平成 24 年度経済産業省委託事業環境対応技術開発等 環境中での変換に関する調査 報告書 平成 25 年 2 月 一般財団法人化学物質評価研究機構
目 次 1. 事業の目的... 1 2. 事業内容... 1 3. 調査方法... 1 4. 土壌及び活性汚泥を用いたペンタクロロフェノールの好気的生分解性試験... 2 5. まとめ... 19 6. 参考文献... 19
1. 事業の目的本事業は 残留性有機汚染物質に関わるストックホルム条約 (Os 条約 ) への新たな物質 ( 以下 追加候補物質 という ) 追加の是非に係る科学的知見を収集するため 環境中における追加候補物質への変換について調査することを目的とした 2. 事業内容 ペンタクロロフェノールの環境中での変換に関する調査 検討本事業では 残留性有機汚染物質に関わるストックホルム条約 (Os 条約 ) への追加候補物質として提案されているペンタクロロフェノール (C) に関する調査 検討を行った 第 7 回残留性有機汚染物質検討委員会 (ORC7) において C とその塩及びエステルが新たに Os 条約の追加候補物質として提案され 検討が行われた この結果 C 自体は Os 条約附属書 D のスクリーニング基準を満たさない *1 ものの C からの変換物であるとされるペンタクロロアニソール (CA) はスクリーニング基準を満たすことが合意された しかしながら C から CA への変換に関する定量的な情報が不十分であることから 一般的な環境中での C から CA への変換について更なる情報収集を行うことが提案された そこで本事業では 一般的な環境中での C から CA への変換を定量的に評価するためのデータを取得することを目的とし 調査 検討を行った *1 Os 条約附属書 D のスクリーニング基準は 物質の特定 残留性 生物蓄積性 長距離移動性及び有害な影響の 5 項目あるが C は生物蓄積性の基準を満たさない 3. 調査方法これまでの調査により 特定の好気的条件下で C から CA への変換が生じる事例が確認されている そこで 一般的な環境中での変換に関する定量的な情報を得るため 農薬の登録申請時に提出される試験成績の作成に係る指針及び OECD テストガイドライン 301D 等を参考にして 土壌及び活性汚泥を用いた C の好気的生分解性試験を実施した 具体的には C 及び CA の分析条件及び前処理条件を確立させた上で 土壌及び活性汚泥を用いた C の好気的生分解性試験のそれぞれについて予備試験を実施し 本事業の目的を達成するために最適な試験条件 ( 試験期間 サンプリングポイント数 C の試験濃度 試験連数等 ) を検討した後 確立した試験条件で本試験を実施した その際は C 及び CA について定量分析を実施することにより 各試験における C から CA への変換率を明らかにした なお 各試験の条件等は 経済産業省及び有識者と十分協議した上で 決定した 1
4. 土壌及び活性汚泥を用いたペンタクロロフェノールの好気的生分解性試験 4.1 ペンタクロロフェノール及びペンタクロロアニソールの物質情報 4.1.1 ペンタクロロフェノール 4.1.1.1 名称 構造式等名称 2,3,4,5,6-ペンタクロロフェノール略称 C CAS 番号 87-86-5 構造式 OH Cl Cl Cl Cl Cl 分子式 C6HCl5O 分子量 266.34 4.1.1.2 物理化学的性状 ( 出典 :UNE/OS/ORC.7/INF/5 UNE/OS/ORC.7/INF/5/Add.1) 外観 白色単斜晶固体 沸点 310 ( 分解 ) 蒸気圧 2 ma(20 ) 0.0070~0.213 a(25 ) 水溶解度 14 mg/l (20 ) 4.1.1.3 C 標準品に関する情報 純度 99.9% 供給者 AccuStandard ロット番号 22564 C は純度 100% として取り扱った 2
