県計画

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■● 糖尿病

< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

中間とりまとめ素案(公的賃貸住宅のあり方について)

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

第4章:施策と目標 2:生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(3)糖尿病(4)COPD

第3章「疾病の発症予防及び重症化予防 1がん」

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

図表 糖尿病の患者の状況等 宮城県全国出典 メタボリックシンドローム該当者 予備群割合糖尿病の総患者数 ( 人口比 ) 29.3% 26.2% 62,000 人 3,166,000 人 (2.7%) (2.5%) 特定健康診査 特定保健指導の実施状況に関するデータ ( 平成 27(2

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF C B68A888F4B8AB CE8DF48E9197BF88C42E707074>

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-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

Microsoft Word - 1 糖尿病とは.doc

練馬区国保における糖尿病重症化 予防事業について 平成 29 年 3 月 6 日練馬区区民部国保年金課 1 東京都糖尿病医療連携協議会配布資料

Microsoft PowerPoint - 2.医療費プロファイル 平成25年度(長野県・・

わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

宗像市国保医療課 御中

第 3 節心筋梗塞等の心血管疾患 , % % % %

PowerPoint プレゼンテーション

死亡率 我が国における疾病構造 生活習慣病は死亡割合の約 6 割を占めている 我が国の疾病構造は感染症から生活習慣病へと変化 死因別死亡割合 ( 平成 24 年 ) 生活習

Microsoft Word - 44-第4編頭紙.doc

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第2次「健康くるめ21」計画

糖尿病型と判定する 血糖値が糖尿病型でかつ HbA1c が 6.5% 以上で糖尿病型であれば 糖尿病と診断できる 血糖値が糖尿病型でかつ糖尿病の典型的症状があるか確実な糖尿病網膜症が確認された場合も 糖尿病と診断できる 血糖値は糖尿病型であるが HbA1c6.5% 未満で上記の症状や確実な網膜症がな

特定健康診査等実施計画 ( 第 2 期 ) ベルシステム 24 健康保険組合 平成 25 年 3 月 1 日

2

地域医療連携における 医師会の役割

愛知県アルコール健康障害対策推進計画 の概要 Ⅰ はじめに 1 計画策定の趣旨酒類は私たちの生活に豊かさと潤いを与える一方で 多量の飲酒 未成年者や妊婦の飲酒等の不適切な飲酒は アルコール健康障害の原因となる アルコール健康障害は 本人の健康問題だけでなく 家族への深刻な影響や飲酒運転 自殺等の重大

背景及び趣旨我が国は国民皆保険のもと世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた しかし 急速な少子高齢化や国民の意識変化などにより大きな環境変化に直面しており 医療制度を持続可能なものにするために その構造改革が急務となっている このような状況に対応するため 高齢者の医療の確保に関する法律に

1. 趣旨 目的 香川県糖尿病性腎症等重症化予防プログラム 香川県医師会香川県糖尿病対策推進会議香川県国民健康保険団体連合会香川県 本県では 糖尿病患者の人口割合が全国上位にあり 糖尿病対策が喫緊 の課題となっている 糖尿病は放置すると網膜症や腎症 歯周病などの合 併症を引き起こし 患者の QOL

特定健康診査等実施計画 ( 第二期 ) 三重交通健康保険組合 平成 25 年 7 月

特定健康診査等実施計画 ( 第 3 期 ) ベルシステム 24 健康保険組合 平成 30 年 3 月 1 日 ( 最終更新日 : 平成 30 年 7 月 27 日 )

Microsoft Word - 資料の表紙.doc

岡山県糖尿病性腎症 重症化予防プログラム 平成 30 年 3 月 岡山県医師会岡山県糖尿病対策推進会議岡山県糖尿病医療連携体制検討会議岡山県糖尿病対策専門会議岡山県 CKD CVD 対策専門会議岡山県国民健康保険団体連合会岡山県

特定健康診査等実施計画 東京スター銀行健康保険組合 平成 25 年 4 月

第三期 特定健康診査等実施計画 ウシオ電機健康保険組合 平成 30 年 4 月

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結果の概要

資料 4 現行の保健医療計画と 疾病 事業及び在宅医療に係る医療体制について に示された糖尿病医療体制構築に係る指針 現行の保健医療計画 第 1 糖尿病医療の概況糖尿病は インスリンの働きが悪いことによって 血液中にブドウ糖があふれた状態が永く続いた結果 全身に様々な悪影響が生じる疾患であり その原

