第 13 章 オーディオアンプ この章ではオーディオアンプを取り上げますが オーディオマニアの人達が製作するような音質を追及したオーディオアンプではありません あくまでラジオの音声を聞くための トランジスタラジオ用の小型スピーカをドライブするオーディオアンプです このようなオーディオアンプではありますが 電子回路の習得には重要な基本的なものです スピーカについて図 13-1にスピーカの構造を示します 磁石と磁性体でボイスコイルと直交する磁界を作ります この状態でボイスコイルに電流を流すと 有名なフレミングの法則に従って ボイスコイルに力がかかります この力により ボイスコイルと一体になっている振動板 ( コーン ) が この図で上下に振動します この構造のスピーカは 磁石が固定されボイスコイルが動きますので ダイナミック型とよばれています 現代 ほぼすべてのスピーカは このダイナミック型です スピーカの等価回路はどうなっているのでしょうか 以下それについて考えます スピーカと は電気エネルギを機械的エネルギに変換するものです この等価回路を考えるとき 直流モータ の等価回路が大いに参考になります まず 直流モータの等価回路を見ることにします 図 13-2 に直流モータの等価回路を示します モータに電源をつなぐとモータが回転しますが モータが 回転しますと 発電機となって電機子には逆起電圧が発生します もし 摩擦等の機械的な損失 が全くないとすれば この逆起電圧と電源電圧が同じになるところまで回転して平衡に達します このときに電機子電流は0になります ここで モータに負荷をつなぐと回転数が低下し 逆起電 圧が低下します そうすると 電源電圧と逆起電圧の差で電流が流れます その電流をIaとしま すと RaIaは電機子の抵抗で消費する電力で これは熱になります 注目したいのはVIa R となる 電力です この電力は摩擦を無視すれば モータのトルク 回転数 すなわち機械的エネルギに 一致します 摩擦等の機械的な損失があれば それらを含めた機械的エネルギとなります この ようにして 電気エネルギと機械的エネルギの変換が図 13-2で表されているのがわかります スピーカも電気エネルギを音という機械的エネルギに変換するものです ですから図 13-2のよ うな等価回路となります ここで スピーカの等価回路を図 13-3に示します L,Rは純粋な電気要 素です スピーカの場合はコーンが振動することにより ボイスコイルに逆起電圧が発生します VRがその逆起電圧です I VRがスピーカの機械的エネルギ つまり機械的な出力です -1-
ここで 理想的な場合を考えます L,Rを0とします またコーンを振動するのにエネルギを要 しないとします さらに このスピーカを真空の中に置き 音のエネルギが発生しないものとし ます そうすると 逆起電圧と駆動電源の電圧が同じになるようにコーンが振動します もちろ ん そのときは電流 Iは0になります ここでこのスピーカを空気中に出します そのときは空気 が負荷となり コーンが振動しにくくなります ですから逆起電圧 VRがVより小さくなり その差 で電流 Iが流れ VR Iというエネルギが消費されます このエネルギが音のエネルギになります 以上では コーンを振動するのにエネルギを要しないとしましたが 現実的にはこれは不可能 ですので VR Iにはコーンを振動するのに必要なエネルギも含まれます このエネルギは最終的 には熱となります さらに コーンには慣性質量がありますので急には動きませんし またバネ のようにエネルギを一時的に蓄積する要素もあります これらの要素により VRとVの位相が違っ てきます ですから ボイスコイルのインダクタンスLを0としても 電流 Iと電源電圧 Vの位相が 違ってきます ここで逆起電圧 VR を 同じ電圧になる電気要素に置き換えます その回路を図 13-4に示します Rm は機械的エネルギの出力を表す要素であり ここに流れる電流 電圧は機械的エネルギの出力 と同じになります Lmは一時的にエネルギを溜める要素であり 例えばコーンのバネ要素がこれ に相当します Cmも同じく一時的にエネルギを溜める要素で コーンの慣性質量がこれに相当し ます 結局スピーカの等価回路は図 13-4のような複雑がものとなります Lm,Cmは ある周波数で共振 しますので この周波数ではスピーカのインピーダンスは大きくなります このような回路です から スピーカのインピーダンスを簡単に表すのは困難です かつては 共振周波数以上で一番 小さくなるインピーダンスを公称インピーダンスとしていました 今は各メーカーが独自に規定 -2-
しているようです 今回使用するスピーカを写真 13-1に示します トランジスタラジオ用の小型スピーカです イ ンピーダンスは8Ωです この8Ωは図 13-4では ほぼボイスコイルの抵抗 Rに相当します 他の要 素はすべてこの値に比べ無視できます ですから このスピーカの抵抗をマルチメータの抵抗レ ンジで測定しても ほぼ8Ωになります 最初にスピーカの等価回路を詳しく述べましたが 何の ことはなく このような小型スピーカではボイスコイルの抵抗 Rだけになります 逆にいえば こ のような小型のスピーカは非常に効率が悪く ボイスコイルの抵抗 Rで ほぼすべてのエネルギを 消費しています ですから全機械的エネルギは スピーカに注入した全エネルギの内のごく僅か なものになります さらに音のエネルギは全機械的エネルギのほんの僅かですから スピーカに 注入したエネルギのごくごく僅かなエネルギを音に変換していることになります 写真 13-1 使用した小型スピーカ 今回のオーディオアンプの検討では 入力信号として図 11-17 トランジスタ自励ミキサーと図 12-13のIFTを用いたIFアンプの組み合わせを代表として使用します この組み合わせで 音声出力 のトリマ ( ボリューム ) を最大にします そうすると C局の検波出力は表 12-1より580mVとなりま す 変調度を 50% として 音声信号のピーク値は290mVになります ここでは簡単になるように30 0mVとします 実効値は 2で割れば求まります このときの出力インピーダンスは約 2.3kΩとな ります これは コンデンサ100μFを介して抵抗を負荷とし 出力値が半分になる値を出力イン ピーダンスとして実測した値です このときにコンデンサ100μFを介することが必要です 直接 に抵抗を負荷にすると AGC特性に影響を与え 正確な出力インピーダンスが求まりません 今回用いたスピーカでは0.4Vの電圧でドライブすれば 静かな家の中では十分な音量になりま す 電流ドライブでは50mAです 高級なスピーカでは電圧ドライブが前提ですが 今回のような 小型スピーカでは 電圧ドライブでも電流ドライブでも全く同じ音になります このときの電力 は 0.28V 0.28V/8 Ω=10mWとなります 以上のことをまとめると図 13-5となります 今回製作するオーディオアンプは この図を満た すようなゲインであればよいことになります 必要な電圧ゲインは 0.4V/0.3V=1.3倍です しかし -3-
入力の有効電力が 0.21V 0.21V/ ( 4 2300 Ω) =4.8μWですので 電力ゲインは10mW/4.8μ W=2100倍 必要です なお 必要な電圧ゲインは 1.3倍と非常に小さいですが これは C局を聞くときの限界 の値です いろいろな余裕を考慮すると もっと必要です 一石アンプ一石アンプとしては 電流出力と電圧出力があります 前者はコレクタ共通回路であり 後者はエミッタフォロアです 以下これらのアンプを検討します なお 以下で検討する一石アンプはゲインが不十分であり また消費電流が多く実用性が全くありませんので 長期の使用を考慮していません あくまで検討用です ですから 長期の使用を目的とする製作はしないでください 電流出力アンプ ( コレクタ共通回路 ) 図 3-31 でマグネチックイヤホンのドライブ方法を示しました スピーカのドライブも全く同じ です ここでも最も簡単な ( c) の方法で検討します この方法ではスピーカに直流電流が流れるこ とに注意が必要です その回路を図 13-6 に示します 抵抗 R1は図 13-5の信号の出力インピーダン スのために挿入しました 入力信号はオーディオ信号発生器の信号ですが 図 13-5の信号と同じ 値に設定します VR1はTr1のバイアス電流をいろいろと変化させるためのものです 使用したト ランジスタは 2SC1815( ランク Y) で 直流電流増幅率 hfeは約 200のものです ですから VBE=0.75V として ( コレクタ電流が大きいのでVBEも大きくなります ) 6-0.75=5.25VをVR1の値で割った電 流に hfe=200を掛けた値が ほぼコレクタ電流となります なお このコレクタ電流の調整はVR 1の値を最大にしてから 徐々に小さくしていきます 誤ってVR1をショートしたり 小さい値に しすぎると 大きなコレクタ電流が流れ非常に危険ですので 注意してVR1を調整する必要があり ます ここでお断りがあります それはコレクタ電流やエミッタ電圧を バイアス ( 直流 ) にも 信号 ( 交流 ) にも使用します 紛らわしいときは明確にしますが 単に コレクタ電流 や エミッタ 電圧 としている場合は どちらの方かを文脈で判断してください -4-
