第3回大会記録集

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通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

日本皮膚科学会雑誌第117巻第14号

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

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抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

アトピー性皮膚炎におけるバリア異常と易湿疹化アトピー性皮膚炎における最近の話題に 角層のバリア障害があります アトピー性皮膚炎の 15-25% くらい あるいはそれ以上の患者で フィラグリンというタンパク質をコードする遺伝子に異常があることが明らかになりました フィラグラインは 角層の天然保湿因子の

_乾癬外来に通院されるみなさんへ

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

汎発性膿庖性乾癬の解明

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial


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デュピクセントを使用される患者さんへ

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

1 MRSA が増加する原因としては皮膚 科 小児科 耳鼻科などでの抗生剤の乱用 があげられます 特にセフェム系抗生剤の 使用頻度が高くなると MRSA の発生率が 高くなります 最近ではこれらの科では抗 生剤の乱用が減少してきており MRSA の発生率が低下することが期待できます アトピー性皮膚炎

本調査では アトピー性皮膚炎治療における 医師 - 患者間コミュニケーションの改善が治療継続のモチベーションを上げ 治療の満足度向上に寄与することが示唆されています サノフィジェンザイムは アトピー性皮膚炎患者さんの QOL 向上に取り組むため アレルギーに関する情報サイト アレルギー i において

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

日本皮膚科学会雑誌第122巻第7号

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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第6号-2/8)最前線(大矢)

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

スライド 1

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

資料2 ゲノム医療をめぐる現状と課題(確定版)

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

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2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

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2015 年 4 月 16 日放送 第 78 回日本皮膚科学会東部支部学術大会 3 シンポジウム1-1 Netherton 症候群とその類症 旭川医科大学皮膚科教授山本明美 はじめに Netherton 症候群は魚鱗癬 竹節状の毛幹に代表される毛の異常とアトピー症状を3 主徴とする遺伝性疾患ですが

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第 3 回日本痤瘡研究会学術大会記録集 日時 :2014 年 7 月 13 日 ( 日 )16:00~18:00 会場 : 東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート 千葉県浦安市舞浜 1-7 TEL:047-355-2411 痤瘡基礎研究 座長 : 黒川一郎先生 ( 明和病院皮膚科部長 ) 講演 1 :Kyoto Rhino Rat を用いた非炎症性痤瘡モデルの検討 演者 : 吉益隆先生 ( 有田市立病院皮膚科医長 / 和歌山県立医科大学皮膚科学教室臨床准教授 ) 講演 2 : ステロイド痤瘡とマラセチア毛包炎 演者 : 赤松浩彦先生 ( 藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座教授 ) 痤瘡臨床研究 座長 : 谷岡未樹先生 ( 京都大学大学院医学研究科皮膚生命科学講座講師 ( 現谷岡皮フ科クリニック院長 )) 講演 3 : スキンケア 演者 : 小林美和先生 ( こばやし皮膚科クリニック ( 北九州市 )) 講演 4 : 過酸化ベンゾイルの有用性 演者 : 林伸和先生 ( 虎の門病院皮膚科部長 ) 巻頭言 日本痤瘡研究会 (Japan Acne Research Society 略称 JARS) は 皮膚科医のみならず 大学や製薬会社 化粧品会社 医療機器会社などの痤瘡に関する研究者 開発担当者にもご参加いただける新しい情報の共有と意見の交換を行う場を作り 日本の痤瘡研究を発展させるために設立し 2013 年 2 月に第 1 回 2013 年 8 月に第 2 回 2014 年 7 月に第 3 回の学術大会を開催しています 皆様のご協力のおかげで第 3 回の記録集を無事にお届けできましたことを ここに感謝申し上げます 和歌山県立医大臨床准教授で有田市民病院の吉益隆先生には 日本発の面皰モデル動物である Kyoto Rhino Rat を用いたアダパレンの作用解析に関してお話しいただきました Rhino マウスに匹敵する面皰のモデル動物となり 今後の日本の企業や医学研究者の研究の一助になることを祈念しています 藤田保健衛生大学の赤松浩彦先生には ステロイド痤瘡とマラセチア毛包炎について 臨床的に類似していて鑑別が困難な場合もあるこの 2 つの疾患の発症機序の相違について考案いただきました 異なる機序で同じような 日本痤瘡研究会理事長林伸和先生 症状を示すこれらの疾患の解析が 痤瘡の発症機序の解明に役立つかもしれません 北九州の小林美和先生は 米国皮膚科学会の Acne Net をご紹介いただき エビデンスにもつづく痤瘡のスキンケアについて 洗顔から髭剃り 保湿まで事細かに説明いただきました 林伸和は過酸化ベンゾイルについて 発表されているデータを基に 有効性のエビデンスを概説させていただきました 2015 年には待望の過酸化ベンゾイルおよび 過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの合剤が承認される見込みです 今後 世界の標準治療薬であるこれらの薬剤が 日本においても定着することが望まれます 日本痤瘡研究会事務局

