2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

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センタリング

Microsoft PowerPoint 第2回創生会議用資料(送付用)[1]

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資料 2 2 需要予測 2-1 需要予測モデルの構築地下鉄などの将来の交通需要の見通しを検討するに当たっては パーソントリップ調査をベースとした交通需要予測手法が一般的に行われている その代表的なものとしては 国土交通省では 近畿圏における望ましい交通のあり方について ( 近畿地方交通審議会答申第 8 号 ) ( 以下 8 号答申 と略す ) などにおいて 交通需要予測手法についても検討が行われ これを用いて提案路線の検討が行われている 本検討においては 8 号答申における需要予測手法と同等の需要予測モデルを構築して 将来需要の見通しの分析を行うものとする なお 8 号答申については 目標年次を 2015 年に控え 昨年度から近畿運輸局において フォローアップ調査が行われており その中で需要予測手法の見直しなども行われていること さらに交通局では昨年度に 地下鉄第 8 号線 ( 井高野 ~ 今里間 ) 事後評価 が実施されていることから 可能な限りこれらを踏まえた需要予測モデルを構築するものとする 平成 16 年 10 月 近畿地方交通審議会答申第 8 号 需要予測モデル 全目的における推計 バリアフリー指標の評価 地下鉄第 8 号線 ( 井高野 ~ 今里間 ) 統計の更新 発生 分布モデル見直し パラメータ再推定 その他 事後評価 平成 24 年度 ~ 近畿地方交通審議会答申第 8 号 フォローアップ調査モデル 本検討での 需要予測モデル 注 ) フォローアップ調査においては 8 号答申以降の社会情勢の変化を考慮する等により 予測精度の向上等を目的として需要予測モデルの構築が行われている ただし フォローアップ調査は平成 25 年 11 月時点においても検討中であることから 平成 25 年 3 月時点の暫定モデルの検討結果を踏まえて 本検討の需要予測モデルを構築する 図 2-1 本検討での需要予測モデルと 8 号答申モデルとの関係 資料 2-1

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中するか ) 2 分布交通量 ( どこから, どこへの交通がどれくらいか ) 3 交通手段別交通量 ( どの交通手段をどれくらい利用するか ) 4 鉄道路線別交通量 ( どのような鉄道路線の経路をどれくらい利用するか ) に分けて予測を行う方法 地域別人口 パーソントリップ結果 ネットワーク条件 ( 所要時間 運賃 運行本数など ) 発生集中交通量 ( 交通が, どこで, どのくらい発生 集中するか ) 分布交通量 ( 発生した交通が, どこからどこへ向かうのか ) 交通手段別交通量 ( どの交通手段をどれくらいの割合で利用するか ) 鉄道バス自動車徒歩 二輪 鉄道のサービス向上による交通手段の変更を考慮 鉄道路線別交通量 ( どの鉄道路線 経路をどれくらいの割合で利用するか ) 図 2-2 本検討の需要予測モデルの全体構造 資料 2-2

図 2-3 四段階推定法の概要 なお 本検討における需要予測モデルも 上記に示す四段階推定法とし 8 号答申の需 要予測モデルとも同じ構造である 資料 2-3

2-3 予測条件の設定 (1) 予測年度の設定と予測年度以外の輸送人員の算出 1 予測年度の設定需要予測を実施する年度は 現況予測時点は平成 22 年 将来予測時点は平成 42 年とする 現況の平成 22 年においては 国勢調査やパーソントリップ調査等の統計調査が実施されていることから 地下鉄線のみではなく 周辺交通の現況を総合的に把握 分析することが可能である また 将来予測時点については 検討 設計 建設等を含めた新線整備に必要とされる期間を概ね 10 年として平成 37 年を開業年次と仮定し その後の需要定着にかかる期間を考慮して 中長期的な将来時点での需要予測年度を設定したものである 平成 22 年 (2010 年 ) 現況再現 ( 直近の統計調査が多く実施された年 ) 平成 42 年 (2030 年 ) 将来予測 ( 建設期間やその後の需要定着を考慮した長期年 ) なお 予測年度以外については 以下のとおりで推計を行う 2 予測年度以外の輸送人員の算出 (a) 定着モデルによる予測需要予測は 新線に関する情報が市民に 十分 認知されていることが前提とされている一方で 開業後のしばらくは まだ新線が十分認知されていないことが考えられる 需要予測手法の改善と活用方策に関する調査報告書 ( 運輸政策研究機構 ) においては 既存事例を参考に 路線の特性に基づいた需要の定着に関する伸び率 ( 定着過程予測モデル ) が検討されており 昨年度に実施した地下鉄第 8 号線 ( 井高野 ~ 今里間 ) 事後評価においても同様の傾向になっていることから この伸び率に従い 定着するものと想定する 開業年 需要の増加 需要定着年 利用促進活動による PR 浸透 沿線住民の認知 浸透 需要予測値 開業年 認知 浸透 既存事例を元にした回帰式 需要定着年 需要予測値 回帰式 f ( X ) b t N t 1 e f ( X ) b t N 0 f ( X ) be t: 開業後年数 b: 定数 ( 定期 0.3996 定期外 0) f(x): 路線の特性値 ( 新線の属性 沿線状況 PR 活動の状況等 ) N0: 初期需要 N(t):t 年における需要 逆算して開業時需要を求める 路線の特性により 需要の定着年や伸び率を決める資料 : 需要予測手法の改善と活用方策に関する調査報告書 ( 運輸政策研究機構 ) 図 2-4 定着過程予測モデルの概要 資料 2-4

