1. 医療行為の名称 概要について本医療行為の名称は 若年女性がん 免疫疾患における妊孕性温存を目的とした卵子 受精卵凍結保存 です 本医療行為は埼玉医科大学総合医療センター病院長の許可を受けて行われます この医療行為は 悪性腫瘍や免疫疾患に対する化学療法 放射線療法によって卵巣機能が低 下し その

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1. 研究の名称 概要について本研究の名称は 若年女性がん 免疫疾患における妊孕性温存を目的とした卵巣組織凍結ならびに自家移植 です 本研究は埼玉医科大学総合医療センター病院長の許可を受けて行われます この臨床研究は 悪性腫瘍や免疫疾患に対する化学療法 放射線療法によって卵巣機能が低下し その後の妊

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体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常

妊よう性とは 妊よう性とは 妊娠する力 のことを意味します がん治療の影響によって妊よう性が失われたり 低下することがあります 妊よう性を残す方法として 生殖補助医療を用いた妊よう性温存方法があります 目次 はじめにがん治療と妊よう性温存治療抗がん剤治療に伴う卵巣機能低下について妊娠の可能性を残す方

配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

日本産科婦人科学会雑誌第68巻第8号

注射すると 1 個だけでなく複数の卵胞が大きくなり 10 日くらいで直径 18 mm前後となります この時期に 卵子の成熟と排卵を促す HCG と呼ばれるもう一つのホルモンを注射します 採卵の直前である HCG 投与後 34 時間から 36 時間ころに卵胞を穿刺し 卵子を採取します これを採卵といい

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体外受精 胚移植 顕微授精 胚移植を希望される患者様へ 体外受精 胚移植 (IVF-ET) は 1978 年 英国で成功が報告されて以来 世界中の多くの施設で行われています 一方 顕微授精 現在主流の卵細胞質内精子注入法 (ICSI イクシー ) は 1992 年にベルギーで最初の成功例が報告されて

凍結胚の融解と胚移植の説明書 平成 27 年 8 月改定版 治療の必要性 / 適応について受精卵 ( 胚 ) の凍結は 体外受精または顕微授精において 以下のような場合に行なわれる治療です 新鮮胚移植後に 妊娠につながる可能性のある受精卵 ( いわゆる余剰胚 ) が残っていた場合 採卵数が多い 血中

て それ以後は中止してください [ ショート法 ]short 法 月経 周期の1~ 3 日目 から点鼻薬 ( スプレキュア ) を開始する方法で 卵巣機能が低下 ( 卵胞発育不十分 35 歳 ~) の場合にこの方法で行うことがあります スプレー開 始の翌日か翌々日に卵巣刺激の注射 ( hmg 製剤

平成 27 年 8 月改定版こともあります [ アンタゴニスト法 ] 月経が開始してから2~3 日目 ( 前の周期に経口避妊薬を使うこともあります ) から卵巣刺激の注射 (hmg 製剤 FSH 製剤 ) を開始します 原則として連日注射し 数日間の注射の後には超音波検査やホルモン測定により 卵巣の

これらの検査は 月経周期の中で下記のような時期に行われます ( いつでも検査できるわけではありません ) 図中のグラフは基礎体温の変動を示し 印は月経を示します 月経周期における検査の時期 高温期 低温期 月経 月経 血液検査 LH FSH E2( エストラジオール ) AMH 精液検査 排卵日 血

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晶形成することなく固化 ( ガラス化 ) します この方法は 前核期胚などの早期胚 の凍結に対して高い生存率が多数報告されています また 次に示します vitrification 法に比べて 低濃度の凍結保護剤で済むという利点があります 2) Vitrification( ガラス化保存 ) 法 細胞

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

別紙 体外受精胚移植 (IVF-ET) の流れ をご参照ください. まず, 実際に IVF-ET を行う前の周期までに, 治療の説明をお聞きいただき, 術前検査として心電図と血液検査 ( 血液型, 感染症, 血液凝固機能等 ) を行います. 後に採卵という手術が必要になりますので, それが安全に行え

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

同意説明文書(見本)

         体外受精手術の説明と同意書

群馬大学人を対象とする医学系研究倫理審査委員会 _ 情報公開 通知文書 人を対象とする医学系研究についての 情報公開文書 研究課題名 : がんサバイバーの出産の実際調査 はじめに近年 がん治療の進歩によりがん治療後に長期間生存できる いわゆる若年のがんサバイバーが増加しています これらのがんサバイバ

その最初の日と最後の日を記入して下さい なお 他の施設で上記人工授精を施行し妊娠した方で 自施設で超音波断層法を用いて 妊娠週日を算出した場合は (1) の方法に準じて懐胎時期を推定して下さい (3)(1) にも (2) にも当てはまらない場合 1 会員各自が適切と考えられる方法を用いて各自の裁量の

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血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 に関する説明書 一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター 所属長衞藤義勝 この説明書は 血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 の内容について説明したものです この研究についてご理解 ご賛同いただける場合は, 被

リプロダクション部門について

胚(受精卵)移植をお受けの方へ

する 研究実施施設の環境 ( プライバシーの保護状態 ) について記載する < 実施方法 > どのような手順で研究を実施するのかを具体的に記載する アンケート等を用いる場合は 事前にそれらに要する時間を測定し 調査による患者への負担の度合いがわかるように記載する 調査手順で担当が複数名いる場合には

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はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

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福島赤十字病院 ART不妊センター

料 情報の提供に関する記録 を作成する方法 ( 作成する時期 記録の媒体 作成する研究者等の氏名 別に作成する書類による代用の有無等 ) 及び保管する方法 ( 場所 第 12 の1⑴の解説 5に規定する提供元の機関における義務 8 個人情報等の取扱い ( 匿名化する場合にはその方法等を含む ) 9

平成14年度研究報告

不妊外来を受診される方へ

2 翌々日に卵巣刺激の注射 (hmg 製剤 FSH 製剤 ) を開始し 連日注射します 点鼻薬は採卵の 2 日前に行なう hcg 注射の直前まで継続します また 前の周期に経口避妊薬 ( ピル ) を使うこともあります [ アンタゴニスト法 ] 月経 2~3 日目までに来院いただき 卵巣の状態を超音

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

胚(受精卵)移植をお受けの方へ

福島赤十字病院 ART不妊センター

臨床研究の概要および研究計画

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沖縄県における若年がん患者に対する妊孕性温存療法の現状 琉球大学医学部附属病院産婦人科 銘苅桂子 下地裕子 大石杉子 安里こずえ 平敷千晶 青木陽一

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Taro-胚凍結保存、凍結胚融解と移

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

患者様用説明書

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融解 ( 解凍 ) 後の前核期または分割期卵を 1 日以上培養したにも関わらず分割が進まないときは その受精卵を胚移植で きないときがあります 凍結保存技術料金 月数に応じた保存料金が発生し経済的負担が増加します 方法 受精卵 ( 卵子 ) の凍結保存法 ( 超急速ガラス化保存法 ) Minimum