講演 1 Kyoto Rhino Rat を用いた非炎症性痤瘡モデルの検討 有田市立病院皮膚科医長 / 和歌山県立医科大学皮膚科学教室臨床准教授 吉益隆 尋常性痤瘡は皮膚毛包脂腺系の疾患として考えられるが その機序には不明な点が多い Kyoto Rhino Rat (Krh ) は化学変異原エチルニトロソウレ (ENU) によるミュータジェネシスを利用して作成された標的遺伝子変異ラットで面皰が出現する Rhino マウスは痤瘡モデルとして報告されているがラットを用いた痤瘡モデルの報告はない Krh が新しい痤瘡モデルになり得るかを評価し Krh の面皰における0.1% adapaleneの投与効果を評価した 12 週齢のKrh に対し 0.1% adapalene 及びadapaleneの基剤 (control) を1 日 1 回 6 回 / 週 それぞれ12 週間 左右の背部に塗布した 塗布開始から6 週後と12 週後にcontrol 群とadapalene 群にわけて臨床評価した また 表皮の厚さ 表皮直下の面皰面積 オイルレッド染色による皮脂量の評価 表皮のTransglutaminase 1の発現 SYBR Green Rt-PCRで皮疹部におけるサイトカイン産生 Propionibacterium acnes の菌量をRt-PCRで評価した 臨床的には12 週処置後にcontrol 群ではadapalene 群に比べ 明らかに面皰は拡大した 組織評価では 処置 6 週間後 12 週間後のいずれにおいても adapalene 群のほうがcontrol 群より有意に表皮は厚くなり 表皮直下の面皰面積が 有意に減少した ( 図 1) 処置 12 週後のcontrol 群では面皰の真下にある脂腺から面皰内に多量の皮脂の流入がみられ Oil red 染色では皮脂の貯留がみられた ( 図 2) adapalene 群でもHEでは面皰の下部に発達した脂腺がみられたが Oil red 染色では control 群

と比べ明らかに面皰内の皮脂の貯留低下を認めた ( 図 2) トランスグルタミナーゼ1の発現はcontrol 群 adapalene 群とも 顆粒層部に認めた また 12 週処置後のKrhの皮疹部のサイトカイン産生は TNFα IFN-γ IL-1β IL-10 IL-12aのいずれにおいても 両群間で有意差は認めなかったが IL-10とIL-12aのサイトカインに関しては adapalene 群が control 群と比べ産生増加傾向を認めた 両群において12 週間処置後の面皰部のPropionibacterium acnes の菌量の有意差は認めなかった 以上の結果から Krh は非炎症性の痤瘡モデルと考えた 0.1% adapaleneは面皰内皮脂量を直接抑制する可能性があると考えた また 0.1% adapaleneによる表皮の肥厚と面皰形成の抑制も関与し ている可能性があると思われた (COI: 研究費 0.1%adapalene, controlはガルデルマ株式会社から堤供 ) 講演 2 ステロイド痤瘡とマラセチア毛包炎 藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座教授赤松浩彦 一般臨床医が最も遭遇する機会が多いステロイド痤瘡の原因としては 副腎皮質ホルモンの全身投与があげられる その臨床症状の特徴としては [a] 全身投与 2,3 週後より発生することが多い [b] 全身投与中止により皮疹は瘢痕を残すことなく自然に消退する [c] 皮疹は顔面および前胸部 背部などに急激に発症する [d] 皮疹は紅色丘疹 膿疱から始まり これらが主な症状となり 面皰形成は少ない などである ( 図 1) 発症機序に関しては未だ明らかにされておらず ヒドロコルチゾン, デキサメタゾン, ベタメタゾン, プレドニゾロン いずれのステロイドもin vitroで Propionibacterium acnes (P. acnes) の増殖などに有意な影響を及ぼさないことが また培養ハムスター脂腺細胞を活性化しないことが判明している 一方 ステロイド痤瘡の鑑別疾患としては 尋常性痤瘡 ( にきび ) マラセチア毛包炎( 図 1) 夏季痤瘡 毛包虫性痤瘡 酒さ性痤瘡 薬剤による痤瘡様皮疹などが挙げられるが 特にマラセチア毛包炎に関しては 前胸部 背部など好発部位がステロイド痤瘡とほぼ一致している点 皮疹の性状も紅色丘疹 膿疱が主で 面皰形成が少なく酷似している点 またマラセチア毛

