月初の消費点検(3/4)~消費税増税の判断を控えて~

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2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

12月CPI

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

( 平成 31 年 1 月判断 ) 平成 31 年 1 月 財務省北陸財務局 富山財務事務所 富山市丸の内 1 丁目 5 番 13 号 ( 富山丸の内合同庁舎 5 階 ) TEL(076) ( 財務課直通 )

月別の売上でみると 百貨店については 夏物衣料が好調だった 7 月と一部店舗で閉店セールを行った 9 月を除いて前年同月を下回っています 一方 スーパーについては 台風の影響があった 8 月を除いて 前年同月を上回っています 1,2 1-3 平成 28 年百貨店 スーパー販売額合計 ( 北海道 :

日本経済見通し:2017 年の消費増税に向けた

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

Economic Indicators   定例経済指標レポート

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

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< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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経済・物価情勢の展望(2017年10月)

順調な拡大続くミャンマー携帯電話市場

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管内 ( 東北 6 県 ) の経済動向 平成 27 年 1 月 15 日 < 管内の経済動向 > ~26 年 11 月の経済指標を中心として ~ 全体の動向 : 緩やかな持ち直し傾向にあるものの 一部に弱い動きがみられる 鉱工業生産 : 生産は一進一退で推移している 個人消費 : 持ち直し傾向にある

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

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各商品の動きについて 新規出店を含めた全店ベースの前年比でみると 衣料品の減少と飲食料品の増加がここ数年のトレンドとして定着しており 7 年も衣料品は減少し 飲食料品は増加した 衣料品が減少傾向にあるのは 販売形態の多様化により 購入先として衣料品専門店や通販 インターネットショッピングなどの選択肢

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月例経済報告

RTE月次レポート企画

本稿の分析目的 本稿では 平成 6 4 月に実施された消費増税による産業活動への影響について 前回の消費増税時 ( 平成 9 ) あるいはリーマンショック時にみられた産業活動への影響と比較しながら考察する 特に 前回増税時との比較においては 増税の前平均からの変動を比較することで 6 4 月に実施さ

1. 総論 総括判断 都内経済は 回復している 項目前回 ( 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断回復している 回復している ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 1 月判断以降 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判断している ( 判断の要点 ) 個人消費

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富山県金融経済クォータリー(2018年夏)

I. 調査結果概況 景気判断 DI( 現状判断 ) は小幅に上昇し最高値を更新 仕入原価高止まりも客単価が上昇 10 月スーパーマーケット中核店舗における景気判断 49.1 と小幅に上昇し 2010 年 4 月の調査開始以降最高値を記録した 経営動向調査によると売上高 DI が 1.1 とはじめてプ

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

富山県金融経済クォータリー(2018年秋)

2 自動車登録台数 ( 台 ) 2,, 図 2 消費税導入 税率引き上げ時における自動車登録台数 ( 三重県 ) の推移 景気後退期, 6, 物品税の廃止による反動増 駆け込み需要 反動減 4, アジア通貨危機平成 9 年 5 月 ~ リーマンショック 2, 平成 9 年 月金融危機 ( 三洋 拓銀

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

タイトル

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

2014~2016年度 東海経済見通し

実体経済 物価 (1) 現状判断 関連統計の動き 生産 輸出 増加している 増加している 鉱工業生産は 4~6 月に続き 7~9 月も前期比増加した後 10 月は小幅ながら前月比減少した 業種別にみると 輸送機械は 自動車部品を中心に緩やかに増加している 電子部品 デバイス はん用 生産用機械 (

1. 総論 総括判断 県内経済は 緩やかに回復しつつある 項目前回 (3 年 4 月判断 ) 今回 (3 年 7 月判断 ) 前回比較 総括判断緩やかに回復しつつある 緩やかに回復しつつある ( 注 )3 年 7 月判断は 前回 4 月判断以降 足下 (7 月末 ) の状況までを含めた期間で判断して

金融政策決定会合における主な意見

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

<4D F736F F D20819A819A8DC58F49835A C C8E816A2E646F63>

RTE月次レポート企画

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

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エコノミスト便り

1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ


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サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

平成10年7月8日

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

最近の県内経済情勢は 回復しつつある 前回 (30 年 4 判断 ) 前回比較 今回 (30 年 7 判断 ) 総括判断回復しつつある 回復しつつある 総括判断の要点 個人消費は 百貨店 スーパーで底堅いものとなっており コンビニエンスストアで堅調となっているほか ドラッグストア販売で前年を上回って