4.1.2 ペンタクロロアニソール 4.1.2.1 名称 構造式等 名称 2,3,4,5,6-ペンタクロロアニソール 略称 CA CAS 番号 87-86-5 構造式 CH 3 O Cl Cl Cl Cl Cl 分子式 C7H3Cl5O 分子量 280.36 4.1.2.2 物理化学的性状 ( 出典 :UNE/OS/ORC.7/INF/5 UNE/OS/ORC.7/INF/5/Add.1) 蒸気圧 0.0459 a(25 )(MBWIN, modified grain method) 4.1.2.3 CA 標準品に関する情報純度 98.5% 供給者 Dr. Ehrenstorfer ロット番号 80613 CA は純度 100% として取り扱った 4.2 試験条件試験条件については 農薬の登録申請時に提出される試験成績の作成に係る指針及び OECD テストガイドライン 301D 等を参考にした ただし C 及び CA の前処理条件及び分析条件を確立させた上で 土壌及び活性汚泥を用いた C の好気的生分解性試験のそれぞれについて予備試験を実施し 本事業の目的を達成するために最適な試験条件 ( 試験期間 サンプリングポイント数 C の試験濃度 試験連数等 ) を検討した後 経済産業省及び有識者と十分協議した上で 表 1 に示す試験条件に決定した なお 土壌を用いた試験系は 土壌系 活性汚泥を用いた試験系は 汚泥系 と記した 3
表 1 土壌及び活性汚泥を用いた C の生分解性試験の条件 項目土壌系汚泥系 植種源福島土壌 ( 表 2 参照 ) 福岡県内の都市下水処理場の 二次放流水 試験温度 22 ± 2 22 ± 2 試験雰囲気好気好気 試験期間 49 日間 49 日間 試験土壌 又は液量 5 g 100 ml 試験容器 500 ml 容の閉鎖系ガラス容器 500 ml 容の閉鎖系ガラス容器 試験区分試験濃度 (C) 試験連数サンプリングポイント数 試験区 :2 濃度区滅菌区 :2 濃度区対照区 ( 被験物質無添加 ) 高濃度区 :1.0 mg/kg 低濃度区 :0.10 mg/kg 試験区 : 各濃度区 n=3 滅菌区 : 各濃度区 n=2 対照区 :n=2 試験区 :7 ポイント (0, 7, 14, 21, 28, 35, 49 日後 ) 滅菌区 :4 ポイント (0, 14, 28, 49 日後 ) 対照区 :2 ポイント (0, 49 日後 ) 試験区 :2 濃度区滅菌区 :2 濃度区対照区 ( 被験物質無添加 ) 高濃度区 :1.0 mg/l 低濃度区 :0.10 mg/l 試験区 : 各濃度区 n=3 滅菌区 : 各濃度区 n=2 対照区 :n=2 試験区 :7 ポイント (0, 7, 14, 21, 28, 42, 49 日後 ) 滅菌区 :4 ポイント (0, 14, 28, 49 日後 ) 対照区 :2 ポイント (0, 49 日後 ) 定量対象物質 C 及び CA C 及び CA 前処理条件及び分析条件 C: 溶媒抽出 - 誘導体化 -GC/MS CA: 溶媒抽出 -GC/MS C: 溶媒抽出 - 誘導体化 -GC/MS CA: 溶媒抽出 -GC/MS 4
4.3 試験の準備 4.3.1 土壌系試験に使用する土壌は一般社団法人日本植物防疫協会より購入した 土壌の詳細を表 2 に示す 試験区及び対照区は購入した土壌をそのまま使用した 滅菌区は 購入した土壌をオートクレーブで 2 時間高圧蒸気滅菌した後 乾熱滅菌器で 110 2 時間乾燥したものを使用した 表 2 試験に使用した土壌の詳細 ( 出典 : 一般社団法人日本植物防疫協会提供資料 ) 項目 内容 土壌名 福島土壌 入手先 一般社団法人日本植物防疫協会 土壌分類 褐色森林土 ph(h2o) 6.5(19 ) ph(cacl2) 5.8(19 ) 有機炭素 C 4.4 g/kg( 腐植 7.6 g/kg) 陽イオン交換容量 (CEC) 11.1 cmolc/kg りん酸吸収係数 2O5 320 mg/100 g 最大容水量 57.0% 極粗砂 2.0-1.0 mm 2.9wt% 粗砂 1.0-0.5 mm 7.5wt% 粒中砂 0.5-0.25 mm 13.3wt% 径細砂 0.25-0.10 mm 14.9wt% 組極細砂 0.10-0.05 mm 12.2wt% 成 シルト 0.05-0.002 mm 32.0wt% 粘土 0.002 mm 以下 17.2wt% 土性 (USDA 法 ) L 主要粘土鉱物 Ht7 It 4.3.2 汚泥系福岡県内の主に家庭排水を処理する下水処理場の二次放流水を採取し これを No.2 ろ紙でろ過したろ液を試験区及び対照区で使用する活性汚泥とした 滅菌区では 先のろ液をオートクレーブで 2 時間高圧蒸気滅菌したものを活性汚泥として使用した また 試験液として使用する培地については OECD テストガイドライン 301D に記される無機培地 ( りん酸緩衝液 塩化カルシウム (II) 溶液 硫酸マグネシウム (II) 溶液 塩化鉄 (III) 溶液を混合したもの ) を用いた 5