メディフィットプラスパンフ_通販用_ ai

小松市医師会糖尿病連携推進協議会の取り組み 受診につなげる取り組み 1) 特定健診後 小松市からの受診勧奨 2) 地区別健康懇談会 等 3) 一般社団法人小松能美薬剤師会が主導した 薬局での血糖測定のモデル事業 合併症発症予防の取り組み 4) 診療所における栄養指導 運動指導の強化ー小松市の試みー

福井県糖尿病性腎症重症化予防プログラム福井県医師会福井県糖尿病対策推進会議福井県 1 趣旨 目的本プログラムは福井県医師会 福井県糖尿病対策推進会議および福井県の三者で策定し 県内の医療保険者 ( 以下 保険者 という ) が医療機関と連携して糖尿病性腎症等の重症化予防の対策が容易となるよう基本的な

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

目次 1. 目的 2 2. 人工透析患者の年齢等の分析 3 性別 被保険者 被扶養者 3. 人工透析患者の傷病等の分析 8 腎臓病 併存傷病 平成 23 年度新規導入患者 4. 人工透析 健診結果 医療費の地域分析 13 二次医療圏別 1

結果の概要 Ⅱ 結果の概要第 1 部糖尿病等の状況 1. 糖尿病 表 1 解析対象者 ( 人 ) 総数 20~29 歳 30~39 歳 40~49 歳 50~59 歳 60~69 歳 70 歳以上 ( 再掲 )40-74 歳 総数 4, ,008 2,

1. まとめ 1 糖尿病の現状と課題 予備群を含め 2000 万人を超える生活習慣病 糖尿病 医療体制の整備に匹敵する治療の鍵は 患者の行動変容 である そのために必要なのが (1) 予防から合併症予防まで切れ目のない対策 (2) エビデンスに基づくチーム医療 ( 3) データを活用して様々なステー

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に


特定健康診査等実施計画

Ⅰ 目標達成

07佐渡

計画改訂の趣旨 社会構造が大きく変化し 少子高齢化が進む中 生活環境の改善や医療の進歩などにより 平均寿命が延びている一方で 肥満や糖尿病などの生活習慣病が増加しており 健康づくりや疾病予防の重要性はますます高まっています 子どもから高齢者まで すべての県民が 健やかな生活をおくるために ヘルスプロ

(6/5 19:00修正)資料3 標準的な健診・保健指導プログラム改定のポイント (2) (2)

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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

1 保健事業実施計画策定の背景 北海道の後期高齢者医療は 被保険者数が増加し 医療費についても増大している 全国的にも少子高齢化の進展 社会保障費の増大が見込まれる このような現状から 一層 被保険者の健康増進に資する保健事業の実施が重要となっており 国においても 保健事業実施計画 ( データヘルス

第 2 章計画の推進及び進行管理 1 計画の推進 県 市町村及び県民が 関係機関等と相互に連携を図りながら 県民の歯 口腔の健康づくりを推進します 県における推進 (1) 全県的な推進 県全域の課題を踏まえた基本的施策や方向性を示すとともに 取組の成果について継続的な評価を行い 県民の生涯を通じた歯

Microsoft Word - 特定健康診査等実施計画2期(YNK).docx

特定健康診査等実施計画 豊田合成健康保険組合 平成 30 年 3 月

(7)健診データの受領方法

PowerPoint プレゼンテーション

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

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歯科中間報告(案)概要

特定健康診査等実施計画 第二期 ( 平成 25 年度 ~ 平成 29 年度 ) 第一版 三菱鉛筆健康保険組合 平成 25 年 5 月

,995,972 6,992,875 1,158 4,383,372 4,380,511 2,612,600 2,612, ,433,188 3,330, ,880,573 2,779, , ,

健康ながさき21 (中間見直し版)

特定健康診査等実施計画

平成 27 年 10 月 6 日第 2 回健康増進 予防サービス プラットフォーム資料 協会けんぽ広島支部の取り組み ~ ヘルスケア通信簿について ~ 平成 27 年 10 月全国健康保険協会広島支部 協会けんぽ 支部長向井一誠

