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セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

亢進の存在 ) では脳卒中などの循環器疾患の発症の危険が約 2 倍まで 3 度相当の所見 ( 高血圧性網膜症 ) では脳卒中などの循環器疾患の発症の危険が 2 倍以上に さらに視神経乳頭浮腫があれば循環器死亡の危険が高いことが再確認された このような最新の根拠に基づいて Wong-Mitchell

財団法人 県総合 健協会 予支 長 眼底検査は 目の底の血管を直接見ることができる検査です 眼底検査をすることによって 高血圧 糖尿病 動脈硬化等 ( 脳疾患 心臓疾患 ) の進行状態を把握することができます また緑内障 黄斑変性症などの眼科疾患もわかります 眼底の構造 眼底写真 これは正常の眼底像

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動脈硬化の診断 2 糖尿病による血管の病変の診断 頭蓋内の病気の診断など 3. 眼底検査の流れ 眼底は瞳孔の奥にあるため 瞳孔を開く目薬 ( 散瞳薬 ) をさします その後 10 分 ~15 分で瞳孔が開いた段階で いた段階で 眼底カメラなどを使って眼の奥を観察します 検査はわずかの時間で終わります

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Transcription:

日本眼科医会記者懇談会 2015 年 11 月 25 日 日本記者クラブ 黄斑疾患に対する抗 VEGF 療法加齢黄斑変性を中心に 聖路加国際病院眼科大越貴志子 本資料の無断転載 無断使用を固く禁じます Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) 血管内皮増殖因子 VEGF は血管内皮細胞の分裂を促進させる増殖因子として 1989 年にサイエンス誌に報告された 1

VEGF の作用 血管新生作用 血管内皮細胞の分裂 増殖を促進 血管透過性因子 血管透過性亢進 ( ヒスタミンの 5000 倍 ) 炎症細胞の走化因子 炎症細胞の動因 VEGF が関連する眼疾患 病的な血管新生 加齢黄斑変性 近視性脈絡膜新生血管 特発性脈絡膜新生血管 網膜血管腫状増殖 増殖糖尿病網膜症 血管新生緑内障 未熟児網膜症 血管透過性亢進 糖尿病黄斑浮腫 網膜静脈分枝閉塞症 網膜中心静脈閉塞症 その他の黄斑浮腫 2

加齢黄斑変性 AMD:Age-related Macular degeneration 視力 0.1 視力 0.01 脈絡膜新生血管 (CNV) 網膜下出血 滲出性変化 著しい網脈絡膜の瘢痕形成 視力の根源は網膜の視細胞 視細胞色素上皮細胞 3

加齢黄斑変性 欧米 40 歳以上の白人の視力 0.01 未満の失明原因の第一位 (54.4%) 88 歳以上では 18.5%(5 人に一人 ) 日本 近年増加 久山町疫学調査 50 歳以上の 1.3% 中途失明原因の 4 位 加齢黄斑変性は増加傾向 ( 福岡久山町研究 ) 1998 年 2007 年 男性 1.7% 2.2% 女性 0.5% 0.7% 計 0.9% 1.3% およそ 80 人に一人が加齢黄斑変性 4

加齢黄斑変性の症状 正常な方の目の見え方 加齢黄斑変性の目の見え方 加齢黄斑変性の種類 滲出型 (1.2%) 脈絡膜に新生血管が発生 新生血管から出血し 網膜が障害される 進行が早く急激に視力が低下 萎縮型 (0.1%) 網膜の細胞が加齢により変性 老廃物が蓄積し栄養不足に陥る 進行は緩やか 5

萎縮型 浸出型 有効な治療なし VEGF 阻害剤 滲出型加齢黄斑変性の治療 6

浸出型加齢黄斑変性の治療脈絡膜新生血管を抑えること 新生血管 加齢黄斑変性の新生血管の多くは中心窩下に発生 7

レーザー光凝固術 中心窩外 傍中心窩 中心窩下 光線力学療法 ( ビズダイン療法 ) ビズラス PDT システム 690S ビスダイン 8

光線力学療法 PDT 後 2 週間 抗 VEGF 療法 VEGF: 血管内皮増殖因子 新生血管を抑える薬を眼の中に注射します 2008 年 7 月 VEGF 阻害剤承認 9

