1 脳科学を応用して新産業を創出する 東北大学加齢医学研究所 川島隆太
東北大学加齢医学研究所のシーズ 脳機能イメージング技術 研究専用 3TMRI 装置 200 チャンネル MEG 装置 192 チャンネル EEG 装置 多チャンネル NIRS 動物用 7TMRI 装置 ラット用 EEG 装置 簡易 EEG 携帯型 NIRS 小型 2 チャンネル NIRS 一つのラボでほぼ全ての脳機能イメージング装置をそろえている例は世界でも希 2
機能的 MRI 3
4 機能的 MRI の原理 BOLD 効果 通常状態 脳組織 賦活状態 脳組織 酸化ヘモグロビンは非磁性体 還元ヘモグロビンは磁性体である組織の賦活により 脳血流量は増加するが 酸素消費量は一定
5 機能的 MRI で計測できる信号 刺激 神経活動 数 10 ミリ秒 fmri 信号 数秒 ( 約 6 秒 )
機能的 MRI 信号変化の例 6
ポジトロン CT 装置 7
8 ポジトロン CT の原理 陽電子がある距離を飛行した後 陰電子と結合消滅する時に 180 度反対方向に放出される γ 線 (511KeV) を計測して 生体内における放射能の空間的分布を計測する
ポジトロン CT の原理 9
ポジトロン CT のデータ 10
ポジトロン CT のデータ ( ブドウ糖代謝画像 11
12 脳波計 脳磁計 脳磁計 脳波計
帰還電流- - 脳波計 脳磁計の原理 EPSP + + 計測しているのは 活動電位 ではなく EPSP( 興奮性後シナプス電位 ) によって生じる変化を計測 神経細胞 脳磁図や脳電図では 脳の集合的な電気活動を記録する 脳磁図では 細胞内電流によって生じる磁場の変化を脳電図では 帰還電流を計測する 13
14 脳波計 脳磁計の違い V 電圧計 磁気センサ 脳波計 脳磁計
脳波計 脳磁計のデータ 15
近赤外計測装置 16
17 近赤外計測装置 3 歳児実験風景 0 歳児実験風景
18 近赤外計測装置の原理 頭皮上から頭蓋内に向けて 約 1.5mW の弱い近赤外光を照射すると 光は組織内で散乱 吸収を繰返し 深部まで侵入し 一部は頭皮上に戻ってくる この戻って来た光 - 反射光 - を検出する 成人の場合 検出光の強度は入射光に対して 1 億分の ~ 10 億分の 1 になる ヘモグロビンの種類によって吸光特性が異る点を利用し 波長の違う 2 つの近赤外光 (780nm 830nm) を用いて 酸素化及び還元ヘモグロビンの濃度変化 そしてその総和であり血液量に対応する総ヘモグロビン濃度変化を計測する
近赤外計測装置のデータ 19
脳機能イメージングで観察しているもの エネルギー伝達系 情報伝達系 脳血流 電流 酸素代謝糖代謝 PET fmri NIRS PET PET EEG MEG 20
脳機能イメージング装置の長所と短所 機能的 MRI 装置長所短所 脳全体を観察できる空間分解能が良い 時間分解能が悪い実験室環境でしか測定できない ポジトロンCT 脳全体を観察できる 時間分解能が悪い 空間分解能が良い 実験室環境でしか測定できない 血流やブドウ糖代謝 神経伝達物 装置が非常に高価故 使える施設 質受容体など さまざまな情報を が限られる 得ることができる 脳波計 (EEG) 時間分解能が良い 空間分解能が悪い 装置が安価 SN 比が悪い環境ノイズの影響を強く受ける 脳磁計 (MEG) 時間分解能が良い 空間分解能が悪い実験室環境でしか測定できない環境ノイズの影響を強く受ける 近赤外計測 日常生活環境で計測が可能 大脳表面しか観察できない (NIRS) SN 比が良い 空間分解能が悪い時間分解能が悪い 21
さりげないセンシング 眼電計 頭部加速度計内蔵アイウエア CES2015 Degital trend award Best Wearable 賞受賞 22