対象疾患名及び ICD-10 コード等 対象疾患名 ( 診療行為 ) ICD-10 等 1 糖尿病 2 脳血管障害 3 虚血性心疾患 4 動脈閉塞 5 高血圧症 6 高尿酸血症 7 高脂血症 8 肝機能障害 9 高血圧性腎臓障害 10 人工透析 E11~E14 I61 I639 I64 I209 I

特定健康診査等実施計画 ( 第 3 期 ) 三菱製紙健康保険組合 平成 30 年 4 月

資料 6 広島市健康福祉局保健部保健医療課 元気じゃ健診 ( 特定健診 ) の受診に関する地域包括支援センターから地域住民への呼びかけについて 1. 趣旨 広島市は 全国平均に比べて 平均寿命は長いが 健康寿命は短くなっている また 広島市国民健康保険の 1 人当たり医療費は 政令市の中で最も高くな

第 1 章 ヘルスプランぎふ 21 の基本的な考え方 1 計画策定の趣旨 ヘルスプランぎふ 21 は 岐阜県健康増進計画として平成 14 年 3 月に策定し その後平成 20 年度には 国が策定した 健康日本 21 と連動しながら メタボリックシンドロームに着目した生活習慣病の一次予防に重点をおいた

背景及び趣旨 我が国は国民皆保険のもと世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきた しかし 急速な少子高齢化や国民の意識変化などにより大きな環境変化に直面しており 医療制度を持続可能なものにするために その構造改革が急務となっている このような状況に対応するため 高齢者の医療の確保に関する法律

調書のの見方 新規 新規事業の実施 現行どおり 事業をする 充実 事業の充実 強化を図る 改善 事業の見直し 改善を図る 縮小 事業規模を縮小する 廃止 事業を廃止する 2

第2期データヘルス計画について

都道府県単位での肝炎対策を推進するための計画を策定するなど 地域の実情に応じた肝炎対策を推進することが明記された さらに 近年の状況等を踏まえ 平成 28 年 6 月に基本指針の改正を行い 肝炎対策の全体的な施策目標を設定すること等が追記された 都は 肝炎をめぐる都内の状況や基本指針の改正を踏まえ

市原市国民健康保険 データヘルス計画書

特定健康診査等実施計画 ( 第二期 : 平成 25 年度 ~ 平成 29 年度 ) リクルート健康保険組合 平成 25 年 4 月 1

平成26年患者調査 新旧対照表(案)

04-4-様式1-1★変更有

(この実施計画は「高齢者の医療の確保に関する法律」第19条の規定に基づき作成し、

第三期特定健康診査等実施計画 ニチアス健康保険組合 最終更新日 : 平成 30 年 02 月 20 日

Microsoft Word _nakata_prev_med.doc

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大阪府医師国民健康保険組合 特定健康診査等実施第 2 期計画 ( 平成 25 年 7 月 1 日 ) 1. 計画策定の背景昭和 36 年の国民皆保険の成立により わが国の平均寿命は飛躍的に伸び 今や世界一の長寿国となった しかし 世界に冠たるこの国民皆保険制度は 平均寿命の伸びによる高齢化の急激な進

スライド 1

第2章

Microsoft Word _脂質異常症リリースドラフトv11_SHv2 final.docx

糖尿病は 初めは無症状で経過しますが 血糖値の高い状態が長く続くと口渇 多飲 多尿 体重減少 倦怠感などの症状がみられます 糖尿病は自覚症状が乏しいので 血糖値がある程度改善すると 通院しなくなる人がいます 血液検査を行わなければ糖尿病の状態を知ることはできないので 自覚症状だけに頼ってはいけません


Microsoft Word - 02 H28肝炎対策推進基本指針改訂(溶け込み)

はじめに

表 糖尿病が強く疑われる者 ( 年齢調整後 ) の割合推移 (%) 糖尿病が強く疑われる者 ( 糖尿病有病者 ( 成

特定健康診査及び特定保健指導に係る自己負担額の医療費控除の取扱いの一部変更について(厚生労働省健康局長、保険局長:H )

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

1 疾患別医療費札幌市国保の総医療費に占める入院医療費では 悪性新生物が 21.2% 循環器疾患が 18.6% となっており 循環器疾患では 虚血性心疾患が 4.5% 脳梗塞が 2.8% を占めています 外来医療費では 糖尿病が 7.8% 高血圧症が 6.6% 脂質異常症が 4.3% となっています

