キリスト教の発展 2016

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第 11 講キリスト教とローマの生活 文化 三位一体説 ( 父なる神 子なるイエス 聖霊は同質で不可分 ) に発展 異端: アリウス派 イエスに人性を強くみとめる 帝国外のゲルマン人に普及 ユリアヌス ( 位 361~363 年 ) 東方密議宗教のミトラ ( ミトラス ) 教を信仰し異教復活を企図教

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2012 年 7 月 1 日 ( 日 ) 2 日 ( 月 ) 17 回目 Ⅴ-020~021 バプテスマのヨハネの登場 バプテスマのヨハネの登場 ルカ 3:1~2 マコ 1:2~6 1. はじめに (1) 文脈の確認 1バプテスマのヨハネの誕生 2イエスの誕生 3イエスの幼少期 (2) 今日の箇所は

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2013 年 3 月 10 日 ( 日 ) 11 日 ( 月 ) 51 回目 Ⅵ-054 山上の垂訓 山上の垂訓 054 マタ 5:1~2 ルカ 6:17~19 1. はじめに (1) 呼び名について 1マタ 5:1~8:1 は 通常 山上の垂訓 ( 説教 ) と呼ばれる 2しかし この名称は 説教

書籍紹介 ステファン =S= イェーガー著 パウル = ティリッヒにおける信仰と説教ならびに 浄土真宗における信心と法話 宗教解釈学研究 ( ティリッヒ研究シリーズ第 2 巻 ) ベルリン / ボストン 2011 年. Stefan S. Jäger, Glaube und religiöse Re

Ⅰ. はじめに 本論では, これまでに引き続きラインホールド ニー バーの思想を取り上げ, 彼の歴史の見方, つまりキリ スト教神学者として歴史をどのように解釈しているか を紹介することにする. ニーバーは, 新約聖書, 特に 注 1) 聖パウロの言葉を基礎にして 恵み を解釈した. ここでは, 初

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(1) 神殿の聖所と至聖所を分ける幕である 1 長さが約 18 メートル 厚さが約 10 センチ 2この幕の内側に入れたのは 大祭司だけである それも年に一度だけ 3 大祭司 アロンの家系 ケハテ氏族 レビ族 イスラエルの民 全人類 (2) この幕が 上から下まで真っ二つに裂けた 1 神の御手がこれ

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告白 という書物 告白 は 397~400 年頃の著作で 原題はラテン語で Confessiones 動詞の confiteri は 罪を懺悔する 神の恵みを賛美し感謝する という両方の意味がある 懺悔 賛美 感謝という順番が重要 と川添教授 自分が悪いことを認める 悪いところが神の恵みによって正さ

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2011 年 10 月 16 日 ( 日 ) 17 日 ( 月 )42 ローマ人への手紙 11:25~36 拒否の解決 (3) イスラエルの救い 1. はじめに (1)10 月 13 日 ( 木 ) の日没から仮庵の祭りが始まった 1 第 7 の月の 15 日 満月 2 満月を眺めながら イスラエル

* ユダヤ人の歴史家ヨセフスもまた同じような書き方をしている 5 テオピロは ルカの執筆活動を支援するパトロンであった可能性が高い 6 もしそうなら テオピロはローマ人クリスチャンであったと思われる (2)1~2 節は ルカの福音書の要約である 1 前の書 というのは ルカの福音書 のことである 2

1 パンの家 という意味 農業生産の豊かな地 ダビデの町とも呼ばれた 2ガリラヤのベツレヘムと区別するために ユダヤのベツレヘムと書かれている 年代 200 軒の家 クリスチャンとイスラム教徒が平和に住んでいる 4 今日 パレスチナ自治区 2 万 2 千人 クリスチャンは迫害に会っている

創世記5 創世記2章4節b~25

倫理とは何かという問いへの答えが この話にある と藤田教授 興味深いのは 倫理が人間の存在そのものに関わっている点です 人間は集団を前提に成り立っており 集団の中には必ず掟が必要です つまり この話は 倫理が人間にとって必須であることを示しています 宗教とは何か 宗教とは何か というのもまた難しい問

第108号データ

2011 年 06 月 26 日 ( 日 ) 27 日 ( 月 )26 ローマ人への手紙 7:14~25 律法からの解放 (3) ロマ書 7 章クリスチャン 1. はじめに (1) 聖化 に関する 5 回目の学びである 1 最大の悲劇は 律法を行うことによって聖化を達成しようとすること 2この理解は

