基本的なモード

Similar documents
VAECMO

JSEPTIC CE教材シリーズ 対象:レベル1 ICUで働く新人CE(1~3年目程度)

SpO2と血液ガス

Microsoft PowerPoint - 呼吸管理のkimo.pptx

5.看護

PowerPoint プレゼンテーション

酸素療法(酸素器具を学ぶ)

呼吸ケア 人工呼吸器の基礎 4: アラームと対応 アラーム 人工呼吸器のみならず医療機器を使用する場合 患者の状態や医療機器自体の異常を発見するために必要なのがアラームです したがって アラームが適切に設定され さらに医療従事者の耳に届く適切な音量に設定されていないと 異常の早期発見や対応の遅れにつ

スライド 1

参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 参考 9 大量出血や急速出血に対する対処 参考 11 慢性貧血患者における代償反応 2) 投与方法 (1) 使用血液 3) 使用上の注意 (1) 溶血の防止 赤血球液 RBC 赤血球液

血液ガス分析検査

めまい

P001~017 1-1.indd

基準範囲の考え方 ph 7.35~ mmHg pco2 mmhg po2 mmhg HCO3 mmol/l BE mmol/l 35~45 85~105 60> 呼吸不全 21~28-2~+3 so2(%) 95~99% 静脈 pco2=45mmhg po2=40mmhg 動脈 pco

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

ARDS に対する HFOV ICU 勉強会 久保友貴子 1

Awake ECMO

COヘモグロビン濃度と一酸化炭素中毒 より

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

2002年10月1日(新様式第1版)

スライド 1

1 FEV1.0 FEV % NIH FEV % FEV1.0 50% FEV1.0 cyanosis PaO2 PaCO2 PaO2 PaCO2 40mmHg FEV1.0 25%

スライド 1

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

「血液製剤の使用指針《(改定版)

Chapter 02 CRRT 回路 血液系圧アラームを理解しよう 圧評価もできるようになろう CRRT 回路理解のためには 血液系と液系をわける必要性を説明しました ア ラーム理解も同様です 血液系 の圧評価を理解しよう 血液系の圧の評価において血液ポンプの前後で分けて考えます 図12 血液ポンプ

Microsoft PowerPoint - H27.5実技研修(呼吸器)配布資料 (2) [互換モード]

日産婦誌58巻9号研修コーナー

Microsoft PowerPoint _anesthesiology.pptx


<967B94E B2E6169>

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

【資料1-2-1】①持続的気道陽圧ユニット等基準案

<97D58FB C967B94E08F4390B32E6169>

2

ジャーナルクラブ 2016/4/19

Journal Club

PowerPoint プレゼンテーション

減量・コース投与期間短縮の基準

高等学校「保健」補助教材「災害の発生と安全・健康~3.11を忘れない~」 第3章

CCU で扱っている疾患としては 心筋梗塞を含む冠動脈疾患 重症心不全 致死性不整脈 大動脈疾患 肺血栓塞栓症 劇症型心筋炎など あらゆる循環器救急疾患に 24 時間対応できる体制を整えており 内訳としては ( 図 2) に示すように心筋梗塞を含む冠動脈疾患 急性大動脈解離を含む血管疾患 心不全など

「             」  説明および同意書

臨床試験の実施計画書作成の手引き

離床プレアドバイザー認定試験問題 ( 一部解答例付属 ) インストラクター問題は非公開 このページでは 離床プレアドバイザー認定試験に実際に出題された問題 ( 一部 ) および解答例を PDF ファイル形式で掲載します 試験レベル把握 学習にお役立て ください なお 掲載された問題 解答例についての

PowerPoint プレゼンテーション

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

人工呼吸器講習会


10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

補足 : 妊娠 21 週までの分娩は 流産 と呼び 救命は不可能です 妊娠 22 週 36 週までの分娩は 早産 となりますが 特に妊娠 26 週まで の早産では 赤ちゃんの未熟性が強く 注意を要します 2. 診断 どうなったら TTTS か? (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

PowerPoint プレゼンテーション


journal club

降圧コンバータIC のスナバ回路 : パワーマネジメント

というもので これまで十数年にわたって使用されてきたものになります さらに 敗血症 sepsis に中でも臓器障害を伴うものを重症敗血症 severe sepsis 適切な輸液を行っても血圧低下が持続する重症敗血症 severe sepsis を敗血症性ショック septic shock と定義して