包炎も副腎皮質ホルモンによって誘発されることがある点 などから鑑別が困難な場合が多い マラセチアとは好脂性真菌 ( 酵母 ) で 高温 多湿で増殖しやすい特徴を有する 男性の顔面及び体幹 女性の体幹ではP. acnes に次ぐ優勢な皮膚常在菌である ヒト皮膚にはMalassezia globosa, M. restricta, M. sympodialis, M. dermatis, M. furfur の 5 菌種が常在し 性別 部位別に優勢菌種が異なることが判明している 男性の体幹では M. globosa, M. dermatis 顔面ではM. restricta が 女性の体幹ではM. globosa, M. sympodialis が多く 顔面では菌数が少ない マラセチア毛包炎の発症機序に関しても ステロイド痤瘡同様 未だ明らかにされていない 尋常性痤瘡では P. acnes 由来リパー ゼが中性脂肪を加水分解し 産生された遊離脂肪酸が毛包漏斗部の角化や炎症惹起過程に関与している可能性が また最近では P. acnes の細胞壁にあるペプチドグリカンを認識する角化細胞のToll- like receptor が活性化されることにより誘導されるインターロイキン-1α などのサイトカインの関与も注目されている マラセチアは P. acnes と同様 リパーゼを産生し 加えてP. acnes よりも高い活性を有することが判明している ( 図 2) また真菌の細胞壁にある 1,3-β-グルカンなどが 角化細胞の自然免疫誘導因子となっている可能性も否定できない 尋常性痤瘡同様 その発症機序の一端をマラセチア由来リパーゼ およびマラセチアによるケラチノサイトを介しての自然免疫反応の誘導が担っているのかも知れない いず れにしろ 今後のさらなる検討が待たれる 近年 ステロイド痤瘡は組織学的にはマラセチア毛包炎であるとの報告もある ステロイド痤瘡とマラセチア毛包炎は 発症機序は異なるが 結果的には同一の病態をとるのかもしれない M.globosa 6 株 その他のマラセチア各 4 株によるデータ P. acnes は P. acnes JCM 6425( D3 ) 分散液をマラセチアと同じ濁度で調整した比較データ ( 同一濁度の時の菌数比はマラセチア 1 に対してアクネ菌 100 ) 1) M. furfur のリパーゼ活性を 100 とした時の比を表す Mean ±SD * p< 0.05 ( vs. M. sympodialis, M. dermatis, M. furfur, P. acnes ) # p < 0.05 ( vs. M. furfur, P. acnes )

