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本日の内容 1. 血球算定項目の基準値及び増減について 2. データから考察及び対応

白血球の基準範囲 ( 学生用共通基準範囲 ) 項目基準範囲備考 白血球数 (WBC) 3,500~9,000/μL 喫煙など生理的変動が大きい 高齢者は減少傾向 白血球 分画 好中球 (neutro) 2,000~ 7,500/μL リンパ球 (lympho) 単球 (mono) 分葉核球 (seg) 40~70% 桿状核球 (band) 0~5% 20~50% 1,500~4,000/μL 0~10% 200~800/μL 新生児 :20,000/μL 前後と増加好中球優位 乳児 : リンパ球が 70% 7 歳前後で成人と同様 好酸球 (eosino) 1~5% 40~400/μL 好塩基球 (baso) 0~1% 20~100/μL

赤血球, 血小板の基準範囲 ( 学生用共通基準範囲 ) 項目基準範囲備考 赤血球数 (RBC) ヘモグロビン (Hb) 男性 400~550 万 /μl 女性 350~500 万 /μl 男性 14~18g/dL 女性 12~16g/dL 成人男性 > 成人女性新生児は高めである男性は加齢とともに低くなる MCV: 新生児は大きい 赤血球 ヘマトクリット (Ht) 網赤血球 (Ret) 男性 40~50% 女性 35~45% 0.2~2.0% [ 採血 ] RBC: 臥位 < 立位 (10%) 静脈血 < 毛細血管 (15~20%) 平均赤血球容積 (MCV) 80~100fL 平均赤血球ヘモグロビン量 (MCH) 30~35pg 平均赤血球ヘモグロビン濃度 (MCHC) 30~35%(g/dL) 項目基準範囲 血小板血小板数 (Plt) 15~35 万 /μl

好中球の増減 白血球増加 10,000/μL 以上 白血球減少 3,000 /μl 以下 増加の原因 7,500/μL 以上減少の原因 2,000/μL 以下 好中球 血液疾患 慢性骨髄性白血病真性多血症慢性好中球性白血病 再生不良性貧血巨赤芽球性貧血骨髄異形成症候群 感染症特に細菌特にウィルス 膠原病 JIA( 若年性特発性関節炎 ) SLE( 全身性エリトマトーデス ) Felty 症候群 薬剤 その他 副腎皮質ステロイド G-CFS 組織破壊 ( 外傷, 心筋梗塞 ) 悪性腫瘍 抗甲状腺薬抗がん薬 肝硬変

リンパ球, 単球の増減 リンパ球 単球 血液疾患感染症膠原病薬剤その他血液疾患 増加の原因 4,000/μL 以上減少の原因 1,000/μL 以下 慢性リンパ性白血病大顆粒リンパ球 (LGL) 増多症 伝染性単核球症結核百日咳 Addison 病 Hodgkin リンパ腫 AIDS 麻疹 SLE 関節リウマチ 免疫抑制薬抗がん薬 増加の原因 950/μL 以上減少の原因 単球性白血病悪性リンパ腫 再生不良性貧血 その他炎症性腸疾患重症敗血症

好酸球, 好塩基球の増減増加の原因 700/μL 以上減少の原因 好酸球 血液疾患 感染症 膠原病 慢性骨髄性白血病慢性好酸球性白血病 (CEL) 好酸球増加症候群 (HES) Hodgkin リンパ腫 寄生虫 PN( 結節性多発動脈炎 ) EGPA( 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 ) 再生不良性貧血 腸チフス麻疹ツツガムシ病 薬剤薬剤性アレルギー副腎皮質ステロイド その他 Addison 病アレルギー性疾患 Cushing 症候群ストレス 好塩基球血液疾患慢性骨髄性白血病 増加の原因 150/μL 以上減少の原因 その他 潰瘍性大腸炎アレルギー性疾患

