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プロフィール 井戸美枝 ( 井戸美枝事務所代表 ) 社会保険労務士 ファイナンシャルプランナー (CFP) 一級 FP 技能士 産業カウンセラー DC プランナー 神戸生まれ 関西大学社会学部卒業 平成 2 年 社労士 平成 8 年 CFPとして講演 相談業務 執筆業務に従事 平成 16 年 9 月

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なるほど金融 なるほど 第 9 回 2014 年 7 月 1 日全 7 頁 財形貯蓄 確定拠出年金などとの違い 金融調査部研究員是枝俊悟 は上場株式や株式投資信託の配当 分配金 譲渡益が非課税となる制度ですが 金融商品の運用益が非課税となる制度は の他にも 財形貯蓄や確定拠出年金などがあります これらの制度はそれぞれ目的が異なるので本来は同列に比較できないものですが 今回は これらの制度と比べて はどのような特徴を持っているのか を利用するか 他の制度を利用するかを検討する際にはどのような点に気を付けるべきなのかを解説します 1 は 20 歳以上なら誰でも利用でき 取扱金融機関も自由に選べる 財形貯蓄制度は 勤務先を通じて給与やボーナスから天引きし積み立てる貯蓄です 住宅取得等の資金を積み立てる財形住宅貯蓄 ( 財形住宅 ) 老後に年金として受け取るために積み立てる財形年金貯蓄 ( 財形年金 ) があります なお 財形貯蓄制度にはほかに 資金の使途を問わない一般財形貯蓄 ( 一般財形 ) もありますが こちらは運用益非課税の特典はありません 確定拠出年金は 拠出された掛金が個人ごとに区分され 加入者個人が自分の分の掛金について運用方法を選択し その運用成果をもとに年金給付額が決定される年金制度です 企業型と個人型があり 企業型は 勤務先の企業が従業員のために掛金を拠出します これに加えて 従業員自らも掛金を拠出 ( マッチング拠出 ) して さらに掛金を増やすことができます 個人型は 企業型の確定拠出年金の制度がない企業の従業員や自営業者などを対象にした制度で 自分で掛金を拠出します 財形貯蓄制度と企業型の確定拠出年金を利用するには 勤め先の企業が制度を導入していることが条件となり 取扱金融機関についても勤め先が提携している金融機関に限られます 個人型の確定拠出年金は 取扱金融機関を自由に選ぶことはできますが 制度を利用できる人は確定拠出年金の制度がない企業の従業員や自営業者などに限られています は 20 歳以上なら誰でも制度を利用でき かつ 自分の希望する金融商品やサービスを取り扱っている金融機関を自由に選ぶことができます なお 通常の証券口座 銀行口座を開設する場合も もちろん自由に金融機関を選ぶことができます 通常の証券口座 銀行口座には税制上の優遇措置はありませんが 比較対象として図表に掲載します Copyright 2013-2014 Daiwa Institute of Research Ltd. 1