ただし 対象となることを希望されないご連絡が 2016 年 5 月 31 日以降にな った場合には 研究に使用される可能性があることをご了承ください 研究期間 研究を行う期間は医学部長承認日より 2019 年 3 月 31 日までです 研究に用いる試料 情報の項目群馬大学医学部附属病院産科婦人科で行

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1 卵胞期ホルモン検査 ホルモン分泌に関して卵巣や脳が正常に機能しているかを知る目的で測定します FSH; 卵胞刺激ホルモン脳の下垂体から分泌されて 卵子を含む卵胞を成長させる作用を持ちます 低いと卵胞の成長がおきませんが 卵巣の予備能力が低下している時には反応性に高くなります LH; 黄体化ホルモ

Taro-体外受精・胚移植の説明書1

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特定不妊治療費助成制度 の利用の手引き ( 申請案内 ) 平成 23 年 8 月 1 日から特定不妊治療に対する助成制度を創設しました 富田林市では 不妊治療の経済的負担の軽減を図るため 大阪府及びその他の都道府県 指定都市 中核市 ( 以下 大阪府等 という ) が実施する 特定不妊治療費助成制度

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「             」  説明および同意書

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

臨床研究許可申請書の提出に際しての留意事項

妊娠のしくみ 妊娠は以下のようなステップで成立します Step1 卵胞発育脳にある下垂体から分泌される 卵胞刺激ホルモン (FSH) が卵巣内の卵胞を発育させます Step2 射精 精子の子宮内侵入性交により精液が腟内に入ります 腟に入った精子は 子宮を通過して 卵管を登っていきます Step3 排

精子・卵子・胚研究の現状(久慈 直昭 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 講師提出資料)

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

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最近の当科における ARTの成績

ご持参下さい クレジットカードは JCB AMEX ダイナースはご利用になれません 窓口にて領収書を発行し 手続き完了となります 火曜日午後 日曜日 年末年始 その他当院休診日のお手続きはできません 3 更新 廃棄の手続き受付期間 継続の手続きの受付期間は 凍結期限 3 ヶ月前から期限当日までとなり


実施前検査の結果により 治療が中止になることがあります 卵巣刺激法性周期が正常であれば 自然周期では通常 1~2 個の卵子が排卵します しかし 当院で体外受精 胚移植をお受けいただく治療周期には 複数の卵子が得られるよう薬 ( 排卵誘発剤 ) を使い卵巣刺激を行ないます 体外受精の治療をご希望される

3 更新 廃棄の手続き受付期間 継続の手続きの受付期間は 凍結期限 3 ヶ月前から期限当日までとなります 4 凍結保管期限更新申請にあたってのご注意 申請書には 捺印と日付の記入をお忘れなくお願い致します 署名 捺印について : 必ずそれぞれご本人が直筆で署名し ご自身の手により捺印をお願いします

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

1)表紙14年v0

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

6. 研究対象者として選定された理由 当科を受診された各種慢性肝疾患の方が研究対象者に含まれます 7. 研究対象者に生じる利益 負担および予想されるリスクノベルジン錠の国内臨床試験に置ける安全性評価対象例 74 例中 23 例 (31.1%) に副作用が認められ 主な自覚症状では悪心 4 例 (5.

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

2. 研究の目的及び意義について目的 : 手根管症候群の臨床的な重症度と腱鞘滑膜に発現する炎症性のサイトカインやAGEsの関連を検討する事です 意義 : 手根管症候群の重症度と周囲組織の炎症の相関が明らかになれば 抗炎症作用を持つ薬剤が手根管症候群の治療に有用となる理由がより明らかとなると考えられま

人工授精について

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

臨床研究に参加される研究対象者の方へ 皮膚症状を呈する膠原病における炎症性サイトカインの病態への関与について に関する研究の説明 これは臨床研究への参加についての説明文書です 本臨床研究についてわかりやすく説明しますので 内容を十分ご理解されたうえで 参加するかどうか患者さんご自身の意思でお決め下さ

体外受精ー胚移植に関する説明書 Q1: 体外受精ー胚移植とはどんな治療法ですか? A1: 精子と卵子は、人間の身体を形作っている他の細胞とは異なり、次の世代の新しい生命になるために準備された特別な細胞です

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて

放射線併用全身化学療法 (GC+RT 療法 ) 様の予定表 No.1 月日 経過 達成目標 治療 ( 点滴 内服 ) 検査 処置 活動 安静度 リハビリ 食事 栄養指導 清潔 排泄 / 入院当日 ~ 治療前日 化学療法について理解でき 精神的に安定した状態で治療が

検査項目情報 1171 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090. トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブユニット ) トータル HCG-β ( インタクト HCG+ フリー HCG-β サブ

顕微授精に関する承諾書

針刺し切創発生時の対応

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治療を受けられる患者様へのご説明 自家樹状細胞がんワクチン複合療法 ( ハイパー DC 療法 ) について 仙台画像検診クリニック 宮城県仙台市青葉区五橋 TEL: この説明文書は 自家樹状細胞がんワクチン複合療法 ( ハイパー DC 療法 ) ( 以下 ハイパ

9 中止基準 ( 研究対象者の中止 研究全体の中止について ) 10 研究対象者への研究実施後の医療提供に関する対応 通常の診療を超える医療行為 を伴う研究を実施した場合 研究実施後において 研究対象者が研究の結果より得られた利用可能な最善の予防 診断及び治療が受けられるように努めること 11 研究

Microsoft Word - HP用 同意書・説明書 130121

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検査のタイミング ご自分の生理 ( 月経 ) 周期から換算して 次の生理 ( 月経 ) 開始予定日の 17 日前から検査を 開始してください 検査開始日から 1 日 1 回 毎日ほぼ同じ時間帯に検査してください ( 過去に検査してLHサージがうまく確認できなかった場合や 今回検査をしたところ陽性か陰

Microsoft Word - JONIE-TR 患者説明書.docx

目次 1. はじめに ( 臨床研究とは ) 今回の研究について 目的 方法 対象となる患者さん 研究方法 スケジュール 研究参加期間 研究参加予定人数.

