平成16年7月2日

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

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新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起


生物時計の安定性の秘密を解明

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

Hormone Replacement Therapy HRT H E P 2 Bioavailable E 2, pmol/l (Rochester, Minnesota) The dashed line indicates

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

卵管の自然免疫による感染防御機能 Toll 様受容体 (TLR) は微生物成分を認識して サイトカインを発現させて自然免疫応答を誘導し また適応免疫応答にも寄与すると考えられています ニワトリでは TLR-1(type1 と 2) -2(type1 と 2) -3~ の 10

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

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ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

ごあいさつ バイオシミラーの課題 バイオ医薬品は 20 世紀後半に開発されて以来 癌や血液疾患 自己免疫疾患等多くの難治性疾患に卓抜した治療効果を示し また一般にベネフィット リスク評価が高いと言われています しかしその一方で しばしば高額となる薬剤費用が 患者の経済的負担や社会保障費の増大に繋がる

( 様式甲 5) 氏 名 渡辺綾子 ( ふりがな ) ( わたなべあやこ ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲 第 号 学位審査年月日 平成 27 年 7 月 8 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題名 Fibrates protect again

研究の詳細な説明 1. 背景病原微生物は 様々なタンパク質を作ることにより宿主の生体防御システムに対抗しています その分子メカニズムの一つとして病原微生物のタンパク質分解酵素が宿主の抗体を切断 分解することが知られております 抗体が切断 分解されると宿主は病原微生物を排除することが出来なくなります

れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

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図 1 マイクロ RNA の標的遺伝 への結合の仕 antimir はマイクロ RNA に対するデコイ! antimirとは マイクロRNAと相補的なオリゴヌクレオチドである マイクロRNAに対するデコイとして働くことにより 標的遺伝 とマイクロRNAの結合を競合的に阻害する このためには 標的遺伝

日産婦誌58巻9号研修コーナー

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

平成24年7月x日

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別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

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がん登録実務について

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

2 反復着床不全への新検査法 : 検査について子宮内膜の変化と着床の準備子宮内膜は 卵巣から分泌されるステロイドホルモンの作用によって 増殖期 分泌期 月経のサイクル ( 月経周期 ) を繰り返しています 増殖期には 卵胞から分泌されるエストロゲンの作用により内膜は次第に厚くなり 分泌期には排卵後の

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

第四問 : パーキンソン病で問題となる運動障害の症状について 以下の ( 言葉を記入してください ) に当てはまる 症状 特徴 手や足がふるえる パーキンソン病において最初に気づくことの多い症状 筋肉がこわばる( 筋肉が固くなる ) 関節を動かすと 歯車のように カクカク と軋む 全ての動きが遅くな

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見 - 新規食品素材 PQQ がもたらす寿命延長のしくみを解明 名古屋大学大学院理学研究科 ( 研究科長 : 杉山直 ) 附属ニューロサイエンス研究セ ンターセンター長の森郁恵 ( もりいくえ ) 教授 笹倉寛之 ( ささくらひろゆき ) 研

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回


2. PQQ を利用する酵素 AAS 脱水素酵素 クローニングした遺伝子からタンパク質の一次構造を推測したところ AAS 脱水素酵素の前半部分 (N 末端側 ) にはアミノ酸を捕捉するための構造があり 後半部分 (C 末端側 ) には PQQ 結合配列 が 7 つ連続して存在していました ( 図 3

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

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1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

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はじめに この冊子は レトロゾール錠 2.5mg アメル による乳がんのホルモン療法を受ける患者さんが 安心して治療に取り組めるように 乳がんのホルモン療法や薬の効果 副作用について解説しています 冊子を読んでもわからないことや 不安に感じることがありましたら 担当医師や看護師 薬剤師に遠慮なくご相