図表 1 個人向けの主な投資制度の比較 1(2014 年 6 月現在 ) 財形貯蓄制度 確定拠出年金 通常の証券口座 財形住宅 財形年金 一般財形 企業型 個人型 銀行口座 利用できる人 20 歳以上なら誰でも OK 勤め先が制度を導入していることが条件 契約締結時において 55 歳未満 年齢制限なし 65 歳未満 加入する年金制度による 誰でも OK 取扱金融機関 自由に選べる 勤め先が提携している金融機関に限られる 自由に選べる 2 は払出制限がなく 投資限度額はまずまず 金融商品の運用益が非課税となる制度には いずれも限度額が定められています 財形住宅 財形年金は合わせて累計で元本 550 万円までの部分に対して 運用益が非課税となります ( 年間の拠出限度額はありません ) 確定拠出年金は 個人型 企業型 加入している年金制度の違いにより年間 27.6 万円 ~ 81.6 万円の拠出限度額があります ( 累計の限度額はありません ) 年間 100 万円以内 5 年累計で 500 万円以内という の投資限度額は 累計限度額の定めのない確定拠出年金と比べれば多少見劣りするかもしれませんが 財形住宅 財形年金の累計限度額の 550 万円に近い水準であり まずまずの金額と言えそうです 図表 2 個人向けの主な投資制度の比較 2(2014 年 6 月現在 ) 財形貯蓄制度 確定拠出年金 通常の証券口座 財形住宅 財形年金 一般財形 企業型 個人型 銀行口座 投資額年間 100 万円 ( 積立額 ) 累計 500 万円の上限 累計 550 万円 ( 限度額超部分は運用益課税 ) 制限なし 事業主拠出と合計で年間 30.6 万円または 61.2 万円 年間 27.6 万円または 81.6 万円 制限なし 払い出しの制限 なし ( ただし 非課税枠は消費する ) 原則住宅取得目的に限られる ( 要件違反は 5 年遡及課税 ) 原則年金目的に限られる ( 要件違反は 5 年遡及課税 ) 積み立て開始後 1 年以内は原則払出不可 60 歳到達時まで原則払い出せない なし 確定拠出年金における拠出限度額は 実際には月当たりで定められていますが 比較しやすくするためこの表では年額に換算しています なお 企業型確定拠出年金の拠出限度額は 2014 年 10 月から ( 年換算で ) 年間 33 万円または 66 万円に引き上げられる予定です 2

また 財形住宅は住宅取得等資金のため 財形年金と確定拠出年金は老後資金のための積み立てですから 払い出しには制限が設けられています 財形住宅 財形年金については要件外での払い出しを行った場合 過去 5 年分遡及して運用益が課税されます もっとも ペナルティはありますが要件外の払い出し自体は認められます 確定拠出年金については原則 60 歳に達するまで払い出しが認められません はこうした払出制限がなく で購入した上場株式や株式投資信託はいつでも売却 解約することができます ( ただし 売却 解約するとその分の非課税枠は消費したことになります ) 3 財形 確定拠出年金は転職時 退職時に注意点も 財形 企業型確定拠出年金は 勤め先とひもづいた制度です このため 転職 退職の際には注意すべき点もあります 財形住宅 財形年金においては これまでの勤め先を退職した後は 原則として運用益に課税されるようになります その後 2 年以内に転職し 転職先に財形制度があれば 転職先において財形住宅 財形年金を再開し 再び運用益非課税の扱いを受けられるようになります 転職先に財形制度がない場合は 財形住宅 財形年金を解約することになります 企業型確定拠出年金の加入者が転職 退職した場合の扱いは 図表 3 のようになります 転職した場合 転職先の企業年金制度の違いによって扱いが異なります 転職先に企業型確定拠出年金制度がある場合は 転職先の企業の企業型確定拠出年金に加入します 転職先に企業型確定拠出年金制度はないが確定給付型の企業年金制度がある場合は 転職後は年金原資の運用方法だけを指示する 運用指図者 となります 運用指図者となっても運用益非課税での運用の継続はできますが 掛金の拠出はできなくなります 転職先に企業型確定拠出年金も確定給付型企業年金もない場合は 個人型確定拠出年金に加入するか運用指図者になるかを選べます 60 歳未満で退職して自営業者となった場合 個人型確定拠出年金に加入するか運用指図者になるかを選べますが 専業主婦 ( 夫 ) となった場合は運用指図者となります 3