神学総合演習・聖霊降臨後最終主日                  2005/11/16

3 章 蝮の裔よ ( ルカ 3:7~14) ルカ福音書講義 (15) そこで 彼から洗礼を受けよう 1) として出て来た民衆 2) に彼は言った 3) 蝮 の裔よ 4) 誰があなた方に 来るべき怒り 5) から逃れるように教えたのか 8 さ あ 悔い改め 6) にふさわしい

4きょう取り上げる 3~5のパターンは ユダヤ的に解釈する必要がある 5イエス時代のユダヤ教のラビたちの旧約聖書引用法 * 直接引用とその成就 * その箇所の解釈ではなく 適用である * きょうの3~5 のパターンは すべて適用である 6マタイは 5 つの引用によってイエスのメシア性を証明しようとし

創世記5 創世記2章4節b~25

2012 年 2 月 26 日 ( 日 ) 27 日 ( 月 )59 ローマ人への手紙総まとめ 総まとめ 1. はじめに (1) 執筆の意図 1 使徒としての使命 * 所々 かなり大胆に書いた (15:15) 2 使徒としての奉仕の原則 * 他人の土台の上に建てない (15:20) * これまで ロ

2019 年 7 月 28 日 ( 日 ) 29 日 ( 月 ) 70 回 12 人の弟子たちの救い 12 人の弟子たちの救い 使徒 19:1~7 1. はじめに (1) 第三次伝道旅行が始まった 1 使 18:23~21:17( 紀元 53 年の春から 56 年の春 ) 2パウロは ひとりで出かけ

Ⅰ. はじめに 2001 年 9 月 11 日の同時多発テロ事件に象徴されるように, 今日の国際政治の中で宗教的な要素は無視できないものとなっている. 多くの人は, 政治的対立が宗教的対立に置き換えられることを恐れて, 政治の問題を論じる時に宗教を取り上げないようにしているが, 実際の政治の場, 特

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癒しの業と宣教 ( ルカ 4:38~44) 1) ルカ福音書講義 (23) 章 38 イエス 2) は会堂から立ちあがり シモンの家 3) に入った シモンのしゅうとめが 高熱 4) で苦しめられており 彼らは 5) 彼女のことをイエス 6) に願った 39 彼は彼女の枕

聖書 : ピリピ 3:1~3 説教題 : 神の御霊による礼拝 日時 :2017 年 2 月 26 日 ( 朝拝 ) ピリピ人への手紙第 3 章に入ります この手紙は全部で 4 章からなっていますので 今日から後半部に入ることになります パウロは 最後に 私の兄弟たち と始めます この手紙はまだ半分ま

強調され 七つの大罪 となる 旧約聖書の命題の多くを引き継いだのが新約聖書 ( イエス伝 ) であり この関係をつぶさに検討しなければならない しかし これを論じている余裕はなく大雑把な叙述で済ませなければならないだろう イエスの誕生は歴史的な厳密さからいうと 紀元前 7 年とされ その死去は紀元

イエスさまの公的な活動は 2 年から 3 年と言われます その短い時間の中で人々に与えた影響は 考えられないほど大きいものでした ここに今日 わたしたちが集まって礼拝しているのも そのせいです けれどもその 2 年ないし 3 年のイエスさまの活動はずっと順調であったわけではありません イエスを愛し慕

としたこと それに対してイエスは 今は 止めないでほしい 正しい ことをすべて行うのは 我々にふさわしいことです ( マタイ 3 15) と 言って ヨハネから洗礼をお受けになったと伝えています しかしマルコ福音書は そういうことは何も伝えていません イエス は ユダヤの全地方から集まって来た大勢の

5. 章節は後代に付加せられたもので 聖書記述者の考えや霊感は反映されていな いので注意が必要 Ⅰ イエスによる預言 (42~46) 1. マタイ 21:42 は詩篇 118:22 預言からの引用 家を建てる者たちの見捨てた石 それが礎の石になった これは主のなさったことだ 私たちの目には 不思議な

2012 年 1 月 15 日 ( 日 ) 16 日 ( 月 )53 ローマ人への手紙 14:13~15:3 キリスト者の自由 1. はじめに (1) 文脈の確認 11~8 章が教理 29~11 章がイスラエルの救い 312~16 章が適用 (2)12 章は 基本的には教会内の行動についての勧めであ