赤血球の増加 RBC Hb Ht 男性 600 万 /μl 以上女性 550 万 /μl 以上 男性 18.0g/dL 以上女性 17.0g/dL 以上 男性 55% 以上女性 50% 以上

赤血球増加症の分類 絶対的赤血球増加症 A) 一次性本態性赤血球増加症 1. 真性赤血球増加症 2. 家族性赤血球増加症の一部 :Epo 受容体遺伝子異常 B) 二次性反応性赤血球増加症 1. 全身的な低酸素状態 : 高地居住 過度な喫煙 先天性心疾患 慢性肺疾患 2. 腎血流量の低下 : 腎動脈狭窄症 嚢胞腎など 3. Epo 産生腫瘍 ( 腎腫瘍 肝細胞がん 小脳血管芽細胞腫 ) 4. 家族性赤血球増加症の一部 : チューバッシュ赤血球増加症など 相対的赤血球増加症 A) 血液濃縮 : 水分摂取不良 嘔吐 下痢 発汗 多尿など B) ストレス赤血球増加症

赤血球の減少 : 貧血 貧血とは 末梢血中のヘモグロビン濃度が基準値以下に低下した状態 である Hbが最もよい指標である [WHO による基準値 ] 成人男性 分類 成人女性小児 (6~14 歳 ) 妊婦幼児 (6 か月 ~6 歳 ) Hb 濃度 13g/dL 12g/dL 11g/dL

赤血球分化過程からみた貧血の分類 分化過程原因疾患造血幹細胞の減少再生不良性貧血造血幹細胞造血幹細胞の遺伝子異常骨髄異形成症候群 骨髄 赤芽球系前駆細胞赤芽球系前駆細胞の障害赤芽球癆 DNA の合成障害 巨赤芽球性貧血 赤芽球 Hb の合成障害 鉄欠乏性貧血鉄芽球性貧血サラセミア 末梢赤血球赤血球破壊亢進溶血性貧血

二次性貧血 血液疾患以外の基礎疾患に続発した貧血をいう 二次性貧血の基礎疾患 慢性感染症 膠原病 炎症性腸疾患 悪性腫瘍 結核亜急性細菌性心内膜炎 関節リウマチ SLE 潰瘍性大腸炎 Crohn 病 胃がん大腸がん悪性リンパ腫 貧血機序 鉄の利用障害 赤血球造血抑制 赤血球寿命短縮 慢性疾患に伴う貧血 (ACD) 腎疾患 慢性腎不全透析患者 Epo 産生低下による赤血球産生低下腎性貧血 肝疾患 肝硬変慢性肝炎アルコール性肝障害 溶血脾機能亢進による赤血球破壊亢進低栄養による造血障害

赤血球指数 赤血球指数とは 赤血球の大きさとそこに含まれるヘモグロビン量 濃度を ヘモグロビン (Hb) ヘマトクリット(Ht) 赤血球(RBC) を用いて計算された値である 貧血の鑑別には 赤血球指数を用いた分類が有用である 基準値計算式表すもの分類 平均赤血球容積 MCV Mean Corpuscular Volume 80~100 fl Ht(%) RBC(106/μL) 10 赤血球 1 個の大きさ <80 小球性 80~100 正球性 100< 大球性 平均赤血球ヘモグロビン濃度 MCHC Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration 30~35 % Hb(g/dL) Ht(%) 100 単位容積赤血球あたりのヘモグロビン濃度 <30 低色素性 30~35 正色素性 平均赤血球ヘモグロビン濃度 MCH Mean Corpuscular Hemoglobin 30~35 pg Hb(g/dL) RBC(106/μL) 10 赤血球 1 個あたりのヘモグロビン量