2006(H18) 2007(H19) 2008(H20) 2009(H21) 2010(H22) 2011(H23) すなわち 本検討では 以下に示すように 定着を考慮して輸送人員の算出を行う 新線の輸送人員 需要予測結果 (= 定着が完了した場合の予測値 ) 認知等の要因により定着期間には顕在化されてない需要 定着過程予測モデルによる需要定着 開業後 5 年後に需要が定着するものと想定 H37 開業年 (H37 と仮定 ) H42 需要予測年 図 2-5 定着モデルを考慮した輸送人員の算出 ( 参考 ) 地下鉄第 8 号線 ( 井高野 ~ 今里間 ) 事後評価における定着過程分析結果 千人 / 日今里筋線の利用者数 70 定着モデルによる定着過程 60 50 40 30 20 36 47 52 56 57 59 10 実績値の推移 0 図 2-6 定着モデルによる定着過程と実績値の推移の比較 資料 2-5

(b) 経年モデルによる予測需要予測時点以外の時点として 例えば予測年次以降の長期的な時点では 人口の減少に伴い 新線を含めた地下鉄の利用者は減少していくものと考えられる また 長期的な沿線の人口分布を精緻に行うことは困難であること および 地下鉄の利用者は 沿線の人口のみでなく目的地の要因にも影響することから 大阪市全体の人口動向など マクロな指標に影響するものと見なすこともできる 地下鉄全線の乗車人員と人口指標との関係を見ると 乗車人員は平成 2 年度をピークに減少となっており 近年は概ね 大阪市の従業人口 との関連性が高い 千人 2,980 3,000 2,500 2,358 2,000 大阪市の常住人口 2,813 2,802 2,807 2,779 2,777 2,673 2,648 2,636 2,651 2,624 2,574 2,422 2,442 2,401 大阪市の従業人口 2,373 2,455 2,323 2,316 2,266 2,332 2,277 2,221 2,074 2,084 2,183 2,030 2,047 1,981 1,948 1,958 高速鉄道乗車人員 ( 一日平均 ) 2,730 2,738 2,714 2,692 2,665 2,677 2,629 2,602 2,621 2,599 2,469 2,526 2,430 2,472 2,375 2,346 2,350 2,363 2,381 2,355 2,325 2,320 2,293 2,307 2,281 2,252 2,097 1,978 1,908 1,866 1,500 図 2-7 近年の地下鉄の乗車人員と人口指標との関係性 地下鉄は今後も通勤利用が主体と考えられ 中長期的にも大阪市の従業人口の変化に近似した傾向を見せるものと考えられることから 地下鉄全線の輸送人員は 以下に示すとおり 大阪市の人口の変化率 ( 減少率 ) に合わせて 変化 ( 減少 ) していくものとして算出するが 平成 52 年以降は以下の理由により一定とする ( 人 ) 需要予測結果 各年 1.2% 減少 地下鉄輸送人員の変化 人口減少に応じた長期需要の減少 各年 1.2% 減少 同じ比率で減少 大阪市の従業人口 ( 将来推計値 ) 大阪市の従業人口の変化 H42 需要予測年 H52 注 ) 図中の減少の数値は仮定値 図 2-8 地下鉄輸送人員の算出方法 資料 2-6

[ 平成 52 年度以降は需要を一定とすることの妥当性 ] 1 社人研の将来人口は出生率等に基づく自然増減や 過去のトレンドに基づく社会増減をベースにした推計であり 今回の需要予測では短 中期的には既存の開発計画を府県でコントロールトータルの上で別途計上しているものの 長期的には都市間競争を勝ち抜くための都市の成長戦略等は考慮されていない 2 また 平成 52 年度以降の将来人口は推計されていない 3 一方 収支上は需要減少に伴ったコスト削減 ( サービス見直し ) や運賃値上げを見込んでいない これら総合すると 平成 52 年度以降の需要を一定とすることは妥当であると考える なお 国が実施している地方交通審議会答申の第 8 号の需要予測や なにわ筋線検討の 需要予測等では 予測年次の需要で全期間一定とされていることからも 問題ないものと 考える (c) 感度分析 予測年次 ( 平成 42 年度 ) で一定とした検討を行う 資料 2-7

(d) まとめ 定着モデルおよび経年モデルを用いての 新線区間の輸送人員の各年の算出方法を整理 したものが 以下の通りである 定着期間需要予測年需要予測年以降感度分析 表 2-1 各年の輸送人員の算出方法新線の輸送人員定着モデルを用いて 予測時点の新線の需要予測結果から定着期間の各年の定着率を乗じて算出する予測時点の新線の需要予測結果をそのまま用いる経年モデルを用いて 予測時点の新線の需要予測結果から 各年に需要の変化率を乗じて算出し 平成 52 年以降は一定とする 予測年次 ( 平成 42 年度 ) で一定とする 輸送人員 需要予測の実施 その他の方法による算出 感度分析ケース 定着モデルによる増加 経年モデルにより人口減少による利用減を表現 一定 基本ケース H37 H42 H52 図 2-9 各年の輸送人員の算出方法まとめ 資料 2-8