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6. 研究が終わった後 血液を他の研究に使わせてください 詳しくは ページへ 病には未解決の部分がまだ多く残っています 今後のさらなる研究のため ご協力をお願いいたします ( 必要に応じて ) バンク事業へのご協力をお願いします 遺伝子を扱う研究を推進するため 多くの人の遺伝子の情報を集めて研究に使

研究課題名 臨床研究実施計画書 研究責任者 : 独立行政法人地域医療推進機構群馬中央病院 群馬県前橋市紅雲町 1 丁目 7 番 13 号 Tel: ( 内線 )Fax: 臨床研究期間 : 年月 ~ 年月 作成日 : 年月日 ( 第 版

胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

Transcription:

患者さんへ 医療行為 : 若年女性がん 免疫疾患における妊孕性温存を目的とした卵子 受精卵凍結保存 に関する説明書 これは医療行為の参加についての説明 同意文書です この医療行為について分かりやすくご説明いたしますので 内容を十分ご理解された上で 御参加するかどうかをお決めください なお 決めるのはあなた自身の自由意思です また ご不明な点などがございましたら遠慮なくご質問ください 埼玉医科大学総合医療センター産婦人科 2018 年 4 月版 1

1. 医療行為の名称 概要について本医療行為の名称は 若年女性がん 免疫疾患における妊孕性温存を目的とした卵子 受精卵凍結保存 です 本医療行為は埼玉医科大学総合医療センター病院長の許可を受けて行われます この医療行為は 悪性腫瘍や免疫疾患に対する化学療法 放射線療法によって卵巣機能が低 下し その後の妊娠が困難となる可能性がある女性に対して 未受精卵子や受精卵をあらかじめ 凍結保存することによって 治療後に妊娠できる可能性を高めるためのものです この医療行為に参加するかどうか担当の医師の説明をお受けになり 更に以下の文章をお読 みになってからゆっくりお考えの上でお決めください 医療行為に参加するかどうかはあなたが以 下の説明を理解し 納得された上での自発的な意思に基づきます 医療行為への参加に同意し た場合でも いつでも医療行為への参加を辞退することができます 2. 実施機関の名称及び実施責任者の氏名埼玉医科大学総合医療センター産婦人科 教授高井泰 3. 医療行為の意義 背景について 1) 悪性腫瘍患者に対する妊孕能温存 ( がん 生殖医療 ) の現況悪性腫瘍に対する治療では 化学療法 放射線照射 手術などにより治療成績が改善されてきています 全身性エリテマトーデス (SLE) などの免疫疾患に対しても化学療法が行われることがあります しかしその反面 抗癌剤 放射線の卵巣毒性や卵巣切除により卵巣機能が失われ 不妊症となってしまう症例も少なくありません 近年 このような症例に対して 原疾患に対する治療と妊孕性温存の両立を目指す がん 生殖医療 が注目されています 卵子凍結 受精卵凍結 卵巣凍結 GnRH アゴニストなど種々の妊孕能温存方法が各国で取り組まれていますが 現時点ではいずれの方法も単独では全ての症例に妊娠をもたらすことは困難であるため 症例ごとに複数の方法を組み合わせて妊孕能を温存することが望ましいと考えられています ( 表参照 ) 2) 卵子凍結保存の利点と問題点不妊症患者に対して広く行われている生殖補助医療技術を悪性腫瘍患者に応用することにより 排卵誘発した卵巣から成熟した未受精卵子を採取することが可能です 成熟卵子の採卵 凍結保存は 近年の凍結技術の進歩により非凍結新鮮卵子とほぼ同等の妊娠率が達成されるようになり 我が国を含めて既に数百人以上の児が出生しています 受精卵凍結では 我が国で年間 3.5 万人以上の児が出生しています しかしながら 排卵誘発剤による卵巣刺激には少なくとも 1-2 週間を要するため 悪性腫瘍の治療開始が遅れることが懸念されること 多くとも10 個程度の卵子しか得られず 現状では卵子 1 個あたり10-20% 受精卵 1 個あたり20 50% 程度の症例しか妊娠できないことが問題です この問題を克服するために卵巣組織の凍結保存も試みられていますが いまだ研究段階であるのが現状です 3) 日本産科婦人科学会による 見解 の策定とわが国における卵子凍結実施施設の増加以上のように 現在の卵子 受精卵凍結には未だ克服すべき問題点がありますが 悪性腫瘍や免疫疾患の治療により生殖機能の傷害が懸念される若年女性にとって 我々産婦人科医が取り組むべき切実かつ喫緊の課題であるため 2014 年 4 月 日本産科婦人科学会によって 医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取 凍結 保存に関する見解 が策定され 多く 2

の施設が未受精卵子凍結を始めており 徐々にその症例数が増加してきています 表 1 に受精卵凍結 卵子凍結 卵巣凍結の対象疾患 対象年齢 特徴などをまとめました 1 既婚者の場合は 受精卵凍結が最も妊娠率が高い方法です 卵子凍結 卵巣凍結を併用することも可能です 2 未婚の場合は 卵子凍結 卵巣凍結のいずれか またはその両方を施行することが可能です 3 卵子凍結 卵巣凍結の両方を施行する場合 まず腹腔鏡下手術で片側の卵巣を摘出 凍結した後に 反対側の卵巣に対して排卵誘発を行い 採卵 卵子凍結を行います 卵子凍結のみ 卵巣凍結のみに比べて妊娠率が高いことが期待されます 4 凍結卵巣を用いた医療は将来の技術的発展が期待されますが 現時点では研究段階であり 自家移植による悪性腫瘍再発の危険性があります 表 1 受精卵凍結 卵子凍結 卵巣凍結の比較 受精卵凍結 卵子凍結 卵巣凍結 白血病, 乳が白血病, 乳がん, ん, リンパ腫, リンパ腫, 消化器消化器がん, 婦乳がん, リンパ腫など対象となるがん, 婦人科が人科がん, 悪性 ( 自己移植を考慮する主な疾患ん, 悪性黒色腫, 黒色腫, 胚細胞場合 ) 胚細胞腫瘍, 脳腫腫瘍, 脳腫瘍, 瘍, 肉腫など肉腫など 対象年齢 16-45 歳 14-40 歳 0-40 歳 ( 小児でも可能 ) 婚姻 既婚 未婚, 既婚 未婚, 既婚 治療期間 2-8 週間 2-8 週間 1-2 週間 凍結方法 ガラス化法 ガラス化法 緩慢凍結法ガラス化法 費用 30-50 万円 20-40 万円 60-70 万円 (+ 移植 60-70 万円 ) 出産例 特徴問題点 日本だけで年 4 万例 受精卵 1 個あたり妊娠率 30-40% 4. 医療行為の方法について 世界で 6000 例以上 卵子 1 個あたり 妊娠率 4.5-12% 3 世界で 100 例以上 研究段階 移植 1 回あたり妊娠率 20-30% 移植で再発する可能性 1) 患者さんの負担は自費診療扱いとなり 料金に関しては別途ご説明申し上げます 2) 実施期間 症例数 実施期間は 2025 年 3 月 31 日までで 対象症例数は 100 症例です 患者さんの増加 医療行為の進展によっては 院内倫理委員会による承認を得て実施期間を 延長し 症例数を増やします 3) 対象症例 適格規準を全てみたし 除外規準のいずれにも該当しない患者さんに限って この医療行為の 対象となります

