SATREPS チリプロジェクト研究討論会 JST 東京本部別館 K's 五番館 2014 年 5 月 29 日 ( 木 )14:50~17:00 津波数値計算の現状 プロジェクト代表富田孝史港湾空港技術研究所 1 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
内容 プロジェクトの紹介 津波の伝播 浸水計算の現状 STOC による計算例 2 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
SATRESP チリプロジェクトの紹介 3 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 動機 2010 年チリ マウレ地震津波被害 浸水と沿岸部の壊滅的な被害 コンテナの大規模漂流被害 津波警報の課題など The 2010 Tsunami in Dichato Photo by Ms. Cyndi Gatica Mella The 2010 Tsunami in Talcahuano タルカワノ港において漂流コンテナが埠頭背後の RC ビル周辺に散乱する写真 ( 著作権の関係から削除 ) 2012-01 2014-05 2016-03 4
津波に強い地域づくり技術の向上に関する研究 港湾空港技術研究所 5 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - プロジェクト目標津波脆弱地域における津波に強い地域 市民を作るための知見の集積及び技術の開発 G4: 津波災害に強い市民および地域づくりのためのプログラムの提案 山口大 津波に強い市民育成プログラムの提案 避難手法 防災教育手法, 津波ハザード リスクマップ 防災リーダー育成プログラム グループ 1: 津波被害推定技術の開発 港空研 津波被害推定モデルの開発 2010 年チリ津波及び 2011 年東北津波のデータベース タルカワノにおける 2010 年被害の再現 耐津波構造物の計画 設計手法の開発 [G4a] 津波に強い地域づくりのための港湾利用手法の提案 [G4b] 地方自治体のシステムの機能継続計画のあり方の検討 グループ 2: 津波被害予測手法および被害軽減対策の提案 関西大 津波被害予測マニュアルの作成 イキケにおける津波被害推定 チリ津波による日本の被害予測 津波対策の提案 津波災害後の港湾利用に関する日本の経験 港湾 BCP 手法 パイロットサイト : イキケ グループ 3: 高い精度の津波警報手法の開発 JAMSTEC 精度高い津波予報手法の開発 地震 津波観測データを用いた津波予測手法の開発 津波シナリオ データベースの開発 津波情報伝達手法の開発
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 政府機関研究所大学 京都大 Port and Airport Research 港湾空港技術研究所 Institute (PARI) 防衛大 気象研 京都大防災研 東北大 東北大 港空研 PARI Kansai 関西大学 Univ. 静岡大 海洋研究開発機構 港空研 Yamaguchi 山口大学 Univ. 徳島大 山口大 群馬大 名古屋大 筑波大 津波に強い地域づくり技術の向上に関する研究 --- 体制 --- Director: 公共事業省 港湾局長 東大地震研 港空研 防衛大 国総研 気象庁 港空研 国交省 全体とりまとめ グループ 1 津波被害推定技術 グループ 2 津波被害予測手法 対策 グループ 3 津波警報手法 グループ 4 津波災害に強い市民および地域づくりプログラム カトリック教皇大学 Pontifical Catholic University (PUC) of Chile (PUC) UTFSM UNCSC PUC UdeC SHOA UCSC UV PUC UTFSM SHOA UTFSM SHOA ONEMI UCh PUC UCSC UdeC UV PUCV ONEMI SHOA DOP/ MOP DOP/ MOP DOP/ MOP DOP/ MOP 6
津波の伝播 浸水計算の現状 7 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 津波浸水想定の設定の手引き ( 国土交通省 / 水管理 国土保全局海岸室 国土技術政策総合研究所河川研究部海岸研究室 ) 津波浸水想定の目的 想定される最大クラスの津波による浸水の区域および水深を求めること 基本となる数値計算モデル 海底での摩擦及び移流項を考慮した非線形長波理論 ( 浅水理論 ) によることを基本 ただし 深い海域 ( 水深 50m 以深 ) においては線形長波理論を適用可 ソリトン分裂や波状段波の扱い 砕波モデルを含んだ非線形分散波理論 ( ブシネスク方程式 ) によることが必要 8
STOC による計算例 9 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 津波被害推定のための数値計算モデル STOC 10 STOC-ML 準 3 次元モデル ( 多層モデル ) 静水圧近似 大洋を伝播する津波の計算 STOC-IC 3 次元モデル Navier-Stokes 方程式 水面位置 積分連続式 乱流 :Smagorinskyモデル 砕波 :Kennedyモデル+Lynettパラメター 構造物 局所地形と干渉する津波の計算 CADMAS-SURF/3D 3 次元モデル Navier-Stokes 方程式 水面位置 VOF 法 STOC-DM 漂流物モデル 抗力 慣性力で駆動 流体場の計算結果 回転, 衝突, せき止め, 沈没を考慮
STOC-IC の検証越流実験との比較 C q h 1 2gh 1 h 2 / h 1 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - ( 富田 本多 2008) 11
釜石湾港防波堤の模型実験 ( 谷本ら,1988: 港研報告,27(4)) 現地スケールで 2m の計算格子 ( 富田 本多 2008) (u = 1.01m/s) STOC IC STOC ML 港外港内 12 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - モデル検証 ( 久慈港における 3.11 津波 ) 陸上自衛隊によるビデオ画像に加筆 久慈港諏訪下外防波堤を越流 砕波 分裂波 国土交通省東北地方整備局によるビデオ画像に加筆 湾口部 ( 水深 約 25m) で約 5mの高さの津波 久慈湾内では1/200よりも緩い海底勾配 湾内で 津波の先端部分に短い周期の波が重畳 ( ソリトン分裂の発生 ) 13