(1) 獣の形状 (1~2 節 ) (2) 獣の復活 (3~4 節 ) (3) 獣の支配 (5~8 節 ) (4) 励ましのことば (9~10 節 ) 3. 結論 : 反キリストはキリストの真似をする 反キリストの働きについて学ぶ Ⅰ. 獣の形状 (1~2 節 ) 1.1 節 Rev 13:1 また

日本基督教団と在日大韓基督教会総会との協約

* ダニエル書 3 捕囚期後 (3) * ハガイ書 * ゼカリヤ書 * マラキ書 (5) 預言者たちが語ったメッセージの要約 1 神の主権と聖なるご性質 2 契約の民イスラエルの不従順の罪 3 悔い改めへの招き 4 迫り来る神の裁きと捕囚 5イスラエルの民を攻撃する周辺国への裁き 6 捕囚からのレム

(2) ロマ 7:1~6 の要約 1 律法の大原則 * 律法は 人に対して権限を持つ * 律法は 死んだ人には権限を持たない 2 結婚関係の例話 * 夫が生きている間は 結婚の律法によって制約されている * それを破れば 姦淫の女と呼ばれる * 夫が死ねば 結婚の律法から解放される * 再婚しても

1.2 キリスト教の思想と信仰

6ユダヤ人は 人種的 宗教的理由によって サマリヤ人を軽蔑した * ユダヤの格言 私の目が サマリヤ人を見ることがないように 7サマリヤ人も ユダヤ人を軽蔑し 敵対した * ユダヤ人がエルサレムから下ることは許したが 上ることは許さなかった 8 現代もサマリヤ人の子孫たちが存在している ( 千名以下

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2 イエスの戒めを守るなら イエスの愛に留まることになる (2) その教えを話した理由は 弟子たちが喜びに満たされるためである 1イエスは 自分が経験している喜びを弟子たちに与えようとしている 2イエスの喜びは 父なる神への従順 ( 喜ばせること ) によって生まれる 3ヘブ 12:2 Heb 12

第 2 問 歴史上, 政治権力にとって宗教をどう扱うかは統治における重要な問題であり, 世界各地の政治権力は宗教に対してさまざまな政策を実施してきた 世界各地の政治権力の宗教政策に関する以下の設問に答えなさい 解答は, 解答欄 ( ロ ) を用い, 設問ごとに行を改め, 冒頭に⑴~⑶の番号を付して記

2008 年 7 月 27 日 ( 日 ) 28 日 ( 月 ) ハーベストフォーラム東京創世記 8 創世記 8 創世記 3 章 14 節 ~24 節 アダム契約 イントロ : 1. 前回までの復習 (1) 創世記には 11 の区分 ( トルドット ) がある (2) 第 1のトルドットには 人類の

このメッセージは メシアの義とパリサイ人の義について学ぼうとするものである Ⅰ. 真の信仰者の特徴 (5:13~16) 1. 地の塩 (13 節 ) あなたがたは 地の塩です もし塩が塩けをなくしたら 何によって塩けをつけるのでしょう もう何の役にも立たず 外に捨てられて 人々に踏みつけられるだけで

れています ローマの大火事とネロ皇帝による迫害は ペテロの第一の手紙の読者がまもなく体験することであり ペテロもパウロもそのとき殉教していますので 少し長くなりますが タキトゥスの年代記 15 巻 44 章から読んでみたいと思います しかし 人々のあらゆる努力も 皇帝の多大のほどこしも 神々へのなだ

2017 年 7 月 2 日 ( 日 ) 3 日 ( 月 ) 1 回 ヘブル人への手紙のテーマ ヘブル人への手紙のテーマ ヘブル 1:1~3 1. はじめに (1) 著者 1いくつかの名が上げられてきた * パウロ * ルカ ( パウロがヘブル語で書いたものを ルカがギリシア語に翻訳した ) * バ

いでしょう (1)2 重の質問 1 弟子たちは いくつかのたとえ話とその解き明かしを聞いてきた 2ここでイエスは 弟子たちに考えるチャンスを与えている 3 弟子たちは 奥義としての王国 の性質について考え始める (2) イエスのたとえ話は 弟子たちが想像したものとは大いに異なる 1 種のたとえでは

東大模試 サンプル 解答・解説

【中世3ビザンツ】


基督教研究第 70 巻第 2 号 Gospels of Matthew and John, Jews were severely blamed. In this paper the writer studies the historical course of the early church in