赤血球指数による貧血の分類 貧血は MCV,MCHC を用いて 3 つに分類される 小球性低色素性貧血正球性正色素性貧血大球性正色素性貧血 MCV <80 80~100 100< MCHC <30 30~35 30~35 鑑別疾患 鉄欠乏性貧血 鉄芽球性貧血 サラセミア 慢性疾患に伴う貧血 (ACD) 溶血性貧血 出血性貧血 腎性貧血 再生不良性貧血 骨髄異形成症候群 巨赤芽球性貧血

赤血球指数の計算例題例題 :Hb5.1g/dL,Ht18.0%,RBC335 万 /μl MCV Ht(%) 10 RBC(106/μL) 18.0/3.35 10=53.7 MCV は 54fL であり <80 である 小球性 MCHC Hb(g/dL) 100 Ht(%) 5.1/18.0 100=28.3 MCHC は 28% であり <30 である 低色素性 小球性低色素性貧血

MCV から Ht 算出 自動血球分析装置では MCV を直接計測し赤血球数との積算で Ht を算出している 測定原理となる電気抵抗方式では 抵抗値が血球容積に比例し パルス電圧の発生頻度が血球数に相当する Ht(%) = MCV(fL) RBC(106/μL) 10

小球性貧血の鑑別 MCV<80 小球性貧血は ヘモグロビンを構成するヘムまたはグロビンの合成異常による 小球性貧血 (MCV<80) 血清フェリチン 減少 鉄欠乏性貧血 減少 慢性疾患に伴う貧血 (ACD) 無トランスフェリン血症 減少なし 血清鉄 減少なし 環状鉄芽球あり ヘモグロビン異常あり 鉄芽球性貧血 サラセミア

正球性貧血の鑑別 MCV80~100 陽性 自己免疫性溶血性貧血 正球性貧血 (MCV80~100) 網赤血球 増加 増加なし 出血骨髄穿刺 骨髄生検 有出血 Coombs 無溶血 (+) 試験 Dry tap, 骨髄線維症線維化白血病多発性骨髄腫腫瘍細胞悪性リンパ腫癌骨髄転移 陰性 鎌状赤血球 鎌状赤血球症 赤血球形 球状赤血球 遺伝性球状赤血球症 態異常 破砕赤血球 血栓性血小板減少性紫斑病溶血性尿毒症症候群 砂糖水試験 発作性夜間ヘモグロビン尿症 Ham 試験 (+) 赤芽球減少 脂肪髄 正 ~ 過形成 赤芽球癆再生不良性貧血骨髄異形成症候群など

大球性貧血の鑑別 MCV>100 巨赤芽球症は赤芽球の DNA 合成に異常がある場合に認められる 大球性貧血 MCV>100 血清ビタミン B12 低下 ビタミン B12 欠乏性 巨赤芽球性貧血 低下 葉酸欠乏性 巨赤芽球性貧血 低下なし 血清葉酸 骨髄異形成症候群や 低下なし 溶血性貧血などの 赤芽球造血亢進状態

血小板の増加 血小板数 40 万 /μl 以上をいう 1 腫瘍性 ( 骨髄増殖性腫瘍 ) 本態性血小板血症 慢性骨髄性白血病 2 反応性 炎症性疾患 鉄欠乏性貧血 摘脾後など

血小板減少 血小板数 10 万 /μl 以下をいう 血小板濃厚液の使用指針 ( 日本赤十字 HP より ) 血小板数 血小板輸血の必要性 5 万 /μl 一般的に必要となることはない 2~5 万 /μl 1~2 万 /μl 止血困難な場合には必要とする 必要となる場合がある 1 万 /μl 必要となる 血小板数はあくまでも目安であり すべての症例に合致するものではない