(2) 住宅投資 住宅投資は 横ばい圏内で推移している 新設住宅着工戸数の内訳をみると 持家は 増加に転じてきている 貸家 や分譲は 水準を切り下げている (3) 設備投資設備投資は 受注や収益の好調を背景に水準を切り上げている 建設投資の先行指標である建築着工床面積 ( 非居住用 ) は 振れがあ

別紙2

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

有償ストック・オプションの会計処理が確定

個人消費 ( やや良い ) スーパー 百貨店売高 スーパー売高は 全店ベースで前年同期を 年 月期の個人消費関連 は スーパー売高が 全店ベース ( 前年同期比.% 増 ) は 新規出 回り 既存店ベースは 前年同期を下回る 百貨店売高は前年同期を回る 店効果などにより 前年同期を回 りました 品目

中国 資金流出入の現状と当局による対応

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平成 31 年 1 月 17 日東北経済産業局 管内 ( 東北 6 県 ) の経済動向 ( 平成 30 年 11 月分 ) ~ 一部に弱い動きがみられるものの 緩やかに持ち直している ~ 鉱工業生産 : 個人消費 : 住宅着工 : 公共投資 : 設備投資 : 持ち直しの動きとなっている足踏み状態とな

○ユーロ

資料1

本稿のポイント における個人消費と所得の動向をみると 所得が対比弱めで推移してきた一方 個人消費の堅調さは並みで推移するなど 所得対比でみた個人消費の堅調さ が目立つ の個人消費の特徴を業態別にみると 百貨店 がに比べて好調である一方 スーパー が弱めの姿となっている また 品目別にみると 衣料品

東京都の経済情勢報告 平成 31 年 1 月 30 日 財務省関東財務局 東京財務事務所 掲載した経済指標等については速報値を含む

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円安の波及効果と企業収益に与える影響

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年金生活者の実質可処分所得はどう変わってきたか

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

1. 総論 総括判断 県内経済は 回復しつつある 項目前回 (29 年 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断緩やかに回復しつつある 回復しつつある ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 29 年 1 月判断以降 3 年 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

高値となった後 下がり始めた 前述の通り CI 一致指数は 生産や雇用など様々な経済指標を統合し算出されている そのため CI 一致指数の上昇 下降にどの指標 が寄与しているのかについても 内閣府は詳細に発表している 表 1は 各指標がCI 一致指数に対してプラスに寄与したのか マイナスに寄与したの

月例経済報告

( 公社 ) 近畿圏不動産流通機構市況レポート市況トレンド /1 年 7~9 月期の近畿圏市場 1. 中古マンション市場の動き 成約価格は前年比で 3 期連続上昇 1 年 7~9 月期の近畿レインズへの成約報告件数は,9 件と 前年同期比で 1.% 増加した (P1 図表 1) 新規登録件数は 15

九州・沖縄における消費税率引き上げの影響について~駆け込み需要と先行きの見方~

2018~2019年度日本経済見通し|第一生命経済研究所|新家義貴

消費増税と原油高でデフレ脱却とインフレ目標はどうなる?

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

原油高で消費者物価と家計のエネルギー負担額はどうなる?


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経済分析レポート 14 年 11 月 5 日全 6 頁 月初の消費点検 (3/4)~ 消費税増税の判断を控えて ~ 消費税増税の影響は緩和しつつあるも盤石とは言えず エコノミック インテリジェンス チームエコノミスト長内智エコノミスト久後翔太郎 [ 要約 ] 14 年 月の乗用車販売台数 ( 軽自動車を含む 商用車等を除く ) は前年比 7.4% と 9 月 ( 同 3.2%) から減少率が拡大し 前年比マイナスは 4 ヶ月連続となった 乗用車販売の基調を捉えるために季節調整値 ( 大和総研による試算値 ) を確認すると 月は前月比 3.8% と 2 ヶ月ぶりに減少した これは前回のレポートで言及したように 9 月に大きく増加 ( 同 +11.1%) した揺り戻しによるものと捉えられ 9~ 月を均してみると 持ち直しの動きが継続していると評価できる 百貨店大手 4 社の月次速報の結果を基に推計すると 月の百貨店売上高 ( 全国 ) は既存店ベースで前年比.9%( 大和総研による試算値 ) と前年を小幅に下回った 季節調整値 ( 全店ベース 1 店舗当たり ) で見ても 前月比 2.1%( 大和総研による試算値 ) とやや足踏みが見られる ただし 当社は 台風の影響を除くと緩やかな回復を続けていると評価する スーパー販売は消費税率引き上げ後の反動減からすでに持ち直しており 月の東大日次売上高指数の前年比がゼロを中心に推移していることを踏まえると 引き続き底堅い状況にあると考えている なお スーパー販売にも台風の上陸がマイナスに作用したと考えられるが 基調として目立った影響は見られなかった 家計消費支出のうち 株式売買手数料 の代理変数である株式売買代金 ( 全国 ) は 月に前月比 +9.8%( 大和総研による試算値 ) と 3 ヶ月連続で増加し プラス幅も前月 ( 同 +4.4%) から拡大した模様である の結果を踏まえると 月の消費総合指数 -12 月の家計消費支出 (GDP ベース ) に対する株式売買代金の押し上げ寄与は 前月及び前期より拡大する公算が大きい 株式会社大和総研丸の内オフィス -6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

