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ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

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研究課題 : T3 または T4 の StageII/III 直腸癌に対する術前化学療法としての mfolfox6 療法の有効性および安全性の検討多施設共同第 II 相臨床試験 に関する計画書研究実施責任者埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科石橋敬一郎 1. 背景, 意義, 目的 背景 意義 直腸癌に対する標準的集学治療法は未だ確立されていない. 手術療法としては, 欧米では, 直腸間膜内の全リンパ節を郭清する全腸間膜切除術 (TME :total mesorectal excision) が標準術式であり, 周術期の放射線化学療法との併用により局所再発率の低下が認められている. 一方, 本邦では,TME または TSME(tumor specific mesorectal excision)+ 骨盤内側方リンパ節郭清で良好な成績が得られているため, 標準的治療法としている施設が多い. しかしながら, 側方リンパ節郭清には, 射精機能, 排尿機能, 勃起機能を犠牲にすることがあり, 側方郭清は実施せずに TME,TSME のみを施行している施設も認められる. 一方, 直腸癌に対する放射線 ( 化学 ) 療法は, 周術期の補助療法として実施されている. 欧米では, 術前放射線療法と手術単独との比較試験が報告され, 術前放射線療法は, 手術単独と比べ有意に局所制御率が良好であると報告された 1). その後, 術前放射線療法に化学療法を併用する意義が検討され, 化学療法併用群は, 局所再発率を有意に抑制し, 術前放射線化学療法が標準的治療法となっている 2). 一方, 本邦では欧米に比べ手術単独の局所再発率が低いため, 放射線化学療法の大規模な臨床試験はほとんど実施されていないのが現状である. また, 側方郭清を積極的に実施している施設では, 直腸癌の局所再発率が低く, あえて放射線化学療法を導入する必要性がないと判断している場合がほとんどである 3). しかし, 直腸癌は治癒切除後の局所再発率が高い. 局所再発例は狭い骨盤腔に再発し, 周囲臓器や骨盤壁へ容易に進展することから, 外科的再切除が困難なる場合が多い. また, 局所再発に加え血行性転移も認められ, 結腸癌と比較し予後が悪い. 以上のことより, 直腸癌の治療には改善の余地があると考え, 臨床試験の対象集団とした. また, 直腸癌 RS は, 結腸癌の治療に準じ, 術後補助化学療法が標準治療となる. よって本試験では StgaeII/III 直腸癌の Ra,Rb 症例を対象とした. 直腸癌に対する術前化学療法の報告としては,StageII/III の直腸癌を対象に FOLFOX+bevacizumab(BV) 療法が報告されている. 主要評価項目の R0 切除率は 100%,pCR 率も 27% と良好な局所制御率が報告された 4). 一方,FOLFOX 療法は, 結腸癌の術後補助化学療法においても, その有用性が報告されている.StageII/III の結腸癌を対象とした MOSAIC 試験では,5FU/LV 療法と FOLFOX 療法が比較され,FOLFOX 療法が無病生存期間と生存期間を有意に延長したと報告された 5). また MOSAIC 試験に加え,NSABP-C07 試験,XELOXA 試験においてもオキサリプラチンの術後補助化学療法に対する有用性が示されている 5),6). 現在, FOLFOX 療法は, 結腸癌の術後補助化学療法で最も推奨されている治療法である. 直腸癌の治療には性機能 排尿機能 排便機能の温存が必要であり, 奏効率が高く, 切除率の向上に寄与する化学療法を術前に用いることにより, 安全な手術が可能となる. また直腸癌は, 治癒切除後に局所再発や肺 肝転移などの血行性転移が認められることから, 術後補助化学療法に有効な治療法を用い, 再発を抑制することが重要である. これらのことから FOLFOX 療法が本試験の化学療法に最適だと判断した. 以上より, 本試験では T3 または T4 の StageII/III 直腸癌を対象とし, 術前化学療法とし 1

