症例 80 歳女性 l 高血圧や心不全で当院通院中. 最近物忘れが始まったとのことで ドネペジルを開始した. l 1 ヶ月後のフォロー外来で 尿取りパットが必要になった とのことで長女さんと一緒に来院. l 内服薬 : ドネペジル 10mg/ 日 エナラプリル 2.5mg/ 日 フロセミド 20mg

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目 次 CONTENTS 1. はじめに 3 2. 下部尿路症状 4 3. 疫学 5 4. 排尿の仕組み 6 5. 下部尿路機能の分類 7 6. 蓄尿障害の疾患 病態 治療 8 1 腹圧性尿失禁 8 2 切迫性尿失禁と過活動膀胱 10 Ⅰ. 抗コリン薬 13 1 トルテロジン 13 2 ソリフェナシ

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経支配は副交感神経優位に切り替わる10) 排尿を決意すると, 副交感神経終末からアセチルコリンが放出され, 膀胱はムスカリン (M) 受容体を介した作用により収縮し, 尿が排出される7) 抗コリン薬はこのアセチルコリンのムスカリン (M) 受容体への結合を遮断することで, 膀胱の異常収縮を抑制する

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リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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尿失禁とはご自分の意思に反して 尿が漏れてしまう症状のことです 尿漏れは目に見えない症状で生命に関わりが少ないこと 何よりも羞恥心があり受診されないケースもあります 当院では排泄ケアに関する専門の看護師もいます お困りの方はお1 人で悩まず 是非ご相談ください 名鉄病院皮膚排泄ケア認定看護師 いちか

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

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症例 80 歳女性 l 高血圧や心不全で当院通院中. 最近物忘れが始まったとのことで ドネペジルを開始した. l 1 ヶ月後のフォロー外来で 尿取りパットが必要になった とのことで長女さんと一緒に来院. l 内服薬 : ドネペジル 10mg/ 日 エナラプリル 2.5mg/ 日 フロセミド 20mg/ 日 アムロジピン 5mg/ 日 カルベジロール 10mg/ 日 ブロチゾラム 0.25mg 頓服

先生 トイレが近いの l 担当医 認知症の進行ですね. 尿パットや おむつは今後仕方ないですよ. l 長女さん そうですか こんな診療風景をみたこと 経験したことはありますか? 私たち医師にはもっとサポートできることがあるはず!!

Clinical Ques6on l 尿失禁は放っておいたらまずい? l 尿失禁の原因は? l 尿失禁へのアプローチは?

尿失禁の疫学 l 市中の高齢者の 15 30% に認める l 施設入所者の 60 70% l 加齢とともに増える 80 歳までは男 女比は 1:2 で 以降は差はない JAMA 2008; 300:1311. Am J Epidemiol 2008; 167:390.

排尿のメカニズム 排尿時 膀胱平滑筋 ( 排尿筋 ) Ø 副交感神経 ( ムスカリン受容体 ) 亢進で収縮する (S2 S4) Ø 一部交感神経 (β3 受容体 ) 抑制で収縮する (T11 L2) 尿道括約筋 弛緩 収縮 Ø 交感神経 (α 受容体 ) 抑制で弛緩する (T11 L2) INCONTINENCE 4 th Interna6onal Consulta6on on Incon6nence, Paris July 5-8,2008 4 th Edi6on 2009 p.116-117 FRANK H.NETTER,MD ATRAS OF HUMAN ANATOMY p.350

排尿のメカニズム 求心路 遠心路 前頭葉皮質 前頭葉の抑制経路 中脳 橋 ( 排尿中枢 ) 仙髄 骨盤神経 ( 副交感神経 ) A 膀胱膀胱平滑筋尿道括約筋 B 1 膀胱充満求心路中脳求心路前頭葉抑制 2 トイレで排尿可能 前頭葉抑制が解除 3 中枢 遠心路 骨盤神経亢進膀胱平滑筋収縮下腹神経抑制尿道括約筋弛緩 下腹神経 ( 交感神経 ) INCONTINENCE 4 th Interna6onal Consulta6on on Incon6nence, Paris July 5-8,2008 4 th Edi6on 2009 p.116-117

尿失禁がもたらす弊害 l 生活の質の低下 l 抑うつ状態 l 患者さんの自己満足感や社会参加度低下 l 性生活への影響 l 尿路感染症や褥瘡などの原因 l 介護者の負担の増大 Neurourol Urodyn 2009; 28:492. J Am Geriatr Soc 2000; 48:721. だからこそ きちんと対応するべきプロブレム!