まず コレクタ電流を15mA としたときの波形を図 13-7に示します なお このデータを取ると き スピーカではピーと大変うるさいので スピーカの替わりに純抵抗の8Ωを接続しています 以降でも波形を取るときは すべて8Ωの純抵抗におきかえています 厳密にはスピーカと純抵抗 では波形が異なるのですが 今回の小型スピーカでは ほぼ同じ波形になります コレクタ電流 はこの8Ω 抵抗の両端の電圧から算出しています 15mAでは8Ω 抵抗両端の電圧が120mVになるよう に VR1を調整します 図 13-7 コレクタ電流 15mA( 上 : コレクタ 下 : 入力信号 ) コレクタ電流が15mAのときの信号のコレクタ電流を求めてみます ベースに加わる信号は 簡 易ラジオの増幅回路で扱ってきたような小信号ではありませんので hieは一定にはならなくなり ます ( 正確にはhieが定義できない ) しかし だいたいの値は小信号のhieを用いて計算できます コレクタ電流が15mAのときの内部エミッタ抵抗 reはre=26/15=1.7ωです hfe=170を用いて hie= 1.7 170=290Ωとなります ですから ベース電流は 0.3/ ( 2.2+0.29 ) =0.12mAとなり 求める信号 のコレクタ電流は 0.12 170=20mAとなります このコレクタ電流に8Ωを掛けた 8 20=160mVが信 号のピーク値になります ここで図 13-7を見てみます プラスの周期では120mVで信号が飽和しています 8Ω 両端の直流 電圧は 前述したように120mVですので コレクタ電圧 ( 直流 ) は 6Vから 120mV下がった電圧です ですから プラスの周期では電源電圧の6Vまでしか上がることができませんので 120mVで信号が 飽和してしまうのです では マイナスの周期はどうでしょうか だいたい180mVくらいです 計 算値より少し大きくなっていますが これはhieが大きく変わるためです ちなみにhie=0として -5-
計算すると 信号のピーク値は185mVとなり 実測値に近くなります 次にコレクタ電流を25mAに上げてみます 8Ω 両端の直流電圧は 200mVになりますので プラ スの周期での飽和はなくなるはずです このときの波形を図 13-8 に示します 確かに図 13-7の歪 みはなくなっています また プラスとマイナスの振幅がほとんど同じになっているのがわかり ます プラスとマイナスではhieが大きく変わるのに それらの振幅がほとんど同じなのはなぜで しょうか それはhieに比べ 入力に挿入している抵抗 R1が大きいからです つまりトランジスタ を ほぼ定電流でドライブしているからです 大振幅の信号でreの変化を受けない回路として図 3-35を紹介しましたが このように定電流に近いドライブをしても 大振幅の信号でreの変化を受 けない回路となるのがわかります ちなみに出力信号の振幅は hie=0として計算した185mvに近 い値になっています hie=0として計算するのは 定電流として計算していることです またこれ は 図 3-43の説明でreがRi/hfeに比べ無視できるときの式を示しましたが この式で計算してい ることにもなります 図 13-8 コレクタ電流 25mA( 上 : コレクタ 下 : 入力信号 ) ではコレクタ電流を50mA に上げてみるとどうなるでしょうか その波形を図 13-9に示します 図 13-8 とほとんど変わらないのがわかります つまり ほぼ定電流のドライブになっていますの で re 変化の影響がないのがわかります ただ少々わかりずらいのですが 図 13-9 では図 13-8よ りも出力の振幅が小さくなっています これはコレクタ電流が40~50mAになってくると トラン ジスタ2SC1815のhfeが低下し始めるからです -6-
図 13-9 コレクタ電流 50mA( 上 : コレクタ 下 : 入力信号 ) ここで図 13-8の条件で 実際にミキサーとIFアンプ ( 以降ラジオ信号とします ) およびスピ ーカをつないで音声を聞いてみます 図 13-6の入力インピーダンスは低いので IFアンプの出力 トリマを最大にすると 検波回路の平滑回路が十分に動作できず IF信号がスピーカに漏れてき ます ですからIFアンプの出力トリマを少しだけ絞りました 結果ですが まあまあ聞こえます が やはり音が小さすぎます 真夜中に静かな部屋では聞くことができるといったところでしょ うか 図 13-6の回路でもう少し大きい音にするにはどうすればよいでしょうか hfeの大きいトランジ スタを使うのも一つの方法です しかし この方法ではコレクタ電流 ( 直流 ) をもっと大きくする 必要がでてきます スピーカにもこの電流を流しているので これ以上コレクタ電流を大きくし たくはありません さらに図 13-6でhfeを大きくすると hieが大きくなり内部エミッタ抵抗の影 響がでてきます そこで 出力トランスを用いて もう少し大きい音にしてみます 出力トラン スを用いると スピーカに直流が流れませんし コレクタ電流 ( 直流 ) も小さく かつ音を大きく することができます 図 13-10に出力トランスを用いた回路を示します 用いた出力トランスST-32の直流抵抗 (1 次の 赤白間 ) は30Ωです この間の電圧でコレクタ電流を調整します 図 13-11にコレクタ電流を15mA 流したときの波形を示します 出力トランス赤白間の電圧は450mVです この波形もスピーカを8 Ω の純抵抗に替えています この波形は歪みが発生しない範囲で 最大の振幅になるように入力 を調整したものです ラジオ信号では出力を小さくすると 出力インピーダンスが小さくなるの ですが ここではR1を一定にしています -7-
図 13-11 コレクタ電流 15mA( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-11 のときのトランスの 1次側 すなわちTr1のコレクタ信号は約 3Vになります 図 13-11の 出力は約 0.45Vですから トランスの巻き数比 6を掛けて Tr1のコレクタ信号は 0.45 6=2.7Vにな るはずですが 実測はこのように少し大きくなります これはトランス 1次の抵抗分のためと思わ れます Tr1のコレクタ電圧 ( 直流 ) は 前述したように6Vから 450mV下がったところです Tr1の信 号のコレクタ電圧はこの点を中心にして 約 ± 3V で振れていることになります 図 13-6と違いコ イルが負荷ですから 電源電圧より大きく振れることになります ただ マイナスの振幅は 3V+0. 45V=3.45Vですから あと2.55Vで0Vになってしまいます トランジスタのVBEの最低値を1Vとすれ ば あと1.55V の余裕があるだけです ですから図 13-11の出力は あと僅かしか大きくできない ことがわかります このようにトランスを用いると出力を大きくできるのですが 1次の電圧が高 くなる分 電源電圧も大きくする必要があるのがわかります 実はこのために 図 13-10では中間 タップを用いています もし 中間タップを用いないと 1次で5Vに振れても 2次では5V/12=0.4 2V しか振れないことになってしまいます Tr1の信号のコレクタ電圧の実測は約 3Vと述べましたが これを計算で求めてみます Tr1のhie を無視して ベース電流は0.22V/2.2k Ω=0.1mAです 0.22Vは図 13-11の入力信号です 8Ωをトラ ンスの 1次に換算すると8Ω 6 6=290Ωですので ベース電流 hfeにこの抵抗を掛けた値 0.1 170 0.29=4.9VがTr1のコレクタ電圧になります 実測の3Vに比べ随分大きくなりました この 理由はトランスの 1 次のインダクタンスが十分大きくないからです 図 13-11をみると 入力と出 力の位相が完全に 180 でないのですが これはトランスの 1次のインダクタンスが十分大きくな -8-
いことの証拠でもあります なお トランスの 1次のインダクタンスが十分大きくない理由は ト ランスに流している直流電流が大きいため トランスの磁性体が磁気飽和を起こしインダクタン スが小さくなっているためと思われます 図 13-11では 15mA流しましたが これより少なくするとプラスの周期で歪みが発生します では 大きくするとどうなるでしょうか 単純には もう少し大きな入力にでき したがってより大き な出力が得られそうですが 実際は逆にこのままの入力でも歪んできます トランスに流す直流 電流をこれ以上大きくすると トランスの磁性体が磁気飽和を起こしインダクタンスが小さくな る効果がさらに大きくなってしまうからです ですから図 13-11の条件がもっとも大きな出力が得 られる条件です ここで 実際にラジオ信号をつなぎ音声を聞いてみます 図 13-11より電圧ゲインが約 2倍あり ますので 図 13-5の条件を十分満たしています ですから 静かな家の中では十分な音量のラジ オになります ただ これは私の感覚ですので 十分ではないと感じる人がいるかもしれません 電圧出力アンプ( エミッタフォロア ) 図 13-5では 必要な電圧ゲインは小さく 主に電力ゲインが必要です ですから電圧ゲインがほぼ1 のエミッタフォロアでも 電力ゲインがありますので図 13-5のアンプとして使用できます 以下 一石のエミッタフォロアを検討します 電流出力アンプでスピーカをドライブする方法は図 3-31でした エミッタフォロアでも同じ方法があります 図 13-12にその方法を示します 今回はより簡単な ( b) の方法で検討します ただし この方法は VBE変化の影響を強く受けますので あくまで検討用です 図 13-13に検討した回路を示します VR1で8Ω 両端の電圧を調整してコレクタ電流を変化させま す 図 13-6とは逆で VR1を0Ωにしてから徐々に大きくしてコレクタ電流の調整をします なお R2 VR1はもう少し小さい方がベース電圧が安定してよいのですが そうすると入力信号に より 影響を与えますので この定数にしています -9-
図 13-14に8mAのコレクタ電流を流したときの波形を示します このときのエミッタ電圧 ( 直流 ) は64mV です ですから 図 13-13ではマイナスの周期で だいたいこのくらいの電圧で飽和してい ます この飽和しているところは 0Vになっています 図 13-14 コレクタ電流 8mA( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 以上の飽和はコレクタ電流をもっと流せばなくなります 図 13-15に 20mA流したときの波形を示 します 確かに歪みはなくなっています ただ エミッタフォロアは電圧ゲインがほぼ1ですが 随分出力が小さくなっています この原因を考えます 8Ωには100mV/8=12mAの信号電流が流れて います このときhfe=170として12mA/170=0.07mAのベース電流が流れています ですから R1の 両端には2.2kΩ 0.07mA=150mVの電圧降下が発生しています このためにベース電圧は300mV-150 mv=150mvになってしまいます 図 13-15の出力はこれよりさらに小さいですが これはVR1にも電 流が流れてしまうからです -10-