ての mfolfox6 療法の有効性と安全性の検討することで, 今後の直腸癌治療の有用な治療法を確立 できることが期待できる. 目的 T3 または T4 の StageII/III 直腸癌を対象とし, 術前化学療法としての mfolfox6 療法の有効性と安 全性の検討する. 2. 方法 (1) 対象埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科で T3 または T4 の StageII/III 直腸癌患者のうち, 本研究についての同意が得られた症例とする. (2) 方法登録後 2 週間以内に mfolfox6 療法開始し,4 コース実施する.4 コース施行後に CT で評価し, 原病の悪化が認められなかった場合は 2 コース追加する. 原病の悪化が認められた場合は, 直腸癌原発巣切除を行うこととするが, 直腸原発巣切除が不可能な場合はプロトコール治療を中止し適切な治療を行う. なお, 骨盤 CT は浣腸を実施した後, 背臥位で原則として造影剤を用いて撮影する. mfolfox6 療法以下のスケジュールを 2 週間 1 コースとして投与を行う. オキサリプラチン :1 バイアルに 5% ブドウ糖注射液 20~50mL を注入し溶解後,85mg/ m2を 5% ブドウ糖注射液 250mL~500mL に注入し 120 分かけて点滴静注する. レボホリナート :200mg/ m2を 5% ブドウ糖注射液 250mL に溶解し,120 分かけて点滴静注する. フルオロウラシル急速投与 :400mg/ m2を 2~4 分かけて静脈内急速投与する. 持続点滴 :2,400mg/ m2を 5% ブドウ糖注射液あるいは生理食塩液に溶解し 46 時間かけて持続静注する. なお,5-FU の持続点滴静注は携帯型ディスポーザブル注入ポンプまたは輸液ポンプによる投与を可とする. 5-FU : 400 mg / L-OHP:85 mg / m2 5-FU:2,400 mg / m2 l-lv:200 mg / m2 2 時間 46 時間 << 評価項目, データ収集 解析 >> 術前奏効率 (Overall Response Rate : ORR) を主要評価項目とする. 副次的評価項目は以下のとおりである.(1) 組織学的効果 (2) R0 切除率 (3) pcr 率 (4) Down Stage 率 2

(5)3 年無病生存率である. 安全性の解析に血液検査を行うが, 通常の診察の一環として行い, その検 体は中央検査室で測定し, そのまま検体を通常通り破棄する. 3. 試験期間 症例集積期間は倫理委員会承認後から 2013 年 1 月までと計画されている. 観察期間は倫理委員会承認後から 2016 年 1 月までとする. 4. 予定症例数集積目標症例数は全国 50 例である. 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科では倫理委員会の承認後,5 例の集積 参加を予定している. 5. 患者選択基準 除外基準, 研究に参加されなかった場合の治療について << 選択基準 >> 1. StageII/III 直腸癌の症例 2. T3 または T4 の症例 *1 3. 直腸原発巣に対する手術歴がない症例 4. 直腸原発巣に対し化学療法の既往歴がない症例 5. 直腸原発巣に対し放射線療法の既往歴がない症例 6. 年齢が 20 歳以上 80 歳以下の症例 7. Performance Status(ECOG) が 0~1 である症例 8. 登録前 1 週間以内のデータで, 以下の骨髄, 肝臓, 腎機能を有する症例 1 白血球数 :4,000~12,000/mm 3 2 好中球数 :2,000/ mm 3 以上 3 血小板 :100,000 /mm 3 以上 4 ヘモグロビン 5 総ビリルビン 6 AST(GOT) 7 ALT(GPT) 8 クレアチニン :8.0g/dL 以上 :2.0mg/dL 未満 :100IU/L 以下 :100IU/L 以下 : 施設基準値上限以下 9. 化学療法後 2~6 週以内に直腸原発手術が開始できる症例 10. 本治療の被験者となることを本人により文書にて同意が得られている症例 * 狭窄症例における人工肛門造設は可とする. << 除外基準 >> 1. 活動性の重複がんを有する症例 2. 感覚器系の末梢神経障害を有する症例 3. コントロール不良な高血圧を有する症例 3

4. コントロール不良な糖尿病を合併している症例 *2 5. 著しい心電図異常が認められる, 又は臨床上問題となる心疾患を有する症例 6. 重度の肺疾患 ( 間質性肺炎, 肺線維症, 高度の肺気腫等 ) を有する症例 7. 臨床上問題となる精神障害, 又は中枢神経障害の既往のある症例 8. 下痢 ( 水様便 ) のある症例 9. ステロイド剤の継続的な全身投与 ( 内服または静脈内 ) を受けている症例 10. 妊婦又は授乳婦及び妊娠の可能性 ( 意志 ) のある婦人 11. 試験担当医師が本治療の対象として不適当と判断した症例 * うっ血性心不全, 症候性冠動脈疾患, コントロール不良な不整脈, 過去 12 ヵ月以内に発症した心 筋梗塞の既往歴等を有する症例は登録不可とする. << 研究に参加されなかった場合の治療について >> 臨床試験への参加を希望されない場合は, 手術前に抗がん剤治療を行わず, 直腸がんの手術を行う. 6. 期待される利益及び不利益計画書 (p.28-) に記載された有害事象の発現が想定される. しかしながら, これは実地医療と同様の程度で起こりうることであり, 試験に参加したという理由で変わるものではない. 逆に, 計画書 (p. 23 - ) に記載されたとおり, 減量, 中止規準を設け, 試験グループ内での徹底を行い, 実地医療よりも頻回なモニターを行うことにより, 有害事象の発現リスクを下げること, 有害事象の重篤化を防ぐことが可能であると考えられる. 7. 有害事象への対応この臨床試験は, これまでの報告に基づいて科学的に計画され慎重に行うが, もし, 臨床試験の期間中あるいは終了時に, 被験者に副作用などの健康被害が生じた場合には速やかに担当医師が適切な診療と治療を行う. 本試験は既に市販されている薬剤をその適応範囲内で使用して行うので, その薬剤による健康被害の治療も通常の診療と同様に被験者の健康保険を用いて行う. その他の金銭による補償は行われない. 8. 費用についてこの臨床試験で使用する薬剤 (L-OHP,5-FU,l-LV) や臨床試験参加中の治療や検査などはすべて保険で認められている. この試験に参加している期間中の, 治療に必要な投薬, 検査の費用は被験者の加入している医療保険 ( 国民健康保険など ) が用いられ, 通常の治療と同様の自己負担分がある. 9. 個人情報の取扱い 登録患者の氏名は研究事務局へ知らされることはない. 登録患者の同定や照会は, 登録時に発行される登録番号を用いて行われる. 患者登録にあたっては, 4