尿失禁を起こす要因 メカニズムからみた分類 物理的要因 泌尿生殖器腫瘍 奇形 泌尿器脱 生殖器脱 便秘 膣萎縮 尿路感染症 機能 環境要因 トイレへのアクセスの問題 - 認知機能低下 - 運動能力低下 ( 変形性関節症 関節炎 ) 介護者の不在 不足 神経学的要因 前頭葉皮質障害 - 脳梗塞 正常圧水頭症 うつ病 脊髄遠心路障害 - 脊髄損傷 椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 脊髄腫瘍 変性疾患 遠位末梢神経障害 - ニューロパチー : DM, Vitamin B 12 欠乏, アルコール性末梢神経障害 - 薬剤 アルコール カフェイン Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

尿失禁のメカニズム 求心路遠心路前頭葉皮質前頭葉の抑制経路中脳橋 ( 排尿中枢 ) 脳卒中正常圧水頭症うつ病アルコール薬剤 ( 鎮静剤 鎮痛剤 ) 脊髄損傷腰椎ヘルニア脊髄腫瘍 仙髄 骨盤神経 ( 副交感神経 ) A 膀胱膀胱平滑筋尿道括約筋 INCONTINENCE 4 th Interna6onal Consulta6on on Incon6nence, Paris July 5-8,2008 4 th Edi6on 2009 p.116-117 B ニューロパチー : DM,Vitamin B 12 欠乏, アルコール 下腹神経 ( 交感神経 ) 泌尿器腫瘍 生殖器脱 便秘

尿失禁のタイプ タイプ病態生理症状患者プロファイル 切迫性尿失禁 膀胱平滑筋過活動 神経調節障害 急に排尿したくなる頻尿 夜間尿 高齢者に最も多い加齢脳卒中後遺症 腹圧性尿失禁 骨盤底筋群脆弱化 腹圧をかけた際に尿がもれる ( くしゃみ 咳 笑い ) 若年女性で最も多い高齢女性で 2 番目に多い 混合性 溢流性尿失禁 上記混合 上記の合併 上記合計のため 全体とし ては最も高頻度 解剖学的閉塞 低活動性膀胱 神経原性障害による膀胱平滑筋収縮障害 尿を出しにくい膀胱充満後の持続的尿漏れ 尿道閉塞遠位ニューロパチー脊髄障害 機能性尿失禁 認知機能低下 移動能力低下 心理的障害 尿が間に合わない排尿方法を忘れる 歩行障害関節炎認知症 Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

排尿に影響を及ぼす薬剤 抗アレルギー薬抗ヒスタミン薬鎮静剤 鎮痛剤ベンゾジアゼピン系オピオイド 膀胱への作用機序 抗コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 筋弛緩作用 : 排尿障害膀胱充満の感覚低下 尿道括約筋収縮 抗コリン薬 抗ムスカリン薬 (ex.darifenacin) 鎮痙薬 (ex.dicyclomine) 抗コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 抗パーキンソン病薬 (ex.benztropine) 心血管系 ACE 阻害薬膀胱平滑筋収縮 慢性咳嗽 α 刺激薬 (ex.midodrine) α 刺激作用 : 尿道括約筋収縮 α1 阻害薬 (ex.doxazosin) 抗不整脈薬 (ex.disopyramide,flecainide) 利尿薬 α 阻害作用 : 尿道括約筋収縮 膀胱粘膜への局所麻酔作用 抗コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 尿産生 膀胱平滑筋収縮 Drug Saf 2008; 31:373.

