気密性能の確保と防露への配慮 5章 5章 5 1 気密性能の確保と防露への配慮 気密性能の確保 5 1 1 住宅の気密化の目的 住宅の気密化の目的は 以下の4つが挙げられる 図 5.1.1 (1)漏気負荷を減らし省エネルギー化と室内温度環境の快適性向上を図る (2)壁体通気を抑制し断熱性能の低下を防止する (3)壁体内結露を防止する (4)計画換気の性能保持 1) 図 5.1.1 気密化の目的 - 24 -
5.1.2 気密材の種類と特長気密層は 室内と外気の境界部分に連続して設けなくてはならない 一口に気密層といっても 躯体工法 断熱工法の違いにより 必ずしも部材構成として新たに一層増えるわけではなく 従来のほかの目的を持つ部材 例えば防湿層 断熱材 防風層 あるいは構造躯体自体を気密層として考えることができる 寒冷地では 防露や計画換気のためにも 住宅の相当隙間面積を 1.0[cm2/m2] 以下にすることが望まれる このレベルの気密性能を実現するためには 主に以下の材料を使用する必要がある (1) 厚さ 0.2mm 以上の住宅用プラスチック系防湿フィルム (JIS A 6930-1997 に定めるもの ) またはこれと同等以上の防湿性及び気密性を有するもの ( 以下 防湿気密フィルム という ) 木造 枠組壁工法または鉄骨造の住宅で 繊維系断熱材を充填断熱または外張断熱する場合 プラスチック系断熱材を充填断熱する場合には 次の (2) (3) の場合を除き 防湿気密フィルムを断熱材の室内側に施工し 防湿性と気密性を確保する必要がある フィルムは 防湿性 ( 透湿抵抗 ) 材料強度 熱劣化 アルカリ劣化などに対する長期耐久性 住宅の建築モジュールやフィルムの相互の重ね幅を確保しやすい幅寸法 精度の高い材厚寸法などを規定した JIS A 6930-1997 によるものとする また 継ぎ目の箇所等をなくし 施工精度による性能のバラツキを押さえるためには 2m 前後あるいは階高サイズなど なるべく幅広のものを使用する (2) 合板またはこれと同等以上の防湿性及び気密性を有するもの合板等は 床断熱の防湿気密層として あるいはプラスチック系断熱材を用いて外張断熱した場合の気密層の一つとして考えられるものである 冬期間 床下の温度は外気より高く安定しており 断熱材内側に設置する防湿層に要求される性能は 外壁 天井 屋根などよりも緩くなる 一方 床への断熱施工は施工中の早い段階で行われる場合が多く 枠組壁工法や近年普及の著しい在来木造工法のパネル化工法ではその傾向が顕著である その際 床下地合板の直下に防湿気密フィルムが施工されていると 工事中の降雨水が床下地板を腐朽に至らしめる危険性も少なくない 以上のことを考慮して 床断熱においては合板を防湿気密層と考え施工してかまわない ただし 床断熱材に繊維系断熱材を使用する場合は その外側 ( 床下側 ) に 透湿抵抗の特に高い材料を設置しないこと (3) コンクリート部材 コンクリートを気密層とする場合は 長期的にクラックなどが生じないような配筋 が施され 密実にコンクリートを打設する必要がある - 25 -
5章 気密性能の確保と防露への配慮 5 1 3 躯体工法と気密層の関係 躯体工法と気密層の関係を図 5.1.2 に示す 5) 図 5.1.2 躯体工法と気密層の位置 1 木造住宅の場合 通気性 透湿性のある断熱材を使用する場合には 防湿層に気密層の役割を持たせ るのが一般的である また 断熱材の外側には 外気や雨水が浸入しないように 防 風層が必要となる 通気性 透湿性の少ない断熱材を使用する場合には 断熱材自体が気密層の役割を果 たすことが可能である ただし 断熱材のジョイント部分を何らかの方法で気密化処 理をする必要がある その方法として 内側に防湿層を設ける 外側に防風層を設ける ジョイント部分をテープ処理する などがあるが 木造では竣工後の躯体挙動が大きいので 構造材には乾燥木材を使う 必要がある 2 ブロック造 外断熱 フェルト状断熱材など 通気 透湿性のある断熱材を使用する場合は ブロック自 体にわずかながら通気性 透湿性があり 気密層にはなり得ないため 断熱材の内側 に防湿気密層 外側には必要に応じて防風層を設けなければならない - 26 -