2 / 6 月の概要 月初に確認できる経済指標に限ると 14 年 月の個人消費は 消費税率引き上げの影響が緩和していることを示す結果となったものの 台風や地方の景気回復の遅れなどの影響も見られ 消費の足腰はまだ盤石とは言えない 百貨店とスーパーの販売額は好調な秋冬物商品が支えとなり 概ね前年並みの水準で推移し 乗用車販売台数も持ち直しの動きが続いている ただし 百貨店とスーパー販売はまだ明確な拡大局面に入ったとは言えず 乗用車販売台数も現在の水準では物足りない 百貨店販売については 大都市と地方で回復ペースに差が出ている模様だ 消費の先行きを考える上で重要なポイントは 冬のボーナスや来季の賃上げといった所得面の動向である 日本銀行が 月末に一段の金融緩和を決定して 株価が大幅に上昇したことも今後の消費に対してプラスに作用すると期待される また 年末にかけて策定される 14 年度補正予算の中に 消費税増税の影響が大きい地方や低所得者層の消費を喚起するような対策が盛り込まれるか否かも今後の注目点となろう 1. 乗用車販売の動向 14 年 月の乗用車販売台数 ( 軽自動車を含む 商用車等を除く ) は前年比 7.4% と 9 月 ( 同 3.2%) から減少率が拡大し 前年比マイナスは 4 ヶ月連続となった ただし 7~8 月と 9~ 月の前年比マイナスについては 状況が大きく異なっている点に注意が必要だ 前者は 消費税率引き上げ後の反動減からの回復が予想以上に遅れたことによるもので ネガティブな結果だったと言える 一方 後者は 前年に乗用車販売が大きく増加していた裏に過ぎず その影響を割り引くと内容は決して悪くない 車種別には 軽乗用車 ( 同 +.1%) が前年並みの水準を維持したものの 昨年に販売が好調だった裏の影響で 小型乗用車 ( 同 15.7%) と普通乗用車 ( 同 6.2%) が大幅に減少して全体を押し下げた 乗用車販売の基調を捉えるために季節調整値 ( 大和総研による試算値 ) を確認すると 月は前月比 3.8% と 2 ヶ月ぶりに減少した これは前回のレポートで言及したように 9 月に大きく増加 ( 同 +11.1%) した揺り戻しによるものと捉えられ 9~ 月を均してみると 持ち直しの動きが継続していると評価できる この背景として 8 月末以降に新型車が相次いで投入されたことに加えて 所定内給与が増加傾向にあることなどを背景に 消費者の購買意欲が徐々に回復していることが指摘できる 過去の制度要因による反動減からの回復状況と比較すると 足下の乗用車販売の推移は 前回増税時よりも強く 前回のエコカー補助金終了後を若干下回る水準で推移している 車種別には 普通乗用車 (9 月 : 前月比 +11.7% 月 : 同 5.7%) と軽乗用車 (9 月 : 前月比 +23.3% 月 : 同 5.8%) の減少が全体を押し下げた これまで減少傾向にあった小型乗用車 (9 月 : 前月比 3.2% 月 : 同 +1.1%) が 3 ヶ月ぶりのプラスとなり 販売に底打ちの兆しが出始めた点はポジティブ 9 月末に販売が開始された新型車が一定程度プラスに寄与したとみられ 同新型車の受注状況は足下でも好調な模様である