自動透析装置(透析補助機能)を利用した操作手順書

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

PowerPoint プレゼンテーション

QA JOURNAL RADIOMETER June No. C O N T E N T S 2 6 8


心肺停止蘇生後低体温療法

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

2005年勉強会供覧用

研修プログラム モデル例

terumo qxd :08 PM ページ 1 脳動脈瘤って何 脳動脈瘤とは 脳の血管にできる 血管のこぶ です こぶができただけでは 多くの場合 症状はありま けて手術で頭を開き 特殊なクリップで脳動脈瘤を せんが 破裂すると死亡率の高いクモ膜下出血や脳 はさみ

<4D F736F F D204A4F544E D8E8094BB92E88B4C985E8F DCE88C88FE3816A >

EUCHS_BOOKLET_JAP_v1.2_nov2012_translated_nov2013x

輸液製剤

対象と方法 本研究は 大阪医科大学倫理委員会で承認を受け 対象患者から同意を得た 対象は ASA 分類 1 もしくは 2 の下肢人工関節置換術が予定された患者で 術前に DVT の存在しない THA64 例 TKA80 例とした DVT の評価は 下肢静脈エコーを用いて 術前 術 3 日後 術 7

ICUにおける酸素療法

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

2. 診断 どうなったら TTTS か? 以下の基準を満たすと TTTS と診断します (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊水過少が同時に存在すること a) 羊水過多 :( 尿が多すぎる ) b) 羊水過少 :( 尿が作られない ) 参考 ; 重症度分類 (Quintero 分類

<4D F736F F D D F944D8CF08AB78AED82CC E682E889C AB834B A682A DC58F4994C

Transcription:

JSEPTIC CE 教材シリーズ対象 : レベル 1 ICU で働く新人 CE(1~3 年目程度 ) V-V ECMO

もくじ 第 1 章序論 1-1 目的 1-2 人工呼吸器関連肺傷害第 2 章適応と禁忌 2-1 適応と相対的禁忌第 3 章 ECMOデバイス 3-1 回路構成 3-2 ブレンダー 3-3-1 遠心ポンプ 3-3-2 代表的な遠心ポンプ 3-3-3 回転数と吐出圧 3-3-4 揚程 3-3-5 圧力損失と揚程 3-4-1 人工肺 3-4-2 人工肺用膜の構造 3-5 回路チューブ 3-6-1 カニューレの種類 3-6-2 カニューレ位置の種類第 4 章酸素化と換気 4-1-1 ECMOの酸素化 4-1-2 酸素化の評価 4-2-1 換気の評価第 5 章回路内モニタリング 5-1 血流量計 5-2-1 圧モニタリング 5-2-2 圧モニタリングの解釈 5-3-1 SvO2モニター 5-3-2 V-V ECMO 中のSvO2の解釈

第 1 章序論 第 1 章の到達目標 V-V ECMO の目的が説明できる 基本的な血液の流れ方を説明できる

1-1 目的 体外式膜型人工肺 (Extracorporeal Membrane Oxygenation: ECMO) とは保存的療法に反応しない重症呼吸循環不全例に対して体外循環を用いて行われる救命手段であり 呼吸補助 循環補助 肺の安静化などの目的で導入される このうち V-V ECMO( 静脈脱血 - 静脈送血 ) は 呼吸補助 を目的に施行される また 人工呼吸誘発性肺傷害 (VILI) を防ぐこと を 目的として ECMO を使用するという考え方も示されている

右 左 全身 通常の呼吸不全患者は人工呼吸器 ( 陽圧換気 ) で酸素化と換気が行われる 酸素化 換気された血液は 左心系 全身 右心系へとながれ 再び肺に戻る

右 左 全身 すごく重症な呼吸不全では 高い気道内圧と高い酸素濃度が必要になる さらに重症化すると必要最低限の酸素化や換気すら行えなくなり 生命維持に危険が生じる

VV ECMO 右 左 全身 V-V ECMO は心臓の手前で静脈血を酸素化することにより 全身への酸素供給 CO2 排出を行うことができる このとき 人工呼吸器は陽圧を減らすことができるので肺はお休みできる (VILI の予防 )