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5 節ごとに 洗礼者ヨハネ 殺される 6:14-15 ( そして ) イエス ( 彼 ) の名が知れ渡ったので ヘロデ王の耳にも入った 人々は言っていた 洗礼者ヨハネが死者の中から生き返ったのだ だから 奇跡を行う力が彼 ( のうち ) に働いている そのほかにも 彼はエリヤだ と言う人もいれば 昔

は歯が痛くなるとズキンズキンとして何をしていても繰り返し襲って来る痛みに悩まされますが そのように 絶えず痛みがある と言わずにいられないような痛みを感じ続けていた 一体それはどんな悲しみ 痛みだったのでしょうか それが同胞ユダヤ人の不信仰に関することでした パウロがどんなに同胞 同国人のことを思っ

5月24日宿題小テスト

牧会の祈り

Ⅱ. 神の恵みの意味 1. キリストの 知恵 と 力 キリスト教のあらゆる啓示は, 人間は自分では人生の真の意味を成就させることができないことを明らかにしている. 聖書の中では, キリストを通してのみ 知恵 と 力 が人間にも可能になり, 人生の意味が明らかにされるばかりでなく, その意味を成就する

第 2 問問題のねらい青年期と自己の形成の課題について, アイデンティティや防衛機制に関する概念や理論等を活用して, 進路決定や日常生活の葛藤について考察する力を問うとともに, 日本及び世界の宗教や文化をとらえる上で大切な知識や考え方についての理解を問う ( 夏休みの課題として複数のテーマについて調

学習指導要領

2011年度 牧羊者 第Ⅳ巻

Ⅱ. 信仰生活の再建 : エズラの指導 (7~10 章 ) 1. エルサレムに到着するエズラ (7~8 章 ) 2. 民の罪を告白するエズラ (9 章 ) 3. 国を清めるエズラ (10 章 ) 結論 : 私たちへの適用 1. 悔い改めの力 2. みことばの力 エズラ記を通して リバイバルの原則につ

2 奇跡 3 父 4 聖書 4. メッセージのゴール (1) イエスを誰だと言うか (2) イエスを信じる者の幸いとは何か このメッセージは イエスの業と主張について考えようとするものである Ⅰ. イエスと父は一体である (19~29 節 ) 1. 行動において まことに まことに あなたがたに告げ

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4 伝承によれば 彼はクレテ島のゴルティナで監督となり 94 歳で召されたと言われています では 今日は発信人であるパウロと 受信人であるテトスから学びたいと思います 発信人であるパウロはどのような教訓を与えているか また受信人であるテトスがどういう信仰を送ったか大切なポイント 1. 発信人パウロ

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束の地カナンに入ることが許されなかった 9 死を前にして ヨシュアを後継者に任命し 120 歳でモアブのネボ山で死んだ 10 モーセという人は 地上のだれにもまさって非常に謙遜であった ( 民数記 12:3) 11 自分を しもべとして神の家全体のために忠実でした ( ヘフ ル 3:5) 新約聖書に

2018 年 5 月 27 日 ( 日 ) 28 日 ( 月 ) 14 回 ペテロの第 2 のメッセージ (2) ペテロの第 2 のメッセージ (2) 使徒 3:17~26 1. はじめに (1) ペンテコステの日に教会が誕生した 1ペテロの第 1 回目のメッセージにより 3,000 人ほどの人たち

とる そして既成教会の組織の及ばぬところへ福音の種子を持ち運ぼうとする より具体的には 信徒は世俗の職業を重視し しかも信仰にあってあらゆる権威 あるいは組織から自由である みずからにあたえられた持ち場 - 職業 専門領域 -において それをとおして 神の名をあらわそうと努める その持ち場こそ福音伝

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2017 年 2 月 21 日 ( 火 ) 60 分でわかる旧約聖書 (24) エレミヤ書 60 分でわかる旧約聖書 (24) エレミヤ書 1. はじめに (1) 預言者たちの中でのエレミヤの位置づけ 1 預言書を書いた預言者 (the writing prophet) * 王国が南北に分裂して以降

公   民 [ 倫 理 ] (100点 50分)

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2. ソクラテス (469 ~ 399.BC) 倫理学の父 ソクラテスは著作を残していないが 弟子のプラトンがソクラテスを主人公にして書いた多くの 対話篇 がある これらは どこまでがソクラテスの思想で どこからがプラトンの思想なのか区別し難い だが さしあたって ソクラテスの裁判の場面を描いた ソ

