚生年金 (3 号特老厚 : 月額 10 万円 年額 120 万円 ) 経過的職域加算額 ( 旧 3 階部分 退職 共済年金 : 月額 2 万円 年額 24 万円 ) を受給中 * 平成 27 年 12 月に61 歳で 特別支給の老齢厚生年金と経過的職域加算額 ( 退職共済年金 ) の受給権が発生 ( 被用者年金一元化後 ) 平成 31 年 12 月に65 歳となる **65 歳になると 740,335 円の老齢基礎年金を受給できる予定 (20 歳以後 60 歳までの共済組合の加入期間を38 年間として算定 ) < 子どもはすでに独立し 20 歳以上 > * 事例はあくまでもフィクションです (2)65 歳までは 夫の遺族年金か 妻自身の特老厚 経過的職域加算額を選択! 夫の遺族年金はいくらぐらいになるのか? 夫が死亡したときに妻に支給される遺族年金は 図表 2 のように算定されます 図表 2 夫が死亡したときに 妻に支給される遺族年金 ( ア ) 夫の老齢厚生年金 ( 年額 144 万円 ) 3 / 4 ( イ ) 中高齢寡婦加算 (584,500 円 ) 遺族厚生年金 (2 階部分 )=( ア )+( イ )=108 万円 +58 万 4,500 円 =166 万円 4,500 円 ( ウ ) 夫の退職共済年金 ( 経過的職域加算額 年額 28 万 8,000 円 ) 3 / 4 遺族共済年金 ( 旧 3 階部分 : 経過的職域加算額 )=( ウ )=21 万 6,000 円 妻には 遺族厚生年金 + 遺族共済年金の合計で ( ア )+( イ )+( ウ )=188 万 500 円の遺族年金の受給権が発生する * 遺族年金の年金額については 目安とお考えください 厳密には 本稿 年金講座 2018 年 3 月号をご参照ください A 夫婦は 生計維持要件 ( 生計同一で 妻の年収が850 万円未満 ) を満たしており 夫が20 年以上国家公務員共済組合に加入していましたので 妻に中高齢寡婦加算 584,500 円 ( 平成 30 年度の年金額 ) が加算されます

Web 版 Vol.65( 通巻 710 号 ) 2018. 8.15 03 共済組合に20 年以上加入していた妻にも 中高齢寡婦加算は加算されるのか? 妻が 地方公務員共済組合に20 年以上加入していても 妻に中高齢寡婦加算 584,500 円は加算されます 夫婦がお互い被用者年金に20 年以上加入していて 支給停止が発生するのは 配偶者加給年金額です 中高齢寡婦加算ではありません ただ 相談をしていると 一瞬 アレッ? どうだったかな? と疑問がわいてくることがあると思います その場合は その都度 確認をして 疑問を解消しておくことが大切だと思います 65 歳までは 夫の遺族年金か 妻自身の特老厚 経過的職域加算額を選択! 夫死亡時 妻が63 歳で 65 歳前ですので 引き続き 自分の特別支給の老齢厚生年金 ( 年額 120 万円 ) と経過的職域加算額 ( 年額 24 万円 ) を受給するか ( 合計 144 万円 : 図表 1 参照 ) か 夫の遺族年金 (188 万 500 円 = 遺族厚生 166.45 万円 + 遺族共済 21.6 万円 図表 2 参照) を受給するか の選択となります 自身の年金額 ( 年額 144 万円 ) よりも 夫の遺族年金 ( 年額 188 万 500 円 ) の年金額のほうが多いですし 遺族年金には税金がかかりません ということをアドバイスしておくことがよろしいかと思います なお 被用者年金の遺族年金の請求については ワンストップサービスの対象となっていますので 年金事務所でも 国家公務員共済組合連合会でも 地方公務員共済組合でも いずれの実施機関でも請求することは可能です ただし この事例ですと 該当する実施機関に電子回付される事務処理の時間等を考慮すると また 夫の未支給年金の請求 相談もあるかもしれませんので 国家公務員共済組合連合会に請求手続きをすることがいいのではないかと思います あわせて 国家公務員共済組合連合会の HP によれば 必須書類 として 次の書類を用意するように記されています 図表 3 遺族厚生年金の請求書を提出する際に必要な書類 (1) 年金請求書 (2) 戸籍謄本 ( 受給権発生後のものに限る ) (3) 世帯全員の住民票 ( 受給権発生後のものに限る ) (4) 死亡した者 < 夫 >の住民票の除票 (5) 請求者 < 妻 >の所得証明等 ( 生計維持要件確認のため ) (6) 死亡診断書等 ( 死亡の事実及び死亡原因確認のため ) (7) 請求者 < 妻 >の振込金融機関及び口座番号を確認できる書類 ( 金融機関又はゆうちょ銀行の証明印がある場合は省略可 ) (8) 請求者 < 妻 > 及び死亡した者 < 夫 > の基礎年金番号を確認できる書類 *< > の文言は 筆者が補ったもの また 2 つ ( 複数 ) の年金の受給権が発生し 遺族年金を選択しますので 年金受給選択申出書 も提出する必要があります (3)65 歳まで 2 階部分は夫の遺族年金 旧 3 階部分は妻自身の経過的職域加算額を選択受給することは可能か? これまで述べてきた夫の遺族年金の年金額と妻自身の年金額を整理すると 図表 4 のようになります 図表 4 夫の遺族年金と妻自身の年金 1,664,500 1,200,000 216,000 240,000 1,880,500 1,440,000