23 脳機能の可視化 ブレイン マッピング
24 すいか + テレビ 新たな発想と脳活動 +
イマジネーションの脳と言葉の脳 イマジネーションの脳 音素 言葉を作りだす脳 音素 言葉を聞く脳 単語 単語 語彙をしまっておく脳 言葉を頭の中で操作する脳 文章 文章 イマジネーションは語彙と言語操作能力! Yomogida et al., 2004 25
26 新しい知識に触れた時に湧き上がる 知的興奮 に関わる脳領域 カメの甲羅は我々の肋骨と相同である + 新しい知識に触れた時 知的興奮を覚えた時
好き 嫌いの気持ちは脳の異なった 領域で作られる 好きという判断をしている脳のネットワーク 機能的 MRI による実験 嫌いという判断をしている脳のネットワーク 化粧の色の組み合せが好きか嫌いかを判断させた 27
癒しの感覚は連合野の抑制である 活性化する脳のネットワーク ポジトロン CT による実験 不活性化する脳のネットワーク 自然の風景や音楽を聞かせリラックスをさせた 28
心地良さは前頭前野の抑制である 基底状態 ( 安静時 ) 弱いマッサージ中 ( 不快に感じている ) 近赤外計測による実験 弱いマッサージ中 ( 心地良く感じている ) 強いマッサージ中 ( 心地良く感じている ) マッサージ中に脳計測を行い心地良さ ( 悪さ ) を報告させた 29
足ツボの刺激が大脳の体性感覚野を 活性化する 目のツボを刺激 機能的 MRI による実験 肩のツボを刺激 ペンフィールドが大脳電気刺激で発見した 脳の中の小人 と一致 足ツボを刺激している時の脳活動を計測した 30
31 脳機能の可視化 デコーディング
32 写真を見ている時の脳活動計測 (fmri 実験 ) 好き? 普通? 嫌い?
33 結果 (fmri 実験 ) 好きな写真を見ている時の脳活動 (5 名の平均活動 )
34 写真を見ている時の前頭前野の活動 前頭前野の前 ~ 下面 好き普通普通好き普通 嫌い (time)
35 写真を見ている時の前頭前野の活動 前頭前野の前 ~ 下面 好き普通普通好き普通 嫌い (time) 1.5-1.5 好き判断 (Attractive) に関連する脳活動 普通判断 (Neutral) に関連する脳活動 嫌い判断 (Nonattractive) に関連する脳活動
36 脳機能の可視化 社会応用
37 テレビゲーム中に前頭前野は抑制される 格闘ゲーム シューティングゲーム ゲームの操作に慣れると ほとんどのテレビゲームで前頭前野の活動は抑制される
脳トレゲームの効果なし O w e n et al. ( 2 0 1 0 ) 年齢 : 1 8-6 0 歳トレーニング : 1 ) 推論ゲーム (n = 4, 6 7 8 ) 2 ) 記憶ゲーム (n = 4, 0 1 4 ) 3 ) コントロール (n = 2, 7 3 8 ) 介入期間 : 1 回 10 分 週 3 回 6 週間効果指標 : 推論, 言語性短期記憶, 視空間ワー キングメモリ, 連合学習 推論記憶コントロール 推論記憶コントロール O w e n et al. (2 0 1 0 ) Nature 38
ゲームが学力に与える影響 平日の勉強時間 平日のゲーム時間平日のゲーム時間平日のゲーム時間 平成 25 年度仙台市生活 学習状況調査解析結果より中 1~ 中 3 23919 名 39
前頭前野に抑制がかからないゲームを 開発する 認知速度訓練ゲーム 企業ソフト開発 大学脳機能計測 技術指導 作動記憶訓練ゲーム 40
41 脳機能の可視化 未来への提案 : 日常生活環境下での計測
42 超小型 NIRs プロトタイプ 市販型 42
超小型 NIRS の特徴 脳血流と 頭皮血流等の雑音成分を分離して計測し 脳血流成分のみを抽出 => NIRS を使った BMI には必須の技術脈拍数などのデータも同時取得 => 自律神経系データ利用可能 43