1 適格基準 A) 対象疾患 1 乳癌 2 白血病 3リンパ腫 ( ホジキン 非ホジキン ) 4その他造血器腫瘍 疾患 ( 再生不良性貧血 MDS myeloma) 5 肉腫 6 全身性エリテマトーデス 7 関節リウマチ 8その他 原疾患の担当医が必要性を判断の上依頼があった疾患 B) 対象年齢 1 採取凍結時中学校課程修了または 16 歳以上 40 歳未満 20 歳未満の場合 法定代理人からの同意も必要となる 2 融解使用時 45 歳未満 C) 同意取得など 1 書面による説明同意が取得されている 移植にあたっても 説明同意が改めて取得されていることが必要である 2 凍結保存期間中は原則として 1 年に 1 回の外来受診を必要とする 3 原疾患の担当医と随時連絡をとることができ 下記について記載された文書 ( 診療情報提供書 返事など ) が診療録に保存されている なお 凍結した卵子を用いた生殖補助医療 ( 受精卵の作成や子宮への胚移植 ) にあたっても 原疾患の担当医からの文書 ( 診療情報提供書 返事など ) による許可が改めて必要である (1) 排卵誘発や卵子の採取を行うことが原疾患治療に及ぼす影響を把握するために 原疾患の状態 今後の治療計画や見通しなどに関して 原疾患主治医から適切な情報提供がなされている (2) (1) の情報に基づき 原疾患の治療により卵巣機能の低下が予想され この医療行為を施行することが被実施者の原疾患の治療の実施に著しい不利益とならないと判断される 2 除外規準 1 重篤な合併症のある患者 2 文書による同意が得られない患者 3この医療行為のために原疾患の治療開始が著しく遅延してしまう患者 4その他担当医師がこの医療行為の対象として不適当と判断した患者 3この医療行為への参加を中止する場合の条件についてこの医療行為中に下記の項目に該当するような事象が発生した場合には 担当医師の判断により医療行為の継続を中止し必要な処置を講じる 1 実施期間中に有害事象が発生した場合 2 実施期間中に原疾患の症状が悪化した場合 3 実施期間中に患者または親族が中止を申し出た場合 5その他 担当医師が本治療を中止すべきと判断した場合 4

6 実施期間中に患者が死亡あるいは行方不明 または 45 歳以上になった場合 4) 実施計画 1 患者さんへのご説明と同意この説明書をあらかじめお読みいただき ご質問などにお答えした上で 同意書にご署名をいただき いつ頃に治療を行うかを決定します 2 回目以降の方については 同意書の新たな作成は必要ありません 卵巣の反応性や月経周期により 多少予定が変更されることもありますので 一応の目安とお考え下さい 将来 凍結した未受精卵子や受精卵を融解し 受精 受精卵の培養 子宮への胚移植などを行う場合は 改めて当科の体外受精 顕微授精の説明書をお読み戴き 同意書にご署名いただく必要があります 2 麻酔を安全にお受けいただくための検査血液検査ならびに心電図検査 場合により胸部レントゲン検査などが追加されます 血液検査には HIVウイルス ( エイズウイルス ) 抗体の検査 ( 私費 約 4,000 円 ) が含まれます あらかじめ HIV 検査同意書にご署名いただきます 3 排卵誘発剤による卵巣刺激 ( 末尾の付録もご参照ください ) A) GnRH アゴニスト ( ブセレキュア スプレキュア ナサニールなど ) あるいは GnRH アンタゴニスト ( ガニレスト セトロタイドなど ) の併用自然周期では 卵胞から分泌される多量の卵胞ホルモンに反応して 脳下垂体 ( 脳の深部にあるホルモン分泌器官 ) から黄体刺激ホルモン (LH) が分泌され 排卵が引き起こされます 卵胞刺激ホルモン製剤 ( 後述 ) による卵巣刺激の途中でこの LH が多量に分泌されてしまうと 採卵ができなくなったり 卵子の質が低下したりすることが知られています これを防ぐために GnRH アゴニストや GnRH アンタゴニストが用いられます 詳しくは 付録 1 排卵誘発プロトコルについて 付録 2 GnRH アゴニスト ( ブセレキュア スプレキュア ナサニール ) をお使いになる方へ 付録 3 GnRH アンタゴニスト製剤 をお読み下さい B) 卵胞刺激ホルモン製剤月経の始まる頃には 左右の卵巣の中に直径 5mm 前後の卵胞 ( 卵子が育つ袋 ) が数個ずつ認められます 排卵誘発剤を使用しない周期 ( 自然周期 ) では この中の 1 個だけが急速に大きくなり 排卵日頃には 20mm 前後となって その後 排卵します 残りの大部分の卵胞は閉鎖し 閉鎖卵胞内の卵子は死滅 吸収されると考えられています しかし 卵胞刺激ホルモン製剤とよばれるホルモンを連日注射すると 本来閉鎖すべき卵胞を含めた複数の卵胞が大きくなり 7-10 日くらいで直径 18mm 前後となります 卵胞刺激ホルモン製剤は 原料や 卵胞刺激ホルモン (FSH) 以外に混在する黄体刺激ホルモン (LH) の含有量により 概ね下記のような種類に分類できます 1 遺伝子組み換え型 FSH 製剤 : フォリスチム ゴナールエフ 2 尿由来 HMG 製剤 (LH 含有量が少ない ): ゴナピュール フォリルモン P HMG 日研など 3 尿由来 HMG 製剤 (LH 含有量が多い ):HMG フェリング HMG テイゾー HMG フジなど体外受精 顕微授精では遺伝子組み換え型製剤の方が妊娠率が高いという報告があるため 体外受精 顕微授精を受ける方には遺伝子組み換え型 FSH 製剤をお薦めしています 排卵誘発後半期に尿由来製剤に切り替える場合があります 5

なお 原則として薬剤料は私費となります ( 別紙参照 ) C) クロミフェン ( クロミフェン セロフェン ) 内服することによって脳下垂体からの卵胞刺激ホルモンの分泌が増加し 間接的に卵巣を刺激します 直接卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン製剤に比べると 排卵誘発効果はやや小さいものの クロミフェンを用いた低卵巣刺激法 ( 後述 ) は 身体的負担や金銭的負担も軽いため 最近急速に普及しています 前述のように 卵巣刺激の途中で LH が多量に分泌されてしまうと 採卵ができなくなったり 卵子の質が低下しますが クロミフェンの内服を続けることによって ある程度これを防止することができます D) レトロゾールこれまでの排卵誘発剤にはない作用機序が注目され 欧米は勿論 我が国の不妊専門クリニックでも 10 年ほど前から臨床応用が進められており 女性ホルモンの上昇を避けたい乳癌症例に対する臨床成績が注目されています ( 別紙参照 ) 4 卵子の採取 ( 採卵 ) 外来で卵胞の発育状況を観察し 卵胞の大きさが 18mm 前後になった時点で 血液中のホルモン値を参考にして ( 検査料は私費となります ) 採卵日を決定します 原則として日曜祭日の採卵は行っておりません 採卵日を決定したら その 2 日前の 20 時 30 分から 21 時 ( 採卵の 34-36 時間前 ) に 卵子の成熟と排卵を促す HCG 製剤 ( 前述の黄体刺激ホルモンと似た作用を示します ) を注射します 採卵当日早朝 6 時 30 分頃に入院していただき 7 時 30 分から 9 時までに採卵を行います 麻酔は麻酔科専門医が担当し 静脈麻酔および吸入麻酔を併用して 可能な限り術中術後の苦痛が少ない麻酔を行います 卵胞の穿刺は経腟超音波ガイド下に行い 5 分から 20 分程度で終了します 安静の後 診察を行って問題ないようなら 採卵当日のお昼頃に退院となります 残留した麻酔薬のために 交通事故を起こした患者様の報告が他院でありますので 採卵日の車の運転はお控え下さい 6