求する診療報酬明細書の件数 ( 入院以外 ) は 糖尿病や高血圧 心疾患などの生活習 慣病が約 4 割を占めている 生活習慣病患者が増加することにより 医療費は年々増 大していくことが考えられる 図 2 戸田市の医療費の推移 ( ウ ) 健康寿命の延伸県は健康寿命を 65 歳に達した県民が自立した生

Transcription:

第 3 節糖尿病対策 1 糖尿病医療対策 基本計画 糖尿病患者や糖尿病ハイリスク者に適切な生活習慣及び治療が継続できるよう 病院 診療所 保健所 市町村 事業所などの関係機関の連携を強化し 在宅医療提供体制の整備に努めます 治療中断者や未治療者に対する糖尿病の知識普及や啓発を推進します 現状と課題 現状 1 糖尿病の現状 糖尿病は 1 型糖尿病とわが国の糖尿病の大部分を占める2 型糖尿病に分けられます このうち2 型糖尿病の発症には肥満や食生活 運動 ストレス等の生活習慣が密接に関連しています また 受療中にも関わらずコントロールが不良な患者が多い状況にあります 平成 19 年に行われた国民健康 栄養調査結果によると 糖尿病が強く疑われる人 が約 890 万人 糖尿病の可能性が否定できない人 が約 1,320 万人の合計約 2,210 万人と推計されています また平成 14 年に実施された糖尿病実態調査時に比べ 強く疑われる人 可能性が否定できない人 の合計は 約 1.3 倍と増加傾向にあります そして 強く疑われる人 の治療状況については ほとんど治療を受けたことがない と回答した人が約 4 割と報告されています 健康日本 21あいち計画追補版 ( 平成 19 年度策定 ) では 愛知県における 糖尿病予備群の人 (40 歳 ~74 歳 ) は約 73 万人 糖尿病有病者の人 (40 歳 ~74 歳 ) は約 29 万人と推計しました ( 表 2-3-1) 糖尿病は 新規透析患者や成人失明の原因の第 1 位であり 糖尿病性腎症による透析は増加傾向にあります 愛知腎臓財団の 慢性腎不全患者の実態 ( 平成 19 年末現在 ) によると 透析新規導入患者のうちの糖尿病性腎症の占める割合は約 40% で 平成 19 年の糖尿病性腎症による新規腎透析導入患者数は587 人です ( 図 2-3-1) 課 題 メタボリックシンドローム ( 内臓脂肪症候群 ) は 糖尿病等の基礎病態であることが多いため 特定健診の受診率を高め早期のリスク発見を促す必要があります 糖尿病ハイリスク者に健診後の受診勧奨と適切な生活習慣改善指導や医療の提供ができるよう医療機関の情報および市町村 事業所等で行われている健診 保健指導の情報を関係者で共通理解し 地域における治療と予防の連携システムを構築していく必要があります 糖尿病の疑いがあるままの放置や治療中断は 糖尿病性腎症や増殖性網膜症などの重症合併症につながりやすいことから 自らが定期的に診察を受け 早期に生活習慣改善ができる体制作りや糖尿病の知識普及 啓発が重要です 健康日本 21 あいち計画 の目標である 糖尿病腎症による新規透析導入患者数の増加の抑制を図る必要があります ( 目標値 600 人以下 )