PCPS 呼吸と循環をフルサポート! 右 左 全身 V-A ECMO(PCPS) は酸素化した血液を直接動脈に送ることができるため 心臓が弱った患者さんの呼吸と循環をフルサポートすることができる

脳 PCPS 右 左 全身 解説は次ページ

PCPS(VA-ECMO) では心機能が保たれている場合 完全体外循環を行うことは困難である このため 重症な呼吸不全患者さんに PCPS を使うと脳に酸素飽和度の低い血液が流れてしまう可能性が高い 重症心不全などがない場合 重症な呼吸不全の患者さんには V-V ECMO が選択される 以下 ECMO は V-V ECMO を指す

脱送血部位 ( 参考 ) 経皮的アプローチによる脱送血には以下のようなものがある IVC 脱血 SVC 送血 IVC 脱血 RA 送血 SVC IVC 脱血 RA 送血 RA 脱血大腿静脈送血もある

1-2 人工呼吸器誘発性肺傷害 (Ventilator induced lung injury) VILI の 3 つの機序 1. 虚脱 拡張の繰り返しによる傷害 (atelectrauma) 2. 過剰な換気による容量傷害 (volutrauma) 3. 肺自体の炎症を原因とする傷害 (biotrauma) ECMO を用いてより肺保護的な換気を行うこと すなわち肺を休めること (lung rest) によって VILI を防ぐことができる

第 1 章チェックテスト ECMO は保存的療法に反応しない重症呼吸循環不全例に対して体外循環を用いて行われる救命手段であり 呼吸補助 循環補助 肺の安静化などの目的で導入されます このうち V-V ECMO( 静脈脱血 - 静脈送血 ) は ( 1 ) を目的に施行されます また ( 2 ) を 目的として ECMO を使用するという考え方も示されてい ます

第 1 章チェックテスト 解答 ECMO は保存的療法に反応しない重症呼吸循環不全例に対して体外循環を用いて行われる救命手段であり 呼吸補助 循環補助 肺の安静化などの目的で導入されます このうち V-V ECMO( 静脈脱血 - 静脈送血 ) は 呼吸補助 を目的に施行されます また 人工呼吸誘発性肺傷害 (VILI) を防ぐこと を 目的として ECMO を使用するという考え方も示されてい ます

第 2 章適応と禁忌 ECMO の適応や禁忌はいまのところ確立されたものはない ガイドラインやいくつかの文献で適応や相対的禁忌などが示されています 参考資料として代表的な 1 と 2 を提示する

2-1 ECMO の適応 1 重篤な急性心不全および呼吸不全で 従来の治療では高い死亡率が想定される症例が適応となる ECLS を使用したときの死亡率は約 50% と考えられているため 80% 以上の死亡率が予想される場合に適応とする 疾患の重症度や死亡リスクについては 年齢や臓器不全を考慮して できるだけ正確に評価する ELSO General Guidelines for all ECLS Cases

2-1 ECMO の相対的禁忌 1 1. 回復後 正常な生活が望めない患者 2. 生活の質に大きな影響を与える術前合併症 ( 中枢神経障害 末期悪性腫瘍 抗凝固による全身性の出血リスク ) 3. 患者の年齢 体格 4. 無益な場合 ( 患者の状態が重篤すぎる 従来の治療が長期に及んでいる 死亡が避けられないなど ) ELSO General Guidelines for all ECLS Cases

2-1 ECMO の適応 2 重篤な低酸素血症 PEEP15 20 cmh 2 O 以上の高い PEEP で P/F<80 が 6 時間以上 かつ可逆性が予測される 適切な呼吸器設定でも代償できない呼吸性のアシデミア (ph <7.15) 最善の標準的な換気設定にもかかわらずプラトー圧 >35 45cmH 2 O N Engl J Med 2011;365:1905-14

2-1 ECMO の相対的禁忌 2 7 日間以上の高圧換気 ( プラトー圧 30cmH2O 以上 ) 7 日以上の高い吸入気酸素濃度 (80% 以上 ) 血管確保の限界 ECMO による利益が見込めない状態や臓器不全の状態 ( 重篤な不可逆性の頭部外傷や治療できない癌転移の存在など ) 絶対的禁忌として 抗凝固療法が行えない状態 N Engl J Med 2011;365:1905-14