講演 3 スキンケア こばやし皮膚科クリニック ( 北九州市 ) 小林美和 皮膚疾患の治療には 患者が自ら行う日常のスキンケアも重要である 特に痤瘡スキンケアへの関心は高く 患者は積極的に関与する また近年は中高生 男性においてもスキンケア製品の使用が増えており スキンケア指導は年齢 性別を問わず必要になっている 一方で 痤瘡のスキンケア効果に関する科学的な根拠は多くないため 臨床現場でスキンケア指導を行う際に困惑する場面も多い そこで 米国の皮膚科学会が開設している * Acne Net でとり上げられているスキンケアに関する情報を中心に紹介した よくある間違ったケアとしては 収斂用化粧水による脱脂 スクラブやブラシ洗顔による洗浄 油分を多く含むヘアケア製品の使用 ニキビを潰すこと 油分の多い化粧品 アルコールによる拭き取り 日焼け 顔を触る癖 が挙げられる ( 図 1) ガイドラインの中では1 日 2 回の洗顔習慣が推奨されている これは 1 日 2 回洗顔から1 日 1 回に減らしたグループは悪化し 1 日 4 回に増やしたグループは継続できなかったが 1 日 2 回洗顔を継続したグループは痤瘡が改善した という試験結果が元になっている 不潔にするとニキビができると思い込み 必要以上に洗顔を行う患者もしばしばみられるため 洗顔 *Acne Net (http://www.skincarephysicians.com/acnenet/index.html) の回数を制限することもあるが あるが 痤瘡用に開発された基礎汗や埃で汚れた場合は 1 日 2 回の化粧品も痤瘡治療の補助として有洗顔にこだわらず速やかに除くこ用であることが確認されている とが好ましい なお 塗布の順序について 海外男性患者においては 洗顔と同の痤瘡治療外用薬の治験では外用時にひげ剃りについての指導も必薬の後で保湿剤を塗布しており 要になる 電気カミソリか安全カ本邦で行われた治験では先に保湿ミソリを使用し 常に刃こぼれの剤を塗り 外用薬を塗布している ないカミソリを使用する また深現時点では塗布の順序による効果剃りを避け 痤瘡の丘疹をヒゲとの差を評価する試験は行われてい一緒に剃り落とさないように 注ないが いずれの順序でも外用薬意する 特に皮膚だけでなく カの治療効果は十分に示されている ミソリを清潔に保つことが重要で紫外線防御に関しては サンスクある リーン剤塗布による皮膚の閉塞感保湿ケアは レチノイド 過酸から 痤瘡患者では塗布をいやが化ベンゾイルなどの外用薬によるることがしばしばある しかしト乾燥刺激症状を緩和する目的で重レチノインおよび過酸化ベンゾイ要である 外用薬を用いる場合もル外用 テトラサイクリン内服中

には 紫外線暴露による副作用の発現が懸念されるため 日焼けをしないよう注意が必要である メークアップに関しては 油分の少ない ノンコメドジェニック ハイポコメドジェニックテスト済みの製品を勧める 適切にメークを行うことで治療を妨げること無くQOLの向上をはかれため 一律に化粧を禁止する必要はない 講演 4 過酸化ベンゾイルの有用性 虎の門病院皮膚科部長 林伸和 過酸化ベンゾイルは 海外では古くから用いられている痤瘡治療薬の一つで 酸化作用により 痤瘡桿菌に殺菌的に作用する 臨床的に面皰も改善することから ピーリング作用があると考えられている 過酸化ベンゾイルは耐性菌の報告がなく 海外での長い使用経験から有効性と安全性が確立しているため 維持療法として使用できる利点がある ( 図 1) 内外で過酸化ベンゾイルを強く推す動きは 耐性菌の増加に関係している 英国 スペイン ギリシャなどでは 外来受診痤瘡患者 から検出される痤瘡桿菌の半数以上が薬剤耐性菌であり 社会的問題となっている 日本では 薬剤耐性痤瘡桿菌の検出率は20% 程度であるが 今後海外と同様に高くなることが懸念されている 海外のガイドラインでの過酸化ベンゾイルの位置づけは 2009 年に発表されたGlobal allianceによる痤瘡治療アルゴリズムでは 丘疹 膿疱のある中等症の痤瘡や結節のある中等症の痤瘡の第一選択薬 結節型や集簇性の重症な痤瘡でも経口イソトレチノインに変わる治療に含まれている また 2011 年に作成されたヨーロッパのガイドラインでは 軽症から中等症の丘疹膿疱型痤瘡に対して 過酸化ベンゾイルとアダパレンの合剤あるいは 過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの合剤が強く推奨され 過酸化ベンゾイル単剤も推奨されている ( 表 1) 過酸化ベンゾイルは 日本では現在未承認であるが 日本皮膚科学会から厚労省に早期の臨床試験の実施と承認を求める申請がなされ すでに臨床試験が終了し 現在承認申請中である 過酸化ベンゾイルは1966 年の報告では10% の濃度が使用さ