血小板減少の成因 先天性 a. 巨核球の減少によるもの 先天性無巨核球性血小板減少症 Fanconi 貧血 b. 血小板産生障害によるもの 1. 巨大血小板を伴う血小板減少症 Bernard-Soulier 症候群 May-Hegglin 症候群 Fechtner 症候群 Epstein 症候群 Sebastian 症候群 2. 血小板サイズ正常の血小板減少症家族性血小板減少症 3. 小型血小板を伴う血小板減少症 Wiskott-Aldrich 症候群 1 血小板産生の低下 後天性 a. 骨髄障害 ( 再生不良性貧血, 白血病, 骨髄線維症, 骨髄異形成症候群, がんの浸潤, 抗がん薬治療, 放射線障害, ウィルス感染 ) b. 無巨核球性血小板減少症 c. ビタミン B12 欠乏, 葉酸欠乏 d. アルコール

血小板減少の成因 2 末梢での破壊亢進, 消費亢進 免疫学的機序 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP) 膠原病に伴う血小板減少症抗リン脂質抗体症候群周期性血小板減少症新生児同種免疫性血小板減少症輸血後血小板減少性紫斑病ヘパリン惹起血小板減少症 非免疫学的機序 溶血性尿毒症症候群 (HUS) 播種性血管内凝固症候群 (DIC) 妊娠 HELLP 症候群重症火傷人工弁, 人工血管 Kasabach-Merrit 症候群

血算補助的項目 RDW: 赤血球分布幅 赤血球の大きさのバラツキ MPV: 平均血小板容積 血小板の大きさ PDW: 血小板分布幅 血小板の大きさのバラツキ

血算の検体管理 抗凝固剤はEDTA-2Kが勧告されている 速やかに測定が望ましい 室温 (20~25 くらい ) では5 時間以内に測定する 測定が翌日になる場合は 冷蔵 (4 ) 保存がよい ( 血液像標本は室温で 4 時間以内に作製する 保存はきかない )

自動血球分析装置の誤差要因 < 白血球 > 偽高値 ( 増加 ) 有核赤血球の出現 巨大血小板 クリオグロブリン 赤血球溶血不良 偽低値 ( 減少 ) 白血球凝集 スマッジ細胞 ( 破損 ) の出現 フィブリン析出 凝血

白血球測定時の注意点 電気抵抗方式ではヒストグラム 光学的測定方式ではスキャッタグラムの正常パターンの理解が必要である 測定原理や測定値に影響があるヒストグラムまたはスキャッタグラムの変化を把握する必要がある 変化が軽微な場合は 機器からの警告がないこともある

スキャッタグラム スキャッタグラムの各プロットの境界が重なりあわないこと

スキャッタグラムの変化

有核赤血球の出現 血球装置では有核赤血球は白血球に認識され 白血球の偽高値となる

有核赤血球 (NRBC) NRBC NRBC WBC? WBC 測定時は NRBC アクションメッセージ表示に注意し 血球装置の専用チャンネル 専用試薬を用いた補正もしくは血液像で補正が必要となる

有核赤血球の補正 実測 WBC 補正 WBC( 個 /μl) = 100 有核赤血球出現率 (/100WBC)+100 [ 機器測定白血球 25,000/μL 有核赤血球 43 個 / 100WBC の場合 ] 25,000 補正 WBC( 個 /μl) = 100 =17,482/μL 43+100

白血球凝集 血球装置では白血球の偽低値となる 白血球凝集の原因については不明である

自動血球分析装置の誤差要因 < 赤血球 > 偽高値 ( 増加 ) 巨大血小板 クリオグロブリン 高ビリルビン血症 (Hb ) 高脂血症 (Hb ) 白血球数著増 (Hb ) 偽低値 ( 減少 ) 赤血球凝集 (RBC Ht ) 小型赤血球の出現 ( 血小板 ) 採血管内溶血 凝血

赤血球測定時の注意点 赤血球系で自動血球計数装置の誤差要因をみつけるには MCHC が参考になる MCHC は Hb と Ht により算出され Hb の溶解度から 37% 以上になることはない MCHC が正常域より高くなる例は新生児や遺伝性球状赤血球症とされている これら以外に MCHC が 37% 以上となった場合は RBC Hb および Ht のどれかに誤差が生じていることが推測される