採卵の模式図 ( 横からみた断面図 ) 麻酔がかかった後 腟より超音波プローブを挿入し 超音波画像を見ながら 穿刺針で腟壁を刺し貫いて卵胞を穿刺し 内容液を吸引します 5 7 は受精卵凍結の場合のみ 5 精子の準備採卵当日午前 8 時 10 時頃に ( 原則として病院で ) 採取していただいたご主人の精液を洗浄して良好な精子を回収し 精子浮遊液を作成し 一定時間培養した後に卵子と受精させます 6 精子と卵子の受精体外受精と顕微授精 ( Ⅱ. 顕微授精に関する説明書 参照 ) で異なるのは このステップだけです 6A) 体外受精卵胞より採取した卵子は 培養皿の中で数時間培養した後 運動性の良好な精子と一緒にします ( 媒精 といいます ) 卵子と精子の入った培養皿はインキュベータ内に静置し 受精が起こるのを待ちます 6B) 顕微授精顕微鏡で観察しながら マイクロマニピュレータを用いて精子を卵子内に注入します ( 卵細胞質内精子注入法 (Intracytoplasmic Sperm Injection, ICSI) イクシー と読みます ) 7 受精卵 ( 胚 ) の培養採卵および受精 / 授精の翌日に 受精の確認を行います 受精していない卵子 精子が 2 個以上入った卵子は この段階で除かれます 正常に受精した受精卵 ( 胚 ) は 更に 1-5 日間培養し 形態が良好なものを凍結保存します 7

受精卵の発育左から 前核期胚 ( 採卵翌日 ) 4 細胞期胚 ( 採卵 2 日後 ) 8 細胞期胚 ( 採卵 3 日後 ) 胚盤胞 ( 採卵 5 日後 ) 8 卵子 受精卵の凍結保存ガラス化法 (vitrification) と呼ばれる方法により 専用のプレート上に少量の凍結保護剤の中に入れた卵子を 1~2 個のせ プレート全体をごく短時間で超低温に冷凍し 液体窒素 (-196 ) 中に凍結保存します この方法は 1985 年に考案され 受精卵への傷害が少ないことから 現在では最もすぐれた凍結法と言われています 6 卵子 受精卵凍結保存契約について凍結した卵子 受精卵をお預かりするにあたっては 卵子 受精卵凍結保存契約を結ばせていただくことになります 以下 その詳細について説明致します 1) 卵子 受精卵を凍結した日をもって卵子 受精卵凍結保存契約開始日とさせていただきます 契約期間は 1 年間です 2) 凍結処理の過程で保存不可能となる場合があります 卵子 受精卵が良好な状態と判断された場合 卵子 受精卵を凍結保護液で処理した後に ガラス化法で凍結しますが この過程で卵子 受精卵の変性などにより凍結処理を中止することがあります 凍結処理および収納の完了をもって凍結保存の料金を戴きます 3) 保存期間は1 年ごとの更新が必要です 当病院に登録されている患者様住所に封書をお送りしますので 住所変更の場合は当科にご連絡下さい 更新保存料として 20,000 円を所定の口座にお振り込みいただきます 3 ヶ月間以上更新意思の確認が得られない場合や音信不通の場合 更新保存料を1 年間以上滞納した場合は 卵子 受精卵を廃棄させていただきます 物価の変動その他の理由により保存維持管理料が変更となる場合には 凍結保存契約更新時に協議することとします 4) 日本産科婦人科学会 日本生殖医学会のガイドラインに従い 45 歳以上になった場合 死亡した場合 行方不明の場合の卵子 受精卵は廃棄 されます 原則として凍結している卵子 受精卵は倫理的に適切な方法で廃棄します 5) 患者様の方から凍結保存の終了を希望する場合には 当科から説明の上で 廃棄同意書を提出していただきます 6) 凍結保存中のトラブルについて液体窒素の不足や保存容器のトラブルなどによって卵子 受精卵の使用が不可能になった場合の補償額の上限は 採卵までにかかった費用 卵子 受精卵凍結料およびそれまでの卵子 受精卵凍結保存維持管理料の合計額とさせていただきます それ以上の補償はありません 自然災害などのやむを得ない事情により凍結中の卵子 受精卵が使用不能になった場合の 8

補償はありません 当院の事情で凍結卵子 受精卵を用いた治療が困難となった場合 凍結卵子 受精卵を他のしかるべき医療機関に搬送する場合があります 7) 卵子 受精卵の搬送により卵子に障害がおきる可能性があります 卵子 受精卵の搬送時の障害により卵子 受精卵が使用不能であった場合の補償はありません 8) 個人情報の保護を厳守することを条件に 医学 医療の向上を目的として 治療成績などの統計結果が学会に発表されることがあります 9) 廃棄予定の卵子 受精卵を不妊臨床研究へ使用する可能性があります 不妊治療技術の進歩のため 廃棄予定の凍結卵子 受精卵を研究に使用する可能性があります 研究の内容をあらためて患者さんに説明し 同意を得てから使用します 10) 当院で保存している卵子 受精卵の売買や本人以外への譲渡は認めません 11) 卵子 受精卵の融解と生殖補助医療未受精卵子や受精卵の融解およびその後の生殖補助医療については別紙で説明いたします 以下の点につき あらかじめご了解ください 将来的に妊娠が期待できると判断した卵子 受精卵のみを凍結保存の対象としておりますが 凍結と融解の際にダメージを受けることがあるため 融解処理の過程で卵子 受精卵が回収不可能だったり 卵子 受精卵の変性を認めたりすることがあります この場合 その後の生殖補助医療を中止することがあります 5 医療行為対象者として選定された理由本医療 為の対象は 悪性腫瘍や免疫疾患に対する化学療法 放射線療法によって卵巣機能が低下し その後の妊娠が困難となる可能性がある中学校課程修了または 16 歳以上 40 歳未満の 性です 6. 医療行為に参加することの利益と不利益について 1) 卵子凍結による妊娠率卵子 1 個あたりの妊娠率は 10 20% 受精卵 1 個あたりの妊娠率は 20 50% と報告されています 2) 採卵手術に伴う危険性 合併症採卵時には静脈麻酔を行うため まれに呼吸抑制や血圧低下がみられることがありますが 各種モニターを装着し 麻酔担当医師が管理することにより予防に努めています 喘息 薬剤アレルギー 高血圧 甲状腺疾患等の既往のある方は 通常の麻酔薬使用のリスクが高く 薬剤の変更が必要な場合がありますので 必ず事前に申し出てください 卵巣の穿刺は超音波で観察しながら慎重に行っていますが 子宮や膀胱を穿刺しないと採卵ができない場合があります 一時的な痛みや出血が起こりますので 安静や処置が必要となることがあります 卵胞穿刺による卵巣表面からの出血は 通常自然に止血しますが 子宮や卵巣からの出血が多いとき, 血管の損傷等が発生したときには輸血を必要としたり 開腹して止血術を行わなければならないことがあります また その他の合併症として 腟壁からの出血 膀胱 尿管 腸管の穿刺 / 損傷 感染 ( 膿瘍形成 ) などがあり これらの治療のために開腹しなければならな 9