れているが その後 2.5% 5% 10% を比較した臨床試験で 2.5% でも有効性が変わらないこと 10% では副作用の頻度が高いことが報告された (Mills OH Jr et al. Int J Dermatol. 1986;25: 664-7) 過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの比較では 過酸化ベンゾイルが高い有効性を示すが 表皮剥奪や乾燥の副作用も多く (Swinyer LJ et al. Br J Dermatol. 1988; 119:615-22.) 過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンの合剤では それぞれの単剤よりも高い有効性を示し 過酸化ベンゾイルと同様の副作用を示す (Lookingbill DP et al: J Am Acad Dermatol. 1997; 37: 590-5., Leyden JJ et al : Am J Clin D e r m a t o l. 2 0 0 1 ; 2 : 33-9, Thiboutot D et al; J Am Acad Dermatol. 2008; 59: 792-800.) 過酸化ベンゾイルとアダパレンの合剤についても いずれの単剤よりも高い効果を示し アダパレンと同様あるいはそれよりも高い副作用を示す (Gollnick H.P.M. et al: Br J D e r m a t o l. 2009; 161:1180-9.) 国内で行われた1% クリンダマイシンと3% 過酸化ベンゾイルの合剤をもちいた臨床試験がホームページで公開されている その結果では1% クリンダマイシン単剤よりも高い有効性を示し 1 日 1 回でも高い効果を示している 過酸化ベンゾイル単独の臨床試験も終了しており 現在投稿中である これらのデータをもとに今後過酸 化ベンゾイル承認が行われるものと期待される 過酸化ベンゾイルは 乾燥や表皮剥離などの副作用がある また 日本でも歯科材料として使われていて パッチテストでも2% 程度の陽性率が報告されている 発売後には副作用についても注意しながら使用していきたい

研究会役員 理事長 林 伸和 虎の門病院皮膚科部長 理 事赤松浩彦 藤田保健衛生大学医学部応用細胞再生医学講座教授 窪田泰夫 香川大学医学部皮膚科学教室教授 黒川一郎 明和病院皮膚科部長 小林美和 こばやし皮膚科クリニック副院長 谷岡未樹 谷岡皮フ科クリニック院長 古村南夫 久留米大学医学部皮膚科学教室准教授 山本有紀 和歌山県立医科大学皮膚科准教授 監 事古川福実 和歌山県立医科大学皮膚科教授 顧 問川島眞 東京女子医科大学皮膚科教室教授 宮地良樹 滋賀県立成人病センター病院長 ( 五十音順 ) 第 1 回理事会日時 :2012 年 6 月 2 日 ( 土 ) 会場 : 国立京都国際会館 Room J 第 2 回理事会日時 :2012 年 10 月 13 日 ( 土 ) 会場 : 大阪国際会議場 1102 会議室 第 3 回理事会日時 :2013 年 6 月 16 日 ( 日 ) 会場 : パシフィコ横浜会議センター 第 4 回理事会日時 :2013 年 8 月 11 日 ( 日 ) 会場 : 神戸国際会議場 第 5 回理事会日時 :2014 年 6 月 1 日 ( 日 ) 会場 : 国立京都国際会館 理事会 研究会 第 1 回研究会日時 :2013 年 2 月 24 日 ( 日 ) 会場 : トラストシティカンファレンス丸の内 Room3+4 第 2 回研究会日時 :2013 年 8 月 11 日 ( 日 ) 会場 : 神戸国際会議場 ( 第 31 回日本美容皮膚科学会会場にて開催 ) 第 3 回研究会日時 :2014 年 7 月 13 日 ( 日 ) 会場 : 東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート ( 第 32 回日本美容皮膚科学会会場にて開催 ) 第 4 回研究会 ( 予定 ) 日時 :2015 年 7 月 26 日 ( 日 ) 会場 : 大阪国際会議場 ( グランキューブ大阪 ) ( 第 33 回日本美容皮膚科学会会場にて開催 ) お問い合わせ 日本痤瘡研究会事務局 105-8470 東京都港区虎ノ門 2-2-2 虎の門病院皮膚科内 TEL:03-3588-1111 E-mail:japan.acne.research@gmail.com