3 / 6 7-9 月期の家計消費支出 (GDP ベース ) に対する乗用車のプラス寄与は 7 月と 8 月の販売が低調だったことから限定的なものに留まると考える しかし 9 月以降に乗用車販売が持ち直しており 先行きも新型車効果や良好な雇用 所得環境などを背景に増加傾向が続くと想定されることから 乗用車販売の家計消費支出に対する押し上げ効果は -12 月期になって顕在化する見込みである と前回の消費税増税時の販売動向を踏まえると 15 年 月の消費税率引き上げが決定された場合 来年の春頃から駆け込み需要による販売押し上げ効果が再度出始める見込みである また 消費税増税後の反動減の影響が残存する期間としては 半年程度を想定しておく方が良いだろう 図表 1 乗用車の販売台数 ( 前年比 ) と内訳 35 25 15 5-5 - -15 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 13 14 軽乗用車小型乗用車普通乗用車乗用車 ( 含軽 ) 図表 2 乗用車販売 ( 季節調整値 ) 図表 3 乗用車販売の内訳 ( 季節調整値 ) 1 1 1 9 (1996/13=) [ 参考 ] 前回のエコカー補助金 (11/7~13/6 の推移 ) 18 16 14 12 ( 万台 ) 小型乗用車 軽乗用車 8 7 1996/13 1997/14 8 普通乗用車 1 3 5 7 9 12 13 14 ( 注 1) 大和総研による季節調整値 ( 注 2) 前回のエコカー補助金の期間は 11 年 12 月 ~12 年 9 月 ( 申請の受付終了は 12 年 9 月 21 日 ) ( 出所 ) 日本自動車販売協会連合会 全国軽自動車協会連合会統計より大和総研作成

4 / 6 2. 百貨店販売の動向 百貨店大手 4 社の月次速報の結果を基に推計すると 月の百貨店売上高 ( 全国 ) は既存店ベースで前年比.9%( 大和総研による試算値 ) と前年を小幅に下回った 季節調整値 ( 全店ベース 1 店舗当たり ) で見ても 前月比 2.1%( 大和総研による試算値 ) とやや足踏みが見られる 1 気温の低下によって秋冬物の販売は好調であったとみられるが 台風の影響が一部店舗に出たことや地方の消費回復ペースの遅れなどが響いたようだ このため 年末にかけて策定される 14 年度補正予算では 地方対策が重要な検討課題となろう 当社は 台風の影響があった割に百貨店販売の落ち込みは小さいと考えており それを除くと緩やかな回復を続けていると評価する また 8 月以降は 消費税率引き上げ前の水準を概ね取り戻しており 消費税率引き上げの影響はほぼ一巡した状況にある 図表 4 百貨店販売額の前年比 ( 既存店 ) 図表 5 百貨店販売額の推移 ( 全店 ) 25 15 5-5 - -15-1996/13 1997/14 1 125 1 115 1 5 95 9 85 8 (1996/13=) 1996/13 1997/14 ( 注 1) 百貨店売上高は税抜き 直近の値は百貨店大手 4 社の売上速報による大和総研の推計値 ( 注 2) 全店の売上高は 1 店舗当たりで 大和総研による季節調整値 ( 出所 ) 日本百貨店協会統計より大和総研作成 3. スーパー販売の動向 スーパー販売は消費税率引き上げ後の反動減からすでに持ち直しており 月の東大日次売上高指数の前年比がゼロを中心に推移していることを踏まえると 引き続き底堅い状況にあると考えている スーパー販売にも台風の上陸がマイナスに作用したと考えられるが 基調として目立った影響は見られなかった 他方 東大日次物価指数が 月に入って一段と弱い動きになっている点には留意する必要がある この背景としては 14 年度の新米価格が豊作や在庫の積み上がりによって大きく低下していること 個人消費全体が力強さを欠く中で 価格競争による値下げが実施されている可能性が指摘できる 1 前回の増税時には集計店舗数が増加していたことから 単純に全店データを利用すると回復ペースが強めに出やすい そのため ここでは 1 店舗当たりに換算して推計している