いことがあります また 入院期間が延長したり 原疾患の治療が遅れたりすることがあります こうした合併症の発生率は1% 以下といわれていますが 原疾患やその治療の影響で出血傾向や易感染性が現れている場合は 通常よりも高い危険性が予想されます 3) 排卵誘発剤を使用することによる卵巣過剰刺激症候群 (OHSS) の発生成功率を向上させるためには複数の卵子を採取することが重要です このため 排卵誘発剤である卵胞刺激ホルモン製剤 ( 前述 ) を使用しますが この製剤に対する卵巣の反応が非常に良い場合 特に採卵後 1-2 日目から卵巣の腫れ 腹水 胸水の貯留 血液の濃縮などが様々な程度で起こります これを卵巣過剰刺激症候群 (OHSS) といいます お腹が張る のどが渇く 尿が少ない 体重が増加する 息苦しいなどが代表的な症状です 重症例は 1% 程度にみられ 入院管理を要し 原疾患の治療が遅れたりすることがあります まれですが 重篤な血栓塞栓症を発症することもあります 私達の施設では この卵巣過剰刺激症候群の発症が予想される場合には 採卵そのものをキャンセルしたりすることがあります 現行の治療プログラムでは 卵巣過剰刺激症候群の発症を皆無とすることは不可能ですが 私達の施設では その病態に即した管理 治療方法について研究を重ねてきており 最善のケアをさせていただきますので 何卒ご理解下さい 4) 卵子 受精卵凍結による先天異常児の可能性構成成分の 80% が水分である細胞は凍結することにより物理的 化学的影響を受け その生存率が低下します これを防ぐために凍結保護剤を使用しますが 凍結 融解の影響を完全に取り除くことはできず 凍結保護剤そのものの影響も考えられます 凍結 融解後の卵子の生存率は 90% 程度です 自然妊娠で出生した児が先天的な異常を持つ確率は 3-5% と報告されています 凍結融解後の卵子や受精卵を用いて妊娠が成立した場合の予後は 新鮮卵子や受精卵を用いた生殖補助医療の場合と同等であると予想され 自然妊娠と比較して出生児の染色体異常および先天異常発生率が明らかに高いとの報告はありません しかし 児の長期予後 とりわけ次世代以降への影響などについては 現時点ではわかっていない点があり 今後も出生児の発育や生殖能力などを追跡調査していくことが重要です 妊娠 出産された場合は 追跡調査へのご協力をお願いします また 採卵時の ( 注 : 妊娠時ではない ) 母体の年齢が高い場合には 染色体異常および先天異常発生率は高くなります なお 妊娠成立後に 母体血清マーカー検査を受けたり 羊水検査で胎児の染色体異常の有無を調べたり 超音波検査で先天異常の有無を調べたりすることが可能です こうした先天異常に関する詳細については ご希望があれば治療前にカウンセリングを受けておくことができます なお 凍結卵子や凍結受精卵を使用した妊娠により出生した児に先天的な異常が存在した場合 当院からの補償はありません 7. 医療行為が実施又は継続されることに同意した場合であっても随時これを撤回できること 医療行為への参加に同意した場合でも 治療からの中止を希望する場合は遠慮なくお知らせ 10

下さい 患者さんが未成年の場合は 親権者が中止を希望する場合も遠慮なくお知らせください たとえそれが実施中であっても いつでも医療行為への参加を中止することができます その場合でも いままでに使われている他の治療を受けることができます 中止した場合は中止時までのデータを集計し解析に用いさせて戴くことがあります 8. 医療行為が実施又は継続されることに同意しないこと又は同意を撤回することによって医療行為対象者等が不利益な取扱いを受けないこと この医療行為への参加を希望する場合は 治療開始前にこの医療行為の内容について説明 をお聞きいただき 内容をよく理解していただいた上で同意書に自筆署名によって治療への参 加に同意していただきます 患者さんが未成年の場合は 親権者も説明をお聞きいただき 同意 書に署名していただきます この医療行為に参加するかどうかはあなたの意思が尊重されます たとえ参加をお断りになっ てもそのために不利益を受けることはなく 今後の治療にも差し支えることはありません 9. 医療行為に関する情報公開の方法この医療行為によって得られた結果などは 医学専門学会や医学専門誌などへの発表や日本がん 生殖医療学会参加施設間で情報共有されることがあります 10. 実施計画書及び実施の方法に関する資料を入手 閲覧できること並びにその方法医療行為対象者等が希望すれば 他の医療行為対象者等の個人情報等の保護及び当該医療行為の独創性の確保に支障がない範囲内で 実施計画書及び実施の方法に関する資料を閲覧できます 閲覧をご希望の方は 担当医にお伝え下さい 11. 個人情報の保護についてこの医療行為においてあなたの個人情報 ( 氏名 住所 電話番号 試料採取機関におけるカルテ番号 個人を特定できる情報など ) は埼玉医科大学総合医療センター産婦人科において厳重に管理されます また実施成果を公開する場合 あなたの名前 住所 電話番号などの個人情報はわからないように配慮されます 知り得た事実は外部に漏らさないように 法律でも規制されています 12. 試料 情報の取扱いについて卵子 受精卵などの試料や医療行為のために記録されたデータは 厳重に保存されます 廃棄対象となった卵子 受精卵 ( 前述した 卵子 受精卵凍結保存契約 をご参照ください ) は 密封容器に廃棄あるいは焼却処分します もしあなたに同意していただければ 廃棄予定の卵子 受精卵やデータを将来の研究のための貴重な資源として 厳重に保管させていただきます 将来 これらの試料を新たな医学研究に用いる場合には 改めて研究計画書を提出し 倫理委員会の承認を受けます 11