図表 3 企業型確定拠出年金の加入者が転職 退職した場合の扱い 転職先の企業年金制度 転職 退職後の扱い 企業型確定拠出年金 確定給付型企業年金 制度上の扱い 掛金の拠出 運用益非課税での運用継続 転職する あるある or ない転職先の企業の企業型確定拠出年金に加入 ある運用指図者になる ない ない 12 いずれかを選択 1 個人型確定拠出年金に加入 2 運用指図者になる 60 歳未満で退職する 自営業者になる ( 年金の第 1 号被保険者 ) 専業主婦 ( 夫 ) となる ( 年金の第 3 号被保険者 ) 12 いずれかを選択 1 個人型確定拠出年金に加入 2 運用指図者になる 運用指図者になる ( 注 ) 脱退一時金が支払われる場合を除きます なお は職場にひもづいた制度でないため 転職 退職しても関係なく運用を継続すること ができます 4 確定拠出年金には拠出時の税制優遇もある 財形住宅 財形年金 確定拠出年金はいずれも金融商品の運用益を非課税とするものですが 確定拠出年金ではこれに加えて 拠出時の税制優遇も設けられています 個人型の掛金および企業型における従業員分の掛金 ( マッチング拠出 ) は 小規模企業共済等掛金控除として所得税 住民税から全額所得控除されます つまり 掛金を拠出する時点において その人の掛金に限界税率を乗じた金額分だけ税負担が軽減されます 例えば 年収 500 万円程度の給与所得者に適用される限界税率は概ね 20%( 所得税 10% 住民税 10%) です この人が年間 20 万円の掛金を支払った場合 税金が約 4 万円 (= 20 万円 20%) 軽減されることになります ただし 確定拠出年金では拠出時に税制優遇を受けられる一方 年金や一時金として払い出す際には その払い出した額 ( 運用益部分だけでなく元本部分も含みます ) が課税対象となります もっとも 現行法を前提にすると 公的年金等控除や退職所得控除の適用を受けられることや 老後の所得は一般的には現役時代より少なくなり適用される税率が低くなることなどを考慮すれば ほとんどのケースで払出時に支払う税額は拠出時に軽減された税額よりも少なくなるでしょう 確定拠出年金には厳しい払い出し制限がある一方で 税制優遇は手厚くなっています 4

図表 4 個人向けの主な投資制度の比較 3(2014 年 6 月現在 ) 財形貯蓄制度 確定拠出年金 財形住宅財形年金一般財形企業型個人型 に受け入れ可能な金融商品は上場株式 REIT ETF 公募株式投資信託などです 証券会社や銀行では さまざまな国 ( 国内 先進国 新興国など ) のさまざまな資産 ( 株式 債券 REIT など ) に投資する公募株式投資信託を で購入することができます ただし では預金や保険といった元本保証のある金融商品を購入することはできません また 公社債を直接購入することもできません ( ただし 公社債を投資対象に組み込んだ公募株式投資信託は購入可能です ) 財形住宅や財形年金で運用可能な金融商品は 預貯金 保険 公社債などが中心になります 取扱金融機関によっては 投資信託での運用も選択肢となっている場合もありますが 公募株式投資信託 公募公社債投資信託それぞれ 1 銘柄ずつしか選択肢がないのが一般的です 1 確定拠出年金では取扱金融機関により投資できる金融商品の範囲が定められています 法令では必ず 3 種類以上の金融商品 ( うち 1 種類以上は元本確保商品 ) に投資可能であることが定められているだけで 実際に選択肢となる金融商品の種類数は取扱金融機関により差があります 個別株式については法令上は選択肢とできることとなっていますが 実際には ( 自社株式に投資する投資信託に投資可能な例を除いては ) ほとんどの取扱金融機関で選択肢に含めていないようです なお 財形住宅 財形年金ではそもそも原則としてスイッチング ( 金融商品の買い替え ) ができません でも一般的にはスイッチングはできないと説明されています ( 保有している金融商品を売却した上でその代金を新たに で購入する金融商品の代金に充当することは可能ですが その都度非課税枠を消費することになります ) 一方 確定拠出年金においてはスイッチングは何度でも可能で 非課税枠にも影響を与えません 通常の証券口座 銀行口座 拠出時 ( 拠出額に対して ) 優遇措置なし 優遇措置なし所得控除優遇措置なし 運用時 ( 運用益に対して ) 非課税非課税課税非課税課税 払出時 ( 払出額に対して ) 課税されない 課税されない 課税される ( 公的年金等控除あり ) 課税されない 5 は多様な上場株式 株式投資信託から運用対象を選択できる 1) 年金財形 住宅財形で投資できる公募公社債投資信託は正確には 12 銘柄ありますが 決算月が異なるだけであり 実質的に 1 銘柄でしか運用できないものと言えます また 年金財形 住宅財形で投資できる公募株式投資信託は 1 銘柄のみ ( 国内株式に 30% 以内を投資し 残りを公社債等に投資する投資信託 ) としているのが一般的です 5