図 13-15 コレクタ電流 20mA( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-15 の出力では スピーカから確かに音が出ますが さすがに小さすぎます 図 13-15の出 力が小さくなる原因はベース電流が無視できないからでした そこでトランジスタをダーリント ン接続にしてhfe を大きくし ベース電流を小さくしてみます その回路を図 13-16に示します ベース電流が小さくなるので R2を大きくしています なお この回路のVR1の調整は必ず0Ωに してから 徐々に大きくしてください VR1が大きくなりすぎると大電流が流れ危険ですので 十 分注意してください さらにトランジスタが温まると電流も増えますので 実験は短時間で終了 してください 図 13-16 の回路でTr2のコレクタ電流を40mAにしたときの波形を図 13-17に示します これでもR1 の電圧降下やVR1への電流がありますので 出力は入力信号よりは小さくなってしまいます しか し 図 13-15 に比べ出力が約 2倍になります この出力は電流出力アンプの図 13-8とほぼ同じです ので 音量もほぼ同じになります -11-
図 13-17 Tr2コレクタ電流 40mA( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) ところで 電流出力アンプでは図 13-10のように出力トランスを用いて出力を大きくすることが できました 電圧出力であるエミッタフォロアでも出力トランスを用いて出力を大きくすること ができるでしょうか その回路を図 13-18に示します トランスの直流抵抗が小さいためエミッタ に直接は接続できませんのでR4,C2が必要です エミッタフォロアの出力インピーダンスRoはRo=r e+r1/hfeでしたから スピーカのインピーダンス8Ωが この出力インピーダンスと同じになる巻 き数比にすれば最大の出力が得られます 実際の回路である図 13-13の場合 reは無視して Ro=2. 2k Ω/170=13Ωです この値は ほぼスピーカの8Ωですから このようにトランスを使用しても 出力は大きくはなりません では もしRoがもっと小さかったならトランス使用で出力を大きく できるかといえば 現実的には あまり期待できません それはトランスでスピーカのインピー ダンスを下げることになるのですが そうすると トランスの抵抗も無視できなくなってくるか らです ニ石アンプ 一石アンプでは電圧ゲインがやはり不足でした そこでトランジスタをもう一つ追加してニ石 アンプにしたいと思います これには最終のスピーカをドライブする回路を電流出力にするか 電圧出力にするかで いろいろな形式が考えられます まず 電流出力にした場合を図 13-19に示 します ( a) は電流出力で ( b) は電圧出力で最終トランジスタをドライブする方法です ( a) は二 つのトランジスタが共に電流出力になっており最適な方法です ( b) は入力信号の出力インピーダ -12-
ンスを小さくしてから 電流出力アンプをドライブする方法です これでも電圧ゲインを大きくできます しかし 最終のトランジスタを定電流ドライブしなくなりますので 歪みが大きくなります つまり最終のトランジスタを小さい出力インピーダンスの信号でドライブすることになり 最終のトランジスタの内部エミッタ抵抗 reの影響を受けやすくなります この ( b) の回路は図 13-6において Tr1にダーリントン接続したトランジスタを使用したものと同じものです 図 13-20には最終のトランジスタを電圧出力にしたときを示します ( a) はまず信号の電圧を大 きくしてからエミッタフォロアをドライブする方法であり これも最適な方法です ( b) はエミッ タフォロアのみですから電圧ゲインを大きくできません この回路は図 13-16と同じものです 以上 ニ石にするには図 13-19(a) と図 13-20(a) の方法があるのがわかりました ただし 出力を 大きくするには最終のトランジスタのコレクタ電流 ( 直流 ) も大きくする必要があります どちら の回路もこの電流がスピーカに流れますので この電流は大きくしたくはありません ところが 図 13-19(a) では出力トランスを使用して この電流を抑えることができます ですから今回は図 13-19(a) のみを実際に検討したいと思います 図 13-19(a) の構成の具体的な例を図 13-21 に示します 図 13-10の出力トランスを用いたものより より大きな出力にしたいので 出力トランスを巻き数比の小さなST-45に変更しています この回 路では電圧ゲインが大きくなるので ラジオ信号をつなぐときはIFアンプの出力を下げることに なりますが このときはラジオ信号の出力インピーダンスも下がります ですからR1は470Ωと小 さくしています ST-45の赤緑間の直流抵抗は17Ωです この抵抗を利用して ST-45の赤緑間の 電圧により Tr2のコレクタ電流 ( 直流 ) を調整します Tr1には約 1.1mAのコレクタ電流 ( 直流 ) を流 しています ですから R4両端の電圧は約 2.5Vになっています Tr2は電流が大きくなりますので 2SC2001に変更しています 2SC1815の最大コレクタ電流は150mAですが 2SC2001は700mAであり 50mAくらいのコレクタ電流 ( 直流 ) ではhfeの低下はありません 用いた2SC2001のhFE=180です な お この回路も検討のみの回路であり 長期使用時の安定性を考慮していませんので 長期使用 を目的とした製作はしないでください -13-
図 13-22 コレクタ電流 45mA( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-22にTr2のコレクタ電流を 45mA流したときの波形を示します 入力信号にはノイズが目立 ちますが これはレンジが低い電圧のために発生するオシロスコープのノイズであり 信号源の ノイズではありません ところで 図 13-10では20mAぐらいの直流電流でトランスの磁性体が磁気 飽和を起こしましたが St-45では巻き数が小さいらしく この電流でもこの磁気飽和はありませ ん ただし インダクタンスは多少は小さくなっているものと思われます 出力を見ると あまり歪みが目立ちません Tr2は大信号でドライブされていますから歪みが出 そうですが なぜこんなに歪みが小さいのでしょうか そこでTr2のベース電圧波形を見てみます 図 13-23にTr1のコレクタ波形 Tr2のコレクタ波形を示します この図から Tr2のベース波形 ( Tr 1のコレクタ波形 ) は随分歪んでいるのがわかります 以下この理由を考えます Tr1の出力は電流 ですが この電流はすべてTr2のベースに流れます Tr2の入力抵抗に比べR4は非常に大きいので 無視できて Tr1の出力電流は ほぼすべてTr2のベースに流れるからです Tr2の入力抵抗 ( hieに 相当 ) はコレクタ電流によって大きく変化します ですから この図のようにベース電圧は大きく 歪むことになります 電圧はこのように歪んでいますが 電流は歪んでおらず したがってコレ クタ電圧波形は歪んでいないのです -14-
図 13-23 各コレクタ波形 ( 上 : Tr2コレクタ 下 : Tr1コレクタ ) 図 13-22から電圧ゲインは 600mV/10mV=60倍になっています これを計算で求めてみます まず Tr1のコレクタ電流 ( 信号 ) を求めます hie( Tr1は小信号 ) は4kΩです ですから ベース電流は 10 mv/4.47k Ω=2.2μAです これにhfe=170を掛けた0.37mAが求めるコレクタ電流となります この 電流がすべてTr2のベース電流になるとします 8Ωを 1次に換算して120Ωですから Tr2のhfe=15 0すると コレクタ電圧は 0.37 150 0.12=6.7Vとなります 8Ω 両端では6.7/3.9=1.7Vです 実 に計算では電圧ゲインは 1700/10=170倍となってしまいます 実測では 60倍ですから随分大きくな ってしまいました 計算と実測の違いを以下考えます 1. まずコレクタ電圧が計算では6.7Vですが 図 13-23では約 3Vになっています ここで随分違って います これはST-45 のインダクタンスが十分大きくないからです 事実 図 13-23を見ると位 相が 180 ではありません このためにTr2のコレクタ電圧は計算よりかなり小さくなると思わ れます 2. 図 13-23のコレクタ電圧 3Vを使用すると 8Ω 両端は3000/3.9=770mVとなるはずですが 実測は 図 13-22 より600mVです これは図 13-10でも同じことが起こりましたが トランスの抵抗分が原 因と思われます 3.Tr1のコレクタ電流がすべてTr2のベースに流れるとしましたが 多少はR4も影響します 4.R2,R3 にも入力信号が流れますので 電圧ゲインは小さくなります 以上の原因により計算値は実測より大幅に大きくなったと考えられます 図 13-22 の波形は歪みの起こらない範囲での最大の出力です 図 13-24にもっと大きな入力のと きの波形を示します このように入力が大きくなると大きな歪が発生します 実は このような 大きな入力でなくても 入力波形の違いによっても歪みが発生します 図 13-25に330Hzの信号を 入力したものを示します これは トランスST-45 の特性が主な原因です 図 13-26は方形波を入 力したものです この歪みもトランスの特性のためです トランスでは高い周波数で大きなイン ダクタンスになりますので このように立ち上がりや立下りが強調されてしまいます -15-
図 13-24 入力が大きくなったときの歪み ( 上 : 出力 下 : 入力 ) 図 13-25 入力 330Hz のときの歪み ( 上 : 出力 下 : 入力 ) 図 13-26 入力方形波のときの歪み ( 上 : 出力 下 : 入力 ) -16-