* ペリシテ人の古代都市ガザは 前 93 年に破壊され 前 57 年に再建された * この道路は ガザの遺跡を通過し 新ガザに至る荒野の道である 5 ピリポは その命令に従順に従った 2.27b~28 節 Act 8:27b すると そこに エチオピヤ人の女王カンダケの高官で 女王の財産全部を管理し

2017 年 10 月 8 日 ( 日 ) 9 日 ( 月 ) 15 回さらにすぐれた契約 さらにすぐれた契約 ヘブル 8:1~13 1. はじめに (1) この手紙が書かれた理由を再確認する 1 信仰が後退しつつあった第 2 世代のメシアニック ジューたちへの励まし (2) ユダヤ教の 3 つの柱

教科 : 地理歴史科目 : 世界史 A 別紙 1 (1) 世界史へのいざない 学習指導要領ア自然環境と歴史歴史の舞台としての自然環境について 河川 海洋 草原 オアシス 森林などから適切な事例を取り上げ 地図や写真などを読み取る活動を通して 自然環境と人類の活動が相互に作用し合っていることに気付かせ

に住む者に私たちの血の復讐をなさらないのですか (1) ここで場面は 地から天に移行する 1 大患難時代を通して継続している状況の描写である (2) ヨハネは キリストに対する信仰のゆえに殉教の死を遂げた人々の幻を見た 1 彼らは 祭壇の下にいた 2 旧約時代のいけにえの血が祭壇の土台に注がれたこと

2013 年 3 月 24 日 ( 日 ) 25 日 ( 月 ) 52 回目 Ⅵ-054 八福の教え 八福の教え 054 マタ 5:3~12 ルカ 6:20~26 1. はじめに (1) 文脈の重要性 1 文脈を無視して 山上の垂訓のある言葉を取り出すことが余りにも多い 2イエスは 神の国の福音をも

2017 年 6 月 11 日 ( 日 ) 12 日 ( 月 ) 39 回 新しいエルサレムの特徴 ( 後半 ) 新しいエルサレムの特徴 ( 後半 ) 黙 22:1~5 1. はじめに (1) 旧約聖書の預言のハイライトは メシア的王国である 1 黙示 20 章は メシア的王国が千年で終わることを啓

社会系(地理歴史)カリキュラム デザイン論発表

2012 年 1 月 22 日 ( 日 ) 23 日 ( 月 )54 ローマ人への手紙 15:4~13 希望から希望へ 1. はじめに (1) 文脈の確認 11~8 章が教理 29~11 章がイスラエルの救い 312~16 章が適用 (2)14:1~15:13 は 雑多な問題を扱っている 1 超道徳


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Taro-オリエンテーション

のですか あなたが誰か われらは知っています 神の聖者です 13) 35 イエスは彼を りつけて 14) 言った 黙れ 彼から出て行け 15) すると悪霊は彼を真ん中に投げ出し 彼を傷つけることなく 16) 彼から出て行った 36 すべてことに驚きが起こり 17) 人々 18) は互いに語り合って

Heb 11:7 信仰によって ノアは まだ見ていない事がらについて神から警告を受けたとき 恐れかしこんで その家族の救いのために箱舟を造り その箱舟によって 世の罪を定め 信仰による義を相続する者となりました (1) ノアは 神から警告を受けた 1 創 6:17 Gen 6:17 わたしは今 いの

お話 文芸思潮



2018 年 2 月 4 日 ( 日 ) 5 日 ( 月 ) 29 回 善行の勧めと信仰上の勧め 善行の勧めと信仰上の勧め ヘブル 13:1~17 1. はじめに (1) この手紙は ユダヤ教への回帰を考えていた第 2 世代のメシアニック ジューたちを励ますために書かれた 1 教理的学び 2 学んだ

なぜ分派があり 争い合ってきたのかという思いがある ここで本題からはそれるが このことについて若干答えておきたい それは 宗教が政治権力と結びつくと排他性を増し 戦争や権力闘争の道具と化すということである それは大平洋戦争終結まで続いた国家神道を見ればわかる 来るものを拒まず 去るものは追わず その

Transcription:

ローマ帝国のキリスト教化 欧米文化論第 5 回 http://harlock.web.fc2.com/

本日の講義要旨 キリスト教はローマ帝国の誕生とほぼ同時期に誕生したが やがてローマ帝国はキリスト教を国教とする なぜローマ帝国は伝統の神々を捨て 数ある宗教の中からキリスト教を選んだのか キリスト教 とりわけローマカトリックとはどんな宗教なのかを概観する

キリスト教成立史年号 見出し 特記事項 BC4 年イエス誕生 (BC7 年という説あり ) AD28 年洗礼者ヨハネから洗礼を受ける 福音書の記述 30 年イエスを処刑 64 年ローマの大火事 皇帝ネロがキリスト教徒の仕業として ペテロとパウロを処刑したという伝説 250 年頃軍人皇帝による迫害 デキウス帝 (249-251 年 ) とヴァレリアヌス帝 (253-260 年 ) の時代 303 年ディオクレティアヌス帝の迫害 軍人皇帝時代を終わらせ専制君主制を確立した同帝は キリスト教徒に強制的な改宗を命じた 313 年ミラノ勅令 コンスタンティヌス帝 キリスト教を公認宗教とする 325 年ニカイヤ公会議 ( 第 1 回 ) アリウス派とアタナシウス派が対立し 後者が正統とされ 361 年ユリアヌス帝の転換 る キリスト教徒に与えられていた特権を廃し 異教 ( 特にユダヤ教 ) を保護したが キリスト教徒を直接迫害したわけではない 同帝自身はギリシア文化 ( 現代 新プラトン主義 と呼ばれる思想 ) を基盤にしていた 381 年コンスタンティノープル宗教会議 ( 第 1 回 ) アタナシウス派の正統性が確認され 三位一体の神学が完成する 392 年テオドシウス帝 キリスト教の国教化キリスト教以外の信仰を禁止する 397 年新約聖書の編纂 431 年エフェソス宗教会議 451 年カルケドン宗教会議 476 年西ローマ帝国の滅亡 第 3 回カルタゴ会議において 4 部構成全 27 巻の正典目録が発表される 原典はすべてギリシャ語で書かれている アレクサンドリア学派とアンティオキア学派 ( ネストリウス派 ) の対立 キリストに神性と人性の両方があるとする両性説を採択 また ネストリウス派を排斥した

キリスト教の誕生 イエスが宗教活動を展開したのは AD30 年頃の数年間 この頃 ユダヤ人社会では サドカイ派とファリサイ派が最高議決機関サンヘドリン内部で対立 イエスは 当初はファリサイ派の影響を受けていたと思われるが 黙示派の指導者ヨハネに感化されて終末思想に傾き 改革派指導者として自立

イエスの時代のユダヤ教各派名称 説 明 サドカイ派 エルサレム神殿の祭司階層 =ローマ支配に妥協的 ファリサイ派 シナゴーグ ( 会堂 ) を中心に口承で伝わった律法の承認を求める人々 =ローマ支配に中立的 エッセネ派 世俗を離れて共同生活を送る人々 黙示派 エッセネ派やイエスの師であった洗礼者ヨハネの教団を含むローマ支配抵抗派 シナゴーグとは BC586 年のバビロン捕因以降 ユダヤ人が宗教的自立性を保持しようと集まっ た会堂 BC538 年に捕因が解かれると パレスティナに帰還したが 再建されたエルサレム神殿を 拠点にしたのがサドカイ派

キリスト教の誕生 ( 続き ) しかし イエスは 他の黙示派と違って 荒野に引きこもらず 社会的弱者や女性 下級階層の人々に律法を新しい視点で解釈してアピールした 健康な人よりも病人に医者が必要なように 善人より罪人にこそ神の救済がふさわしい すべてを失って罪人として神の前に立つ人は救済に近い この説法は 徳を積むことで神に救済されると考えるサドカイ派やファリサイ派と対立 過激思想を広める者として ローマのユダヤ属州総督に訴えられた

布教とキリスト教の成立 イエスの死後 ペテロを中心とする弟子たちは イエスをキリスト ( 救世主 ) だと主張 この時点では ユダヤ教黙示派と考えられた キリスト教が拡大する道を開いたのは ファイサイ派から転向したパウロが イエスは神の子で 全人類の罪を償うために死んで 復活したと主張 = しょく罪神学 パウロは 小アジア ギリシア ローマなどの諸都市を巡って布教した