図表 5 個人向けの主な投資制度の比較 4(2014 年 6 月現在 ) 財形貯蓄制度 確定拠出年金 通常の証券口座 銀行 財形住宅 財形年金 一般財形 企業型 個人型 口座 不可スイッチング ( 買い替えの ( 金融商品の買い替え ) 都度非課税枠を消費 ) 原則不可 ( そもそも買い替えができない ) 可能 可能 上場株式 REIT ETF ( ただし信用取引は不可 ) 事実上 ( 自社株式のみに投資する投資信託に投資可能な例は見られる ) 運用できる金融商品 公募株式投資信託 公募公社債投資信託 公社債 預貯金 保険 多数の商品で運用可能 運用可能だが選択肢は限られる 運用できない 6 と他制度との併用 財形住宅 財形年金 確定拠出年金と比較すると は 20 歳以上なら誰でも利用でき どの金融機関を選択してもよく 払い出しに制限がなく 転職 退職をしても問題なく継続でき 上場株式 REIT ETF 公募株式投資信託のうち幅広い金融商品で運用可能な制度 と 使い勝手のよい制度 と言えるでしょう 一方 拠出時の税制優遇措置があり スイッチングが自由にできるというのは にはない確定拠出年金の利点として挙げられます また 企業型の確定拠出年金と財形住宅 財形年金では勤め先から給与天引きによって積み立てることができ手間がかからないことも にはない利点でしょう ( もっとも 金融機関と企業が提携し における買付代金を勤め先から給与天引きにより振り込める仕組みを導入する動きも出てきています ) 財形 確定拠出年金はそれぞれ別の制度ですので いずれか 1 つを選択しなければいけないものではなく 3 制度すべてを同時に利用することも可能です 例えば 25 歳で独身の会社員が 約 5 年後に必要となる結婚資金を で積み立て 約 10 年後に必要になるマイホーム取得の頭金を財形住宅で積み立て 約 40 年後の退職後に備えて確定拠出年金 ( 企業型 ) で会社の拠出分に加えて自分でもマッチング拠出を行う といった方法も考えられます 6

図表 6 25 歳で独身の会社員が 3 制度を同時に利用する例 資金の使途必要な時期毎月の積立額積立目標額利用する制度 結婚資金 約 5 年後 (30 歳くらい ) 月 3 万円ボーナス時各 10 万円 約 300 万円 マイホーム取得の頭金 約 10 年後 (35 歳くらい ) 現在は月 2 万円ボーナス時各 10 万円 約 500 万円 財形住宅 老後のための資金 約 40 年後 (65 歳くらい ) 会社の拠出に加えて自分でも月 5,000 円拠出 会社拠出分含め約 2,000 万円 確定拠出年金 ( 企業型 ) また 50 歳の会社員で 財形年金 確定拠出年金 ( 企業型 ) の 3 制度すべてを使って老後のための資金を積み立てる方法も考えられます 年齢 役職が高い場合などは 確定拠出年金 ( 企業型 ) における会社の掛金が拠出限度額に達しており マッチング拠出ができない場合もあります こうした場合 財形年金や も併用することで より多く老後資金を積み立てることができるでしょう 図表 7 50 歳の会社員が 3 制度を同時に利用する例 資金の使途必要な時期毎月の積立額積立目標額利用する制度 月 5 万円ボーナス時各 20 万円 約 500 万円 老後のための資金 約 10 年後 (60 歳 ) 月 3 万円ボーナス時各 10 万円 約 500 万円 財形年金 会社拠出分が拠出限度額に達しているためマッチング拠出不可 ( 特に設定せず ) 確定拠出年金 ( 企業型 ) ( 次回予告 : 今後予想される制度改正 ) 以上 7