第 2 章チェックテスト 第 2 章は参考資料のため チェックテストはありません

第 3 章 ECMO デバイス 第 3 章の到達目標 回路構成を説明できる ブレンダ 遠心ポンプ 人工肺の原理を説明できる

3-1 回路構成 ECMO 回路はブレンダ 遠心ポンプ 人工肺 回路チューブにより構成されている 回路チューブ

3-2 ブレンダ 酸素と空気を混合することにより 任意の酸素濃度と流量で人工肺にガスを送ることができる

3-2 ブレンダ 海外では圧アラームのついたものも使用されている

3-3-1 遠心ポンプ 流体の圧力を高めるためにインペラなどの回転による遠心力を用いるポンプである

3-3-1 遠心ポンプ 血液成分の損傷や 凝固線溶系への影響が少ない 送血流量が送血抵抗の影響を受けるため 無理な送血による回路破裂は起こらない 大量の空気混入では 遠心力が伝わらず 空気を送り込む危険性が少ない ( ただし 少量混入は継続的に送る危険性がある ) 機械がコンパクトで移動が容易である 送血量は前負荷, 送血回路内, 送血カニューレの抵抗の影響を受けるため流量に変化が生じやすい

3-3-2 代表的な遠心ポンプ テルモ社製キャピオックス遠心ポンプ 6 本の直線流路による直線流路型 この構造により低回転の駆動で効率的な送血を行うことが可能

3-3-2 代表的な遠心ポンプ 泉工医科工業社製メラ遠心ポンプ HCF-MP23 28

3-3-2 代表的な遠心ポンプ 泉工医科工業社製メラ遠心ポンプ HCF-MP23 直線流路型の遠心ポンプ 1 点のピボットベアリングをインペラの軸に採用した耐久性の高い構造 インペラの台座に開いた穴 ( ウォッシュアウトホール ) と裏羽根による インペラ裏側の血栓形成を抑制する

3-3-3 回転数と吐出圧 遠心ポンプは回転数が上がるごとにその吐出圧が上昇する 遠心ポンプの一例

3-3-4 揚程 揚程 ( ようてい ) とはポンプが駆出できる圧力のことを指す 人工心肺の業界ではポンプの吐出圧 揚程と考えて問題ない 回路内の抵抗 ( 圧力損失 ) 流量の関係により 必要となる揚程は変わってくる

3-3-5 圧力損失と揚程 回路内圧 ポンプ揚程 陰圧 陽圧 圧力損失 圧力損失 脱血カニューレ 送血カニューレ 遠心ポンプ 人工肺 送血 脱血カニューレのサイズにより圧力損失は大きく変化し 必要となる揚程は大きく変わる このため カニューレサイズの選択が重要となる この他に 回路チューブのサイズ 人工肺の種類により圧力損失は変化する

脱血カニューレが細すぎるとき 2 同一の流量を得るために高い回転数が必要なため ポンプ揚程は高くなる 回路内圧 陽圧 圧力損失 陰圧 圧力損失 脱血カニューレ 1 脱血カテが細すぎると過度に陰圧を生む 送血カニューレ 遠心ポンプ 人工肺 脱血カニューレが細すぎると脱血回路内は強い陰圧になる 十分な太さのときと比べて必要となる揚程は大きくなり 回転数を高くする必要がある

送血カニューレが細すぎるとき 2 同一の流量を得るために高い回転数が必要なため ポンプ揚程は高くなる 陽圧 回路内圧 圧力損失 陰圧 1 送血カテが細すぎると送血の圧力損失は増大する 圧力損失 脱血カニューレ 送血カニューレ 遠心ポンプ 人工肺 送血カニューレが細すぎると送血回路内は強い陽圧になる 十分な太さのときと比べて必要となる揚程は大きくなり 回転数を高くする必要がある 高い揚程は乱流とずり応力を発生させ 白血球や血小板の活性化 溶血の原因となる

カニューレのサイズ 不適切に細い脱血カニューレでは高い回転数でも必要とされる血液流量を確保できない 不適切に細い送血カニューレは高い圧力損失とずり応力に伴う白血球や血小板の活性化 溶血の原因となる また 人工肺の早期劣化の原因にもなる 高い回転数は遠心ポンプそのもののより早い劣化の原因となることがある 成人であれば 脱血カニューレは 21~25Fr 送血カニューレは 17Fr 以上が選択される 製品によっても圧力損失は変わるので確認が必要である