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 久慈港の海底地形による断面模型実験の結果との比較 加島 平山 (2013) の模型実験 (1/200) Tin=110.3s, Hin=4.0m( 非砕波 ) 数値計算モデル : ソリトン分裂の再現性を検討 Tin=67.9s, Hin=5.0m( 砕波 ) した富田 髙橋 (2012) による砕波を考慮した3 次元モデルSTOC-IC 格子サイズ : 水平方向では5m 鉛直方向では最小 3mとする15 層の不等間隔格子運動量保存式の対流項のハイブリッド差分スキームの係数 :0.2(0.0で2 次精度中心差分, 1.0で1 次精度風上差分 ) 砕波モデル中のパラメータ :STOC-ICが多層モデルであることを考慮し, 多層 Boussinesq モデルに適用したLynett (2006) に倣い, を基本局所地形がある場合における最大水位の空間分布 14 ( 高橋 富田 2013)
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 久慈港の海底地形による断面模型実験の結果との比較 局所地形がある場合における水位 水平流速 圧力の時間波形 結果 : 非砕波のケース 砕波のケースともに水位 流速 圧力を計算モデルは精度よく再現 Tin=67.9s, Hin=5.0m( 砕波 ) 実験値計算値 15 ( 高橋 富田 2013)
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 現地適用 津波の条件 東側境界から岩手県北部沖 GPS 波浪計の観測波形を入射 Takagawa Tomita (2012) の波源を使用した場合 久慈湾へ入射する津波高がやや過小となること 水面勾配が実際より緩くなることにより ソリトン分裂波の発達が弱く砕波が生じにくいため 入射角度について犬飼 永沢 (2012) は縦 600 格子に対し横 5 格子として計算した結果 その影響は小さかったので直入射にした 砕波モデル 砕波開始条件を決定するパラメター を 湾外領域が粗格子であること 湾内が湾口防波堤や局所地形の存在などにより複雑地形であることを考慮し Chen ら (2000) に倣い 0.5 から 0.2 に変更した. 久慈湾 久慈港沖波高計 久慈港沖波高計における津波波形 16 3D モデル STOC-IC 外側 STOC-ML ( 高橋 富田 2013)
計算結果 陸上自衛隊によるビデオ画像に加筆 久慈港諏訪下外防波堤を越流 分裂波 砕波 国土交通省東北地方整備局によるビデオ画像に加筆 17 ( 高橋 富田 2013) - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
18 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 3 次元モデル STOC-IC( 砕波あり ) K=0.98, =1.15 ( 高橋 富田 2013)
19 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 3 次元モデル STOC-IC( 砕波なし ) K=0.79, =1.25 ( 高橋 富田 2013)
20 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 2 次元モデル STOC-ML( 砕波あり ) K=0.96, =1.07 ( 富田ら 2014)
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 水位 (m) 12 10 8 6 4 2 0 STOC-ML STOC-IC( 砕波あり ) STOC-IC( 砕波なし ) n2 h=11.9m n1 h=4.6m -2 2690 2700 2710 2720 2730 2740 2750 2760 2770 2780 2790 2800 2810 地震発生後の時間 (s) 21 計算波形の出力点 高橋 富田 (2013) より
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - 防波堤ケーソンに作用する波力 波状段波 ( ソリトン分裂 ) * 3.0a p 1 3.0 ga I 0 I 速い潮汐タイプ段波 * 3.0a 2.2 ga 池野ら (2006) 谷本ら (1983) p 1 I 0 I * 2.0a p 静水圧 1 2.0 ga I 0 I 22
タルカワノ港における 2010 年チリ津波の再現計算 Photo:International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies 23 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
タルカワノ港における 2010 年チリ津波の再現計算 24 エッジ波など沿岸を伝播する津波 津波影響の長時間化 WORK IN PROGRESS - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
タルカワノ港における 2010 年チリ津波の再現計算 25 WORK IN PROGRESS Cienfuegos & Dominguez (2014) 詳細地形データ : 空軍航空写真部 (SAF) 提供 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
漂流物を含む津波被害推定 26 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
STOC-DM の検証のために 港空研 & 名古屋大の共同研究 名古屋大学の実験水槽 高速ビデオ画像の解析 津波により散乱するガレキ模型 27 - PARI - Port and Airport Research Institute - PARI -
- PARI Port and Airport Research Institute 津波避難シミュレーター CADMAS-AGENT 3次元流体モデルとエージェントモデルの避難シミュレーターの結合 防護構造物等の影響の考慮 - PARI - Arikawa, Tomita, Abe and Koshimura (2013) 開発中
- PARI - Port and Airport Research Institute - PARI - まとめ 1. ソリトン分裂など非静水圧現象を計算できるSTOC-IC と静水圧近似を適用したSTOC-MLによる計算結果を比較したところ, 浸水域や最大浸水深分布に大きな差異はなく, 久慈港においてソリトン分裂した津波の再現はともに良好であった. 2. チリ タルカワノ港におけるコンテナ漂流を含めた津波の再現計算をSTOCにより実施中. 3. 漂流物モデルの検証のために水槽実験を実施. 今後, STOC-DMの検証とモデル改良を実施予定. 29