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

汎発性膿庖性乾癬の解明

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

<4D F736F F D DC58F4994C5817A54524D5F8AB38ED28CFC88E396F B CF8945C8CF889CA92C789C1816A5F3294C52E646

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

DRAFT#9 2011

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

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各 位 平成 29 年 3 月 22 日 上場会社名 : 株式会社インタートレード 代表者名 : 代表取締役社長尾﨑孝博 ( コード番号 :3747 東証二部 ) 本社所在地 : 東京都中央区新川一丁目 17 番 21 号 問い合わせ : 業務執行役員 丸山與一 電話番号 : 03-4540-3002 U R L : http://www.itrade.co.jp/ 産学官共同研究 IT はなびらたけプロジェクト 研究成果のご報告 ハナビラタケの標準化と有効活性の発見 ~ ハナビラタケが女性ホルモンの代わりになることを明らかにした ~ 株式会社インタートレード ( 以下 インタートレード ) は 平成 26 年 10 月 23 日リリース ハナビラタケ共同研究開始のお知らせ のとおり 学校法人東京女子医科大学 ( 以下 東京女子医大 ) 及び国立研究開発法人産業技術総合研究所 ( 以下 産総研 ) との産学官による共同研究 ( 以下 IT はなびらたけプロジェクト ) を開始し ハナビラタケの有効成分の探究を進めてまいりました このたび 本研究において標準ハナビラタケ株の確立と有効活性の発見を行いましたので 下記のとおりご報告いたします なお 今回の研究成果につきましては関連する特許を出願しましたが 引き続きさらに詳細な有効性などの研究を継続する予定です ポイント キノコゲノムを有効成分の探索と品質管理に完了したゲノムプロジェクト 1 は一万種に上るが キノコゲノム ( カビ類も含む ) はまだ25 種程度しか決定されていない 今回 インタートレードは東京女子医大及び産総研と共同してハナビラタケの全ゲノム配列を決定した これによりインタートレードが提供するハナビラタケを標準株として確立し 今後ハナビラタケの有効成分の探索と品質管理に利用することが可能になった ハナビラタケから新しい細胞活性を発見標準ハナビラタケ株抽出物から新しい細胞活性を発見した 今回発見した細胞活性はサイレントエストロゲンと呼ばれる 従来のエストロゲン 2 活性の利点を保持し 同時にがんの増殖を活性化するという欠点を持たない活性であり その成分はエストロゲン製剤 3 抗エストロゲン剤 抗がん剤 抗動脈硬化剤 健康食品などに利用が可能であると考えられる

1. 背景これまでハナビラタケには抗腫瘍作用 血糖降下作用 免疫活性作用など多くの生理活性が報告されてきました しかしながら いずれもその有効成分は高分子多糖体のβ-グルカンによるものとして報告されることが多く その他の有効成分についてはほとんど解明されていませんでした このβ-グルカンはヒトの体内では消化 吸収されないものの 腸管免疫に作用して免疫を活性化するなど様々な生理活性を示すことが知られています インタートレードは2013 年に実施したヒト臨床試験の結果などから β-グルカンだけでは説明ができない事象があり 別の関与成分があると考えて研究を続けてまいりました 特に 産学官の共同研究であるIT はなびらたけプロジェクトで東京女子医大及び産総研が加わったことで 細胞 分子レベルの探究が可能となり ハナビラタケの有効成分に関する解明が進んでいます 4 また 女性ホルモンのエストロゲンについては その急激な減少により女性の更年期障害や様々な疾患が引き起こされることが知られています 女性のエストロゲン分泌は 20 代から30 代にピークを迎えた後 徐々に減少を続けて閉経前に急激に減少します このようなエストロゲンの欠乏によってホルモンバランスが乱れ 更年期障害の自律神経失調症状や精神症状として体調に異変が現れると言われています また 閉経後はLDLコレステロールが上昇するとともに 動脈硬化が進むことが知られていますが これもエストロゲンの欠乏が原因とされています このエストロゲンの欠乏に対する治療にホルモン補充療法があり エストロゲンを直接投与することでこれらの症状を緩和しています ところが このエストロゲンには細胞増殖活性があり 乳癌や子宮内膜癌のリスクが増大するなどの副作用が知られています そのため 細胞増殖活性がないか または副作用のリスクが低い植物由来のエストロゲン様化合 5 物を用いたエストロゲン療法が注目されています このようにエストロゲン活性を有するものの 細胞増殖作用がない化合物は サイレントエストロゲン などとも呼ばれています 2. 研究成果 (1) 全ゲノム解析によるハナビラタケ標準株の確立これまでに完了したゲノムプロジェクトは一万種に上りますが キノコゲノム ( カビ類も含む ) はまだ25 種程度しか決定されていませんでした このような中で 今回ハナビラタケでは初めて全ゲノム解析を実施しました その結果 全ゲノム配列を決定し この予測されたゲノム全長は約 34Mb( メガ塩基対 ) となり ゲノム情報には約 1 万個の遺伝子が含まれることが明らかになりました なお 今回取得した全ゲノム解析データは国立遺伝学研究所 (DDBJ) に登録しています ハナビラタケには 種レベルでの区別が簡単ではないために二つ以上の分類群が混同される場合がありますが 全ゲノム配列を決定して標準株を確立したことで 今後は同株を用いてハナビラタケの安定供給や有効成分の効果や量に関して品質管理が容易になります また 全ゲノム解析データに含まれる有用遺伝子に関する情報についても今後の利用が可能になります