陽陰圧と溶血 ( 参考 ) 遠心ポンプが作り出すことのできる揚程は最大で 700mmHg 程度のため 作り出すことのできる最大陰圧も -700mmHg 程度となる 基礎研究では 1000から-700mmHgの陽陰圧でも血液にキャビテーションや溶血は発生しないことが示されており 遠心ポンプの高回転により生じた陰圧を原因する溶血の発生は疑問視されている ASAIO J.1996;42(6):947-50 患者側以外の溶血の原因として 送血カニューレの先当たりや回路の折れ 回路内血栓 高い揚程により生じるずり応力 冷温水槽の異常加温 熱交換器のリークなどが考えられる

開始時の血流量アルゴリズム ( 参考 ) 脱血カニューレ 可能な範囲で最大のものまたは最大のダブルルーメン 人工呼吸器の設定は上げたままで 血流量を最大に 送血カニューレ ( 成人用ダブルルーメンは国内未発売 ) SaO2>90% SaO2>90% に達しない 脱血カニューレが小さい カニューレの追加貧血 Hct>40% に輸血再循環あり カニューレ位置の変更 SaO2>90% SaO2<90% 血流量を維持 酸素消費量を下げる 体温 筋弛緩 肺を休める人工呼吸器設定に変更 SaO2>80% SaO2<80% 肺の状態が改善するまで SaO2>80% を維持できる最低血流量で継続する

3-4-1 人工肺 人工肺は中空糸を介した酸素付加と二酸化炭素排出を目的に作られている 酸素付加は送気ガスの酸素濃度に 二酸化炭素の排出はガス流量に依存している 素材には ポリプロピレン多孔質中空糸やこれをシリコンコーティングしたもの 非対称膜のポリメチルペンテンなどの製品が主に発売されている

3-4-2 人工肺用膜の構造 耐血漿リーク性が高い シリコン膜 旧来の製品 ポリプロピレン膜 シリコンコートポリプロピレン膜 ポリメチルペンテン膜 比較的新しい製品

3-5 回路チューブ 回路チューブは回路構成部のそれぞれを繋ぐ血管の役割を果たしている 一般に回路チューブのサイズは 1/4 インチ (6 mm ) 3/8 インチ (10 mm ) 1/2 インチ (12 mm ) が ECMO を含む人工心肺領域で使用されている 流量が同じであれば細いものほど回路内の圧力損失は大きくなり より高い揚程が必要となる 国内で販売されている成人用 ECMO 回路は 3/8 インチ (10 mm ) が使用されている

第 3 章チェックテスト ECMO 回路は ( 1 ) ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) により構成されている ( 1 ) ( 3 ) 回路チューブ ( 4 ) ( 2 )

第 3 章チェックテスト 解答 ECMO 回路はブレンダ 遠心ポンプ 人工肺 回路チューブにより構成されている 回路チューブ

第 3 章チェックテスト 回路内圧 ポンプ揚程 陰圧 陽圧 圧力損失 圧力損失 脱血カニューレ 送血カニューレ 遠心ポンプ 人工肺 送血 脱血カニューレのサイズにより圧力損失は大きく変化し 必要となる揚程は大きく変わる このため ( 1 ) の選択が重要となる この他に ( 2 ) ( 3 ) により圧力損失は変化する

第 3 章チェックテスト 解答 回路内圧 ポンプ揚程 陰圧 陽圧 圧力損失 圧力損失 脱血カニューレ 送血カニューレ 遠心ポンプ 人工肺 送血 脱血カニューレのサイズにより圧力損失は大きく変化し 必要となる揚程は大きく変わる このため カニューレサイズの選択が重要となる この他に 回路チューブのサイズ 人工肺の種類により圧力損失は変化する