図 13-21の回路は電圧ゲインが実測で 60倍ほどありました 実際には 3倍もあれば十分ですので 以下では負帰還をかけて電圧ゲインを落とすことにします 逆にいえば電圧ゲインが 60倍と十分 あるので 負帰還をかけられるともいえます オーディオアンプでは 負帰還はいろいろな特性 を改善するために非常に重要な手段です 回路を図 13-27に示します Tr1,Tr2は直結しています R5が負帰還をかけている抵抗です VR1 はTr1 の直流バイアスをかけるための抵抗です 図 13-21ではトランスの極性 ( で示される) を全 く気にせずに使いましたが この回路では負帰還になるように注意する必要があります C4は発 振防止用のコンデンサです 電圧ゲインを小さくしますので R1は2.2kΩを使用しています 図 13-21ではコンデンサC3で二つのトランジスタを結合しましたが ここでは直結します オー ディオアンプではこのような直結がよく使用されます 直結するとTr1のバイアスの変動がTr2の バイアスに影響を与えます ですから Tr2のバイアスを安定化する方法が必要です それがVR1 で Tr1のバイアスをTr2のエミッタからかけます 今回はTr2のコレクタ電流を42mAとします そ うすると R6両端電圧は1.4Vとなります この電圧でTr1をバイアスするわけです こうすると 例えばTr2のコレクタ電流が大きくなると Tr1のベース電圧が大きくなります そうすると Tr1 のコレクタ電圧が下がり Tr2のコレクタ電流が下がります つまり Tr2のコレクタ電流の変化 を抑えます 実は Tr1のコレクタ電圧とTr2 のエミッタ電圧は同相ですので この動作は図 3-3の 自己バイアスと同じ動作です なお C3は信号に対して以上の効果をなくすためのバイパスコン デンサです Tr2エミッタの出力インピーダンスは小さいので このように大きい容量が必要です VR1を調整して R6両端の電圧を1.4Vにするのですが まず VR1を0にして徐々に大きくします VR1を大きくするとTr1のエミッタ電圧が下がり よってTr1のコレクタ電圧が上がりTr2のエミッ タ電圧が上がります ただ このようになるためには R2の値が最適でなければなりません 例 えばR2の値が大きいと Tr2のエミッタ電圧は1.4Vまで上がることができません ですから R2は VR1=0のときのTr2のエミッタ電圧が1.4Vより ほんの少し小さくなるような値を選ぶ必要があり ます さらに 実際にTr2のエミッタ電圧が1.4VになったときのVR1の値が10kΩより大きくなる必 要があります VR1の値が小さいと 入力信号がこの抵抗に流れてしまうからです 図のR2の定数 ではVR1は約 40kΩとなります また そのときの各部の直流電圧は図の四角で囲んだ値となりま す -17-
次に負帰還についてです 図 9-1で正帰還をかけたときの図を示しました この図では入力と帰 還信号が+になっていますが -にすると 負帰還の図になります 出力 Voは Vo=Vi A/ ( 1+Aβ) と なりますが Aが十分大きいとVo=Vi/ βとなってゲインaに関係がなくなります ですから Aが 歪んでいても それに関係しなくなりますので歪みが改善されるというわけです 以上は一般的な議論ですが ここでは図 13-28 で負帰還の効果を考えます R1,R2は図 13-27では R4 R5に相当します 出力 voの出力インピーダンスは8ωと小さいので無視しています 各電流 電圧の方向を図のように決めると以下の関係が得られます ( 13-1) 式は大雑把に考えても求まります Aが大きいと入力とv1が釣り合うところで出力が止ま ります つまり vi=vo R1/ ( R1+R2) です これは ( 13-1) 式です では Aはどのくらいになるでしょうか 8Ωを 1次に換算して120Ωですから Tr2のhfe=150と すると A=150 120/3.9=4.6k Ωとなります 図 13-21では計算値と実測では随分ちがいましたの で それを考慮して1/3になるとしてもA=1.5kΩです 一方 図 13-27のR4,R5は100Ω 220Ωです から これらよりA は十分大きいとしてよいことになります 以上により 図 13-27の電圧ゲイン は ( R4+R5 )/R4=( 100+220 )/100=3.2倍となるのがわかります -18-
図 13-29 負帰還アンプの波形 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 実際の波形を図 13-29に示します 図より電圧ゲインは 600mV/200mV=3倍ですから だいたい計 算通りです ところで 電圧ゲインの計算に用いた図 13-28 のviはTr1のベース電圧ですが 図 13-29の下の波形は入力信号です これらを同じ値としてよいのでしょうか 実は 負帰還のためTr1 の入力インピーダンスは非常に大きい値になっています そのために入力信号とベース電圧はほ ぼ同じとしてよいのです 以下これについて説明します 図 13-28 より入力インピーダンスを計算すると 以下となります ここで hfe=170 A=1.5kΩ R1=100Ω R2=220 Ωを代入すると 入力インピーダンス=80kΩと なり 非常に大きくなるのがわかります これは負帰還により Tr1のコレクタ電流 ( 信号 ) が小さ くなり よってベース電流が小さくなるためです 以上 図 13-27におけるR4,R5の働きについて説明しましたが R3,C2がなぜ必要なのか気になら なかったでしょうか 前述したようにVR1 のバイアスは図 3-3の自己バイアスと同じものです で すから R3,C2がなくても 全く問題なく動作します ただしこの場合 VR1は150kΩぐらいにな りますので 200kΩのトリマに変更が必要です このバイアスにR3を追加してエミッタ抵抗の値 を大きくすると 図 3-4の電流帰還バイアスの効果を付け加えられます そうすると Tr1のhFEの 変化に対して より影響の受けないバイアスとなります C3は信号に対してR3の負帰還をなくす るためのバイパスコンデンサです では R3=0でR4を780Ω R5を1.5kΩにしたらどうでしょうか これでも負帰還の効果は同じです しかし 図 13-28のR1,R2はAより十分小さい必要があり この 条件を満たさなくなってしまいます ここで負帰還をかけたことによる歪みの軽減について見ることにします 負帰還のない図 13-21 ではトランスの特性により 図 13-25 や図 13-26 の歪みが発生しました まず 図 13-30に330Hzの -19-
入力のときを示します 確かに歪みがなくなっています さらに位相が完全に 0 になっているの がわかります 図 13-31では複雑な波形を入力しました これも歪みがなく 完全にトランスの特 性を吸収しているのがわかります 図 13-30 330Hz の入力 ( 上 : 出力 下 : 入力 ) 図 13-31 複雑な入力 ( 上 : 出力 下 : 入力 ) 以上のように この負帰還のアンプでは歪みが軽減されますので 図 13-21のアンプより随分音がよくなるはずですが 実際にラジオ音声を聞いてみると あまり変わりません これはラジオ音声では周波数帯域が狭いのと スピーカが小型で性能が決してよいとはいえないからです 負帰還アンプはよいことばかりではありません 帰還がかかっていますので発振という問題が発生します 信号では確かに負帰還ですが 高い周波数では正帰還になってしまう可能性があるからです 簡易ラジオでの発振はトランジスタ一石で起こる発振でしたが こちらは複数のトランジスタ回路で起こる発振です 複数のトランジスタ回路では 位相が変化する箇所が複数個存在します ですから 図 4-2(b) で示したような発振のメカニズムになります つまり高い周波数で 位相が変化する箇所でのトータルの位相変化が 180 に達すると発振してしまうわけです では 図 13-27の回路で 位相が変化する箇所とはどこでしょうか まずはTr1,Tr2です トランジスタにはミラー効果等のコンデンサが入力に入っていますので 高い周波数では ここで位相が変化 -20-
します この二つのみですと 位相変化のトータルが 180 に達しませんので発振は起こりません もう一つはトランスです このトランスは あくまで低周波用です 周波数が高くなると 巻き 線間の容量が効いてきて位相が変化します ただ この動作を完全に理解するのは困難です 以上の三つの個所での位相変化により 図 13-27の回路は何も対策しないと約 1.4MHzで強烈に発 振します ただし発振の検討には正式に使用するスピーカを接続しておく必要があります 8Ωの 純抵抗では発振が弱くなります このような発振には以下の対策が有効です 1. 発振している高い周波数でのゲインを下げる 2. 発振している周波数で 位相が進む要素をどこかに付ける 今回の場合は発振周波数が1.4MHzと非常に高いので1. の方法が簡単です ということで 発振対 策に付けたものがC4のコンデンサです C4のインピーダンスは1kHzでは7.2kΩ 1.4MHzでは5Ωで す ですから音声信号にはほとんど影響を与えずに 1.4MHzを小さくできるのがわかります では このコンデンサをトランスの 2次に換算した0.022μ F 3.9 3.9=0.33μFを スピーカに 並列に付けても可能でしょうか 実はこのときには数 100kHzで強烈に発振します これはトラン スが完全に密結合でないのが原因です とにかく低周波トランスは厄介なものです この原因を 図 13-32で説明します ( a) は低周波での正常な動作を示します v1,v2は確かに逆位相になります ( b) は 2次に大きな容量のコンデンサを付けたときです 図では このコンデンサを 1次に換算して います トランスが完全な密結合でないときは 漏れインダクタンスLが直列に入ります 周波数 が高くなると 図のベクトル関係となります ここで コンデンサの容量が大きいのでvcとvLが1 80 位相が異なること および周波数が高いとしていますので 1次の電圧 v1はほぼvlと等しくな ることが重要です そうすると 正常時には逆相だったv1,v2が 同相になってしまいます 何と 負帰還の配線が正帰還の配線に変わってしまいます 最後に以上の検討した基板を写真 13-2に示します なお この基板で一石 ニ石のすべての回路を検討しました -21-