(2) ハナビラタケのエストロゲン作用これまで産総研では DNA チップ 6 を利用した新しいホルモン活性測定法を確立し 様々な化学物質や天然物有効成分の評価を行ってきました 本研究で用いた DNA チップを利用した新しいホルモン活性測定法は 化学物質に特有の遺伝子の発現に対する影響をプロファイリングすることで 従来の細胞による活性評価法より高い感度の測定結果を得ることが可能になりました また 従来の細胞による活性評価法は細胞増殖を活性の根拠にするため 細胞増殖活性のないエストロゲン様化合物は検出できないという問題がありました DNA チップを利用した新しいホルモン活性測定法を利用することで 漢方薬や健康食品原料に抗動脈硬化作用などを示すエストロゲン様化合物が含まれていることを示し その一部を単離するなどの実績を上げてきました 本研究では この DNA チップを利用した新しいホルモン活性測定法を用いてハナビラタケ抽出物を検定したところ エストロゲンに似た遺伝子への影響が認められ それはタンパク質レベルでも確認することができました エストロゲン様の細胞増殖活性は認められないことから その作用は従来のエストロゲン作用とは異なる新しいメカニズムによることが明らかになりました 本研究成果によって 今後ハナビラタケが新しいエストロゲン製剤としてエストロゲン療法や創薬に利用できるだけでなく この化学物質を利用した癌のリスクのない新しいタイプのホルモン薬の開発が期待できます (3) ハナビラタケの脂質代謝改善作用マウスにハナビラタケ培養乾燥物を 10 週間連日経口投与した後 血液生化学的検査により脂質代謝を評価しました その結果 総コレステロール及び遊離脂肪酸ともに低値傾向を示しました これにより 脂質代謝の改善作用が期待できます (4) ハナビラタケの安全性評価生物学的安全性評価として ハナビラタケ培養乾燥物とハナビラタケ熱水抽出物 SCE( 抽出乾燥物 ) をマウスに単回経口投与し その急性毒性を評価しました その結果 投与後の一般状態 体重推移および剖検所見においてハナビラタケ培養乾燥物とハナビラタケ熱水抽出物 SCE( 抽出乾燥物 ) に起因する変化は認められませんでした 3. 今後の展開本研究により ハナビラタケがより安全なエストロゲン製剤として利用できる可能性が明らかになりました IT はなびらたけプロジェクトでは 有効成分の探索と利用に関する研究を継続するとともに ヒトでの有効性及び安全性をさらに詳しく検証するため ヒト臨床試験を予定しています 今後はハナビラタケのエストロゲン作用の特性を活かした製品開発を進めながら 本研究の当初目的でもありましたが ハナビラタケ抽出物及びその成分について健康食品 創薬 診断などへの利用に向けた取り組みを進めてまいります