( 文字数 ) 最高矯正視力スコアの平均変化2015/11/20 10 5 0-5 MARINA 試験 ANCHOR 試験における視力の変化 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24( 月 ) ANCHOR +10.7 *** ルセンティス 0.5mg 群 MARINA +6.6 *** ルセンティス 0.5mg 群 ANCHOR -9.8 量-10 PDT 群 MARINA -14.9-15 ***p<0.0001 vs. シャム注射群 PDT 群分散分析 期間 シャム注射群 Rosenfeld PJ et al: N Engl J Med 2006; 355: 1419-31 Brown DM et al: Ophthalmology 2009; 116: 56-65 抗 VEGF 薬硝子体注射 レーザー手術室 注入 10

VEGF 阻害剤と適応承認 加齢黄斑変性 Pegaptanib ( 抗 VEGF165 アプタマー ) Ranibizumab ( 抗 VEGF 抗体のフラグメント ) 加齢黄斑変性近視性脈絡膜新生血管 網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫糖尿病黄斑浮腫 Aflibercept( 遺伝子組み換え融合糖蛋白 ) 11

加齢黄斑変性の分類 クラッシックCNV 中心窩外 中心窩下 傍中心窩 オカルトCNV Type I Type II 狭義 AMD PCV その他のCNV IPS 細胞を用いた加齢黄斑変性治療 高橋政代先生 12

VEGF 阻害剤の承認 2008 年 7 月 2013 年 8 月 2014 年 2 月 加齢黄斑変性 近視性脈絡膜新生血管 糖尿病黄斑浮腫 網膜静脈分枝閉塞症 網膜中心静脈閉塞症 糖尿病黄斑浮腫 糖尿病網膜症の病態のひとつ 13

糖尿病 平成 14 年 平成 9 年 糖尿病が強く疑われる人 約 740 万人 約 690 万人 糖尿病の可能性を否定でき 約 880 万人 約 680 万人 ない人 合計 約 1620 万人 約 1370 万人 出典 : 厚生労働省平成 14 年度糖尿病実態調査 糖尿病網膜症 50 歳 ~60 歳代の糖尿病患者の38.3% に網膜症 ( 平成 2 年厚生労働省糖尿病調査研究班による合併症調査 ) 糖尿病患者 740 万人 50から60 歳の約 300 万人が網膜症を発症していると推定 14

増殖糖尿病網膜症 NVE( 網膜新生血管 ) 線維血管膜 NVD( 乳頭新生血管 ) 網膜剥離 中途失明原因 厚生労働省視覚障害認定 1 級の原因疾患 平成 3 年 17.8% 12.1% 糖尿病網膜症緑内障 白内障 網膜色素変性症強度近視 その他 平成 19 年 20.9% 19.0% 15

毎年 3000 人が糖尿病網膜症で失明 なぜ糖尿病網膜症が重要か? 先進国における労働年齢人口における主な失明原因 最も発症頻度の高い糖尿病の細小血管合併症の 1 つ ( 糖尿病患者が網膜症を発症する率は15.0% ~23.0%) 2 型糖尿病では視覚機能の低下が初診時の症状であることも多い 糖尿病患者のほとんどが最終的に網膜症を発症しうる 16

糖尿病黄斑浮腫が社会に及ぼす影響 糖尿病セルフケアへの影響 : 1 医薬品の説明書および栄養表示を読む 血糖値の検査 足の傷や痛むところのチェック 来院のための運転経済的影響 : 2 就職および就業の維持 評価および治療の実施に伴う時間および費用 1. Peters CM, et al. ARVO 2012. Poster A645; 2. Chen E, et al. Curr Med Res Opin. 2010;26(7):1587 1597. 33 糖尿病網膜症 世界で9300 万人 糖尿病黄斑浮腫 2100 万人 画像提供 :Dr Alfredo Garcia Layana 17