44 前頭前野の機能 背内側前頭前野 (DMPFC) - 社会的認知 背外側前頭前野 (DLPFC) - 認知制御 : 記憶 学習 理解 推理 推測 抑制 意図 注意 判断 眼窩前頭部 (PFC) - 報酬 判断 腹外側前頭前野 (VLPFC) - 言語 非言語情報処理
複雑な実環境下で作業する集団の脳活動計測 45
複雑な実環境下で作業する集団の脳活動計測 脳活動パターンの ゆらぎ の相関係数を計算すると A B C D A - 0.031 0.019 0.049 B 0.031-0.016 0.028 C 0.019 0.016-0.005 D 0.049 0.028 0.005 - 前頭前野内側面の脳活動パターンは個人ごとに異なる 指揮命令者 A の脳活動の ゆらぎ は 操作者 B D の二人と強い相関を持つ : 脳活動パターンが同期している操作者 C の脳活動パターンは 他の 3 人とほとんど同期していない ( 操作者 C は うまくチーム作業ができていない!?) 46
コミュニケーション時の脳活動 47
48 コミュニケーション時の脳活動 コミュニケーションなし話題盛りあがる淡々と会話 被験者 A のデータ 被験者 B のデータ
脳活動リアルタイム可聴化 測定部位 : 背内側前頭前野 脳血流データ ( 総ヘモグロビン濃度 ) ハイパスフィルターローパスフィルター平滑化 音変換 ( 周波数変換 ) 精度 :1/1,000,000 Hz Sin 波 ( 正弦波 ) 可聴域の周波数に割り振り 音楽変換 ( 音階変換 ) ピアノの 88 鍵に当てはめる音階 旋法 音律 ( 川島の心の叫び ) 49
50 脳機能の可視化 未来への提案 : Neuro-feedback
ニューロフィードバックとは 生活習慣や認知機能, 改善のため様々なプログラムや方略が開発されている. しかし 正しい頭の使い方 を自覚できないことが有効性を狭めている. 脳活動を可視化 / 可聴化 自らの脳の使われ方を認識 認知プロセスを変更 調整 自分の脳活動をコントロール 認知 行動を改善 / 強化 ニューロフィードバック (NF) は自分の脳活動のコントロールを身につける訓練. 脳のある領域をコントロールすることで, その領域が担う認知 情動 知覚運動機能の向上につながる. 大きな可能性を持つ, 発展中の分野 [Sulzer2013; Gruzelier2014]: 認知機能向上, 精神疾患改善, 身体リハビリ, アート 創造性 51
ニューロフィードバック訓練による おいしい食べ物を見たときの脳活動で, ダイエットプログラム実行前の中前頭回や, プログラム後の下前頭回の活動の抑制が, ダイエット成功 ( 体重減少 ) 度合いを予測 [Murdaugh et al. 2012] 食欲コントロール MRI ダイエットプログラム 成功 失敗 可聴化フィードバック食事時のニューロフィードバック訓練で, 脳活動から食欲を自覚しコントロールすることで, 過食を避けた楽しい食事! 超小型 NIRS 脳計測 肥満 糖尿病を改善 / 予防! 超小型 NIRS により日常に埋め込まれた NF 訓練を実現 52
NF 脳活動パターン自覚を通じた 優しさ 愛情状態の促進 優しい / 誇らしいエピソードを思い出している時の前頭極などの脳活動パターンを記録, ニューロフィードバックで現在の脳活動パターンをそれに近づけることを習得できる [Mollet al.2014] MRI 可視化フィードバック 脳活動パターンを分類 自分の脳活動をニューロフィードバックし, 自分の感情状態を自覚. 可聴化フィードバック 超小型 NIRS 脳計測 優しさ 愛情状態を志向したコミュニケーション! 53