第 4 章酸素化と換気 第 4 章の到達目標 V-V ECMO 中の酸素化を規定する因子が説明できる V-V ECMO 中の換気を規定する因子が説明できる

4-1-1 ECMO の酸素化 エクモの酸素化は大きくは血流量が規定する 酸素供給に必要とされる目標血液流量 乳児 :120ml/kg/min 小児 :80-100ml/kg/min 成人 :60-80ml/kg/min ( 例 :60kg の成人なら 3600-4800ml/min) CO2 排出のみを目的とする場合 心拍出量の約 25%(15-20ml/kg/min) で十分 アクセスは VA VV のほか AV でもよい ELSO General Guidelines for all ECLS Cases

4-1-2 酸素化の評価 VV ECMO 右 左 全身 動脈血ガスで評価する

酸素化の目標は PaO2:45-80mmHg VV ECMO 右 (SaO2:80-95%) 右心系の静脈血をすべては脱血できない 送った血液には必ず静脈血が混ざる SO2 は 95% には達しない ECMO だけでは PO 2 は 80mmHg を超えない!

酸素解離曲線 PaO 2 : 45~80mmHg SaO 2 : 80~95%

血液の酸素含有量は SO2 と Hb が決める PO 2 は 80 も 500 も大差ない (1.34 SO 2 Hb) + (0.003 PO 2 ) SO > PO 2 2 Hb ガイドラインではヘマトクリット 40% 以上が目標値 ELSO General Guidelines for all ECLS Cases

動脈採血は右手じゃなくて OK! ECMO PO 2 300mmHg 肺を休める人工呼吸設定 FiO 2 0.4 以下 PIP25 以下 PEEP5~15 呼吸回数 6~8 または CPAP 右 左 SO 2 :80% 以上 SaO 2 :80% 以上 PaO 2 :45-80 が目標値 酸素化の評価は末梢の動脈血ガスと SpO2 P/F 比は役に立たない

4-2-1 換気 (PCO2) の評価 ECMO 中の PCO2 は動脈血ガスで評価します ECMO 右 左 全身 動脈血ガスで評価する

PaCO2 はガス流量で管理 ガス流量 ECMO CO2 CO2 人工呼吸器は分時換気量を抑えた設定で肺を休ませる! PaCO2:35~45 程度を目標としてエクモのガス流量で管理 右 左

酸素化と換気の評価 酸素化の評価 ( 目標値 :PaO 2 45-80mmHg) PaO2は主に血流量 SO2 Hbに規定される PaO2/FiO2 の比は役立たず エクモを止めないと自己肺機能は評価できない 換気の評価 ( 目標値 :PaCO 2 35-45mmHg) PaCO2は主にECMOのガス流量に規定される 適正なPaCO2はpHを元に考える 人工呼吸器の設定を抑えて 肺はお休み

第 4 章チェックテスト 酸素供給に必要とされる目標血液流量 乳児 :( 1 )ml/kg/min 小児 :( 2 )ml/kg/min 成人 :( 3 )ml/kg/min ( 例 :60kgの成人なら( 4 )ml/min)

第 4 章チェックテスト 解答 酸素供給に必要とされる目標血液流量 乳児 :120ml/kg/min 小児 :80-100ml/kg/min 成人 :60-80ml/kg/min ( 例 :60kgの成人なら3600-4800ml/min)

第 5 章回路内モニタリング 第 5 章の到達目標 回路内モニタリングの種類や解釈にはどのようなものがあるか説明できる

5-1 血液流量計 遠心ポンプを使用する際の血液流量測定には 超音波流量計が使用されています

5-2-1 圧モニタリング 人工肺後圧 ( 送血圧 ) 人工肺前圧 人工肺 遠心ポンプ 脱血圧

5-2-2 圧モニタリングの解釈 脱血圧 脱血不良を監視 -100~-300mmHg を下回らない 人工肺前後の圧力勾配 圧力勾配の上昇は チューブの折れや人工肺の血栓を示す可能性がある 人工肺後圧 ( 送血圧 ) 400mmHg 以下が目安とされる 流量低下 + 人工肺後圧上昇 送血回路の閉塞? 流量低下 + 人工肺後圧低下 脱血不良や人工肺の閉塞を疑う

5-2-2 圧モニタリングの解釈 脱血圧 脱血圧は患者から血液ポンプまでの静脈血の圧力 脱血不良の発生を監視する -100~-300mmHg を下回らない 脱血圧をより高く保つことでより安定した脱血を得ることができる 人工肺 遠心ポンプ 脱血圧

