上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に続発した変形性肘関節症に対する手術療法 表 症例の内訳 症例年齢性別スポーツ歴 術前肘関節可動域 術前 JOA-JES score* 5 男野球 0 年 - 5/ 男野球 6 年 - 8/ 男野球 8 年 - 9/ 女バレーボー

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日本肘関節学会雑誌 ()05 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に続発した変形性肘関節症に対する手術療法 小林 池田 由香, 全良 齋藤 石井崇之 育雄 高木岳彦 湘南中央病院整形外科 東海大学整形外科 清水あゆ子 持田讓治 Operative Treatment for Osteoarthritis of the Elbow Secondary to Osteochondritis Dissecans of the Humeral Capitellum Masayoshi Ikeda, Takayuki Ishii Ayuko Shimizu Yuka Kobayashi Ikuo Saito Takehiko Takagi Joji Mochida Department of Orthopaedic Surgery, Shonan Central Hospital Department of Orthopaedics, Tokai University School of Medicine 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 ( 以下 OCD) に続発した変形性肘関節症 ( 以下 OA) の 5 例に対して debridement arthroplasty と OCD に対する手術を施行した. 手術時年齢は平均 6 歳であり, 肘関節の疼痛と可動域制限を認めた. 術前の関節可動域は平均 -.8 /.4 で, 日本整形外科学会 日本肘関節学会肘機能スコア ( 以下 JOA-JES score) は平均 48. 点であった. OCD は全て終末期で, 骨軟骨病変部位は小頭外側皮質まで破壊された外側型 3 例, 小頭中央部 例であった. 手術は関節可動域改善を目的とした debridement arthroplasty に加えて, 骨釘移植を施行したもの 例, 肋骨骨軟骨移植を施行したもの 3 例であった. 術後平均 3 か月で肘関節可動域は平均 - 7.6 /30.,JOA-JES score は平均 9.8 点に改善した.OCD に続発した OA 症例に対しては,debridement arthroplasty に加えて,OCD の修復を考慮する必要がある. 緒言 若年者の肘関節スポーツ障害である上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 ( 以下 OCD) に対しては, 適切な治療が不可欠である. しかしながら適切な対処が施されないまま放置されれば, さらに OCD は重症化し関節症性変化をきたす ). 一旦変形性肘関節症 ( 以下 OA) が進行して, 骨棘の増殖などの関節症性変化にともなう関節可動域制限が発生すれば,OA で形成された骨棘の切除を目的とした debridement arthroplasty によって関節可動域の回復を得るとともに, 放置された OCD の軟骨修復を行うことが次善の策であろう. 今回, 終末期 OCD に続発した OA に対して debridement arthroplasty を施行するとともに OCD に対しては骨釘移植または骨軟骨移植を施行したのでその手術成績について報告する. 対象および方法 対象は 5 例 5 肘 ( 男 4 例, 女 例 ) で, 手術時年齢は平均 6. 歳 (5 ~ 8 歳 ) であった. 各々 5 ~ 0 年のスポーツ歴を有していた ( 表 ). OCD 罹病期間の詳細は不明であるが,OCD の診断とそれに対する適切な治療は受けていなかった. 肘関節の疼 痛と可動域制限のためにスポーツ活動の継続が不可能であり, 症状が増悪するため当科を受診した. 全例, 肘関節の運動時痛に加えて肘関節の強制最大屈曲時 伸展時の疼痛と関節可動域制限 ( 平均関節可動域 98.6 および平均伸展角 / 屈曲角 -.8 /.4 ) を認めた. 日本整形外科学会 日本肘関節学会肘機能スコア ( 以下 JOA-JES score) では平均 48. 点であった. 肘関節の単純 X 線像および CT 画像では上腕骨小頭の OCD と鉤状突起および鉤突窩, 肘頭および肘頭窩などの骨棘形成を有する OA 変化の所見, 関節内遊離体などを認めた ( 図 ). 上腕骨小頭の OCD は全例終末期であり, 伊藤 ) が用いる上腕骨小頭の病巣部位は, 小頭外側皮質まで破壊された外側型 3 例, 小頭中央部に病巣がある中央型 例であった. 