本件に関するお問い合わせ先 本研究に関するお問い合わせ先 株式会社インタートレード IT はなびらたけプロジェクト担当 IR に関するお問い合わせ先 株式会社インタートレード 経営管理部 IR 担当 104-0033 東京都中央区新川 1-17-21 茅場町ファーストビル 3 階 TEL:03-3537-7450( 代 ) FAX:03-3537-7460 URL:http://www.itrade.co.jp/ 用語説明 1 ゲノムプロジェクト生物の DNA に書かれた全遺伝情報をゲノムと言い 生物の全 DNA 配列を決定するような研究をゲノムプロジェクトという これまでにウイルス 細菌 動物など様々な生物の全遺伝子の配列が決定されてきた 2 エストロゲンエストロゲン ( 卵胞ホルモンまたは女性ホルモン ) は ステロイドホルモンの一種で 卵巣の顆粒膜細胞などでコレステロールから作られる エストロゲンの生理機能は 乳腺細胞の増殖促進 卵巣排卵制御 中枢神経 ( 意識 ) 女性化 動脈硬化抑制などがあるが まだすべては解明されていない エストロゲン活性は 様々な生化学的 分子生物学的 細胞生物学的及び生物学的試験法により検定することが可能であり 例えば リガンド結合試験 レポーター遺伝子試験 遺伝子発現プロファイリング 酵素活性試験 ELISA による抗体試験 細胞増殖試験 微生物 動植物試験などがある これらの検定法によってエストロゲンと同様の変動が認められる化学物質もエストロゲン様化合物に含むことができる エストロゲン様化合物はエストロゲンの生理作用や遺伝子に対する影響など エストロゲンが示す作用のすべてまたは一部を示す化学物質のことであり 内在性エストロゲン 植物エストロゲン 合成エストロゲン 環境エストロゲンなど様々な化合物がこれに含まれる 3 エストロゲン製剤エストロゲン製剤とは エストロゲン ( 例えば 17β-エストラジオール ) の作用を模倣または阻止する多数の化合物のことで 狭義として エストロゲン療法に利用する薬剤のことを言う エストロゲン製剤には エストロゲン受容体に結合し エストロゲンと同じ作用を示す化学物質 ( エストロゲン受容体アゴニスト ) と エストロゲンのエストロゲン受容体への結合を阻害する またはエストロゲン受容体に結合したエストロゲンの作用を妨害する化合物 ( エストロゲン受容体アンタゴニスト ) がある エストロゲン製剤の例にはタモキシフェンおよびラロキシフェンがある タモキシフェンおよびラロキシフェンは 骨粗鬆症 心血管疾患 乳癌などの治療や予防のために開発された しかし いずれも 顔面潮紅などの副作用を誘導し タモキシフェンは子宮内膜癌の促進など 様々な副作用を持つ このため

新たなエストロゲン製剤の開発が製薬企業にとって重大な課題となっている 4 更年期障害更年期障害とは 卵巣機能の低下によるエストロゲンの欠乏に基づくホルモンバランスの崩れにより起こる症候群で 自律神経失調症様の症状 ( 脈が速くなる 動悸がする 血圧が激しく上下するなど ) や ホットフラッシュ ( ほてり のぼせ ) 多汗 頭痛 めまい 耳鳴り 腰痛 しびれ 知覚過敏 関節痛や 精神的な症状 ( 不安感やイライラ ) など様々な症状を示す 現在日本では 更年期世代 ( 閉経期前後約 10 年間 ) の女性は約 2,000 万人いますが その多くがエストロゲン欠乏による心身の様々な不調を有していると言われており 更年期女性の 2~3 割が医師により 更年期障害 と診断されている 5 エストロゲン療法エストロゲン療法は 症状に対してエストロゲン あるいはエストロゲンの分泌や作用を促進または抑制する薬剤を用いる治療法で 更年期の急激な女性ホルモン減少による更年期障害の緩和やホルモン低下による骨粗鬆症の予防 あるいは 性同一性障害に対する治療などのために 不足するエストロゲンを補充したり ( エストロゲン補充療法 ) 別のエストロゲン活性化学物質を投与する( エストロゲン代替療法 ) ことで治療を行うことである エストロゲン療法の対象となる疾患あるいは症状は エストロゲン欠乏により発症または誘発される 卵巣機能不全または閉経 自律神経機能不全 睡眠周期の乱れ 認知障害 運動機能不全 気分障害 摂食障害 心血管障害などがある 一方で エストロゲン療法は 虚血性発作 心筋梗塞 血栓塞栓症 脳血管疾患 および子宮内膜癌のリスク増大を含む 様々な重篤な副作用を誘発する可能性があり これらの副作用を誘発しない天然エストロゲンなどの非ステロイド性エストロゲンや抗エストロゲン化学物質 ( エストロゲン受容体アンタゴニスト ) など 新たな化学物質を発見 合成するために膨大な研究が行われてきた 6 DNA チップ DNA チップ ( または DNA マイクロアレイ ) は 数万から数十万に区切られたスライドガラス またはシリコン基盤上に DNA の部分配列を高密度に配置し固定した分析器具である この分析器具を用いることにより 数万から数十万の遺伝子発現を一度に調べることが可能になった 得られた遺伝子全体の発現情報を遺伝子発現プロファイルと呼ぶ 以上