識別番号を設定し, 連結匿名化を行い, 患者イニシャル, カルテ番号等は施設外に開示しないこととする. 第三者が当該施設の職員やデータベースへの不正アクセスを介さずに直接患者を識別できる情報が, 登録センターのデータベースに登録されることはない. 以上より, 研究事務局では最小限の識別情報として登録番号を用いるが, 参加施設のすべての研究者は, 個人情報保護のため最大限の努力を払う. 施設, 研究事務局間の患者データのやりとりは, 紙, 電子媒体のいかんにかかわらず, 症例登録は FAX を用い, それ以外は FAX, 郵送あるいは直接手渡しすることを原則とする. 当院での管理は, 匿名化番号対照表 ( 添付資料 4) を用い, 匿名化を行う. 匿名化は本研究に直接関与しない芳賀准教授が行い, データマネージャーの資格を有する医局秘書 ( 小山覚巳 ) が管理を行う. 匿名化された個人情報の管理は, 病理部田丸淳一教授のもとで厳重に管理保険される. 適格性, 症例番号が試験担当医宛 FAX で返信される. これらの番号は各種記録用紙に記入し, 関係書類は保管しておく. 登録に関する詳細は計画書 p.20 参照. 10. 利益相反本研究は東京女子医科大学第二外科の研究資金を用いて実施するもので, 金銭的な利益やそれ以外の個人的利益のために専門的な判断を曲げるようなことはない. また企業との雇用関係ならび親族, 師弟関係等の個人的な関係もなく, 利益相反はない. 11. 知的財産権 知的財産権は東京女子医科大学第二外科に属す. 12. 研究代表者, 当センター研究責任者 実施者 < 研究代表者 > 東京女子医科大学第二外科教授亀岡信悟 < 研究実施責任者 > 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科講師石橋敬一郎 < 研究実施者 > 埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科教授石田秀行埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科講師石橋敬一郎埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科講師隈元謙介埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教岡田典倫埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教大澤智徳埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教傍島潤埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教桑原公亀埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教幡野哲埼玉医科大学総合医療センター消化管 一般外科助教天野邦彦 < 質問等の連絡先 > 外科外来 :049-228-3618 担当者 : 石橋敬一郎 5

参考文献 1. Improved survival with preoperative radiotherapy in resectable rectal cancer. Swedish Rectal Cancer Trial.N Engl J Med.336,980-987,1997 2. Bosset JF et al.: EORTC Radiotherapy Group trail 22921.:Chemotherapy with preoperative radiotherapy in rectal cancer. N Engl J Med.355.1114-1123,2006 3. 藤田伸他 : 進行直腸癌に対する TME vs D3 の功罪. 外科治療 89:392-400,2003 4. D. Schrag et al.: Neoadjuvant FOLFOX-bev, without radiation, for locally advanced rectal cancer. ASCO 2010 Gastrointestinal Cancers Symposium,Abst No434. 5. Kuebler JP: Oxaliplatin combined with weekly bolus fluorouracil and leucovorin as surgical adjuvant chemotherapy for stage II and III colon cancer: results from NSABP C-07.J Clin Oncol.25: 2198-2204, 2007 6. Haller DG et al.: Capecitabine Plus Oxaliplatin Compared With Fluorouracil and Folinic Acid As Adjuvant Therapy for Stage III Colon Cancer. J CLin Oncol.29:1465-1471,2011 6