5 / 6 図表 6 東大日次売上高指数 ( スーパー ) 図表 7 東大日次物価指数 ( スーパー ) 4 1..5. -.5-1. -1.5 - -2. - -2.5-2 3 4 5 6 7 8 9 11 1997/14-3. 2 3 4 5 6 7 8 9 11 1997/14 ( 注 ) 東大日次指数は税抜き 7 日移動平均ベース /31 まで ( 出所 ) 東大日次物価指数プロジェクトより大和総研作成 4. その他 ( 消費財の生産及び株式売買代金等 ) 消費財の動向を生産側から確認すると 耐久消費財の生産計画は 月に季節調整済み前月比 1.6% と 2 ヶ月ぶりにマイナスになるものの 11 月には同 +1.8% となり 一進一退の推移が見込まれる 2 耐久消費財の生産は 14 年に入ってから減少傾向にあったが 9 月以降は持ち直しの兆しが出ていると判断できる 他方 非耐久消費財は 月に大幅な減産 ( 前月比 6.2%) となり 11 月もほぼ横ばい ( 同 +.1%) に留まる見込みで ネガティブな内容と言える 非耐久消費財に関しては 企業の生産計画が思った以上に弱くなったことから これまでの回復ペースに変調が出始めていないか来月以降も慎重に見極める必要があろう 家計消費支出のうち 株式売買手数料 の代理変数である株式売買代金 ( 全国 ) は 月に前月比 +9.8%( 大和総研による試算値 ) と 3 ヶ月連続で増加し プラス幅も前月 ( 同 +4.4%) から拡大した模様である 株式売買代金は 5 月から増加傾向を続けており 月 31 日に日本銀行が一段の金融緩和を実施したこともプラスに作用した の結果を踏まえると 月の消費総合指数 -12 月の家計消費支出 (GDP ベース ) に対する株式売買代金の押し上げ寄与は 前月及び前期より拡大する公算が大きい また 月前半の日経平均は 世界経済の先行き不透明感や円安一服などから下落傾向となったものの 月後半は景気に対する過度な懸念が緩和する中で上昇傾向に転じた さらに 月末に日本銀行が追加緩和策を決定したことで日経平均が年初来高値を更新した 株価の上昇は 消費者マインドの改善や資産効果等を通じて 今後の個人消費にプラスの効果をもたらすことが期待される 2 生産統計には 国内向けの生産だけでなく海外向けの生産も含まれる 年基準の鉱工業出荷内訳表のウエイトを確認すると 耐久消費財は国内向けが 81% 海外向けが 19% 非耐久消費財は国内向けが 96% 海外向けが 4% となっている

6 / 6 図表 8 消費財の生産実績と予測 図表 9 株式売買代金と日経平均株価 115 1 5 95 9 85 8 75 7 (=) 非耐久消費財の生産実績と予測 耐久消費財の生産実績と予測 13 14 9 8 7 6 5 4 ( 兆円 ) 株式売買代金 ( 全国 ) 12 13 14 日経平均株価 ( 右軸 ) ( 円 ) ( 年 ), 18, 16, 14, 12,, 8, 6, 4, ( 注 1) 消費財の実線は実績値 ( 製造工業生産予測指数ベース ) 点線は当月見込 翌月予測の値 ( 注 2) 株式売買代金 ( 全国 ) は大和総研による季節調整値 直近月は TOPIX の売買代金の結果を基に推計 ( 出所 ) 図表 8 は経済産業省 図表 9 は東京証券取引所 日本経済新聞社より大和総研作成 図表 ( 参考 ) 政府と日本銀行の個人消費の判断 1 月 内閣府 個人消費は 一部に消費税率引上げに伴う駆け込み需要もみられ 増加している 日本銀行 個人消費は 雇用 所得環境が改善するなかで 引き続き底堅く推移しており 消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている 2 月 3 月 個人消費は 消費税率引上げに伴う駆け込み需要もみられ 増加している 4 月 個人消費は 消費税率引き上げの影響による振個人消費は 消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動により このところ弱い動きとなっている れを伴いつつも 基調的には 雇用 所得環境が改善するもとで底堅く推移している 個人消費は このところ消費税率引き上げに伴う 5 月 駆け込み需要の反動がみられているが 基調的には 雇用 所得環境が改善するもとで底堅く推移し ている 6 月 個人消費は 引き続き弱めとなっているが 一部に持ち直しの動きもみられる 7 月 個人消費は 一部に弱さが残るものの 持ち直しの動きがみられる 8 月 個人消費は 雇用 所得環境が着実に改善するもとで 基調的に底堅く推移しており 耐久財以外の分野では駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある 9 月 個人消費は 持ち直しの動きが続いているものの このところ足踏みがみられる 月 個人消費は 雇用 所得環境が着実に改善するもとで 基調的に底堅く推移しており 駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある 個人消費は 雇用 所得環境が着実に改善するもとで 基調的に底堅く推移しており 駆け込み需要の反動の影響は ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている ( 注 1) 矢印は判断の変化 ( : 引き上げ : 据え置き : 引き下げ ) 報道等を参考に作成 ( 注 2) 基本的に 内閣府は消費税の影響を個人消費の判断に含めている一方で 日本銀行は消費税の影響を除く基調で判断している等の違いがある点に留意が必要である ( 出所 ) 内閣府 日本銀行より大和総研作成