(3) 鉄筋コンクリート造 ( 外断熱 ) 鉄筋コンクリート造の場合は 構造躯体が気密層の役割を果たすため 別に気密層を設ける必要はない ただし フェルト状断熱材を使用する場合は 必要に応じて外側に防風層を設けなければならない 5.1.4 主な気密層の施工に関する基本事項 (1) 防湿フィルム等 シート状気密材 1フィルム相互の重ね部分の処理防湿気密フィルム 透湿防水シートなど フィルム状の気密材を使用する場合は 継ぎ目を縦 横とも下地材のある部分で十分な重ね代 ( 例えば 30mm 以上 ) タッカー釘を用い継ぎ目にそって 200~300mm 程度の間隔で下地材に留め付けるか または両面テープなどを用いる また 防湿気密フィルムの継ぎ目部分は その上から 合板 乾燥木材 せっこうボード等を釘止めし 気密材をはさみ付ける ( 図 5.1.3(a)) 入隅 出隅部分も同様に施工する 重ね部分にシール材をはさんだりする方法 ( 図 5.1.3(b)) や気密テープ止めを併用する方法 ( 図 5.1.3(c)) は いずれも多くの手間がかかり 特に後者は長期的に隙間が生じる恐れもあることなどから あくまでも部分的な適用に限る方がよい 図 5.1.3 防湿気密フィルムの重ね処理 3) - 27 -
2フィルム端部の処理フィルム状気密材の端部は 木材や他の気密材に ガンタッカー テープなどで留め付け その部分を合板 乾燥木材 せっこうボード等の乾燥した材料ではさみ付けることを原則とする ( 図 5.1.4) 図 5.1.4 防湿気密フィルムの端部の処理 3) (2) ボード状気密材合板などのボード状気密材を用いた場合の相互の継ぎ目 またはその他の気密材との継ぎ目は テープなどの気密補助材で施工し 長期的な隙間が生じないようにする ただし さね付き加工された合板で下地部分に継ぎ目がある場合は 気密補助材を用いなくても高い気密性能が確保できるので 必ずしもテープ処理を行う必要はない - 28 -
5.2 防露への配慮 5.2.1 内部結露躯体の断熱化は 室内外の温度差を拡大し 壁内外に大きな温度差をつくりだす 一般的な4 人の家族構成では 居住空間において一日あたり約 5リットルの水蒸気が発生し 建物の竣工後は躯体や建材などからも多量の水分が発生する これらの水分の多くは壁体からの透湿と 空気の移動やすきま風による漏気により断熱構造を通じて外気に排出される その際 断熱層内部の温度が露点温度を下回り かつ湿気が壁体内 床下 小屋裏に滞留した場合に生じるのが内部結露である 断熱化を図ることは壁体内における温度変化が大きくなることであり 防湿 換気などの適切な技術を講じなければ 内部結露の発生を防ぐことができない 内部結露による被害は 石油機器を契機に急速な断熱化が進んだ北海道において 一時期 数多くの住宅で発生した 以下に典型的な内部結露の例を示す 小屋裏内部で生じた結露は 断熱住宅の結露として最も被害例が多い これは 防湿が不完全で透湿による水蒸気の移動のほか 住宅断熱化に伴って室温が高くなり 湿気を含んだ暖まった空気が上昇 移動する過程で 小屋裏内で冷やされることが原因である 2 階胴差 2 階外壁を中心に発生する結露は 温度差換気による空気移動が関係し 南側外壁で生じる結露は 冬期卓越風の影響で風下側となる部分で生じるもので 外部風圧による空気移動が関係している また 1 階外壁下部を中心とした結露は 不完全な防湿施工に加えて 床下の多湿な空気が外壁内下部に侵入することで生じる結露であり ほかの部位からの空気移動 ( 漏気 ) が大きく関連している このように 内部結露は 透湿 のほか 漏気 が深く関係している 5.2.2 防露対策 透湿 による湿気移動に対しては 断熱層内側に防湿材を設置し 外側を湿気に対し開放した構成 ( 通気層 小屋裏 床下換気など ) とすることなど 対応は比較的容易である しかし 漏気 による水蒸気量は これよりはるかに多量であり 被害は深刻となる これらを防止するには 単に一般部分の構成材料の組合せ以外に 居室と断熱層内部 他部位と断熱層 の間で空気移動が生じないような対策 すなわち壁体内の気密化が必要となる これらの観点から 断熱性能 耐久性能の低下に結びつくような 有害な結露の防止のために 以下の事項を配慮する (1) 断熱層の構成は 断熱構造とした部位の構成を 室内側は透湿抵抗が大きく 外気側は透湿抵抗が小さくする (2) 繊維系断熱材などを使用する際に 断熱材の室内側の防湿気密層を設置する (3) 天井を断熱構造とする場合 床を断熱構造とする場合は 小屋裏換気口 床下換気口を設置する - 29 -
(4) 外壁及び屋根断熱では 断熱層の外気側に通気層 防風層を設置する ( 図 5.2.1) (5) 床下の地盤に防湿措置を講じる (6) 構造材及び主要下地材へ乾燥木材を使用する 図 5.2.1 通気層と防風層 3) - 30 -