排尿に影響を及ぼす薬剤 膀胱への作用機序 抗鬱薬 SNRI(ex.DuloxeCne) 尿道括約筋収縮 三環系抗鬱薬 (ex.amitriptyline) 抗精神病薬第 1 世代 (ex.chlorpromazine ) 第 2 世代 (ex.clozapine) コリン作動薬 Bethanechol Chloride 抗コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 様々なメカニズム : 抗コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 ドパミン作動 α 刺激作用 : 尿道括約筋収縮 コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 抗コリンエステラーゼ阻害薬 その他 認知症治療薬 (ex. Donepezil) 低緊張型膀胱薬 (ex. DisCgmine) MG 検査薬 (ex. Edrophonium) 筋弛緩薬 (ex.orphenadrine,czanidine) 経口エストロゲン β3 作動薬 (ex.mirabegron) アルコール カフェイン コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 抗コリン作用 : 膀胱平滑筋収縮 β3 刺激作用 : 膀胱平滑筋収縮 膀胱平滑筋収縮 膀胱平滑筋収縮 Drug Saf 2008; 31:373.

実際はどうすればいいか? How to approach

病歴問診 メカニズムの 3 つの軸を意識する 物理的要因機能 環境要因 神経学的要因 既往歴内服歴残存機能生活環境嗜好歴 泌尿生殖器脱 泌尿生殖器腫瘍 奇形 尿路感染症 関節痛や腰痛 ADL 認知機能 トイレへのアクセス 介護者はいるか? 前頭葉皮質障害 - 脳梗塞 正常圧水頭症 うつ病 脊髄遠心路障害 - 脊髄損傷 椎間板ヘルニア 脊柱管狭窄症 脊髄腫瘍 変性疾患 遠位末梢神経障害 - 糖尿病など 排尿に影響を与える薬剤を内服していないか? アルコール摂取歴 カフェイン摂取歴 喫煙歴 Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

尿失禁の症状に関わる問診 l 回数 l 1 回量 l 失禁の増悪因子 l 夜間頻尿 l 尿勢 l 残尿感 l 持続性 l 力んでいるか 質や程度を把握し 重症度とタイプを鑑別していく Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

The 3 Incon6nence Ques6onnaire : 3IQ 1. 3 ヶ月以内に尿失禁があったか? はい いいえ 尿失禁なしと診断 2. 3 ヶ月以内の尿漏れがある状況は (A) 運動時 咳 くしゃみ時か? (B) 切迫感があるが間に合わないときか? (C) 切迫感がないときか? 3. そしてその状況で最も多い場合は (A) 運動時 咳 くしゃみ時か? (B) 切迫感があるが間に合わないときか? (C) 切迫感がないときか? (D) 運動時と切迫感がある時で同頻度? 問診で尿失禁のタイプがある程度鑑別できる (A) 腹圧性 (Sn75%, Sp77%) (B) 切迫性 (Sn86%, Sp60%) (C) その他の原因 (D) 混合性 Ann Intern Med 2006; 144:715.

評価 検査 l 身体所見 認知機能評価 l 骨盤底の臓器診察 : 臓器脱がないか l 立位での咳嗽テスト l うつ病スクリーニング l 尿検査 ( 全員に ) l 排尿日記 l 残尿測定 :>200mlで排尿後残尿ありと判断 Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

診察 骨盤底の支持の状態を診る 高齢女性の排尿障害をみたら 身体所 見ではまず骨盤臓器脱がないか確認 膀胱脱 直腸脱 Cystocele Rectocele

尿失禁に対するマネージメント ゴールは困っている症状を良くすること l 治りうる原疾患の治療 l 被疑薬の中止 l 段階的に進める ライフスタイル改善 認知行動 療法 薬物療法 外科療法 時間軸 Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