MCHC 高値となる理由 Hb(g/dL) 100 Ht(%) Hb 偽高値 高ビリルビン血症 高脂血症 白血球数著増 Ht 偽低値 赤血球凝集 測定エラー, サンプリング不良 その他 球状赤血球 新生児

症 例 今回値 WBC 103/μL 6.2 RBC 104/μL 372 Hb g/dl 13.6 Ht % 32.2 MCV fl 86.6 MCH pg 36.6 MCHC g/dl 42.2 PLT 104/μL 22.4 前回値 5.5 477 14.0 41.3 86.6 29.4 33.9 21.6 再検値 6.4 448 13.3 38.9 86.8 29.7 34.2 23.3

症 例 今回値 WBC 103/μL 6.2 RBC 104/μL 372 前回値 5.5 477 再検値 6.4 448 赤血球系は バランスが 大切 Hb g/dl 13.6 14.0 13.3 Ht % 32.2 41.3 38.9 MCV fl 86.6 86.6 86.8 Hb 3 Ht MCH pg 36.6 MCHC g/dl 42.2 PLT 104/μL 22.4 29.4 33.9 21.6 29.7 34.2 23.3 指数は 89 29 34 ハク フク サヨ ヤク フク サヨ

症 例 今回値 WBC 103/μL 3.3 RBC 104/μL 165 Hb g/dl 9.4 Ht % 15.7 MCV fl 95.2 MCH pg 57.0 MCHC g/dl 59.9 PLT 104/μL 24.1 再検値 3.0 91 9.2 8.6 94.5 101.1 107.0 24.5

症 例 今回値 WBC 103/μL 3.3 RBC 104/μL 165 Hb g/dl 9.4 Ht % 15.7 MCV fl 95.2 MCH pg 57.0 MCHC g/dl 59.9 PLT 104/μL 24.1 再検値 3.0 91 9.2 8.6 94.5 101.1 107.0 24.5 時間経過とともに減少

寒冷凝集 検体がドロンと動く 管壁がザラザラ

赤血球凝集 加温前 MG 染色加温前未染色

赤血球凝集 加温後 MG 染色加温後未染色

加温後のデータ 今回値 WBC 103/μL 3.3 RBC 104/μL 165 Hb g/dl 9.4 Ht % 15.7 MCV fl 95.2 MCH pg 57.0 MCHC g/dl 59.9 PLT 104/μL 24.1 再検値 3.0 91 9.2 8.6 94.5 101.1 107.0 24.5 加温後 4.5 352 9.6 31.6 89.8 27.3 30.4 25.1

寒冷凝集素症 疾患として自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) に分類される 抗赤血球自己抗体の反応至適温度により 温式 AIHA 冷式 AIHA( 寒冷凝集素症 発作性寒冷ヘモグロビン尿症 ) に分類される 至適温度疾患抗体基礎疾患溶血治療 温式 37 温式 AIHA IgG 特発性続発性 SLE,CLL, 関節リウマチ,ML など 血管外 ステロイド脾摘免疫抑制剤 冷式 0~4 寒冷凝集素症 発作性寒冷ヘモグロビン尿症 IgM D.L 抗体 (IgG) 特発性続発性感染症 (EB ウイルス, サイトメガロウイルス, マイコプラズマなど ) 特発性続発性ウイルス, 梅毒 など 血管外 血管内 保温基礎疾患対策 IgM 型冷式抗体が四肢末端部に到達して温度が下がると 補体 (C3b) とともに赤血球に結合する 体幹部に戻って 37 付近まで再加温せれると赤血球から遊離せれるが 補体が赤血球膜上に残るため溶血が起こる