4.4 添加用 C 標準液の調製 4.4.1 土壌系添加用標準液 C 標準品 20.0 mg を少量の 1N 水酸化ナトリウム溶液で溶解し 精製水で希釈した これを 1N 塩酸で中和した後 精製水で定容して 10 mg/l の C 標準液を調製し 高濃度区添加用 C 標準液とした さらに この 10 mg/l 標準液を精製水で希釈して 1.0 mg/l 標準液を調製し 低濃度区添加用 C 標準液とした 4.4.2 汚泥系添加用標準液 C 標準品 20.0 mg を少量の 1N 水酸化ナトリウム溶液で溶解し 精製水で希釈した これを 1N 塩酸で中和した後 4.3.2 で調製した無機培地と同様の組成となるように りん酸緩衝液 塩化カルシウム (II) 溶液 硫酸マグネシウム (II) 溶液 塩化鉄 (III) 溶液を添加した これを精製水で定容して 10 mg/l の C 標準液を調製し 高濃度区添加用 C 標準液とした さらに この 10 mg/l 標準液を無機培地で希釈して 1.0 mg/l 標準液を調製し 低濃度区添加用 C 標準液とした 4.5 試験土壌及び試験液の調製 4.5.1 土壌系 (1) 試験区 [ 計 21 個 :n=3 サンプリングポイント 7 点 ] 500 ml 容の試験容器内に小型容器を入れ 小型容器に滅菌していない 4.3.1 の土壌 5.0 g 4.4.1 で調製した添加用 C 標準液 0.5 ml 及び精製水 1.0 ml を加えた後 試験容器を密閉した 試験容器の略図を図 1 に示す (2) 滅菌区 [ 計 8 個 :n=2 サンプリングポイント 4 点 ] 滅菌後の 4.3.1 の土壌を用いて試験区と同様に調製した (3) 対照区 [ 計 4 個 :n=2 サンプリングポイント 2 点 ] 500 ml 容の試験容器内に小型容器を入れ 小型容器に滅菌していない 4.3.1 の土壌 5.0 g 及び精製水 1.5 ml を加えた後 試験容器を密閉した 4.5.2 汚泥系 (1) 試験区 [ 計 21 個 :n=3 サンプリングポイント 7 点 ] 500 ml 容の試験容器に 4.3.2 で調製した滅菌していない活性汚泥のろ液 50 μl 4.4.2 で調製した添加用 C 標準液 10 ml 及び無機培地 90 ml を加えた後 試験容器を密閉した 試験容器の略図を図 1 に示す (2) 滅菌区 [ 計 8 個 :n=2 サンプリングポイント 4 点 ] 4.3.2 で調製した滅菌後の活性汚泥のろ液を用いて試験区と同様に調製した (3) 対照区 [ 計 4 個 :n=2 サンプリングポイント 2 点 ] 500 ml 容の試験容器に 4.3.2 で調製した滅菌していない活性汚泥のろ液 50 μl 及び無機培地 100 ml を加えた後 試験容器を密閉した 6
蓋 試験土壌 5 g 試験液 100 ml 土壌系 汚泥系 図 1 試験容器の略図 4.6 培養方法 4.5 で調製した試験土壌及び試験液を 22 ±2 の暗所で培養した また 汚泥系の試験液はスターラーで撹拌した なお 予備試験において 培養終了時の試験雰囲気を酸化還元指示薬のレサズリンを用いて確認したところ 密閉状態でも好気的条件が維持されていることが確認された 4.7 試験土壌及び試験液の前処理及び分析 4.7.1 前処理表 1 に示すサンプリングポイントで必要数の試験土壌及び試験液を取り出し C 及び CA を分析するための前処理を行った 前処理方法については 外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル ( 水質 底質 水生生物 ) 平成 10 年 10 月環境庁水質保全局水質管理課 を参考にした 前処理フロースキームを図 2 に示す 7