写真 13-2 図 13-27 の検討している基板 プッシュプルアンプ 前項の一石 ニ石アンプの弱点は出力が小さいのに必要なコレクタ電流が大変大きいことでし た コレクタ電流が大きいことは 必要な電力が大きいことです そこで図 13-10の回路の各電力 を求めてみたいと思います 図 13-33にこの回路のコレクタ電圧 コレクタ電流を示します Ioは 直流 ( バイアス ) のコレクタ電流であり vm imは信号の電圧 電流です 平均の電力は瞬時の電力 つまり瞬時の ( 電圧 電流 ) を 1周期で積分して それを 1周期で割れ ば求まります 図 13-33の各電力は以下のようになります -22-
必要な全電力は一定であり im=0 つまり音声信号がないときも消費されています このとき この電力はトランジスタで消費されていて すべて熱になります 例えば図 13-10ではIc=15mAで したから 6V 15mA=90mWが信号がないときもトランジスタで消費されています 厳密には トラ ンスの抵抗でも消費されていますが ここでは議論を簡単にするためにトランスの直流抵抗を0Ω としています 前項の一石 ニ石アンプの検討では言及しませんでしたが このトランジスタの 消費電力は 使用するトランジスタに規定されるコレクタ損失より小さい必要があります 通常 余裕をみて規定値の半分ぐらいで使用するのが望ましいといえます ちなみに 2SC1815のコレク タ損失は0.4Wで 2SC2001は0.6Wです 以上のように 前項で検討した一石 ニ石アンプは音声信号がないときも消費電力が大きいこ とが大きな問題です 確かに これらを検討しているときは 常に直流のコレクタ電流を気にし ていました 出力をさらに大きくしたいときは この問題は致命的となります そこで登場する のがプッシュプルアンプです なお以降では プッシュプルアンプをPPアンプとします PPアン プでは信号の正の周期と負の周期を別々のトランジスタでドライブすることにより 信号がない ときのコレクタ電流を極力なくそうとするものです ちなみに このPPアンプに対して 前項で 検討した一石 ニ石アンプはシングルアンプとよばれます 図 13-34 に図 13-33をPPアンプにした回路を示します トランジスタを 2個使用します この回路 では出力の正の周期はTr1によって 負の周期はTr2によって出力されます このようにするため には 図に示すように 各トランジスタを位相の反転した信号でドライブする必要があります このようにトランジスタを 2個使用することにより 必要な期間のみトランジスタを動作させます ので 信号がないときにはコレクタ電流が0にできるわけです -23-
ところで トランジスタはVBEが 0.6V以下になると全く電流が流れませんでした ですから図 13-34 の回路でも この電圧分のバイアスは必要です このバイアスを図 13-35に示します このよ うに ぎりぎりトランジスタが働くようなバイアスを B級バイアスとよんでいます ちなみに 今 まで用いてきた常にトランジスタが能動状態にあるようなバイアスは A級バイアスとよんでいま す なお この B級バイアスで 少し電流を大きくしたものは AB級とよばれることがあるのですが この本ではこれも B級としています 今までの A級バイアスで信号が大きくなると トランジスタの入力インピーダンスとして 小信 号用のhieが使用できなくなりました ですが 例えばゲインの計算には hieを用いて だいた いの目安を得ることができました しかし B級になると いよいよこの計算もできなくなります これは図 13-35を見れば納得できます 図では 歪みのない出力波形を描いていますが 実際は先 端の尖った歪みがでるのは明らかです このように図の曲線に沿って出力が変わるわけですから hieのような線形の計算はできなくなるわけです あえてhieを使うとすれば 信号の最大コレク タ電流の半分でのhieを使用するという方法もあるでしょうが かなり実際の値と異なる計算結果 になってしまいます では B級バイアスでの 例えば電圧ゲインはどう計算すればよいのでしょうか それは 回路 をこの計算がし易いように構成するばよいということになります 少々妙な論理ですが 電圧ゲ -24-
インの計算ができないような回路は非常に歪みが大きいことを意味しています ですから 定電流ドライブとか エミッタに小さな抵抗を入れて 極力 図 13-35の曲線の影響をなくす回路にするべきなのです こうすれば波形歪みが少なくなり 結果として電圧ゲイン等の計算も簡単にできるようになります 図 13-34 の B級バイアスをした回路を図 13-36に示します トランジスタの書き方を変えています ので 図 13-34とは違うイメージですが全く同じものです この図のD1が B級バイアスを与えるダ イオードです このダイオードの両端電圧は0.6Vくらいなので ちょうどTr1,Tr2を B級バイアス できるわけです さらにTr1,Tr2のVBEは温度で変化しますが ダイオードも同じ変化をしますの で ちょうど打ち消すことができます ここではダイオードを使っていますが このダイオード の替わりにコレクタとベースを接続したトランジスタ ( ダイオードになる ) を考えると 図 11-26 ( b) で示したカレントミラーになっているのがわかります つまり D1に流す電流とほぼ同じコレ クタ電流がTr1,Tr2に流れるのがわかります また R1には大きな電圧がかかっていますので D1 の順方向電圧が温度で変化しても D1の電流はあまり変化しません これは温度によってTr1,Tr2 のバイアス電流 ( コレクタ電流 ) もあまり変化しないことを意味しています なお このように B級 バイアスをしたときに流れるトランジスタのバイアス電流は アイドリング電流とよばれます どのくらいのアイドリング電流を流すかは ある歪みの発生に関わってきますので重要な事柄で すが これは具体的なPPアンプの製作で説明します 図 13-36のT1は位相反転させた信号を作り出すものです このようにトランスを用いると位相反転が容易にできます 逆にトランスを用いないと位相反転をするのが非常に困難になります 一度どうすればよいか考えてみたらいかがでしょうか 容易でないのがすぐにわかると思います -25-
図 13-36 のTr1のコレクタ電圧とコレクタ電流を図 13-37に示します ここでは簡単にするために アイドリング電流を0にしています この図を用いて各電力を求めたものを以下に示します これ らはTr1の電力であり 全体の電力は 2倍になることに注意が必要です シングルアンプと比べ最も重要なことは im=0 すなわち信号の電流が0のときは 全電力が0 になるということです ただし厳密にはアイドリング電流が流れていますので 実際には完全に 0 にはなりません もう一つ注意していただきたいのは トランジスタの消費電力です もちろん im=0のときは0です 注意が必要なのは あるimで最大になるということです そのimと そのと きの最大のトランジスタの消費電力は以下となります 図 13-36のPPアンプでは出力にトランスが必要でした 低周波トランスは何かと厄介なものですので トランスを必要としない回路が欲しくなります その回路を図 13-38に示します スピーカの一端はグラウンドに接続され シングルエンドの出力になるので シングルエンディッド PP アンプとよばれます 以降 SEPPアンプとよぶことにします 出力トランスを使用しないので OTL ( アウトプットトランスレス ) 回路ともよばれます -26-
この回路ではコンデンサC1の両端電圧が電源になります ですから その電圧はVcc/2になるよ うにする必要があります また 十分大きな容量が必要です そのときの各トランジスタの動作 電源は図 13-39のようになります ここで Vcc/2の電源はC1の両端電圧であり Vccは元の電源で す ( b) は ( a) と全く同じ回路となります 一見すると Tr1とTr2の動作は違うように見えるので すが このように全く同じ動作をします 図 13-37でPPアンプの各電力を計算しましたが 同じ計 算をこの回路で行うとすれば 電源電圧としてVcc/2を使う必要があります 図 13-38のSEPPアンプでは 依然として各トランジスタを位相反転した信号でドライブする必要 があります 出力トランスを不要にしたのですから この反転に図 13-36のようなトランスを使用 したくはありません ですから 反転を必要としない回路が欲しくなります 幸いにしてトラン ジスタにはNPNとPNPという二つのタイプがあります この二つのタイプをうまく組み合わせると 位相反転した信号の不要な回路を構成することができます その回路を図 13-40に示します 各特 性がほぼ同じで タイプの違うトランジスタをコンプリメンタリー ( 相補 ) トランジスタとよびま すので これらの回路はコンプリメンタリー SEPPアンプとよばれます この本では単にSEPPアン プとよぶことにします -27-