5-2-2 圧モニタリングの解釈 人工肺前後の圧力勾配 圧力勾配の上昇は チューブの折れや人工肺の血栓を示す可能性がある 人工肺後圧 ( 送血圧 ) 人工肺前圧 遠心ポンプ 人工肺

5-2-2 圧モニタリングの解釈 人工肺後圧 ( 送血圧 ) 人工肺後から患者までのチューブ内の圧力 400mmHg 以下が目安とされる 流量低下 + 人工肺後圧上昇 送血回路 カニューレの閉塞? 流量低下 + 人工肺後圧低下 脱血不良 人工肺の閉塞? 人工肺後圧 ( 送血圧 )

5-3-1 SvO2 モニター 回路の脱血回路内にセンサーを取り付け 連続的に酸素飽和度をモニターする

5-3-2 V-V ECMO 中の SvO2 の解釈 酸素化された血液が再循環するため SvO2 は偽性に上昇する これにより代謝や酸素需給バランスの状態を示さなくなる (V-V ECMO 中は流量の 30% 程度は再循環している ) SvO2 が非常に高値 ( 例えば 90% 以上 ) の場合 再循環率が高い可能性がある 数値の監視のみでなく 色調の観察も重要である 送血回路の色と脱血回路の色が明らかに異なることを確認する 時に脱血回路の色が赤 黒 赤と交互に再循環が出来ていることも観察される

5-3-2 V-V ECMO 中の SvO2 の解釈 成人 : 体重 50kg ECMO の送脱血酸素含量較差 ECMO の送血側から 1 分間に送られる酸素量 =ccao2 フロー ECMO の脱血側に 1 分間に戻ってくる酸素量 =ccvo2 フローとすると ECMO の送脱血酸素含量較差 =(ccao2-ccevo2)x フロー 10 =(1.34 13.0 ΔSO2) 3.5 10 =(1.34 13.0 0.23) 3.5 10 =140.2ml/min 送血側 SO2:100% 人工肺 患者自身の肺が完全に機能していない場合 ECMO の送脱血の酸素含量較差と患者の酸素消費量が等しくなるため これを計算することで患者の酸素消費量を知ることができる SvO2:77% フロー :3.5L/min Hb:13.0mg/dl

5-4 酸素消費量 ( 参考 ) 成人 3-5ml/kg/min 体重 50kgであれば 150-250ml/min 小児 4-6ml/kg/min 新生児 5-8ml/kg/min 67

第 5 章チェックテスト 脱血圧 ( 1 ) を監視 -100~-300mmHg を下回らない 人工肺前後の圧力勾配 圧力勾配の上昇は ( 2 ) や ( 3 ) を示 す可能性がある 人工肺後圧 ( 送血圧 ) ( 4 ) 以下が目安とされる 流量低下 + 人工肺後圧上昇 送血回路の閉塞? 流量低下 + 人工肺後圧低下 脱血不良や人工肺の閉塞を疑う 68

第 5 章チェックテスト 解答 脱血圧 脱血不良を監視 -100~-300mmHg を下回らない 人工肺前後の圧力勾配 圧力勾配の上昇は チューブの折れや人工肺の血栓を示す可能性がある 人工肺後圧 ( 送血圧 ) 400mmHg 以下が目安とされる 流量低下 + 人工肺後圧上昇 送血回路の閉塞? 流量低下 + 人工肺後圧低下 脱血不良や人工肺の閉塞を疑う 69

ポストテスト Q1.V-V ECMO の適応となる可能性のある患者について空欄を埋めてください ( 1 ) のない患者で ( 2 ) の 状態にある患者 70

ポストテスト 解答 Q1.V-V ECMO の適応となる可能性のある患者について空欄を埋めてください 重症心不全のない患者で 重症呼吸不全の 状態にある患者 71

ポストテスト Q2. 遠心ポンプについて 以下の空欄を埋めてください 遠心ポンプは ( 1 ) を上げることでその ( 2 ) を上げることができる ( 2 ) は ( 3 ) とも呼ばれ 回路や循環血液量に問題がなければ主に ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) の違いによる圧力損失の差により 必要となる揚程は規定されることになる 72