糖尿病黄斑浮腫 障害された毛細血管瘤毛細血管 滲出液 正常な毛細血管 画像提供 :Dr Alfredo Garcia Layana 膨化した網膜 正常網膜 DME = 糖尿病黄斑浮腫 網膜色素上皮 35 糖尿病黄斑浮腫から黄斑萎縮へ 黄斑浮腫 黄斑萎縮 社会的失明 18

VEGF and Retinal Permeability 700 600 * P<0.050 ** P<0.001 * ** Control 500 Percent of Control 400 300 200 100 * 70,000 MW Dextran VEGF 0 0 0.02 0.20 0.80 1.40 2.00 VEGF (ng/eye) 0 0.2 2 8 14 20 Est. Conc. (ng/ml) 11 3 6 5 5 11 Animals Aiello, LP., et al. Diabetes. 1997;46:1473-1480. 糖尿病黄斑浮腫の治療 1985 年 : レーザー治療 ( 黄斑局所光凝固 ) 1992 年 : 硝子体手術 2002 年 : ステロイド局所療法 2014 年 : 抗 VEGF 療法承認 19

糖尿病網膜症および黄斑浮腫のレーザー光凝固術 汎網膜光凝固術 (PRP) 1,2 限局性および黄斑格子状レーザー光凝固術 3,4 汎網膜光凝固術 限局性レーザー光凝固術 黄斑格子状レーザー光凝固術 CSME = Clinically Significant Macular Edema 1. Ciulla TA, et al. Diabetes Care. 2003;26(9):2653 2664; 2. Stefansson E, et al. Trans Am Ophthalmol Soc. 1981;79:307 334; 3. ETDRS Research Group. Arch Ophthalmol. 1985;103:1796 1806; 4. Bandello F, et al. Eye (Lond). 2012;26(4):485 493. 39 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 レーザー治療を上回る効果のエビデンスが確立された抗 VEGF 療法 Mean Change in Visual Acuity (Letters) * at Follow-up Visits DRCR-net 31% が黄斑凝固を受けている ラニビズマブ + レーザー ラニビズマブ単独 Primary outcome time point レーザー単独 0 4 8 12 16 20 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 84 88 92 96 100104 トリアムシノロン + レーザー Sham+prompt laser Ranibizumab+ prompt laser Ranibizumab+ deferred laser Triamcinolone +prompt laser * Values that were ±30 letters were assigned a value of 30 40 P-values for difference in mean change in visual acuity from sham+prompt laser at the 52-week visit: ranibizumab+prompt laser <0.001; ranibizumab+deferred laser <0.001; and triamcinolone+prompt laser=0.31. 20

黄斑局所光凝固術の EBM Early treatment of diabetic retinopathy study % 30 (ETDRS) 1985 年 視力低下 % 25 20 15 10 延期群 直ちに黄斑凝固 deferral immediate 5 0 6 12 16 18 24 28 32 36 25 年間にわたり 糖尿病黄斑浮腫の唯一のエビデンスに基づいた治療 月 治るのに何本注射必要? 毎月注射を打ってゆくことは患者さんの負担につながる? 副作用は? 21

DRCR-net 5 年成績 即時レーザー併用群 1 年目 8 本 9 本 2 年目 2 本 3 本 3 年目 1 本 2 本 4 年目 0 本 1 本 5 年目 0 本 0 本 計 11 本 15 本 遅延レーザー群 抗 VEGF 療法のまとめ 加齢黄斑変性をはじめとする様々な黄斑疾患に近年適応承認がとれて使用されている 従来の治療に比較して効果が高い薬であるが 定期的に注射を打ってゆかなければならないので 経済的 かつ身体的に患者負担になっている 今後長期持続性の薬剤や 薬価が低い薬が開発されることが期待される 22

人は情報の 80% 以上を視覚を通じて得ている 23