( a) は電圧出力 つまりエミッタフォロアでスピーカをドライブするものです 入力信号の正の 周期ではTr1が 負の周期ではTr2が動作します 一方 ( b) は電流出力 つまりエミッタ共通回路 でスピーカをドライブします 入力信号の正の周期ではTr2が 負の周期ではTr1が動作します ところで ( a) の回路は 図 13-12(a) のエミッタ抵抗をPNPトランジスタに置きかえたものと考えるこ とができます ですから 出力のコンデンサは図 13-39のようにトランジスタの動作電源と考える 必要はありません ここで 両方式での最大出力電圧を考えます まず ( a) の正の出力ですが Tr1のベース電圧がV ccになったときに最大になり Vcc-VBEとなります このときのVBEは コレクタ電流が大きいの で1Vぐらいになります ですから 正の最大出力はVccより1Vぐらい小さくなります ただし実際 の回路では ベース電圧をVccにまで上げることはできず Vcc-1Vぐらいまでしか上げることがで きません 結局 Vccより2Vくらい下がったところが正の最大出力となります 以上は正の出力で考 えましたが 負の出力でも同様です ですから ( a) の出力は正ではVcc-2.0Vくらいまでしか上が らず 負では2.0Vくらいまでしか下がらないことになります 例えばVcc=6Vの出力は2.0V~4.0V くらいになります 3Vが中心ですので 1.0Vが出力信号のピーク値になります 一方 ( b) の最大出力はどうなるでしょうか ( b) の正の最大出力はTr1のベース電圧が下がったと きに得られます ですから ( a) と違い 十分 Tr1をドライブすることができます このとき Tr1の VCEは VCE飽和電圧という電圧まで小さくなることができます この VCE飽和電圧は0.1V~0.2Vとい う非常に小さい電圧です Tr1に十分ベース電流を流すと コレクタにプラスの ベースにマイナ スの電荷が蓄積され コレクタ電圧がベース電圧よりも高くなる現象が起こります この現象の ために Tr1のVCBは0.1V~0.2Vという小さな値になることができるのです ( a) のTr1ではベース 電圧がVccになったとき コレクタとベースが同じ電位ですので 決してこの現象は起こりません なお Tr2が働く負の出力でも同様に Tr2のVCEは VCE飽和電圧である0.1V~0.2Vという非常に小 さい値まで下がることができます 以上のように ( b) の出力は ほぼ0Vから電源電圧まで動作でき るのです ちなみにOPアンプで レール ツー レール とよばれる ほぼ0Vから電源電圧まで 動作できるタイプは 大抵はこの ( b) の構成になっています 以上述べたように電源電圧の利用度という点では圧倒的に ( b) が有利ですが 実際の回路を構成 するのは非常にむずかしくなります 以下 このことについて説明します 図 13-40では B級バイ アスを考えていませんので B級バイアスを考えることにします まず ( a) の回路からです 図 13-41に B級バイアスをかけたものを示します -28-
D1,D2がTr1,Tr2に B 級バイアスをかけるダイオードです 図 13-36と同じように これらのダイ オードをコレクタとベースを接続したトランジスタで置きかえると D1,D2とTr1,Tr2はカレント ミラーと考えることができます ですから 図のI0とI1,I2はほぼ同じ電流であり さらに温度変 化も補償されることがわかります ここで I1とI2が同じになる必要があるのですが これはI1= I2になるようにTr1,Tr2のエミッタ電圧が自動的に上下します 例えばI1が大きいときはエミッタ 電圧が上がり よってI1が小さくI2が大きくなるように働き 必ずI1=I2になります また 出力 であるエミッタ電圧はVcc/2になる必要があるのですが これはR1の調整により容易に実現できま す このR1は図 13-27 のVR1と同じ働きです この図 13-41の回路は ほぼ実際の回路です このよ うに図 13-40(a) の回路は電源電圧の利用度が悪いのですが 実現は実に簡単です 次に図 13-40(b) の回路に B級バイアスをかけた回路の一例を図 13-42に示します D1 D2が B級バ イアスをかけるダイオードです この回路もカレントミラーと考えることができます Tr3,TR4は 一見すると図 13-41の回路のようですが エミッタをVcc/2で固定していますのでエミッタ共通回 路になります このD3,D4とTr3,Tr4もカレントミラーと考えることができます ですからI0とI3, I4さらにI1,I2は ほぼ同じ電流ですので Tr1,Tr2のアイドリング電流であるI1,I2はI0で調整で きるのがわかります この回路の動作ですが 例えば信号の正の周期では Tr3がエミッタ共通回路として働きます もちろん このときTr4は動作しません そのTr3のコレクタ電流 ( 信号 ) でD1,Tr1のカレントミラ ー回路をドライブしますので Tr3のコレクタ電流がTr1のコレクタ電流となります つまりTr1は 電流増幅していないことになります -29-
以上のように図 13-42で基本動作はしますが 問題点がいろいろとあり 実際に動作する回路に するのは非常に困難です その問題点を以下に列挙します 1.I0 I3 I1とニ段階でI1を制御するので I0とI1がかなり違ってしまいます またI0 I4 I2 も同じですから 最終のI1とI2がかなり違ってしまいます ですから I1とI2を同じにするた めの制御ループが必要ですが これがなかなか大変です 2. 出力をVcc/2に制御するループも必要ですが これもなかなか大変です 3.D1,Tr1はカレントミラーですので このままではTr1のVCEを VCE飽和電圧にできません ですか らD1に直列に抵抗を入れるなどして 大きいドライブ電流ではTr1のVCEを VCE飽和電圧になるよ うにしないと この構成にした意味がなくなります しかし こうするとI3とI1のバランスが くずれてしまいます 4.Tr3,Tr4のためにVcc/2の電源が必要ですが これを作るのも大変です 以降では 図 13-42 の構成は断念して 図 13-36 の出力トランスを用いたPPアンプ および図 13-41のSEPPアンプを具体的に製作します 一石 ニ石のシングルアンプでは実用性がなく あくま で検討用として製作したのですが 以降で製作するPPアンプは長期使用を目的としたものになり ます 出力トランスを用いた PP アンプ 図 13-36に出力トランスを用いたPPアンプの基本構成を示しましたが ここではこのPPアンプを 実際に製作します かつての 6石スーパーラジオでは ほとんどこの構成のPPアンプが使われてい ました いわば古典的な回路です 実際に製作したものを写真 13-3 に その回路図を図 13-43に示 します 以降で製作するアンプも同様ですが 前章で製作したIFアンプに接続できるようにコネ クタを付けています Tr2は図 13-36のD1に相当するもので トランジスタによるダイオードです ですからTr2と Tr3 Tr4はカレントミラーとなります かつては ここにバリスターという この 回路専用のダイオードが使われていましたが このバリスターの入手は困難です しかし トラ ンジスタが安価になった今では なにもバリスターを使用しなくてもトランジスタを使用すれば よいわけです なんといっても Tr3,Tr4のアイドリング電流の温度補償には同じトランジスタを 使うのがベストです R6~R8はアイドリング電流安定用であり 後で説明します Tr1はドライバ トランスST-23のドライブ用です この回路では電圧ゲインが高すぎますので R4にバイパスコン デンサを付けていません もっと電圧ゲインを高くしたいなら ここにバイパスコンデンサを付 けてください Tr3,Tr4の大電流によって電源電圧が変動する可能性がありますが R1,C1はこの 電源電圧変動による電圧帰還を防止するフィルタです 念のために付けたもので 必ず必要なも のではありません -30-
写真 13-3 製作したトランス式 PP アンプ Tr3,Tr4のアイドリング電流について説明します R5によってTr2のダイオードに電流を流しま すが この電流はTr2の順方向電圧を0.65Vとして ( 6V-0.65V )/10k Ω=0.54mAとなります 実際に R6両端の実測電圧は5.3mVですので 5.3mV/10 Ω=0.53mAとなります Tr3,Tr4はTr2とカレントミ ラー回路となっていますので Tr3,Tr4のコレクタ電流もほぼ同じとなります 実測では R7,R8両 端電圧が 5.6mV 5.3mVですので 確かにこのようになっています Tr2,Tr3,Tr4はこのようにカ レントミラーとなっていますので 極力密着して配置する必要があります 密着して配置すると 例えばTr3が発熱してもTr2も同じ温度になりますので Tr3のアイドリング電流が異常に大きくな ることがありません もしTr2,Tr3,Tr4が全く同じトランジスタで かつ完全に密着されていれば エミッタに入れた 抵抗 R6,R7,R8は不要です ですが実際には 各トランジスタの VBE-Ic特性が多少なりとも違いま すし また温度も違ってきます そうするとコレクタ電流に差が生じますが これらの抵抗によ り この差を小さく抑えることができます 例えばTr3のコレクタ電流だけが異常に大きかったと します そうすると R8両端の電圧も大きくなりなりますが これはベース電流を減らし よっ てコレクタ電流を減らすように働きます ところで この回路では電流が小さいので まず起こ らないのですが トランジスタの熱暴走という現象があります これは例えば Tr3のコレクタ電 流 Tr3が温まる Tr3のhFEが大きくなる コレクタ電流が増す Tr3がますます温まる といっ た正帰還でTr3が異常に発熱して壊れる現象です この回路のようにR8があると この現象も抑え -31-
られます この抵抗は大きい程 以上の効果が大きくなりますが ここでの電圧降下の分だけ信 号電圧が小さくなりますので むやみに大きくできません 図 13-43 に示す1kHzの入力信号をつないだときの出力波形を図 13-44 に示します 図 13-21と同じ く このアンプの電圧ゲインは大きいので 入力信号の出力インピーダンスRoは470Ωにしていま す 図 13-45には このときのTr1とTr3のコレクタ電圧波形を示します Tr3は半分の周期しか働 いていないので Tr3のコレクタ電圧波形は半波整流のような波形になるのではと思ってしまいま すが トランスでTr4のコレクタと結合しているので このような全波の波形となります Tr3の コレクタ電圧 ( ピーク値 ) は約 4Vですので だいたい これくらいが最大の出力です 図 13-44 出力波形 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-45 各コレクタ電圧波形 ( 上 : Tr3 下 : Tr1) 図 13-44より電圧ゲインは 950mV/110mV=8.6倍になります これを計算で求めてみます まずTr1 のコレクタ電流 ( 信号 ) を求めます Tr1の入力インピーダンスは高いので ベース電圧はほぼ入力 信号電圧です このベース電圧が ほぼR4の両端電圧になりますので Tr1のコレクタ電流は110m V/1k Ω=0.11mAとなります ちなみに直流のコレクタ電流は この電流より十分大きい0.7mAに設 定しています このコレクタ電流がトランスT1を介して Tr3,Tr4のベース電流になります です から Tr3,Tr4を歪みの小さくなる定電流ドライブをしていることになります Tr3,Tr4は同じ回 -32-