球状赤血球 HS は MCHC が高値となることが特徴的である 赤血球が小型で球状であるため 単位容積当たりに多くの赤血球が存在しやすくなっているため

MCHC 高値の誤差要因と対処法 MCHC 高値 検体の性状確認 問題なし 検体凝固あり 同一検体にて再検 再採血 初回値と同じ 初回値と異なる 塗抹標本の観察 サンプリング不良機器不良 赤血球凝集像あり 赤血球凝集像なし 37 15 分から 30 分間加温赤血球形態の確認高脂血症や ( 異常蛋白や電解質の確認 ) 速やかに再測定 ( 球状赤血球など ) 高ビリルビン血症の確認 初回値と異なる 希釈再検, 上清置換, 血漿 Hb 補正など 結果報告結果報告結果報告 ( コメントを付記する ) ( 参考値などのコメントを付記する )

対処法の補足 自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) では赤血球凝集や球状赤血球が見られるが 加温しても解離しない 肝疾患などの赤血球膜硬化が起こる疾患では 希釈液中で膨化の程度が低くなり Ht(MCV) 影響を受け MCHC が偽高値となることがある 機種によっては MCV(Ht) が血清浸透圧 ( 低浸透圧 ) の影響を受け MCHC が偽高値となることがある 機種によっては グルコースや尿素窒素の血球膜透過性物質が高値の場合 測定時急激な希釈液浸透により赤血球が膨張し Ht(MCV) が上昇し MCHC が偽低値となることがある

自動血球分析装置の誤差要因 < 血小板 > 偽高値 ( 増加 ) クリオグロブリン 破砕赤血球の出現 白血球や病的細胞の破片 偽低値 ( 減少 ) 巨大血小板の出現 (WBC RBC ) 血小板凝集 血小板衛星形成 凝血

血小板測定時の注意点 初診時 10 万 /μl 以下や前回値から 10 万 /μl 以上低下した場合 注意が必要である 正確に測定されていない場合は 粒度分布図を確認することで発見できる 顕微鏡下でのフィブリン析出 血小板凝集塊 巨大血小板 破砕赤血球の確認が必要である 電気抵抗方式以外 ( 光学的方式や視算法 ) の測定が有用である

粒度分布図

破砕赤血球の出現 破砕赤血球は血小板と認識され 血小板の偽高値となる [ 対処法 ] 視算法 (Brecher-Cronkite 法 ) 間接法 (Fonio 法 ) 光学的方式も用いたレーザー法

破砕赤血球の出現 RBC 粒度分布 PLT 粒度分布 粒度分布図では小型赤血球 破砕赤血球付近にピークがみられる Fragment? の警告メッセージに注意する

巨大血小板の出現 血小板と認識されず 偽低値となる 電気抵抗方式では 0.8 万 /μl 光学的方式では5.4 万 /μl ( 目視では6.0 万 /μl)

症 例 今回値 WBC 103/μL 4.4 RBC 104/μL 259 Hb g/dl 7.1 Ht % 23.3 MCV fl 90.0 MCH pg 27.4 MCHC g/dl 30.5 PLT 104/μL 9.2 前回値 6.6 257 7.0 22.2 86.4 27.2 31.5 34.3 PLT clumps? メッセージ

検体凝固, フィブリン析出 採血管を転倒混和し 凝血を確認する

検体凝固, フィブリン析出 MG 染色 未染色

とり直し後のデータ 今回値 WBC 103/μL 4.4 RBC 104/μL 259 Hb g/dl 7.1 Ht % 23.3 MCV fl 90.0 MCH pg 27.4 MCHC g/dl 30.5 PLT 104/μL 9.2 前回値 6.6 257 7.0 22.2 86.4 27.2 31.5 34.3 取直後 5.4 251 6.9 22.3 88.8 27.5 30.9 34.1

症 例 今回値 WBC 103/μL 4.4 RBC 104/μL 360 Hb g/dl 11.0 Ht % 33.6 MCV fl 93.3 MCH pg 30.6 MCHC g/dl 32.7 PLT 104/μL 9.0 前回値 3.9 287 9.1 27.1 94.4 31.7 33.6 19.5 PLT clumps? メッセージ