ポストテスト 解答 Q2. 遠心ポンプについて 以下の空欄を埋めてください 遠心ポンプは 回転数を上げることでその吐出圧を上げることができる 吐出圧は 揚程とも呼ばれ 回路や循環血液量に問題がなければ主にカニューレサイズ 回路チューブサイズ 人工肺の種類の違いよる圧力損失の差により 必要となる揚程は規定されることになる 73

ポストテスト Q3.ECMO が回っている患者さんの SpO2 が急に低下しました 一番最初にとるべき対応は以下のどれでしょう? 1. ブレンダーの酸素濃度を上げる 2. 人工呼吸器の酸素濃度を上げる 3. ECMO の血流量を上げる 4. 腹臥位にしてみる 74

ポストテスト 解答 Q3.ECMO が回っている患者さんの SpO2 が急に低下しました 一番最初にとるべき対応は以下のどれでしょう? 3. ECMO の血流量を上げる ECMO 中の酸素化の低下には 脱血不良 シバリングなどによる酸素消費量の増加 人工肺の不良 貧血などがありますが まずは血流量を上げてみて酸素化の改善を図ってから原因検索を行いましょう 75

ポストテスト Q4. 人工肺前後の圧力勾配が上昇してきました 原因となりえるものを 2 つ挙げてください

ポストテスト 解答 Q4. 人工肺前後の圧力勾配が上昇してきました 原因となりえるものを 2 つ挙げてください チューブの折れ 人工肺の血栓

参考文献 Extracorporeal Cardiopulmonary Support in Critical Care (4th Edition) ECMO Specialist Training Manual Third Edition Extracorporeal Life Support Organization (ELSO) General Guidelines for all ECLS Cases INTENSIVIST Vol.5 No.2 2013 ( 特集 :ECMO) N Engl J Med 2013; 369: 2126 酸素化についての補足資料がつづく 78

酸素化についての 補足資料 79

酸素化と CO2 除去 ( 参考 ) 主に規定するもの 酸素化 血液流量ヘモグロビン濃度 CO2 人工肺のガス流量 目標値 45-80mmHg 35-45mmHg 備考 ヘマトクリット 40% 以上で心機能良好であれば酸素運搬は十分であり 低酸素血症を理由に呼吸器の設定を上げない 初期 PaCO2 が 70mmHg を超えている場合は CO2 と ph に依存した脳血流変動を避けて数時間で正常化する 80

なぜ目標 PaO2 は低いのか? V-V ECMO 人工心肺 ECMO 心 全身 全身 静脈脱血 - 静脈送血ではすべての静脈血を酸素化できるわけではないため 必ず肺動脈に達した時点で酸素化されていない静脈血との混合血になる 人工心肺では完全体外循環が可能なため 人工肺で酸素化された血液は直接全身に供給される 81

なぜ目標 PaO2 は低いのか? フロー A:3L/min SO2 100% ECMO フロー (A+B)=4L/min 心 フロー B:1L/min SO2 60% SO2(A+B)=90% 全身 PO2:60mmHgくらいになる 酸素含有量 CaO2 = (1.34 SO 2 Hb) + (0.003 PO 2 ) で規定され 溶存酸素 (PO2) の占める割合は小さく PO2 は 100 でも 300 でも大差はない 十分な酸素含有量を得るには Hb は十分に高いことが求められている

2 流量混合時の SaO2 SO2 A(%) 100 SO2 B(%) 100 90 80 70 60 50 SO2(A+B) 90 80 70 60 50 0.75 0.5 0.25 フロー (A+B) に対するフロー Aの割合 83

なぜ目標 PaO2 は低いのか? V-V ECMO では人工肺で酸素化された静脈血と人工肺を通らなかった静脈血の 2 流量が存在する これらが混和すると SO2 は 95% 以下になるため 目標 PaO2 は 80mmHg 以下となる 十分なヘモグロビン濃度と良好な心機能があれば SaO2:80% (PaO2:45mmHg) でも十分な酸素供給量が期待されるため PaO2:45mmHg までは許容されている ただし 酸素需給バランスの障害 ( 乳酸値の上昇など ) がないことが条件となる 一般に VV 補助中の動脈血の酸素飽和度は 80% である 心機能が良好でヘマトクリット値を 40% 超える値を維持すると 最小の血流量で適正な酸素運搬が行える 人工呼吸器の設定は肺を休息させることを優先する 低酸素血症を理由に設定を上げない 84