治療 タイプ保存的治療薬物治療外科的治療 切迫性尿失禁減量カフェイン摂取制限排便コントロール骨盤底筋群運動 腹圧性尿失禁減量カフェイン摂取制限排便コントロール禁煙骨盤底筋群運動デバイス ( ペッサリー 尿道プラグ ) 抗ムスカリン薬 (ex.darifenacin) β3 作動薬 (ex.mirabegron) ボツリヌス毒素 A 膣内エストロゲン α 刺激薬 (ex.phenylephrine) SNRI(ex.Duloxe6ne) 混合性上記混合優位な症状に合わせて治療 神経調節 ( 仙骨神経刺激装置挿入 ) 膣断端固定術 溢流性尿失禁閉塞の解除間欠的導尿尿道カテーテル留置 α ブロッカー (ex. Tamsulosin) コリンエステラーゼ阻害薬 (ex. Dis6gmine): 低緊張性膀胱のみ 恥骨上カテーテル Am Fam Physician.2013;87(9):634-640

治療薬の作用機序 FRANK H.NETTER,MD ATRAS OF HUMAN ANATOMY p.350 膀胱平滑筋収縮 ムスカリン受容体 β3 受容体 尿道括約筋弛緩 α 受容体 抗ムスカリン薬 : 膀胱平滑筋収縮抑制 ( 過活動膀胱による切迫性尿失禁に有用 ) 抗コリンエステラーゼ阻害薬 : 膀胱平滑筋収縮 ( 低緊張性膀胱による溢流性尿失禁に有用 ) β3 刺激薬 : 膀胱平滑筋収縮抑制 ( 過活動膀胱による切迫性尿失禁に有用 ) α 阻害薬 : 尿道括約筋弛緩 ( 溢流性尿失禁に有用 )

女性の尿失禁のアルゴリズム さらなる評価 あり 修正できる要因の治療 改善 尿失禁 複雑性 血尿 腹痛 尿路奇形 ( 瘻孔 臓器脱 ) 神経症状合併 あり 改善なし 溢流性は別マネジメント なし 修正できる要因の検索 (ex. 薬剤 便秘 尿路感染症 ) なし 尿失禁のタイプを判断する 腹圧性 切迫性 / 過活動膀胱 混合型 機能性 次ページへ

初期治療 ライフスタイルの改善 骨盤底筋群の運動 膀胱トレーニング 閉経後女性に局所エストロゲン 腹圧性 改善なし 切迫性 改善 その他の治療 ペッサリー 外科的介入 改善なし 薬物治療 抗ムスカリン薬 β3 作動薬 ( ミラベグロン ) その他の治療 ボツリヌス毒素 仙骨神経調節 改善 AUA/SUFU guideline. J Urol 2012; 188:2455.

症例 80 歳女性 l 尿失禁のアルゴリズムに従い評価 l 病歴 診察上複雑性の要素なし. l 修正できる要因の検索として薬剤を見直した. 被疑薬はドネペジル エナラプリル カルベジロール ラシックス ブロチゾラム. l 中でも 1 ヶ月前に開始されたドネペジルで 抗コリンエステラーゼ作用で膀胱平滑筋収縮亢進で過活動膀胱 切迫性尿失禁に至ったと推測. l ドネペジルを中止により尿失禁は改善した.

まとめ l 尿失禁は高齢者において頻度が高く 生活の質を下げ 新たな疾患や介護量の増加につながる. l 尿失禁のタイプやそれに応じたマネージメント法を理解する. l 治療は複雑性および可逆性の要素 ( 薬剤 便秘 尿路感染 ) を評価した上で 段階的に行う.

参考文献 Am Fam Physician.2013;87(9):634-640 INCONTINENCE 4 th Interna6onal Consulta6on on Incon6nence, Paris July 5-8,2008 4 th Edi6on 2009 p. 116-117 FRANK H.NETTER,MD ATRAS OF HUMAN ANATOMY p.350 AUA/SUFU guideline. J Urol 2012; 188:2455. Ann Intern Med 2006; 144:715.