Web 版 Vol.65( 通巻 710 号 ) 2018. 8.15 04 65 歳までは 2 階部分は夫の遺族年金を 旧 3 階部分は妻自身の経過的職域加算額を受給することは可能なのか? ここで ハタと疑問が生じるかもしれません 2 階部分は夫の遺族年金を 旧 3 階部分は妻自身の経過的職域加算額 ( 退職共済年金 ) を 選択して受給することは可能なのだろうか と 年金に詳しい先生にお伺いしますと 一元化国共済経過措置政令 ( 平成 27 年政令第 345 号 ) 第 8 条および第 9 条による読替え後の改正前国共済法第 74 条第 1 項の規定によりできない とのことです ただ 正直なところ 法律で条文をフォローするのは かなり困難を極めるというのが実感です (4)65 歳からの年金の受給はどうなるのか? A 夫妻の妻が 平成 31 年 (2019 年 )12 月 19 日に65 歳になると 妻の年金はどうなるのでしょうか? 65 歳になるので 中高齢寡婦加算 584,500 円 ( 平成 30 年度の金額 ) は失権し 支給されなくなります 代わりにというか 年金額は大幅に減額になりますが 遺族厚生年金に経過的寡婦加算が加算されるようになります 妻の生年月日が昭和 29 年 12 月 20 日生まれですので 経過的寡婦加算の金額は 38,990 円になります ( 平成 30 年度の金額 ) ( 詳細については 本稿 年金講座 2018 年 2 月号の 図表 5 平成 30 年度の経過的寡婦加算の加算額 ( 遺族厚生年金 ) をご参照ください ) A 夫妻の妻の65 歳からの年金すでに 2018 年 4 月号でも記していますが 遺族が妻の場合 遺族厚生年金の支給額は 遺族厚生年金 ( 経過的寡婦加算を含む ) または 遺族厚生年金( 経過的寡婦加算を含む ) 2 / 3+ 老齢厚生年金 ( 経過的差額加算を含む ) 1 / 2 のいずれか多い額となります 一般的には丈比べと記述されている事項です 本稿では 遺族厚生年金 ( 経過的寡婦加算を含む ) 2 / 3+ 老齢厚生年金 ( 経過的差額加算を含む ) 1 / 2 を 遺族厚生年金の 併給限度額 と表記します 遺族厚生年金 ( 経過的寡婦加算を含む ) よりも 併給限度額 の年金額が多い場合 併給限度額 の範囲内で 妻自身の老齢厚生年金が優先支給されますので 筆者は遺族厚生年金の 併給限度額 と表記しています 算式で表記すると < 遺族厚生年金の 併給限度額 - 妻自身の老齢厚生年金 >が遺族厚生年金として支給されます イメージ図で見ていただいたほうが わかりやすいでしょう 図表 5 をご覧ください

Web 版 Vol.65( 通巻 710 号 ) 2018. 8.15 05 図表 5 A 夫妻の妻の遺族厚生年金の併給限度額 具体的に数字を当てはめていくと A 子さんの場合 遺族厚生年金の 併給限度額 の範囲内で まず ご自身の老齢厚生年金が優先支給されます そして < 遺族厚生年金の 併給限度額 妻自身の老齢厚生年金 >の算式に基づき <1,345,993 円 1,200,000 円 >=145,993 円が遺族厚生年金として支給されるということになります 2 階部分と旧 3 階部分で それぞれに遺族年金の併給限度額を算定 A 夫婦の場合 夫が国家公務員で 妻が地方公務員でしたので 同じ制度の被用者年金に加入していたという取り扱いになります そして 65 歳になると 2 階部分と旧 3 階部分で それぞれに遺族年金の併給限度額を算定し 妻自身の年金を優先支給し 遺族年金の 併給限度額 とに差額あれば その差額分が遺族年金として支給されるということになります 図表 5 で 2 階部分のイメージ図を示していますが A 夫妻の妻の場合 旧 3 階部分の遺族年金の 併給限度額 も同じイメージ図になります 2 階部分だけでなく 旧 3 階部分もあわせて 数字で示すと 図表 6 のようになります

Web 版 Vol.65( 通巻 710 号 ) 2018. 8.15 06 図表 6 妻自身の年金 夫の遺族年金 遺族年金の併給限度額 // 1,200,000 * 1,118,990 ** 1,345,993 240,000 216,000 *** 264,000 (*) 妻自身の特別支給の老齢厚生年金は 1,200,000 円でした 65 歳になり 本来支給の老齢厚生年金になるので 経過的差額加算も加算されますが ここでは便宜上 経過的差額加算も含めて 老齢厚生年金の年金額を 1,200,000 円としています (**)1,118,990 円には 妻の経過的寡婦加算 (38,990 円 ) を含む 1,118,990 円 =1,440,000 円 3 / 4+ 経過的寡婦加算 (38,990 円 ) =1,080,000 円 +38,990 円 (***)216,000 円 =288,000 円 3 / 4 ( 注 ) 金額はすべて平成 30 年度の年金額を基準に算定しています 図表 6 の遺族年金の併給限度額を踏まえると A 夫妻の妻に支給される年金および支給する実施機関は 図表 7 のように なります 図表 7 妻に支給される老齢年金 退職年金と夫の遺族年金 ( 注 )123 の数字の記号については 図表 6 を参照されたい なお 老齢基礎年金が 740,335 円支給されるが 図表 7 には表記していない ( 図表 1 参照 ) A 夫妻の妻に支給される 65 歳以後の年金は 図表 7 のようになります 理解を得るように説明するのが だんだん難しくなっていると感じます 遺族年金が支給されない事例ですと 制度の仕組みをご理解していただくしかないのですが 遺族年金を受給できると思って相談窓口に訪れたご遺族を前に説明するのは 容易ではないと推察します 合掌