路ですので ここではTr3で考えます Tr3のコレクタ抵抗は8Ω 3.9 3.9=120Ωですから Tr3 のコレクタ電圧は 0.11mA 2 200 120 Ω=5.3Vとなります ここで 2はトランスT1の巻き数比が 1:0.5のためです また 200はhFEですが B級バイアスですので直流の電流増幅率 hfeを使用しま した 8Ω 両端では5.3V/3.9=1.4Vです ですから計算での電圧ゲインは 1.4V/110mV=13倍となりま す 以上の計算ではトランスでの損失を全く考慮していませんので このように実測の 8.6倍に比 べ随分大きくなります なお図 13-44 には 図 13-11 や図 13-23のように信号間の位相差が認められ ません これはトランスに流している直流電流が小さいために トランスのインダクタンスが低 下することがないためと思われます ところで図 13-45を見ると Tr1のコレクタ電圧は 上がなまった波形になっています これは 電流が大きくなると Tr3,Tr4の入力抵抗が小さくなるためです B級バイアスなので この入力 抵抗は非線形の抵抗です なお 電圧がこのように歪んでいますが 電流は歪んでいないのは 図 13-21のときと同じです ここで re=0としてtr3の入力インピーダンスを計算すると hfe R8 =200 10 Ω=2.0kΩです ここでも B級バイアスですので直流の電流増幅率 hfeを使用します Tr1 のコレクタの負荷は トランスT1の巻き数比の 2乗を掛けて 2.0kΩ 2 2=8.0kΩとなります T r1のコレクタ電圧は これにコレクタ電流 0.11mAを掛けて 8.0kΩ 0.11mA=880mVとなります この計算結果は だいたい図 13-45 と同じになりましたが あくまで参考的な計算です 以上 アイドリング電流が0.5mAのときの波形について述べましたが この電流を小さくすると どうなるでしょうか 図 13-46にTr3のドライブ電流を示します ここでIdはアイドリング電流で す Tr3のベース電流 ibは図のように流れますが このとき実際はIdが小さくなります ですから Idはibより必ず大きい必要があります ibの最大値は前述したように 0.11mA 2=0.22mAでしたか ら Idはこれより大きくしておかなくてはなりません -33-
図 13-47 アイドリング電流 0.1mA のときの出力波形 ( 上 : 出力 下 : 入力信号 ) 実際にR5を大きくしてIdを0.1mA にしたときの出力波形を図 13-47に示します このようにアイ ドリング電流を0.22mAより小さくすると ピークが鈍った波形となってしまいます ですから 図 13-43では余裕をみて0.5mAに設定したのです では 図 13-46で Tr2 R6の直列回路にバイパスコンデンサを付ければよいのでは と思ってし まいますが これはできません B級バイアスなので Tr2 R6の直列回路には 半波整流のよう に一方向の電流しか流れていませんので バイパスコンデンサには直流電圧が発生してしまいま す そして この直流電圧が信号の強弱で変化するので 正常な動作ができなくなってしまうの です このことは R7,R8についてもいえることです R7,R8を大きくしてバイパスコンデンサを 付けたくなりますが これは絶対にできません では B級バイアス電圧を小さくして アイドリング電流を完全に0にするとどうなるでしょう か R5は10kΩのままで TR2を470Ωに置きかえてみます こうするとTr3,Tr4のベース電圧 ( 直 流 ) は約 0.3Vとなります ですから アイドリング電流は完全に0になります このときの出力波 形を図 13-48に示します このように B級バイアス電圧を小さくすると 当然のことながらトラン ジスタの動作しないところが発生します これをクロスオーバ歪みとよんでいます 今回は B級バ イアスの設定に同じトランジスタを用いましたので このクロスオーバ歪みは非常に発生しにく いのですが Tr2に実際のダイオードを使うときは十分注意する必要があります -34-
図 13-48 クロスオーバ歪み ( 上 : 出力 下 : 入力信号 ) 最後に重要な注意があります 今回は検討しやすいように抵抗等にICソケットを使用していま す ですから 部品の接触の信頼性がやや低下しています 図 13-43の回路において T1の黒 Tr 2のベース コレクタ Tr2のエミッタ R6 グラウンドの配線の内 どの個所が外れてもTr3,Tr4 に非常に大きいコレクタ電流が流れてしまいます 長期使用をする場合 以上の個所はソケット の使用は止めて 必ず直接半田付けをするようにお願いします SEPP アンプ ここでは図 13-41 のSEPPアンプを実際に製作します 実際に製作した回路を図 13-49に示します 図 13-41 と比べ あまり変わったところはありません 図 13-41のダイオードはトランジスタによ るダイオードに置きかえています これは前項のトランス式 PPアンプのときと同じです 各トラ ンジスタのエミッタに入れた抵抗 R2~R5は トランス式 PPアンプのときと同じ働きです ただし Tr4,Tr5 のコレクタ電流が大きいので このように小さい値しか使用できません スピーカをドラ イブするトランジスタは2SC2001と そのコンプリメンタリーである2SA952にしています これは コレクタ電流 ( 信号 ) が100mA~200mAに達するからです ヒューズについては後で説明します -35-
まず アイドリング電流について説明します VR1で入力信号がないときの出力電圧 ( R4,R5の中 点 ) を3.0Vに調整します そのときの R1両端電圧は Tr4のVBE=0.65Vとして 3V-0.65V=2.35Vにな ります ですから Tr2,Tr3に流れる電流は2.35V/R1となります Tr2,Tr3とTr4,Tr5はカレントミ ラーですので この電流はTr4,Tr5のアイドリング電流になります このとき 温度も同じにする ために Tr2と Tr4 Tr3とTr5を密着させる必要があります これはトランス式 PPアンプと同じで す R1=1kΩでは Tr4,Tr5のアイドリング電流が計算で2.35mAとなります 実測では R3両端電圧は4. 6mV R5両端電圧が5.1mVですから Tr2,Tr3の電流は 2.3mA Tr4,Tr5のアイドリング電流は2.5mA となり だいたい計算と同じです このときの出力波形を図 13-50に示します このように出力波 形は歪んだものとなります R1=470Ωではどうでしょうか このときのTr4,Tr5のアイドリング電 流は計算で4.6mAです 実測ではTr2,Tr3の電流は 5.0mA Tr4,Tr5のアイドリング電流は5.6mAとで した このときの出力波形を図 13-51に示します 多少歪みは改善されました 図 13-50 R1=1kΩのときの出力波形 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-51 R1=470Ωのときの出力波形 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-51の電圧ゲインは略 1V/35mV=29倍です これを計算してみます Tr1は小信号とみなして hie=0.88kωです re=26/5=5.2ω hfe=170 として計算しました ベース電圧 =35mV/ ( 470+880) 8-36-
80=23mVで コレクタ電圧は 23mV 470/5.2=2.1Vとなります ただし これはTr4のベース電流を 考えていないときです つまり Tr4のhFEが無限大であればこうなります Tr4はエミッタフォロ アなので 入力インピーダンスは10Ω hfeとして大きな誤差にはなりません ただし 10Ωはス ピーカの8 Ω+R4です 厳密には B級バイアスで動作しているので正確ではありませんが エミッタ フォロアの場合 VBE変化の影響は少ないので このように考えても大きな誤差になりません 使用 した2SC2001のhFEは260ですので 入力インピーダンスは2.6kΩとなります そうすると Tr1の 負荷は470Ωと2.6kΩの並列となるので 400Ωとなります これでもう一度 Tr1のコレクタ電圧を 計算すると 1.8Vとなります このとき8 Ω+R4の両端電圧もだいたいこの電圧になるので 8Ω 両 端の電圧は 1.8/10 8=1.4Vとなります 実測では1.0Vなので 随分大きくなりました これはVR1 の帰還を考えていないからです この影響は図 3-33の電圧帰還回路で説明しました この計算は 厄介なので省略しますが VR1の帰還を考えると1.4Vからさらに小さくなり 実測値に近づきます ここで図 13-50 の歪みの原因を考えます 実は この歪みは図 3-24に示した大振幅の信号を入力 したときの歪みと同じものです つまり バイアス電流が少ないので 信号によって内部エミッ タ抵抗 reが大きく変化するためです 試しに 入力信号の出力インピーダンスRoを大きくして10k Ωにしてみます もちろん R1は1kΩです このときはTr1をほぼ定電流ドライブしますので 以 上の歪みは出ないはずです 結果を図 13-52 に示します 確かに図 13-50に比べ歪みは大幅に改善 されました このとき当然 入力信号は大きくなっています 図 13-52 定電流ドライブ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 以上ではアイドリング電流を増減して出力波形の変化を調べましたが 完全にアイドリング電 流を0にしたらどうなるでしょうか 例えば Tr4,Tr5のベース間をショートします このベース 電圧をVBとすれば エミッタ電圧がVB-0.6VからVB+0.6の間 Tr4,Tr5は全く動作できません エ ミッタ電圧が VB-0.6V以下に下がって やっとTr4が VB+0.6以上に上がって やっとTr5が働きま す また Tr3のみをショートしても 同じようにTr4,Tr5の働けない電圧範囲がでてきます た だし ベース間をショートするよりはTr4,Tr5の働けない電圧範囲が狭くはなります 以上のとき の波形には 図 13-48と同じようなクロスオーバー歪みが発生します では Tr2,R2,R3,Tr3のどれかをオープンにしたらどうなるでしょうか こうすると大変なこと になります この場合 Tr1のコレクタ電流がすべてTr4,Tr5のベース電流になります ですから Tr4,Tr5のコレクタ電流はTr1のコレクタ電流の hfe倍となってしまいます Tr1 のコレクタ電流 =2. -37-