試験土壌 5 g 塩酸酸性下でアセトン抽出 ( 振とう及び超音波照射 各 3 回 ) 遠心分離 アセトン層 残渣 ジクロロメタン抽出 ( 振とう 2 回 ) ジクロロメタン層 水層 脱水 定容 分取 分取 濃縮 濃縮 誘導体化 *2 定容 *3 定容 *3 GC-MS(CA) GC-MS(C) *2 N,O-bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide *3 内標準液 ( ピレン-d10) を添加 図 2-1 前処理フロースキーム ( 土壌系 ) 8
試験液 100 ml 塩酸酸性下でジクロロメタン抽出 ( 振とう 2 回 ) ジクロロメタン層 水層 脱水 定容 分取 分取 濃縮 濃縮 誘導体化 *4 定容 *5 定容 *5 GC-MS(CA) GC-MS(C) *4 N,O-bis(trimethylsilyl)trifluoroacetamide *5 内標準液 ( ピレン-d10) を添加 図 2-2 前処理フロースキーム ( 汚泥系 ) 9
4.7.2 C 及び CA の定量分析 4.7.1 で調製した分析試料中の C 及び CA は ピレン-d10 を内標準物質とした内標準法により GC-MS で定量した GC-MS 分析条件を以下に示す 機器 :GCMS-Q2010( 島津製作所 ) GC 条件 カラム :H-5MS(Agilent Technologies) 30 m 0.25 mmi.d. 膜厚 0.25 µm カラム温度 :50 (3 min) 1 200 (0 min) 2 250 (3 min) 昇温速度 :150 /min 210 /min キャリアガス : ヘリウム 試料導入部温度 :250 注入法 : スプリットレス注入法 MS 条件 イオン化法 : 電子衝撃イオン化法 (EI) 検出法 : 選択イオンモニタリング (SIM) 測定イオン (m/z) :C( 誘導体 ) 323( 定量 ) 338( 確認 ) CA 280( 定量 ) 282( 確認 ) ピレン-d10( 内標準 ) 212( 定量 ) イオン源温度 :250 イオン化電圧 :70 ev インターフェース温度 :250 10
4.7.3 回収試験前処理方法及び分析方法の妥当性を確認するため C 及び CA について試験土壌及び試験液からの回収試験を実施した 滅菌した土壌及び活性汚泥を用いて 高濃度区 ( 土壌系 :1.0 mg/kg 汚泥系 1.0 mg/l) 及び低濃度区 ( 土壌系 :0.10 mg/kg 汚泥系 0.10 mg/l) の試験土壌及び試験液を調製した 試験土壌及び試験液への C の添加については 4.4 及び 4.5 と同様に実施したが CA は水に不溶であることから 25 mg/l ( 土壌系高濃度区用 ) 2.5 mg/l( 土壌系低濃度区用 ) 500 mg/l( 汚泥系高濃度区用 ) 50 mg/l( 汚泥系低濃度区用 ) の CA アセトン溶液を別途調製し それぞれ 0.2 ml を試験土壌及び試験液に添加した また 生分解性試験の培養後の C 及び CA の状態に近づける ( すなわち 吸着や揮散の影響を考慮する ) ため 試験土壌及び試験液は 1 日間培養した後 4.7.1 に従って前処理を行い 4.7.2 に従って分析した 連数は各 n=3 で実施した 回収試験結果を表 3 に示す 回収率は 72.9%~104% と良好であり 適切な前処理方法及び分析方法であることが示された よって 生分解性試験における C 及び CA の検出濃度に対する回収率補正は実施しなかった 表 3 回収試験結果 分析対象物質 高濃度区 (1.0 mg/kg) 土壌系 低濃度区 (0.10 mg/kg) 回収率 *6 高濃度区 (1.0 mg/l) 汚泥系 低濃度区 (0.10 mg/l) C 72.9 ± 0.7 77.1 ± 4.5 98.8 ± 5.2 93.2 ± 1.9 CA 81.4 ± 2.5 81.3 ± 4.5 104 ± 3.4 96.4 ± 2.8 *6 平均値 ± 標準偏差 11