外側型では症例 と症例 は小頭の半分あるいは /3 の広範囲を占めていた ( 図 a,b). 外側型の 例 ( 症例 3) と中央型の 例 ( 症例 4 と症例 5) では OCD の骨軟骨病変は長径が約 0mm 大であった ( 図 c,d,e). これらの症例に対して,OA の骨棘形成による関節可動域制限を改善させると同時に OCD の骨軟骨病変の修復を目的とする手術的治療を施行した. Key words : osteoarthritis of the elbow( 変形性肘関節症 ),osteochondrotis dissecans of the humeral capitellum( 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎 ),operative treatment( 手術療法 ) Address for reprints : Masayoshi Ikeda, Shonan Central Hospital, -3-43 Hatori, Fujisawa, Kanagawa 5-0056 Japan 87

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に続発した変形性肘関節症に対する手術療法 表 症例の内訳 症例年齢性別スポーツ歴 術前肘関節可動域 術前 JOA-JES score* 5 男野球 0 年 - 5/3 53 8 男野球 6 年 - 8/5 48 3 5 男野球 8 年 - 9/05 43 4 7 女バレーボール 7 年 0/95 48 5 6 男サッカー (GK)5 年 - /9 5 平均 6. -.8±0.6/.4±.6 48.±3.9 * 日本整形外科学会 日本肘関節学会肘機能スコア 肘関節可動域 ( 伸展角 / 屈曲角 ) と JOA- JES score( 点 ) は平均 ± 標準偏差で表示 図 術前単純 X 線および CT a. 症例 b. 症例 c. 症例 3 d. 症例 4 e. 症例 5 図 術中所見 ( 骨軟骨病変の範囲と状態, 矢印で指示 ) a. 症例 : 外側型,φ 4mm mm の分離 b. 症例 : 外側型,φ 7mm 5mm の分離 c. 症例 3: 外側型,φ 0mm 6mm の分離 d. 症例 4: 中央型,φ 0mm 0mm の欠損 e. 症例 5: 中央型,φ 0mm 8mm の欠損. 88

池田全良ほか 術後は約 週間の外固定の後, 自動関節可動域訓練を開始した. 術後 か月以降から徐々に他動関節可動域訓練を開始した. 術後の骨癒合は単純 X 線像と CT 画像を用いて評価した. 術後の最終経過観察期間は平均 3 か月 (9 か月 ~ 3 か月 ) であり, 術前と術後の比較にはウィルコクソンの符号順位検定を用い, 有意水準を危険率 5% 以下とした. 手術方法 手術は内側進入を用いて OA に対する debridement arthroplasty から試みた. 前方の関節 ( 鉤状突起と鉤状窩, 橈骨窩 ) は前腕回内筋群の前方と上腕筋の後方の間から展開し, 後方の関節 ( 肘頭および肘頭窩 ) は肘部管の前方を骨膜下に剝離して尺骨神経を後方によけて展開した. 予め CT 画像で評価した肘関節周辺の骨棘を中心に切除することを試みた. 術中は他動的に肘関節の屈伸を試みて, 関節内で衝突する骨棘 骨堤の突出部分を切除し, 自重で伸展 0, 屈曲 30 以上の獲得を目標とした ( 図 3). 次いで外側進入で腕橈関節を展開し上腕骨小頭の OCD に対する処置を施行した ( 表 ). 外側側副靱帯の上腕骨付着部は必要に応じて前方部分を一部切離した. 外側型の OCD の内, 症例 と症例 に対しては, 軟骨病変が小頭の広範囲を占めてはいたが軟骨表面がスムーズであり, 肘頭から骨釘を採取し骨釘移植術を施行した ( 図 4a,b). 長径約 0mm の外側型の 例 ( 症例 3) は軟骨状態が不良, 中央型の 例 ( 症例 4 と症例 5) は軟骨欠損がクレーター状であり, 同側の肋骨骨軟骨を移植した ( 図 4c,d,e). 骨軟骨欠損の補填には肋骨骨 軟骨 本で充分で, 第 5 肋骨から採取して使用した. 骨軟骨は mm 程の皮質部分を持たせて挿入し上腕骨外側顆の外側皮質からこの肋骨皮質を貫通固定するように吸収ピン ( スーパーフィクソーブピン, タキロン株式会社, 姫路 ) で固定した. 外側進入時に切離した外側側副靱帯は, スーチャーアンカー (Mitek GII スーチャーアンカー, ジョンソン エンド ジョンソン株式会社, 東京, または JuggerKnot スーチャーアンカー, バイオメット ジャパン株式会社, 東京 ) を使用して閉創した. 図 3 肘関節の内側進入による debridement arthroplasty と術前の 3DCT 画像 a. 後方関節の展開 : 肘頭の骨棘 ( 矢頭 ). b.3dct では肘頭 ( 矢頭 ) および肘頭窩の骨棘増殖と関節内遊離体を認める. c. 前方関節の展開 : 鉤突窩の骨棘 ( 矢印 ). d.3dct では鉤状突起および鉤突窩の骨棘増生 ( 矢印 ) を認める. 図 4 骨軟骨病変の修復術 a. 症例 : 骨釘移植術 b. 症例 : 骨釘移植術 c. 症例 3: d. 症例 4: e. 症例 5: 89