13. 医療行為の資金源等 実施機関の医療行為に係る利益相反及び個人の収益等 実施者等の医療行為に係る利益相反に関する状況この医療行為には 企業や団体は関与しません 企業等との利害関係はないため 利害の衝 突によって医療行為の透明性や信頼性が損なわれるような状況は生じません 14. 医療行為対象者等及びその関係者からの相談等への対応ご希望の方には 生殖医療専門医によるカウンセリングを行っております また 当科では が ん 生殖医療に関する研修を受けた臨床心理士によるカウンセリングも可能ですので ご希望の 場合はお申し出ください 15. 医療行為対象者等の経済的負担について実施期間中の卵子 受精卵凍結に関わる手術 入院費用等の全てが自費扱いとなります 費用は約 24-50 万円 ( 税別 ) です ( 別紙参照 ) 凍結卵子 凍結受精卵を融解し生殖補助医療に利用する場合も 自費扱いの患者負担となります 原疾患の治療 採卵に伴う合併症 ( 当科手術同意書に記載されている ) が発生した場合は適切な診療を行いますが 一部または全部の治療費が患者負担となります 16. 他の治療方法等に関する事項 妊孕性温存を目的とした他の治療法としては 卵巣凍結や GnRH アゴニスト製剤による卵巣 保護などがありますが 表 1 のように一長一短があります また 他者の卵子を用いた生殖補助 医療や養子 里親などの制度も 一定の条件のもとに利用可能です 17. 医療行為対象者への医療行為実施後における医療の提供に関する対応この医療行為に参加してもしなくても治療そのものの方針は変わりありません 18. 医療行為によって生じた健康被害に対する補償の有無及びその内容この医療行為に参加されたことによって健康被害が生じた場合は 適切な診療を行います なおこれに伴う補償や賠償は受けられません 埼玉医科大学総合医療センターでは善良なる管理者の注意義務をもって凍結卵子 凍結受精卵を管理しますが 卵子 受精卵凍結保存契約でも述べたように 液体窒素の不足や保存容器のトラブルなどによって卵子 受精卵の使用が不可能になった場合の補償額の上限は 採卵 培養にかかった費用 卵子 受精卵凍結料およびそれまでの卵子 受精卵凍結保存維持管理料の合計額とさせていただきます それ以上の補償はありません 自然災害などのやむを得ない事情により凍結中の卵子や受精卵が使用不能になった場合の補償はありません 19. 知的財産権について この医療行為の成果により特許権等の知的財産権が生じる可能性がありますが その権利は 学校法人埼玉医科大学に帰属し 試料提供者には帰属しません 12

20. 医療行為の問い合わせ先についてこの医療行為について何かお聞きになりたいことがありましたら いつでもご遠慮なく下記の責任医師 担当医師または相談窓口にお問い合わせください 実施責任医師髙井泰埼玉医科大学総合医療センター産婦人科 350-8550 川越市鴨田 1981 049-228-3681 yastakai@saitama-med.ac.jp 13

付録 1: 排卵誘発プロトコルについてー調節卵巣刺激法 GnRH アゴニスト製剤 ( ブセレキュア R スプレキュア R ナサニール R など ) は 10 年以上前から 体外受精 / 顕微授精で使用されてきましたが 最近 GnRH アンタゴニスト製剤が開発され 欧米 はじめ世界中で広く使用されるようになっています 当科では 従来の GnRH アゴニスト製剤を併用した排卵誘発法 ( ロングプロトコル ) を基本としつ つ 下記のような症例では 新しい GnRH アンタゴニスト製剤を積極的に使用しています 排卵誘発剤への反応が不良な症例 従来の GnRH アゴニスト製剤を用いた排卵誘発プロトコルで良好な卵子 受精卵の得られな かった症例 体外受精 / 顕微授精の反復不成功症例 以下に GnRH アゴニスト製剤を使用した排卵誘発法 ( ロングプロトコルとショートプロトコル ) GnRH アンタゴニスト製剤を使用した排卵誘発法の概要を図示します 図 1 ロングプロトコル予定月経の約 1 週間前から GnRH アゴニスト ( ブセレキュア R スプレキュア R ナサニール R など ) 点鼻を開始し 月経開始 2-5 日後から排卵誘発剤 (FSH/hMG) の連日注射を開始します 十分な卵胞発育が得られた時点でHCG を注射し その 34-36 時間後に採卵します 点鼻薬は HCG 注射の直前まで使用して下さい ( 別紙参照 ) 前周期にプラノバール R マーベロン R などの女性ホルモン剤を投与する場合があります 7 30-9 00 GnRH 20 30 HCG FSH/HMG -8-6 -4-2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 ( ) 14

図 2 ショートプロトコル 月経が開始したらすぐに GnRH アゴニスト ( ブセレキュア R スプレキュア R ナサニール R など ) 点鼻を開始し 月経 開始 2-3 日後から排卵誘発剤 (FSH/hMG) の連日注射を開始します 十分な卵胞発育が得られた時点で HCG を注 射し その 34-36 時間後に採卵します 点鼻薬は HCG 注射の直前まで使用して下さい ( 別紙参照 ) 前周期にプラノ バール R マーベロン R などの女性ホルモン剤を投与する場合があります GnRH 7 30-9 00 20 30 HCG FSH/HMG -8-6 -4-2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 ( ) 図 3 GnRH アンタゴニスト製剤 ( ガニレスト R など ) を用いた排卵誘発法月経開始 2-3 日後から排卵誘発剤 (FSH/hMG) の連日注射を開始します ( 月経周期に関係なく開始する場合もあります ) 卵胞径が 12-14mm に達した時点で排卵誘発剤と同時に GnRH アンタゴニスト製剤の連日注射を開始します 十分な卵胞発育が得られた時点でHCGを注射し その 34-36 時間後に採卵します GnRH アンタゴニスト製剤は HCG 注射の前日 ( 夕方が望ましい ) まで使用します 前周期にプラノバール R マーベロン R などの女性ホルモン剤を投与する場合があります 7 30-9 00 20 30 HCG GnRH FSH/HMG -8-6 -4-2 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 ( ) 15

付録 2:GnRH アゴニスト ( ブセレキュア R スプレキュア R ナサニール R など ) をお使いになる方へ 体外受精 / 顕微授精を予定している方は 予定した採卵までに自然に排卵してしまわないようにするため ならびに 良質な卵を採取するために 排卵誘発剤の注射と並行して GnRH アゴニスト製剤であるブセレキュア R スプレキュア R ナサニール R などをお使いいただく場合があります 本来は子宮筋腫や子宮内膜症に対して長期間使用する 保険適応のある薬剤ですが 10 年以上前から 体外受精 / 顕微授精の治療のために 世界中の多くの方々に 本剤ならびに類似の薬剤が使用されています 1) 使い方ブセレキュア R スプレキュア R 約 6 時間ごとに 左右どちらか一方の鼻腔にスプレーを 1 回 (1 日 4 回スプレーすることになります ) 行って下さい 正しく使用されている場合 1 本で 24 日間くらい使えます 使用説明書に記載されている 子宮内膜症や子宮筋腫などに対する使用方法 ( 両方の鼻腔に 1 日 3 回スプレー ) とは異なりますので ご注意下さい ナサニール R 約 12 時間ごとに 片方の鼻腔にスプレーを 1 回ずつ (1 日 2 回スプレーすることになります ) 行って下さい 正しく使用されている場合 1 本で 20 日間くらい使えます 2) プロトコルについて ( 付録 1 参照 ) ロングプロトコル基礎体温の高温相の中間あたり ( 予定月経の約 1 週間前 ) からブセレキュア ( スプレキュア ナサニール ) を開始します ( 開始日は必ずしも厳密である必要はありません ) 月経が開始後もさらにブセレキュア ( スプレキュア ナサニール ) を継続します 通常 月経開始 2-3 日後に 診察にて卵巣および子宮の準備が整っていることを確認し 排卵誘発剤の連日注射を開始します ( ブセレキュアが継続されている限り 排卵誘発剤の注射を数日間遅らせることは問題ありません ロングプロトコルの利点の 1 つ ) ブセレキュア( スプレキュア ナサニール ) は HCG 注射 ( 採卵 2 日前 ) の直前まで継続して下さい ショートプロトコル月経開始後すぐにブセレキュア ( スプレキュア ナサニール ) を開始し 翌日あるいは翌々日に排卵誘発剤の注射を開始します やはりブセレキュア ( スプレキュア ナサニール ) は HCG 注射 ( 採卵 2 日前 ) の直前まで継続して下さい 3) 使用中に妊娠が判明したらブセレキュア ( スプレキュア ナサニール ) を開始したところ月経が発来せず 妊娠に至ることがあります 妊娠周期に本剤ならびに類似の薬剤を使用することにより児の先天奇形が起こる可能性に関しては未だ十分な調査がなされていないため 体外受精 / 顕微授精を予定している方は 前の周期に避妊を行うべきであるという意見もあります ただし 2000 年までの世界での報告例 383 人の新生児のなかで先天奇形児は 8 人 (2.1%) で 一般集団と比べて必ずしも高くありません 16