現 状 課 題 2 医療提供体制 愛知県医療機能情報公表システム ( 平成 21 年度調査 ) によると食事療法 運動療法 自己血糖測定の糖尿病患者教育を実施している医療機関は 209 施設あります また インスリン療法を実施している医療機関は 220 施設あり 糖尿病の重症化に向けて取り組んでいます 平成 21 年度医療実態調査によると 糖尿病学会専門医が 85 病院 37 医院に配置されています 糖尿病の進行や合併症を予防するためには 初期 境界型の患者教育の充実が必要と考えられ 保健医療機関が連携してこの役割を担っていくことが求められます 3 医療連携体制 平成 21 年度患者一日実態調査によると 糖尿病の教育入院を実施している病院は 110 施設あり 平成 21 年 9 月の教育入院患者数は 1,25 4 人となっており 平成 16 年時に比べて施設数は変わりませんが 利用患者数は 1.5 倍になっています 愛知県医師会では 糖尿病教育入院予約ができるホームページを通じて 病診連携の活性化を図っています 愛知県では 平成 18 年度に県保健所を中心に管内関係機関を対象に糖尿病対策地域連携ガイドを作成し 地域連携クリティカルパスの充実に向け情報を共有化しています 重症化合併症予防の目的から教育入院を実施する医療機関を増やすことが必要です 日常的な血糖管理は診療所において可能です しかし 血糖コントロールが不良な場合には医療方針の決定のために専門医を受診することや糖尿病療養指導士 管理栄養士等による生活指導を行うこと 腎機能障害や網膜症などの合併症の検査を充実させることなどが必要です 糖尿病対策では症状の各時期での医療の連携が重要です 地域において病院 診療所 歯科診療所がそれぞれの機能を生かした役割分担を行い 病診連携及び病病連携を推進する必要があります 糖尿病の合併症である歯周病の重症化を予防する必要性からも歯科診療所との連携がのぞまれます 病診連携や病病連携を推進するためには 重症化予防を目的とした診療所から病院への紹介や日常管理の徹底を目的とした病院から診療所への逆紹介を高めることが大切です 事業所などを含めた 治療を受けやすい体制や治療中断者への対応について検討する必要があります 今後の方策 糖尿病患者が適切な生活習慣および治療が継続できるよう 病院 診療所 歯科診療所 保健機関 事業所等の連携を図り 糖尿病初期教育 治療中断者への対応 腎機能や網膜症などの合併症治療等 糖尿病の各段階に合わせた適切な医療体制の構築を検討していきます 歯科診療所を含めた診診連携 病診連携を推進することにより 効果的 効率的な糖尿病医療の提供を図ります

用語の解説 1 型糖尿病 2 型糖尿病糖尿病には すい臓からのインスリン分泌が低下して発病する 1 型 ( インスリン依存型 ) と生活習慣の影響が大きいとされる 2 型があり 日本では 2 型糖尿病が 90% 以上を占めています 糖尿病は 血糖値や口渇 多飲 多尿 体重減少等の症状などを基に診断されますが 糖尿病と診断されないが正常ともいえない境界型糖尿病 糖尿病予備と呼ばれる人たちが多く存在します 糖尿病が進行すると 腎症 網膜症 神経障害などの合併症を起こし 人工透析が必要となったり 失明に至ることもあります また 糖尿病は動脈硬化を進行させ 脳血管疾患や心疾患の主要な誘因となります 糖尿病ハイリスク者耐糖能異常者 ( インスリンの分泌量が減るかその作用が弱くなるかにより 血液中の糖分量が増加している者 ) や投薬を必要としない初期の糖尿病患者です 糖尿病が強く疑われる人ヘモグロビン A1c6.1% 以上 またはアンケート調査で現在糖尿病の治療を受けていると答えた人 糖尿病の可能性を否定できない人ヘモグロビン A1c5.8% 以上 6.1% 未満で現在糖尿病の治療を受けていない人 メタボリックシンドロ - ム ( 内臓脂肪症候群 ) 腹囲を基準に血中脂質 血圧 血糖が高い状態が放置されれば 糖尿病等を始めとする生活習慣病になる危険性が高い状態 メタボリックシンドロ - ムの診断基準 (2005 年 4 月 ) 内臓脂肪 ( 腹腔内脂肪 ) 蓄積ウエスト周囲径男性 85cm 女性 90cm 上記に加え以下の 2 項目以上 高トリグリセライド血症 150mg/dl かつ / または 低 HDL コレステロール血症 <40mg/dl 収縮期血圧 130mmHg かつ / または 拡張期血圧 85mmHg 空腹時血糖 110mg/dl * 高トリグリセライド血症 低 HDL コレステロール血症 高血圧 糖尿病に対する薬物治療を受けている場合は それぞれの項目に含めます