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に続発した変形性肘関節症に対する手術療法 結果 全例スポーツ復帰が可能であった ( 表 ). 骨釘移植術の 例 ( 症例, 症例 ) では骨癒合は遷延したもののおのおの術後 3 か月および 8 か月で骨癒合は完成し, 制限なくスポーツ復帰を許可した ( 図 5a,b). 骨軟骨移植例ではいずれも 4 か月でスポーツ復帰した ( 図 5c,d,e). 骨釘移植術を施行した症例 で運動時に腕橈関節部の疼痛を認めた. 肘関節可動域は平均 4.6 で平均伸展角 / 屈曲角は - 7.6 /30. であり, JOA-JES score は平均 9.8 点であった ( 表 ). 術前と術後の比較では, 関節可動域, 屈曲角および JOA-JES score で有意 ( 危険率 =0.0438) な改善を認めた. 表 症例の骨軟骨病変, 手術方法および術後成績 症例 骨軟骨病変 ( 病巣範囲 ) 手術法 スポーツ復帰 術後肘関節可動域 術後 JOA-JES score* 外側型 (4mm mm) 骨釘移植術 3 か月 - 0/5 93 外側型 (7 mm 5 mm) 骨釘移植術 8 か月 - 0/0 86 3 外側型 + LB (0 mm 6 mm) 4 か月 - 5/35 93 4 中央型 + LB (0 mm 0 mm) 4 か月 5/40 96 5 中央型 + LB (0 mm 8 mm) 4 か月 - 8/3 96 平均 6.6 か月 - 7.6±7.5/30.±7.9 9.8±4.0 外側型 : 小頭外側皮質まで破壊されたもの, 中央型 : 小頭中央部に病巣があるもの, LB: 関節内遊離体,:debridement arthroplasty * 日本整形外科学会 日本肘関節学会肘機能スコア 肘関節可動域 ( 伸展角 / 屈曲角 ) と JOA- JES score( 点 ) は平均 ± 標準偏差で表示 図 5 術後経過観察時単純 X 線 a. 症例 : 術後 6 か月 b. 症例 : 術後 か月 c. 症例 3: 術後 3 か月 d. 症例 4: 術後 3 か月 e. 症例 5: 術後 9 か月 90

池田全良 ほか 考察 若年者の肘スポーツ障害である OCD を放置したままスポーツを継続すれば軟骨障害は進行する. そのため結果的に年長者に重症例が多いと報告されている ). また中央型で病巣が小頭 /3 以上を占める広範囲型, 外側型の高度な障害例で OA が進行する傾向にある,3). 笹沼ら 4) の野球選手に発生した OA の報告では,0 歳代で OA を続発する若年者の OCD 症例は,4%(39 例中 6 例 ) が上腕骨小頭外側皮質の破壊を有する骨軟骨病変であることを述べ,valgus extension overload による機械的ストレスの反復が OA を増悪させる要因であると考察している. そのため外側型の高度障害例では早期の処置が必要であるとも述べられている 3). OCD に続発した疼痛と関節可動域制限を呈する OA 症例に対しては,OA に対する debridement arthroplasty に加えて,OCD 病変に対する軟骨修復が必要であると考えられる. 今回の報告では, 症例数が限られるものの OA に対する debridement arthroplasty の結果を検討すれば, 術後の一定期間内では関節可動域の獲得は従来の報告 5) と同様に充分な回復が得られていると考えられた. 一方,OCD 自体に対する処置を検討すると,Oka ら 6) は 5 例の平均 5 年経過観察では, 放置例に比べて, 骨釘移植術を施行した進行期の OCD 例で OA 変化が抑制できたと報告している. 戸祭ら 7) は OCD 6 例に対する骨釘移植術の術後成績を検討し, 外側型進行例の 3/4 で骨癒合が得られず, このような OCD ではを選択すべきであると考察している. さらに Ruchelsman ら 8) も広範囲の外側型に対する骨釘移植術では骨癒合期間の遷延や癒合の不確実性があり, 特にを選択すべきであると結論している. われわれの骨釘移植術の症例は外側型であったが比較的広範囲の骨軟骨病変であり, 軟骨下骨の病巣分離部が陳旧化しているためか, 確実な骨癒合の確認には長期を要しスポーツ復帰を遅らせる結果となった. 一方, 小頭外側皮質が破壊された外側型, 小頭の /3 以上を占める広範囲型, 分離した骨軟骨の軟骨不良例, 軟骨欠損例に対しては, で対処することが可能である. 