付録 3:GnRH アンタゴニスト製剤 体外受精 / 顕微授精を予定しておられる方は 排卵誘発剤 ( フォリスチム R HMG フェリング R など ) の連日注射と平行して GnRH アゴニスト製剤 ( ブセレキュア R スプレキュア R ナサニール R など ) や GnRH アンタゴニスト製剤 ( ガニレスト R など ) を投与する場合があります これは 予定した採卵日までに自然に排卵してしまわないようにすると同時に 複数の良質な卵子を採取することを目的としています GnRH アゴニスト製剤は 10 年以上前から体外受精 / 顕微授精で使用されてきましたが 最近 GnRH アンタゴニスト製剤が開発され 欧米はじめ世界中で広く使用されるようになっています 我が国でも 2006 年にようやく認可され その特徴から不妊専門クリニックや大学病院を中心として次第に使用されるようになってきています GnRH アンタゴニスト製剤は 妊娠率は従来の GnRH アゴニスト製剤と同等ですが 連日注射する排卵誘発剤の使用量が少なくなる 薬剤投与期間が短くなるという特徴を持っています また GnRH アゴニスト製剤を用いた排卵誘発への反応が不良な症例で良質な卵子を得るのに適している可能性が示唆されています 当科では 従来の GnRH アゴニスト製剤を併用した排卵誘発法を基本としつつ 下記のような 症例では 新しい GnRH アンタゴニスト製剤を使用しています 排卵誘発剤への反応が不良な症例 従来の GnRH アゴニスト製剤を用いた排卵誘発プロトコルで良好な卵子 受精卵 の得られなかった症例 体外受精 / 顕微授精の反復不成功症例 費用は 従来の GnRH アゴニスト製剤 ( ブセレキュア R など ) を使用した排卵誘発法とほぼ同等と 考えられます ( 別紙参照 ) 17

付録 4: クロミッドを用いた排卵誘発法 ( 低卵巣刺激法 ) 現在 多数の卵子を一挙に採卵することが妊娠成功の鍵とされ 大量の注射 (FSH HMG 製剤 ) を連日注射することが世界的にも主流となっています 実際 当院でも 35 歳以下の方では 2 回の採卵周期までで 70% 以上の方に ( 凍結胚移植による妊娠も含む ) 妊娠がもたらされています しかし 得られる卵が少ない方や ある程度の個数の卵があっても不良な受精卵しか育たない方が問題となっています 従来の方法を工夫しながら繰り返しおこなうことも一法ですが 我が国を中心に実施施設が増えているクロミッドを用いた排卵誘発法を紹介いたします 採卵数は 1~2 個であることが多く キャンセル率も高くなりますが 身体や卵巣への負担が少ないので良い受精卵が得られるまでくりかえし頻回におこなうことができます 採卵までの手順 1. 月経 3 日目ころ : クロミッドを 1 日に 1 錠ずつ寝る前に内服開始 ( ブセレキュアを使用する前の日まで連日内服 ) ホルモン療法を 1-2 周期おこなった後に開始することもあります 2. 月経 8 9 日目ころ : 採血および卵胞チェック後 1 日おき ( 連日の場合もあります ) に卵胞刺激ホルモン製剤の注射を開始します 3. 月経 11 14 日目ころ : 卵胞の大きさが 18mm 以上になり 血中卵胞ホルモン濃度が 1 卵胞あたり 300pg/ml 以上をめどに成熟と判断します 検査料などは私費となります 22 時および 23 時に点鼻薬ブセレキュアを左右各 1 回ずつ噴霧してください (LH 10IU/L の場合 24 時および 25 時に噴霧 LH 15 ではキャンセルの可能性あり ) 点鼻の 34 時間後 (2 日後の朝 8 時 ) に採卵します 採卵およびその後の手順 1. 朝 8 時にご主人の精液持参 (6~7 時頃採取 ) でリプロダクションセンターに来院 深夜 0 時より絶飲食です 2. 局所麻酔により採卵します 抗生剤が処方されます 診察後 午前 10 時ころ帰宅できます 18

付録 5: レトロゾールを用いた排卵誘発法 1. はじめに体外受精 顕微授精における排卵誘発では クロミッドの内服やフォリスチムなどゴナドトロピン製剤の注射が行われていますが 近年実施施設が増えているアロマターゼ阻害剤レトロゾールを用いた排卵誘発法を紹介いたします これまでの排卵誘発剤にはない作用機序が注目され 欧米は勿論 我が国の不妊専門クリニックでも 10 年ほど前から臨床応用が進められており 女性ホルモンの上昇を避けたい乳がん症例に対する臨床成績が注目されています 2. 採卵までの手順 3. 採卵 1. レトロゾールを 1 日に 2 錠ずつ寝る前に内服開始し 採卵直前まで内服を続けます 内服 2 日目からゴナドトロピン製剤の注射を併用します 2. 内服 6-8 日目ころ : 採血および卵胞チェックし LH の早期上昇例では GnRH アンタゴニスト製剤を併用する場合もあります 検査料 注射料などは私費となります 3. 月経 12 14 日目ころ : 卵胞の大きさが 18mm 以上をめどに成熟卵胞と判断します 22 時に点鼻薬スプレキュア ( 私費で処方 ) を左右各 1 回ずつ噴霧してください (LH 10IU/L の場合 24 時に噴霧 LH 15 ではキャンセルの可能性あり ) 点鼻の 34 時間後 (2 日後の朝 8 時 ) に採卵します 朝 8 時にリプロダクションセンターに来院 深夜 0 時より絶飲食です 局所麻酔または全身麻酔により採卵します 抗生剤が処方されます 診察後 午前 10 時ころ帰宅 2 / 2 GnRH 5 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 ( ) 19