4.8 試験結果 4.8.1 土壌系土壌系における C の濃度及び残留率 並びに CA の濃度及び変換率の経時変化を表 4 及び図 3 に示した 表 4-1 C の濃度及び残留率の経時変化 ( 土壌系 ) 試験区分 培養日数 ( 日後 ) 高濃度区 (1.0 mg/kg) 検出濃度 *7 (mg/kg) 残留率 *8 低濃度区 (0.10 mg/kg) 検出濃度 *7 (mg/kg) 残留率 *8 0 0.78 ± 0.023 78 0.071 ± 0.002 71 7 0.38 ± 0.039 38 0.015 ± 0.001 15 14 0.24 ± 0.029 24 <0.01 0 試験区 21 0.12 ± 0.004 12 <0.01 0 28 0.081 ± 0.015 8 <0.01 0 35 0.056 ± 0.003 6 <0.01 0 49 0.030 ± 0.004 3 <0.01 0 0 0.88 ± 0.034 88 0.083 ± 0.008 83 滅菌区 14 0.92 ± 0.030 92 0.087 ± 0.001 87 28 0.85 ± 0.049 85 0.084 ± 0.006 84 49 0.72 ± 0.005 72 0.059 ± 0.005 59 対照区 0 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 *7 平均値 ± 標準偏差 *8 C 残留率は以下の式により算出した 残留率 = C 検出濃度の平均値 /C 理論濃度 100 なお 高濃度区及び低濃度区の C 理論濃度はそれぞれ 1.00 mg/kg 及び 0.100 mg/kg である また 検出濃度が定量下限未満となった際の残留率については 0 と表示した 12
表 4-2 CA の濃度及び変換率の経時変化 ( 土壌系 ) 試験区分 培養日数 ( 日後 ) 高濃度区 (1.0 mg/kg) 検出濃度 *9 (mg/kg) 変換率 *10 低濃度区 (0.10 mg/kg) 検出濃度 *9 (mg/kg) 変換率 *10 0 <0.01 0 <0.01 0 7 0.026 ± 0.003 2 0.019 ± 0.003 18 14 0.053 ± 0.004 5 0.030 ± 0.001 29 試験区 21 0.083 ± 0.009 8 0.029 ± 0.001 27 28 0.088 ± 0.005 8 0.028 ± 0.005 27 35 0.11 ± 0.007 11 0.028 ± 0.001 26 49 0.15 ± 0.002 14 0.028 ± 0.002 26 0 <0.01 0 <0.01 0 滅菌区 14 <0.01 0 <0.01 0 28 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 対照区 0 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 *9 平均値 ± 標準偏差 *10 CA 変換率は以下の式により算出した 変換率 = CA 検出濃度の平均値 /CA 理論濃度 100 なお CA 理論濃度とは 添加した C がすべて CA に変換されたときの濃度であり 高濃度区は 1.05 mg/kg 低濃度区は 0.105 mg/kg である また 検出濃度が定量下限未満となった際の変換率については 0 と表示した 13
100 C 残 80 留率又 60 は C A 40 生成率 20 C 残留率 CA 変換率 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 培養日数 ( 日後 ) 図 3-1 C 残留率及び CA 変換率の推移 ( 土壌系 高濃度区 ) C 残留率又は C A 生成率 100 80 60 40 20 C 残留率 CA 変換率 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 培養日数 ( 日後 ) 図 3-2 C 残留率及び CA 変換率の推移 ( 土壌系 低濃度区 ) 14