大腿骨顆部からの骨軟骨柱を用いた mosaic plasty は支柱が海綿骨であるため, その支持性が充分であるとは言い難い ). また, 肋骨からのは広範囲の軟骨欠損を補えると同時に, 術後早期から関節運動における支持性があり, 早期スポーツ復帰が得られる 9-). さらに, 肋軟骨採取後の採取部位における愁訴は見られない. そういう点では皮質骨を含む肋骨からのを考慮してよいであろう. OCD の骨軟骨障害には適切な対処を行い OA の発生と進行を予防することは重要な課題である. しかしながら OCD 症例の多くがスポーツの継続にこだわる若年者であるが故に, 安易なスポーツ継続のための不適切な保存療法, 病巣切除のみなどの姑息 的手術による早期復帰, 治療の中断 放棄は年長期に入って経年的 OA の進行を招来し関節障害を増悪させる ). 今回のわれわれの症例のように, 終末期の OCD 放置例では OA 変化は更に進行し重症化は避けられない. そのため, スポーツ復帰を含めて肘機能を早期に回復させるためには,OA による疼痛と関節可動域制限回復のための処置に加えて OCD の骨軟骨病変に対するは考慮すべきであろう. 結語 肘関節痛と可動域制限を有する OA を続発した OCD の 5 例に対して OA と OCD の両方に対する手術的治療を施行した.OA の骨棘切除を目的とした debridement arthroplasty を施行し満足する関節可動域を回復することができた.OCD に対しては症例に応じて処置を講じたが, 広範囲の骨軟骨障害例における骨釘移植術では骨癒合に時間を要する傾向があり, 肋骨からのを選択することが望ましい. 文献 ) 伊藤恵康 : 肘関節のスポーツ障害. 伊藤恵康著. 肘関節外科の実際. 南江堂, 東京.0;5-9. ) 大歳憲一, 伊藤恵康, 辻野昭人ほか : 上腕骨小頭離断性軟骨炎に対する自家骨軟骨柱移植術. 日肘会誌. 007;4:9-33. 3) 三原研一, 筒井廣明, 西中直也ほか : 上腕骨小頭離断性軟骨炎に対する手術療法. 日肘会誌.007; 4:5-8. 4) 笹沼秀幸, 菅谷啓之, 髙橋憲正ほか : 野球選手に生じた変形性肘関節症 上腕骨小頭 OCD の遺残変形に着目して 日肘会誌.03;0:48-50. 5)Oka Y : Debridement arthroplasty for osteoarthritis of the elbow : 50 patients followed mean 5 years. Acta Orthop Scand.000 ; 7 : 85-90. 6)Oka Y, Ohta K, Fukuda H : Bone-peg grafting for osteochondritis dissecans of the elbow. Int Orthop. 999 ; 3 : 53-7. 7) 戸祭正樹, 田中寿一, 大迎知宏ほか : 上腕骨小頭離断性軟骨炎症例に対する骨釘移植術. 日肘会誌. 006;3:63-4. 8)Ruchelsman DE, Hall MP, Youm T : Osteochondritis dissecans of the capitellum : current concepts. J Am Acad Orthop Surg. 00 ; 8 : 557-67. 9)Oka Y, Ikeda M : Treatment of severe osteochondritis dissecans of the elbow using osteochondral grafts from a rib. J Bone Joint Surg Br. 00 ; 83 : 738-9. 0)Sato K, Mio F, Hosoya T, et al : Two cases with osteochondritis dissecans of the capitellum humeri treated with costal osteochondral graft transplantation. J Shoulder Elbow Surg. 003 ; : 403-7. )Mihara K, Suzuki K, Makiuchi D, et al : Surgical treatment for osteochondritis dissecans of the humeral capitellum.j Shoulder Elbow Surg. 00 ; 9 : 3-7. )Shimada K, Tanaka H, Matsumoto T, et al : Cylindrical costal osteochondral autograft for reconstruction of large defects of the capitellum due to osteochondritis dissecans. J Bone Joint Surg Am. 0 ; 94 : 99-00. 9