ローマ帝国とキリスト教の関係 ローマ帝国とキリスト教と聞くと 迫害と大量の殉教者というイメージがつきまとうが ローマ皇帝による迫害は少なかった 大規模な迫害は 64 年のネロ帝と 303 年のディオクレティアヌス帝だが その 10 年後には公認される 更に 392 年にはローマの国教となり ローマ伝統の神々を含めて キリスト教以外の宗教を信じることを禁止する

なぜキリスト教は広まったか? 直接的な原因は ローマ皇帝の権限強化や帝国の統治原理に組み込まれたから 313 年にコンスタンティヌス帝のミラノ勅令で公認されるが 彼の登場時点でローマ帝国には 4 帝いた 彼はキリスト教を公認し 保護することで全ローマを統一した 392 年のテオドシウス帝による国教化に際しては ローマ帝国は東西に別れていた 彼はキリスト教の宗派対立を利用した

なぜキリスト教は広まったか ( その 2) 378 年にテオドシウスは東ローマの共同皇帝になる 彼は 381 年コンスタンティノープル公会議を開き 三位一体派を正統とする 政敵のヴァレンティアヌス 2 世がアリウス派であるのに対して 彼はアタナシウス ( 三位一体 ) 派となる これはコンスタンティノープル司教 ( アリウス派 ) の首のすげ替えでもあった ローマとアレクサンドリアは三位一体派であった また ヴァレンティアヌス 2 世の後 394 年に古代ローマ教を擁護する政策を採った元老院議員エウゲニウス ( 一応 皇帝を名乗る ) を破り 全ローマ帝国を統一する

なぜキリスト教は広まったか ( その 3) キリスト教の国教化以後 ローマ帝国内では元老院階級が自領地の都市 ( キウィタス ) に大聖堂を建設して慈善事業を施したり 修道院を建設して聖職者を養成したりした これによって 彼らは教団から司教の地位が与えられた 大司教 > 司教 > 司祭 > 助祭 ローマ帝国の支配階層もキリスト教化していった

なぜキリスト教は広まったか ( その 4) では キリスト教徒がそもそもローマ帝国内でなぜ増えたのか? キリスト教が国教化されるころのローマ帝国には イシス教やミトラス教 マニ教などの新興宗教が流行っていた すべて一神教 ( 他の神は認めない ) その中で キリスト教は キリストの貧者と呼ばれる救済事業に特徴がある 最も小さい者にしたことは神にしたこととして賞賛される ( マタイの福音書第 25 章 40 節 )

なぜキリスト教は広まったか ( その 5) これを他の宗教と比較すると ゾロアスター教などの大部分の古代宗教は 善悪二元論で善を積む以外には救済されない 乞食や売春婦などは救済されない! 大乗仏教は例外的に 菩薩行と呼ばれ 他者も救済する教えがあるが これは自分が悟りを開くために煩悩 ( すなわち物欲 ) を捨てる行為で キリスト教のアカペー ( 無償の愛 ) とは異なる 仏教用語の慈悲 ( 慈善 = 慈悲を実践すること ) は 他者が涅槃 ( ねはん ) に達せないことを哀れむ言葉で charity とは意味が違う

なぜキリスト教は広まったか ( その 6) 古代ローマには エヴェルジェティスムと呼ばれる寄附制度の伝統があった これは 富裕者が共同体のために公共の建物を建造したり 公共工事を行う行為である キリスト教の charity は このエヴェルジェティスムと合致する思想であり しかもエヴェルジェティスムでは 贈与を受ける貧民は富裕者の仲間ではなかったが キリスト教の chari ty では 同じ神を信じる同胞であった

キリスト教神学の誕生 ( その 1) ローマ帝国のキリスト教国化は ギリシア哲学からキリスト教神学への転換を引き起こした ローマ帝国時代の最も成功した神学は アウグスティヌス (354-430) の 告白 であった 彼は晩年に大著 神の国 も書いているが 告白 は単なる自伝に留まらず神学論を展開している この 告白 の推論形式は内省 ( ないせい ) と呼ばれ デカルトの 省察 ( せいさつ ) につながる

キリスト教神学の誕生 ( その 2) アウグスティヌスの神学の特徴は 1) 新プラトン主義 ( プロチノス ) に立脚していること 2) 人間は自力で善人になることはできない ( 救済されるか否かは神の意思 ) と考えたこと 新プラトン主義とは 善のイデアを神と同一視するが 人間が善のイデアを直接認識することはできず 直感するだけであるという考え方