4.8.2 汚泥系の結果 汚泥系における C の濃度及び残留率 並びに CA の濃度及び変換率の経時変化を表 5 及び図 4 に示した 表 5-1 C の濃度及び残留率の経時変化 ( 汚泥系 ) 試験区分 培養日数 ( 日後 ) 高濃度区 (1.0 mg/l) 検出濃度 *11 (mg/l) 残留率 *12 低濃度区 (0.10 mg/l) 検出濃度 *11 (mg/l) 残留率 *12 0 0.94 ± 0.023 94 0.091 ± 0.004 91 7 0.92 ± 0.037 92 0.093 ± 0.003 93 14 1.0 ± 0.044 100 0.097 ± 0.004 97 試験区 21 0.92 ± 0.019 92 0.091 ± 0.002 91 28 0.84 ± 0.073 84 0.098 ± 0.010 98 42 0.98 ± 0.007 98 0.096 ± 0.003 96 49 0.82 ± 0.019 82 0.085 ± 0.002 85 0 0.93 ± 0.014 93 0.090 ± 0.004 90 滅菌区 14 1.0 ± 0.082 100 0.098 ± 0.003 98 28 0.91 ± 0.020 91 0.098 ± 0.002 98 49 0.84 ± 0.060 84 0.082 ± 0.001 82 対照区 0 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 *11 平均値 ± 標準偏差 *12 C 残留率は以下の式により算出した 残留率 = C 検出濃度の平均値 /C 理論濃度 100 なお 高濃度区及び低濃度区の C 理論濃度はそれぞれ 1.00 mg/l 及び 0.100 mg/l である また 検出濃度が定量下限未満となった際の残留率については 0 と表示した 15
表 5-2 CA の濃度及び変換率の経時変化 ( 汚泥系 ) 試験区分 培養日数 ( 日後 ) 高濃度区 (1.0 mg/l) 検出濃度 *13 (mg/l) 変換率 *14 低濃度区 (0.10 mg/l) 検出濃度 *13 (mg/l) 変換率 *14 0 <0.01 0 <0.01 0 7 <0.01 0 <0.01 0 14 <0.01 0 <0.01 0 試験区 21 <0.01 0 <0.01 0 28 <0.01 0 <0.01 0 42 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 0 <0.01 0 <0.01 0 滅菌区 14 <0.01 0 <0.01 0 28 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 対照区 0 <0.01 0 <0.01 0 49 <0.01 0 <0.01 0 *13 平均値 ± 標準偏差 *14 CA 変換率は以下の式により算出した 変換率 = CA 検出濃度の平均値 /CA 理論濃度 100 なお CA 理論濃度とは 添加した C がすべて CA に変換されたときの濃度であり 高濃度区は 1.05 mg/l 低濃度区は 0.105 mg/l である また 検出濃度が定量下限未満となった際の変換率については 0 と表示した 16
100 C 残 80 留率又 60 は C A 40 生成率 20 C 残留率 CA 変換率 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 培養日数 ( 日後 ) 図 4-1 C 残留率及び CA 変換率の推移 ( 汚泥系 高濃度区 ) 100 C 残 80 留率又 60 は C A 40 生成率 20 C 残留率 CA 変換率 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 培養日数 ( 日後 ) 図 4-2 C 残留率及び CA 変換率の推移 ( 汚泥系 低濃度区 ) 17