地区医師会 保健所 市町村等の連携糖尿病医療対策 糖尿病医療対策に関する体系図 身体の状況 目安となる検査数 生活習慣 境界領域期 糖尿病の発症受診勧奨 ( 糖尿病有病者 ) 空腹時血糖 100mg/dl 以下 HbA1c 5.2% 以下 空腹時血糖 110mg/dl HbA1c 5.5% 空腹時血糖 126mg/dl 以上 HbA1c 6.1% 以上 40 歳以上 74 歳未満 県 民 特定健康診査 特定保健指導労働安全衛生法に基づく健診等 各科診療所眼科歯科等 かかりつけ薬局 初期 安定期治療 継続的受療 良好な血糖 39 歳以下 75 歳以上 かかりつけ医診療所 コントロールの保持 糖尿病専門医療機関 重症化 合併症急性増悪時治療 地域中核糖尿病専門病院 糖尿病教育入院実施病院等 慢性合併症治療 糖尿病腎症 糖尿病神経障害 入院 合併症予防の受療 血糖コントロール不可による教育入院等 解説 特定健康診査 特定保健指導や労働安全衛生法に基づく健診等により糖尿病の早期発見や糖尿病予備群のリスクを発見し 受診や生活習慣の改善を促します 地域の診療所や病院のかかりつけ医による定期的な受療において 日常の血糖管理の状態を把握し 重症化や合併症の予防を促します 糖尿病専門医療機関は 血糖コントロールに関する教育入院や合併症治療を行うなど重度化 重症化予防に向けた日常生活の徹底を図るよう指導します

表 2-3-1 健康日本 21あいち計画追補版 ( 平成 19 年度策定 ) による目標値糖尿病予備群数 ( 人 ) 平成 19 年度ベースライン値 732,400 平成 24 年度推計値 752,900 平成 24 年度目標値 677,600 糖尿病有病者数 ( 人 ) 図 2-3-1 糖尿病性腎症による透析新規導入患者数 ( 愛知県 ) の推移 人 643 626 545 499 430 341 307 255 平成 19 年度ベースライン値 291,785 平成 24 年度推計値 302,300 平成 24 年度目標値 272,000 平成元平成 3 平成 5 平成 7 平成 9 平成 11 平成 13 平成 17 資料 : 愛知県腎臓財団 慢性腎不全患者の実態 表 2-3-4 糖尿病教育入院患者 ( 平成 21 年 6 月 1 か月間 ) の状況患者住所地 施設所在地 医療圏 名古屋 海部 尾張中部 尾張東部 尾張西部 尾張北部 知多半島 西三河北部 西三河南部 東三河北部 東三河南部 県外等 計 流入患者率 名 古 屋 383 9 3 7 1 5 141 1 4 0 1 7 562 31.9 海 部 1 25 1-1 - - - - - - - 28 10.7 尾張中部 - - - - - - - - - - - - - - 尾張東部 20 - - 70-8 1 4 7 - - 5 115 39.1 尾張西部 1-3 - 48 6 - - - - - 1 59 18.6 尾張北部 1-3 1 1 47 - - 1 - - 2 56 16.1 知多半島 3 - - 1 - - 156-3 - - - 163 4.3 西三河北部 - - - 1 - - - 46 5 - - - 52 11.5 西三河南部 3 - - - - - 4 7 140-5 - 159 11.9 東三河北部 - - - - - - - - - 1 - - 1 0.0 東三河南部 - - - - - - - - - - 55 4 59 6.8 計 412 34 10 80 51 66 302 58 160 1 61 19 1254 - 流出患者率 % 7.0 26.5 100 12.5 5.9 28.8 48.3 20.7 12.5 0.0 9.8 医療圏完結率 77.4% 資料 : 平成 21 年度患者一日実態調査 ( 愛知県健康福祉部 ) 注 : 病院のみ対象