5mA Tr4,Tr5のhFE=200とすれば Tr4,Tr5のコレクタ電流は500mAに達します Tr4,Tr5それぞれ の消費電力は 3V 500mA=1.5Wになります 1.5Wでは すぐにトランジスタが壊れませんが 時間 が経つと確実にトランジスタが壊れ さらに電流が増え やがて燃焼する可能性が大となります つまり 火災が起こるかもしれない非常に危険な状態となるわけです 今回は 検討しやすいよ うにICソケットを用いていますので Tr2,R2,R3,Tr3のどれかがオープンになってしまう可能性が 高くなります このために 今回は250mAのヒューズ ( 小型のリードタイプ ) を用いています 200m Aでもかまいません なにせTr4,Tr5よりヒューズの方が高価なのですから このヒューズはTr4,T r5を守るものではありません 火災という最悪の結果を防ぐものです なお検討後 Tr2,R2,R3,T r3を確実に半田付けするのであれば このヒューズは不要ですが 検討することによってTr2,Tr3 が劣化していることも十分考えられるし また半田付けに不具合があるかもしれませんので ヒ ューズを入れておくことを強くお薦めします 図 13-49の回路の最大出力はだいたい 1V( ピーク値 ) ぐらいでした この値を大きくする方法にブ ートストラップという手法があります ブートストラップ ( bootstrap) を辞書で調べると ( 編み 上げ靴の ) つまみ皮とあります 底無し沼に落ちたある人物が まず自分の足を沼から出し 自分 のブートストラップを引っ張って沼から脱出したそうです ここから 自分で何とかする とい う意味が生まれたという説があります 電子回路では いろいろなところで いろいろな種類の ブートストラップという手法が使われますが すべて自分の出力を帰還して目的とする動作をさ せるものであり まさに底無し沼に落ちた人物の逸話のような動作になります このブートストラップの手法を用いた回路を図 13-53に示します C3がこの目的のコンデンサで す 以降では ブートストラップコンデンサとよぶことにします ブートストラップコンデンサの原理を図 13-54に示します ここでKは電圧ゲインが 1以下で 入力インピーダンスが無限大のアンプとします そうすると 図に示しますように出力が非常に大きくなるのがわかります この原理では Cの両端電圧が変化しないとしていますので C,R2の時定数は信号に比べ十分大きい必要があります なお この図のR2は図 13-53ではR6です -38-
図 13-53 の実際の出力波形を図 13-55 に示します 図 13-50に比べ入力信号が小さくなっています つまり電圧ゲインが増加しているのがわかります 思ったより電圧ゲインが大きくならないのは Tr4,Tr5の負荷が10Ωと小さく 理想的なエミッタフォロアになっていないからです ちなみに Tr4,Tr5の負荷を100Ωにすると ブートストラップコンデンサを付けると 付けないときに比べ 約 3 倍ぐらい電圧ゲインが増加します ところで 図 13-50に比べ随分歪みもよくなっています これは入力が小さくなった分 図 13-50で説明したTr1の歪みが小さくなるためです 図 13-55 ブートストラップコンデンサ有りの出力波形 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 以上ブートストラップコンデンサで電圧ゲインが増加することがわかりました しかし ブー トストラップコンデンサのよいところは 実はこの電圧ゲインが増加することではありません それは 出力の最大電圧が大きくなることなのです 図 13-54を見ると R2とCの交点はVccより大 きくなるのがわかります これはエミッタフォロアのドライブ電圧の増加を意味しています 図 1 3-49では最大出力が1.0Vくらいでしたが 図 13-53 では1.3Vくらいに上昇します 図 13-40(a) の説 明で この回路の弱点は最大出力が小さくなることであると説明しましたが ブートストラップ コンデンサを付けることにより 多少この弱点は解消されます 最後にTr4,Tr5の最大消費電力を ( 13-2) 式で計算しておきます Vcc=3V R=10Ωを代入すると 91mWとなります 2SC2001 2SA952の最大コレクタ損失は600mWですので 全く問題はありません -39-
負帰還 SEPP アンプ 図 13-49 や図 13-53の回路では明らかな歪みがありました しかし 実際にこれらのアンプでラ ジオ信号を聞くと あまり歪みは感じません それは ラジオ信号の音声帯域が狭く かつ使用 しているスピーカが小型のためです ですから これらのアンプの歪みをよくする必要がないと もいえるのですが ここは電子回路の勉強のために 負帰還をかけて より歪みのないアンプを 製作したいと思います 負帰還のために図 13-53 の回路に差動増幅回路を追加することにします その回路を図 13-56に 示します Tr6,Tr7が追加した差動増幅回路です R12 R13で負帰還をかけています 例えば入力 が正の周期では Tr6のコレクタ電流が減り その結果 出力 ( R4とR5の中点 ) が大きくなりますが その電圧がR12,R13でTr7に帰還されます そうすると Tr7のコレクタ電流が減りますので Tr6 のコレクタ電流が増すことになります つまり 負帰還になるわけです R12はTr1のバイアス電 流を安定にする役目も兼ねています C6は負帰還をかけることに起因する発振現象の防止用です 図 13-57に差動増幅回路のバイアス電流を示します Tr6のコレクタ電流は図に示すように0.21m Aです この電流はTr1のベースを十分ドライブできる値であればよいのですが ある程度流さな いと差動増幅回路の電圧ゲインが小さくなってしまいます そこで R11の値で最適な値に設定し ます Tr6のコレクタ電流が0.21mAですから Tr7のコレクタ電流も0.21mAにする必要があります 結局 合計のコレクタ電流は0.42mAとなります VR1はこの電流になるように調整します 図に示 しますように VR1とR10にかかる電圧は2.35Vですので 2.35V/0.42mA=5.6kΩがVR1+R10の値とな ります 実際のVR1の調整は Tr6,Tr7のベース電圧が同じになるようにします R8,R9によってTr6のベ ース電圧が3Vになっていますが Tr7のベース電圧も3Vになるようにするわけです なお VR1を 動かしてもTr7のベース電圧は緩やかにしか変化しませんので 調整は簡単です R8=R9=10kΩ R 12=22kΩのときの調整後の値は 各ベース電圧は2.95Vで 出力 ( R4,R5の中点 ) の電圧は2.92Vでし た R12で電圧降下しますので出力の電圧は多少小さくなります -40-
この差動増幅回路の逆相の電圧ゲインを求めてみます 差動増幅回路の電圧ゲインについては 図 11-24で説明しました Tr1の入力インピダンスは約 1.9kΩです Tr1の内部エミッタ抵抗 re=26/ 2.3=11Ω hfe=170として計算しました この抵抗とR11との並列抵抗は1.2kΩになります Tr6の 内部エミッタ抵抗 re=26/0.21=124ωですから 求める電圧ゲインは1.2k Ω/124 Ω =9.7倍となりま す ただし 入力はシングルエンドで加えているので この半分の 4.8倍となります 一方 同相 の電圧ゲインはTr1の入力インピダンスとR11との並列抵抗である1.2kΩを ( VR1+R10) 2で割った 値なので 1.2k Ω /( 5.6 2) k Ω =0.1倍となり まあまあ満足できる小さい値になります 以上の定数での最終の回路を図 13-58 に 製作したものを写真 13-4に示します なお この基板 で前項の負帰還なしのSEPPアンプも検討しました C6は発振防止用のコンデンサです このコン デンサがなくても発振しないのですが 最も厳しい条件である スピーカの替わりに 1000p Fのコンデンサを付けると約 4MHzで強く発振します このときにでも発振しないように このコン デンサを付けています -41-
写真 13-4 製作した負帰還 SEPP アンプ 負帰還をかけないときの裸の電圧ゲインは 差動増幅回路が 4.8倍 SEPP回路が約 50倍ですから トータル 240倍となります ですから裸の電圧ゲインは十分といえます この回路の負帰還をかけ たときをOP アンプ風に書くと 図 13-59となります この図より負帰還をかけたときの電圧ゲイン は ( R12+R13 )/R13となるのがわかります 実際の値を代入すると 11倍となります 実際の波形を図 13-60に示します 電圧ゲインは 1.5V/130mV=11.5倍で計算通りです 歪みも全 くなく ラジオのアンプとしては申し分がありません 試しに図 13-61のような複雑なバースト波 を入力してみましたが この場合も歪みのない出力が得られました -42-
図 13-60 負帰還 SEPP アンプの電圧波形 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) 図 13-61 バースト波の入力 ( 上 : 8Ω 両端 下 : 入力信号 ) ふじひら ゆうじ RFワールド ウェブ ブックス ラジオで学ぶ電子回路 第 9章再生 超再生ラジオ () C Yuji Fujihira 2009 http://www.rf-world.jp/ -43-