4.9 考察 4.9.1 土壌系について試験区の高濃度区 (C 添加濃度 1.0 mg/kg) においては 試験終了時 ( 培養 49 日後 ) の C の残留率は 3% CA への変換率は 14% であった 試験区の低濃度区 (C 添加濃度 0.10 mg/kg) においては 培養 49 日後の C の残留率は 0% CA への変換率は 26% であった 高濃度区よりも低濃度区のほうが変換率は高かったが 高濃度区では CA が引き続き増加する傾向が示された 低濃度区では CA の変換率が 26% 程度で一定になっていることを考慮すると 高濃度区においても最終的には低濃度区と同程度の変換率になると推察される 一方 滅菌区における高濃度区及び低濃度区の培養 49 日後の C の残留率は それぞれ 72% 及び 59% と試験区の培養 49 日後の C の残留率を上回っており かつ CA の生成は認められなかった これらの結果は 土壌中の微生物の作用により C から CA への変換が生じたことを示している なお 試験区の高濃度区及び低濃度区の試験開始時 ( 培養 0 日後 ) における C の残留率はそれぞれ 78% 及び 71% であったが これらの値は回収率 (4.7.3 表 3 参照 ) と同程度であり 回収率補正を行った場合の C 残留率はそれぞれ 110% 及び 92% になることから 培養 0 日後における C の残留率の低下は生分解によるものではないと考えられる また 培養 49 日後の滅菌区の低濃度区において C の残留率の低下が認められた 土壌の滅菌は 高圧蒸気滅菌及び乾熱滅菌を併用 (4.3.1 参照 ) したが 滅菌土壌中に極僅かに生存した微生物が培養期間中に増殖して C を分解したと推察される 我が国では C は平成 2 年に農薬登録が失効して使用が禁止されていること並びに対照区において C 及び CA が不検出であったことより 今回使用した土壌中の微生物は C による馴化を受けていないと考えられる したがって 本試験結果より 一般的な土壌環境において C から CA への変換が生じる可能性が示唆された 4.9.2 汚泥系について試験区の高濃度区 (C 添加濃度 1.0 mg/l) 及び低濃度区 (C 添加濃度 0.10 mg/l) における試験終了時 ( 培養 49 日後 ) の C の残留率はそれぞれ 82% 及び 85% であり 土壌系のような C の残留率の顕著な低下は認められず CA への変換も認められなかった したがって 汚泥系には C を CA に変換する微生物はいなかったと考えられる 本試験結果より 一般的な水環境においては C から CA への変換は生じ難いことが示唆された 18
5. まとめ日本の土壌及び活性汚泥を用いて C の好気的生分解性試験を実施することより C から CA への変換率を調査した 試験終了時 ( 培養 49 日後 ) において 土壌系の高濃度区 (C 添加濃度 1.0 mg/kg) の C から CA への変換率は 14% であり 低濃度区 (C 添加濃度 0.10 mg/kg) の C から CA への変換率は 26% であった 高濃度区は CA への変換率が上昇傾向にあったことから 更に時間を経れば低濃度区と同程度の変換率になると推察される 一方 汚泥系においては 高濃度区 (C 添加濃度 1.0 mg/l) 及び低濃度区 (C 添加濃度 0.10 mg/l) ともに C の顕著な分解は認められず CA への変換は認められなかった 以上より 一般的な土壌環境中で C から CA へ変換する可能性はあるが 一般的な水環境中では CA への変換は生じ難いことが示唆された なお 本試験の培養 7 日後までの結果は平成 24 年 10 月にスイスのジュネーブで開催された第 8 回 ORC において我が国より報告され C とその塩及びエステル類について Os 条約附属書 D の段階から附属書 E( リスクプロファイル案の作成 ) の段階に進む根拠の一つとなった さらに 本試験の最終結果については ORC 会期間作業グループへの情報提供を行い 第 9 回 ORC に向けて作成中のリスクプロファイル案に反映される見込みである 6. 参考文献農林水産省, 農薬の登録申請に係る試験成績について ( 平成 12 年 11 月 24 日付け 12 農産第 8147 号農林水産省農産園芸局長通知 ) 別添 農薬の登録申請時に提出される試験成績の作成に係る指針. OECD (1992) Guideline for testing of chemicals, Ready Biodegradability 301D Closed Bottle Test. 19