2 糖尿病予防対策 基本計画 健康日本 21 あいち計画 の目標である 有病者数の増加の抑制 ( 目標値 27.2 万人以下 -40~74 歳 -) 達成に向け 糖尿病予防のための生活習慣改善支援を推進します 効果的な糖尿病対策事業が展開できるよう あいち健康プラザにおいて糖尿病予防を含めた生活習慣改善指導を実施するとともに 指導者の育成や健康教育手法の開発 指導などに努めていきます 現状と課題 現 状 課 題 1 糖尿病予防のための生活習慣改善の推進 人口構造の高齢化の進展は 疾病構造にも変化をもたらし 疾病全体に占めるがん 虚血性心疾患 糖尿病等の生活習慣病の割合が増加しています 厚生労働省の平成 20 年国民健康 栄養調査結果によるとメタボリックシンドロームが強く疑われる者と予備群は 40 歳から 74 歳の男性の二人に一人 女性の五人に一人の割合といわれています 本県では 平成 11 年度から生活習慣病対策協議会糖尿病対策部会を設置し 糖尿病指導者養成や飲食店等における栄養成分表示の定着促進など人 環境 情報の整備を図っています 2 特定健診受診率の向上 特定保健指導の充実 平成 20 年度から医療保険者による特定健康診査及び特定保健指導が実施されています これは 糖尿病等を始めとする生活習慣病を それに至る発症リスクの段階で発見し 食事や運動に関する生活習慣の改善を保健指導で促し 生活習慣病に対する予防意識を高めるものです 糖尿病を予防していくためには 周りから支援していく体制づくりも重要であることから 保健所を中心とした地域 職域 医療機関等の地域のネットワークは重要であり 今後とも人 環境 情報の整備を一層進めていく必要があります 人に関する整備市町村や職域の保健指導者等を対象に糖尿病に関する知識や指導手法を学習する研修会の開催を始め 運動指導者の育成 特定保健指導者に関する研修会を開催し 資質向上の支援を図ります 環境に関する整備県民自らが栄養面からの適切な健康管理が行えるよう飲食店及び消費者に対して 栄養成分表示の知識の普及啓発を行うとともに 飲食物への栄養成分表示や健康等に関する情報を提供する施設を 食育推進協力店 として登録し 安心して食事のできる食環境整備に努めます また 身近な健康の道や運動施設など健康づくりに役立つ社会資源情報の提供を行います 情報に関する整備糖尿病に関する地域 職域 医療関係機関等との連携 協力を図るために 保健所を中心としたネットワーク会議を開催するなど情報の共有化を推進します

今後の方策 健康日本 21あいち計画 の目標値が達成できるよう 生活習慣病対策協議会 ( 糖尿病対策部会等の専門部会あり ) において生活習慣病対策を検討 評価し 引き続き推進していきます また 保健所においても平成 17 年 4 月 1 日から健康日本 21あいち計画地域推進会議 ( 平成 17 年 3 月までは地域生活習慣病対策会議 ) を開催し 保健所を中心とした地域のネットワーク体制の構築と 関係機関と連携し特定健康診査の受診率の向上や特定保健指導の実施率の向上に向け取り組んでいきます 若年からの教育や正しい生活習慣の在り方を習得することによる予防効果が大きいことから 学校保健や産業保健と連携して予防対策を推進していきます 県民自ら栄養面からの適切な健康管理が行える環境づくりを推進するため 関係機関と連携して飲食物への栄養成分表示を推進するなど努めていきます 糖尿病予防のための地域におけるネットワーク図 他の行政機関 愛知県 糖尿病専門医 生活習慣病対策協議会糖尿病対策部会 医師会 歯科医師会 マスメディアや広報を利用した啓発 あいち健康プラザ 保健所 地域中核糖尿病専門病院 生活習慣病についての 地域生活習慣病対策会議 一般病院 教育 啓発 ( イベントなど ) 学校 検診による糖尿病 耐糖機能障害の早期発見 市町村 事業所 ( 地域産業保健推進センター ) 診療所 生活習慣病予防 県民 への協力 地域健康増進施設 食品のカロリー表示糖尿病メニューの作成 ( スポーツセンターなど ) 飲食店 食品製造メーカー 人 ( 受診者 ) の動き助言 指導など 出典 : 糖尿病対策マニュアル ( 愛知県健康福祉部 ) 体系図の説明 本県の糖尿病予防 治療に関し 関係機関が果たす役割について 受診者の動きに沿って示した体系図です 実施されている施策 生活習慣病対策を総合的 効果的に進めるために 生活習慣病対策協議会 ( 糖尿病対策部会等の専門部会あり ) を設け 健康日本 21 あいち計画 の目標値が達成できるよう生活習慣病対策を推進しています メタボリックシンドローム予防を含め糖尿病の発症予防に向けた普及啓発活動として マスメディアを活用した普及啓発のほか 生活習慣病予防のパンフレット リーフレットを作成し 県民に配布しています

県民の健康づくりを支援する拠点施設である あいち健康プラザ において 生活習慣改善のための様々な健康づくり教室を開催し 糖尿病予防を推進しています 県民自らが栄養面からの適切な健康管理が行えるよう飲食店及び消費者に対して 栄養成分表示の知識の普及啓発を行うとともに食育推進協力店の登録を進めます 用語の解説 食育推進協力店提供 販売される飲食物にカロリー表示などの栄養成分表示を始め 健康や食育に関する情報を提供する登録施設