症 例 今回値 前回値 再検値 WBC 103/μL 4.4 3.9 4.3 RBC 104/μL 360 287 353 Hb g/dl 11.0 9.1 10.9 Ht % 33.6 27.1 33.1 MCV fl 93.3 MCH pg 30.6 MCHC g/dl 32.7 94.4 31.7 33.6 93.8 30.9 32.9 時間経過とともに減少? PLT 104/μL 9.0 19.5 6.0

EDTA 依存性偽性血小板減少症 MG 染色 標本引き終わり 未染色

EDTA 依存性偽性血小板減少症 MG 染色 標本中央 未染色

EDTA 依存性偽性血小板減少症と対処法 EDTA により血小板表面抗原 (GPⅡb/Ⅲa) が変化し 血清中の血小板凝集素 IgG 抗体と反応し 凝集を引き起こすと考えられている [ 対処法 ] プレーン採血管にて 直ちに測定 EDTA 以外の採血管 ( ヘパリン クエン酸 Na) FC 採血管 カナマイシン投与 過剰 EDTA 追加投与 MgSO4 による測定 ボルテックスミキサーにかけ測定 ブレッカー クロンカイト法

EDTA 凝集対処後データ 今回値 前回値 再検値 対処後 WBC 103/μL 4.4 3.9 4.3 RBC 104/μL 360 287 353 Hb g/dl 11.0 9.1 10.9 Ht % 33.6 27.1 33.1 MCV fl 93.3 94.4 93.8 MCH pg 30.6 31.7 30.9 MCHC g/dl 32.7 33.6 32.9 PLT 104/μL 9.0 19.5 6.0 20.3

血小板衛星形成 好中球の周囲に血小板が付着し 偽性血小板減少症を呈する EDTA 存在下で IgG 型の凝集素の存在が原因とされているが 不明です

血小板測定時の誤差要因と対処法 初回測定値 10 万 /μl 以下前回値と比較して10 万 /μl 以上低下今回値が10 万 /μl 以下で前回値の半分以下粒度分布曲線の異常 採血手技 検体性状の確認 問題なし 検体凝固あり 同一検体で再測定 再採血 初回値とほぼ同じ 初回値と異なる 塗抹標本の観察 サンプリング不良 機器不良 フィブリン糸なし フィブリン糸あり 血小板凝集塊あり 血小板凝集塊なし 巨大血小板あり 破砕赤血球あり 破砕赤血球なし 偽低値の可能性あり 偽高値の可能性あり 測定値を報告 電気抵抗法以外の 電気抵抗法以外の パニック値は 方法による再測定 方法による再測定 臨床へ報告 EDTA と EDTA 以外の 抗凝固剤を用いて再採血 EDTA 以外の抗凝固剤での血小板凝集塊を確認 凝集塊なければ EDTA 依存性偽性血小板減少症

クリオグロブリン クリオグロブリンとは平常体温 (37 ) では血中に溶けているが 低温では凝集するグロブリンである 採血管内では 4 に冷却するとゲル状に沈降する 寒冷時に循環障害を起こし 手足のしびれや冷感 Raynaud 現象をきたす 原発性マクログロブリン血症で産生される M 蛋白はクリオグロブリンの性質を有していることがある 他に C 型肝炎 SLE Sjogren 症候群などで出現する

クリオグロブリン 血小板類似物質として出現する 計数装置では血小板や白血球としてカウントされ 偽性の増加を呈する

まとめ 分析装置の測定原理を理解すること ヒストグラムやスキャッタグラムの変化を捉える エラーメッセージと検体性状や疾患の関係性を知る 単項目にとらわれず 他検査結果を含めて総合的に考える 検体性状や生化学検査 血液像などの検査結果を含めて総合的に判断し 対処していく

参考文献 スタンダード検査血液学 病気がみえる vol.5 第 2 版 第 3 版